リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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明かされたティアナの過去…

『役立たず』の汚名を着せられるという不名誉な死を遂げた兄 ティーダの無念を晴らすべく、必死に足掻こうとするティアナ…
その想いを理解しながらも、その自らを省みないやり方を危険視するなのは…
微妙なところですれ違う2人に、家康達は…佐助は……そして政宗は何を思うのか…?

元親「リリカルBASARA StrikerS 第二十二章! 野郎ども、出陣だぜ!」


第二十二章 ~なのはの真実 竜の忠言~

聖王教会病院・クラナガン総合医療センター・特別個室―――

ホテル・アグスタでの任務から数日が経過して、機動六課も一応は平穏を取り戻しつつあったこの日…

アグスタで遭遇した豊臣方の武将 小西行長との交戦の末に重症を負い、入院していたヴィータであったが、今朝ようやく退院の許可が下りたのだった。

今夜一晩様子を見て、異常がなければ、明日の朝には隊舎へと帰る事ができそうだった。

思いがけない形で隊を離れる事となり、入院中は両手のリハビリ以外は殆ど出歩けなかった事もあってフラストレーションの溜まりまくっていたヴィータにとって、この知らせは曇天の合間から陽の光が差してくるような気持ちだった。

 

隊舎に戻ったら、まずはフォワードの4人が自分のいない間に怠けてなかったかしっかりチェックしてやるか…そう考えながら、ヴィータは普段あまり読むことのないファッション誌を気晴らしがてらに読んでいた。

その時だった…

 

「やっほー! ヴィータちゃん!」

 

「退院が決まったそうじゃねぇか! Congrats!」

 

病室の引き戸が開かれ、なのはと政宗が部屋に入ってきた。

 

「なのは? それに政宗も!? お前ら、見舞いに来てくれたのかよ?」

 

「うん。ちょうど政宗さんと一緒に地上本部に出かける用事があったから、ついでにヴィータちゃんの様子も見ていこうと思って…でも、元気になったみたいでよかった」

 

ヴィータのベッドに近づきながら、なのはが安堵の笑みを浮かべた。

よく見ると、なのはは、いつものように白と青の本局制服をきっちり着こなしているのに対し、政宗は茶色の陸士部隊制服…のはずだが、ボタンは全て外し、ノーネクタイ、シャツも胸元全開…と堂々と着崩し、腰には愛武器の六爪を差した文字通り対象的な格好をしていた。

 

「ま、政宗? お前…まさかその格好で地上本部に行ったんじゃ?」

 

ヴィータが冷や汗を浮かべながら尋ねる。

すると、即座にそれを否定したのは、なのはだった。

 

「まっさかぁ! 地上本部を出るまではちゃんとネクタイも締めさせてたし、シャツもキチッとさせてたよ。まぁ、政宗さんは嫌がってたけど…」

 

「当たり前だろ? 俺はあんまりこの『陸士部隊の制服』って奴はどうも肌に合わねぇ…やっぱり何時もの甲冑具足の方がbest matchってもんだぜ」

 

「そうかなぁ? 結構、ちゃんと着ても似合ってると思うけどなぁ…政宗さんの制服姿」

 

なのはは呑気にそんな事を言っているが、もし今の政宗の格好を他の部隊員や局のお偉い様方に見られるなどすれば、問答無用で懲戒処分間違いなしであろう。

 

「まぁいいや…とにかく、政宗。ここはあたしらしかいねぇから別にいいけど、隊舎戻る時はせめて前のボタンくらいは止めろよ? クラナガン市内は管理局のお膝元で、そこら中に色んな部署の局員がいるんだから、せめて格好くらいちゃんとしとかねぇと、どこからツッコミの声がくるかわからねぇからな」

 

「Ah~…OK、OK。 肝に銘じておく」

 

ヴィータがいつもフォワードチームのメンバーを説教する時のように軽く睨みを効かせながら窘めるが、政宗は10代前半の若者ではない。

ヴィータの睨みつけを真正面から受けても、びくともしない様子だった。

 

「はぁ~…本当にわかってんのかよ…?」

 

ヴィータは溜息をつきながら、ファッション誌をベッドに備えた机に置いた。

 

「それで…ヴィータちゃん。 気持ちの方はもう大丈夫なの?」

 

苦笑を浮かべながら、なのはが話題を転換すると、ヴィータはそれを「ヘッ」と笑い飛ばして返した。

 

「腕の二本切り落とされたくらいで、このアタシが折れると思ってんのか? 転んでもただじゃ転ばねぇ『ベルカの騎士』をなめんじゃねぇぞ」

 

「…それ、ヴィータちゃんだからこそ言える台詞だね」

 

なのはは冷や汗を浮かべながら、引き気味に笑った。

ヴィータを含むはやての守護騎士『ヴォルケンリッター』は、はやてが所有していたロストロギア「夜天の魔導書」の主を守る守護プログラムであり、身体の構造自体は人間と違いはないものの、プログラムで肉体が構成されているため、年を重ねても容姿が変わることはなく、主であるはやてが生きている限りは、例え身体が滅びようとも、復活する事ができる半ば不老不死のような存在であった。実際に過去には一度、守護騎士全員が消滅した後に復活した…なんて事もあったという。

両手を切断という、普通の人間であれば例え医療技術の発達したミッドチルダにあっても、今後の人生に大きな支障が生じる事となろう大怪我を負いながらも、こうして無事に接合・回復に至ったのも、この特異な身体の構造が功を成したと言っても過言でなかった。

 

「まぁ、流石に『退院しても2、3日は過度に動かすな』って担当医の先生から釘は差されちまったけどな。アタシにとっては中々酷な言いつけだぜ」

 

「十分Happyだろうがよ。 普通、両手を斬り落とされちまったら、そんなもんじゃ済まねぇんだからな」

 

不服そうにボヤくヴィータに政宗がツッコむ。

それでも、後遺症も残らない事を知ったなのはは、ホッと安心した。

 

「しかし…まさかヴィータ相手にここまでやりやがるたぁ、『五刑衆』も相変わらずcrazyな連中だぜ」

 

政宗の零した言葉に、綻んでいたヴィータの表情が険しくなる。

 

「あぁ…単騎戦必勝のベルカの騎士がここまで圧倒されちまうなんてな…改めて、『豊臣』って連中が一筋縄でいかねぇ事がよくわかったぜ。 でも…」

 

改めて此度の敗北の悔しさが込み上がってきたのか、ヴィータは片手の接合処置が施された痕を強く握りしめる。

 

「あの“小西行長”とかいうヘビ野郎……アタシが今まで出会った敵の中でも最低最悪なくらいに胸糞の悪ぃ奴だったぜ…! まるで戦いや暴力をゲームのように楽しんでいやがった……!? あんな下衆野郎に…この“鉄槌の騎士”ヴィータが一撃さえ与える事ができなかったなんて……!!?」

 

声を震わせながら、ヴィータは然様な外道鬼畜に惨敗を喫した自分自身に対する不甲斐なさを許せないでいた。

今回の戦いではヴィータも決して油断していなかったわけではなかった…

人間相手の一対一の戦いで、ベルカの騎士が敗北するなどありえない…その通説に違わぬ程に、ヴィータ達“守護騎士(ヴォルケンリッター)”の単騎戦における勝率は、ほぼ必勝と言っていい戦果を今まで示してきた。

だから、いくら家康達と同じ世界から来た“気”の力を使う武将と言えども、せめて、腕の一本はへし折れるものと考えていた。

だが、小西行長の実力はヴィータが思っていた以上に強力であった―――そんな予想を遥かに凌駕した強さに呆気にとられた隙を突かれ、あの惨敗へと至ったのだった。

 

そんなヴィータの悔しさに同情する様に、政宗が静かに頷いた。

 

「あぁ…俺やなのはも後から映像で見たが、確かになかなかに見ていて反吐が出る様な戦い…否、“蹂躙”だったぜ…笑いながら女子供の手を切り落とす人間なんて、日ノ本でもあの野郎以外には一人しか思いつきそうにないぜ」

 

政宗は、かつて天下を手にする目前とされた“魔王”を謀反の末に討ち果たした末に忽然と姿を消した織田軍の“死神”の青白い肌と鋭く狂気的な目つきを持った顔を思い浮かべていた。

 

Snake野郎(小西行長)は連中の中でもheresyな類だが、それでも、アイツくらいの手練や猛者は豊臣方には他に大勢いるんだぜ?」

 

「あぁ。あの日、シグナムが戦ったっていう“島津義弘”とかいうバカでかい剣を振り回したジジイや、“島左近”ってユーノを攫おうとしたチンピラ野郎もそうらしいな?」

 

ヴィータは入院中に見舞いに訪れたはやてやシグナム達から見せてもらっていた映像資料から、自分の戦線離脱した後のアグスタの戦いの模様を一部始終を見せてもらっていた為、シグナムと交戦した“鬼島津”や政宗と交戦した“凶王の懐刀”についても大凡の情報は既に知っていたのだった。

 

「それだけじゃねぇ。『豊臣五刑衆』は石田や小西以外にあと3人いやがる…俺も“今”の『五刑衆』は石田以外とは直接戦った事はねぇが…噂によれば、いずれも並半端じゃねぇ猛者揃いだと聞いてる…」

 

政宗の話を聞き、なのはとヴィータは思わず息を呑んだ。

 

「…そんな…」

 

「……あんな“化け物”が、あと3人も控えてやがるのかよ…? それにその“凶王”って野郎も…そんな強いのか…?」

 

ヴィータの質問に政宗の顔が急に唇を噛み締め、顔を顰めた。

 

「……あぁ。“当事者”がこう言うのだから、違いねぇ」

 

「「えっ!?」」

 

政宗の意味深な言葉に、なのはとヴィータが反応する。

 

「“当事者”って…どういう意味なの? 政宗さん」

 

なのはが聞き返した。

だが、政宗は次に放つ言葉に、なのは達が衝撃を受けないように配慮し、直ぐに答えを言わず僅かな間を取った。

 

 

「俺は一度……石田三成に完膚なきまでに叩きのめされた事がある……それこそ今回のヴィータみたいにな…」

 

「「ええっ!?」」

 

なのはとヴィータは、政宗の予想していたとおりの反応を示した。

 

「完膚なきまでに…叩きのめされた……? 政宗さんが……?」

 

「その家康の宿敵っつぅ石田三成って野郎にか?」

 

「そうだ」

 

政宗はゆっくりと語りだした…

 

 

それは魔王・織田信長が本能寺の変に倒れ、それに取って代わるように、豊臣秀吉率いる豊臣軍が、絶大な覇の力で諸大名を屈従させ、一気に天下人の玉座の目前まで台頭。

天下統一まであと一歩に迫ったまさに豊臣の全盛期と称された時代…

圧倒的な武力と有能な傘下勢力を多数持ち合わせていた豊臣を前に、有力な対抗勢力と目された加賀の前田軍、越後の上杉軍、薩摩の島津軍が、諸国安堵を引き換えに、その勢力下へと下り、さらには安芸の毛利軍までも“同盟”という名目で豊臣に従う事を選び、豊臣の全国制覇は最早決定したも同然という状況になっていた。

そんな中、この期に及び尚も、豊臣軍に対し、明確に反旗を翻し続けている勢力が2つ残っていた。

ひとつは、小田原領主“北条氏政”率いる北条軍…そしてもうひとつが、政宗率いる奥州伊達軍だった…

勿論、最早自分達だけで豊臣に対抗しうるだけ戦力がない事は政宗自身も理解していた。

しかし、秀吉が天下をとる事だけはどうしても容認しえなかった政宗達は決死の体で、東北の地を豊臣やその傘下に下った諸国の軍勢から守りきり、秀吉の天下統一を阻む稀有な存在となっていたが、それも限界が近くなってきていた。

 

そんな中、伊達にとっては起死回生のまたとない好機が訪れる事となった。

伊達軍同様に、関東の名家としての誇りから、豊臣に屈する事を必死に拒み続けてきた北条軍に対し、ついにしびれを切らした豊臣軍筆頭参謀 竹中半兵衛が主導となり、傘下を含めた豊臣軍全勢力を動員し、北条軍の拠点 小田原に総攻撃を仕掛ける、所謂『小田原の役』が決行される事になったのだ。

それを聞いた政宗達は、この小田原攻めの混乱に乗じ、秀吉のいる豊臣本陣に奇襲をかける事で、秀吉を討ち取り、そして天下を把握しつつある豊臣に取って代わるという野望を掲げ、一路関東に向けて進軍を開始した。

だが、小田原まであと一歩と迫った時…政宗ら伊達軍はこの進撃が如何に無謀な挑戦であったのかを、嫌というほど思い知らされる事となった。

小田原の城を包囲する豊臣派の連合軍約30万人を前に何時ものように強行突破を試みようとした伊達軍は、その幾重にもかかった包囲網と、屈強なる豊臣の兵を前に圧倒され、一人また一人と次々と倒れる事となる…

これまで、自分の判断したことが自らを慕う兵達を不幸に導くなど殆どなかった政宗にとって、目の前で繰り広げられる惨劇は、思わず夢幻と現実逃避したくなるほどに凄惨なものだった…

 

奥州を出る際、主戦力の3分の2にも及ぶ5万の大軍を率いて出てきた筈の伊達軍は交戦開始から半日も経たぬ内に、その戦力は1万にも及ばぬ数にまで激減…

最早、秀吉がいるであろう小田原城に乗り込む事は不可能であるばかりか、このままここに留まれば、全滅する事さえ避けられない状況にまで追いやられる事となった……

 

「ご…5万の兵が…たった半日で1万以下に減ったの……?!」

 

「マジかよ……?!」

 

想像を絶する様な圧倒的な武力の差に言葉を失うなのはとヴィータ。

すると、政宗は自嘲する様に乾いた笑みを浮かべた。

 

「あの頃の俺は…勢いだけでなんでも突っ走っていけば、どうにかなるって本気で信じてたからな……伊達の精鋭軍5万の兵を率いれば、30万だろうが100万だろうが、所詮は秀吉(山猿)の力に怯えて従っているだけの烏合の衆の集まりなんざ容易く突破できる…そう考えていたんだ。 “あの野郎”と出会うまではな……」

 

「「あの野郎?」」

 

劣勢を知らされ、家臣から撤退を進言されながらも、どうにか突破口を切り開こうと奮闘する政宗の前に立ちはだかったのは、家康の宿敵となり、覇王亡き後に豊臣を引き継ぐ事となる“凶王”石田三成だった……

当時、『豊臣五刑衆』第三席の地位にあった彼は、秀吉から与えられた精鋭部隊を引き連れ、政宗の前に現れ、政宗は初めて相対する新手の敵に戸惑ったが、竜の誇りを掛けて、これを殲滅せんといつもの調子で勇敢に挑んでいった……

 

だがそれは大きな過ちだった…

 

三成の実力は圧倒的であり、さらにその時には政宗自身、大将としての冷静な判断もできないまでに冷静さを失っていた事も仇となり、結局、政宗は三成に一太刀も浴びせる事もなく惨敗…政宗は完膚無きまでに叩きのめされ、重症を負ってしまった。

さらに別働隊を率いていた小十郎も豊臣方についていた一人の猛将を前に、率いていた隊もろとも返り討ちに遭ってしまい、結局、小田原遠征に参加した5万の伊達軍はほぼ壊滅。

政宗は小十郎をはじめ、100人ばかしとなった僅かな敗残兵と共に、豊臣軍の追撃に怯えながら、死に物狂いで奥州へとなんとか帰還する事に成功した。

しかし、この戦いで政宗は瀕死の重症を負いしばらくの間はその養生と、大打撃を受けた奥州伊達軍の立て直しに費やさざるを得なくなり、さらにこの一件で奥州伊達軍の不敗の栄誉は一気に崩れ去り、天下統一を成し遂げた豊臣を尻目に、その勢力は一気に弱体化し、それまで掲げていた竜のプライドも一気に地に落ちる事となった…

 

「あの時…奥州へ帰るまでの、雨に打たれながら歩んだ屈辱の道は忘れねぇ…石田の野郎にやられた事もそうだが、何より悔しかったのが己のprideに慢心しきっていた自分自身だ…」

 

政宗は、六爪の1本を引き抜き、それを顔の前に掲げながら、鋭い隻眼をさらに細め、刀に映った自分の顔を睨みつける。

 

「…俺は……自分の限界を見極められなかったんだ……」

 

「政宗……」

 

普段の政宗の余裕な態度からは想像もできないような、悔しさを表情に表す政宗を見て、ヴィータは唖然とする。

 

「……自分の限界を見極められなかった人は……ここにもう一人いるよ…」

 

「えっ!?」

 

不意に聞こえる自嘲する様な重い言葉…政宗が振り向くと、そこには悲しげな表情を浮かべたなのはがいた。

 

「…どういう意味だ? なのは……」

 

政宗が尋ねると、なのははお伽話を語り聞かせるような語り口で話し始めた。

 

「昔ね、一人の女の子がいたの。その子は本当に普通の子で、魔法なんて知りもしなかったり、戦いなんてするような子じゃなかったの」

 

「……………」

 

ヴィータはこれからなのはがどんな話をしようとしているのか、察したのか、不安げな表情で見守っていた。

政宗は黙って、なのはの話を聞き続ける。

 

「友達と一緒に遊んだり、家族と一緒に幸せに暮らして…何の戦争もなく、誰かと傷つけあうような事もない…そういう一生を送るはずだったんだけど、でもたった一回のほんの小さな出会いで、すべてが変わったの。魔法学校に通っていたわけでもないし、特別なスキルがあったわけでもない。

偶然の出会いで『魔法』という力を得て、たまたま魔力が大きかっただけの9歳の女の子が、魔法と出会ってからわずか数か月で命がけの実戦を繰り返してきたの」

 

「…それって、もしかして…?」

 

政宗が確信を突く前に、なのははその答えを返した。

 

「そう、それは私…高町なのはが最初に魔法に出会い…この世界に足を踏み入れた時の話だよ」

 

 

それからなのはは、今まで語らなかった自身の過去をすべて語り出した…

 

 

当時まだ敵同士だったフェイトとロストロギア『ジュエルシード』を巡って争った『プレシア・テスタロッサ事件』―――

それから半年もしない内に起きた、同じくロストロギア『闇の書』とその主となったはやてを巡り、仲間になったフェイト達と一緒に、ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ達“ヴォルケンリッター”と熾烈な戦いを繰り広げた『闇の書事件』―――

 

「闇の書事件では私、一度ヴィータちゃんに負けちゃったんだ…」

 

なのはが、まるで子供の頃の失敗を打ち明けるかのように空元気な笑みを浮かべると、ヴィータは引け目を感じていたのか、気まずそうに目をそらした。

 

「それで…当時はまだ安全性が危うかった『カートリッジシステム』っていう戦闘技術を使用するいわば実験台になったつもりでその技能をレイジングハートに組み入れたの。

そんな調子で、誰かを救うため、自分の思いを通すための無茶を何度もしてきた…」

 

なのはは再び悲しそうな目つきになって、政宗の方を向く。

 

「だけど…そんなことを繰り返して身体に負担が生じないはずがないよね?」

 

「まぁな……魔法の事は俺にはよくわからないが、少なくともそれだけ無茶やって身体が保つとは思えねぇな……」

 

「そう…そして…事件は起きたの」

 

管理局に正式に入局してから2年目の冬―――

任務の帰り、ヴィータや部隊の数人と出かけた場所で、なのはは不意に現れた未確認体の襲撃を受けた。

いつものなのはであれば何の問題もなく、味方を守って落とせる相手だったはずだが、その時に運悪く今までの溜まってた疲労と続けてきた無茶が、なのはの動きを少し鈍らせてしまった。

その結果…悲劇は起きた。

未確認体からの致傷で、瀕死の重傷を負ったなのは、その怪我の具合はひどく、一時は飛ぶ事はおろか、歩くことすらままならないとまで言われる程のものであった…

 

「それから、必死にリバビリを重ねて私は奇跡的に回復してここまでまた元のように戦えるようにはなったんだけど…それからの私は、皆に私みたいな無茶をして取り返しのつかない事になってほしくないっていう気持ちが表れて、それが今のフォワードの皆への訓練方針にもなってるの。 『絶対みんなが元気に帰ってこられるように』って…だから、『自分の限界を越えてまでも無茶をしようとしないで』って……」

 

「なのは……」

 

「………………」

 

ヴィータが労りの眼差しでなのはを見つめ、政宗は何かを深く考え込んでいるかのように視線を落としていた。

 

「…っと、ごめんね! なんか色々と喋りすぎちゃったかな?」

 

病室の中が湿っぽい雰囲気になっているのを察したなのはは、慌てて話題を切り替え、今後の六課の方針を説明し始める。

 

「とにかく、今後は私達六課の活動もガジェットドローンやスカリエッティだけじゃなく、石田三成以下『西軍』の対策も本格的に視野に入ってくると思うから、そうなるとこれから必然的に小西行長や島左近、島津義弘のような強敵との遭遇もあるかもしれない…否、確実にあるね」

 

「あぁ…その為にもスバル達フォワードの訓練をさらに強化していくべき……っと言いたいとこだけど…」

 

「そこなんだよね…」

 

ヴィータの言葉に反応するようになのはが深刻な表情で腕を組み、悩む仕草をした。

 

「フォワードのみんなは確かにそれ努力してるし、しっかり力を付けてきてるよ。ただ…」

 

「ティアナの事か?」

 

ヴィータは、アグスタでの彼女の無謀とミスの事を思い出していた。

 

「そう。はっきり言って、今のあの子はまさに『自分の限界を越えてまでも無茶をしようとしている』状態なの…それこそ、かつての私みたいに……」

 

なのはは、そのやるせない思いを感情と言葉の双方に現していた。

 

「自由時間の自主練習では常に自分の身体を苛めるような過酷なメニューばかりやってるってヴァイス君から聞いたし、合同訓練や模擬戦の態度を見てもかなり焦りや苛立ちがある事が判る。 特にアグスタでの任務以降はさらにそれが顕著になってきて…」

 

「確かにな…入院中もシグナムやはやてが持ってきてくれたフォワードの訓練の様子を録画した映像観てたけど…確かに最近のティアナの訓練は荒れてやがるな…」

 

ヴィータがなのはを見据える。

 

「なのは。お前がアイツの事を見守ってやりたい気持ちはわからなくはねぇぞ。けどよぉ…いい加減にアイツには身体で判らせてやらねぇと、そのうち取り返しのつかない事になるぜ?」

 

「…What…!?」

 

ヴィータの忠告に、驚いた政宗がなのはの方を見据える。

なのはは、唸りながら頭に手を当てた。

 

「う~ん…そうするべき…なのかなぁ……?」

 

なのはが呟くように言った。その一言を聞いた政宗はなのはを呆れたように見つめた。

その顔にはできれば、この方法は取りたくないが、そうせざるをえない状況に対する並ならぬ葛藤の様子が伺い知れた。

だが、そんななのはに思わぬ異議が投じられる事となった。

 

「……なのは。それは違うんじゃねぇか?」

 

政宗だった。

 

「えっ!?」

 

なのはは思わず戸惑った。

なぜなら、政宗の声質には明らかに少し怒りの念が込められているように感じられたからだ。

 

「自分達の教え通りにやらないから腕尽くて解らせる…それじゃあ何か? 口で言ってわからねぇ奴には、腕尽くでも解らせようって…そういう事か?」

 

「そ、それは……」

 

「お、おい! 政宗…!?」

 

「ヴィータ。お前は少し黙っていろ」

 

「うっ…」

 

決して声を荒げようとはしていない。

だが政宗の放つ静かな迫力にヴィータもなのはも気圧されてしまった。

 

「確かにその方法も完全に間違っているとは言わねぇ。口で何度も言ってもわからねぇ野郎には最後は力づくでわからせるのが一番な時もある。 だがな……」

 

政宗が隻眼を鋭く尖らせ、なのはを見つめながら続けた。

 

「そのtimingが今だと思うならそれは見当違いだ…このあいだ、猿飛の野郎が言ってた意味がようやくわかった気がするぜ……」

 

「……どういう意味だよ?」

 

事を知らないヴィータは首を傾げるばかりだったが、なのはの脳裏にはアグスタの任務のあった夜、隊舎でティアナの過去について聞かされた時に、佐助から言われた一言が思い返されていた。

 

 

―――まずはゆっくり思い返して見る事じゃないかな? 『自分の今までの教え方が本当に正しいか?』…とかさ―――

 

 

「私の…今までの……教え方……?」

 

なのはが思い出した言葉を零すように呟いた。

すると、政宗は小さく溜息をつきながら話し始めた。

 

「なのは…お前、さっき言ってた自分のexperienceや、そこから得たteaching styleを、ティアナ…否、アイツだけじゃねぇ。 スバルやエリオ、キャロ達、forwardのひよっこ全員にちゃんと伝えたのか? 回りくどい指導とかじゃなくて“言葉”でだ…」

 

「……言葉…?」

 

なのはが困惑した表情で返答に躊躇する。

政宗の指摘するとおり、自分は今まで自分の過去にあった事や、その経験からとるようになった自分の指導方針について、フォワードチームの4人のちゃんと説明をした事は一度もなかった。

下手に言葉で伝えて、戦いへの恐怖心を生じさせてはいけないから、言葉でなく意味のある指導をする事で、自分の想いを伝えてやる事が一番の善策…

そう信じていた。

しかし、政宗の指摘は、そんな自分の方針を否定しているものだった。

 

「そうだ…なのは。お前がアイツらに無茶をしてほしくない気持ちはよくわかる。そして、それは正しい考えだ…でもな、お前がどんなに正しい事を考え、それを教えようとしてもだ……肝心のアイツらにお前のheartを直接伝えないで、ただ腕ずくで解らせようとして、それで気持ちが伝わると本当に思えるのか?」

 

「…………それは…」

 

なのはだけでなく、同じく『腕ずくの教導』を進言していたヴィータも返す言葉が思いつかず、黙り込んでしまう。

 

「少なくとも俺は、そんな事をしてもティアナ(アイツ)は余計に自分の殻に籠もっちまって、さらに話が拗れるだけだと思うぜ?」

 

政宗は、冷淡に切り捨てるように言い放った。

 

「じゃ…じゃあどうしろっていうんだよ?! このままティアナが無茶し続けて、ぶっ倒れちまうまで放っておけっていうのか!?」

 

ヴィータが政宗につっかかるように尋ねた。

すると政宗は、また呆れた様子で溜息をついた。

 

「お前なぁ…どうして、そうone-wayな考えしか思いつかねぇんだよ?」

 

「なんだと!?」

 

ムキになってベッドから立ち上がろうとしたヴィータを宥めながら、なのはは政宗を見据える。

 

「政宗さん…私……どうしたらいいのかな? 政宗さんの言う通り…私、今までティアナやフォワードチームの皆に自分の過去の事や、指導方針についてちゃんと言葉で説明した事がなかった…言葉で言わなくても、あの子達なら私の教えを理解してくれるって…そう信じてたから……でも、私が甘かったんだね…」

 

「なのは……」

 

ヴィータが案じるような悲しげな眼差しで、なのはを見つめた。

 

「あぁ…はっきり言って、一部隊の教官としては甘すぎるな」

 

「ま、政宗!!?」

 

政宗の容赦のない一言にヴィータが慌てながら窘める。

しかし、政宗の言葉はそれで終わりではなかった。

 

「だがな……お前が誰よりも教え子達を思う“優しい奴”だって事は、よくわかったぜ」

 

「ッ!?………政宗……さん…?」

 

そう言いながら、ほんの一瞬だけ、小さく微笑んで見せた政宗になのはは、思わずドキッとなった。

その間に再び真面目な表情に戻った政宗が尋ねてくる。

 

「なのは。次のforwardの模擬戦ってのは何時やるんだ?」

 

「えっ!? 確か…1週間後だったかな……?」

 

なのはが答えた。

 

「だったら、こうしたらどうだ? あとone chanceだけ…ティアナ(アイツ)が強くなる為にどうするか、アイツなりのやり方を見極めてやるのさ。その模擬戦で…」

 

「「模擬戦で?」」

 

なのはとヴィータが尋ね返す。

 

「あぁ…それで、ティアナ(アイツ)が相変わらず無茶に走っているのなら、その後に、アイツがどうしてそこまでして強くなりたいか…アイツの口からはっきり言わせるんだ。そして、なのは…ここからが一番大事だ。

お前も、お前自身の口で今日俺がここで聞いた事を全部アイツに話して聞かせろ。それでもアイツがどうしてもお前の考えを理解しないようなら……その時こそ、腕尽くだろうが、なんだろうが、好きにすればいい…」

 

「で、でもよぉ、政宗。 万が一、ティアナが模擬戦で、それこそなのはの言うことさえ聞かないくらいに暴走しちまったりしたら、どうすんだよ?」

 

ヴィータが聞いた。

 

「もしもの時は俺達が止めてやる。なのは…少なくとも、お前が直接手を出しちまえば、それこそpour oil on the flameだ…それだけは絶対に止めろ。You see?」

 

鋭い眼光を向けながら念を押す政宗に、慌てて頷くなのは。

 

「う、うん。わかった…」

 

「とにかく…お前らの考えるlast resortってのはもう少しだけ置いておけ」

 

「う…うん」

 

政宗がそう諭し、なのはが頷く様子を、ヴィータが意外そうに見守っていた。

 

(へぇ~…コイツって『人の事なんて気にせずに我道を往く俺様タイプ』かと思ってたけど、意外とちゃんと周りの考えを見て考えてるタイプなんだな……)

 

政宗の意外な一面を知って、彼の事を少し見直したヴィータ。

その時、不意に病室のドアからノックの音が聞こえた。

 

「あ、はーい。どうぞ~」

 

ヴィータが入室を促すと、ドアが開かれ、大きな籠を抱えた看護師が病室に入ってきた。

 

「失礼します~。ヴィータさん。聖王教会本部の方からヴィータさん宛にお見舞いの品が届いてますよ」

 

「聖王教会の……本部から…?」

 

「「えっ!?」」

 

意外なところからの見舞いと聞いて、怪訝な表情を浮かべるヴィータ。

だが、政宗となのはは、『聖王教会本部』と聞いて、嫌な予感を浮かべていた。

『聖王教会本部』といえば、機動六課の後見人である教会騎士 カリム・グラシアと政宗達と同じ世界から転送されてきた少年武将“大友宗麟”によって、今や宗教団体(という名の意味不明な銭ゲバインチキ集団)『ザビー教』の温床と化しているのを、ホテル・アグスタで、はやての知人にしてカリムの義弟であるヴェロッサ・アコース査察官から聞かされていたからだ。

 

「はい。なんでも…カリム・グラシア様からヴィータさん宛に滋養強壮を付けてもらう為の”新種の野菜”をとの事で…」

 

そう言って、看護師がベッドに備え付けたテーブルの上に置いた籠の中には、

濃い顔のオッサンの模様が入った不気味な野菜…ぱっと見た印象では『人面入りチンゲン菜かカブ』のような印象の強い珍菜が山のように積まれていた。

 

「「「…………………」」」

 

その強烈な見た目に圧倒されながら、どうじに底しれぬ不快感を抱き、顔が真っ青になる政宗、なのは、ヴィータ。

 

「ヴィ…ヴィータちゃん。籠に何かメッセージカードが入ってるみたいだけど……?」

 

なのはが指摘するとおり、籠には確かに1枚のメッセージカードが入っていた。

ピンク色の紙にキラキラ光るラメ入りのペンで書かれたそれからは、仄かに香水の香りがして、地味に腹が立つ事この上ない…

カードの内容はこう記されていた。

 

 

 

親愛なる『機動六課』隊員 騎士ヴィータへ。

 

はやてから、怪我をしたと聞いて、お見舞いにザビー教団特製“珍菜 ザビッシュ”を1週間分お届けさせていただきま~す。

 

こちらのザビッシュは、教祖代行 宗麟君の懐で三日三晩温めた種を巻き、お砂糖とスパイスとザビー様への祈りをもって育て上げたまたとない美味! 貴方の傷ついた身体も瞬く間に回復する事間違いナッシング!

ちなみにこちらのザビッシュ。初生りの試食をシャッハに無理矢理させてみたところ、そのあまりの美味しさのせいか、口から七色の光り輝く泡を噴きながら卒倒して、そのまま三日三晩「お口の中がナイトメア~!」とかなんとかうわ言を言いながら寝込んでいたくらいよ。そんなにザビッシュの美味しさに感動したのかしら?(๑´ڤ`๑)テヘ♡

 

貴方も、このザビッシュを食べて、ザビー様の愛を実感し、そしてザビー教にレッツ・入信!

今なら、『怪我人割引キャンペーン』で入信料を0.005%割引の赤字覚悟の超お得なセールもやってるわよ!!きゃー!カリムン困っちゃう!

 

入信の手続きについてはホームページを検索、検索ぅ~♪

それでは、貴方が入信するのを首を長~~~~くして待ってるわ♡

 

それではグッバイ・ザビー!!

 

聖王ザビー教会 女神兼教祖代行

ノストラダムスカリム              

 

 

(((う…うぜええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?)))

 

手紙を読み切った瞬間、3人揃って心の中で盛大にシャウトした政宗、なのは、ヴィータ。

 

 

「なんだよこれ!? ただの悪質な勧誘ダイレクトメールだろうが!?」

 

「あぁ…しかも、途中の語尾にちょくちょく入れてやがる語尾や『♡』がいちいち癇に障りやがるぜ…」

 

「………にゃ、にゃはは………」

 

ヒクヒクとこめかみに青筋を浮かべながらヴィータと政宗が呟き、なのはが困惑を全面に出した引き笑いを浮かべた。

すると、看護師が思い出したように懐から1枚の封筒を取り出した。

 

「あっ…それからこれも一緒に届いてましたよ」

 

渡された封筒の中身を見て、3人は思わず「なっ!?」と声を上げた。

封筒の中身は請求書だった。差出人は勿論、ザビー教団…そして、大友宗麟とカリム・グラシアもといノストラダムスカリムだった。

 

 

 

ザビッシュ代 代金10万ワイズ。お支払いはカードでもOK(笑)

 

 

 

政宗とヴィータは互いに顔を見据え、頷き合うと、籠に手をかけながら、病室の窓を開いた…そして……

 

「「これお見舞いじゃなくて、押し売りじゃねぇぇかあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! (怒)ぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!」」

 

息を揃えてシャウトしながら、ザビッシュの積まれた籠を空高く放り投げて飛ばすのだった。

 




今回はなのはサイドの心中に焦点を当ててみました。

ほんと、ある方の感想コメントにもあるようにStrikerSの二次創作における『ティアナ』編を書く際には如何にどっち寄りに考えが謙らずに、話の展開を考えるかが本当に苦心しますね。
オリジナル版でこの話を描いた時はまだその辺りの事情を気にせずに本当に勢い任せで話を進めていたので、なのはの方を持った様な内容になって一部のティアナファンの方からお叱りを受けた…なんて事もありましたね。
今回はできる限り、中立的にいこうと想い、ティアナ側ではオリジナル版同様に佐助、そしてなのは側では政宗に、それぞれ注意する役割を担って貰う事になりました。

さて、一応、なのはは魔王化しないように釘を差されましたが、果たして模擬戦はどんな事になるか…?
もう少し先になるかもしれませんがお楽しみに!
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