リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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激しさを増す機動六課の攻防戦…

その渦中に遂に、部隊長 八神はやてが参戦する。
対峙する相手は西軍参謀にして、此度の襲撃の首謀者 大谷吉継…同じ一軍を率いる誇りを胸にはやては大谷に挑むが、そこには恐るべき罠が仕掛けられていた……


シャッハ『リリカルBASARA StrikerS 第三十三章 出陣でゴースゴースゴースゴースゴース!!! ウェ~ヘッヘッヘッヘ~! でさ~ね~~~~!!』






カリム「………っというザビー教団オリジナルカンペを宗麟君と作ったわよ♪ この通りに読んだら、貴方の人気も急上昇…」

シャッハ「するわけないでしょう!! …っていうかこれハ◯ウッド・ザ◯シショウのネタ丸パクリじゃないですか!!」

宗麟「名付けて『誇張しすぎたリリバサタイトルコール』! あとはこれに、テンガロンハットをかぶって、服装は黒いパンツ一丁になってもらえば…」

シャッハ「蹴り殺すぞ! クソガキ!!」



第三十三章 ~機動六課攻防戦 対峙する“夜天”と“凶星”~

一方、佐助&ティアナと上杉景勝は隊舎前の防風林で死闘を続けていた。

 

「ぜぇえりゃあああああぁぁぁぁぁ!!」

 

景勝が男顔負けに猛々しい掛け声と共に大斧刀を薙ぎ払うと、その風圧だけで、近くにあった木がへし折れてしまう。

 

「ぐぅ…! いつも思うけど、ホント上杉謙信(軍神)とはまるで違う大味な技使うよねぇ! もうちょっと、親御さんの居合とか参考にしようとは思わなかったの?!」

 

景勝の薙ぎ払いを必死に避けながら、佐助がボヤくように言った。

 

「うるせぇ! オレはおじきと違って、繊細な技は性に合わねぇんだよ!! それに手を潰すにぁこういう大仕掛けな技が最も理に合うってもんだ!!」

 

そう言うと、景勝は大斧刀の刀身に冷気を集束させ、瞬く間に巨大な氷の塊を纏わせてしまった。

 

「砕け散れ!!“勝割(かちわり)”!!」

 

景勝が技名を叫びながら、勢いよく大斧刀を振り下ろした。

すると大斧刀が振り下ろされる衝撃で、巨大なそれを覆っていた氷塊がバラバラに砕け飛び、隕石もかくやのような速さで周囲に向かって飛散していく。

当然、飛び退いていた佐助やティアナの許にも、無数の氷の礫が飛来し、2人はそれぞれ大手裏剣を手の内で回したり、クロスミラージュから魔力弾を放って撃ち落としたりしながら、どうにか防いでいく。

その間にも付近の防風林の木々は飛ばされた氷礫が機関銃のように無数に当たり、木の幹を砕き、地面を削り、あっという間に周囲を穴ぼこだらけの悲惨な光景に変えてしまった。

 

「いや、大仕掛けにも程があるっての!! 下手すりゃホント死んじまうって!」

 

「バッカ野郎ぉっ! 『武士(もののふ)の道は“死ぬ”こと』たぁよく言うだろうがよぉ!!」

 

この修羅場においても実に楽しそうに笑いながら、大斧刀を振り回してくる景勝に、佐助は行長とはまた違う“恐怖”のようなものを感じた。

やはり、彼(女)が『豊臣五刑衆』に選ばれたのにはこういう一面を見抜かれたからではないかと思えてならなかった。

 

 

ガチィン!

 

 

とにかく、少しでも景勝の猛攻を食い止めるべく、佐助は大手裏剣で振り下ろされる大斧刀を真正面から受け止めようとした。

ところが、大手裏剣と大斧刀がぶつかり合う鈍い音が聞こえた瞬間…

 

「いっってええええええぇぇぇぇぇッ!!?」

 

ただ武器同士を組み合ったその衝撃だけで、思わず佐助が悲鳴を上げる程にその一撃の重さは計り知れないものであった。

呆気なく押し負けた佐助はバク宙を決めながら、飛び退き、着地する。

 

(な、なんつぅ馬鹿力だよ!? 井伊の国の女地頭並か、それ以上あるんじゃねぇか?!)

 

佐助は、上杉同様に武田の宿敵として何度も渡り合ってきた女武将の事を思い出しながら、景勝の腕力の強さに戦慄した。

ちなみに佐助の言うその女武将もまた、大剣を使う腕自慢であった。

 

「なんだよ。お前も思った以上にヘタレだな。この生温い世界にやってきてから気ぃ緩めすぎたんじゃねぇのか?」

 

そう言った瞬間に景勝は大斧刀を豪快に振り乱しながら佐助に襲い掛かるが、佐助も素早い動きで大手裏剣を振るう。

 

「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「ぜりゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

佐助は奥の手として大手裏剣を居合のような速さで振るう剣戟を見せた。

対する景勝も佐助の大手裏剣を振るう速さに負けぬ速さで大斧刀を振り乱す。

スピードは全くの互角だが、パワーはやはり景勝の方が圧倒的であった。

 

「佐助さん!」

 

その間に景勝の背後に回っていたティアナはクロスミラージュを構えながら、佐助の援護をしようとするが、どうやって援護をすればいいかわからなくなっていた。

景勝の鈍重ながらも鋭い乱斬り…それをなんとか防ごうとする佐助。

この状況はどう見ても佐助が不利である。

 

しかし援護しようにも、この位置で撃てば佐助を誤射しかねない。

それに、相手は既に一度刃を交えた景勝だ。下手な射撃程度が通じるような相手でない事は昼間の交戦、そしてこの戦いの中で十二分に理解していた。

 

(けど…このままじゃ…佐助さんが…!!)

 

ティアナは思わずパニックになりそうになる頭を必死に鎮めながら、必死に考えようとする。

すると、その様子が目に入った佐助が、必死に景勝の乱撃を凌ぎながら声を荒上げる。

 

「ティアナ! 思い出せ! お前のこの部隊での役割はなんなんだ!?」

 

「!?」

 

佐助のその一言でティアナはハッとした表情に変わる。

今自分にできる事それは…

 

 

―――的確なコントロールを駆使して敵を射撃して、仲間を援護する事!―――

 

 

 

ティアナは一度深呼吸して息を整えると、クロスミラージュの照準を景勝に向けて構え、一気にカートリッジを四発もリロードした。

ようやく見つけた絆を、“豊臣”なんて奴らの策略に利用されたまま失いたくない!

守りたい! 私の大切な仲間を…!

そして…“弱かった”過去の自分を本当の意味で超えたい……!!

 

自分の持てる力を全て出し切ってまで!

 

そしてティアナの周囲に、オレンジ色の魔力弾が形成される。

その数は自分がこれまで出せた数の2倍近くはあった。

 

「守って見せる!…もう…絶対に迷わない!」

 

自分が、気が付いた『強さ』の本当の意味…

 

その答えをこの一撃に込めて!

 

「お願いクロスミラージュ…!」

 

ティアナはクロスミラージュに祈りを込めると、突然その銃口を空に向け直す。

 

「クロスファイヤー…」

 

「ん?」

 

ティアナの行動に景勝が気が付くと、ティアナはそれを見計らうかのように…

 

「シュート!!」

 

オレンジ色の魔力弾を、一斉に空に向けて撃ち放した。

 

「? 何やってんだ? 何処に向かって撃ってんだよ?」

 

ティアナの行動を理解できず、怪訝な表情を浮かべながら、景勝は攻撃の標的をティアナに切り替えようとした。

だがその時…

 

ドンッ!

 

「…うぉっ!?」

 

踏み出そうとした景勝の足の前に一発の魔力弾が空から落下する様に飛来した。

慌てて足を止めた景勝はふと空を見上げ…そこで驚愕の表情を浮かべる。

 

「おぉっ!!? …なっ!? なんじゃこりゃ!?」

 

真上に見えたのは、まるで雨霰のように自分めがけて降りかかってくる大量にオレンジ色の魔力弾であった。

それも全て、景勝に一点集中するかのようにコントロールされた軌道で向かってきている。

 

「ぐうぅぅぅぅぅっ!!?」

 

思わぬ攻撃を前に景勝は、初めて露骨に動揺した様子を見せ、大斧刀を必死に取り回して、降り掛かってくる魔力弾を弾き飛ばしながら、防御する。

しかし、当然そうなるとそれまで攻撃対象であった佐助に対しては完全に無防備となってしまうわけである。

 

ティアナの狙いはそれだった。

 

 

「今よ…“佐助”!!」

 

 

「ッ!? よっしゃ任せろ!!」

 

ティアナの声に導かれるように佐助が景勝に向けて駆け出し、大手裏剣を振りかぶって斬りかかった。

景勝は慌てて避けようとするが魔力弾の雨に気をとられていたせいで一歩遅れ、左肩を微かだが斬られてしまった。

 

「ぐぅっ!?」

 

血の垂れる左肩を押さえながら後ろに飛び退いた景勝は、どうにか最後の魔力弾を弾くと一定の距離を開けて飛び退き、大斧刀を地面に突き立て、佐助とティアナと対峙した。

 

「へへっ…まさか天上(ウエ)から射撃(ハジキ)持ってきやがるたぁ、オマエなかなか面白い技使うじゃねぇか。今のは一本取られたぜ」

 

「……アンタのさっきの“大仕掛け”な技がヒントになったのよ」

 

ティアナはクロスミラージュを構えたまま、先程景勝が披露した『勝割』の事を話す。

巨大な氷塊を粉々にして、無数の氷礫を無差別にぶつける事で相手の不意をつき、隙を生じさせる…その原理を自らの『クロスファイアシュート』に応用したのが今の一手であった。

景勝は自らの技を自分の攻撃に応用したティアナの臨機応変ぶりに素直に感心した。

 

「ヘッ…オマエ、唯の生き急いだガキと思ってたけど、案外この先とんでもねぇもんに化けるかもしれねぇな」

 

景勝は肩の傷口を押さえていた手を外して、その手で地面に突き立てていた大斧刀を再び手にとった。

 

「さてと…今度は二人がかりで同時攻撃とくる気か?」

 

「二人ではござらぬ!!」

 

不意に背後からかかった声に、景勝が反射的に振り向いた瞬間、一迅の風と共に二槍の穂先が突き出されるが、景勝は素早く躱す。

 

「某もまだ倒れてはおらぬ!」

 

そこには、頭から血を流しながらも、毅然と佇む幸村の姿があった。

 

「幸村さん!?」

 

「大将! 無事かい!?」

 

「あの程度の一撃で折れる程、この幸村の槍は脆くはない!!」

 

幸村の勇んで叫ぶ姿に景勝は嬉しそうに大斧刀を負傷していない肩に担いだ。

 

「そうこなくっちゃな。 そうでないと武田信玄(おじきが認めた漢)が認めた漢の名が廃るぜ? 幸村よぉ」

 

景勝はそう言いながら、再び戦闘態勢をとる。

彼(女)を三方から取り囲むように対峙した幸村、佐助、ティアナもそれぞれいつでも飛び掛かれるようにゆっくりと構える。

 

「遠慮はいらねぇ! 全員纏めてかかってきな!」

 

「元よりそのつもり!」

 

「いくぜ!」

 

「はい!」

 

それぞれに言葉を発しながら、全員が動こうとした。

その時だった…

 

 

景勝の許に空から一羽の目の赤く光った黒い鳥が舞い降りる。

 

《景勝。お楽しみのところ悪いけど、アンタには一足先に撤収してもらうよ》

 

「「「!!?」」」

 

鳥は景勝の肩に止まると、人間の女性の声で言葉を発した。

突然、言葉を発した謎の鳥に戸惑う3人に対し、景勝自身は露骨に不機嫌な表情を浮かべた。

 

「はぁっ!? どういう意味だよ! こちとらせっかく楽しくなってきやがったとこだっつぅのに!!」

 

《左近とジャスティがしくじったんだよ。 場合によっては、わちきも動かなければならないかもしれなったものでね》

 

「あぁ!? ったくあのバカ共が! ジャスティとかいうド素人はともかく左近の野郎までヘタこくたぁ、なにやってんだよ…!!」

 

景勝の口ぶりから、どうやら黒い鳥を介して彼(女)と話しているのは、同じ西軍の仲間である様子だった。

 

《知っての通り、わちきが動くとなると色々面倒な事になるからね。下手すりゃアンタも巻き添え食らってしまうなんて洒落にならないような事になるかもしれないから。一応念の為にアンタには先に下がってもらう事にしたのさ》

 

「………チィッ! しゃあねぇ…わぁったよ」

 

景勝は一瞬佐助達の方に目を向けると、肩に止まった黒い鳥に向かって頷いた。

すると、黒い鳥はボロボロと崩れ落ちるように消え去ってしまった。

 

 

「……そういう事だ。幸村、猿飛。せっかくこれからってところで悪ぃけど、今日はここまでみてぇだ」

 

話しながら景勝はティアナの方に目をやった。

 

「それと…オマエ、名前なんて言うんだ?」

 

「?……ティアナ・ランスターよ」

 

ティアナはクロスミラージュを構えたまま、静かに応える。

すると、名前を聞いた景勝は自然と口の端を釣り上げた。

 

「ティアナか…その名前…しっかり覚えておくぜ。次に会った日には、また一皮むけた姿を見せてくれるのを期待しておくぜ」

 

告げ終わると、景勝はニッと笑みを浮かべながら、煙玉を足元に投げつけ、忽ち辺りは白煙に包まれた。

 

「ま、待たれよ! 景勝殿!!」

 

幸村と佐助はそれぞれ武器で煙を払うが、既にそこには景勝の姿はなかった。

 

「逃げられたか…」

 

「佐助!」

 

佐助が肩の荷を下ろした様子で息をつくと、ティアナが駆け寄ってくる。

 

「佐助、大丈夫?」

 

「あぁ…なんとかな…」

 

話しながら、佐助はティアナと共にさっきまで景勝の立っていた場所を一瞥した。

 

「最後のあれ…どういう意味なの…?」

 

「……まぁ、なんというか…少なくともお前、気に入られたみたいだよ…あの『悪たれの景勝』に」

 

佐助は大手裏剣を腰に下げて話す。

幸村はまだ、景勝の姿を探して辺りを見渡していた。

 

「……どう? ちょっとは自分の気持ちの整理ついたか?」

 

佐助が尋ねると、ティアナは胸に支えていたものが取れたように大きくため息を吐いた。

 

「一応はね」

 

ティアナはふっと笑いながらそれだけ応えた。

実に数週間ぶりに見せた心からの笑顔だった。

そんなティアナの返事に、佐助もニッと笑い返した。

 

その時だった…

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォン!!

 

 

「「「!!?」」」

 

3人の耳に遠くから激しい爆音と衝撃音が響いてくる。

隊舎の正面玄関前の方からだった。

 

「…どうやらまだあっちの方は片付いてねぇみてぇだな!!」

 

「急いで参ろう! 佐助! ティアナ殿!」

 

「はい!」

 

3人はすぐさま、応援に向かうべく駆け出した…

 

 

 

 

その頃、機動六課・隊舎前では大谷吉継との死闘を続けるスバルと家康であったが、その戦況はお世辞にも芳しいものではなかった…

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォン!!

 

 

「うわあああああああああああああああ!?」

 

「きゃあああああああああああああああ!?」

 

大谷の撃ち飛ばしてきた珠が目の前の地面に命中し、爆発に晒された家康とスバルは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

「ヒーヒヒヒヒ!! ほれほれ! どうした徳川。 主らの“絆”とやらの力はこの程度か?」

 

二人の前では、禍々しい光を放つ珠を掲げながら大谷が、浮遊する輿の上で胡座をかきながら冷やかすような笑みを浮かべる。

家康は地に膝をつきながら、血の混じった唾を吐きつつ、眉を顰めた。

 

(一体どういう事だ…? 日ノ本で戦った時よりも、遥かに強い力を感じる……!)

 

大谷とは、日ノ本にいた頃…関ヶ原の戦いが起こる以前より何度か戦った経験があった。その戦いで覚えていたのは彼の扱う妖術は確かに厄介な効果を持つものが幾つもあれども、やはり三成や左近に比べると、ここまで苦戦を強いられる程に、実際の戦闘に秀でていたという印象はなかった。

ところが、この戦いが始まってから、大谷は次々と今まで家康が見たこともなかったような妖術を匠に操り、スバルと二人がかりになっても、まともに一撃さえ届かせずにいた。

ここまで実力を隠してきたとでもいうのか? それともスカリエッティというこの世界の新たな協力者のおかげで得た力とでもいうのか?

そんな家康の戸惑いを見抜いたのか、大谷はヒヒヒと笑いながら言った。

 

「この世界は実にすばらしいものよ。魔法という術が出回っているおかげで、我が妖術にもより一層力を漲らせてくれる」

 

「……やはり、魔法の力も借りているのか…?」

 

家康が尋ねた。

 

「左様。ただし、術式はあくまでも我がやり方のままで、借り受けているのは“魔力”という糧の力だけ…しかし、おかげでこうして我が術もより強力になったというわけだ」

 

大谷はそう答えながら、5個の珠を身体の前に列を組むように並べる。

 

「当然…強くなった我が術は新たな呪いを生み出す事も容易くなった……」

 

大谷は珠の一個一個に思念を送り始めた。

 

「“放つな五行”」

 

大谷がつぶやくと共に、5個の珠からそれぞれ炎、濁流、土砂、枯葉交じりの風、光線が一つになって家康達に向けて放たれる。

 

「よけろ!」

 

家康が叫ぶと、彼とスバルはそれぞれ横に飛び退いて5種類の珠の攻撃を交わす。

しかし、5個の珠は攻撃を避けられても、大谷の周囲に展開し、それぞれの炎、濁流、土砂、枯葉交じりの風、光線を放ち続ける。

絶えぬ5種類の攻撃を前に、家康達はうまく反撃に出る事ができずにいた。

 

「くそ!完全にこっちの不利だ!」

 

「でも早くなんとかしないと隊舎が…」

 

スバルはそう言いながら、隊舎の正面玄関前に押し寄せようとする縛心兵達を前に1人奮闘するザフィーラに目を向けた。

 

「はぁ!…はぁ!…はぁ!」

 

流石のザフィーラも洗脳された一般人な上に一時的に無力化しても無限に復活してくる敵を延々と相手にするのはキツい様子であった。

ザフィーラは毅然とした表情で拳を構え続けるが、その息は切れ切れになっているのがわかる。

そして、尚も縛心兵達は次々と隊舎に向かって押し寄せてきていた。

 

この状況はどう見ても六課側が不利であった。

その様子を苦渋の表情で見つめる家康とスバルに、大谷が低い声で挑発してくる。

 

「さぁ…どうする徳川? いくらおぬしでもこの窮地をどう乗り切る?」

 

大谷の挑発に悔しそうに歯を食いしばる家康とスバルであるが、それでも投げかけられる言葉に抗うかのように再び身構える。

 

「!?…諦めるものか! 絆の力に不可能はない!」

 

「私も…こんな簡単に諦めるつもりはありません!」

 

そう宣言すると再び、大谷に向かって駆け出す家康とスバル。

それを黙って睨みつけながら、大谷は微かな声で…

 

「……相も変わらず、忌々しいまでに真っ直ぐな男よ…」

 

そう呟きながら、既に浮遊していた5個の珠を一か所に集中させると、一つの大きな珠に変えた。

 

「ではぬしらには、その揺るがぬ絆を打ち砕く我が究極の呪いを与えてやろう」

 

大谷がそういうと、黒いオーラが周囲から吸い寄せられるようにして大きな珠に集中し始めた。

 

「“朽ちろ日食”」

 

大谷が呟くように技名を呪文のように唱えると、黒いオーラを纏い、不気味な色に染まった珠を家康、スバルに向けて撃ち放った。

家康とスバルはそれを手甲とリボルバーナックルで防いだ。

しかし…

 

「!?…手甲が!?」

 

「リボルバーナックルが!?」

 

なんと二人のそれぞれの手甲やナックルは、黒い珠の放つ不気味なオーラ…瘴気によって徐々に腐食し始めていた。

 

「うぅ!?…なんなのこの力!? 魔法とは違うのに、それ以上の力を感じる!」

 

物を腐らせる程の力を有する『呪い』の恐ろしさにスバルは驚く。

 

「ヒーヒヒヒヒ! さあ!骨の髄まで腐り、朽ち果てるがいい!」

 

大谷がそういうと、二人の防ぐ呪いの珠にさらなる圧力がかかる。

 

「うぅ…!」

 

「ああぁ!」

 

圧力と腐食の両方の攻撃を受けて、家康達の表情に苦痛が浮かぶ。

そして、両者の装備の腐食がそれぞれの生身の身体にを犯そうとしていた。

その時…

 

氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)!!」

 

突如一筋の閃光と共に大谷の家康達との間の地面が氷付き、同時に家康達を襲っていた珠も氷柱の一部になった。

 

「これは!?」

 

家康とスバルが後ろに飛び退き上を見上げると、そこには魔法陣を形成してその中心に立って、剣十字の紋章を模した穂先を持った杖型デバイス”

シュベルトクロイツ”を手に持ち、白と黒を基調とし、背中から大小ぞれぞれ1対ずつ黒い羽の生えたデザインのバリアジャケット姿のはやてがいた。

 

「八神殿!」

 

「はやて部隊長!」

 

驚く家康とスバルに、はやてがニッコリと笑うと今度は隊舎の入り口に迫っていた縛心兵達に目をやる。

 

「私の大切な仲間に…指一本触れさせはせぇへんで」

 

はやてがそう言うと、隊舎の正面玄関前に群がっていた縛心兵達に目を向け、サッとシュベルトクロイツの穂先を向けた。

すると、縛心兵達の一団は纏めて凍りついた。

 

「ザフィーラ! 大丈夫!?」

 

「……感謝します。主」

 

ようやく縛心兵達の攻撃の手が止まったのを確認し、ザフィーラは安堵の息を吐きながらはやてに一礼した。

その様子を見ていた家康は、初めて目の当たりにする魔導師として戦うはやての姿に思わず息を呑んだ。

 

「おぉ! あれだけ大勢いた縛心兵達が……!?」

 

「リミッターがかけられていて尚もこの魔法の威力……流石は、はやて部隊長」

 

家康とスバルは予想以上のはやての魔導師としての能力の高さに思わず呆気にとられた表情を浮かべた。

一方、隊舎を襲おうとしていた縛心兵を凍結させた事を確認したはやては、そのまま大谷を見下ろし、そして睨みつけた。

大谷は、はやてと視線を合わせると、一気に輿を上昇させ、はやてと対等に目線を合わせられる場所まで浮上する。

 

「大した魔法であるな…さてはその方が、この部隊を率いる長 “八神はやて”か?」

 

大谷が飄々とした口ぶりで、はやてに話しかける。

はやては、警戒心、そして怒りの感情の籠もった目つきで大谷を睨みながら、静かに頷いた。

 

「時空管理局・古代遺物管理部『機動六課』部隊長 八神はやて二佐や……そういうアンタは…なのはちゃん達が言うとった“大谷吉継”やな?」

 

「如何にも…われこそが“大谷吉継”…西軍参謀にして総大将 石田三成の右腕…」

 

「アンタが…ティアナを変にして、この騒動を引き起こした張本人っちゅう事か……」

 

はやては、シュベルトクロイツの柄を握る手に力を込めた。

 

「一応、一回だけ確認するで。おとなしく降伏する気は?」

 

「ヒヒヒッ…何を言うかと思うたら…寝ぼけた事を…。われら豊臣に、『降伏』という二文字は存在しない…」

 

大谷はそう嘲笑うが、はやては予想通りの返答に納得するように頷いた。

 

「よかった。それなら、こっちも……全力でアンタを取り押さえるだけや!」

 

そう叫ぶと、はやては足元の魔法陣の周囲に6本と、魔法陣の中心から1本の合計7本の光の槍を出現させ、その全ての穂先を大谷向けて構える。

 

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け……“石化の槍(ミストルティン)”!」

 

はやては、大谷に向かって一斉に7本の光の槍を放った。

 

「面白い。同じ法術使い同士…心躍る戦いを期待しようぞ」

 

大谷は愉快げにそう呟きながら、輿の周囲に7つの珠を展開する。

 

「“穿つな八曜”!」

 

飛来してくる光の槍に向かって、同じ様に光輝く珠が迎撃するように飛来していく。

直後、全ての光の槍と珠が空中でぶつかり合い、大爆発を起こし、隊舎周辺は凄まじい閃光と爆音、衝撃に見舞われた。

 

「くっ…やっぱ、リミッターありやと、こんなもんか…」

 

後ろに飛び退いて、爆風を回避しながらはやては、自身にかけられた魔力リミッターによって今の全力を出して戦えないこの状況に歯痒さを覚えていた。

隊の戦力バランスの為に仕方ない事とはいえ、ことこういう時に限っては、非常事態においてリミッター解除の融通が効かせづらいこの制度に対して、時折恨めしく思えた。

 

「“戻るな鎮星”」

 

不意に、まだ晴れぬ黒煙の向こう側から、大谷が新たに技名らしき言葉を唱えるのが聞こえた。

直後、黒煙を断ち切るように輪を描くように展開された珠が高速で回転しながらはやてに目掛けて迫ってきた。

 

はやてはそれを避けると、退避する様に見せながら、隊舎前の海の沖合に向かって飛行する。

このままこの場所で大技をぶつけ合っていると、隊舎や地上にいる家康達にも巻き込んでしまう可能性があると踏んだはやては、少しでも周辺に被害が及びづらい沖合の海上まで大谷を誘い出す事に決めた。

 

そして、はやての狙い通りに大谷は輿を操作して、はやての後を追ってきた。

 

《はやて部隊長!?》

 

「スバル! 家康君! 大谷はわたしがなんとかするから、ザフィーラの手伝いよろしく! そろそろ、“氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)”の効果が切れてまうかもしれへんから!!」

 

自身を心配し、念話を飛ばしてきたスバルに対し、はやては手短に指示を送る。

すると、今度は家康からの忠告が念輪となって届いた。

 

《はやて殿! 刑部の妖術はかなり強力だ! いくらはやて殿でも1人で相手をするのは…!》

 

「わたしを見くびらんといてぇや。家康君! これでもわたしは機動六課の部隊長やで。そう簡単に落とされるつもりはないで!」

 

はやてはそう啖呵を切ってみせると、背後から追尾してくる珠の輪を一瞥する。

珠は依然として高速で回りながらはやてを狙って追ってくる。その背後からは大谷もしっかりと追跡してきていた。

 

 

大谷を誘導する形で沖合に向かって飛んでいくはやての姿を見送りながらも、家康は一握の不安を拭いきれずにいた。

 

「家康さん…?」

 

「はやて殿の実力を疑うわけではないが…なんだか嫌な予感がする…」

 

「嫌な予感って…?」

 

眉を顰めながら呟いた家康の言葉を聞き、首をかしげるスバル。

だが、その言葉の是非を問おうとしたその時…バリンとガラスが割れるような音が聞こえた。

見ると、閉じ込めるようにコーティングされていた氷の結晶が砕け、再び動き出している縛心兵達の姿が見えた。

 

「ッ!? また動き出してる!?」

 

「…仕方ない。とにかくワシらは引き続き奴らを隊舎に近づけないようにするぞ!」

 

「は、はい!!」

 

家康とスバルは、再び縛心兵達の進撃を止めようとする。

っとそこへ…

 

「家康殿!!」

 

景勝を取り逃がした幸村、佐助、ティアナが合流してきた。

 

「真田! 景勝殿は?」

 

「申し訳ござらぬ。捕らえそこねたでござる」

 

「そうか。しかし、3人共無事であったのは何よりだ」

 

家康がそう話していると、丁度そこへ訓練所の方から、気を失った島左近を抱えたシグナムが…正門の方から、小十郎とエリオ、キャロがそれぞれ駆けつけてきた。

勿論、左近にはバインドがしっかりかけられていた。

 

「シグナム副隊長! 島左近を捕まえたのですね!?」

 

「あぁ。なかなかの手練だったが、どうにかな……ジャスティはどうなった?」

 

スバルの言葉にシグナムは近くの木に左近を縛り付けながら答えると、今度はエリオ達に尋ねた。

 

「こっちも、もう大丈夫です。シャーリーさんも怪我一つなく無事です」

 

「ヤツの身柄は既にフィニーノに預けて、留置室にブチ込みに行かせた」

 

エリオと小十郎からの返答を聞いて、家康達は皆、安堵の表情を浮かべた。

特にジャスティに対して相当な怒りを示していたシグナムに至っては若干黒い笑みを浮かべているかのように見えた。

 

「フフフ…待っていろ。ジャスティ………事が終わったら、守護騎士(ヴォルケンリッター)の名において、たっぷり貴様を締め上げてやる。そして、主はやての想いを無碍にしようとした事を後悔させてやるからな」

 

((((怖っ! シグナム副隊長怖っ!!))))

 

((((……まるで三成(石田)(石田殿)みたいだな(でござる)……))))

 

シグナムの狂信的なまでのはやてへの忠誠心に思わずドン引きする家康達だった。

っとそこへ…

 

 

「貴様らぁぁぁぁぁ! いつまでも呑気に話してないで、少しは手伝わんかぁぁぁぁ!!!」

 

 

依然、相当な人数の残っている縛心兵を相手に1人奮闘していたザフィーラが奮闘しながら、珍しくツッコミの声を張り上げた。

 

「わぁ! ご、ごめんザフィーラ!!」

 

「と、とにかく皆でここを防衛するぞ!!」

 

ザフィーラの怒声で我に返ったスバルと家康は慌てて、縛心兵達の許に駆け寄り、交戦にかかるのだった。

 

 

 

ある程度沖合まで来たところで、はやては踵を返すと、もう一度先程の攻撃魔法『氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)』を放とうとする。

 

「ほの白き雪の王、銀の翼もて、眼下の大地を白銀に染めよ。来よ、氷結の息吹…」

 

はやてが詠唱を唱えながら、シュベルトクロイツをふりかぶると、その場に三角形の魔法陣と、その周囲に複数の白く光るキューブがそれぞれ展開された。

 

「 “氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)”!!」

 

こちらに向かってくる回転しながら追尾してくる珠、そしてその背後から珠を操りながら追ってくる大谷自身に向かってシュベルトクロイツの穂先を構えながら、技名を号令の様に唱えると展開されていたキューブが回転しながら、向かってくる珠や大谷に向かって撃ち出された。

 

そして二度目の大爆発が起き、その衝撃で海上が激しく波打つ様子が上空にいたはやてからもはっきりと見て取れた。

もし、今の迎撃を隊舎の真上で行っていたら、今度こそ隊舎に何かしらの被害が生じていたであろう事は間違いなかった。

 

「泣いてみせよ…」

 

「!?」

 

だが、息をつく間もなく、大谷ははやてに迫りながら次の術を繰り出しにかかってきた。

今度は数珠繋ぎに連なって蛇行するように浮遊する数十個の珠を匠に操りながら、それをはやてに向かって放ってくる。

はやては飛来するそれを華麗に避けながら、即座に反撃の一手を繰り出す。

 

「“バルムンク”!」

 

はやては白い魔力刃を2つ撃ち出すと、襲いかかってくる数珠の端を切り裂く事で、その数を少しずつ減らしていく。

魔力の刃が空中を斬り裂き、連なっていた珠のいくつかを海上へと落としていく。

 

「今や!」

 

はやてはシュベルトクロイツで、魔力刃の軌道を巧みに操り、無防備な状態だった大谷の乗った輿に向かわせる。

だが、大谷は自分に向かって迫りくる2つの魔力刃を前にしても少しも怯む様子を見せなかった。

 

「“散るな天河”」

 

大谷が唱えながら、両手を顔の前で交わすと、はやての周りを蛇行していた珠が大谷の許に引き戻させる。

直後、大谷は再び集結した珠を向かってくる魔力刃目掛けて、散華させるように発射した。

まるで散弾のような飛び方で撃ち出された珠は大谷を切り裂こうとしていた魔力刃を打ち砕くだけでなく、その背後にいたはやてにも容赦なく降り掛かっていく。

その威力に驚きながらも、はやては慌てる事なく、自身の目の前に三角の魔法陣型の防御魔法(シールド)を展開し、自分に降りかかろうとした珠を防いだ。

 

「…家康君が言うてたとおり…確かに強力でけったいな術ばかり使かってくるなぁ…」

 

(本局が大谷()の事を知ったら、間違いなく『新手の魔法術式の使い手』として研究対象として欲しがるやろうな…)とシニカルな事を考えながらも、はやてはこの未知の法術“妖術”を操る難敵をどう倒すか思考を巡らせる。

ここまで小手調べがてらに近中距離の魔法を撃ち合う事で、実力を計っていたが、このまま下手な撃ち合いを続けても、埒が明かない様子であると踏んだはやての脳裏に浮かんだ最も効率的な戦法は『広域・砲撃魔法で一気に撃ち落として決着をつける』事だった。

 

しかし、自身は今は魔力リミッターがかけられており、広域・砲撃魔法を用いたところで果たして、撃ち落とせるかはわからない。

おまけに大谷の操る術はどれも、自分が使う魔法に比べて、詠唱時間や発射までのリーチが非常に短い。

これは、詠唱と術式展開が必要不可欠である広域・砲撃魔法を発射する上では、非常に相性の悪い敵といえる。

普段であれば、守護騎士のシグナムやヴィータ、または近接戦闘に秀でたフェイトなどに敵の足止めを担ってもらい、その間に詠唱を完了させるという戦法がセオリーなのであるが、ここにいるのは自分1人であり、誰からの援護を得る事もできない。

故に、この戦法を用いるのは現実的ではない事は、はやて自身もよくわかっていた。

 

「まったく、魔法は面倒な術であるな…確かに威力こそ認めるが、いちいち斯様な長い呪文を唱える必要があるとは非合理的としかいいようがないな。ヒヒヒッ!」

 

そんなはやての考えをまるで読み取ったかの如く、大谷が皮肉を述べながらあざ笑ってきた。

はやては、歯を食いしばりながら大谷を睨みつける。

この男は全ての意味合いで、自分とは“すこぶる相性の悪い男” であると思えた。

 

「ぬしは先程、われを“全力で取り押さえる”…と申しておったな? まさかそれがぬしの“全力”などとぬかすのではなかろうな?」

 

はやてにかけられたリミッターの事を知ってか、知らずか、わからないが、大谷は挑発を繰り返しながら、再び珠を輿の周りに展開し、はやてに向かって追尾弾を放ってきた。

はやては再び空を飛行し回避しつつ、時折、迎撃の魔力弾を撃っては追尾弾を凌いだ。

 

「くぅっ…! アンタって周りから『性格悪い』って言われるやろ!?」

 

追尾弾を回避しながら、はやては大谷の底意地の悪さを非難する。

それに対し、大谷は愉快げに笑いながら、頷き応えた。

 

「ヒヒヒヒッ! 軍師として上手く世を渡るには、如何に己の意地を悪くするかが要であるぞ! お人好しでは戦乱は生きられぬ、軍師しかり将しかり…ぬしも一軍の長であるのなら、われを参考にするがよいぞ? ヒーヒッヒッヒッ!!」

 

「誰がアンタみたいなヤツ参考にするかいな! この捻くれミイラ!」

 

はやては吐き捨てながら、海上近くまで降下すると、滑るように飛行しながら、追ってくる残りの追尾弾の数を数えた。

残りはあと4つ…さらに見上げると上空では大谷が周りに追加の珠を展開する様子もなく、逃げる自分を見下ろしているのが見えた。

 

(……!? せや! えぇ事考えたで…)

 

はやての脳裏に、瞬間的に天啓が浮かぶ。

そして、もう一度、上空にいる大谷の様子を確認すると、突然反転し、そのまま彼の方に目掛けて上昇し始めた。

 

「…ッ!?」

 

突然、はやてがこちらに向かって突っ込んできた事に、大谷が目を見開いたのが、突進するはやてからも確認できた。

散々嘲りの言葉を吐いてきた彼の出鼻をちょっと挫く事ができたと知り、はやては少し溜飲が下がる思いだった。

 

大谷との距離があと数メートルと迫った時、はやては即座に軌道を真上に切り替えて回避する。

はやての目論見通り、追尾弾は突然のはやての方向転換に適応できず、そのまま目の前に迫っていた大谷自身に向かって突っ込んでいく。

 

「…それでわれを謀ったつもりか?」

 

だが、大谷はすぐに冷静な面持ちに戻り、包帯に覆われた口元を歪に釣り上げるとパチンと指を鳴らした。

すると、大谷にぶつかろうとしてした追尾弾が全てパッと煙のように消えたのであった。

 

「わざと珠を誘導し、われに当てて自滅させようと考えたのであろうが、生憎この珠はわれの思うままに操れるもの…当然、われが「消えよ」と念じればすぐに消える…」

 

大谷は再度、はやてを嘲る材料ができたと嬉しそうに呟きながら彼女を探して、周囲を見渡す。

そして、自分の真上に回避していたはやてを見つけた。

 

だが、大谷にとって予想外だったのは、はやてが既に詠唱を完了させたのか、足元と突きつけたシュベルトクロイツの先にそれぞれ巨大な魔法陣を展開し、こちらに向けて構えていた事だった。

 

「あんな虚仮威《こけおど》しな芸当…アンタには通用せん事くらい最初からわかっとったわ。 せやけど、アンタは随分魔導師(わたしら)を舐めとるさかい、絶対わざとわたしのプライドを折るような形で打ち消してくるやろうと思ったんよ。そうすれば、若干でもアンタは隙を見せるやろうと踏んで…案の定、わたしが詠唱を唱える時間稼いでくれて、おおきにな」

 

はやてが先程の意図返しと言わんばかりに大谷を煽る様にウインクを送る。

そんなはやてに対して、大谷は「ほう」と感心するように頷いた。

 

「なるほど。所詮は術ありきの小娘と見くびっておったが…その実、徳川にも負けず劣らぬタヌキであったか…いやはや、われとした事が少々、油断しすぎたようだな…」

 

そう自嘲するように呟く大谷ではあったが、何故かこの期に及んで異様な程の落ち着きぶりをみせ、包帯の奥には笑みさえも浮かべているかのように見えた。

そんな大谷の妙に落ち着いた様子に違和感を覚えながらも、はやては展開した魔法陣に魔力光を収束させていく。

 

「フレース…ヴェル―――――」

 

はやてが収束させた魔力光を巨大な砲撃魔法として放とうとした。

その時である。

 

 

「………やれ。うたよ……」

 

大谷がどこへともなく、合図を送るように声を上げた。

その瞬間、魔力砲を放とうとしていたはやては突然、自分の心を射抜くような鋭く冷たい視線を感じ、大谷に向けて照準を合わせようとしていた目を、謎の視線が飛んできた方へと無意識の内に向けさせる。

そのタイミングを狙って、視線が飛んできた先…海を挟んで遠くに見える機動六課の隊舎の屋上辺りに一瞬ピカリとなにかが光った様に見え、同時に「ぃええいっ!」と気合を発する様な女の叫びらしき声がはやての耳に届いた。

 

直後、はやての全身に落雷を食らったかのような猛烈な衝撃が走り、ビリビリと周りの空気が震える。

はやては一瞬何が起こったのかわからなかった。

というよりも、身体も心もなにかに圧し固められるような感覚を覚えた。

全身が凍りつけられたかのように固くなり、瞬きすらできない。

ほんの数秒の間だったのに、気がつけば顔中に大量の汗が浮かび、滝のように流れ落ちていた。

 

(なッ!? なんや……? これ……? 急に……身体が……動けへん……!?)

 

はやては自分の身体に起こった異変に戸惑う言葉すら発する事ができずにいた。

話そうにも頬の筋肉も例外なく硬直してしまい、ピクピクと微かに動かせるだけであった。

気がつくと、発射寸前だった砲撃魔法“フレースヴェルグ”も、展開していた魔法陣ごと消失してしまっていた。

そこへ大谷がゆっくりと輿に乗りながら近づいてきた。

 

「ヒーヒッヒッヒッ!! 魔法はおろか、言葉ひとつ発する事ができぬであろう? われを出し抜いたと思うたであろうが、生憎と、われも1人でぬしと相対するつもりはなかったのでな……」

 

「…………………ッ!?」

 

「この卑怯者!」と罵倒したい気持ちに駆られるはやてだったが、謎の術らしきものの効果のせいで今は口を開くことすらできなかった。

 

「恐らくは今頃、隊舎では徳川達もこの術にたいそう苦しんでおろう…種明かしはそこでしてやるので、それまでしばし耐えるがよい」

 

大谷はそう言うと、硬直したはやての顔の前で、手で印を切る。

 

「“抑えよ極星”」

 

大谷が唱えると同時にはやての両手両足に2つずつ珠が纏わり付くと、硬直していた彼女の身体を釣り上げるのだった。

 

 

*

 

突然、はやての身体を硬直させた謎の気合…

その気合による被害を受けたのは、彼女だけではなかった。

 

機動六課隊舎・正面玄関前で奮闘していた面々もまた、突然隊舎の屋上から発せられた謎の気合によって、身体が石のごとく硬直してしまったのだった。

 

スバル、ティアナ、エリオ、キャロのフォワードチーム4人は全員固くなってしまい、家康、幸村、小十郎、佐助、シグナム、ザフィーラなど歴戦の猛者達でさえも、脳髄から足の指先まで痺れ上がり、身体が思うように動かせないでいた。

始めはそれが、大谷が放った妖術の類かとも考えた家康であったが、自分達だけでなく、西軍側の兵士である縛心兵達も軒並み固くなってしまっているのを見て、その可能性が低い事を察した。

西軍の幹部の例に漏れず、悪辣な趣向の持ち主である大谷であるが、軍師としては効率性を何より重視する傾向がある。故に味方を無差別に巻き込むような思慮の足りない軽率な術策はとらない筈であった。

 

「やれ呆気ないものだな。ぬしらの実力を試す為に、敢えてこの策は使わずにとっておくつもりであったが……まさか全員がかかるとは予想だにしなかったぞ……」

 

不意に空から、その大谷の愉悦に満ちた声が聞こえてきた。

見上げると大谷の乗る輿の隣に、珠に縛られて引き寄せられながら、力無く項垂れるはやての姿があった。

 

「は…はやて殿……?」

 

「あ……主はや…て……? 何故………ここに……?」

 

家康とシグナムが痺れる口を開いて必死に声を上げる。

すると、大谷は家康達が思うように動けないのを確認すると、わざわざはやての身体を全員が硬直している辺りのど真ん中に寄せて、これ見がよしに見せつけた。

 

「ヒヒヒヒヒヒッ! 今宵は良い収穫ぞ。『機動六課』の部隊長を……仕留める事ができるのであるからの」

 

「ま…待て…やめ……ろ……刑………部……」

 

家康は必死に止めようと痺れる身体を動かそうとするが、足はまるで巨木になったかのように重く、一歩も踏み出す事ができない。

そんな家康の様子を大谷は嘲笑い…

 

「よく見ておけ。徳川よ…せっかく結んだぬしの“絆”が壊れる様子を…」

 

そう言ってのけると、珠の1つを硬直したはやてに向かって撃ち飛ばした。

 

「「「「「ッ!!?」」」」」

 

「あ……ある……じ…ッ!!?」

 

家康達が目を剥き、シグナムが悲痛な声を必死に喉から絞り出す。

その間にも珠は勢いをつけながらはやてに向かって、宙を滑走する。

 

「……………ッ!!?」

 

自分に向かって飛んでくる珠を見据えながらも、はやては目を閉じる事さえもできず、眉を微かにヒクヒクと動かしながら、心の内で藻掻こうとする。

その時だった――――

 

 

「ちょいと待ちなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

気合によって全員が固まってから、まともな声を発する者がいなくなった隊舎前に威勢のいい声が響き渡った。

刹那、はやてと、彼女に迫ろうとしていた珠の間に割り込むように一人の男が立ちはだかった。

男は、はやてを庇うように前に立つと、手に持った等身大サイズの超巨大な刀らしき武器を振りかぶって、飛んでくる珠を打ち返した。

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

突然の乱入者の姿を、一同がよく見ると…

 

「へへへッ! 訳の分からない場所に飛ばされてから、しばらくご無沙汰になって鬱憤溜まっていたんだけどよぉ……。まさか、こんな場所で、こんな時間から随分とド派手に“喧嘩”してる連中と出くわすなんてさぁ。 しかも俺のよく知ってる懐かしい顔ぶれが…なぁ、夢吉?」

 

そう陽気な口調で話すその男は、年は政宗や幸村と同じ世代で、黄色い羽織や虎の毛皮など全体的に派手な衣装や装飾に身を包み、明るめの茶色い長髪を後ろ手に縛った上で巨大な羽飾りをあしらった所謂『傾奇者』と呼ばれる派手な格好をしていた。

 

「キキィッ!」

 

男の呼びかけに答える様に懐から一匹の子猿が飛び出し、肩に飛び乗った。

そんな男の姿を見た、家康は驚きで目を剥いた。

 

家康だけではない。

幸村も佐助も小十郎も、そして大谷でさえも、突然現れた男には見覚えがあった。

 

「慶次…!? ……慶次…なのか!?」

 

家康が思わず大声を出してその名を言い出す。

はやても相変わらず、喋ることはできなかったが、家康の口から出た名前には聞き覚えがあり、その正体に気づいて驚く。

 

(慶次!? 慶次ってまさか……)

 

そう…その男は他でもなく、家康達の世界…戦国の世の名だたる武将の一人―――

 

 

「おうともよ! 加賀前田の風来坊! “前田慶次”! 久方ぶりに参上っ!! なぁんつって!!」

 

 

前田家の風来坊…“前田慶次”その人であった。

 




やっとリブート版にも登場しましたよ! 慶次! BASARAシリーズ一影の薄い主人公!…ゲフンゲフン!!

とにかく、やっとこれでリブート版も歴代BASARAシリーズで主人公を務めた全員が登場したわけです。

それから、今回ははやてVS刑部のバトルの影に埋もれがちかもしれませんが、ティアナもやっと吹っ切れる事ができました。
途中、休載挟んだせいで半年近くも悩ませてしまってホントごめんねティアナ…(苦笑)

次回もお楽しみに!
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