リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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スカリエッティ、大谷吉継、皎月院主導の下、着実に新たな組織体制を整えつつあった西軍。
スカリエッティの開発した“娘”達…戦闘機人『ナンバーズ』は各々、新たな共闘相手である西軍の将達に複雑な思いを抱いていた…
そんなナンバーズの前に新たな西軍の将 『西海の鬼』・長曾我部元親が現れる…

キャロ「リリカルBASARA StrikerS 第八章、出陣します!」


第八章 ~会遇 西海の鬼と機械人形~

管理局地上本部――――

上層階にある立派な内装の部屋の窓辺から、首都クラナガンの街並みを見下す中年の男と眼鏡をかけた女性…

 

地上本部防衛長官 レジアス・ゲイズ中将とその右腕であり娘でもある秘書官 オーリス・ゲイズ三佐の親子であった。

レジアスは背後のモニターに浮かんだ武装隊の撮影した家康や政宗、幸村達の映像を背に、その表情をきつく歪ませていた。

 

「……奴らは一体何者だ?」

 

レジアスは苦虫を噛んだような表情で、オーリスに問いかけるとオーリスは淡々とモニターに家康達に関する情報を記したモニターを映し出す。

 

「黄色い服を着た男の名は 徳川家康。先日ミッドチルダ市内第十八番地区でのガジェットドローンの鎮圧現場に突然現れて、その後民間人協力者として機動六課に臨時入隊している模様です。他の者達に関する情報はまだ入っていません」

 

「臨時入隊だと? 六課からは『民間人を保護している』程度の報告しか受けていないが…」

 

レジアスは訝しげながら尋ねた。

その口調には明らかな苛立ちが含んでいる事を感じさせたが、オーリスは顔色一つ変えずに報告を続ける。

 

「…恐らく八神部隊長の指示の下、情報を隠蔽している可能性があります。ですが、本局の人事部はこれを了承済みとの事です。恐らくは本局のハラオウン提督やロウラン提督の後ろ盾があったものと思われます」

 

その報告を聞いて、レジアスの苛立ちは表情にまで明確に浮かび上がってきた。

 

「小娘が! 小賢しい真似を! …にしてもこの徳川家康なる男や他の連中も、見たところ魔導師ではないようだが…一体、如何にしてこれだけの戦闘能力を持てるのだ?」

 

「それについては我々も把握しかねます。ですが、民間人協力者としてでなく“臨時入隊”という形をとっているという事は、彼らの戦闘能力は相応のものかと…そうでなければ、あの八神二佐がわざわざ本局に根回しを行ってまで、かの者達を六課に置きたがるという合点がいきません」

 

「フン! 自分達の戦力になりそうなものは、極力自分達の手元に置こうというわけか……本局(うみ)の連中が考えそうな事だな」

 

レジアスはイライラした様子でそう皮肉りながら、窓ガラスに拳をぶつける。

 

「連中が何を企んでいるやら知らんが…土に塗れ、血を流して地上の平和を守ってきたのは我々だ! それを軽んじる本局(うみ)の連中や蒙昧な教会連中に、奴らに媚びを売ることしか考えていない下院の魔法至上主義者共…そのうえ“元犯罪者”の取り仕切る外様部隊なんぞに、これ以上私の膝下でいいようにされてたまるものか! 何より、最高協議会は我々の味方だ。そうだろう?オーリス?」

 

「はい。そのとおりです長官」

 

オーリスはポーカーフェイスを崩すことなく事務的な挨拶と共に頷く。

 

「いいか。今度の査察までに、この民間人協力者達の事について重点的に調べろ! 何か、連中のスネを叩けるネタが隠してあるはずだ!…そして、なんとしても奴らの鼻を明かし…」

 

レジアスがそう指示を送っていたその時――――

 

「あの~、ちょっとお尋ねしたいのですがぁ…“レジアス・ゲイズ”ってのは、アンタかい?」

 

「―――誰だ!?」

 

不意に部屋の隅から声が掛かり、レジアスは瞬時に後ろを振り向く。

するとそこには紅蓮色を基調とした奇妙な戦装束に身を包み、双刀を携えた茶髪の軽薄そうな青年が立っていた。

 

「貴様!? 一体、何者だ! いつの間に入ってきた!?」

 

謎の侵入者の登場に、声を荒げて叫びだすレジアス。

それでも、青年は軽い調子を崩さずに語りかけてきた。

 

「あ~…どうもすんませんねぇ~。何しろ、俺あんまこの世界の事まだよくわかんないッスよ。しかもこちとら、無理矢理転送されて来たもんだから、挨拶しようもなくて…」

 

「何をわけのわからない事を言っている?! 貴様は誰だと聞いているのだ!? 地上本部防衛長官のオフィスに無断で入るなど…」

 

「おっ!? するとアンタがレジアスってオッサンかい? いやぁ、こんな肉付きの良すぎるおっさんが一軍の将とは、『時空管理局』って組織も案外体たらくなんだなぁ」

 

「なんだと!?」

 

青年の軽口にレジアスが墳怒の表情を浮かべた。

 

「あっ! 余計な事言っちゃいました? すんません!じゃあ、今のは無しで! 俺は別に喧嘩売りに来たわけじゃないんッスよ。ちょいとアンタの“お友達”からの「伝言を届けて欲しい」ってお使い頼まれただけッスから」

 

「“お友達”?」

 

青年の言葉に眉をひそめるレジアスに対し、青年は懐から取り出したメタル製の小皿程の大きさのディスクを足元に置き、真ん中にあったスイッチを押して起動する。

すると、ディスクから光が照射され、レジアスやオーリスの前で、白衣姿の男の姿を等身大で投影させた。

 

《やあ、レジアス中将。ご無沙汰してるね》

 

「す…スカリエッティ!?」

 

ホログラム映像で現れた男…ジェイル・スカリエッティから気障な笑顔を向けられ、困惑と驚きに歪んだ顔を浮かべるレジアス。

その反応が面白かったのか、陰湿な笑みを浮かべながらスカリエッティは語りかける。

 

《久しぶりの再会を記念して少し世間話でも…っといいたいところだが、私も生憎忙しいものでね…》

 

「何を考えている!? 広域指名手配犯の貴様がこんなところに堂々と連絡など寄越せば、どうなるかわかっているはずだろうに!!?」

 

レジアスは部屋に他に人間がいないか必死に確認をしながらスカリエッティを咎めるが、スカリエッティは余裕の笑みを崩そうとしなかった。

 

《では、手短に用件を終わらせる為にも単刀直入に言わせていただこう。今日この時をもって、貴方と密かに交わしていた“盟約”について、一切を破棄させて頂こう。即ち、貴方との関係もこれまでだ。今後は私への一切の交渉・干渉を断絶させていただきたい》

 

「何っ!?」

 

自分が密かにスポンサーとして支援してきた者からのまさかの宣告に、焦りと怒りの両方の感情が込み上げてくるレジアス。

長年、有能な戦力の本局への一極集中化と、それに伴う地上本部の戦力不足に憂いでいたレジアスは、広域指名手配犯であるスカリエッティとある “密約”の下、彼の違法とされる数々の技術・兵器の開発、研究、運用を黙認するだけでなく、密かに研究資金の横流しなどを行っていた。

全ては地上本部の人材不足を解決させる為…レジアスは許されない事とわかっていながら、“悪魔”の手を借りる事を選んだのだった。

その為、自分が見放しさえしない限り、目の前に立つ男は自分を裏切らない…そう信じていたレジアスに投げかけられたのは衝撃的な一言だった。

 

《正直、私もいつまでも一定の金しか寄越さない貴方の事は辟易していたのでね…そろそろもっと味方につけて理のある者とつながる方が、よほど合理的であると気づいたのだよ》

 

「ふざけるな! 今まで、私がなんのために貴様の違法な研究を支援してきたのだと思っているのだ!! それに、この私や最高評議会の後ろ盾も無しに管理局から逃げ切れるとでも思っているのか!?」

 

レジアスは目の前に浮かぶのがホログラムである事を忘れ、今にもスカリエッティに詰め寄らんばかりの気迫で問いかける。

だが、その時、スカリエッティのホログラムの前にもうひとり、ホログラム映像の男が現れた。

黒がかった紫色の鎧甲冑を纏った銀髪の男は、これがホログラム越しの会話である事を知ってか知らずか…レジアスの顔を見るなり、手にしていた長刀を引き抜いて、そのまま一閃した。

ホログラムの刃はレジアスの身体を斜めに走った。これが実体を伴っていれば、確実にレジアスは一刀両断にされていたであろう。

 

「んな…!?」

 

《黙れ…拒否は認めない。“奴”を組織の一角に迎え入れ、“奴”の力を借りている者を下に置いている貴様ら“時空管理局”は、すべて“奴”と同罪! つまり私の断ずべき敵である!!》

 

ホログラムであった為、当然かすり傷一つ負っていないが、それでも男の放つ殺気にレジアスは膝が震え、その様子を見ていたオーリスも恐怖のあまりにその場に崩れこむ。

 

「や…奴とは誰だ…! い…一体、貴様は誰だ?!」

 

《私の許可もなく無駄口を叩くな………》

 

銀髪の男は冷たい眼差しを投げかけながらそれだけをいうと、フッと踵を返しながら姿を消した。

 

「あ~あ。三成様ってば、やっぱり出てきちゃったかぁ。まぁ、家康の身を寄せてる組織のトップと話すって話が上がった時点でこうなる事は予想できたけどさぁ…」

 

銀髪の男の事を知っているのか、あれだけの殺気を目の当たりにしてもさほど気にしていないように青年が言った。

するとスカリエッティも、何故か面白おかしそうに含み笑った。

 

《驚かせたのなら謝ろう。私の新しい“同盟相手”を率いるのは少々血の気の多い御仁でね。 貴方達もこれから苦労する事になるでしょうが、同情しますよ。それでは、またお会いする機会がある時まで、ごきげんよう》

 

そう言って、ホログラムのスカリエッティは姿を消した。

映像が消えたのを確認すると青年はさっと投影していたディスクを回収する。

 

「まぁ、そういうわけでスカリエッティはこれから俺ら“豊臣”と手を結ぶ事になったのでそこんとこよろしく。 あっ! ついでに言っときますが、今の銀髪の御方は『豊臣』の大将 石田三成様。俺はその左腕に近し、島左近。また、いつかアンタらと戦になった時によく耳に入る名前になるかもしれないから覚えておいてね♪」

 

青年…左近はレジアスに向けて、軽い感じでそう言い放つと、そのまま部屋を出て行こうとする。

 

「待て!? 豊臣とは一体なんだ!? 一体、貴様らはスカリエッティと組んで何を企むというのだ!?」

 

レジアスの言葉を受けて、左近は歩みを止めると、レジアス達の方へ軽快な笑顔を浮かべたまま振り返った。

 

「いやぁ~、正直俺もよくわかんないッスよね~。三成様ってば、なんでまたよりによってあんな変態野郎と手ぇ組んじまったのか。まぁでも…」

 

不意に左近の顔から笑顔が消える。

 

「三成様が誰と手を組もうがそんなもん関係ねぇ…俺はあの人の近くであの人の力になり、そして、あの人が許さない全てを叩きのめす…」

 

すると、今まで朗らかだった左近の声が急に低く、威圧的な声へと変わった。

 

「アンタ達も三成様の “許さないもの”になるのなら…その時はこの俺が容赦なく斬り捨ててやるから覚悟しな……まぁ、せいぜいあの人に目をつけられないように気ぃつける事だな」

 

そう忠告を残し、左近はドアを開けて、部屋を出て行った。

 

「くっ………セキュリティー!!不審人物だ!取り押さえろ!」

 

レジアスは叫びながら男の後を追って部屋のドアを開ける。

しかし…

 

「!?……居ない!?」

 

ドアの先に広がる廊下に、男の姿はどこにもいなくなっていたのだった。

すると腰を抜かしていたオーリスが恐る恐る立ち上がり、恐怖に震えたような表情でレジアスに聞く。

 

「ど…どうしましょう? 今直ぐに各組織に警戒するように進言した方が…」

 

「バカな事を言うなオーリス!!」

 

だが、レジアスはムキになりながらオーリスに向けて怒鳴りつける。

 

「そんな事をしてみろ! 私がスカリエッティと繋がっていた事が公になる! そうなると今までの我々の努力が水の泡だ! いいか! 今起きた事は絶対に他言無用だ! 忘れろ! あれは悪い夢だったのだ!!」

 

レジアスは、必死に自分に言い聞かせるようにそう叫ぶのだったが、スカリエッティと共に現れたあの銀髪の男と自分達の前に現れた青年…2人がそれぞれに見せた殺気を間近で感じたレジアス達の脳裏に根付いた恐怖心は、その後もしばらく拭いきれる事はなかった。

 

 

 

「三成様! 左近! 只今、戻りました!」

 

所変わってここは、スカリエッティのアジト内―――

長く複雑に入れ込んだ薄暗い通路の真ん中に展開した魔法陣から現れた左近の帰りを、三成と皎月院が出迎えた。

 

「…あぁ。ご苦労だったね。レジアスの狼狽える顔は、なかなか滑稽だったよ」

 

皎月院がそう愉快げに話す隣で、三成は相変わらず冷たい表情を少しも崩さず呟いた。

 

「フン…あの程度の子供騙しの小技に震え上がる男がこの世界の将か…秀吉様が見たら、さぞ呆れられるであろう…」

 

「そうそう。やっぱり一軍を率いる長には相応の器ってもんがあるでしょうに! 例えば…三成様とか!」

 

そう言っておどけてみせる左近に向かって、三成は氷刃のような眼差しを投げかけながら一蹴した。

 

「私に余計なゴマすりなど無用だ! 左近! 無駄口を叩く暇があるなら、次に与えられし貴様の役目を果たせ!」

 

「は、はい! すんませ~~~~ん!!!」

 

左近はブルッと身震いさせながら、一礼して、慌てて通路奥へと駆けていった。

その姿を見送りながら、皎月院は三成に語りかけた。

 

「相変わらず遊興のわからない男だねぇ。もう少し、自分の懐刀を優しく扱おうと思わないのかい?」

 

「フン…あれは遊興に浸りすぎている…もう少し自分の立場というものを考えて、厳かに動く事を覚えるべきだ」

 

三成はそういうなり、薄暗い通路を左近が去った方向とは逆の方へと歩み始めた。

 

「どこへ行くんだい?」

 

「瞑想だ……このまま、貴様といればまたスカリエッティめのつまらぬ戯言を聞かされるに決まっている」

 

振り返らないまま、三成は暗い通路の奥へと消えていった。

三成が見えなくなったのを確認すると、フッとどこか嬉しそうに鼻で笑う皎月院。

 

「全く…まるで水と油みたいな主従だねぇ」

 

皎月院が懐から煙管を取り出し、それに火をつけながら三成と左近をそう評していると、彼女の背後に再び魔法陣が展開される。

そこから現れたのは一基の輿と、それに乗った全身に包帯を巻いた男…大谷吉継である。

 

「あぁ、ごくろうだったね刑部。それでどうだったかい?」

 

皎月院が問いかけると大谷は面白がるような声で話し出した。

 

「うたよ。やはり主の思惑通りになったぞ」

 

大谷の言葉を聞き皎月院の口元が軽く吊りあがる。

 

「伊達、それに真田が現れ、徳川やあの機動六課なる者達と合流を果たした。やはり生粋の武人である奴らを誘き寄せるにはガジェット1000体は格好の餌だったようだな」

 

「フン…あんな単刀直入に戦う事しか脳のない猪共にはこの程度の餌で十分と思ってたけど…まさかここまで上手くいくなんて思っても見なかったよ」

 

高笑いしながら政宗や幸村達を嘲笑う皎月院。

第五航空監視塔襲撃はすべて皎月院による策であり、すべてはミッドに飛ばされていた政宗達戦国武将達を一箇所に呼び集める為であった。

そんな中、作戦の全容を知っていた大谷はある疑問を浮かべる。

 

「してうたよ…貴公は何故伊達のみならず真田までも徳川に合流するように仕向けたのだ? 真田は元より我ら西軍の将ではないか?」

 

大谷が問うと、不敵な笑みで返す皎月院。

 

「だからこそじゃないか。あの愚直な真田の次男坊の事だ。合流したとはいえ、家康や伊達と素直に共闘するとは思えない。恐らく小競り合いを起こすのは確かだろうね。まずは連中への挨拶代わりにそこを突こうと思う。真田が家康を倒してくれるのならそれでよし。万が一真田が家康と手を組むというのなら、“裏切り者”として家康共々消してしまえばいいだけの事…」

 

皎月院の提言する策に、大谷が納得したかのような頷きを見せる。

 

「フフフ…主もなかなかの食わせ者よのう…うたよ…」

 

「それ、アンタが言える口かい? 刑部」

 

不敵に笑いあう二人。

その周辺には不穏な空気が漂いかけた、その時だった。

 

《大谷様、皎月院様。ドクターがお呼びです。研究室まで来て下さい》

 

二人の前にホログラムのモニターが投影され、そこに薄い紫の髪の女性が現れる。

スカリエッティ配下の戦闘機人集団『ナンバーズ』の1番でスカリエッティの秘書的な存在でもあるウーノだ。

 

戦闘機人―――

それはスカリエッティがレジアスの支援の下、開発した違法研究のひとつで、機械の身体を持つ人造生命体…いわいるサイボーグのようなものの総称だった。

 

「あぁ。すぐに行くと伝えろ」

 

大谷はそれだけを言うとモニターを切って通信を無理矢理遮断した。

 

「まったく… 鉄の塊の人形ごときが、人間様に偉そうに指図するなんてこれ以上に不愉快な事はないねぇ」

 

純粋な人間ではないウーノ達『ナンバーズ』を不快に思っている皎月院は不服そうに語る。

口調はできるだけ穏やかなものを選んでいるが、その言葉からは明らかな憎悪が感じられる。

 

「まぁそう言うでない、うたよ…アレらも所詮は人だと信じ仮初の身体で仮初の生を生きている“ままごと”ぞ。そう哀れんで見れば、愛おしさも感じようぞ…ヒッヒッヒッ…」

 

フォローしているように見せかけて悪態をつきながら大谷は皎月院と共にスカリエッティの下に向かった。

 

 

スカリエッティの研究室―――

 

「すばらしい!!魔法を一切使わずにこのような力を持つとは……戦闘機人の素体にすればさぞ強力な兵となることだろうな!」

 

スカリエッティはモニターに映った政宗、幸村、小十郎、佐助の姿を見て感激の声を上げる。

その様子をどこか呆れると共にバカにしたような目つきで見つめる大谷と皎月院。

 

「お気に召したのであれば嬉しいぞ。スカリエッティ。 我らも博打に打って出ただけの事はある」

 

「あぁ、私も君達にガジェットドローンを1000体借したのは正解だったみたいだね。まさかこのようなデータが手に入るとは…」

 

スカリエッティが喜びを露わにしつつ、モニターを制御するキーボードをいじっていると、モニターに『ディバインバスター・アボンド』をガジェットに打ち込むスバルの姿が映される。

 

「はて?こやつは?」

 

「あぁ、機動六課のメンバーの一人“タイプゼロ”さ。 聞いた話だと徳川家康に直々に訓練を受けているとか…」

 

「「徳川に?」」

 

ほぼ二人同時に聞き返す大谷と皎月院。

ちなみに『タイプゼロ』に関してはあえて聞かない事にした。

 

「あぁ、なんでも今の技も徳川家康の指導を受けて習得したものだそうだよ」

 

「ふぅん。さしずめ…『徳川の弟子』ってところだねぇ」

 

皎月院が冗談のつもりで話すが、直後それに反応するかのように怒鳴り声が部屋に響き割った

 

「なにぃ!? 家康の弟子だと!!」

 

怒りの叫び声が背後から聞こえ、皎月院をはじめとする部屋に居た全員が声のする方へと振り返ると、そこにはいつの間にか瞑想から戻ってきた三成が、憎悪に駆られた表情を浮かべ今にも刀を引き抜かんとしていた…

その言葉は、最も聞かれたら困る人間の耳に入ってしまった。

 

「おや? いつの間に戻ってきたんだい三成?」

 

「黙れ! それより今の話はどういう事か説明しろ!」

 

「い…石田様…お怒りを鎮めてくださ…」

 

激しく激昂しながら皎月院に詰め寄ろうとする三成に、ウーノは凶気に震えながらも彼の傍に寄り、なんとか宥めようとする。

だが三成はそんな彼女の喉元に、非情にも刀を突きつけた。

 

「!?」

 

「人形風情が…私に触るな!!」

 

三成が一喝するとウーノは恐怖なのか怒りなのか判らない震えを感じながら黙って後ろへと下がった。

三成は刀を抜いたまま皎月院へと詰め寄る。

 

「どういう事だ!? うた! 家康の弟子というのは!?」

 

「言葉通りだよ。徳川の奴、随分この世界に馴染んでるみたいで、挙句弟子までとっちゃったわけさ。しかもあんな子供をさぁ」

 

三成の凶気を前にしても全然動じない様子の皎月院は、モニターに映った楽しそうに話す家康とスバルを眺めるが、三成は怒りの捌け口代わりに刀を勢いよく足元地面に突き立てた。

 

「家康め…! 私に殺される前に徳川家の後継者でも作り置くつもりか!!!」

 

三成が声を張り上げると共に、三成の身体から黒いオーラが部屋に放たれ出し、その影響で部屋にあったあらゆる電子機器が爆発し、カプセルなどのガラスでできたものは、ひびが走ったり砕けたりした。

普通の人間であれば、その覇気で失神するであろう圧力の中、皎月院は臆することなく三成に近寄り、なだめるようにその顎に手を当てた。

 

「落ち着きな三成。アンタがそういうと思って、手は打ってあるよ。そろそろ西軍(わちきら)の中から適当な刺客を送ってやってもいいんじゃないかい?」

 

皎月院の誘惑するような妖艶な口調に、風船がしぼむように三成の奮い立った怒りが引いていく。

 

「……貴様らに任せる! ただし…家康を殺すのはこの私だ! それを重々忘れるな!!」

 

三成が叫びながらも了承したのを見て、スカリエッティは愉快げに煽る。

 

「フフフ…皎月院殿は本当に三成君の扱いに慣れているのだね。これだけの狂馬の手綱を握るのは容易ではないだろうね」

 

「スカリエッティ…貴様、その二枚舌を三枚に下ろされたくなければ、余計な口は慎む事だな!」

 

三成がそう吠えた時、スカリエッティの前に展開していたモニターに通信が入る。

スカリエッティがモニターに通信相手の映像を投影すると、それは紫がかった青色のショートヘアの髪の女性…ナンバーズの3番で戦闘隊長的存在であるトーレからであった。

 

「トーレ。どうしたんだい?」

 

《ドクター。左近殿との共同戦線の結果、黒田殿を発見しました。我々が石田方の使いだと話したら少々抵抗してきたので、多少致傷を加えましたが大事には至っていません》

 

「わかった。では予定通り、連れてきたまえ」

 

スカリエッティはそう言ってモニターを切った。

すると彼の会話を聞いていた大谷と皎月院がおかしそうに笑いだす。

 

「黒田もバカだねぇ。無駄に抵抗したところで私達豊臣の軍下からは逃れられないってのに」

 

「まったくよ。のう三成。これで官兵衛も我らの手の内だ。我が軍の準備は確実に整いつつある」

 

「まさか刑部。あのバカ一人に残りの“人形” 共の調教を任すつもりか?」

 

ウーノを睨みながら三成が聞くと、大谷は「まさか」と首を振る。

 

「多少使える人形は別として、他の使えぬ人形共は“西海の鬼”にでも預けるつもりぞ。官兵衛みたいなバカだけに物を教えさせれば、役に立つ人材も腐らせるだけだ」

 

「ククク…それ言えてるねぇ」

 

大谷の言葉を横で聞いていた皎月院は笑いだし、三成も微かに嘲りの笑みを浮かべる。

一方そんな彼らを他所にウーノはスカリエッティに耳元でささやいて警告する。

 

「ドクター。やはり彼らと手を結ぶのはやめた方がいいと思います。彼らは普通の人間ではありません」

 

「そうだともウーノ。彼らは普通の人間や魔法使いとは違う。今までの人間や魔法使いとは異質の力を持った者達だ。だからこそ今回の計画に際して、手を結ぶに値する存在であるのだ」

 

「ドクター。そういうわけではなくて、普通じゃないのは彼らの内面的なもので…」

 

忠告にまったく耳を貸さないスカリエッティを必死に説得するウーノ。

そんな彼らの様子を物影に隠れて聞いている一人の少女がいた。少女は隙を見て、そっと部屋にあったドアのひとつから外へと出て行った。

 

 

部屋を出た彼女は、大分離れた場所にある廊下で一人先程部屋で聞いた会話を思い返していた。

右目に眼帯を付け、銀色の長い髪の小柄な少女…ナンバーズの5番 チンク。

ナンバーズの中でも年長組と新米組との間に挟まれ、双方から信頼され、誰よりもナンバーズの事を想っている彼女は、三成達の会話を聞き、この先の自分達の命運にただならぬ不安を覚えていた。

 

「私もウーノと同意見だ…奴らは今まで出会ってきた人間達とは明らかに違う……何が目的なのか知らないが、おそらく“同盟”というのも表面上だけ…実際には私達は奴らの傘下…否、道具といった方がいいかもしれないな…」

 

チンクがそう確信づいたさっきの大谷の一言を思い出す。

 

「“使える人形と使えない人形”……いくら私達『戦闘機人』が人間ではないとしてもあの言い方は腹が立つ!」

 

チンクは怒りの表情を浮かべながら一人叫び声を上げた。

 

「とにかく……ドクターが警戒しない以上、この私がなんとしても妹達を守って…」

 

「おいおい。穣ちゃんがこんなところで、なに一人で叫んでんだよ?」

 

「!?…誰だ!?」

 

突然背後から声を掛けられチンクが振り返ると、そこに居たのはボサボサの銀髪に紫色の眼帯が左目を覆った、上半身は派手な布を巻き付けただけの半裸姿で巨大な碇のような形をした銛みたいなものを持った男だった。

 

「……誰だ? お前は?」

 

「おっと。スカリエッティのオッサンから俺の事聞いてないのか?」

 

「何の話だ?少なくともお前のような明らかに不審な男の事など私は何も聞いてないが…」

 

いつでも攻撃できるよう持ち武器である投げナイフ『スティンガー』を構えながら話すチンクに、男はため息をつく。

 

「やれやれ。大谷の野郎、こんな面倒なガキの子守りなんざ任せやがって。めんどくせぇなぁ」

 

「?…お前、何言って…!?」

 

そこでチンクは先ほどの大谷の言葉をもう一度思い出した。

 

――『多少使える人形は置いといて、他の使えぬ人形共は“西海の鬼”にでも教育させる事にするつもりだ』―――

 

「!? お前…まさか…『西海の鬼』なる奴か?」

 

「おっ!? 俺のふたつ名を知ってやがるとは…大したもんじゃねぇか嬢ちゃん」

 

男は不機嫌そうに話すと、男は碇型の銛を構え直すと改めてチンクに向かって言い放つ。

 

「そうよ。俺は人呼んで“西海の鬼神”…長曾我部元親よ!!」

 

 

ナンバーズの9番 ノーヴェは眉間にしわを寄せて不満の表情を浮かべていた。

その原因は目の前に立つ一人の男にあった……

 

「というわけで、今日からお前らの教官兼大将となった。人呼んで『西海の鬼』…長曾我部元親だ!よろしくな!!」

 

銀髪に紫色の眼帯が左目を覆った、上半身は派手な布を巻き付けただけの半裸姿で巨大な錨みたいなものを持った男が無駄にいい笑顔を浮かべながら挨拶をした。

それに対してノーヴェと一緒に並んでいたナンバーズのメンバー…水色の髪を肩ぐらいまで伸ばした少女、ナンバーズの6番 セイン、赤い髪を後ろに束ねた少女、11番 ウェンディ、そして茶色の髪を後ろで細く縛った少女、10番 ディエチがそれぞれ唖然とした表情で元親を見つめていた。

 

「えっ…あの…話が唐突過ぎて何の話なのか全然わからないのですが…」

 

ディエチが恐る恐る元親に聞くと、元親の横で話を聞いていたチンクがため息を吐いて元親に注意する。

 

「長曾我部。いきなりこんな説明ではわかるわけないだろ。もっと判り易く一から説明しろ」

 

「なんだよチン公。俺は長ったらしい説明はしたかねぇんだよ」

 

「そうかも知れんが……ってか『チン公』ってなんだ!?」

 

「えっ?名前がチンクだからチン公って呼ぶことにしたんだが…嫌か?」

 

「嫌に決まってるだろ!!」

 

元親とチンクのやりとりを見て、さらにイライラしだすノーヴェ。

ノーヴェは普段から常にイライラしている事が多く、他の姉妹にもいつも攻撃的に接するが、チンクにだけは素直に接し、姉の中では一番慕っていたのだった。

その為、そのチンクがいきなり現れた見ず知らずの男と話しているのが気にいらなかった。

 

「あの…それで、この人が教官になるってどういう事?」

 

埒が明かなくなったのかセインがチンクに聞くと、本題を思い出したチンクは軽く咳払いをして説明し出した。

 

「まぁ私もさっきドクターに聞いてきたばかりなのだが…最近我らと手を結ぶことになった石田三成とその一味の事はお前達も知ってるだろ?」

 

「石田三成? あぁ、こないだドクターが新しく同盟を組んだ『豊臣』とかいう軍団のボスの事だね。あの面白い髪型したおっかない兄ちゃん!」

 

「なんか…雰囲気から普通の人って感じはしなかったよね?」

 

セインとディエチは口々に三成に対する第一印象を述べる。

 

「長曾我部はその石田の同盟相手の一人で、長曾我部軍という海賊集団を率いている長だ。戦闘の腕も確かだが、何より兵器の開発に長けているらしい」

 

「へぇ~。海賊の親分っスかぁ~。かっこいいっス!」

 

ウェンディが目を輝かせながらそう言うと、元親は少し得意気な態度を取る。

その様子を呆れた様子で見つめながらチンクが続ける。

 

「ドクターの話だと、これから私達ナンバーズは、石田の率いる軍の将達と合同で作戦を遂行していく事になる。だからこそ彼から教えを受けて、彼らにしかない戦術を身につけて、同時に自分の実力を強化していく。その為に長曾我部が今日から私達の教官となったっというわけだ」

 

「そう言う事だ…いやぁ、やっぱ長々と説明すると疲れるなぁ」

 

「全部私が説明したんだ!!」

 

またしても元親のボケにチンクがツッコむやりとりを見て、ノーヴェは表情をさらに強張らせる。

一方でチンクからの説明を聞いたセイン、ディエチ、ウェンディは納得したような表情を浮かべる。

 

「そう言う事なら私は別に文句ないよ。だって今までずっと女所帯だったし、面白くなるかも」

 

「私もOKっス!だって海賊の親分が教官って事は私達海賊の手下って事じゃないっスか!」

 

「いや、そういうわけじゃないんだが…」

 

セインとウェンディはあっさりと元親を了承する。

 

「うん。折角教えてくれるのだったら、私も無理に断るつもりはないよ。少なくとも元親さんは悪い人じゃなさそうだし」

 

ディエチもそう言って了承した。

これで晴れて元親はチンク達の教官に…っと思ったが…

 

「じゃあさっそく西海の鬼流の兵士育成法の…」

 

「あたしは納得できねえ!!」

 

ついに我慢が限界に来たノーヴェは大声で協力を拒絶する。

そんな彼女にウェンディが横から「あっ!初めて喋ったっス」とメタフィクション的に茶々を入れる。

 

「ノーヴェ。いきなり怒鳴るのは失礼だろ」

 

「冗談じゃないよチンク姉! こんなズガズガ勝手に上がりこんできて、訳のわかんねえ事話して、仕舞いにはコイツがあたしらのボスだぁ!?

納得できるわけないよこんなの!こんなふざけた奴の言う事なんか聞けるか!!」

 

ノーヴェは怒鳴りながらチンク達を説得する。

 

「よく考えてよチンク姉!そもそもあの石田とかいう奴とその仲間の奴らだっていけ好かない連中だってチンク姉だって言ってたじゃない!!コイツはその石田の仲間の一人なんだよ!コイツだってどうせ碌な奴じゃないさ!!」

 

「ノーヴェ!言い過ぎだよ!まだこの人の事をよく知らないのにそんな事言ったら…」

 

ディエチがそう言ってノーヴェを止め、話を聞いていたチンクやセイン、ウェンディ達も元親の方へ心配そうに目をやる。

すると元親は…

 

「……カーッハッハッハ!! 俺をここまで罵る女は初めてだぜ!!」

 

怒るどころか、逆に大笑いし始めた。

両手でお腹を押さえ、元親は良い笑顔で笑いこけている。

元親の反応に、チンク達は呆気に取られる。

 

「………んな!? テメェ!あたしをバカにしてんのか!?」

 

そして、一緒に呆気に取られていたノーヴェが我に返るとさらに声を張り上げて元親に怒鳴りつける。

 

「まあ、確かに急に現れて『今日から俺が大将だ』なんて言われちゃ、拒絶したくなるのも無理はねぇな。

でもあいにく俺も大谷の野郎からお前らの事を徹底的に鍛え上げろって言われてるからな。お前だけ外すわけにはいかねぇんだよ」

 

笑っていた状態から、元親は急に真面目な表情で語りだす。

急激な変わりように、誰もが付いていけなかった。

 

「じゃあこうするか。今から俺と勝負をしな。もしお前が俺に頼らず自分の力でこの先やっていけるって言うなら、それを俺に見せてみるこったな!一本でも取ったら、お前は俺の訓練から外してやるよ」

 

自信に満ちた表情でノーヴェに告げる元親を睨みつけながら、拳を握りしめるノーヴェ。

 

「随分自信あるみてぇじゃねぇか…面白ぇ! 海賊だろうが鬼だろうか関係ねぇ! このあたしがぶちのめしてやる!」

 

「お…おいノーヴェ! 長曾我部! さすがにそこまでする必要は…」

 

チンクは元親とノーヴェを止めようとするが、それよりも早く、2人は部屋を出て行った。

 

「うわぁ~、なんかやばそうっス!」

 

「行ってみよう!」

 

ウェンディとセインはそう言って、2人の後を追った。

 

「チンク姉。私達も…」

 

「あぁ、仕方ないな。まったく『豊臣』とかいう連中にはロクな奴がいないな…」

 

ディエチに促されてチンクも元親とノーヴェの後を追う事にした。

 

 

スカリエッティのアジト・実戦訓練用ホール。

 

 

「覚悟はできてんだろうな?」

 

「おぅよ。どっからでもかかってきな」

 

ガンを飛ばすノーヴェに対し、元親は余裕な態度で答える。

 

「うわぁ…めっちゃ余裕ありあり…」

 

「良い度胸してるっスねぇ…」

 

ノーヴェのやんちゃさを知るセインとウェンディは元親の態度に感心を抱く。

 

「テメェ、馬鹿にしてんのか?!」

 

「おいおい。まだお喋りか?早く始めようぜ」

 

「!…おもしれぇ、だったらさっさと決めてやるよ!」

 

ノーヴェは腕にスバルのリボルバーナックルに似た固有装備『ガンナックル』を装備してファイティングポーズを取り、いっそう激しい剣幕で元親を睨む。

元親も碇槍を構え、ノーヴェをじっと見つめる。

 

「鬼に挑む事…後悔すんなよ?」

 

「するわけねぇだろ!!」

 

ノーヴェはそう叫ぶと、足に装備したマッハキャリバーに似たローラーブレード型の固有装備『ジェットエッジ』を起動させ、一直線に元親に向かって突進していった。

 

「うおりゃあああああああああああああああ!!!」

 

「せいやあぁぁぁ!!!」

 

突き出して来るノーヴェの拳を碇槍で軽々と防ぐ元親。

 

「なに!?」

 

「その程度でこの『鬼』の首を取ろうなんざ…甘いんだよ!」

 

「うわあああああああああああああああああ!!」

 

元親はそう言ってノーヴェの拳を弾くと、槍先に炎を纏わせた碇槍を振るい、ノーヴェを吹き飛ばした。

 

「「「「ノーヴェ!」」」」

 

二人の戦いを見守っていたチンク達が思わず声を張り上げる。

元親の態度や雰囲気からして、ノーヴェは元親に勝てないと予想していた4人だったが、まさかいきなり派手に吹き飛ばされるとは考えても見なかった。

それは、ノーヴェ自身も同じだった。

 

「ぐっ……!? テメェ…化け物かよ…?」

 

目前にある元親へ向け、ノーヴェは皮肉交じりで罵る。

彼女の顔は意地でも負けるかと、汗で濡れていた。

 

「化け物は今更だな。俺は『西海の鬼』なんだぜ? 鬼は化け物って相場が決まってんだよ」

 

元親はノーヴェの吐いた皮肉を気にも留めず、微笑を浮かべて返した。

その態度を見てノーヴェの表情にさらに怒りが巻き起こる。

 

「テメェ…絶対ぶっ潰す!!」

 

ノーヴェはそう叫ぶと、少しよろけながらも立ち上がる。

 

「ノーヴェ! よせ! もう勝負はついたぞ!」

 

「いや…まだ全然始まってもねぇよ!チンク姉!!」

 

チンクは声を張り上げてノーヴェを止めようとするも、ノーヴェは元親に向かって一気に駆け出し、その顔面目がけて風を纏った拳を打ちだそうとする。

しかし…

 

「甘いぜ!!」

 

「!?…うわああああああああああ!!」

 

元親はその場で飛び上がると、碇槍の鎖を身体に引っ掛け、そのままの体勢でノーヴェに向かって勢いよく蹴りつけた。

彼の固有技『[[rb:十飛>とび]]』だ。

再び吹き飛ばされ、地面に転がるノーヴェ。

 

「ぐっ………まだまだ!!」

 

それでもノーヴェは降参せず、元親に向かって駆け出していく。

さすがにこれには元親も心配になって来た。

 

「おい。そろそろ諦めたらどうなんだ?」

 

「ふざけんな!誰がテメェなんかに降参するか!!?」

 

もはやヤケクソとしか言いようのない口調で怒鳴るとノーヴェは再び元親に向かって駆け出した。

 

 

 

 

十分後…

 

「はぁ…はぁ…」

 

「おい。もういい加減に…」

 

「このおぉぉぉぉぉぉお!!」

 

土に塗れ、地に倒れ付していたノーヴェは、再び立ち上がって元親に殴りかかる。

だがノーヴェの戦い方はもはや戦いではなくケンカとしか言いようのない大雑把な動きになっており、当然ながら元親は簡単に碇槍で受け止めると、彼女を弾いて押し戻した。

 

「あう!」

 

ノーヴェは地面を転がり、いっそう土塗れになる。

 

「嘘…」

 

「マジすか…?」

 

ノーヴェは前線要員の中ではかなり優秀な部類に入る戦闘機人だ。

だが、そんなノーヴェが子供のようにあしらわれている。

セインとウェンディは自らの目を疑い、何度も自分の手で目を擦った。

 

「お前なぁ、もうそれじゃ戦いじゃなくてただのケンカだぞ?よくそれでまだ俺に挑む気があるよな」

「当…然だ…テメェなんかに…!」

 

ノーヴェは「絶対に許さない」そんな目で元親を睨みつけた。

そんな彼女の目を見た元親は『ある出来事』を思い出した…

 

 

**

 

「な……なにがあったんだ?………」

 

四国のとある港…

長旅から戻った元親達『長曾我部軍』を待っていたのは、あまりにも予想外の光景だった。

焼け野原となった町に、徹底的に破壊しつくされた自身の開発していたカラクリ兵器…

そしてその惨状のいたるところに転がる四国の留守を守っていた長曾我部軍の兵士達。

 

「これは…一体誰が…」

 

「アニキィィーーーーーー!!大変です!破壊されたカラクリの傍にこれが!!」

 

まさかの光景に言葉を失っていた元親に追い打ちをかけるように、部下の一人がある物をもってくる。

それを手に取った元親は驚愕する。

それは葵の御紋が描かれた軍旗…つまり徳川軍の軍旗であった。

 

「これは!?徳川軍の!?…って事はまさかこれをやったのは……家康!?」

 

刹那、元親の脳裏に家康との思い出が全て壊れていくような錯覚を感じた。

同時に元親の中で何かが沸き起こる気が感じてきた。

それは…家康への憎悪だった。

 

「家康……俺は…お前を信じたからこそ、お前の天下への道を応援してたのに……家康……絶対に許さねえぇぇぇーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

暗雲の立ち込める空へ向かって元親の怒りの叫び声が上がった…

 

 

―――

 

「…家康……」

 

「こっ…の…余所見すんな…」

 

「やめだ、やめだ。こんな戦いもううんざりだ」

 

「!? なん…だと?」

 

立ち上がったノーヴェは目を丸くする。

 

「お前のせいで嫌な事を思い出しちまったんだよ…」

 

「っざけんじゃねぇぞ…好き勝手に意見変えやがって…勝ち逃げなんか…させるかよおぉぉぉお!!」

 

ノーヴェは再び元親に向けてダッシュし、拳を振り上げる。

だが…

 

「…!」

 

「がっ…はっ…」

 

振り向きざまに元親に碇槍の柄で思いっきり腹部を殴られ、ゆっくりと地面に沈んだ。

 

「「「「ノーヴェ!?」」」」

 

チンク、セイン、ウェンディ、ディエチはノーヴェに駆け寄り、彼女を抱き起こす。

 

「ノーヴェ!大丈夫!?」

 

「しっかりするっス!」

 

「…ディ…エチ…ウェ…ウェン…ディ…」

 

心配そうにノーヴェの顔を覗き込むディエチとウェンディ。

 

「傷は浅いぞ!」

 

「しっかり!」

 

チンクとセインも傷口を見て、ノーヴェを心配する。

 

「チンク姉…セイン…」

 

 

「クッ! 長曾我部! お前!!」

 

チンクは元親の上着を掴む。

 

「いくらノーヴェがしつこいからって…ここまでする必要はないだろ! よくも大事な姉の妹を…!」

 

「やめてよ…チンク姉」

 

「!?」

 

物凄い剣幕で元親に喰いかかるチンクを制したのは、セイン、ウェンディ、ディエチに介抱されているノーヴェ自身であった。

 

「ノーヴェ…」

 

「あたしがこんなになったのは…あたしが…弱くて意地っ張りだったからだよ…別に…コイツは悪くない…」

 

「ッ…」

 

ノーヴェの意外な言葉に、言葉を失うチンク。

 

「だから決めた…あたし…コイツの訓練を受ける…」

 

「!?」

 

「ホントっスか!?」

 

ウェンディが聞くと、ノーヴェは深く頷く。

 

「お前…これからあたし達に教えてくれるんだろ? お前らの戦い方って奴を……だったら…その戦い方を学んで…もっともっと…強くなって…そして…いつか絶対お前から一本取ってやる!」

 

「へッ…そりゃ楽しみだな」

 

元親はそう言うとノーヴェの方へ振り返り、そっと手を差し伸べる。

 

「……なんだよそれ?」

 

「立つのはつらいだろ?手貸してやるよ」

 

「んな!?べ…別にいらねぇよ!!誰がテメェなんかに…」

 

ノーヴェがそう言うと、元親はフッっと笑顔を取り戻した。

 

「気にいったぜお前。名前…なんていうんだ?」

 

「…………ノーヴェだ」

 

元親が名前を聞いてくると、ノーヴェはそっぽ向きながら小声で答えた。

 

「そうか……よろしくな。ノーヴェ」

 

「ったく…やっぱテメェ、イケすかねぇ奴だぜ」

 

ノーヴェはそう言うと、ウェンディ達に支えられながら立ち上がって医務室へと向かった。

彼女達が出て行くとホールには元親とチンクだけになった。

 

「……さっきはすまなかったな。ちょっとやり過ぎちまって」

 

「いや………私こそ少し取り乱し過ぎた。すまなかった…」

 

元親が先程の事を謝ると、チンクも申し訳なさそうに謝った。

 

「なぁ長曾我部。お前…過去に…何かあったのか?」

 

「…………」

 

チンクは先ほどの元親の態度の全容を聞いてくる。

すると、元親はしばらく黙りこんでいたが、やがてノーヴェ達の後を追って歩き出し、数歩進んだところでチンクに振りかえってこう告げた。

 

「まぁ、その話をするのはもう少し先って事にしようじゃねぇか。もっと互いに仲良くなってから」

 

「……なんだそれは?」

 

チンクが呆れながら話しつつ、元親の後に続く。

 

「お前は本当に変わった奴だな。長曾我部」

 

「お前もな。妹の為にあんなに怒るなんて随分家族思いなんだな。チン公」

 

「だからその呼び方はやめろ!」

 

言葉を交わしつつ二人はホールを出て行った。

 




今回の改変点はやはり、序盤のレジアスの前に現れた人物を三成から左近に変えたところです。
いやぁ、左近はほんとこういう役目とかにも使えて本当に小回りがいいですね(笑)
後半の元親とノーヴェの会遇と対決についてはほとんど手加え無しです。
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