リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition- 作:charley
そんなティアナを案じ、話し合っていたなのはと政宗はふとしたきっかけから、それぞれが向こう見ずな行いを繰り返した結果招く事となった『失敗』を打ち明け合う。
無理を繰り返した末に大怪我を負った自分と、同じ過ちをティアナに繰り返してほしくない。
そう案じるなのはの想いを理解しながらも、政宗は彼女の今の教え方を不器用と評し、一度腹を割ってティアナと話し合う事を勧める。
そんななのはに対し、ティアナは…
官兵衛「リリカルBASARA StrikerS 第二十三章! なぜじゃああああぁぁぁぁっ!!」
治療センターでなのは、政宗がそれぞれの過去を打ち明け合っていた頃…
機動六課隊舎内 剣道場―――
ここは、もともとは倉庫となっていた部屋だったが、家康ら武将勢の要望を受けたはやての指示で、畳を敷き詰めた和風のトレーニングルームとして、剣道場に改装されたものだった。
今、道場では小十郎とキャロがそれぞれ道着を着用して、剣術の稽古を行っていた。
キャロの道着は先日小十郎から剣術を始めるに当たって手渡された特注の道着であった。
それぞれの手にはそれぞれの身の丈に合わせたサイズの木刀…キャロは小太刀程の小回りの効いたサイズ、小十郎は愛刀『黒龍』に合わせた太刀程の長さの木刀が握られていた。
「はあぁぁぁっ!!」
「振りが小さい!もう一度!」
まだ艾の良い香りがしっかり漂う光り輝く畳の上で、キャロの繰り出す打ち込みを小十郎は片手だけで軽々と受け流す。
これまで剣術どころかまともな近接格闘さえもほとんど未経験であるというキャロは、まずは剣術における基本中の基本として ”上段”、”中段”、”下段”、”八相”、”脇”から成る所謂『五行の構え』と、“打”、“突”、“防”の3つの動作を徹底的に叩き込む事に集中させる事となった。
「やあぁぁぁっ!!」
「まだだッ! もっと呼吸を整えろ! “身”、“剣”、“体”の3つの息を全て揃えるんだ! さもないと、力が入らないばかりか、太刀筋にムラが生じ、それが大きな“隙”に繋がる!」
相手が10歳の少女であろうとも、小十郎は少しも加減する事なく、厳しい姿勢でキャロを指導していく。
小十郎が課す“片倉流”の剣の稽古はとにかく厳しいと、日ノ本にいた頃から伊達軍の間でも専らの評判だった。
政宗がまだ幼少期…元服前の“梵天丸”であった頃に剣術師範を努めて以来、政宗以外の他人に剣の指導などすることなど滅多になかった小十郎だが、それでも偶に気まぐれから、伊達軍の若い兵達に剣の指導をする事があった。
だが、小十郎の指導を受けた兵士達は皆一時間と経たぬ内に音を上げ、揃いも揃って逃げてしまうのが定評となり、政宗以外で小十郎の指導を一日と耐えた者は伊達軍の中でも数え切れる者程しかいなかった。
「たあぁぁぁっ!!」
しかし、キャロはそんな小十郎の厳しい教導にもただひたすらに食いついてきており、指導を受け始めて数日とあるが、少しも心折れる様子を見せていなかった。
振り下ろされる打ち込みはまだまだ未熟なものの、その直向き且つ愛らしい見た目に反した根性の強さには、小十郎も思わず感服し、彼女の素質に一目置く事となった。
(まだ初めて数日だというのにもう振り方が板についてきてやがる…これはもしや、育て上げればきっと俺や政宗様と並ぶ剣豪になれるかもしれないな…)
切下げに打ち込んだキャロの木刀を防御し、それを弾き飛ばす小十郎。
「ああっ!?」
「握りが緩い! そんな力では今みたいに簡単に打ち飛ばされるぞ!!」
小十郎は木刀を失ったキャロの顔の前に、木刀を突きつけられる。
「うっ…」
「いいか? 剣を振る時は、雑巾を絞る時のように柄をぎゅっと強り締めろ。そして、踏み込んだ足に体重をかけて、その場に踏みとどまれ。 鍔迫り合いにしても、打ち合いにしても、大事なのは如何に姿勢を崩さないかだ。特に小柄なお前は姿勢を一度崩されると、隙も当然大きくなる。 だからこそ、この点を常に注意して、心がけろ」
「は…はい!わかりました!」
小十郎の指導を受け、キャロは元気いっぱいな返事を返した。
その声質からは、心折れる心配もなさそうだった。
「うむ、いい返事だ。 では、もう一度打ち込みだ!」
「はい! はああぁぁぁぁっ!!」
小十郎が畳に落ちた木刀を拾い、それをキャロに渡すと、キャロは、先程よりも大きな掛け声を上げながら小十郎へ打ち込みにかかった。
そんな2人の稽古の様子をシグナム、フェイト、そしてフリードは道場の隅から見守っていた。
「うむ……まだ始めたばかりで荒削りではあるが…確かに育てば中々の剣士になれるかもしれんな」
「そうだね。まさか、キャロにこんな才能があったなんて…」
「キュル~」
それぞれ剣使いでもあるシグナムとフェイトが稽古に励むキャロの太刀筋を見て、見込みがあると称賛の言葉を述べると、フリードはパートナーが褒められたのが嬉しかったのか、まるで自分が褒められたかのように嬉しそうな声を上げた。
「私もキャロは、ずっと竜召喚士としての才能を重視して育成すべきだと思っていたから、最初はあの子に剣術を習わせるの、正直少し不安だったんだ…でも実際にやらせてみたら、意外な才能が見つけられたものだから驚きだよ」
「まぁな。しかしテスタロッサ。お前も嬉しいのではないか? あの子が師匠を得た事でいつか自分と肩を並べて戦えるかもしれないということが…」
シグナムが問いかけるとフェイトは「フフフ」と笑いながら小さく頷く。
「そうだね。 アグスタの任務以来、キャロもエリオも随分熱心にそれぞれ小十郎さんや幸村さんの指導を受けるようになって、強くなろうって努力がよくわかるから保護責任者としては、やっぱり嬉しいかな? 2人がますます真剣に頑張っている姿をみると…」
「そうか…」
フェイトはそう言って微笑むと、それを聞いたシグナムも「フッ」と笑みを浮かべて返した。
それから2人は、しばし、小十郎とキャロの稽古の様子を眺めていた。
「“努力”といえば……テスタロッサ。アグスタでの任務以来、ティアナはどんな調子なんだ?」
突然、シグナムが、最近の隊長・副隊長・武将達の間で頻繁に話題になっている話を切り出してきた。
「うん…なのはや家康君達も言っていたけど…やっぱりティアナの訓練はますます無茶してるって感じが全面的に出てきてるかな…? 正直な話、フォワードの4人の中では一番問題点が多いかも…」
それを聞いたフェイトが、気まずそうに表情を曇らせる。
真剣に考えているのか、声色がさっきまでと違っていた。
「『強くなりたい』、『お兄さんの代わりに夢を叶えたい』って気持ちはいい事だとは思うけど…今のティアナの努力は、はっきりいって方向性が完全にあべこべな方角に向いちゃってる…あの子、元々そんな気があったけど、こないだのミスショットや小西行長との交戦がよっぽど応えたのかもね……」
「やはり、そうか」
シグナムの問いに頷くフェイト。
シグナムもまた、ティアナの過去を知っている身の上、ティアナの無茶な努力の理由を知ってはいたが、やはりそのやり方には疑問を浮かべていたようだ。
「私達と話す時は変わらぬ感じに振る舞おうとしているが…こないだの失敗と敗北を未だに引きずっている様子だと、ヴァイスやシャリオからも聞いていたが……」
「うん。これはエリオやキャロから聞いた話なんだけど…。ティアナ、小西行長から色々と小馬鹿にされたみたい。ワザと手加減されたりとかして…それでも結局、手も足も出なかったんだって……」
フェイトは彼女に同情するかのように、悲しそうな眼差しで呟く様に言った。
「…そんな屈辱的な負け方をすれば、余計に無茶に走りたくなる気持ちもわからない事はないが……」
シグナムはそう言って、キャロの振り下ろした木刀を一閃で弾き飛ばす小十郎を見つめる。
「思えば、あぁしてキャロには片倉…エリオには真田…そしてスバルには徳川…それぞれ自分の戦力を強化する上で、意見の調和ができる最適な師を作っている…しかし、ティアナの場合は徳川達はおろか、我らにさえも自分の胸の内を明かそうとせずに何もかも抱え込んでしまう傾向があるからな…本当の意味で心の底から開け放している師というのがいないのが彼女の不幸なところだ…」
「そうだね。 家康君や幸村さん達の中で銃を使う人はいないし、一応政宗さんの知り合いに一人銃使いの人がいるって聞いたけど…あの世界の人間で銃を巧みに操れる人なんて数えるほどしかいないって言ってたから…まぁパラレルワールドとはいえ戦国時代だし無理もないと思うけど…」
フェイトは苦笑を浮かべながら、言った。
「せめて…ティアナが心の底から開いて接する事のできる程に気が合う教官がいたらいいんだけど…私達の中の誰でもいいし、家康さん達の中の誰でもいいから…」
「確かにそうだな…」
フェイトの話を聞いて、頷くシグナム。
しんみりとした空気の中、突然道場の窓の外から―――
「あちあちあちちちちちちちちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
「まだまだぁぁぁぁ!!気合が足りぬぞおぉぉぉぉぉぉ!!エリオぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
エリオの悲鳴と幸村の叫び声が聞こえてきた。
「!? な…なんだ!?この声は!?」
「エリオと…幸村さん!?」
驚いた二人が剣道場の窓際へと行き、外を見てみる。
すると…
「あ、ああああ、あ、兄上ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!? さすがに、これは熱くて死にそうですぅぅぅぅぅ!!」
そこから見える中庭の真ん中では、何故か豪快に焚火が焚かれ、その上に人が数人分入れる程の大鍋が置かれ、中に満々に満たされた激しく煮えたぎる油に浸かりながら、槍の訓練をする幸村とエリオの姿があった。
「「ね…熱した油に入ってるぅぅぅーーーーーーーーーーー!!!」」
フェイトとシグナムは声を揃えて、仰天の叫びを上げた。
「バカ者ぉぉぉぉぉぉぉ!! 気合だ! 心頭滅却すれば火もまた涼し! 武田の人間は皆、溶岩に入っても平気な程、強靭な身体を鍛えねばならぬのだぁぁぁ!! 我らもこの熱さに耐えることで、火をも恐れぬ屈強な皮膚と肉体を作るのだ!! さあ! わかったら、もう一度いくぞおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「は、はいぃぃぃ!!」
そう言って再び二槍とストラーダをそれぞれ激しく振りかざして槍の稽古をする幸村とエリオ。
二人の気迫と同時に大鍋の中の油が激しく噴き上げられる。
「エリオ!」
「兄上!」
「エリオ!」
「兄上ぇ!」
「エリオぉ!」
互いに叫び合いながら槍を振るい続ける幸村とエリオ。
その度に熱した油が噴火の如く飛び散り、周囲に草木にかかって煙を上げていた。
凄まじい熱気が剣道場の窓際にまで届く中、あまりに破天荒過ぎる特訓を遠目に見るフェイトとシグナムは言葉を失っていた。
「………まぁ、
「あははははは…そ、そうかもね?」
呆れながらそうボヤくシグナムに、フェイトは困惑の交じった笑いを浮かべるしかなかった。
「兄上ぇ!!」
「エリオぉ!!」
「ぁ兄上ぇぇぇ!!」
「ぇエリオぉぉぉ!!」
武田熱血兄弟の絶叫のような掛け声はそれから30分近く休む事なく響き渡るのだった……
*
機動六課隊舎近くの防波堤―――
午前中はフォワードチーム各員自主トレーニングとなった中、スバルは久しぶりに相棒のティアナから呼び出しを受けていた。
「来週のなのはさんとの模擬戦で、新しく編み出した戦法を使う…?!」
スバルは面食らった表情で驚くと、ティアナは「そう」と頷きながら応えた。
「私、閃いたのよ。確実に敵を倒すための戦法…絶対に失敗しない勝利の為の連携技…」
「ど…どんな……?」
スバルが不安げに聞くと、彼女の予想通りティアナの思いついた策とは、あまりにも危険なものであった。
それはスバルが相手の攻撃を耐えながら相手の正面を攻め、相手がそれに応対している隙を突き、ティアナが予めスバルが作成したウィングロードを通って相手の後ろに先回りして、相手を真上から奇襲する戦法―――
身も蓋もなく言えば、『捨て駒作戦』のようなものであった。
「そ…そんな…そんなの危険すぎるよ!」
「そうね。危険性は、十分承知してるわよ。だから、なにも正面突破を行うのはアンタじゃなくてもいい。『私が相手を引きつけている間に、アンタは後ろに回り込む』などしてもいいわね…」
「そうじゃなくて!! こんなやり方…ただの闇討ちじゃない! こんなの、なのはさんが絶対認めないし、何より相手が家康さんや政宗さん、幸村さんだったらそれこそ通用しないよ!!」
スバルの言葉を聞いたティアナの目つきが鋭くなる。
怒鳴りそうになった言葉を抑えるかのように一回息を整えてから、改めて口を開く。
「…大丈夫よ。家康さん達が相手だったら、それなりに対処法は考えてやるわ…それにアンタさえ私に息を合わせてくれたら、上手く乗り越えられるわよ」
「でも!…こんな無謀な戦法、絶対よくないよ。 それこそ、なのはさんや家康さんがなんて言うか…」
「!!?」
スバルの言葉を聞き、ティアナの表情に露骨に怒りの感情が浮かんだ。
「ティア。こないだ、なのはさんに言われたんだよね? 『無茶はしたらダメ』って…
ティアが強くなりたいって気持ちは私だってよくわかってる…うぅん。私が一番わかってるつもりだよ! だけど、今のティアはまるで自分を顧みない無茶ばっかり…訓練にしても、作戦にしても……私も家康さんも、そんなティアを見ていたら、いつか大変な事になるんじゃないかって―――」
スバルは必死に宥めるように、ティアナへ訴えかけるが…
「うるさいわねっ!!!」
「!!?」
突然大声を上げ、スバルの言葉を遮ってしまった。
「てぃ、ティア……?!」
ティアナは顔を俯かせながら、小刻みに震えていた。
「なによ……なんなのよ………さっきから“家康さん”“家康さん”って…そんなにアンタは家康さんに逆らう事が怖いの!? 家康さんに嫌われたくないから、相方の考えた作戦なんて協力したくないって……そう言いたいの!?」
「ティア!…私はそんなつもりじゃ…!!」
スバルは慌ててティアナを諭そうとするが、ティアナはやけくそのように手を振って話し出す。
「そうよね…アンタはいいわよ! 管理局の偉い人を家族に持って、自分も高い魔力の素質もあって、おまけにこうして頼りになる優しい先生まで出来て!
見たことのない新しい技や『戦極ドライブ』とかいう未知の力までも使えるようになって、その度にどんどんどんどん、私達を追い抜いて強くなって!!」
「ティア…?」
気がつくとティアナは顔を赤くし、その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「アンタだけじゃないわ……エリオだって、幸村さんと「兄弟」だかなんだか知らないけど仲良しこよしになりながら、ちゃっかり強くなってるし、キャロだって小十郎さんから剣術なんて習いだして、シグナム副隊長の見立てでは「育てば、良いアタッカーになる」…ですって! すごいわよね!? フォワードチームの役割まで色々変わってきちゃいそうよ! 私以外は!!」
「ティア! 落ち着いてよ!」
スバルはどうにか宥めようとするが、ティアナは溜まりに溜まった鬱憤を吐き出すように喚き散らす。
「ホント皆よかったわよね!? 『戦国武将』だか知らないけど、戦いのプロの皆さんにそれぞれ新しい事を教えてもらって、元々高かった才能をもっと高くしてって……ほんと、素晴らしい事じゃないの!!」
「…ティア…」
「でもね………私は違うのよ! 魔力だって平凡並みだし、エリオやキャロみたいに特別な才能や技術も持ち合わせていない………ましてや誰かの弟子になって凄い技を教わってもいない!! そんな“負け犬”の私が強くなる為にはね…確実に敵を倒す為の策を考えて、それに相応するように鍛錬を積む! それだけなのよ!!」
「そんな! ティアは『負け犬』なんかじゃないってば!」
スバルはティアナの両肩を掴んで諭そうとするが、ティアナはそれを手で払い除けた。
「うっさい!! アンタにはわからないわよ! 仲間の前で無様な姿晒して…敵にまで散々コケにされたあたしの……“負け犬”のこの悔しさってものが! 才能のあるアンタなんかには!!!」
「ティア!」
とうとう我慢できずに、スバルも叫ぶように反論した。
「私は…ティアが頑張ってるのは知ってるし、できる限り力になろうって思ってる! でも、やっぱり最近のティアはちょっとおかしいよ!! 急にそうやって極端に自虐的になったり、前にも増してムキになりやすくなったり、それこそ身体ボロボロにしてまで一人で無茶な練習ばっかり! 今だって、こんな無謀な作戦を相棒の私に相談もなく勝手に決めようとして…一体どうしちゃったの!? 前のティアはがんばり屋さんだけど、そこまで無茶するような感じじゃなかったはずだよ!?」
スバルの言葉にティアナは一瞬目を見開いて驚いた様子を見せた後、目元が見えなくなるほどに顔を俯かせる。
「ティアが強くなりたいっていうのなら、私も一緒に考えるから! 家康さんにも相談して一緒に考えてもらおうよ?! そうすれば、きっとなにかいい方法が見つかる筈だから! だからお願い! これ以上、自分を虐めるような無理な事だけはしないで!!」
「………黙れ……」
「えっ!?」
ティアナの口から出た言葉に思わず戸惑うスバル。
「黙れって言ってんでしょうが! バカスバル!! あたしはアンタがそうやって
「てぃ…ティア…?!」
とうとう家康の事を『アイツ』呼ばわりし始めたティアナに、スバルの顔が青ざめる。
「もういい…もういいわよ!! アンタが協力しないっていうなら、あたしは一人ででもこの戦法を成功させてみせる! そして…あたしが強いことを…あんな“気”とかいう魔法もどきの力に頼る似非魔導師の戦国武将達の力なんて借りなくても戦える事を……証明してやる!!」
そう言うとは踵を返して駆け出そうとした。
「お願いティア! 待って! 私の話を聞いて!!」
スバルは慌てて引き留めようと、追いかけながらティアナの右手を掴むが…
「触んな!」
ティアナは乱暴にスバルを振り払うと、走る速度を速め、あっという間に見えなくなってしまった。
「ティア…」
一人残されたスバルはただ茫然と立ちすくむばかりだった。
止める事ができなかった…相棒を…
そればかりか、完全に怒らせてしまった……
今までも、何度か冗談めいたやり取りを繰り広げて、怒らせてしまったりした事が少なくはなかった。
しかし、今さっきティアナが見せた怒りは “憎悪”、“嫉妬”、“嫌悪”…負の感情を全面に顕にした本物の怒りだった…
こうなってしまったら、彼女はもう、何を言っても聞いてはくれないだろう…
「う……うぅぅ…うぇぇ、ぇぇ……っ……」
スバルは相方に嫌われた悲しみと、諭しきれなかった自分自身の無力さを痛嘆し、立ちすくんだまま、静かにすすり泣き始めた。
その様子を少し離れた木の上から見据える一つの影が見えた。
「あぁ~あ……案の定、ますます拗らせちまってやがるなぁ…ティアナのやつ……」
佐助だった…
佐助は、困惑と呆れの交じった表情を浮かべながら、肩をすくめる。
「やれやれ…これは思った以上に、ややこしい事になりそうな予感……」
佐助は小さくため息を吐きながら呟くと、スバルを励ましに行ってやろうかと身を枝から踊らせようとした。
その時だった―――
「あれ? そこにいるのはスバルか?」
ふと、スバルの背後から朗らかな声を上げながら、こちらに近づいてくる人物…家康の存在が目に入った。
「おっ! なんというか、色んな意味で間の良いこって……へへっ、どうやらここは俺様の出番は必要なさそうだね」
佐助はそう呟くと、シュッと一筋の風を起こしながら木の上から姿を眩ませた。
そんな佐助の存在など、全く気づいていない家康はスバルの姿を認めると、早足で近づきながら、声をかける。
「スバル。 何してるんだ? そんなところで?」
ここで今起きた事など何も知らない家康は、いつもの人懐っこい笑顔を浮かべながら近づいてきた。
そんな家康に、スバルはすすり泣きながら、ゆっくりと振り返る。
「スバル…!?」
スバルの顔を見るなり、家康は驚いて動きを止めてしまった。
赤く腫れた瞳で自分を見つめている愛弟子…あまりにも予想外な姿だった。
「スバル!? 一体…どうしたっていうんだ!?」
「い、家康さぁぁぁぁぁぁん!!」
そして、家康の姿を見るなり、スバルは我慢できなくなり、泣きながら彼に抱きついていった。
「お、おい!? スバル!?」
「ぃい…いえ゛や゛すさああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!! わ゛、わ゛た゛しいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「わ、わかった! わかったから、少し落ち着こう! なっ!? とりあえず、こんなところ誰かに見られたら、色々と誤解されるから! あとは―――」
「ぢーーーーーーーーーーんっ!!」
「ワシの服で、鼻かまないでくれない?!」
自分の胸に顔を擦りつけながら泣きじゃくるスバルに、家康は色々な意味で困惑するばかりだった。
*
しばらくして、家康はどうにか落ち着いたスバルを連れて防波堤の上に登り、腰掛けながら、海とその向こうに広がるクラナガンの街並みを眺めつつ、彼女から今しがた繰り広げられたティアナとのやり取りの一部始終を聞いた。
「そうか……ティアナを説得できなかったのか……」
「はい…それどころか、私…余計な事言っちゃって、ますます火に油を注いでしまったみたいで……」
一通り、事情を説明したスバルはもう泣いてはいなかったが、それでもよほどショックだったのかその表情からはいつもの明るさは完全に消え失せていた。
「…家康さん……本当に、どうしたらいいんでしょうか…?」
「…う~ん……こうなったら、ワシが直接説得するしかないかもな…? しかし…」
家康は両腕を組みながら唸り、考える。
「今言っても…ティアナはますます顔を背けるだけだろうし…こうなれば…」
「こうなれば…?」
スバルが不安を顕にしながら尋ねてくる。
「…ティアナがどんな事を考えているか、来週の模擬戦で見極めるしかないな。恐らく、今までに増して無茶な事をしてくるだろうし、そうなればなのは殿達も恐らく黙ってはいないだろう」
「そんな!? それだとティアはきっと、私に言った以上の無茶なことを…」
「そこだ。その時こそ、ティアナにワシらの想いを伝えられる好機だと思うんだ」
家康が言った。
「模擬戦にはなのは殿だけじゃなく、フェイト殿やシグナム殿、それに独眼竜や真田達だって、全員が揃っている筈…そこで、ティアナがどんな行動をとるかによって、皆の意見も聞いた上で、やはりティアナの行動がこれ以上危険と判断されるものであれば…改めて、ティアナにワシやスバルの想いを伝えて、彼女の意見も聞いた上で、どうすべきか諭すしかない…」
「でも…訓練でもしもティアがなのはさんの言うことも聞かなかったりしたら…?」
「その時はワシらで止めるしかないな…だが、決して攻撃で止めようとしてはダメだ。今のティアナはとにかく“力”に固執している状態だ……だから、それに“力”で押さえつけてしまえば、逆効果になる」
家康はそう言いながら、広げた自分の両手に向かって、意味深な眼差しを送った。
「“力”を“力”でねじ伏せる事を選べば…悲しい結果を生む事は…ワシ自身がよくわかっているからな……」
家康の脳裏には、“絆”を重んじたはずの自分が、最後まで言葉だけでその覇業を止める事ができず、やむを得ずに“力”に縋った結果、結びついてしまったある悲しい出来事が浮かんでいた。
(秀吉殿………三成………)
家康は自らが手にかけた主君と、その結果“狂気”に落ちる事となった“親友”の顔を思い浮かべ、後悔と無念の想いを募らせ、目を強く瞑り、歯を食いしばった。
「家康さん……?」
そんな家康の苦渋に満ちた表情に、スバルが戸惑いながら顔を覗き込んでくる。
「………っと済まない。少し別の事を考えてしまった!」
家康は頭を振ると、スバルを宥めるように言った。
「とにかく、焦る気持ちはわかるが、今はティアナにワシやお前が何を言っても聞く耳を持たないだろう。ここはもう少しだけ様子を見て、なんとか説得できる機会を来週の模擬戦にかけるしかない。勿論、それまでの間はティアナが無理をし過ぎて倒れる事がないようにだけ、注意しておくんだ」
「は、はい……」
スバルはなんとか精一杯の笑顔を作ろうと努力していたが、その胸に抱いた底しれぬ不安は、顔いっぱいに顕になってしまっていた。
一週間後…恐らくは今頃の時間帯に行われるであろう模擬戦…
このあいだの大雨の反動かしばらくは快晴が続くと天気予報では言っていたが、果たして一週間後、今日と同じ天気であろうこの空の下ではどんな事が繰り広げられるのか…?
この時、スバルは勿論…家康でさえも予想つかなった……
まさか、この一週間後―――
模擬戦で起きた出来事が、自分の予想していたものよりも遥かに壮絶な結果に至る事になるとは……
*
その夜―――
首都クラナガン 湾岸地区・日本風繁華街 カントー・アベニュー・茶屋『
少し霞んだ薄紫色の明かりが雅な雰囲気の部屋を不気味に照らしている…
今宵もまた、常連客である機動六課・通信主任 ジャスティ・ウェイツはこの店に足を運ぶなり、店で一番上等なこの部屋を確保したが、今日は憂さ晴らしの芸者遊びを楽しみに来たわけではない。
店の従業員には、店で一番上等な酒と膳の用意を複数人分用意させると、「今日は連れと内密な話があるから」と懐から取り出した札束を人払い料がてらに多めのチップとして忍ばせ、早々に引き上げさせた。
すると、薄紫色に染まった部屋の中に、パッと一瞬眩い光が照らされたかと思うと、部屋の中にはジャスティの待っていた“連れ”が現れていた。
大谷吉継、そして皎月院……いずれも、ジャスティの歪んだ自尊心と不満から手を組む事になった2人の異様な風貌と思惑を秘めた男女だった。
「ウェイツよ…ぬしに頼んでいたものは持ってきたか?」
用意された上座の膳の後ろに、それぞれ腰と輿を下ろすと、先に口を開いたのは大谷の方だった。
ジャスティは自分の膳の隣に胡座をかきながら、持ってきたビジネスバッグからひとつの茶封筒を取り出した。
「…ご注文の『機動六課隊舎周辺にかけられている防御用障壁魔法と、物理的セキュリティー設備の詳しい配置や構成が記された間取り図』…それから実働部隊を中心とした『隊員・スタッフの今後1週間の予定スケジュールリスト』だ……あとは…」
ジャスティはその場でホログラムコンピュータを起動して、投影したホログラムスクリーンを片手で操作していく。
すると、大谷、皎月院の目の前にさらに2回り程大きいモニターが投影され、そこには機動六課隊舎の監視カメラの映像が映されていた。
ジャスティが更に操作画面のコンソールを打っていくと、映像には昼間の防波堤で、言い争うスバルとティアナの姿が映し出された。
「要望にあった彼女…ティアナ・ランスター二等陸士のここしばらくの隊舎での動向の様子を記録してきた……これで全てだな? 大谷、皎月院」
大谷はスクリーンの中で、スバルに怒りをぶつけるティアナの姿をまるで喜劇を見ているかのように含み笑いながら見つめていた。
その隣では皎月院が、封筒から取り出した複数枚の紙の資料の内容をチェックしていた。
「あぁ、確かに…わちきらの求めていたものは全部揃っているね。流石は機動六課の通信主任。これだけの重要書類を持ち出すのも造作ないか…」
皎月院が資料に目を通しながら、ニヤついた笑みをジャスティに送った。
それに対し、ジャスティは疲れたように肩をすくめる。
「…色々と根回しに骨が折れたがな…それに、ウチのお喋りな “副主任”が俺のやる事なす事にいちいち目を光らせてきやがる…その間取り図だって、結局直接持ち出すのは諦めて、原稿をコピーする事がやっとだったからな」
ジャスティは、脳裏にシャリオ・フィニーノ執務官補佐の楽天的な顔を思い浮かべると、苛立ちを振り払うかの如く、既に注がれていた自らの分の盃の酒を煽った。
「ひょっとして…勘づかれたのかい?」
隊員のスケジュールリストを流し読みながら、皎月院が目を細めて尋ねる。
「いや…
「案ずるな。我らに任せておけ…ぬしが望むままに、事は進めてやろう……」
大谷がそう言いながら、片手を上げた。
映像ではティアナがスバルの制止を振り切って離れていったところだった。
「もう映像はいい」という大谷の意図を察したジャスティは、コンピュータを操作して、ホログラム映像を閉じた。
「しかし…なんでまたランスター二等陸士の映像を所望するんだ? 言われたとおり、ここしばらくの彼女の六課での行動を監視カメラを使って追跡していたが、その同僚との口喧嘩を除けば特に特別な事はしていない…最近は、訓練以外は殆ど一人で自主練ばかりやっているぞ?」
ジャスティが銚子から手酌で酒を盃に注ぎながら、怪訝な表情を浮かべて尋ねた。
「…いや…それでよいのだ。寧ろ一人でいる時の方が彼女の心に宿す“不幸”がよく見えるというもの……で? 事を実行する機は何時がよいか? うたよ?」
大谷の質問に、皎月院はニヤッと悪意の籠もる笑みを浮かべながら、スケジュールリストの紙を畳の上に置いた。
「刑部。どうやら一週間後に奴ら“模擬戦”をやるそうだよ。それも前線部隊のガキ共全員……勿論、あのティアナとかいう小娘もね…」
「ほぉ? つまりはその時か…?」
大谷がそう言って、含み笑いを浮かべた。
「あぁ…その日こそ、この策を発動させるにうってつけの好機…その模擬戦には徳川も、伊達や真田達も、それから機動六課の主戦力もほぼ全員が集結しているみたいだ…実行するには、またとない機会じゃないかい?」
そう言うと皎月院も笑い出した。
「ウェイツ。その時はアンタにも働いてもらう事になるよ。その為にアンタをこちら側に引き入れたのだからね……」
「……俺は何をすればいい? 模擬戦とはいえ、俺にはロングアーチの仕事があるから、下手に司令室から離れる事はできないぞ?」
ジャスティが釘を差すように言った。
「その心配はないよ。アンタは模擬戦の時はいつもどおり、ロングアーチの仕事をしていればいいだけさ…ただ、その前にこの間取り図にあった訓練所周辺にかけられている『
皎月院が再度、隊舎の間取り図を手に取りながら説明した。
『
機動六課では元々、違法魔導師による侵入を防ぐためにこのシステムが導入されていたが、以前、黒田官兵衛、後藤又兵衛両名と彼らの率いたガジェットドローンによる襲撃事件があって以来、より警備体制が強化された事に伴い、より高度なシステムにアップデートさせたばかりだった。
「簡単に言ってくれるな。六課の『
「その心配も無用さ。今回送り込むのは少数……わちきらは“彼女”を潜り込ませる事が目的なのでね」
皎月院がワザとらしく、そう口走った瞬間―――
「うぅおぉぉらああぁぁぁぁっ!!!!!!」
突然部屋の後方にある襖の向こうから咆哮のような掛け声と共に畳が1枚、襖を吹き飛ばしながら、回転して飛んできた。
「な、なんだ!?」
ジャスティが驚くのを尻目に、大谷は「やれやれ…」と溜息を漏らしながら、どこからともなく浮遊してきた複数個の珠に向かって手早く呪文を唱える。
「“穿つな八曜”」
大谷が飛んでくる畳に向かって手を差し伸ばすと回りに浮いていた珠が光を帯びた弾丸の様に飛んでいき、畳に命中させるとそのまま跡形もなく消し去った。
すると吹き飛んだ襖の向こうには、大谷や皎月院と同じ様な和服に身を包んだ一人の若い“女”武者が立っていた。
白い肌に目鼻立ちのキリッと整い、ライオンのたてがみのようなボリュームある銀髪のポニーテールが猛々しい印象の麗人だった。歳は20代前半から半ば程か。
白と水色の半袖半裾の陣羽織の下には胸には白サラシを巻いていただけだった。
指先から二の腕にかけて刺々しい装飾の施された手甲を着け、両裾に仁王像の描かれた袴を穿いて、腰にはしめ縄風の腰巻きを纏っている。
袴の右上裾には白地で「竹に飛び雀」紋が記されていた。
「いきなり畳をぶん投げてご挨拶かい? 相変わらず、とんだ“跳ねっ返り”だねぇ…」
皎月院が微塵の恐怖も抱いていないように、からかうような口調でそう言うと、“女”武者は「フン」と不機嫌そうに鼻を鳴らしながら、どすどすと足音をわざとらしく立てながら部屋に入ってきた。
「よく言うぜ! オレが“女”として扱われる事が一番嫌いだってのは、アンタだってわかってんだろうが!? それをわざとらしく呼びやがって!」
“女”武者はそう捲し立てながら、ジャスティの隣に用意されていたもう一人分の膳の後ろにどっかりとあぐらを組んで腰を下ろした。
「まぁ、そう怒るな。ちとささやかな戯れよ…。それよりも紹介しよう。我らの良き協力者のジャスティ・ウェイツぞ」
大谷がそう宥めながら、ジャスティを紹介すると、“女”武者はチラリとジャスティの方を一瞥すると、嘲るように溜息をつきながら顔をそらし、すぐに大谷の方に視線を戻した。
「なんだよ大谷。また敵の中から寝返りそうな野郎、引っ張り出して使う気かよ? 相変わらずテメェも碌な趣味じゃねぇな。まっ、そんな趣味の悪ぃ野郎の誘いに乗ろうとするやつも碌なもんじゃねぇんだろうけどよぉ」
「なっ!? なんだと!? いきなり現れてなんだ! このおん―――」
いきなり、無礼な口を叩いてきた“女”武者に、憤慨したジャスティが抗議の声を上げようとすると、皎月院がサッと、煙管を彼の口許に突きつけて、途中まで出かかっていた「女」という言葉を封じた。
そして、片目だけ赤く光る目でジャスティを見つめながら、念話を飛ばしてきた。
(おっと。そいつに向かって「女」は禁句だよ。そいつは訳合って、「女」を捨てて、今は“男”として振る舞っているのさ。だから…見た目はあれだけど、あんたもそいつの事は「男」として接する事を勧めるよ。でないと、次は畳じゃなくて、あんたが吹っ飛ばされる事になるよ…)
最後の方を強調して伝えてくる皎月院に、今しがた勢いよく回転しながら飛来してきた畳を思い出し、本能的な危機能力を察したジャスティは固唾と一緒に、出かかっていた言葉を飲み込んだ。
一方、“女”武者の方は、幸いにもジャスティの事など毛程の興味もなかったのか、腰を下ろすなり、膳に用意されていた豪華な和食御前をガツガツと食べ始めていた。
その食べ方の汚い事……飯を掻き込めば米粒は散らすわ、汁物をすすれば部屋中に響かんばかりにけたたましい音を鳴らすわ、主菜の鯛の尾頭付きなどは頭を手づかみにハラワタを食いちぎるわ、量の少ない小鉢に入った他のおかずや、香の物は器ごと持ち上げて大口開けて直接落とし入れるわ、酒は猪口に注ぐ事無く銚子から直接ラッパ飲みするわ……
確かにそこには女らしい品など欠片もない…見ていたジャスティも思わず目を丸くしながら唖然としてしまう程だった。
「んで? オレにやってほしい“仕事”ってのは一体、なんなんだよ? 先に言っておくけど、オレは小西の下衆野郎と違って、無駄な人殺しはしねぇからな」
口に食べ物を含んだまま、“女”武者が尋ねた。
すると、皎月院は口の端を歪に吊り上げながら言った。
「安心しな。あんたにはそれらしい仕事を用意したからさ。…かの“軍神”の跡取りたるあんたに相応しい仕事…をね……」
皎月院の言葉に“女”武者はゴクリと口に含んだものを飲み込みながら、眉を顰める。
「……ほんと、アンタって嫌味な奴だな……」
“女”武者は殺気ともとれるような刺々しい眼差しを浴びせた。
ビリビリとした緊張感が2人の間に立ち込める。その様子を見ていたジャスティの額に自然と冷や汗が浮かんでいた。
だが、やがて“女”武者は妥協するように小さく息を吐いた。
「…まぁいいさ。オレはオレの与えられた仕事をやるつもりだよ。これでも一応は“五刑衆”だからな…」
“女”武者はそう言って銚子を再びラッパ飲みして、あっという間に空にしてしまった。
「ヒッヒッヒッ…久々に、ぬしの暴れる様を見られると思うとなかなか楽しみであるぞ…」
大谷は楽しげに含み笑った。
「………五刑衆第五席…『吼将』“上杉景勝”よ……」
その包帯の隙間から望む赤黒い目が妖しく光っていた。
というわけで、リブート版初の新規参戦武将として、“上杉景勝”が登場しました。
BASARA原典では(ほぼ)女性で間違いなしな謙信のキャラに肖り、景勝も『女を捨てた跳ねっ返り猪女武将』という孫市と直虎を足して2で割ったようなキャラで登場させる事にしました。
そして、オリジナル版との最大の違いとして、リブート版ではこの景勝が『豊臣五刑衆』第五席の座についています。
正直、オリジナル版でこの座にあった“木村重成”は、キャラ的にはよかったのですが、豊臣の大幹部に名を連ねるにしては薄いかな?っと連載中から自問自答していました。
また、オリジナル版執筆当時は『既に原典に登場している武将の家族(子供)をオリジナル武将として出す』という柔軟な思考まで頭が回らなかった事もあって、史実では豊臣派の武将の中でも(少なくとも)重成よりは著名である景勝の存在を完全に無視していました。
それと、大河ドラマ『真田丸』で遠藤憲一さんが演じた景勝のキャラがハマった事も景勝登場のきっかけとなりました。
ちなみにオリジナル版で第五席だった重成についてはリブート版に登場させるかは未定です。