リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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機動六課・隊舎周辺で繰り広げられる六課・東軍と西軍との激しい攻防は各々更に白熱しつつあった…

己の過去を語った景勝と、己のコンプレックスを払拭したティアナ、彼女を見守る真田主従達…

裏切り者・ジャスティと彼を追うエリオ、キャロ、小十郎…

それぞれ守るべき主を持つ強い信念を抱えたシグナムと左近…

そして、なのは救出の為にリインを伴って走る政宗……

それぞれ熱き魂を滾らせる魔導師そして武士達の激闘の行方は…?

カリム「リリカルBASARA StrikerS 第三十二章 これを読んだ方はもれなく全員ザビー教に…」

シャッハ「入りません!!」


第三十二章 ~機動六課攻防戦 それぞれの激闘~

ティアナと武田主従が上杉景勝と交戦を開始した頃…

機動六課 職員用ガレージ――――

 

「政宗さん! こっちですぅ!」

 

リインの案内でやってきた政宗は、ガレージに止められた複数の車の中からヴァイスの所有する赤いバイクを見つけ出した。

 

「こいつか…ヴァイスの野郎もなかなかNiceな代物持ってんじゃねぇか」

 

政宗は口笛を鳴らしながらそう言うと、颯爽とバイクにまたがった。

 

「それじゃあ行くぜ…Here we go!!」

 

そう叫んだ政宗。

 

しかしバイクは動かない…

 

「Ah!? なんで動かねぇんだよ!?」

 

この世界に来てから、バイクに興味を持ち出していたものの、まだその動く仕組みについては、よくわかっていなかった。

うんともすんとも言わないバイクの上で吼える政宗にリインが横から苦笑を浮かべながらマスターキーを持ってくる。

 

「あの…政宗さん…バイクっていうのはここの鍵穴に差すんですよ。このか―――」

 

リインの説明が終わらないうちに政宗はバイクの鍵穴を探し出し、それを見つけると躊躇なく突き刺した…愛用の“六爪(りゅうのかたな)”の一本を…

 

 

 

「…ってああああああああぁぁ!? なにやってるんですかあああぁぁぁぁぁ!?」

 

 

リインが髪の毛が逆立つまでに仰天しながら叫んだ。

 

「Jealous! “刺せ”って言ったから刺しただけだろうが?」

 

「そうじゃなくてこの鍵を“差す”んですってば!」

 

あっけらかんと言ってのける政宗に対し、リインは両手でマスターキーを掲げながらツッコんだ。

 

「あぁ~あ。 これ、どうするんですかこんなの刺しちゃって~!? 絶対バイク動かないですよぉ!」

 

リインがそう呆れながら頭を振るが…

 

 

ブロオオオオオオオオオォォォン!!

 

 

「うおっ!?」

 

「って動いた!? ですぅ!?」

 

なんという奇跡か…バイクは力強い音ともにエンジンを吹かし始めたのだった。

 

「Ha! Coolじゃねぇか。それでこそだ!」

 

政宗は凄みのある笑みを浮かべるといつもの馬に乗る姿…つまり、ハンドルを握らずに両腕を胸の前で組んだ仁王立ちの姿勢をとった。

 

 

「それじゃあ行くぜ! つかまれリイン!」

 

「えっ!? そういえば政宗さん…バイクの運転ってわかるんですか?」

 

「知るか! こうなりゃ独眼竜なりのやり方…『成り行きまかせ』でやらせてもらうぜ!」

 

政宗の言葉を聞き、再び仰天するリイン。

 

「そ…そんな無茶ですよ!! 私が教えますからそのとおりに動かして…」

 

「行くぜ!」

 

リインの説得が終わらぬまま、政宗はバイクの右グリップを捻った

 

「奥州筆頭 伊達政宗…推して参る!!」

 

「えっ!? ちょ、ま…ええええええええええええぇぇぇ!!?」

 

リインの絶叫と共にバイクはぐんと前に動き出したかと思いきや、瞬く間にスピードを上げて、走り始めた。

ガレージの戸を派手に突き破り、街路樹をへし折りながら、バイクは猛スピードで公道へと飛び出した。

 

 

「Yaaaaaaaaaaaaaaaaaahaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

「ぎょぁああああああああああああああああああああああ!! 助けてですぅぅうううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 

楽しげに笑いながら、バイクを更に加速させる政宗と、風圧にふき飛ばされそうになりながら、政宗の肩に必死に掴まって絶叫するリイン。

対照的な表情をそれぞれ浮かべながら、二人を乗せたバイクは一路なのは達の下へと向かった。

だが、そんな自分達の出陣する様を物陰から見届けていた者の姿があった事に、政宗もリインも気づく事がなかった。

 

 

 

「独眼竜も随分面白そうな“おもちゃ”を持ち出したみたいじゃないか。それなら、こっちもそれに合ったものを用意してやろうかね…」

 

見守っていた者の正体…皎月院は新たなイタズラを思いついた子供のようにニヤリと笑うと、懐から数枚の呪符を取り出し、呪文のようなものを唱えると、それを目の前の地面に向かって投げ飛ばした。

 

呪符は地面に落ちる前に巨大な光の陣形へと変わると、その天上からまるで吸い寄せられるように、5機の機械兵器が召喚されてきた。

外見はスポーツタイプのオートバイに似た二輪車であるが、その外装はガジェットドローン特有の水色を基調とした装甲で覆われ、そのヘッドランプの部分にはモノアイ型のビームランプが代わりに埋め込まれていた。

 

「ガジェットドローンⅧ型…アンタが持たせてくれた試作の玩具(おもちゃ)、存分に楽しませて貰うよ。スカリエッティ」

 

皎月院はそう呟くと、指をパチンと鳴らして、合図を送った。

すると、召喚された5機の『Ⅷ型』と呼ばれる新型ガジェットドローンはひとりでに駆動すると、全て同じ音調でエンジン音を鳴らすと、機械特有の1ミリの乱れもない完璧隊列を組みながら、政宗の乗ったバイクを追って走り出したのだった…

 

 

 

 

 

佐助の大手裏剣とティアナの魔力弾が景勝に向けて放たれるのと、景勝が大斧刀を振り上げるのはほぼ同時であった。

 

 

ガキィィィン!!

 

 

「チィッ!」

 

「速い!」

 

景勝は鈍重な大斧刀を己の手足のように軽々と振るい、大手裏剣と魔力弾を弾き飛ばすと、驚いている佐助とティアナに向かって風に乗るように軽やかな動きで迫ると、そのまま二人を斬りつけようとする。

しかし、佐助もまた大手裏剣を居合い並みの速さで振るう。

佐助の大手裏剣と景勝の大斧刀がぶつかる。

 

「ッ!? …痛ぅ…!! 相変わらずとんでもねぇ馬鹿力だねぇ」

 

「お生憎様。オレは腕っぷしには自信があんだよ。今だったらおたくの武田信玄(虎オヤジ)にも勝るかもな?」

 

「左様な強気な台詞は我が拳を砕いてから、言うでござるよ! 景勝殿!!」

 

幸村が後ろから飛びかかりながら、景勝に向けて二槍を突き出すが、景勝の素早い動きで躱された。

 

「避けた!?」

 

躱された以上に、景勝の予想以上の速さに驚く幸村。

刹那、真後に気配を感じ、振り向くと、そこには既に大斧刀を振りかぶった景勝の姿が浮かび上っていた。

 

砕氷閃(さいひょうせん)!!!」

 

技名と共に景勝の繰り出した渾身の一太刀を、幸村は二槍で防ぐが…

 

「ぐぁああぁぁぁっ!!」

 

衝撃に押されて吹き飛ばされ、そのまま近くにあった木の幹に叩きつけられてしまった。

 

「大将!?」

 

「幸村さん!」

 

佐助、ティアナは幸村の名を呼んだ。

幸村はガックリと首を項垂れて、気を失ってしまっていた。

 

景勝はそのまま、今度は佐助達の方に向かって、大斧刀を野球のバットを握るかの様な構えをとった。

同時にそのサラシの巻かれた大斧刀の刀身を水色の気のオーラが微かに白煙を上げながら包み込んだ。

 

氷塵閃(ひょうじんせん)!!」

 

景勝が再び大斧刀をフルスイングすると同時に強烈な衝撃波が放たれ、佐助とティアナ目掛けて襲いかかる。

 

「ティアナ! 身体を側転させて避けろ!!」

 

危機感を感じた佐助はそうティアナに忠言した。

ティアナもそれに従い、左横に側転して衝撃波を避ける。一閃の衝撃波が通り抜けると共に、その道行きにあった草木や木々を瞬く間になぎ倒してしまった。

だが、よく見るとそれだけではなかった。

 

「ッ!? 何あれ!?」

 

ティアナの目が驚愕で見開かれる。

衝撃波で抉られた地表やなぎ倒された木々にはガラス片の様に細かい氷の欠片が無数に突き刺さっていた。

もしもあんな技をまともに食らっていたら、大変な事になっていたのは間違いなかっただろう。

実際、完璧に避けた筈のティアナの右頬は僅かに氷の欠片が掠ったのか、小さいながらも切り傷ができて、赤い血が垂れていた。

 

「くっ…! 昼間は頭に血が上ってたから実感できなかったけど…末席とはいえ『豊臣五刑衆』ってのはやっぱり一筋縄ではいかない相手みたいね…」

 

ティアナは左手で右頬から流れる血を拭うと、改めて、『豊臣五刑衆』の人間の常識を超えた強さをため息まじりに評した。

一方、地表を抉られた場所を挟んで、ティアナの反対側にいた佐助は、大手裏剣を構え直しながら、景勝の予想以上の強さに驚き出す。

 

(なんだこの速さは…!? いや、速さだけじゃねぇ。 技の威力も以前とは、けた違いだ! 豊臣の外様大名になって、更に腕を上げたみたいだな…!)

 

佐助や幸村が景勝と最後に刃を交えたのは、武田軍総大将 武田信玄が病に倒れ、越後の国で『御館の乱』が勃発する直前―――

甲斐、越後の間のちょうど中間点にある信濃の国・川中島における何度目かの武田、上杉の合戦の折りに信玄、謙信の一騎打ちの裏で、幸村と佐助、景勝とかすがの主従同士が激しい刃を交わした時以来だった。

武田、上杉共に豊臣と手を結んでからは、お互いに同じ豊臣派の勢力になった事に加え、それぞれ国や軍が疲弊・弱体化した事もあって、大っぴらに戦をする事もできなければ、交流する暇さえもなくなっていた為、その間それぞれがどういう動向であったかは、配下の忍衆の報告などからしかうかがい知る事はできなかった。

 

その為、天下分け目の戦に際して再編成される事となった『豊臣五刑衆』の一員に抜擢された景勝と対峙するのは、これが初めてであったが、その強さは自分達が知りうる景勝とは別人とも思わせるような強さである。

 

「どうやら…アンタも豊臣の最高幹部になってから相当過酷な戦いを繰り返してきたんだな」

 

「あぁ。自分で言うのもあれだが…五刑衆ってのは、特権は多いがその分、普通の外様大名よりも身体張る仕事任されるからな。関ヶ原の合戦に至るまでに西軍を編成するにあたって、オレも絶えず色々と実戦を積まされてきたもんだよ。何度か死にかけた事もあったからな」

 

「なるほどねぇ…石田と手を組むまで、色々とまごついちまっていたウチの大将と一日の長が生じるのも無理はねぇって事か……」

 

苦笑しながら佐助は言い返す。

 

「お前らの事も別に恨みはねぇが…これも五刑衆としての務めだからな……ここでケリはつけさせてもらうぜ。悪く思うなよ?」

 

景勝はそう言いながら、再び地面を蹴って佐助に向かって飛びかかってきた。

 

氷爆(ひょうばく)!!」

 

景勝は空中で大斧刀に気を纏わせると、そのまま佐助の立っている場所目掛けて振り下ろしながら降下する。

佐助がそれをバックステップで避けると、彼の立っていた場所に大斧刀の鈍重な刀身が叩きつけられる。

すると叩きつけられた大斧刀の周囲から刃物の様に鋭い巨大な氷柱が宙にいる佐助に向かって突き伸ばされた。

 

「!?…影当の術!」

 

すかさず佐助も、影の分身を形成して迫りくる逆氷柱に向かって撃ち出し、自らに刺さりかけていたそれをガラスのように粉々に砕いて消してみせた。

だが、その間に景勝は大斧刀を振り上げて、再度佐助に接近して…

 

「吹き飛べ!!」

 

幸村に放った時と同様に佐助の胸に再度、大斧刀を打ち込んだ。

佐助の身体が紙人形の様に遠くに吹き飛ばされ、遂には防波堤を砕き、水しぶきを上げながら、海に叩き落とされてしまった。

 

「佐助さんッ!?」

 

ティアナが思わず悲鳴を上げ、景勝が微かに口元を吊り上げる。

 

「手ごたえあり…」

 

「そいつはどうかな?」

 

「!?」

 

勝利を確信仕掛けた景勝に背後から佐助の声がかかる。

景勝が慌てて振り返ると、そこには大手裏剣を手に景勝に斬りかかろうとする佐助の姿が…

その姿を見たティアナは、ホッと胸をなでおろした。

 

「なるほど、“空蝉の術”か!?…懐かしい技使ってくれるじゃねぇの!」

 

一瞬だけ驚きで目を見開きながらもすぐに勝ち気な笑みを浮かべた景勝は大斧刀を逆手に掲げて、佐助の振り下ろした2つの大手裏剣を防いだ。

 

「…相変わらずやるじゃねぇか。猿飛佐助…流石は、かすがが謙信(おじき)以外で心開いていた数少ない1人に数えられてるだけの事はあるな」

 

「そいつはどうも。けど、心開いてくれていたわりには愛想悪かったんだよね。アイツ」

 

「アイツが愛想悪かったのは、オレに対してもだよ」

 

佐助と景勝は鍔迫合ったまま軽口を叩き合い、それからそれぞれ後ろに飛び退いて武器を構え直した。

 

「さぁ! まさか、もうへたばったなんて言わねぇだろうな? まだ勝負はここからだろうがよ!」

 

既に散々激しい動きをしてきたにも関わらず、景勝はまだまだ溌剌とした様子を見せていた……

 

 

 

その頃―――

なのは達の救援に出発した政宗が駆るバイクは一路、ミッドチルダの公道を…

 

「Hurry up!! Yeah!!!」

 

…というよりもはや公道から私有地お構いなしに、文字通りの全速力で『ぶっ飛ばして』いた。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!? 政宗さんーーーー! 急ぐのはいいですけど、せめてもうちょっとだけスピードを落として下さいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

両手だけで肩に掴まったリインが顔に吹き付ける凄まじい風圧で髪の毛が逆立ち、何度も振り下ろされそうになるのを必死に堪えながら悲鳴を上げた。

しかし、バイクを操作する政宗に、一切の躊躇はない。

 

人通りや車の行き交う数の多いバイパスだろうが、繁華街だろうがお構いなく、全速力でバイクを飛ばしていたのだった。

途中、道の脇にあったゴミ箱や大通りに置かれていたカラーコーンを体当たりでふっ飛ばしたか、政宗もリインも覚えていなかった。

勿論、こんな危険極まりない走り方をするバイクを前に、道行く人達は悲鳴を上げながら逃げ惑い、走行していた車は慌てて路肩に避けようとして電柱や路駐の車にぶつかってしまう有様だった。

それでいて、ここまで死者や怪我人を出すような大事故を起こしていないのが奇跡と言っても過言でなかった。

 

「ま、政宗さん!! このままじゃ、本当に取り返しがつかないような大事故を起こしちゃいますよ!! せ、せめて人があまりいない場所をぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「チィッ! 仕方ねぇ! だったらこっちか?!」

 

政宗はそういうと腕組み状態だった手を解き、バイクのハンドルを握りしめた。

馬と違って、バイクは念じるだけで操作できるほど融通の効く乗り物でない事が政宗にとっては悔やまれた…

 

 

 

 

臨海エリアに近いとある閑静な住宅街―――

そのバイパスの脇にある小さな一軒家に暮らす老夫婦・夫グレイ、妻アリソンのヴィッツ夫妻は、至って普通の人生を歩んできた首都クラナガンの善良な一般市民の1人であった。

ミッドチルダで生まれ育ち、数十年の間、首都クラナガンの一流商社で働き、去年定年退職してから、夫のグレイは退職金の3分の1を使って購入したこの家で、妻アリソンと共にほそぼそと暮らしていた。

中古で売りに出されていた物件を買い、改装したものである為、とりわけ広い家ではないが、この家で一番グレイが自慢したかった箇所が、改築の際に部屋のリビングの脇に設けたホームシアターだった。

 

子供の頃から休日になると映画のDVDを朝から夜まで見続ける程の映画好きであったグレイは、定年後の夢のひとつとして、「新居に専用の映画館を設けたい」という夢を抱いていた。

そして、この家を購入するにあたって、アリソンを時間をかけて説き伏せて、最終的に僅か四畳半程の小部屋であったものの、ようやく念願のホームシアターを開設させる事ができたのだった。

早速、グレイはこのホームシアターに若い頃から買い溜めていた様々な映画のDVDやBDのコレクション…その数合計5000枚を部屋の三方の棚に収蔵し、部屋の壁にホログラム式の大画面液晶テレビ50型を導入。

観賞用としてリクライニングソファーを持ち込み、遂に長年の夢だった自らの専用映画館を完成させた。

それからというものの、グレイは毎日夕食後に、アリソンを誘って、簡単な酒肴を用意した上で、このホームシアターで夫婦仲良く映画を鑑賞するのを何よりの楽しみとしていた。

 

この日の夜もまた…

 

「ごちそうさまでした。さてと…」

 

夕食を終えたグレイはアリソンが食器の片付けをしている間に、キッチンの冷蔵庫を開けると、中から缶ビールを2つ取り出し、さらに戸棚から袋入のポップコーンを引っ張り出してくると、それを大きな器に盛り付け、そのままホームシアターのソファーセットに持っていき、今日の鑑賞作品を選んだ。

 

「今日は前からこの作品にしようと思っていたんだよな…」

 

そうつぶやきながら、グレイが棚から取り出したのはカーアクション映画のブルーレイディスクだった。

内容はとある元暴走族を率いていた凄腕のバイクテクニックを持つ敏腕捜査官が、新たに街に台頭しつつあった新進気鋭の暴走族に昔の舎弟を殺され、その復讐の為に再びバイクを駆り、壮絶なカーチェイスを含んだ戦いに挑むという内容のもので、グレイの持っている映画コレクションの中でも上位に入る程のお気に入りの一作だった。

 

「アリソン。映画が始まるから、早く来なさい」

 

ソファーについたグレイがキッチンにいる妻に向かって声をかけると、アリソンは腰に巻いていたエプロンを外しながら早足でやってきた。

 

「グレイ。本当の映画館じゃないんだから、何もそんなに急かさなくても大丈夫よ」

 

「何を言うんだ。上映時間が迫ってギリギリのこの緊張を楽しむのも映画の醍醐味じゃないか」

 

妻を席につかせながら、グレイが話している間にブザー音が鳴り、ホームシアターの電灯が落ちて、ホログラムテレビが投影され始めた。

その様子はさながら本当の映画館のようだった。

それから数十分後には映画は早くも、激しいバイクによるカーチェイスのシーンに入っていた。

グレイは目を輝かせながら映像に見入っていたが、隣に座るアリソンはやや不満げな面持ちを浮かべながら缶ビールを煽っていた。

 

「私も映画は好きだけど、やっぱり観るならラブロマンスものがいいわ。こういう激しいアクションものは観ていてなんだか怖くなっちゃう」

 

客のいるレストランに主人公の乗ったバイクが突っ込んで、店を破壊しながら通解していき、店にいた客がパニックになる事故の場面が流れるモニターを見ながらアリソンはそう言うが、グレイはすぐに反論する。

 

「何を言ってるんだ? こういう非現実的な事が次々に起こるのがアクション映画の醍醐味じゃないか」

 

「けど、なんだか現実でもありそうで怖いじゃない? バイクや車が建物に突っ込むなんて事故とか結構多いんだし…」

 

「それは“事故”だろう? この映画の主人公みたいにわざとやってるわけじゃないんだ。現実ではありえないような破天荒な行動を起こす…それがアクション映画ってものじゃないか」

 

グレイはそう言って笑いながら、器に盛り付けたポップコーンをひとつまみ掴むと、大きく口を開けて、放り込んだ。

映像では路肩に止まっていた車を弾き飛ばし、民家の壁を突き破って、リビングを突破する無茶苦茶な走行をする主人公のライダーの様子が映されていた。

 

「ほらごらん。こんな命知らずな無茶苦茶な走り。現実でやらかそうだなんてバカがいるわけがな――――」

 

グレイがそう話していた最中…

 

 

ブロオオオオオォォォォォォンッ!!

 

キキィィィィィィィィィィィ!!

 

ドガアアアアアアアアアァァン!!

 

 

 

遠くから不自然なエンジン音やタイヤのスリップ音、そして何かを壊すような音が聞こえてくる。

そして、それが徐々に近づいてきているものと気づく間もなく…

 

 

 

ドッカアアアァァァァァァァァァァァァァン!!!

 

 

 

「Yaaaaaaaaaaaaaaaahaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

 

「すみません!! おじゃましまぁぁぁぁぁぁす!そして、おじゃましましたああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

「な、なんだああああああああぁぁぁぁぁ!!?」

 

「きゃああああああああああああああああっ!!!」

 

 

突然ホームシアターのDVDコレクションの棚を突き破り、一台の赤いバイクにまたがった1人の青年とその肩にしがみついた妖精サイズの小人がグレイ、アリソンの前に現れたかと思いきや、夫妻が悲鳴を上げている間に、そのまま反対側の棚ごと家の壁を突き破って、家の表通りへと走り去っていった……

そして、再びエンジン音とタイヤの音、そして何かを破壊する物音は小さくなっていき、数十秒後には二人の耳にはバイクが突き破った衝撃で破壊されたのか、砂嵐しか映らなくなったホログラムテレビの雑音しか聞こえなくなっていた。

 

それは文字通り、一瞬の出来事だった。

あまりに突然過ぎて、グレイもアリソンもしばらくその場で硬直して、お互いに動けなければ、言葉さえも話せなかった。

そして、1分近く近く経ってようやく我に反ると家の現状を把握する事ができた。

ひどいものだった…ホームシアターやリビング、キッチンの全ての窓ガラスが割れ、二人が座っていたソファー以外の家具はことごとくひっくり返ってしまっていた。

そして今しがた通過したバイクが通り抜けた家の床や壁は完全に抉れて無くなっており、ポッカリと大穴が開いてトンネルと化した2つの出入り口から潮の香りのする冷たい夜風が通り抜けていた。

 

「……………………」

 

「ぐ…グレイ……なんだったの? 今の…?」

 

アリソンが恐怖に身体を震わせながら尋ねてくるが、グレイも今目の前で何が起こったのか、到底理解できずにいた。

一瞬目の前で起きたのは観ていた映画のワンシーンなのか、それとも自分が設置したホームシアターセットの一機能なのかさえ疑った。

しかし、未だに砂塵が舞い散る部屋の中と、吹き付ける冷たい風…この感覚はどちらも現実であった。

グレイはどうしたらいいかわからず、デレビ同様に今の衝撃で粉々に踏み砕かれ、火花を散らすスクラップへと化したブルーレイレコーダーを何故か叩いて直そうとした。

 

 

 

ブロオオオオオォォォォォォンッ!!

 

キキィィィィィィィィィィィ!!

 

ドガアアアアアアアアアァァン!!

 

 

 

っとそこへ、またしても遠くから不自然なエンジン音やタイヤのスリップ音、そして何かを壊すような音が聞こえてきた。

それも今度は複数台分…

 

まさかさっきのバイクが引き換えしてきたのかと、恐れ慄いたグレイは慌てて、アリソンの座るソファーへと飛ぶように戻った。

直後、2人の目の前今度は乗り手のいない青いバイク…否、バイクのような二輪の自走式の機械が5台全速力で通過していった。

既に先に通過した赤いバイクにさんざん壊された為にこれ以上壊されるものは何も残っていなかった。

そして、5台の自走式バイクはあっという間に走り去っていってしまった。

 

「………………」

 

ヴィッツ夫妻は呆然とした表情を浮かべたまま、バイクを見送っていたが、やがてその姿が完全に見えなくなるとグレイは絞るような声で呟いた。

 

 

 

「アリソン……ワシ…もう二度とアクション映画は観ないよ………」

 

 

こうして、クラナガンの一善良な一般市民 グレイ・ヴィッツの若い頃からの細やかな夢だったホームシアターは、文字通り粉々に打ち砕かれたのであった………

 

 

 

 

「あわわわわわわわ…!! ま、まま、政宗さん!! い、今! 一般の方のお家を…お家をぉぉぉぉ!!?」

 

「Ah? それがどうした?」

 

風圧に吹き飛ばされないように肩にしがみついたまま、違う意味で顔を青ざめはじめるリインに対し、政宗は平然とした顔で返した。

 

「ま、マズいですよぉぉ!! 一回、バイク止めて謝りに行った方がいいんじゃないですか!?」

 

リインはそう提言するが政宗は鼻で一蹴する。

 

「んな暇あるかッ!? 詫びなら、これが終わった後にいくらでも入れてやる! Hum! 最悪、大谷達(西軍)の誰かを逮捕してそいつに罪擦りつけりゃいいだろ!」

 

「その前に政宗さんが“逮捕”されちゃいますよ…っていうかさっきのお家は“大破”したんですけど……」

 

「こんな時につまらねぇダジャレ言ってんじゃねぇよ!」

 

政宗が怒鳴りながら、バイクのアクセルを限界まで吹かし、さらにスピードアップを図る。

 

ここへ来るまでに道なき道を無理矢理突っ走ってきたせいか、ガレージに停まっていた時には傷一つ無い新車同然に輝いていたバイクは、既にヘッドライトは割れてその機能を果たさなくなり、前半分を覆っていた赤いボディは砂塵に塗れ、ボコボコに凹み、見るも無残な姿に成り果ててしまっていた。

それでいて、まだ最大出力で走れる事が奇跡に思える程だ。

 

 

(ヴァイス陸曹がこのバイクを見たら、白目向いて口から泡吹いて、失神するでしょうね…ゴシューショーサマですぅ……)

 

 

リインが哀れなバイクの持ち主に同情の念を抱いていると、突然バイクの周辺が円形の大きな灯りに照らされた。

 

 

「そこの赤いバイク! 速やかに停止しなさい!!」

 

突然背後から、明らかに政宗に向かって放たれているであろう怒声が聞こえてくる。

リインが振り返ると、航空隊のバリアジャケットを纏った2人の空戦魔導師がデバイスを手に地表すれすれに滑空しながら、追いかけてきているのが見えた。

 

「ひええぇぇぇぇぇぇ!? あれは首都交通警邏隊!? だから言わんこっちゃないですよぉぉ!! 政宗さん! 止まりましょう! 止まらないと本当に逮捕されちゃいますよぉぉ!!」

 

『首都交通警邏隊』とは首都クラナガン近辺における交通整理並びに違反車両を取り締まる事を専門とする地上本部の部隊である。

その中には暴走行為を働く自動車やバイクの取締も兼ねている為に所属する隊員は航空魔導師の中でも凄腕の速さ自慢な者が多いという話だった。

故に、今の政宗達は格好のカモというわけである。

 

「チィッ! めんどくせぇな…」

 

だが、ここで呑気に取締を受けている暇はない。

政宗は両腰に下げていた六爪に手をかけようとした。その時―――

 

 

「ッ!!? グハァッ!!?」

 

「「ッ!!?」」

 

突然、聞こえた爆発音と悲鳴に政宗とリインが振り返る。

ちなみにバイクのバックミラーは両側ともに何処かでふっ飛ばされて、とうの昔に紛失していた。

背後では、バイクの真後ろまで迫っていた筈の首都交通警邏隊の魔導師の1人が、何かに撃墜されたのか、地面に叩き落され、転がり倒れていた。

 

「ミハエル!? 畜生! 一体何者―――ギャアッ!!?」

 

突然の事に、並走していたもう1人の警邏隊員も狼狽えながら、急襲してきた者の正体を探ろうと向きを反る――暇さえもなく、背後から飛来した一発の赤いレーザービームを食らい、撃墜された。

 

「あ…あれは…?」

 

後方から猛スピードで迫ってきていたのは5台のバイクだった。

しかし、不可解な事にそのバイクには乗り手(ライダー)の姿がない。バイク自体が自我を持っているかのような巧みなドライビングテクニックを披露しながら、少しずつ政宗達の乗るバイクとの距離を縮めてきていた。

それと共にその全容が明らかになってきた。

車体を青い装甲に包み隠し、ヘッドライトに当たる部分には特徴的な黄色のモノアイ型のビームランプ…あれはまさしく…

 

 

「ガジェットドローン!? そ、それも今まで見た事もないタイプですぅ!?」

 

「ほぉ。 New modelって奴か? 上等じゃねぇか!」

 

政宗はこの状況を前にしても、まるで楽しんでいるかのような笑みを浮かべながら、身体を前にして、ギリギリまで速度を上げた。

 

すると、背後に迫る5台の新型ガジェット達は車体の左右側面に設置されたレーザー砲門から一斉に赤いレーザービームを雨霰の如く発射してきた。

今しがた首都交通警邏隊の魔導師2人を撃墜したものと同じ武装であろう。

 

複数のレーザーが政宗の駆るバイクの前方。路肩に停まっていた自動車に命中し、大爆発を起こした。

 

 

「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

肩にしがみついたリインが悲鳴を上げた。

レーザーは次々とバイクの周囲に命中しては爆発を誘発していく、まるで全ての地雷が一斉に爆発した地雷原の中にいるかのような火の海の最中を、政宗は更に加速しながら、鮮やかにバイクを操り、降りかかる無数のレーザーやそれが命中して起こる爆発を躱しながら、どうにか距離を離そうとする。

その走りは、傍から見れば、今日人生で初めてバイクに乗った男と、ボロボロに破損してしまったバイクが織りなすものとは思えない迫力満点のスタントだった。

 

政宗が破壊してしまったヴィッツ夫妻の家のホームシアターで最後に上映されたカーアクション映画でもここまでド派手なカーチェイスは繰り広げられていなかった。

 

だが、追撃する新型ガジェット達もさるもので、爆発によって吹き飛んだ自動車の残骸が降りかかる中を、車体をギリギリまで横倒しにしてドリフトする事で、潜り抜けるという生身のレーサーでもかなり難しい驚異的な回避性能を見せて、政宗達のバイクとの距離を離そうとしなかった。

 

そんな中、一台の新型ガジェットが横転した車をジャンプ台にして、政宗達に向かって飛びかかってくると、ヘッドライト部分にあったモノアイ型ビームランプを発光させた。

政宗は腰に下げていた六爪の内の一本を鞘から引き抜くと、飛びかかってくる新型ガジェットへと振り向き、ビームランプから発射されたレーザーに対し、上段構えをとった。

直後、刀の刀身に命中したレーザーはそのまま、ガジェットに向かって反射され、ビームランプを貫通し、車体をそのまま木っ端微塵に爆砕したのだった。

 

「OK! 一匹倒したぜ!!」

 

「で、でもこのままじゃ、道の周りの建物を巻きこんでしまいますよ!! どこか少しでも周りに人がいない場所に誘導しないと…」

 

リインがそう言いながら、辺りを見渡していると、背後で新たに起きた爆発により吹っ飛んできた交通案内の標識がバイクの脇を転がった。

だが、その僅か一瞬の間でリインの目には『この先、クラナガン10号湾岸線料金所』と案内が表示されているのが止まった。

 

「そうだ! 政宗さん! 高速です! 高速道路に入るのですよぉ!!」

 

「高速道路? 何のことかよくはわからねぇが、そこへ向かえばいいんだな? OK!!」

 

政宗がそう答えると、運良く目の前に高速道路の出入り口へと続く専用路の入り口が見えた。

 

「あれだな! よし、このまま突っ走って――――」

 

政宗がそう言いかけたその時、背後から…

 

 

ボスッ!

 

ヒューーーーーーーーーーーーーン……

 

 

という音が聞こえたかと思いきや疾走するバイクの真横を一発のミサイルが飛び抜けていった。

 

「「He(へっ)…!?」」

 

政宗とリインが唖然と見送る中、ミサイルはそのまま前方に飛んでいき、高速道路へと続いて陸橋へと上がっていくちょうど坂の起点の部分に当たって大爆発して、陸橋を吹き飛ばしてしまった。

幸いその爆発に直接巻き込まれた車はいなかったが、その爆発に驚いた周囲を走っていた車が次々とハンドルを切り損ない、横転したり、ガードレールに激突したり、車同士次々と衝突するなどしてしまい、高速道路出入口周辺は大混乱となってしまった。

 

「Shit! New modelなだけあって、なかなかCraftyな奴らだな!」

 

事故車両の間を華麗にすり抜けながら、政宗はチィッと忌々しげに舌を打った。

今のミサイルは言わずもがな、背後にピッタリとついている新型ガジェットから発射されたものであろう。

まさかのミサイル攻撃という思わぬ一手を使われ、高速道路に乗りはぐれてしまった以上、何か別の手立てを考えなければならない。

政宗は頭を悩ませるが、彼の肩にしがみついたリインはというと…

 

「アワワワワ……と、ととと、とんでもない事になっちゃったですぅぅぅ…これだけの騒動起こしちゃって、後で山程始末書が…っていうかそもそも上層部になんて報告すれば…? はわわわわわ…!!」

 

違う意味でこの先の事に頭を悩ませ、顔を真っ青にしながら、カタカタと震えるのだった。

 

 

 

 

一方、場所は機動六課の隊舎に戻る――――

 

 

エリオとフリードを引き連れたキャロ、そして小十郎は、シャリオを人質にとって逃げたジャスティを追いかけていた。

途中、何度も縛心兵の妨害を受けながらも、必死に彼を見逃すまいと食いつき、そして隊舎の正門近くまでやってきたところでようやく追いついたのだった。

 

「ん、んぐーーーーっ!!」

 

「うるさい! さっさと来い! 死にたいのか!?」

 

両手を縛られ、口を塞がれながらも必死に抵抗するシャリオにライオットザッパー・Rの刃を突きつけながら、無理矢理に歩かせるジャスティの姿を捉える。

いくら妨害に阻まれようとも、小十郎達が身軽なのに対し、ジャスティは人質を取っている。当然移動速度も遅くなるわけだった。

 

「待ちな!この裏切り野郎が!!」

 

小十郎が叫ぶと、ジャスティは鬼のような形相で3人の方を振り返った。そして左手でシャリオの襟首を掴んだまま、右手でライオットザッパーRをハンドガン形態に変形させ、小十郎達に目掛けて光弾を撃ってきた。

 

「エリオ君!小十郎さん! 止まって!」

 

キャロは片手を掲げるとその掌の先に、ちょうど自分達3人分が入るだけの大きさの桃色の光の障壁魔法(シールド)を形成した。

刹那、障壁に光弾が命中する。

ジャスティはライオットザッパーRを、3人を守る障壁目掛けて連射したが、すぐに銃撃は止んだ。

舌打ちと共にガチャリという音が聞こえたので、エリオと小十郎はゆっくり障壁の脇からから顔を出した。

 

見ると、ジャスティは左腕でシャリオの首を軽く締め、右手に持った電磁剣形態に戻したライオットザッパーRを彼女の首に突きつけていた。

どうやら、ハンドガン形態では埒が明かないと踏んだのか、電磁剣形態に戻したみたいだった。

 

「おい、オッサン! それにガキ共!コイツの命が惜しかったら、下手に抵抗するな! コイツがどうなってもいいのか!?」

 

元より気に入らない存在だった小十郎を「オッサン」呼ばわりするだけにいざ知らず、つい今日の数時間前まで仲間だった筈のエリオやキャロを「ガキ」呼ばわりしながら、脅しつけるように言い放つジャスティ。

 

「小十郎さん……」

 

「どうしたら…?」

 

エリオとキャロが不安げに見上げてくる。

すると、小十郎は少し考えた後…

 

「考えがある。ルシエ。フリードに少し頼んでくれねぇか?」

 

「?」

 

不意に自分の名前が上がった事にフリードは訝しげに首を傾げるのだった。

 

 

「おい! 聞こえなかったのか!? さっさと障壁から出てきて、言われたとおりにしろ!!」

 

痺れを切らした様子でジャスティが再度怒鳴ると、障壁が解除され、それぞれデバイスや武器を下ろした小十郎達、3人がゆっくりと歩み寄ってきた。

その様子を見たジャスティは勝ち誇ったかのように言い放つ。

 

「お前ら、それぞれ武器を下ろして両手を頭の後ろに回してその場に跪け。そして俺が隊舎(ここ)から逃げ切るまでそのままでいろ。コイツを死なせたくはないだろう?」

 

「ジャスティさん! 悪い事は言いません! おとなしく投降して下さい!! 私達は貴方を傷つけたくはありません!」

 

キャロは、どうにかジャスティの心に僅かでも残っている良心を信じて訴えかけた。

裏切り者とはいえど、やはり今日まで共に戦ってきた仲間と敵対する事は心優しい彼女にとっては耐えられない事であるようだった。

しかし、そんなキャロの切実な説得に対し、ジャスティは眉間に青筋を浮かべ、吐き捨てるように怒鳴る。

 

「うるさい! 前から俺はお前らの事もムカついていたんだよ!フォワードのガキ共! ガキのくせに前線任されているからって、一人前気取りで調子付いて舐めた口叩きやがって!大人にとってはウザいんだよ。そういうの! ガキはガキらしく、黙って大人の言う事聞いてりゃいいんだよ!! 偉そうにこっちの世界にしゃしゃり出てくんじゃねぇ!!!」

 

ジャスティの言葉にキャロは唖然とした表情を浮かべ、エリオはその表情に大人顔負けの義憤を浮かべた。

そして、小十郎はというとジャスティの偏狭且つ身勝手な言い分に心底見下すように鼻で笑った。

 

「舐めていやがるのはどっちだ? テメェの勝手な理由で六課を裏切った挙げ句に、人質を取って逃げようだなんて、テメェは兵卒としても人間としても最低な下衆野郎だな。ジャスティ…とかいったな? 少なくとも俺は、ルシエやモンディアルよりも、テメェの方がガキだと思うぜ? それもすこぶるたちの悪いな…」

 

「だ、黙れぇ! 後から入ってきた次元漂流者風情が偉そうに! 口を閉じろ!!」

 

ますますジャスティは憤慨して叫んだ。

すると、その隙にシャリオは首を必死にもがいて、どうにか口に巻かれていた布を解くと、3人に向かって叫んだ。

 

「片倉さん! エリオ! キャロ! 私の事は構わずに早くこの裏切り者を取り押さえて! 絶対にここから逃したらダメ!!」

 

覚悟を決めたような顔つきで、そう叫ぶシャリオだったが……

 

「ッ!? やっていいんですね? わかりました。やっちゃっていいんですね!?」

 

エリオがそう答えると、シャリオは「へぇっ!?」というような顔をした。

 

「シャーリーさん…不肖、エリオ・モンディアル。貴方の覚悟…無駄にはしません!」

 

「ちょっとぉぉぉぉぉ!! ストップ、ストップ、ストーーーーップ!!」

 

エリオがストラーダを構えかけると、慌ててシャリオは叫んだ。

その叫び声に、踏み出そうとしていたエリオの足が止まる。

 

「はい?」

 

「「はい?」じゃないでしょうがぁ!! いや、確かに『私の事は構わずに』とは言ったけどさぁ! ちょっとくらい構おうよ!? 私が止めなかったら、本当に私ごと刺すつもりだったでしょ!?」

 

「えっ…!? だって、兄上がいつも言ってましたよ? 『その気になれば身体を縛られていても、飛んでくる槍を避ける事なんて造作もない』って…」

 

「いや、それ戦国時代(片倉さん達の世界)の人限定だから!! 私を貴方達の踏み込んでる破天荒な世界と一緒くたにしないでぇぇぇ!!」

 

「おい!何お前達だけで、わいわいやってるんだよ!? 今の状況わかってるのか?!」

 

ジャスティは自分そっちのけで話している事が気に入らないらしく、シャリオの首にライオットザッパー・Rの刃を押し当てて怒鳴った。

 

「どこまでも舐め腐りやがって! おい、オッサン! それにガキ共!! これが最後の警告だぞ! テメェらの持っているデバイスや武器をおとなしく地面に置いて、後ろに下がれ!! 俺が隊舎の外に出るまでそのままでいたら、コイツを開放してやる! だが、これ以上手向かってきてみろ?!この女の喉を掻き切るぞ!!」

 

「……本当だな?俺達が抵抗しなければ、フィニーノを解放するんだな?」

 

「あぁ、してやるさ。ただし…俺が逃げ切れたらの話だがな!」

 

小十郎の問いかけに、ジャスティが強気な姿勢で言い返した。

すると何を思ったのか、小十郎はエリオとキャロに目で合図を送ると、2人は突然黙ってそれに従い始めたのだった。

 

「皆…ダメ…ッ!」

 

シャリオが制止する声を無視して、3人はそれぞれ足元に黒龍、ストラーダと刀を置き、そのまま後ろに離れようとした。

 

「待ちな! オッサンの腰に下げているもう一本の刀と、メスガキの手に付けているケリュケイオン(グローブ型のデバイス)も置いていけ!」

 

そこへジャスティの声が飛んできた。

 

「小十郎さん…」

 

「仕方ねぇ…置くぞ…」

 

小十郎は小さく舌打ちをしながらも、言われるがままに腰に下げていたもう一本の名刀『山吹』を黒龍の隣に置き、キャロもケリュケイオンを手から外して、刀の傍に置くと、3人はジャスティから距離を開ける形で後ろに下がった。

 

「ジャスティさん! これで貴方の要求には応えました。シャーリーさんを返して下さい!」

 

「だから言ってるだろ! 俺がここから逃げるまでだ!」

 

両手を挙げて何も持っていない事を示す3人に対し、ジャスティはそう怒鳴りつつシャリオの首にライオットザッパー・Rを突きつけたまま、じりじりと真後ろにある隊舎の門に向かって後退しはじめた。

見ると、門をくぐった先には既に脱出用として西軍方が用意したと思われる転送魔法の魔法陣(転送ポート)が形成されている。

魔法陣の直前までやってきたジャスティは、しきりに転送ポートと小十郎達の方を見比べた。その顔には勝利を確信してか、笑みさえ浮かんでいた。

 

そして、ジャスティはシャリオを突き飛ばして解放すると、転送ポートに足を踏み入れて逃げようとした。

小十郎はその瞬間を見逃さなかった。

 

「今だ! ルシエ!!」

 

「はい! …フリード!!」

 

「キュクルーーーッ!!」

 

小十郎の合図を受けたキャロが声を張り上げると同時に、門の脇にあった花壇の死角から一匹の白い小龍 フリードが飛び出してきて、魔法陣に踏み込もうとしていたジャスティの両足に目掛けて2発の火炎弾を発射した。

 

「あち! あちあちあちち!! 熱いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

両足が燃え上がり、悲鳴を上げながらジャスティがライオットザッパー・Rを取り落して、その場に転がり倒れる。

 

「今だ! 行け! モンディアル!」

 

「はい!」

 

エリオはその隙にストラーダを置いた場所に駆け寄り、掴み取る。

 

《Sonic Move!》

 

すかさず、高速移動魔法『ソニックムーブ』を発動させ、一気にジャスティとの距離を詰めると、ストラーダの穂先でジャスティの襟首を突き刺して捕らえる。

勿論、身体には刺さしてはいない。

そのまま後ろに背負投げる形で、彼を隊舎の敷地内へと押し戻した。

 

「ぐぶぅ!?」

 

床に叩きつけられたジャスティがマヌケな叫びをあげる。

 

「こ…このクソガキ共――――ッ!!?」

 

ジャスティは悪罵を上げながら、地面に落としたライオットザッパー・Rを拾おうと這いずるが、そこへ小十郎がゆっくりと近づいてくる。

勿論、愛刀の『黒龍』『山吹』共に回収済みだった。

 

「…て…テメェら…この不意打ちの為に、さっきの茶番劇みたいなやり取りを―――?!」

 

這いずりながら、見上げて睨みつけるジャスティに対し、小十郎は小さく頷いた。

 

「あぁ。わざとテメェの関心を俺達に向けさせて、その間にフリードに脇に周ってもらったのさ。こんな子供騙しな策にあっさりと引っかかりやがるとは、やっぱりテメェは、ルシエ達以下のガキだった事だな」

 

そう言ってジャスティを見降ろす小十郎の目つきは完全に汚いものを見るような蔑んだものであった。

 

「フィニーノから聞いたが、テメェ元々、実戦部隊志望だったそうだな? だが、ロングアーチ(本陣)務めでは優秀だったのかもしれねぇが、実際の戦場に立てばテメェも所詮は素人以下だったって事だな…」

 

「な…なんだとッ…!?」

 

またもや嘲られ、ジャスティは冷静さを欠いたように顔を歪ませながら、小十郎に憎しみと殺意の籠もった鋭い視線を浴びせる。

 

「これが日ノ本(俺達の世界)であったら、敵の内通者であるテメェはこの場で斬り捨てられるのが性だ。だが、ここはミッドチルダ…時空管理局(八神達)のルールに則らねぇとならねぇから、命まで奪うわけにはいかねぇ…しかし……」

 

そういうと小十郎はジャスティが自分に向けてきたものよりも、何倍も…否、何百倍も鋭く恐ろしい目つきで睨み返した。

その気迫にジャスティの表情が一転する。

 

「これだけの騒ぎを引き起こして、六課をかき乱しやがったんだ…それに値する“ケジメ”はつけないとならねぇのは…わかってんだろうな?」

 

「ま…待ってくれ! 俺の話を聞いてくれ! 俺は何も悪くない! お、俺はあの大谷達に脅されていただけなんだ!! 『六課を陥れるのに協力しろ』って…薬とか盛られたりしてな! あ、アイツらの企んでる事だって、全部話す! だから、見逃してくれ!」

 

ジャスティは先程までの強気な態度を完全に翻し、必死に弁明するが、小十郎達にしてみれば、単なる見苦しい言い訳に過ぎない事は既にわかりきっていた。

どこまでも見苦しいジャスティの態度に、小十郎の額に青筋が浮かんだ。

 

「散々やりたい放題やっときながら『何も悪くない』、『見逃せ』だと…? テメェみてぇな“カス”が今まで機動六課の一員を名乗っていたとは…片腹痛ぇ話だなッ!!!

 

 

バギィッ!!

 

 

小十郎は本物のヤ◯ザ顔負けの怒声と形相をジャスティに浴びせながら、追い打ちとばかりにあと数十センチ先に転がるライオットザッパー・Rまで届こうとしていたジャスティの片手を力強く、踏みつけた。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!?」

 

木のへし折れるような音と共に、ジャスティの片手が途中から変な方向へ折れ曲がる。

大きな悲鳴が辺りに響いた。

その光景を見ていたエリオとキャロは、悍ましいまでの小十郎の容赦の無さに、顔を青ざめるが、ジャスティに散々な目に遭わされたシャリオは、思わず親指を立てて、喜んでいた。

 

「その痛みは、テメェの裏切りに対する六課の奴ら…特にフィニーノらロングアーチの仲間の心の痛みと思え……ルシエ。こいつにバインドをかけろ」

 

「えっ!? は…はい」

 

小十郎に言われ、キャロは既にケリュケイオンを再装着していた片手をかざすと、ジャスティの(今しがた小十郎にへし折られた片手を除く)手と上半身、両足にピンク色の魔力光のバインドをかけて拘束した。

 

 

「ジャスティ・ウェイツ准陸尉! 管理局敵対組織『西軍』への内通行為、局管轄下の施設爆破、非合法デバイスの無許可所持、人質による強要、殺人未遂! 計6つの罪状の現行犯で貴方を逮捕します!!」

 

ジャスティの顔にストラーダの穂先を突きつけながら、エリオは力強く言い放つ。

ジャスティを拘束しながら、エリオとキャロは、改めて「小十郎さんを本気で怒らせる事がないようにしよう」と心に思うのだった…

 

 

 

 

その頃、シグナムと左近は、隊舎の敷地の反対側…訓練所の近くにまで移動して激しい切り結びを続けていた。

 

「シュランゲバイセン!!」

 

「ゾロ目!!」

 

シグナムが連結刃(シュランゲフォルム)となったレヴァンティンの鋒を突き出すのに対し、左近は双刀を握った両腕を軽やかな手捌きで回転させ突き出された蛇腹型の刃を打ち払う。

シグナムは慌てる事なく、レヴァンティンの連結刃を再び合体させ、片刃剣(シュベルトフォルム)に戻すと中段に構えた。

 

「上ぁがりっと!!」

 

左近が叫びながら踏み込んでくると同時に回転の勢いを利用して双刀の片割れを、下から突き上げるようにして振り上げた。

赤白の斬撃波が降りかかるのをシグナムはレヴァンティンで弾いて打ち消す。

火花が散り、金属がぶつかり合う独特の音色がその場に響いた。

 

「貴様、軟派な性格のくせに腕はいいな…流石は“凶王”の軍の侍大将だけの事はある」

 

シグナムがそう称えると、左近は鼻をこすりながら得意げに笑う。

 

「ヘッ! 姐さんなかなか男を見る目があるみたいだねぇ。どうよ? ついでにこの男前な顔を褒めてくれないかい?」

 

「調子に乗るな! そういう一面もヴァイス(アイツ)にそっくりだ!」

 

シグナムが踏み込みながら、左近の軽口を一蹴した。

レヴァンティンの魔力カートリッジを1発リロードさせた事で、その振り下ろす速さと力が格段に加増する。

左近は即座に軟派な思想を切り替え、双刀を逆手持ちで振り上げる事で応じた。

訓練用の外観シミュレーターも起動していない為、建築物どころか草木の一本も生えておらず、一面アスファルトのだだっ広い更地だけが広がっている訓練所にレヴァンティンと双刀がぶつかり合う金属音が響き渡った。

 

すると、左近は自分達が今いる場所を一瞥すると、バックステップでシグナムとの間合いをとると、突然妙な事を提案してきた。

 

「なぁ。せっかく広い場所に出てきたんだ。ここらでお互いにとっておきの“大技”でも見せ合いっこといかないかい?」

 

「なんだ? 随分、大胆な勝負を言い出してきたな。博打でもあるまいし…」

 

「へっ! 斬り合いも博打も、丁か半かの物差しで図る勝負こそ、力が入って面白いもんじゃないのさ?」

 

ニヤリと笑いながら、そう話す左近に、シグナムはまたひとつ、彼の素性を見抜いた。

 

「さては貴様“賭博師”だな? それも根っからの…」

 

「当たり! ひょっとして『烈火の将』さんも、これやる口で?」

 

わざわざ双刀の片方を鞘に戻してまで、丁半のツボを振る仕草を交えながらおどけた調子で話す左近に、シグナムは呆れるようにため息をついた。

 

「いいや。寧ろ私は、左様な怠惰な遊びには興味がない」

 

「あらま。三成様みたいな事言ってるよ」

 

「だが…互いの大技をぶつけ合う、丁か半かの真剣勝負…そういう趣向は嫌いではない…」

 

シグナムはそう言い加えながら、レヴァンティンの刀身に魔力を集束させはじめた。

紫色の魔力のオーラがレヴァンティンの大振りの片刃に纏わり付き、夜闇を照らす程の強い輝きを放っている。

それを見た左近は「そうこなくっちゃ!」と嬉しそうに言ってのけると、再び双刀を構え直し、それからそれぞれ手の中で駒のように高速で回しながら、腰を落とした。

 

「どっちに張る? “丁”かい?“半”かい?」

 

「言っただろ。私は博打には興味がない。故にそういう事もよくわからない。だから、お前の好きにしろ」

 

「そうかい? それじゃあ、姐さんが“丁”、俺は“半”だ!」

 

この状況で遊び半分な事を話す左近の口ぶりと裏腹に、強い殺気が熱い熱気となり、対峙するシグナムに伝わってくる。

 

「丁半、揃いました。……勝負ッ!!」

 

左近が声を張りながら、顔の前で双刀を(バツ)の字を組むように、逆手持ちで構えると、シグナムもそれに応えるように電撃の走ったレヴァンティンを正眼に構えた。

 

ひゅうッ…とその場に冷たい潮風が吹き抜ける。

その瞬間を狙って、シグナムと左近は同時に地面を蹴り、一気に間合いを詰めた。

 

「紫電…一閃ッ!!」

 

追重迦鳥(おいちょかぶ)!!」

 

シグナムが振り下ろしたレヴァンティンと、左近が十字に振り上げた双刀が激しく打ち合う。

それぞれ魔力と気のオーラを纏った一撃はその衝突だけで広大な訓練所中に強い震動を打ち広げたのだった。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅ……!!」

 

火花を散らしながら組み合うレヴァンティンと双刀を挟み、互いに互角の気迫をぶつけ合いながら、シグナムと左近は睨み合う。

お互いにその一撃に賭けた勝負である。この戦い、先に姿勢を崩した方が負けである事はそれぞれ十分に理解していた。

 

 

「ぬあああああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

「ぐぐ……くっ…!?」

 

鍔迫り合いに変化が起きたのは30秒程経った時だった。

それまで、互いに一歩も引かずにいた鍔迫り合いだったが、徐々に左近の方が圧され始めた。

一撃の重さでは互角だったものの、その持久力に関しては剣士としての経験が実質倍以上に多いシグナムの方が上回っている事がここへ来て明らかになったのだった。

 

そして、その好機をシグナムは見逃さなかった。

 

「レヴァンティン!」

 

《Jar!》

 

シグナムが合図を出すと、レヴァンティンは追加の魔力カートリッジを1発リロードさせる。

忽ち、レヴァンティンの剣を圧す力と重みが倍増しに増幅される。

 

直後、ガラスが砕けるような音と共に左近の前に張っていた十字の斬撃波が砕かれ、左近の身体が紙人形の様に宙に吹き飛ばされ、その衝撃で握っていた双刀の片割れが手から零れ落ちてしまった。

 

取り落とされた双刀の片振りが回転しながら地面に突き刺さる。

 

「畜生!」

 

左近は空中で態勢を立て直すと、そのまま手に持っていた双刀の残る片振りをシグナムに向かって投擲する。

シグナムは投げつけられた小太刀をレヴァンティンで難なく払いながら、すかさず地面を蹴って、空中に向かって飛翔すると、追い打ちの一撃をかけんと、左近に斬りかかっていく。

 

だが、左近も負けてはいない。

得物の双刀を失い、丸腰になった彼に残された武器は、双刀と共に得意手としていた足の蹴り技で、振り下ろされたレヴァンティンを払い除けるだけなく、その後に繰り出される攻撃を全て、弾いてみせた。

 

「ほぉ。二刀の使いもさることながら、足技もなかなかのものだな。しかし…」

 

シグナムはレヴァンティンを脇構えにすると、片刃剣(シュベルトフォルム)から連結刃(シュランゲフォルム)へと再び変化させた。

そして、レヴァンティンを振り上げ、その連結鎖状の刃で左近を斬る…のではなくその身体に巻きつけて拘束した。

 

「ちょ、マジで―――ッ!?」

 

左近が驚愕する暇もなく、シグナムはレヴァンティンを振り下ろすと、連結刃に拘束された左近を地表に向かって叩き落とした。

衝撃音と共に砂塵が巻き上がる。

 

シグナムは、片刃剣(シュベルトフォルム)に戻ったレヴァンティンを手に、念の為に間合いをとりながら着地すると、立ち上がった砂塵がゆっくりと晴れていく。

そこには地面に生じたクレーターの真ん中で尻を突き上げるような格好でうつ伏せになった左近が白目を向きながら失神していた。

 

 

「この勝負…目は“丁”と出たようだな……」

 

 

シグナムは勝ち誇った声でそう呟きながら、レヴァンティンをゆっくりと鞘に収めるのだった……

 

 




ついにリブート版でもヴァイスのバイクがとんでもないことに…(笑)

オリジナル版ではそのまま海に放棄されてヘドロまみれの顛末でしたが、リブート版では果たしてどうなる事になるか…?(黒笑)

ちなみに、リブート版で新たに追加された政宗と、スカリエッティが新たに開発した今作オリジナルのバイク型ガジェットドローン『Ⅷ型』とのカーチェイスシーンは、オリジナル版では未制作の『ミッドチルダ総攻撃編』に投入を検討しようとしていたシーンでしたが、リブートにあたって、思い切ってこちらで繰り上げ登場させる事に決めました。

既に始末書だけじゃ済まなそうな大惨事を起こしながら、なのはの許に急ぐ政宗…
この(色んな意味で)窮地を機動六課はどう乗り越えるのか…?

次回をお楽しみに!
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