リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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皆さん、2021年あけましておめでとうござ――――


政宗・ヴィータ「「遅ぇぇよ!(怒)」」

ヴィータ「年明けてもう1ヶ月過ぎて2月だろうが! 正月どころか節分も終わっちまったよ!!」

政宗「しかも、最後の更新(2020年9月17日)から4ヶ月半も報告一つ出さねぇで放置playしやがって!! 完全にpixivのoriginal versionの二の舞になってんじゃねぇか!!」


…お怒りごもっともです。はい…

っというわけで、4ヶ月半更新&報告無しにしてしまい、読者の皆様。本当に申し訳ありませんでした!!!


ティアナ「私なんか、闇堕ちするっていう超緊迫したところで更新ストップって…どんな嫌がらせよ…?これ…?」

スバル「あわわわ……ティアが本編以上に闇のオーラを放ってる……」



っというわけで、ここまでのあらすじを知りたい方は…これを機会に最初から是非読み直してください!(キリッ)



政宗「…ってなに開き直ってんだ!お前は!!!」

なのは「少し…頭冷やそうか?」

ヴィータ「いや、お前は本編にはないからって原作の迷言ここで言うんじゃねぇよ!!」

スバル「ヴィータ副隊長…軽くネタバレですからやめてください…」




っというわけでリリカルBASARA StrikerS 再開します…


第二十六章 ~波乱の模擬戦 闇に絡繰られしティアナ~

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………コロス!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺気の籠もった叫びを上げながら、ティアナは一瞬で間合いを詰めると、クロスミラージュの銃口に出現させた魔力刃でスバルの胸を狙って強烈な刺突を放ってきた。

 

「スバル!」

 

親友からの思いもかけない一撃に防御する事も忘れるスバルを見て、危機を察したなのはは、咄嗟に障壁魔法“ラウンドシールド”をかけ、スバルの胸中に迫ろうとしたティアナの前に魔法陣を使用した円形の盾を作り出す事で、その攻撃を防いだ。

 

「コロス! コロシテヤルウゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

攻撃を跳ね返されながらも、ティアナは咆哮を上げながら、素早くバク宙を決めると、それから旋風の如き速さでスバルにもう一度迫る。

 

 

「スバル! ティアナから離れなさい!!」

 

 

なのはは叫びながら、レイジングハートの穂先を迫りくるティアナに向かって躊躇なく構える。

 

 

「ごめんね…ティアナ…」

 

 

その顔に若干の躊躇の色を浮かべながらも、なのははレイジングハートの穂先を中心に12発のピンク色の魔力弾を投影した。

 

「…アクセルシューター!!」

 

なのはの叫びと共に12発の魔力弾がティアナに向かって降りかかった。

魔導師の使う魔法…特に射撃魔法は『殺傷設定』と『非殺傷設定』とを設定する事で、技の威力を調節する事ができ、実戦や模擬戦、そして戦闘における敵の警戒度によって自由に使い分ける事ができる。

なのはが今放った射撃魔法 “アクセルシューター”は勿論『非殺傷設定』だが、それでも急所に命中させれば、数時間は気絶させる事ができる。

 

 

「アアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

「ッ!!?」

 

だが、ティアナは飛来する魔力弾を軽々とした身のこなし一つで躱しながら、なのはに近づいてきた。

 

「ティアナ! やめなさい! 私達がわからないの!?」

 

「……コロシテヤル! コロシテヤル!!」

 

ティアナが憎悪の籠った雄叫びと共に魔力刃の刃をナイフほどの長さから、小太刀程の長さへと伸ばして、躊躇なくそれをなのはの首に目掛けて振り下ろしながら、飛びかかっていく。

そのティアナの眼を見て、なのはは激しく困惑した。

本当に溜まりに溜まっていた憎悪が全て顕になったかのように、輝きがまるで無かった。

クロスミラージュの魔力刃とレイジングハートが激しい火花を散らしながら、組み交わされる。

 

「ティアナ! 一体、どうしたっていうの!?」

 

「ウルサイ! アンタハ…ワタシニ“力”ヲ…アタエナカッタ……オカゲデ、ワタシハヒトリダ…ヒトリボッチナンダ!! ニクイ…アンタガ……ニクイ!!」

 

「ッ!!?」

 

まるで狂気に取り憑かれた様な口ぶりではあったものの、ティアナの口から出た憎悪の言葉は紛れもなく、なのはに向けて放たれたティアナの本心だった。

 

「ティア! ほんとにどうしちゃったの!? お願いだからやめて! やめてよぉ!!」

 

スバルが後ろから必死にティアナに羽交い締める形で制止しながら、悲痛な叫びを上げる。

 

「ダマレェェ!!」

 

「うぐっ…!?」

 

だが、ティアナは止めようとしたスバルの鳩尾に目掛けて、鋭い肘鉄を打ち込んだ。

 

「ミンナ…ミンナ……ニクイ……ミンナ、キエテナクナレ!!!」

 

ティアナは狂気に満ちた叫びを上げながら、クロスミラージュの銃口をなのはとスバルに向けた。

 

「…ティアナ」

 

完全に正気を失った教え子を前になのはは、レイジングハートを握りしめながら、どうすればいいのか、必死に頭を回転させていた。

しかし、妙案は思いつかない。

恐らく、ティアナは何らかの洗脳魔法をかけられているのであろう。

しかし、今のティアナの状態からして、その術の構造がわからない…っというよりはそもそもミッドチルダ系の魔法でも、ベルカ系の魔法でもない奇妙な術であるからして、なのはには彼女にかけられた術を解く術がわからなかった。

 

 

 

「何を迷うておる? 教え子が道を誤りし時は全力全開で叩き、説き伏せるのがぬしのやり方ではないのか?」

 

突然声が聞こえ、なのは達が後ろへ振り向くと、そこには浮遊する輿に乗った包帯ずくめの不気味な風貌の男の姿があった。

 

 

「誰なの!? 貴方は!」

 

「ほぉ、そうであった。ぬしらと直接顔を合わせたのはこれが初めてであったか…われの名は“大谷吉継”……西軍総大将・石田三成の片腕にして、西軍の筆頭参謀…」

 

「い、石田三成の……片腕……!!?」

 

 

包帯の男…大谷の名を聞いたなのはとスバルは、思わず息を呑んだ。

無理もなかった…眼の前に現れたのは、行長や景勝のような西軍の幹部衆よりもさらに上…総大将たる石田三成の片腕…つまり西軍のナンバー2である。

その証拠に、大谷の傍らには、先程なのは達の前に現れた景勝が彼を守るように佇み、明らかに謙った様子で控えていた。

 

「まさか……貴方がティアナをこんな事に…!?」

 

大谷の姿を改めて一瞥したなのはは、ハッとなにかに気づいた様子を見せる。

そして、レイジングハートを大谷の乗る輿に向けながら叫んだ。

 

「答えなさい! 貴方、ティアナに…私の大事な教え子に何をしたの!!?」

 

なのはの叫び声には明らかに怒りの色が浮かんでいた。

 

「ッ!?」

 

初めて目の当たりにするなのはの本気の怒りに、一歩後ずさるスバル。

対する大谷はそんななのはの怒りの眼差しを含めた追求に少しも動じる事なく、飄々とした様子で応えた。

 

「われは、かの娘子が“力”を欲するのでそれを与えてやったまでの事…我は日ノ本に古より伝わる独自の術式“妖術”の使い手…これは、われと同じ術を操る者の協力を得て、施した術の一種…その娘子に宿り、極限まで満たされた猜疑心・羞恥心・劣等感・焦燥感で溢れた躁鬱の心を“鍵”となりし闇の力で解き放ち、溢れ出た負の感情を力にする事で宿主に強大な力を与える術…その名も“恐惶”

 

「“恐惶”…!?」

 

「元は三成が独自に編み出した技の一種であるが…われらは以前よりこれを第三者が意図的に起こせる方法を探求していた…その為に使えそう実験体を探しておったのだが…ちょうど良き所にこの娘子の存在を知った」

 

 

大谷が恐慌状態のまま佇むティアナを一瞥しながら言った。

それを聞いて、なのはの表情が驚愕の色に染まる。

それからすぐさま眼の前に大谷を睨み付けた。

 

「先の行長や島津との交戦以来、われら西軍はずっとこの娘子の動向を監視していた。そして調べさせて貰った。この娘子がぬしの教導に強い不満を抱いている事…ぬしら機動六課の者達との才能の差を憂いでいる事…そして、汚名を着せられたまま死んだ身内の名誉を挽回する為に戦っている事を…」

 

「ッ!? どこで、それを…!?」

 

六課の中でも限られた者しか知らない筈のティアナの秘密を、敵軍のナンバー2である大谷が知っている事に、スバルは驚きを隠せずにいた。

 

 

「何…ある人づてで聞いたまでの事……にしても、この娘子は実に良い“実験体”ぞ…正攻法の教訓しか教えぬ恩師への“猜疑心”…自らが犯した失敗や敗北に対する“羞恥心”…順調に才能を伸ばす友への“劣等感”…そして、思うように伸びぬ自らの実力に対する“焦燥感”……それらを増長させ、熟成された“不幸”を宿ったこの娘子は、植え付けた“闇の種”によって、“狂気”という名の最高の力を得た…おかげでわれらも“恐惶”の新しい活用方法を見出す事ができたぞ。感謝するぞ。高町なのは…」

 

「……その為に、今日の模擬戦を狙って……?」

 

なのはは静かに…しかし、その目にはギラギラと燃え上がらんばかりの怒りの炎を滾らせながら、必死に己を落ち着かせて訪ねた。

 

 

「然様。景勝が提唱したかの“軍神”上杉謙信が得意とした戦術『霧囲の戦法』で、ぬしらを惑わせ、戦力が最低限になったところを、景勝にあの娘子とぬしらを分断させる…そして、適度に交戦して疲弊したところにわれが“闇の種”を打ち込むという策であったが……まさかこうも簡単に引っかかるとはの…」

 

「くっ……」

 

嘲るように言い放つ大谷に、なのはは悔しげに歯を噛み締めた。

 

「さらに言えば、われがその娘子に打ち込んだ“闇の種”には特別な仕掛けを施してあってな…この娘子は狂気に駆られてはいるが、同時にわれの施した術により、命令に忠実に従う人形とも化しておる。即ち…われが戦えと命ずれば、この娘子はぬしらに対しても躊躇する事なく戦う。勿論、われがその場で『死ね』と娘子に命ずれば………」

 

 

「や…やめて……やめて!!」

 

 

ワザと話を途中で打ち止めた大谷に、スバルが悲鳴のような声を上げる。

そして、なのはは大谷の果てしない悪意に、抑えていた怒りが明確に顔に顕になった。

 

 

「安心するがよいぞ。“徳川の愛弟子”よ。我は然程、外道鬼畜の類ではない…簡単に殺してしまえば……それこそ“遊興”の意味がないではないか?」

 

 

そう言いながら、大谷がパチンと指を鳴らした。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!」

 

すると、彼が現れてから微動だにしていなかったティアナが、再び獣のような叫び声をあげながら、近くにいたなのはに襲いかかってきた。

 

「ティア! お願い! 目を覚ましてよ!! ティア!!」

 

 

スバルが必死に呼びかけながら、もう一度ティアナを制止しようとしたが…

 

 

 

「…やれ。景勝よ」

 

「……了解」

 

大谷の言葉を合図に、今まで静観していた景勝が動き出した。

再びクロスミラージュの銃剣とレイジングハートで鍔競り合うなのはとティアナの間に介入しようとしたスバルの前に立ちふさがる。

 

「悪ぃな。気は進まねぇけど、これも命令だからな…」

 

「くぅ!……邪魔を…するなああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

スバルが怒りの叫びを上げながら、気のオーラを纏わせたリボルバーナックルを正拳で突き出した、それを大斧刀の腹で受け止める景勝。

刃こぼれの目立つ大斧刀から金属片が衝動で僅かに零れ落ちた。

 

「スバル!……くぅっ!?」

 

「ヨソミヲスルナァ!!」

 

 

オレンジの魔力刃とレイジングハートがぶつかり合い、火花が激しく飛び散る。

なのはは、繰り返し攻撃を仕掛けてくるティアナの猛攻を必死に受け流していた。

この時、なのはは彼女に対して一切反撃はしなかった。

 

「ほぉれ、どうした? 何故反撃せぬ? これまで、敵対する全てを容赦なく撃ち抜いてきた伝説の“エース・オブ・エース”というのがぬしの二つ名であろう? ならば、早ぅ自分を殺めようとするその娘子を撃ち堕とせ」

 

一向に攻撃する素振りを見せないなのはを嘲るように、大谷が声をかけた。

 

「そんな事……できない!!」

 

透きをついて突き出される魔力刃を避けながら、なのは苦悩に顔を歪ませながら叫んだ。

 

「ほぉ? それは何故か? この娘子はぬしの教えに背いた……教え子が自らの導きに違えし時…それを諌めるのが師の務めではないのか?」

 

「……確かに今日のティアナは私の教えた事とまるで正反対な事をやっていた……貴方達が乱入してこなかったら、私は彼女を窘めるつもりだった……でも!!」

 

なのはは掠れるような小声で呟きながら、自分を狙う魔力刃を片手で受け止めた。

耐魔法仕様のグローブを嵌めているとはいえ、強い魔力の結晶である魔力刃に直に握ったなのはの掌から血が垂れ落ちはじめた。

 

 

 

 

 

「闇に心を囚われたとはいえ…自分の大事な教え子を痛めつける事が、辛くない教官なんているわけがないじゃない!!」

 

 

 

 

なのはが大谷に向かって怒声を浴びせる。

そんななのはの言葉にティアナの攻撃の手が一瞬制止した。

 

「……ナノ……ハ……サ……」

 

 

 

ティアナの口から穏やかな声質の言葉が漏れる。

すると、それを見た大谷はすかさず、片手を差し出して念を送った。

忽ち、ティアナの中の“何か”が激しく蠢き、脳裏をかき乱すように、語りかけてくる。

 

 

 

 

 

 

この女は自分の気持ちを何も理解してくれない!

 

 

おかげで自分は強くなれない…力がつかない! 全てはこの女のせいだ!

 

 

こんな分からず屋の女など………殺してしまえ! その憎しみの思うがままに!!

 

 

 

 

 

 

「――――ッ!!? アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

再び咆哮を上げながら、ティアナはなのはに向かって突進する。

なのははティアナの目の前にもう一度ラウンドシールドを張り、彼女の突撃を押し戻した。

 

「やれやれ…ぬしも見かけによらず、強情を張るな……ならば、仕方ない。ぬしのその強情に免じて、特別にその娘子にかけた術を解く術を教えてやろう」

 

大谷は芝居がかった仕草で頭を振りながら、言い放つ。

 

「その娘子の狂気の源は、その心に埋め込んだ“闇の種”…つまり、強き光の力でこれを撃ち抜けば娘子の心は開放されるぞ」

 

「ッ!!?」

 

なのはの目が驚愕で見開かれた。

つまり、大谷の言葉が意味する事とは……

 

「即ち…ぬしはどのみち、かわいい教え子をその手で痛めつける必要があるというわけであるな……いやはや、実に愉快なことよ…ヒーヒッヒッヒッ!!!!」

 

「……どこまで卑劣な人なの……? 貴方……」

 

必死に障壁を破壊されんとレイジングハートを握りしめて魔力を込めながら、なのはが非難の眼差しを向けた。

 

「“(はかりごと)”とはこういうことよ……“卑劣”と蔑まれる覚悟を持たねば、群雄割拠の世で軍師は務まらぬ」

 

愉悦の笑みを隠す為なのか、大谷はワザと顔を背けながら話した。

 

「さあ、どうする? 高町なのは。その手で教え子を撃つか、自らが撃たれるか……どちらを選ぶが賢明か、“英雄”のぬしならば、もう分かっておろう?」

 

皮肉を込めながら、挑発的に尋ねてくる大谷を、忌々しげに睨みつけるなのは。

すると、そこへラウンドシールドを打ち破ったティアナが再びクロスミラージュの魔力刃を突き立てながら、なのはに迫ってくる。

 

「ニクイ…ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイッ!!……ミンナ…キエテシマエエェェェェェ!」

 

「ティアナッ!! クロスミラージュを下ろしなさい!」

 

「ダマレエエエエエェェェェェェェ!!」

 

ティアナの激しい怒りが籠った攻撃は、受け止めたなのはの体勢を僅かに崩した。

その隙を見たティアナは、すかさず鋭い蹴りをなのはの腹に打ち込んだ。

 

「ぐうぅっ!!?」

 

思わぬ一撃になのはは腹を抱えて悶絶する。

 

「シネェェェェ!!」

 

その隙きを突いて、ティアナはクロスミラージュでなのはの首を狙い、薙ぎ払うが、なのはは咄嗟に空に飛び上がる事で攻撃を外した。

振り下ろされた魔力刃が微かになのはの右頬を切り裂いた。

深く斬られることは避けられたが、頬には斬り傷が走り、鮮血が滲み出ている。

距離を取りながら、地上から数メートル上に退避しながらも、なのはは、狂気に捕らわれた今のティアナの実力の高さに驚く。

 

「リミッター制限に加えて、射撃魔法も思うように撃てない霧の中とはいえ……あのティアナがここまで私に近く渡り合うなんて……これが…“恐惶”の力だというの?」

 

戸惑い気味に呟くなのはの疑問に応えたのは大谷だった。

 

「ちと違うぞ…今、その娘子が見せている身体能力の高さは彼女の本来持ちうる力……それを我の植え付けた“狂気”が極限まで引き立てているのだ。つまり…今、ぬしが戦っているのは、この娘子の持つ本来の“強さ”……」

 

「ティアナの……本来の“強さ”…!?」

 

大谷の言葉を聞き、なのはの目が驚愕と困惑とで大きく見開かれた。

 

「われの見たところ…ぬしらはこの娘子を射撃手として育成していたようであるが、どうやら彼女は“隠密”としても高い素質を持っていたようであるぞ。 いやはや、なんとももったいなきこと…せっかく秘めていた良き才能に、ぬしらは気づかなかったのか? だとすれば、ぬしも師としては半人前であるな…」

 

「―――ッ!!?」

 

大谷の指摘になのはは思わず、怯んでしまう。

遺憾ながら、彼の言う事は見事に的を突いていたからだ。

確かに大谷の言うとおり、自分は今まで『センターガード』として…『強力な射撃魔法の使い手』としてのティアナを育成する事に集中してきた。

それは、無理をして新たな戦術を無造作に取り入れ続けた結果、大きな怪我を負った自分の失敗を踏まえ、自分と同じ射撃手としてのスキルを強化させる訓練メニューを組む事で、自分と同じ高度な技術を持つセンターガードに育て上げるという想いからであった…

だが、それ以外のスキル…それこそ今まさに自分に向けて振るわれている『近接戦闘』については、あくまでも状況に応じて使う“補助”として行使する事を前提に教えてきた。ティアナ本来の務めである『センターガード』の役割を担うに役立てられる技を教えるとなると、どうしてもそれらの技の優先順位は下に見てしまいがちだった。

それ故に、まさかティアナが近接戦闘においてこれだけの素質を持っていたという事実に驚きを隠せずにいると共に、大谷の指摘が痛い程に胸に深く突き刺さった。

 

「………ティアナ……」

 

ふと、なのはの脳裏に一週間前、佐助から言われた言葉が思い返される。

 

 

――――まずはゆっくり思い返して見る事じゃないかな? 『自分の今までの教え方が本当に正しいか?』…とかさ――――

 

 

 

(……私は……ティアナの教官なのに……彼女の事を……何もわかってなかった………ティアナが闇に堕ちたのは……私のせいなの…?)

 

 

 

「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

驚嘆の中で自問自答を繰り返すなのはを無理矢理に現実に引き戻すようなティアナの咆哮が聞こえた。

我に返りながら、こちらへと向かってくるティアナを見据え――そして、戦慄した。

ティアナの表情はまるで心の底から自分に深い憎悪を抱いているかのように歪んでいたのだった。

 

「ティアナッ!!」

 

「コロシテヤル…コロシテヤルゾオオオオォォォォォォォ!!」

 

叫びながら、ティアナはクロスミラージュから伸びた鋭い魔力刃の銃剣の鋒をなのはに向けて構えながら突進してくる。

なのはは顔を辛く歪めながらも、レイジングハートを構えた。

 

 

 

 

家康直伝の拳術が景勝を襲うが、景勝はわずかに動いただけで回避していく。

スバルの怒りに気圧されたのか…はたまた最初からやる気がないのか…距離を離した景勝を追った。

顔面を狙うリボルバーナックルとマッハキャリバーを狙う大斧刀が同時に繰り出された。

 

「スピットバンカー!!」

 

「氷斬閃!!」

 

蒼い気を纏わせたナックルと、冷気を纏った大斧刀が激しく激突し、お互いの威力を相殺してそれぞれに強い反動となって返った。

体勢を崩すが転び慣れているためすぐに立て直すスバルと、後ろに仰け反りながらも踏ん張る景勝。

 

「くっ……でかい武器なのにちょこまかと…うおりゃああああああああああ!!」

「突っ込んでくるしか芸がねぇのかよ?」

 

心燃え上がるスバルと対照的に、景勝は冷めたような口調で返した。

 

「覚えたほうがいいよ! 突っ込んでばかりにも能があるってことを!」

 

「何?……!?」

 

反応が一瞬遅れた。

スバルの膝蹴りが身体に減り込んだ。好機を逃がさずリボルバーナックルを放つ。

生み出された衝撃波と共に殴りつけ吹き飛ばす、リボルバーキャノンが景勝の額に直撃した

吹き飛ばされる景勝を追いながら蹴りが数回繰り出される。

すぐに景勝は大勢を立て直すと、大斧刀をピッケル代わりに地面に突き立てながら、無理矢理地面に制止する。

対するスバルも独楽のように身体を回しつつ蹴った。攻撃が速く拳も警戒するためにさばくのが精一杯。

景勝は予想以上のスバルの動きに若干戸惑っている様子だった。

 

「チィッ! 流石は家康(東の総大将)に鍛えられているだけあるって事か……あのティアナって小娘が、テメェに劣等感を懐きたくなるのも無理はねぇか!」

 

「よくも私の大事な親友を……アンタ達は許さないから!」

 

「おいおい。アイツに術かけたのは大谷だぜ? オレはそのお膳立てはしたけど、オレを恨むのは筋違いなもんだろうが?」

 

「それでも! アンタ達『豊臣』は、私の大事な親友を陥れたんだ!」

 

スバルはその怒りを一撃一撃にこめて放つ。

それを聞いた景勝はやるせない表情を浮かべながら溜息を漏らした。

 

「…まぁ、確かにそれを言われちまったら確かに反論の余地はねぇけど…」

 

「まだまだぁ!!」

 

ラッシュをかけてくるスバルの攻撃を受けながら、景勝は容赦をかなぐり捨てて戦うことにする。

 

「はあっ!……うっ!?」

 

「生憎…オレもやらなけりゃならねぇ立場背負ってやってんだ! 悪いが、テメェのその義憤…黙って買ってやるわけにはいかねぇんだ!」

 

突き出してきた左拳を避けつつ掴み取った景勝。

スバルはもがいてそれをどうにか振り解いたが、景勝はすかさず彼女の腹に容赦なく大斧刀を叩きつけた。

 

「がはぁっ!?」

 

苦しい呻き声と共にスバルは胃液を吐きながら、背後にあった建物に向かって吹き飛ばされる。

衝撃で壁が崩壊し、大量の瓦礫と共にスバルの身体が地面に転がった。

 

「ぐぅ!? …ううぅぅ! 痛…くうっ!?」

 

腹部を抑えながら転げ回り悶えるスバルを引き摺り起こして、空高く投げ飛ばした。

 

「うわあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

悲鳴を上げながら、スバルは霧の中へと吸い込まれるように飛ばされ、瞬く間に消えていった。

 

「ここから先はテメェにとって、エグい展開になる…見たくねぇなら、しばらく大人しく下がっていな」

 

景勝は、後方で繰り広げられるなのはとティアナの対決の様子を見据えながら、小さく呟いた。

 

 

 

 

大谷の妖術に操られたティアナとなのはが激しい戦いを繰り広げていたその頃―――

訓練所の別の場所では、佐助と足止めに転じた左近が、それぞれ電光石火といえる早業の応酬を繰り広げていた。

双刀を順手持ちで構える左近と二振りの大手裏剣を手に取った佐助…両者共に常人の目には留まらぬ速さで相手に刃を振り下ろし、時折、足技を混じえて牽制を図りながら、どうにか決定的な一撃を加える隙を探ろうとした。

しかし、お互いに俊敏さには自信のある2人の実力は見事に拮抗し、時間だけが余計に過ぎていくのだった。

 

「くそっ! やっぱり、アンタとは相性が悪いな! これじゃあ、いつまでも埒が明かねぇ!!」

 

左近の蹴りを大手裏剣で受け止め、佐助は言い放った。

 

「そいつはご尤も! まっ!オレとしてはアンタをここで足止めしておけるだけでも十分なんだけどさぁ!」

 

左近は軽口を叩きながらも、その鋭い眼から放つ殺気は微塵も衰えていなかった。

佐助は大手裏剣を振り下ろしながら、両脇に二体の影分身を投影させ、三方向からの攻撃で左近を仕留めようとした。

 

「おっと! 俺様にイカサマは通じないぜ!」

 

左近が地面を蹴って後ろに跳びながら、斬りかかってきた2体の分身をそれぞれ双刀で一太刀の下、斬り捨ててしまった。

 

「本当に…面倒なくらいに身軽というか……兄さん、忍になってもよかったんじゃないかい?!」

 

「へっ! 生憎、イカサマ使いなんて真っ平御免なものでね!」

 

そう軽口で返しながら、左近は佐助の顔面目掛けて蹴りを放つ。

――鈍い音が響いた。

 

左近の放った蹴りは佐助が顔の前で腕を交わすようにして構えた大手裏剣によって又も受け止められていた。

 

「そいつは残念! 兄さん程の腕の持ち主なら、良い忍になれたと思うんだけどね…まぁ、それで石田忍軍につかれたらそれはそれで面倒だけどさ!」

 

叫びながら、佐助の身体は左近の蹴りを受け止めた姿勢を保ったまま、音も無くその影の中へと引き込まれていく。

一瞬何が起こったのか理解できなかった左近だったが、すぐにその仕掛けの全貌を察すると顔に焦りの色を浮かべた。

 

「……しまった!」

 

左近は慌てて影に沈みかかっていた佐助の脳天を狙って双刀を振り下ろしたが、刃は既のところで影の中に完全に消える佐助には届かず、虚しくアスファルトの床に突き立てられた。

慌てて、双刀を床から引き抜いて構える左近だったが、既にその場に佐助の気配は感じられなかった。

 

「影に紛れて逃げる(イカサマ)…か……チィッ! だから俺ぁ忍は嫌いなんだよ!」

 

左近は悔し紛れに叫びながら、双刀を鞘に収めた。

 

 

 

 

ティアナはなのはに手が届く距離まで接近すると、繰り返し魔力刃による刺突や斬撃を繰り出してくる。

対するなのははレイジングハートの穂先でいなすか、障壁(シールド)を張る事で、彼女の猛攻を必死に受け流していた。

だが、それ以上は反撃の動きは見せない。さっきまで行っていた牽制目的のアクセルシューターなども今は使っていない。

 

 

「どうした? 早ぅこの娘子を討たねば、主が己の弟子に討たれるやもしれぬぞ?」

 

一向に攻撃する素振りを見せないなのはに対し、少し離れた場所から見ていた大谷が挑発を入れてくる。

 

Master!(マスター!)Directions of aggressive magic in early times and the next!(早く、次の攻撃魔法の指示を)

 

見かねたレイジングハートも、いつもの主人らしからぬ動きに戸惑いを隠しきれない様子で、なのはを促した。

しかしなのはは怯むこと無く、受け身の姿勢を決して崩そうとはしなかった。

 

 

間髪入れずにクロスミラージュの銃口から伸びた魔力刃からの横凪ぎ。

速く、鋭く、重い一撃を、バックステップで避けながらなのはは一向に反撃の一手を踏み出せずにいた。

 

勿論、なのはに反撃する手立てがないというわけではない。

初めこそ、ティアナの繰り出してくる迅速といえる動きに戸惑いこそしたが、数回避けた事によりその動作のパターンを大体読み取る事ができていた。

 

確かに今のティアナは訓練を課していた時よりも格段に強くなっている。

しかし、どんなに強化されていても、近接戦闘においては無駄な動きが多く、やや大振りな攻撃は、訓練の際になのはが指摘していた彼女の欠点そのままだった。

つまり、大谷が言うティアナの『強化』とはあくまでも身体的な能力の強化であり、技の精度については元来のティアナそのままなのだ。

ここでなのはが少しでも本気を出して、魔法を繰り出せば、簡単に制圧する事ができるはず。

 

 

Master!(マスター!)

 

 

レイジングハートが警告色の魔力光を放ちながら語気強めに促した。

そこへティアナがクロスミラージュを強く握り締め、再びなのはに向けて突進する。

 

 

「ワタシヲ……バカニスルナァァァァァァァァァァ!!」

 

 

「――――ティアナッ!! 私の話を聞きなさい!」

 

 

「ダマレェェェェェェェェェッ!」

 

 

ティアナの激しい怒りが籠った攻撃をなのはは素手で受け止めた。

だが、その押す力は予想以上に強く、なのはは体勢を僅かに崩した。

 

その隙を見たティアナは、すかさず片足を振り上げ、なのはの鳩尾に鋭い蹴りを打ち込んだ。

 

 

「グッッ!? ―――」

 

「シネエエエエェェェェェェェェェッ!」

 

 

ティアナは躊躇する事なくクロスミラージュをなのはの胸に目掛けて突き立てようとした。

 

(やられる!?)

 

勿論、それは“いつもの”なのはであれば、簡単にいなす事のできる一撃だった。

しかし、なのはの胸の内に燻っていた動揺、迷いは彼女の反応をコンマ一秒ながらも鈍らせてしまった。

結果、彼女が回避行動に動きかけた時には魔力刃の刃がその胸に届こうとした。その瞬間だった―――

 

 

 

 

ガキイィィィン!

 

 

 

 

ティアナとなのはの間に割り込む様に一陣の漆黒の風が通り過ぎた。

突然視界を割り込んだ一撃にティアナの動きが思わず止まる。

ティアナとなのは、そしてその様子を観戦していた大谷は謎の風が飛来してきた方向に顔を向ける。

 

「やっぱり、そういう事か…アンタが絡んできたって事はこういう趣味の悪ぃカラクリを仕込んできたのだろうとは思ったけどさ…」

 

「!?…佐助さん!?」

 

「ほぉ…左近の足止めから逃れたのか?(ましら)よ」

 

「思ったより手こずらされたけどな…」

 

大谷の嘲るような物言いに冷静に返しながら、佐助はティアナの方を一瞥した。

 

 

「サァ…サルトビ…サルトビィィ!」

 

 

ティアナは佐助の存在を認識するや否や、標的を彼に切り替え、手にしていたクロスミラージュを片手に斬り込んできた。

佐助はバックステップでそれを避けながら、今しがた彼女を牽制した“風”の正体である大手裏剣を手元に引き戻すと、突き出された魔力刃を受け止めた。

 

「…大谷。テメェ…ティアナに何しやがったんだ!?」

 

攻撃を受け止めたまま佐助は大谷に向かって強い口調を飛ばした。

 

「我らはその娘子が“力”を求めたから、それを得る手助けをしたまでの事ぞ…おかげで娘子もさぞ強ぅなったであろう?」

 

嘲るような口調で尋ねる大谷の言葉に佐助の目が大きく見開かれる。

 

「あぁ、ホントに強くなったぜ……」

 

佐助は大手裏剣でティアナを押し返しながら叫んだ。

 

 

 

 

「…痛々しい程にな!」

 

 

 

 

 

 

 

「スバル―――スバル―――」

 

「ん…?」

 

仄暗く染まった視界の向こうから聞こえてくる聞き覚えのある声が耳に届く…

 

「スバル!――スバル!――」

 

それは明らかに自分の名を呼ぶ声だった。

そしてその声の主は…

 

「………い…家康…さ……」

 

 

「スバル!」

 

 

一際大きな声と共にスバルの閉ざされていた視界が突然開かれる。

同時に全身に残る鈍い痛みが走った。否、厳密には気を失っていた事で忘れていた感覚が戻ってきたと言った方が正しいのかもしれない。

まだ微かに霞みながらも光が入ってきた視界の中に最初に見えたのは、心配そうな表情で自分を見つめてくる恩師 家康だった。

 

「気がついたか!?」

 

「い…家康さん…? あれ…こんなところに…?」

 

見ると、スバルの周りには政宗や幸村、フェイト、ヴィータ、エリオ、キャロが集まっていた。

 

「それはこっちの台詞だ! 模擬戦観てたらいきなりわけのわからない霧がかかったかと思ったら、ロングアーチやお前らやなのはとも全然念話が繋がらなくなるし…!」

 

「仕方なく状況を見ながら待機していたんです。そうしたら、いきなりスバルさんが霧の中から吹き飛ばされてきたもんですからビックリしましたよ」

 

ヴィータとエリオから今の状況に至った経緯を説明を聞きながら、スバルは自分達の身に何が起きたのかはっきりと思い出した。

 

「スバル。一体何が起きたっていうの?」

 

フェイトが家康の後ろから覗き込みながら尋ねた。

 

「そ…それが……ティアとなのはさんが大変な事に……」

 

スバルは霧で閉ざされてから起こった出来事の一部始終を説明した。

 

 

「シネェェェェッ!!」

 

 

相変わらず獣の咆哮に近い叫び声を上げながらティアナは銃口から不安定な魔力刃の伸びたクロスミラージュを手に佐助に迫った。

しかし佐助はティアナの動きを読んで、その刺突を余裕で交わしながら足技を繰り出し、回し蹴りを食らわしてティアナをその場に倒す。

彼女の手からはクロスミラージュの一挺(かたわれ)が離れてその場に転がる。

 

「ティアナ…この模擬戦…荒れるとは予想していたがまさかお前がここまで堕ちるなんて予想もできなかったぜ……」

 

「ダマレ! ワタシハ…ワタシハタダ…ツヨクナリタイ……ソレダケナノニ」

 

「そうか? そこまで強さに拘るなら…」

 

 

佐助はティアナを挑発するようにそう答え、彼女にクロスミラージュを拾わせた。

 

 

「今のお前のその“強さ”を俺にぶつけてみせなよ? 遠慮はいらねぇぜ?」

 

「!? ちょ、ちょっと佐助さん!?」

 

「…………ッ!? ホザクナアァァァァァァァ!!!」

 

佐助の挑発的な一言にティアナは逆上し、佐助に再び襲い掛かる。

 

だがこの攻撃も佐助は鮮やかな身のこなしでかわしていく。

そして、何を思ったのか佐助はティアナの左腕を掴み、そのまま彼女の後ろに回り込むと両腕を抱える形でその身を抑えた。

 

 

「ヤメロ! ハナセッ!! ワタシニサワルナァァァァァァァァッ!」

 

 

駄々をこねる子供のように暴れるティアナを必死に取り押さえたまま、佐助は呆気にとられていたなのはに向かって叫ぶ。

 

「今だ! なのはちゃん! 俺たちに砲撃魔法を叩き込め!!」

 

「えっ!?」

 

佐助の口から出た言葉になのはは思わず、愕然として数秒程沈黙してしまった。

 

「佐助さん…!? 今…なんて…?」

 

「コイツは唯の洗脳術なんかとは違う! 大谷の仕組んだ特殊な術の込められた珠がティアナの身体に埋め込まれてやがるんだ! そいつは意図的に人間を狂化させる事でそいつの持つ潜在的な能力を無理矢理に引き出す事ができるが力を震えば振るう程、埋め込まれた珠が心臓と一体化していく! そして完全に一体化しちまったら最後! そいつは二度と正気を取り戻す事はできねぇ! 助ける方法は唯一つ…完全に心臓と一体化する前に強い光の力を浴びせて珠を身体から引き剥がすんだ!!!」

 

「そんな…!そんな事したらティアナだけじゃなくて佐助さんまで…!」

 

「いいからやるんだ!! 彼女が永遠に正気に戻れなくなってもいいのか!!」

 

「ッ!?」

 

なのはは目を見開きながら佐助の顔を見つめ、それから彼に抑えられたまま、悶える様に暴れるティアナに目をやった。

 

 

 

「ティアナ………」

 

 

「ハナセ! ハナセハナセハナセハナセハナセハナセハナセエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェッ!!!」

 

 

なのはは悲痛な気持ちを瞳に顕にしたまま、意を決した様に眉を吊り上げる。

同時に彼女の足元に魔法陣が浮かんだ。

 

 

なのはは右手の人差し指で十字を切りながら、誰にも聞こえない重苦しそうな小声を零すように呟いた。

 

「ごめんね。ティアナ…後でちゃんと……お話しよう……」

 

 

「ハナセェェッ! ヤメロオオオオオオォォォォォォォォ!!!」

 

 

「絶対に離すかよ! お前にはもう一度なのはちゃんとちゃんと向き合ってもらわなきゃならねぇからな…なんとしてもここで目を覚まさせてやる!!!」

 

佐助は躊躇う事なくティアナを羽交い締めにしたまま、再三なのはに向かって催促する。

 

「やれ! 早く! 躊躇うな!!」

 

 

 

 

 

「………クロスファイヤー…」

 

 

 

 

「ウワアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

「――――ッ!! …シュート!」

 

 

 

 

なのはの目の前に浮かんだ複数の魔力弾が一斉にティアナを羽交い締めにした佐助に向けて飛来する。

飛来してくる魔力弾の強い光を前にティアナは最後の足掻きの様に悶え、佐助は覚悟を決めたように眼を閉じる。

 

 

 

 

直後、激しい光と砂煙が2人を包み込んだ――――

 

 

 

 

 

 

「ティアナ! 佐助さん!」

 

光と砂煙が収まり、2人の立っていた場所が見えてきた。

砲撃で生じた砂塵に噎せそうになりながら、なのはは二人の安否を確認しようと近づいた。

 

「ティア――――」

 

再度呼びかけようとしたなのはの前で立ち込めていた砂塵を切り開くようにして、気を失ったティアナを小脇に抱えた佐助が姿を現した。

佐助の身体には何発か魔力弾が命中したのか、忍装束は所々で破れている箇所があり、額に着けた鉢金からは僅かに血が垂れていた。中でも一番重症なのは力無く項垂れている左腕のようで振り子のように揺れている様子から恐らく骨折しているのであろう。

そんな状態にありながらも、冷静な面持ちを崩さずにティアナを片腕だけで抱えられるところは、流石は戦国に名高い忍といえるところだった。

 

そして、肝心のティアナの様子であるが…

魔力弾の直撃を食らったせいか気を失っていたものの、白銀に染まっていた髪の色は元のオレンジ色に戻り、悍ましい色のオーラとなって漂わせていた殺気も完全に消えてなくなっていた。

気を失い力無く目を閉じたその顔つきは、いつものティアナのものに戻っていた。

 

「ティアナ!…ティアナ! しっかりして!」

 

佐助からティアナを受け取り地面におろしながら、なのはが呼びかける。

その時、なのは達の周りを取り巻いていた白い濃霧が、まるで初めから夢幻であったかの様に一瞬にして消え去り、一同の前にはいつもの快晴の下の訓練所の風景が戻ってきた。

だが、訓練所の状態は酷いものだった。

周囲の建物は尽く弾痕や砲撃による穴が空き、地面のアスファルトもクレーターだらけの荒地に還りつつあった。

特に佐助とティアナが今しがた立っていた場所に至っては地表はおろか、地下一階分の深さまで地面が完全に抉られて消失しており、なのはの放った『クロスファイアシュート』の威力の凄まじさが伺いしれた。

 

「なのはさん! ティア!」

 

「佐助!!」

 

その時、スバルと幸村を先頭に家康、政宗、フェイト達がなのは達の元へと駆けつけてきた。

全員、霧が晴れたと同時になのは達の所在地を把握してやってきた様子だった。

 

「あぁ…そんな…ティア! ティアァァァァァァァッ!」

 

「「ティアさん!!」」

 

スバル、エリオ、キャロは、地面に横たえたまま意識を失ったティアナの姿に悲痛な声を上げる。

 

「心配するな…気を失ってるだけだ…」

 

そんなスバル達を諭す様に話す佐助に幸村が近寄ってきた。

 

「佐助! お前こそその怪我は…」

 

「悪ぃな大将…ちぃっとばかし無理しすぎた。まさかこの俺が腕の一本やっちまうなんてな…」

 

「そ、それはいかん! すぐにシャマル殿の下に―――ッ!?」

 

「待て、真田!」

 

佐助を介抱しようとした幸村に、突然、声を張り上げて制止したのは家康だった。

 

「ど、どうしたの? 家康君?」

 

「……………そこかっ!?」

 

家康は皆の前に歩み出ながら、その一声と共に右腕を振り上げ、ブローの動作と共に気弾を撃ち放った。

その気弾は近くにあった廃墟ビルの屋上へ向かって飛来していくが、そこへ到達するや否や、どこからともなく飛来してきた光る珠によって相殺される形で弾け散った。

 

「我の気の波長を読み取るとは…流石は東の大将…と褒めた方が良いか……」

 

「……やはり、お前が裏で糸を引いていたんだな……刑部!」

 

「か、景勝殿!? …まさかそなたもこの世界に…!?」

 

「…やっぱりテメェも来てやがったのか。石田のWaist purse」

 

気弾が弾かれた部分の空間が歪み、そこへ現れたのはこの策謀に関わった将達…

参謀・大谷吉継に五刑衆・ 上杉景勝、総大将近習・島左近の3人…いずれも西軍において大きな権威と存在感、そして実力を有した猛者達だった。

 

唯一ホテル・アグスタで島左近と相対していた政宗となのはを除く一同…家康や幸村はその思わぬ再会に驚き、戸惑う…

対してミッドチルダ勢の中でもこの霧の中で起きた出来事を知らなかったフェイトやエリオ、キャロ、ヴィータの4人は、ここで初めて3人と相対した事になるも、いずれもその漂う殺気や覇気の大きさから家康達に劣らぬ実力者である事を直感的に察していた。

 

 

「あれが……スバルの言ってた西軍のナンバー2…大谷吉継…」

 

「そんでもってあの戦斧(アックスソード)みたいなバカでかい剣を担いだ“女”が、豊臣五刑衆の末席って奴か…チィッ! あの小西行長(毒蛇野郎)の仲間って聞くだけで胸糞悪ぃ…」

 

 

フェイトが大谷を見つめながら息を呑む隣で、ヴィータが小さく舌打ちしながらボヤくように吐き捨てた。

その声は廃ビルの屋上に立つ景勝には決して届いていない筈なのに、屋上に立っていた景勝は不愉快げにヴィータを睨みつける。

 

「あの赤いお下げ髪のガキ…俺の癇に障るような事言いやがった気がするな……」

 

「まぁ、落ち着け。景勝……今は戯れの暇はない…」

 

釘を差すように景勝を宥めながら、大谷は家康達を見下ろしながら、不気味な含み笑いを浮かべた。

 

「まずは再会を喜ぶべき…か? 権現…それに独眼竜に武田の若虎…ぬしら程の猛者が揃っていたにも関わらず、我らの仕組んだ策略(しかけ)にまるで気が付かなかったようだな」

 

「……あぁ…話はすべてスバルから聞いた。何故…ティアナを狙った……?」

 

家康はあくまでも冷静に…しかしその言葉に確かな怒りの色を含ませながら尋ねた。

大谷はさも当たり前の様に切り返した。

 

「フフフフ…そのティアナなる小娘の抱える“不幸”はなかなかに良い闇に染まっていたのでな…こちらの世界の人間の不幸は如何に、我が好みに繰り踊らせる事が出来るのか…ちと興味を抱いたまでの事よ…」

 

「―――ッ!? そんな理由の為に…ティアをあんな目に遭わせたっていうの……!?」

 

そう言って唇を噛みしめながら、スバルは大谷達を睨んだ。

 

「それは筋違いというもの…我らは愚鈍な師達に代わって、彼女(ティアナ)の兵としての素質を引き出してみせたまでの事よ…」

 

「『愚鈍な師達』って、アタシらの事かよ? ミイラ野郎」

 

ヴィータが眉間に青筋を浮かべながらグラーフアイゼンを片手に持ち、威圧的に尋ねる。

いつでもバリアジャケットに着替えて、挑みかかってもおかしくない様子だ。

 

「…それについては、既に当の本人が一番良くわかっているのではないか? のぉ、高町なのはよ……」

 

「………くぅっ!」

 

大谷に名を呼ばれ、なのはが一瞬怯えた様子で身を震わせ、そして拳を強く握りしめる。やり場のない怒りが湧き出ている事が伺えた。

 

 

 

「…にしても…本当ならこのまま同士討ちで幾人か斃れるまでが我の筋書きではあったのだが……まさか死人を一人も出さぬとは…此度は猿飛(ましら)にしてやられたというわけか…」

 

呟く様にそう言いながら、大谷が顔の前で指で印を切ると、彼らの周囲を取り囲むように複数の光る珠が回転し始めた。

 

「しかし、ぬしのおかげで面白い余興を見せてもらった。その奮闘に免じて此度はこれで一度引き下がらせて貰おう…しかし覚えておくがよい。これはまだ我らの“戯れ”のほんの前座に過ぎぬ。再び相対する時にはぬしら全員に更なる余興を用意してやろうぞ」

 

その瞬間、大谷達の周りを回転していた珠によって巻き起こった白い煙が一行の姿を覆い始めた。

 

「ま、待ちなさい!」

 

「逃がすか!!」

 

フェイトとヴィータが大谷達を取り押さえようとバリアジャケットを纏おうとするが、それぞれデバイスをセットアップする前に煙は3人を包み隠してしまう。

そして、煙が晴れた時、大谷達は姿を消してしまった……

 

「き、消えた!?」

 

「まだそう遠くには言ってねぇはずだ! 急いでグリフィスに知らせて、後援部隊を総動員して隊舎周辺を捜索する!」

 

一瞬にして文字通りに煙に巻いてしまった大谷達の鮮やかな撤退に戸惑うフェイトの傍らでヴィータがそう言って、ロングアーチに向かって念話を飛ばす中、なのはは一先ず脅威が去った事を確認すると、さっと家康達に背中を向けた。

 

「家康君…スバル達と一緒にティアナを医務室に連れて行ってあげて…」

 

なのははそれだけを言うと、早足で歩き始めた。

まるで家康達から逃れるように……

 

 

「さ…佐助さんも、早く医務室に!」

 

「そ、そうだ! お前が一番酷い怪我をしているのだから早く…」

 

それを聞いて我に返ったフェイトと幸村が佐助の下に駆け寄り促した。

だが、佐助は自分の怪我よりも去っていくなのはの後ろ背中に注目していた。

 

 

そして、歩いていくなのはの肩が小さく震えている事に気づいていた……

 

 

 

「………なのは…」

 

 

 

 

 

同じく、なのはの後ろ姿からその異変に気づいていた政宗もまた、複雑そうな面持ちで見送るのだった……

 

 

 

 




改めまして…紆余曲折ありましたが、2021年最初にして、4ヶ月半ぶりの更新再開です。

元々、衰えつつある創作意欲をリセットする目的で初めたリブート版なのにそのリブート版でオリジナル版と似た事になってしまってどうすんのって話ですよね(苦笑)

とりあえず、これから少しずつまた更新ペースを取り戻す事を目標にがんばりますので、前書きのふざけたような開き直りはご愛嬌と思っていただいて、出来れば広い目で見守っていただけると幸いです。

最後にくどいかもしれませんがもう一度…長らくもどかしい思いやご心配をかけてしまい、本当にすみませんでした。
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