リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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幸村の一人の武人としての誇りと葛藤からはじまった、家康との決闘…

お互いに魂の籠もる一撃を放った時、共に熱き猛将の精神を継いでいた二人はお互いに一定の心の区切りを付け、そんな武士(もののふ)達の姿に、若き騎士見習い エリオ・モンディアルはいたく感銘を受けつつあった。

しかし、そんな彼らに突如、西軍からの刺客 後藤又兵衛の凶刃が襲いかかる…!

政宗「リリカルBASARA StrikerS 第十二章 Let's Party!!」


第十二章 ~黒田軍襲来 そして”虎”は共闘する~

スカリエッティのアジト―――

両脇の壁にカプセルの並んでいる果てしなく続く長い通路を、皎月院は無表情で歩いていた。

 

「待て。うた」

 

不意に背後から声をかけられた皎月院はその歩みを止めて、ゆっくりと振り返る。

そこに立っていたのは三成であった。

 

「三成、珍しいじゃないか。アンタからわちきに声をかけてくるとはね」

 

「……官兵衛達を家康の元に嗾けたそうだな?」

 

三成の問いかけに微かに片眉を持ち上げる皎月院。

 

「おや? 察しが早いねぇ。刑部からでも聞いたのかい?」

 

「戯言はいい。私の問いに答えろ。なぜ今、官兵衛を行かせた?」

 

三成の鋭い視線を受けながら少しも動揺せずに皎月院は話し始めた。

 

「なぁに。ちょっとした“腕試し”ってやつだよ。徳川が惚れ込んだ『機動六課』って連中がどれほどのものかもっと調べてみたいと思ってね…下手なガジェット・ドローンよりも生身の武将をけしかけた方がより良い“でぇた”がとれるんじゃないかと考えてね…黒田達はその“餌”さ」

 

「左様な汚れ仕事……あの又兵衛なる浪人上がりならいざしらず、よく官兵衛なんぞに上手く働かせたものだな」

 

三成は感心とも呆れともとれる声で言った。

 

「なぁに。ちょいと、わちきが(まやかし)を使って精製したこの鍵をちらつかせたら、すぐに食いついてきたよ。全く、手枷の鍵さえ見れば、それが本物か確かめるって事もしないなんて…天下の“二兵衛”の片割れも随分とお粗末なもんだねぇ」

 

そう言いながら、皎月院が取り出した手枷の鍵を三成の前に翳して見せると、鍵はフッと煙の様に灰になって散ってしまった。

官兵衛が推測していたとおり、皎月院は最初から手枷の鍵など持っていなかった。官兵衛に見せたのは妖術で作った偽物であった。

 

「官兵衛程度の凡物を、半兵衛様と同じ天秤に図るな! それよりも、奴らに一体何をしろと命じたのだ? もしや…「家康を討ち取れ」とでも命じたとは言うまいな?」

 

三成は氷刃の如き眼差しで皎月院を睨みつけながら言った。

 

「安心しな。わちきが「事と次第では仕留めろ」と命じたのは真田だけだよ…まぁ、後藤は随分張り切っていたからね。熱が入りすぎて家康にまで手にかけないか、心配だけど…」

 

三成の怒りを刺激しかねない内容の台詞を、何ともないように涼しい顔で告げる皎月院。

石田軍の中で、三成に対して、下手をすれば殺されかねないような内容の話や言葉をここまで遠慮せず、且つ恐れる事なく伝えられるのは、三成と長い交友関係のある大谷を除けば、彼女だけである。

 

「後藤も後藤でバカなものだよ。成功した暁にはアンタに代わって、“五刑衆”の主席の座が欲しいだとさ。よくもまぁ身の程も弁えずに言えたものだよ」

 

皎月院はあからさまにバカにするような口調で言いのける。

 

「「かえるの子はかえる」ならぬ「アホの家来はアホ」だねぇ。どうする? 帰ってきたら不敬の罪で斬首するかい?」

 

「フン…下卑た浪人上がりの繰り言など相手にする価値もない。第一…巧妙しか目のない浪人風情が容易く討てる程、家康は軟ではない」

 

三成の口から出た家康への意外な評価の言葉に、皎月院が一瞬呆気にとられたように目をぱちくりさせたが、すぐに不遜な笑みを浮かべて話しかける。

 

「ほぅ? 憎き相手なのに、随分と褒めるもんだねぇ、それもかつての“親友”の好ってやつかい?」

 

刹那、三成の眼の色が変わった。

左手に握っていた長刀を引き抜くと、皎月院に向けて勢いよく振るう。

皎月院はそれを難なく避け、三成と距離を取った。

 

「貴様!…私の前で斯様な戯言を申すと、貴様から斬首するぞ!!」

 

「お~怖い怖い。ほんの冗談じゃないかい。 本当に戯れってものを知らないねぇ」

 

皎月院がやれやれと、溜め息を吐く。

三成は長刀を鞘に収めながら、吹雪の如き一瞥を向けながら、吐き捨てた。

 

「勘違いするな! 私は…私以外の人間が家康の首を斬る事を断じて許可しないだけだ! 例え、それが西軍の人間であろうとも、うた…貴様であろうとも! 家康を殺すのはこの私だ! それを忘れるな!!」

 

三成はそう言い残すと、そのまま踵を返し、再び暗闇に向けて歩き出した。

 

「おや? 独断で作戦を指揮した事は咎めないのかい?」

 

「言ったはずだ…貴様と刑部のやる事には疑う余地はないと…」

 

振り返る事なくそれだけを言うと、薄闇の中へと歩き去っていった。

それと入れ替わるようにして、妖術で浮遊する輿に乗った西軍筆頭参謀 大谷吉継が、三成が消えた方向とは別に闇の中から現れた。

 

「やれやれ…ちと戯れが過ぎるぞ。うたよ…」

 

今のやり取りを一部始終見ていたのか、呆れたような様子で眉を顰めていた。

 

「盗み聞きかい刑部? アンタも趣味が悪いねぇ…」

 

「全く…ぬしの三成への遠慮のなさは、毎度見ていて寿命を縮まされるぞ。いくら三成に近い者と申せ、奴の琴線に触れるような物言いは慎んだ方が身の為であるぞ。うたよ…」

 

大谷の苦言に、皎月院はいたずらっぽく…されど邪悪な笑みを返した。

 

「あれだけ愚直な男もそうそういるもんじゃないからね。だからこそ、ついからかいたくなるのさ…あの“凶王”様には…」

 

「……案外、ぬしも左近と変わらぬか…否、それ以上に遊興に浸る類なのかもしれぬな」

 

どこまでも不敵な態度を崩さない皎月院に、大谷は呆れたように頭を振った。

それから2人は連れ立ち、薄暗い通路の中を歩き出す。

浮遊する輿の上で大谷は、皎月院の仕掛けた此度の計画について話し始めた。

 

「しかし…あの(官兵衛)の事よ。素直にぬしの指示に従うとも思えぬが…?」

 

「勿論それも想定の内さ。大方、わちきの“鍵”の細工に気づいて、このままわちきらに使い走られるより、徳川に取り入って西軍(わちきら)を倒そうとでも考えようとするだろうね…」

 

「それで、かの又兵衛なる功名に逸る浪人を付けて行かせたと…?」

 

「…豊臣にとって目障りな奴、役立たずな奴を“間引き”するには実に効率的なやり方だろう?」

 

皎月院は冷酷な笑みを浮かべながら告げる。

表面上は西軍に従う傍ら裏で自分達さえも出し抜こうと考える官兵衛や、そんな官兵衛の思惑を無視し、功名に固執して勝手に動く又兵衛の性格をすべて計算した内で、此度の“斥候”役として2人を抜擢したものであった。

 

「刑部。アンタもいつも言ってるだろう? 戦で決して勝つ事のできない軍とは、“兵の少ない軍”でもなければ、“有能な武将のいない軍”でもない。“兵の統率がとれない軍”だってね」

 

「…ヒッヒッヒッ。“統率”か…確かに官兵衛に欠けた言葉であるな…」

 

大谷は黒々とした笑みを浮かべた。

 

「おそらく今頃は、後藤が勝手に動きだして、黒田が「小生の計略が狂った」と慌てふためいている頃だろうね。どうせだったら、もっとアイツの計略を狂わせてやろうと、ちょっとした“援軍”も贈ってやったさ」

 

「なるほどのぉ……ぬしもなかなかに底意地が悪い女子(おなご)よ……ぬしにいいように弄ばれる官兵衛と、いいように利用されているとも知らぬ又兵衛にも、少しくらいは同情してやるか…」

 

そう言いながらも、大谷は露骨に嘲りの念の籠もった含み笑いを送るのであった。

 

 

 

同時刻 機動六課隊舎・訓練所―――

 

幸村、家康の口から出た名前に、なのは、フェイト、はやては僅かながら聞き覚えがあった。

“黒田官兵衛”と“後藤又兵衛”―――

確か、自分達がまだ故郷である第97管理外世界“地球”の日本・海鳴市に住んでいた時に視聴していた歴史ドラマでそのような戦国武将の名前を聞いた記憶があった。

家康や政宗、幸村と違い、詳しくは思い出せなかったが、恐らくは目の前に現れたこの男もまた、家康達の世界から来た戦国武将である事を察する事ができた。

 

かたや、家康と幸村は目の前に現れた男…後藤又兵衛についてよく知っていた。

彼が官兵衛配下として西軍に従事し、既に多くの東軍方の兵達を屠った事、忍顔負けの神出鬼没ぶりで各地に現れては標的の武将を襲う流浪の将として恐れられる事……そして、狙った“獲物”は地の果てまで追いかけていく程に執念深い危険な武将である事を…

 

東軍総大将という立場である自分もまた、又兵衛の“獲物”の一人である事を自覚している家康は自ら、前に進み出た。

 

「まさか…こんな場所でお前と出会う事になるとはな…」

 

「ごきげんよう徳川家康、そしてさようなら! 俺様の立身出世の為に…死んで下さいよぉ~ッ!?」

 

又兵衛がそういうなり、再び手にした三日月型の奇抜な形の刀…“奇刃”を家康に向けて投げつけた。

咄嗟に、両腕を構えて、守りの姿勢を取る家康。

 

「家康殿!?」

 

その前に幸村が咄嗟に家康を庇うように前に出て、二槍の片割れを突き出して、回転しながら飛来してきた奇刃を弾き飛ばした。

弾き返されたそれをキャッチしながら、又兵衛は忌々しげに舌を打った。

 

「チィッ! やっぱり、あの花魁女の読み通りだったってわけか。テメェ…豊臣を裏切って徳川につくつもりかぁ? 真田幸村さんよぉ!?」

 

「ま、待たれよ後藤殿! 某は決して裏切りなどとは――――」

 

幸村は必死で弁明しようとするが、又兵衛はそれを鼻で笑い返す。

 

「裏切ってんじゃありませんかぁ! 現在進行形でぇ! まぁ…別にいいけどぉ。 だってねぇ…ここでアンタら2人纏めて(バラ)しちまえば、俺様の手柄も二倍になりますからぁぁ!!」

 

奇声ともいえる叫び声を上げながら、又兵衛からは殺気が溢れ出す。

 

「ご、後藤殿ッ! まずは某の話を―――」

 

又兵衛の殺気に押されそうになりながら、幸村はどうにか又兵衛を説得しようとするが、それを後ろから佐助が引き止める。

 

「…よしなよ大将。 あの殺気…どうやら奴さんはもう俺達の事を完全に敵と認識しちまったみたいだ。いくら大将が言い訳したところで、話なんか聞いてくれないって…!」

 

「猿飛の言う通りだ。真田…もう奴に、お前の言葉は通じそうにもない…」

 

天下分け目の戦の以前から何度か狙われた事のあった家康は、こうなってしまえば口で説得するのは無駄であるとわかっていた為か、既に拳を構えて臨戦態勢をとっていた。

すると、今まで傍観していたなのは達もそれぞれデバイスを取り出し、動き出した。

 

「家康さん!」

 

スバルが待機形態のマッハキャリバーを片手に握りしめながら、家康の隣に立つ。

すると、又兵衛は鬱陶しげに顔を顰めた。

 

「なんだぁ…(あま)やガキんちょが、ウロチョロと…鬱陶しいんだよ!」

 

「あんまり女子供だからってナメない方がいいよ! 何兵衛さん!!」

 

スバルがマッハキャリバーとリボルバーナックルをセットアップさせ、バリアジャケットを装着しながら、又兵衛に向かって言い放った。

その勝ち気な台詞に又兵衛の陰気な顔つきが苛立ちで更に歪む。

 

「ク・キ・ケヤァ~~ッ!? だ、誰が『何兵衛』だぁぁ!? ま・た・べ・え! だって言ってるだろぉ~~がッ!!又兵衛ッ! ぶっ殺しますよオマエぇッ!?」

 

又兵衛は立ち上がるともう一度、奇刃を投げつけようと構えてきた。

家康とスバルは又兵衛の攻撃を迎え撃つ態勢を整えた。

だが――

 

「又兵衛えぇぇぇッ!! お前さん、なに勝手な事してるんじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

一触即発の空気の場に、悲痛な叫び声を上げながら、新たな男…黒田官兵衛が乱入してくる。

枷に繋がれた鉄球を引きずりながら、長く伸びた前髪で両目が隠れたその顔には焦りの表情と、冷や汗とも単なる鉄球の重みによる汗ともわからない大量の汗が浮き出ていた。

 

「官兵衛ッ!? やはりお前もこの世界に来ていたのか!?」

 

またしても意外な乱入者に家康は、驚きの声を上げた。

 

 

黒田官兵衛は焦っていた…

東軍総大将 徳川家康を味方につけて、憎き三成、大谷らを倒す為の起死回生の好機と見た自分の優れた慧眼とそれを活かすべく考案した此度の策を持ってすれば、天下分け目の戦までの不幸続きな人生を一気に挽回できるものと考えていたものが、それをあろうことか、自分が信頼する家臣の手で潰される事となるとは…

 

(なぜじゃ…なぜここで家康達を襲ってしまうのじゃ…!? 家康と虎子(真田)の決闘が決着し、改めて、家康が真田を仲間に勧誘するところで、小生らが出向いて、三成達の企みに関する情報を餌に、真田、家康共に説得し、あわよくば味方につける…そういう算段じゃったのに…!!)

 

 

「又兵衛えぇぇぇッ!! お前さん、なに勝手な事してるんじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

物見櫓の柱の骨組みの上にいる又兵衛と、それ向かって対峙する家康達…一触即発の状況の中に割り込んでいきながら、声を張り上げた官兵衛に、家康達もその存在に気づく。

 

「官兵衛ッ!? やはりお前もこの世界に来ていたのか!?」

 

思いもよらなかった人物との再会に家康は目を丸くしながら、叫んだ。

すると、この状況が理解できずにいた六課の面々を代表してはやてが尋ねてきた。

 

「家康君、ゆっきーも、あの人の事知ってるん?」

 

「如何にも運の無さそうな奴だな…」

 

ヴィータが官兵衛の姿を見比べながらボヤいた。

家康は構えた拳を解かないまま説明した。

 

「あの手枷を付けた男の名は“黒田官兵衛”…今、襲ってきた“後藤又兵衛”の主で、ワシと同じ、元豊臣軍傘下 『黒田軍』の将だ」

 

「黒田…官兵衛…? 確か地球で、そないな名前の戦国武将が主役の大河ドラマやってたっけ…?」

 

又兵衛だけの名前ではしっくりこないでいたはやても、官兵衛の名前を聞いた事でようやくその人物像が切れ切れながらも思い出せた。

確か、戦国有数の優れた知略の持ち主で、あの『関ヶ原の戦い』において、あわよくば(なのは達の世界の)家康をも出し抜いて、天下を手に入れられそうだったほどと言われている。

だが、目の前にいる目元が隠れる程に伸びきった前髪に、薄汚れた袖のない陣羽織…さらに何故か両手を拘束している巨大な鉄球の付いた手枷を嵌めた大男からは、左様な偉人的な雰囲気はお世辞にも感じられなかった。

 

「秀吉が死んだ後に、旧豊臣派の大名達を調略して独自に天下を狙おうとした咎で、三成の手で九州に送られたと聞いていたが……どうしてお前までもここに…?」

 

「そこにいる“なんとか兵衛”とかいうカマキリ野郎を引き連れて現れたって事は…西軍として、家康を討ちに来たつもりか?」

 

 

家康に続き、政宗の発した問いかけに官兵衛は狼狽えながら、必死で弁明する

 

「ち、ちち、違う!! 小生達は別にお前さん達を倒しにきたつもりはねぇ! 唯、話し合いたいんだよ?」

 

「話し合いだと?」

 

必死に弁明する官兵衛に対し、既にバリアジャケットに着替えたシグナムが怪訝な顔つきで聞き返した。

 

「そ、そうだ! 甲斐の虎子(真田)! お前さん、家康と手を組む気なんだろう? だったらどうだい!? 小生らもそれに一口乗らせてもらって…」

 

「思いっきり手下に奇襲させておきながら、よくもぬけぬけとそんな見え透いた嘘が言えるな?」

 

バリアジャケットを装着しながらグラーフアイゼンを構えながらヴィータが敵意全開で言い放った。

すると櫓の上で話を聞いていた又兵衛も、見下すような目つきで官兵衛を睨みつける。

 

「おい阿呆官! テメェまだそんな阿呆丸出しな事言ってんのかよ!? コイツらは俺様の豊臣直臣へ出世する為の大事な土産として(バラ)すんだからよぉッ!!」

 

「うるせぇ! 前から思っていたが、お前さんいつも偉そうにしてるが、お前さんは本来、小生の“家臣”だろうが!! 家臣ってのは、自分の私怨や野心を殺してでも主君の意に報いてこそのもんなんだよ! だから、小生が東軍につくと決めたなら、お前さんも黙ってそれに従え!」

 

「い・や・だ・ねッ! 絶対に嫌だね、阿呆官!! 俺様はここで敵大将(徳川)裏切り者(真田)をぶち殺して…豊臣直臣に躍り出てやるんだよぉぉぉッ!!」

 

「なんだと!? この分からず屋兵衛!」

 

「黙れ、阿呆官!」

 

「いやいや、お前さんのが阿呆だ!!」

 

「いやいやいや、テメェのが阿呆だろ!!」

 

「いやいやいやいや―――ッ!!」

 

敵の面前にも関わらず、口論を始める官兵衛と又兵衛に、家康達武将陣もなのは達魔導師陣も思わず唖然としてしまう。

 

「な、なんや…? 急にケンカはじめよったで…?」

 

「あの人達って…主人と家来じゃないの…?」

 

「…あの2人。全然噛み合ってないみたいだね…?」

 

今の今まで緊迫した空気がいきなり、マヌケな雰囲気に変わった事に戸惑いながらボヤくはやて、なのは、フェイト。

政宗、小十郎に至っては完全に呆れているとしかとれない、冷ややかな眼差しで黒田主従の痴話喧嘩を眺めていた。

 

「おい、小十郎…なんなんだ? アイツらは……?」

 

「今の黒田軍は、黒田が九州へ送られた後に急ごしらえで集めた即席の手勢と聞き及びましたが…まさかこれ程までに統率がとれていないとは…」

 

自分達に集中する冷たい視線に耐えきれなかったのか、官兵衛は気を取り直す様に頭を豪快に振り回すと、改めて家康の方を向いて交渉を続けた。

 

「と、とにかく聞いてくれ! 又兵衛はともかくとして、小生は決してお前さん方と事を構えに来たわけじゃねぇんだ! 勿論、タダでお前さんの仲間に入れてくれとも言わん! 小生の話を聞いてくれるなら、小生も三成達の―――」

 

だが、官兵衛の言葉が終わらない内に、なのは達の元に隊舎司令室からシャーリーの切迫した声の念話が入った。

 

《ロングアーチより緊急連絡!南南西から未確認の飛行物体が訓練所に向かって進行中! まもなく、そちらに到達します!!》

 

「なんですって!?」

 

念話の内容を聞いたなのは達が、身構える間もなく、海の方からガジェットドローンⅠ型の大編隊が飛来してくる。この間の第五航空監視塔に現れた数の半数程ではあるが、広大な空に浮遊するガジェット達の大編隊はこないだとは違う意味で壮大に見えた。

 

「が、ガジェットドローン!?」

 

「訓練用のモーションじゃない…って事は…これは本物!?」

 

「でも何時の間に、こんな数のガジェット達が…」

 

なのは、フェイト、スバルが話している内にガジェットの大編隊はあっという間に訓練所を取り囲んでしまった。

 

「つべこべ言ってる場合ちゃうで! 皆、いくで!!」

 

「「うん! セットアップ!」」

 

はやての号令を合図に、なのは、フェイトは、それぞれレイジングハート、バルディッシュ、シュベルトクロイツを起動し、バリアジャケットに着替えると向かってくるガジェット数機に向けて魔力弾を打ち出す。

 

「皆も早くバリアジャケットを!」

 

「は…はい!」

 

フェイトの呼びかけで、ティアナ達も素早くそれぞれデバイス、バリアジャケットを起動させる。

全員がバリアジャケットとデバイスを装備し、政宗、小十郎、佐助もそれぞれ愛武器を手にとった。

 

「う~ん…こないだ程…ってわけじゃないけど、それでも結構な数を揃えてきてるね」

 

「そんな…誰がこれだけの数をここへ連れてきて…ッ!?」

 

大手裏剣を構えながら冷静に状況を分析する佐助に対し、ティアナは突然の敵編隊の襲撃に動揺を隠せずにいた。

一方、ヴィータはその目星がすぐについた様で、官兵衛の方をギロリと睨みつけながら言い放った。

 

「官兵衛さんとやらよぉ、早速、ボロが出たな。下手くそな猿芝居でアタシらを騙そうとしやがって…」

 

予想外の“援軍”の登場に動揺していた官兵衛は、ヴィータの眼差しを受けて更に狼狽する。

 

「えっっ!!? こ、これは…ち、違う!! このカラクリ兵器共(ガジェットドローン)は小生とは関係なくだな…!?」

 

「あぁ、言い訳なら後でゆっくり聞いてやるよ。テメェのその手枷の付いた両手にもうひとつ拘束魔法(バインド)を付けてからな!!」

 

官兵衛は必死に弁解しようとするが、ヴィータはグラーフアイゼンを官兵衛に向けながら逮捕を宣言し、既に家康達も全員が官兵衛を敵意の目で見ていた。

一方、又兵衛はこの状況を見て、面白がるようにケケケケッと邪悪な笑い声を上げた。

 

「いいねぇ! 大混戦! こうなったら徳川や真田だけじゃねぇ…ここにいるテメェら、みぃんな纏めてぶっ殺して、俺様の出世の糧にしちゃいますよぉぉ~~~ッ!!」

 

又兵衛は奇声を上げながら、櫓から飛び降りると、地面を四つん這いで走り、家康達に向かって駆け出してきた。

それに続くように、ガジェットドローン達も一斉に動き出してきた。

 

「Let'rock! Show Get up!」

 

政宗は溜まっていたものを発散させるように、自分に向かって飛来してきたガジェットを5、6機連続で斬り捨てた。

 

「Han!今日は俺の六爪も出番無しだと思ってたが、こいつはとんだSurprise partyだぜ! 感謝するぜ! 暗の官兵衛さんよぉ!」

 

政宗は嬉しそうに叫ぶと、今の喜びを表現するかのように全身に電流を流した。

 

「やれやれ…俺はこんなの望んでなかったけどね…」

 

佐助はめんどくさそうに呟いたと思うと、急に任務時の冷徹な表情に変わる。

 

「かの“二兵衛”の片割れに狙われちまったとあれば、もうつべこべ言ってられないからね…」

 

そう言いながら、残像さえも残さない速さで、巨大手裏剣を振るうと、周囲に浮遊していた複数機のガジェット達を一瞬で斬散させた…

 

「あっ、あれっ…これ…もう完全に…小生達…敵になっちゃってる…ッ!? 敵になっちゃってるの!?」

 

「うおりゃああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「はあああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

完全に自分の思惑とは真逆の展開になってしまい、慌てふためきながらも、どうにかここから状況を打開させる術はないかと頭を回転させようとした官兵衛であったが、その前にヴィータを先頭に、フェイト、シグナム、小十郎がそれぞれ地面を蹴り、愛デバイス、愛刀を振りかぶってきた。

 

「ぬぉっ!?…だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

官兵衛は慌てて、枷に繋がれた鉄球を抱え、4人の一撃から身を守る…が流石に4人分の攻撃となれば、防御に徹してもかかる圧力は凄まじいものである。

ましてや、向かってきたのは所謂“武闘派”と目される4人。その一撃、一撃は余計に重くかかってきた。官兵衛は悲鳴を上げながら鉄球と一緒に地面を転がっていく。

 

「畜生っ! 小生の計略が狂ったぁぁぁ!! なぜじゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

まるでピンボールの如き速さで転がり、近くにいたガジェットドローンを何機か弾き倒していきながら、官兵衛は最早口癖といえる悲痛な叫びを上げた。

 

 

「ケーヒッヒッヒッヒッ!! 死ぃねえええええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「…っく!!」

 

又兵衛の両手に持った奇刃による変則的な斬撃や、その合間に放たれる指先が爪のように鋭く尖った手甲を纏った両手による引っかきが家康とスバルに襲い掛かり、家康は必死にそれを手甲で弾いて抵抗するも、その動きは最早獣の如く俊敏で、動きの読めない攻撃が上から下からと襲い掛かり、なかなか反撃の隙が見つからない。

 

「又兵衛! お前がワシを憎む理由はなんだ? 唯の「“東の総大将”だから」「出世昇進の為」という理由にしては、お前がワシに向ける殺意は尋常でない…! ワシも気づかぬ内に、お前を傷つけていたのか?」

 

攻撃を防ぎながら家康は尋ねるが、又兵衛は攻撃の勢いを止める事なく、鬱陶しそうに答える。

 

「……阿呆官の部下で、うだつの上がらない雑魚野郎…そんな哀れまし気な目で俺様を見てたからだよぉぉ!!」

 

又兵衛は憎悪に満ちた声を張り上げながら、乱れ斬りを続けてくる。

しかし家康が防戦に徹しているのは、その乱舞の速さだけではなかった。

 

「聞くんだ又兵衛! ワシらが今いるのは、日ノ本ではない異郷の地“ミッドチルダ”なんだ! つまり、ここでワシらが争ったところで、取れる“天下”なんかどこにない!寧ろ、関係のないこの国に住む人達を巻き込むかもしれないんだぞ! だから…ここで無駄に争うより、今は協力して日ノ本に帰る方法を模索する事が大事だと思う! 真田にもワシはそう説得しようとしていたんだ!!」

 

家康は幸村同様に、又兵衛にも自分達がここで争い合う事の無意味を説こうとしていた。

しかし、そんな彼のやさしさをも又兵衛は嘲笑い、一蹴する。

 

「“異郷”ぉぉ…? “協力”ぅぅ……? なぁんですかそれぇ? 筋金入りの阿呆だね~ 閻魔帳に載るくらいだしね~~~!!」

 

又兵衛はそう叫びながら、再び家康の首を狙って奇刃を振りかざしながら、飛びかかってきた。

 

「どぉでもいいんだよぉぉ! 俺様にはそんな事ぉ!! テメェらを(バラ)して、テメェの首を手土産に豊臣の直臣になる! そうやって俺様は今度こそ、皆に認められるようになるんだよぉぉぉぉぉ!!」

 

一瞬の隙をついた又兵衛が不意打ちで家康を蹴り飛ばすと、その背後に回り込み、肩の上に飛び乗ると、馬乗りの体勢で奇刃を首筋に当てる。

 

「…ぐぅっ…あぁっ!!?」

 

「家康さん!?」

 

周りに蔓延るガジェットドローンを打ち払っていたスバルが、家康の窮地に気づき、慌てて駆け寄ろうとする。

 

「動くんじゃねぇよ小娘ぇ。ケッヒッヒッ! 東軍総大将・徳川家康の首、もぉらったぁぁぁ!!」

 

又兵衛は狂気的な歓喜の声を上げながら、そのまま家康の喉を掻き切ろうとした。

すると…

 

「家康殿!!」

 

不意に聞こえた声と共に飛来した一本の槍が家康の肩の上に馬乗りしていた又兵衛の兜に命中する。

 

ガァンッ!!

 

「ぐぁっ!!?」

 

甲高い金属音が響き、仰天の表情を浮かべた又兵衛が宙を2回、3回と周りながら吹き飛ばされ家康の身体から離れる。

家康は、飛来してきた槍が地面に突き刺さる前に手に取ると、地面に落下する直前だった又兵衛に向かって鋭い刺突を放った。

又兵衛は咄嗟に身体を捻る事で突き出された槍の穂先を避けると同じく落下していた奇刃をキャッチし、姿勢を直しながら着地しながら奇刃を豪快に薙ぎ払ってきた。

刺突と斬撃の応酬を3、4回繰り返した後、家康と又兵衛はそれぞれ穂先と鋒を交え、競り合った。

 

「あれぇ~? 『武器を捨てた』とか言ったくせに、ちゃっかり使ってるんじゃありませんかぁ~…? それって、規則違反じゃないですかぁ~っ?」

 

「緊急事態だったからな。やむを得なかった…」

 

家康はそう弁解しながら、バックステップで距離を空ける。

そこへ槍の飛んできた方向から、その持ち主…真田幸村が駆け寄ってくる。

 

「家康殿! ご無事で!?」

 

「あぁ。助かったぞ、真田…かたじけない!」

 

家康はそう言って、幸村に槍を返した。お互い小さく頷きながら笑みを浮かべる。

それを見た又兵衛の表情は、さらなる怒りと恨みで歪んだ。

 

「真田ぁぁぁぁぁぁ!! 裏切り者のテメェはたった今、又兵衛閻魔帳第十五位に格上げだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

又兵衛は怒りの叫びを上げながら、這う様な姿勢をとると、そのまま俊敏な動きで、家康と幸村の方に接近していく。家康と幸村がそれぞれ迎撃しようと構えた。その時だった。

 

「ルフトメッサー!!」

 

突然、2人の背後から空気の刃が飛んできて、またしても又兵衛の兜に直撃する。

 

「ぐはあっ!?」

 

2度目となる転倒からすぐに姿勢を直した又兵衛は、すかさず反撃しようと奇刃を、空刃の飛んできた方向に向かって投げつけようとするが、そこへ一体の蒼い風が走り、又兵衛の目前に迫る。

 

「蒼天突き!」

 

蒼い影の正体…スバルは、又兵衛の真下に回ると、奇刃を投げようとした又兵衛に向かってスクリューアッパーを決めて、そのまま又兵衛をさらに吹き飛ばす。

 

「がはぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

二重の追い打ちを受けて、又兵衛は数十メートルの距離を吹き飛ばされ、地面に転がった。

呆気にとられる家康と幸村にスバルが呼びかけた。

 

「家康さん! 幸村さん! 大丈夫ですか!?」

 

「おぉ! スバル殿! かたじけない!」

 

「真田。礼を言うのはスバルだけじゃなさそうだぞ」

 

「えっ!?」

 

家康の言葉に驚く幸村の下に、先ほど空気の刃を飛ばして又兵衛に先制を仕掛けた人物…エリオが駆け寄ってきた。

 

「幸村さん! 大丈夫ですか?!」

 

エリオはストラーダを手に駆け寄りながら、幸村を見上げ、笑みを浮かべた。

 

「あ…あぁ。かたじけない」

 

幸村はあまり話した事のなかったエリオが自分達の助太刀に入ってくれた事に少し疑問に思いながらも、素直に頭を下げて礼を言う。

そこへ、吹き飛ばされた又兵衛が再び立ち上がった。

 

さすがに戦国の世という修羅場だらけの中を生きてきただけあるのか、あれだけの連携攻撃でも重傷とまではいかず、兜の前立てが砕かれただけであった。

しかし、これが又兵衛の怒りに完全に火を着ける事となった。

 

「クソガキ共がぁ! よくも俺様の大事な兜を傷ものにしやがってぇぇ!」

 

奇刃を振りかざしながら、怒りをあらわにする又兵衛。

その姿を見た家康が幸村に問いかける。

 

「真田。これで完全にお前も、西軍から“裏切り者”と見られたようだぞ」

 

「…………………」

 

「もしお前が決心がついたというのなら、共に戦おう。“東軍”、“西軍”の垣根無しにな」

 

家康の言葉を聞いた、幸村は静かに二槍を構え直す。

 

「家康殿…誠に勝手な事ではござるが其からのお頼み申す!? 貴殿と共に戦わせて頂きたい!」

 

「!?……あぁ! もちろんだ!」

 

幸村が頭を下げると、家康は笑みを浮かべて答えながら拳を構え、又兵衛と対峙する。

 

「私も協力します!」

 

「僕も力になれるかどうかわかりませんが…幸村さんと共に戦います!」

 

家康、幸村に並び立ったスバル、エリオがそれぞれ、リボルバーナックルとストラーダを構え、身構えた。

 

「「「「後藤又兵衛!勝負!」」」」

 

家康達の宣言に又兵衛の額に青筋が浮かぶ。

 

「うるせぇ…うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんだよおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!! どいつもこいつも、俺様を馬鹿にしやがって! 殺す、殺す殺す殺すコロスコロスコロス殺すうぅぅぅぅぅ!!!!」

 

家康、幸村、スバル、エリオと、狂乱した又兵衛の4対1の対決の幕が開かれた。

 

 

一方、又兵衛と対峙する家康達のいる場所から、数十メートル程離れた場所では、フェイト、ヴィータ、シグナムと小十郎が、官兵衛を追い詰めているところであった。

 

「ギガント…ハンマー!!!」

 

ヴィータの掛け声と共に、その手に握られた基本形態(ハンマーフォルム)の5倍程の大きさの巨槌型形態 “ギガントフォルム”になったグラーフアイゼンが縦に大きく振るわれた。

対する官兵衛はその巨槌で叩き潰される寸前、鉄球を構えて、受け止める。

 

「畜生っ! チビのくせになんて馬鹿力なんだよぉ!!」

 

官兵衛が悪態をつきながら、鉄球をドロップキックで蹴り飛ばし、グラーフアイゼンを押し返すが、同時に自身も鉄球に付いた鎖に引き寄せられそうになり慌てて、その場に踏みとどまった。

 

「紫電…一閃!!」

 

攻撃を防がれたヴィータが後ろに退くと同時に、シグナムがすかさず踏み込みながら、薄紫の炎を刀身に纏ったレヴァンティンを振り下ろしてくる。

振り下ろされたレヴァンティンから放たれた斬撃波を咄嗟に回避した官兵衛だったが、直前まで立っていた場所やその前後周囲の土地が避けるように抉られたのを見て、顔を青ざめる。

そこへ、フェイトが地表から1メートル程を滑空しながら、追い打ちをかけるように大鎌型の“ハーケンフォーム”となったバルディッシュを振りかざして、接近してくる。

 

「ハーケンセイバー!!」

 

「ぐぅっ! どわあぁぁぁっ!?」

 

バルディッシュを薙ぎ払い、金色の魔力刃を撃ち放ってきたフェイトに、官兵衛は慌てて鉄球を振り回して迎撃するが、魔力刃を弾いた鉄球は、まるでけん玉のように大きく真上に打ち上げられ、危うく官兵衛に直撃しそうになった。

咄嗟に身体を横に飛び退き、鉄球を避けた官兵衛だったが、成り行きで対峙する事になった3人の魔導師達に冷や汗が止まらなかった。

 

「な……なんなんだよ……コイツらは……!? この世界の女子供は化け物か!?」

 

息を切らしながら叫ぶ官兵衛の脳裏には、かつて一度だけ訪れた徳川軍の属領で、今と同じ様にやたらと強い女兵団がいる城を訪れ、そこの女城主から酷い目に合わされた記憶が思い出された。

(確か名前は…井伊か…紀伊か…?そんな名前だったような…)っと考える余裕もなく、フェイトの間髪入れない斬撃が連続して官兵衛に襲いかかる。

官兵衛は鉄球でどうにかその全ての攻撃を防ぎ、弾き返すが、小回りが利く素早い攻撃が得意なフェイトは、官兵衛にとって最悪の対戦相手と言えた。

 

「ほぅ。その手枷と鉄球は唯の拘束具と思っていたが、意外に武器として器用に使いこなしているのだな」

 

その様子を見ていたシグナムが素直に称賛した

戦場で生き残るには自身の持つ武器を如何に上手く使いこなすかが重要な鍵となる。

官兵衛もまた、今の武器である鉄球付き手枷を手にせざるを得なくなった経緯は不本意極まりないものであったが、それをウィークポイント以上に強力な武器として使いこなせるだけの場数と、それを生き残るだけの才覚を持った人物であるとシグナムは見抜いたのだった。

 

「うるせぇ! 小生は好きでコイツを使いこなしてるわけじゃねぇんだよ!!」

 

だが『手枷を外すこと』が自身の目的のひとつである官兵衛にとって、シグナムの称賛は皮肉としか受け取る事ができなかった。

 

「畜生っ! こうなっちまったら、もうヤケクソだ! !」

 

官兵衛が叫びながらバルディッシュを避けると同時に、一か八かの反撃として鉄球を振り回してきた。

フェイトは攻撃の手を止めると、すかさずバックステップで後ろに退き、攻撃を避けた。

交代でシグナムが一歩踏み出し、レヴァンティンで斬りかかってきた。

官兵衛は手枷で繋がれた両腕を振り下ろすと、鉄球がシグナム脳天に目掛けて直下してくる。

 

「テートリヒ・シュラーク!!」

 

だが、鉄球がシグナムに当たる寸前で割り込んだヴィータが紅いオーラの纏ったグラーフアイゼンで鉄球を打ち飛ばして防ぐと、官兵衛は思わず鉄球に引っ張れて飛ばされそうになるのを、足に力を込める事でどうにか防ぐことができた。

 

「くっ…! お前さん…玉を打つのには慣れてるみてぇだな」

 

「生憎、アタシはそんな鉄の球、かっ飛ばすのには手慣れてんだよ!」

 

ヴィータがニッと笑いながら不敵に言い放つ。

かつてなのはやはやて達と地球にいた時には、近所の老人会に混じってのゲートボールを趣味としてしたヴィータは、現在も戦闘スタイルにゲートボールの要領を取り入れるなどしていた為、槌で球を打つ事には一際の自信があった。

それを聞いた官兵衛は、ヴィータもまた自身にとっては相性の悪い相手と察したのだった。

 

「空牙!」

 

そこへ、ヴィータの援護で窮地を脱したシグナムが、官兵衛の胴体目掛けてレヴァンティンを横薙ぎに払い、横長の衝撃波を飛ばしてきた。

 

「ぐぁっ! くそぉ!」

 

官兵衛は慌てて、鉄球を引き寄せると、それを真正面に抱えて、衝撃波を防いだ。

その激しい衝撃に鉄球からは激しい火花が散る。

 

「くそぉ! 揃いに揃って相性の悪い奴らばっか相手にしないとならないなんて…ますます計略が狂った事が惜しいぞ!!」

 

「なら、俺との相性はどうだ? 天下の“二兵衛”…」

 

「ッ!!?」

 

不意に背後からかかった声に、官兵衛は殺気を抱く。

慌てて振り向くとそこには背後から小十郎が華麗にジャンプを決め、舞い上がりながら振りかぶった愛刀『黒龍』に青白い稲妻を走らせていた。

 

「月閃!!」

 

技名を唱えながら、小十郎が薙ぎ払うと、雷撃と一体化した斬撃波が官兵衛に襲いかかってきた。

官兵衛は慌てて、それを防がんとしたが、空中からの攻撃であった為、鉄球を抱え上げるのに手間とってしまい、中途半端な位置で攻撃を防いでしまった官兵衛はその反動を耐えきれる事ができず、吹き飛ばされた鉄球と一緒にまたもピンボールのように地面へと転がった。

 

「なぜじゃああああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!?」

 

悲鳴を上げながら、官兵衛は地面を猛スピードで転がり進む。

その勢いは、ぶつかりそうになったフェイト、シグナム、ヴィータが思わず飛び退いて回避せざるを得ない程だった。

 

「なんと! あんな攻撃の応用まで会得しているのか!? 黒田官兵衛…愚鈍に見えて、その実できる男なのかもしれんな」

 

「いや…単に転がってるだけにしか見えねぇけど…」

 

シグナムの天然ともとれる称賛の言葉にヴィータが横から冷ややかにツッコんだ。

 

「逃がすな!追うぞ!」

 

小十郎が指示を出しながら駆け出すと、フェイト、ヴィータ、シグナムも彼の後を追って駆け出した。




BASARAのキャラの中で何気に官兵衛さんが一番操作苦手だったりする私ですが、小説でも結構動かすの苦手だったりします…(苦笑)

改めて思いましたが…『鉄球付き手枷』使ったバトルスタイルってなんじゃそれ!?
ス◯ファシリーズの◯ーディーさんも鉄球はなかったですよ! 考えた人、目の付け所が凄いわ…ww

まぁ、キャラ自体は好きですw
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