リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

44 / 78
コロナよろしくなかなか亀更新の終わりが見えないCharleyです。

世間では一先ず(沖縄以外の)緊急事態宣言解除が決まりましたが、果たしていつになったらこの窮屈な生活から解放される事だか……

そんなわけで今回の話は一際窮屈そうな男(おい)…“暗の官兵衛”こと黒田官兵衛が主役となります。

官兵衛「ってちょっと待て! 窮屈そうな男ってどういう意味だこら! 小生はこれでもだな―――」

セイン「はいはい。リリカルBASARA StrikerS 第四十章 出陣するよ~~!」





第四十章 ~去る又兵衛と入るセイン 官兵衛さんの激動の一日~

スカリエッティのアジト内・その中でも最下層に近いあるフロア―――

 

「ぶはぁっ! ごぶぉっ! あっち! あっぢいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!? 行長先輩いいいいいぃぃぃぃぃっ!!? こ、これマジでダメだって!! ってか普通に死ぬからぁぁぁぁぁ!!」

 

奥行き18畳程と、広大なスカリエッティのアジトにしては『小部屋』に部類されるその部屋から、洞窟のように仄暗いアジトの通路に反響せんばかりに大きな悲鳴が聞こえてきてくる。

 

冷たいレアメタル製の自動引き戸の向こう側ではまともな感性の持ち主であったら熟視したくないような光景が繰り広げられていた。

 

部屋の真ん中に用意されたグラグラと沸騰する熱湯が縁いっぱいまでに満たされた巨大な釜…

その真上に、西軍総大将近習 島左近が天井から吊られた縄に両足を縛られた状態で逆さ吊りにされていた。

時々ギリギリ顔が全て浸る高さまで降ろされ窯の熱湯に顔が沈んでは、熱さと息苦しさとで必死に首を上げ、しばらくしてから力尽きてまた熱湯に顔をつけて絶叫する…まさに悪趣味極まりない責苦である。

 

そんな左近の様子を窯の近くに置かれた椅子に腰掛けた“豊臣五刑衆”第三席 小西行長はまるで余興を頼むかのように微笑を浮かべながら眺めていた。

 

「仮にも西軍総大将の側近を勤め上げるだけの御人が、何を意気地のない事を言っているのですか? さぁ、10分経過しました。次の(ダード)を振りましょうか」

 

行長がそう言いながら、片手を上げて合図を出すと、左近を吊るし上げていた縄が1メートル程上昇し、水責め…ならぬ熱湯責めの状態から解放された。

ゲホゲホと咽る左近に向かい、行長は2つのサイコロを人差し指、中指、薬指の間に挟む形で掲げて見せる。

 

「さて、先程は“シゾロ”で8分…次こそは“ピンゾロ”が出ると良いですね。尤も…私としては、次は“ムゾロ”でも出てくれると面白いのですが…」

 

「じょ、冗談じゃねぇっスよ!? 『六』と『六』(ムゾロ)って事はこれを12分も耐えないといけないって事じゃないっスか!? あの状態で1分過ごすだけでもどんだけ苦しいかわかってます!?」

 

真っ赤に茹で上がり、湯気を放った顔で左近が抗議する。

すると、行長は涼しい顔で反論する。

 

「おやおや。先だっての“潜伏侵略の計”の折に、敵に不覚を取って、囚われそうになるヘマを犯したのは誰でしたか? これはその“制裁(サンシオン)”の一環である事を忘れてはいませんよね?」

 

「にしたって“限度”ってもんがあるでしょうが! っていうかなんでよりによって制裁担当が、石田の将兵でもないアンタなんっすか!?」

 

「私は生前秀吉公より豊臣軍閥における“刑吏*1奉行”の任を任された身です。故にその遺志を受け継ぎし西軍における幹部の処罰を担うのも当然の事でしょう? そんな事よりも次の賽を投げますよ」

 

行長は平然と言い放ちながら、手にしたサイコロを床に向かって投げて転がす。

サイコロの動きが止まった時…出た目の数は『四』と『三』の“シソウ”であった。

 

「うむ…“シソウ”ですか。ではこれより7分…釜責めを再開します」

 

懐から懐中時計を取り出して、時間を確認しながら、再び片手を上げて合図を送ろうとする行長に向かって、左近は縛り付けられたまま頭を何度も横に振った。

 

「いやいやいや! その前に俺の顔に違う意味で“死相”が浮かんじゃってるから!! ほ、ほんともう勘弁して――――」

 

執行(エフェクション)!」

 

左近の嘆願が終わらない間に、行長は薄ら笑いを浮かべたまま、無慈悲な声質で発令する。

同時に、左近を縛っていた縄が再び釜に向かって落とされる。

 

「ちょっと待ってえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

 

左近の絶叫が部屋に響き渡った。

その時だった―――

 

「散っ!!」

 

突然、誰ともない掛け声と共に部屋の入口から飛来してきた2発の紫色の斬波…

うち一発が左近の足を縛っていた縄を…もう一発が熱湯を炊いていた大釜をそれぞれに一刀両断した。

大量の湯が床へ流れ広がり、湯気の立ち込める水溜りと変わったそこへ左近が「がるざっ!?」と独特な悲鳴を上げながら頭から落っこち、水を跳ねながら床に転がった。

行長はとっさに椅子から飛び退くと、せっかくの余興を台無しにした人物に抗議の眼差しを送らんとばかりに斬波が放たれた方向を睨みつけた。

すると、床に広がる冷め始めた湯の上をピチャリと足音を立てながら近づいてくる1人の男…西軍総大将 石田三成は今しがた沸騰していた熱湯はおろか地獄の釜の火さえも冷やさんばかりに冷たく、鋭い眼光を行長に返しながら近づいてきた。

 

「み、みみみ…三成様ぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!」

 

左近は己の絶体絶命の窮地から、直接助け舟を出してくれた三成に驚き、戸惑いながらも、思わず子供の様な感激の声を上げた。

 

「行長! 貴様、一体これは何の真似だ!?」

 

三成は涙目でこちらを見つめてくる側近を一瞬だけ目で追って無事を確認すると、行長を厳しく問い詰めた。

 

「何の真似とは? 私は大事な任務をしくじった将への“再教育”を命じられ、それをこうして実行しているだけですが?」

 

行長は、さも然るべき事をしていると主張するかのように、落ち着いた声で返した。

 

「“再教育”だと…ふざけるな! いつ私が貴様に石田軍の兵を再教育する許可を与えたというのだ!?」

 

叫ぶような声を上げながら、三成は行長に対して今にも斬りかからんばかりの剣幕で非難する。

すると行長は、わざとらしくショックを受けた様な顔つきを浮かべてみせた。

 

「私は皎月院(御内儀)様からのご命令に従い、先だっての作戦失敗の懲罰を左近殿に与えていたまでですが? ちなみに彼は“丁半”に目がないという事なので、『2つの賽を『ピンゾロ』が出るまで振り続け、出た目の数だけ熱湯責めにかけ続ける』と、その趣味趣向を反映した懲罰を課していましたが…同じ丁半に肖って差し上げたというのに…どうにも彼はお気に召さなかった様でしてねぇ…」

 

「仮にうたからの命令であったとしても…石田軍でも無い貴様が、私の家臣に勝手な懲罰を下す事は断じて許可しない!」

 

三成の言葉を聞いた行長はわざとらしく驚いた仕草をとりながら言い返した。

 

「これはしたり。普段は筆頭参謀(ペルソナル)・大谷にあらゆる事を一任している貴方が、まさか総大将の権限を行使してまで、ご自分の“飼い犬”を守らんとするとは…“凶王三成”ともあろう方も愛玩動物(マスコータス)を愛でる神経をお持ちだったとはね」

 

行長の嫌味ったらしい言葉に怒りを覚えたのは左近だった。

 

「ぐぅっ!…三成様に向かって、なんて口叩いてやが――――」

 

左近は嫌悪と怒りの眼差しで行長を憎らしげに睨みながら立ち上がるが…

 

「よせ! 左近!!」

 

三成自身が声を張り上げて、忠臣を窘めた。

制止された左近は困ったような顔で三成を見つめる。

 

「…行長。この男が先の刑部の考案した作戦で、気の緩みから敵に不覚を取った事は、私も既に承知している…その罪が然るべき懲罰に値する事にも同意だ」

 

「うぇっ!? み、三成様……っ!?」

 

三成の言葉を聞いて左近は思わず顔を引きつらせる。

だが、三成はその後に語気を強めながら補足を加えた。

 

「しかし! 如何に未熟と言えども、この男は我が石田軍の兵だ! 故にこやつを水責めにするも、釜茹でにするも、斬首に処するも、全ては将であるこの私に責務があるのだ! 幾ら、貴様が秀吉様より“刑吏奉行”を拝命していた身なれども、西軍の将の全ての生殺与奪の権利を貴様が一手に有していると思い上がっているのであれば…それは“お門違い”も甚だしい事であると知れ!!」

 

その叫びと共に三成が突き付けてきた長刀の石突を、黙って見つめていた行長であったが、やがて諦めた様に小さく溜息を漏らしながら頭を振った。

 

「御意に…五刑衆“筆頭”殿からここまで殺気を剥き出しに言われてしまえば、私もこれ以上、我を通すわけにもいかないようです」

 

「余計な減らず口は叩くな。貴様がこのまま五刑衆の地位を手にしておきたいのであれば…」

 

「…それならば、従っておいた方が良さそうですね。この地位でいるからこそ私の“楽しみ”の幅も、色々と広げられるものですから…っと、そろそろ本当に下がった方が良さそうですね。

 

行長が軽口を叩くが、三成から本気で睨まれた為、苦笑しながら話題を切り替えた。

 

「わかりました。ではもう1人の懲罰対象者である後藤とかいう三下を“再教育”しようかと思いますが…そちらは構いませんね?」

 

三成は唸るように答えた。

 

「…アレは元より官兵衛の配下…この私は一切関わり知る事ではない。 煮るなり焼くなり、好きにしろ…」

 

「そのお言葉を待っていましたよ…では、左近殿の再教育はお任せしますよ? “総大将様”……」

 

そして行長は白々しく一礼をすると、優雅な足取りで部屋を出ていった。

左近はしばらく行長の後ろ姿を忌々しそうに見送っていたが、やがて思い出したように三成に向かって頭を下げた。

 

「み、三成様あぁぁぁぁぁ!! あ゛っ、あ゛あ゛っ、あ゛り゛がどう゛ござり゛ま゛ずうううううううううぅぅぅぅぅぅっ!!?」

 

左近は涙と鼻水で何を言っているのか分からない。

とりあえず、命が助かった事や、普段冷たく接してくる三成が珍しく救いを差し伸べてくれた事が嬉しかった事は覗い知ることが出来た。

 

「あ、危うく殺されるとこでしたよ! でもまさか三成様に助けて頂くなんて―――」

 

左近は安堵と感謝の気持ちを最大限に引き出した笑みを浮かべながら三成に近づいたが、三成は返さなかった。

その代わりに長刀を抜くと鋒を左近の顔に向けながら、これ以上近づくなと言わんばかりに、冷たい視線を投げかけてきたのだった。

 

「ぎゃうっ!!?」

 

忽ち、左近の顔から笑顔と血の気が消える。

 

「勘違いするな左近…私が行長を止めた理由は、貴様の此度の不覚を断罪するは行長(ヤツ)ではなく“私”であるという事に他ならぬ…即ち…」

 

「す…即ちって……? やっぱり…?」

 

左近が恐る恐る尋ねるや否や、三成は左近の首めがけて長刀を目にも留まらぬ速さで一閃してきた――――

 

 

 

《左近ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!! 敵に不覚をとって刑部の足を引っ張るなど言語道断!! その愚かしさ、“死”をもって贖えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!》

 

《ぎゃひいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!! 三成様あぁぁぁぁぁぁ!! せっかく助けてくれたのにそんなご無体なああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!?》

 

 

アジト内部の中核を占める洞窟のような薄暗く広い通路―――

その奥深く、遠くの方から、突如として聞こえてきた三成の怒声と左近の悲鳴に、通路の壁際で談笑していた水色の髪をした少女とワインレッドの髪の少女が驚いて、床から飛び上がりそうになった。

 

「うっわぁ~…“凶王様”。今日は一段と機嫌悪いっスね~…」

 

ワインカラーの髪の少女…ナンバーズ・11番“ウェンディ”が苦笑を浮かべながら、怒号と悲鳴、そして風を切り裂くような音と地が揺れる喧騒と音が聞こえてくる方角を見据えつつ呟いた。

それに対し、ナンバーズ・6番“セイン”はすっかり慣れた様子で呆れながらボヤく様に返す

 

「無理もないよ。大谷のおっちゃん達がせっかく半月近くもかけて入念に下準備した作戦…結局何の成果も上げられなかったみたいだしさぁ。 おまけに左近の兄さんも兄さんで珍しく作戦中に敵に不覚とっちゃったみたいだよ」

 

「そうなんスか!? あちゃちゃ~…それはマズっちゃったっスねぇ」

 

ウェンディは未だ喧騒の止まない通路の果てを見据えながら、「ゴシュウショウサマデス」と片言な弔い言葉を呟くと、セインの方に顔を戻しながら言った。

 

「けど凶王様の側近ともあろう人でも、一回ヘマするだけであそこまでブチ切れられるって…『豊臣』ってほんとバリバリのスパルタっスよねぇ?」

 

ウェンディは無邪気な声質のまま、割と遠慮のない言葉で豊臣軍全体を総評する。

 

「元親のアニキだって言ってただろう? 豊臣軍ってのは良くも悪くも『実力』と『結果』が全てだって」

 

セインが返す。

 

「実力があって結果を出せりゃ、どんなに低い身分の奴でも大幹部になれる。聞いた話だとあの三成(凶王様)だってそうらしいよ? 逆にどんなに実力や地位が高くとも、失敗すれば容赦なく裁かれる…けど、あれでも“裏切り”と見做された奴に比べたら、全然優しい方だってさ。本当に怖い想いをするのは――――」

 

 

「太閤秀吉公に歯向かったり、寝首をかこうとして、凶王三成(きょうおうさんせい)の真の怒りに触れた獅子身中の虫…でしょうね」

 

突然に背後から聞こえてきた無駄に爽やかな声に、セインとウェンディは思わずドキリと身を震わせる。そして振り返り、声の主の正体を確かめた。

2人の予想通り、そこには豊臣軍最高幹部集団『豊臣五刑衆』第三席 小西行長がいつの間にか佇んでいたのだった。

 

「ヒィッ!? こ、小西様!? いつの間にそこにいたのですか!?」

 

セインが思わずその場に軽く飛び跳ね、ウェンディも露骨に顔を引きつらせながら、無意識の内に後退する形で行長から離れていた。

先のミッドチルダにおける初陣では、敵の一人の両腕をもぎ取るという残虐極まりない戦法で勝利したという行長のサイコさは既にナンバーズの面々にも知れ渡っており、セイン、ウェンディ共に、現在の自分達の教官役の長曾我部元親や、姉 チンクから、行長の事は「特に用心する様に」と散々忠告されていた為、直接彼と会話をするばかりか、顔を見るだけでも無意識の内に警戒心を抱く程になってしまっていた。

 

「…何をそんなに驚いているかは存じませんが…貴方…黒田殿が今何処におられるかご承知で?」

 

「へっ? “官兵衛のおっちゃん”…ですか?」

 

セインは最近、元親に続いて親しくなった西方の将の名を口ずさんだ。

 

「えっと…おっちゃんなら今日は非番だから自室にいると思いますけど…おっちゃんに用があるならご案内し―――」

 

セインが話し終わる前に、行長は片手を振りながら言った。

 

「わざわざ私が赴く程の用件ではありませんので、貴方に用件を言付けましょう。『黒田軍家臣 後藤又兵衛殿の先日の失態について処罰を執り行うので、貴方自身の手で私の“処刑し…おっと失礼。“評定室”に連れてくる様に』とお伝え下さい。では…」

 

それだけを言うと、行長はセイン達に背を向けて、そのまま暗い通路の奥へと歩き去って行った。

行長がいなくなった事を確認したセインとウェンディは大きく安堵の息を吐いた。

 

「こ、怖かったぁ~~! やっぱ、普通に話すだけでも緊張するっスねぇ~。あの行長様って人…」

 

「うん。凶王様とは違うベクトルで怖いっていうか…やっぱりあれだけ怖くなきゃ豊臣の最高幹部は務まらないのかな?」

 

セインはやや呆れたようにそう言うと、一先ず行長の言付けを官兵衛に伝えに行こうと、通路を反対側に向かって歩き始めた。

他に特にする事がなかったウェンディもセインの後を着いて歩き始める。

 

「ところでセイン。さっき言ってた“官兵衛のおっちゃん”って誰っスか?」

 

ウェンディが尋ねた。

セインは歩調を落とさずに歩いたまま返す。

 

「あぁ。ウェンディはまだ知らなかったっけ? 最近、アタシが勉強教えてもらってる西軍の外様武将で、ちょっと風貌は怪しいけど、結構面白いおっちゃんだよ」

 

「えっ!? いつの間にそんな人と仲良くなってたんっスか?」

 

「ちょっと前にね…ほら、皎月院様が例の『機動六課』…? だっけ? 最近、ドクターの邪魔してるって連中の拠点に最初にカチコミかけた事あったじゃない? その後にさぁ」

 

セインは歩きながら、他の姉妹らの知らぬ内に親しくなった男の話を語り始めるのだった…

 

 

 

 

それは、家康と幸村の決闘騒動に併せて、皎月院主導により行われた黒田軍の機動六課襲撃事件から数日後の事―――

 

いつものとおりアジトの食堂で、その日の朝食が終わるや否や、姉の4番 クアットロから、セインが苦手としている軍法・戦術などの座学を教えるのに適任な者を見つけたと言われたセインは、早速その“教官役”の者がいるという懲罰房に向かうように言われ、一人そこへ向かっていた。

しかし、セインは気だるげな面持ちで頭を掻き、見るからにその様子からはやる気が感じられずにいた。

 

「あぁ~あ。 なんだってアタシが急に個別で勉強教えてもらわないといけないんだよ? クア姉も急に面倒くさい事言ってきちゃってさぁ…」

 

セインがやってきたこの“懲罰房”と呼ばれるこのエリアは、一室につき3畳程の小さな独房が対面する形でいくつも連なった留置所の様なフロアで、主に任務を失敗した者が戒めの為に入れられたり、スカリエッティにとって邪魔な者、または実験の“被検体”にする者などを監禁する為の施設で、セインも何度か以前の戦闘教導役だった姉の3番 トーレの逆鱗に触れたり、それこそクアットロの意地悪でここに数日程ブチ込まれた事があったりした。

 

長居して気持ちの良い場所ではない為、さっさと目的を果たしてここを出よう…

そう思ったセインは自分がこれから会う事になる人物のプロフィールをホログラムスクリーンにして手元に投影した。

 

聞けば、彼は元々は三成と同じ豊臣の幹部武将の一人であったものの、秀吉に対する謀反を企てようとしていた事が露見し、『直参大名』から『鉱山奉行』に配置換え…もとい左遷され、現在は元親や最近合流した上杉景勝という女武将と同じ、“外様”大名として扱われているとの事だった。

ちなみに、先だっての作戦でも“敵方への寝返り”を画策していたとの事だった。

 

「ってメチャメチャ曰く付きの人間じゃん! 畜生ぉ! あのメガネ姉~…! 絶対、そんなサンピン野郎ならアタシにピッタリだとか思って、押し付けてきやがったなぁ~…!」

 

姉達の中でも抜きん出て性格の悪いクアットロの考えそうな事だと一人確信したセインは憤慨するが、同時に自分の今の不憫な境遇になんだか物悲しさを感じ、ため息を漏らした。

 

「はぁぁ…凶王様達からはこき使われて、クア姉からは軽く見られる……そりゃ、あたしだってトーレ姉やチンク姉みたいに優秀じゃないし、ノーヴェやディエチみたいに前線メンバーとして実力があるってもんじゃないけど…皆もうちょっとアタシの事を見てくれてもいいんじゃないかなぁ?」

 

「………なんだぁ? その口ぶりだと、お前さんも相当鬱憤が溜まっているって感じだな?」

 

「あっ? わかる? まぁ、鬱憤ってもんでもないんだけどさぁ~…ってあれっ?!」

 

どこからか聞こえた声に頷いていたセインが硬直する。

おかしい…

独り言の筈なのになぜ会話が成立するのか?

 

「誰!?…誰かいるの!?」

 

慌てて懲罰房フロアの通路を振り返ってみる。

すると、そこへまた同じ声がかかってきた。

 

「こっちだよ。 お前さんが探しているのは…ひょっとして小生の事じゃないのかい?」

 

その声につられてセインが傍にある独房に目をやると…

鋼鉄製のドアの上部に設けられた鉄格子のかかった小窓の向こうから、目が見えない程に長く伸ばした前髪の大柄の男がこちらを見据えていた。

 

「!?…うわぁ!? く、熊だぁぁっ!! 死んだふりしないと!」

 

そう言うとセインは慌てて床に伏せて狸寝入りした。

 

「いや、するなッ! 誰が熊だ!? 小生は人間じゃ!」

 

「へっ!? に、人間?」

 

「見たらわかるだろうに!」

 

男のツッコミにセインは恐る恐る立ち上がり、独房に近づいてみる。すると中にいる男の全容姿が把握できた。

男は袖の破れた服…そして最大の特徴として両腕を巨大な鉄球の付いた枷で拘束されている事だった。

 

「なぁんだ。人間か。 で? おっちゃん。一体誰?」

 

「お、おっちゃん!? 誰がおっちゃんだ!? 小生はこれでもまだ“二十四”じゃ! 『お兄さん』と呼べ!『お兄さん』と!!」

 

「うえぇっ!? うっ、うっそ~! に、にじゅうよん!? マジソン!? どう見ても30は、いってるでしょ!?」

 

「し、失礼だなお前さん!さっきから!」

 

セインのデリカシーのない発言に憤然としながらも、すぐに我に返ったように軽く咳払いして冷静さを幾分か取り戻しながら、改めて名乗りを上げた。

 

「いいかよく聞け。 小生の名は黒田官兵衛。いずれ天窓の先の箒星を掴む男ぞ!」

 

「え~っと……煎餅さん?」

 

「官兵衛だ!! か・ん・べ・え!!『ん』と『べ』しか合ってねぇじゃねぇか!?」

 

カッコよく自己紹介したのにぶち壊しにされて憤慨する“せんべ…否、官兵衛。

 

「おいコラ!今一瞬、地の文も間違えかけただろ!」

 

間違えてません…

 

もとい官兵衛の名乗りを聞いたセインは思い出したように、先程投影したホログラムモニターの資料と、目の前にいる鉄球の付いた男を見比べてみる。

 

「あぁ~! そっか! おっちゃんが、クア姉の言ってた『敵に取り入ろうとしたけど、部下の独断行動が原因で失敗して、最後は敵の攻撃でボウリングみたいな状態で海に飛ばされて帰ってきて、謹慎処分になった“暗の官兵衛”さん?』」

 

 

ズッシャァァァァァ!!

 

 

セインの容赦ない言葉に、思わず何も無いにも関わらず、まるで身体に付けられた手枷にさらなる重石が乗せられたかのように床に引っ張られるように派手にずっこける官兵衛。

 

「だ、誰が小生をそんな風に言いやがったんだ?!」

 

「クア姉。ナンバーズの4番の…」

 

「あのメガネかけたお下げの小娘か…かわいい面して刑部や怪尼(皎月院)並に性格悪過ぎだろアイツ!」

 

憤然となる官兵衛に対し、セインはあっけらかんとした調子で話しかけていく。

 

「まあまあ。それよりクア姉か大谷様達から、今日からアタシに戦術や戦闘の訓練を教えてやれって話は聞かされてない?」

 

「んあ? …そういえば、小西の奴にここへブチ込まれる前に、あのクアットロ(性悪メガネ)と怪尼が、そんな事話してたような…」

 

官兵衛は引きずっていた鉄球をあたかも座椅子のようにして腰掛けながらボヤいた。

 

「ひょっとして、お前さんがその怪尼達が話していたあのスカリエッティとかいうイカれ技師の娘共(ナンバーズ)の一人ってわけか?」

 

「ん~…まぁ、そういう事になるかな? あっ、アタシは6番のセインっていうんだ。よろしくね。官兵衛のおっちゃん」

 

「だから、おっちゃんはやめろって言ってんだろ!!」

 

 

そんなわけで、なんだかんだ言いながらも、元豊臣幹部の野心高き知将 黒田官兵衛と、ナンバーズ一のハズレ要員 6番セインは、“不幸”というひとつの星の運命の導きの元に(ある意味で)運命の出会いを果たすのだった……

 

 

 

 

「ってなわけで、官兵衛のおっちゃんはそれから、アタシに戦術とかに使う為の勉強を教えてくれたりしてるわけ」

 

「へぇ~。どおりで最近、セインってば一人でどっか行く事が増えたと思ったんスが…そういう事があったんスね」

 

セインが官兵衛に師事する経緯を聞かせたウェンディであったが、その顔はまだどこかしっくりこないと言わんばかりな表情だった。

 

「でも大丈夫なんスかぁ~? 二度も謀反や内通を企てた人から勉強や軍学教えてもらうだなんて…そもそもそのカンベーって人、本当に勉強できるんスか?」

 

「いやいや。官兵衛のおっちゃんって、見かけは確かに不幸のオーラプンプンで浮浪者みたいななりしてるけど、あぁ見えて意外に頭いいんだよ」

 

「セイン…さり気なくボロカス言ってるっスね…」

 

褒めているようで半ば貶しているようなセインの言葉に呆れながらも、ウェンディはセインがそこまで言う官兵衛という男に興味を持っているような素振りを見せ始めていた。

 

「それで、小西様がそのカンベーって人に言付けを…って言ってたっスけど…一体どういう事なんスかねぇ?」

 

「そういえば……その又兵衛っておっちゃんの部下だって人を処罰するって話だったけ?」

 

セインとウェンディは話を続けながら、官兵衛の充てがわれた小部屋に向かってアジト内の薄暗い通路を歩いていくのだった……

 

 

 

官兵衛の部屋はアジトの端の方のエリアにある一際寂しい区画に位置していた。

セインの教導役となった事で一応“懲罰房”からは解放される事になった官兵衛ではあったものの、その待遇は“外様大名”の扱いであり、あまつさえこの世界に来てからも懲りずにまた東軍への内通行為を謀っただけあって、扱いはさらに悪く、実質懲罰房の三畳間と然程変わらない四畳半の物置を自室とされていた。

 

ちなみに同じ区画には、同様に外様大名の扱いである元親の自室もあったが、部屋自体はちゃんとしたものである上、彼の要望により、カラクリ兵器を造る為の作業場までも別個で用意して貰うなど、それなりに高待遇を受けていたのだった。

 

セインとウェンディの2人は官兵衛の部屋の前に着くと、戸をノックしてから自動ドアを抜けて中に入った。

 

「おっじゃましま~す。官兵衛のおっちゃんいる~……んん?」

 

だが部屋に入った途端、セインとウェンディの目に入ってきたのはなんとも珍妙な光景だった。

 

 

「くっ…! この…! くそ……!! だめだ…何度やっても鍵穴にすら入らん! …畜生! 刑部の奴! 本当に枷に変な術をかけやがって!!」

 

簡素な寝台と文机だけの置かれた刑務所の牢の中のような部屋の奥で、鉄球を椅子の代わりにして腰掛けた官兵衛が必死なって手枷の付けられた手に小さな工具のようなものを手に取りながら、それを必死に手枷の鍵穴に向かって伸ばしていた。

だが、その度に手枷の回りを薄い光の膜のようなバリアが走り、鍵穴に届く前に工具を弾いてしまうのだった。

 

「畜生! こんな術なんてかけられてなけりゃ、今頃この世界の先端の利器を使って、こんな枷なんか……なぜじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「あ、あのぉ…官兵衛のおっちゃん…?」

 

一人で天を仰ぐようにして嘆く官兵衛にセインが恐る恐る声をかけた。

 

「こうなったら、あの変態技師(スカリエッティ)に頼んで“れーざー”とかいうこの世界独自のカラクリの技術を借りて…ってダメだ。アイツは刑部といつもつるんでるから絶対小生には手ぇ貸してくれないだろうしな…」

 

「ねぇ、おっちゃん…」

 

「っとなると、長宗我部(西海)に頼んで錠前破りしてもらって…ってアイツに頭下げるのもなんだかなぁ…」

 

「おっちゃん?」

 

「となれば、上杉んとこの景勝(姫夜叉)に頼んで力づくで枷を…って力づくで枷が破れりゃ小生も端から苦労してねぇってのに!!」

 

「おっちゃん!!」

 

「なんだよ6番(セイン)! うるせぇな! ……ってうぉぉい!?お前さんいつの間に!?」

 

3回声をかけてようやく自分達の存在に気づいた官兵衛は、大げさに仰け反るリアクションを交えながら驚愕する。

 

「もう3回くらい声かけてたってば。それより何やってんのさぁ?」

 

「あぁ? 見てわからんか? なんとかこの手枷を外す手立てはないかと思って、この世界で流通している錠前破りの道具を使って試してみたんだよ。確か名前が…“どーぴんぐ”だか“ざっぴんぐ”だったか忘れたが…」

 

「…ひょっとして“ピッキング”?」

 

「あぁ! それだよ! とにかくその“ぴっきんぐ”とかいう錠前破りの技を試そうと思ったんだが…これが錠を破るどころか鍵穴にさえ入らなくてよぉ…」

 

官兵衛は手枷の真ん中にある小さな鍵穴を忌々しげに睨みながら、唸るように言った。

 

「刑部の野郎…枷に二重の術をかけやがって、その術を解かなきゃ鍵穴に鍵を指す事さえ出来なくしちまったんだよ。だから、こうして何度鍵穴に“ぴっきんぐ”を試そうにも…」

 

話しながら、官兵衛がもう一度鍵穴に手にしていた工具のようなものの正体…ピッキング用のキーピックを差し込もうとした。

すると鍵穴の回りには光で出来た膜のようなものが張られ、それが水滴を弾くビニールのようにキーピックを無理矢理に押し返して、鍵穴まで届かせなかった。

 

「な? このとおりなわけだ」

 

「なるほどねぇ…心中お察しするよ。おっちゃん」

 

「……お前さんに同情されるてのもなんか情けねぇ話だが…ありがとよ」

 

官兵衛はそう言って諦めた様にキーピックを文机の上に投げ出した。

すると、ようやくセインと一緒にいるウェンディの姿に気がついた。

 

「おい6番(セイン)。そこに一緒にいるのも、お前さんの姉妹(ナンバーズ)か?」

 

「えっ!? あ、うん。妹の11番 “ウェンディ”だよ」

 

セインは伴っていた妹を改めて官兵衛に紹介する。

すると、ウェンディもいつもの軽々しい調子で挨拶をした。

 

「どうも。ウェンディっス。お話はセインから聞いてるっスよ。“暗の官兵衛”さん♪」

 

「…その呼び方やめてくれねぇか? んで、お前さん方。一体小生に何の用だ?」

 

官兵衛が2人にここへ来た理由を問うと、2人共今まで忘れていたのか、ハッと意表を突かれた様な顔を浮かべた。

 

「そっ…そうだった! おっちゃん。後藤又兵衛って人知ってる?」

 

「あぁ? 又兵衛なら我が黒田軍が誇る精鋭“黒田八虎”の筆頭だが…一体、アイツがどうかしたのか?」

 

突然、信頼を置いた家臣の名が出てきた事に訝しみながら尋ねる官兵衛に、ウェンディが何でもなさそうな口調で告げた。

 

「実はっスね。五刑衆の小西行長様からの伝言で、『黒田軍家臣 後藤又兵衛殿の先日の失態について処罰を執り行うので、貴方自身の手で私の“処刑し…おっと失礼。“評定室”に連れてくる様に』って言ってたっスよ~」

 

「……へっ!?」

 

ウェンディは行長から言われた事をそっくりそのまま官兵衛に告げた。

すると官兵衛は、一瞬呆けた様に口をあんぐりと開けたままそれを聞いていたが…

 

 

「な!? ななな…なんだとおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

 

部屋が軽く振動する程の大絶叫を上げた。

当然、それを真正面から受けたセインとウェンディは思わず両耳を塞ぎながら蹲る。

 

「わわわッ!? ちょっと!どうしたのさ!」

 

「う、行長(蟒蛇)の野郎が又兵衛を評定にッ!? マズい! そいつはマズいぞ!!」

 

「なにがマズいんスか?」

 

突然、焦りだした官兵衛に困惑しながらセインとウェンディが尋ねる。

 

「お前さん達ももう知ってるだろ!? あの小西行長って男は豊臣軍与力の中でも抜きん出てヤバい野郎だって事を! アイツは敵は言わずもがな、味方でさえも何かと理由つけては拷問にかけたり、嬲り殺したりする事が大好きなイカれ野郎なんだよ!!」

 

「う、うん。それは知ってるけど…」

 

「んでもって景勝(姫夜叉)から聞いた話じゃ、又兵衛の奴。このあいだまた家康(東照)の襲撃に失敗したそうだ! 『二度もしくじった奴』なんて、行長(蟒蛇)にしてみれば格好の的だぞ! きっと又兵衛を処罰の名目で嬲り殺しにかけるつもりに違いない!!」

 

官兵衛は説明しながらも鉄球の繋がった枷を引きずり、部屋の入り口に向かって駆け出した。

 

「ちょ!? おっちゃんどこに行くのさ!?」

 

「決まってるだろう! 又兵衛のところだよ! 黒田軍の大事な猛将を、黙って行長(蟒蛇)なんかの玩具(おもちゃ)にされてたまるか!!」

 

「あっ!? ダメっスよ! そこは―――」

 

ウェンディが静止するのを聞かず、官兵衛は巨大な鉄球を引きずりながらドアをくぐり抜けようとして…

 

 

「げふぅっ!!?」

 

入り口に鉄球を引っ掛けて、その反動で真後ろにすっ転び、ガーンと聞くからに痛そうな音を高らかに上げながら、後頭部を強打するのだった。

 

「入り口が狭いから鉄球を引きずって出ようとしたら絶対に引っかかる…ってもう手遅れか…」

 

セインとウェンディが白目を剥いて気絶した官兵衛を見て冷や汗を浮かべた…

 

 

 

「畜生……畜生、畜生、畜生、畜生……」

 

スカリエッティのアジトの一番外れた区画……その一角の寂れた古い空き部屋にて謹慎を命じられていた後藤又兵衛は、苛立ちをぶつけるように壁を手甲の鋭い爪で何度も引っ掻いていた。

部屋の壁は既におびただしい数の爪痕が走り、宛ら飢えた獣の檻の中のような悍ましい光景と化していた。

それは、先の二度目の機動六課襲撃に失敗した事により、西軍において完全に面目を失った又兵衛の心に巣食う荒んだ憎悪を象徴しているともいえる。

 

「伊達…政宗、だぁ…? ドコの田舎武将ですかぁ…?奥州筆頭…? そんなの……雑魚じゃないですかぁ……」

 

又兵衛は先の一件で自分の面目を完全に潰す事となった敵将の名を呟きながら悪態を呟き続けていた。

 

「そんな木偶以下の雑魚如きに負けちゃったオレ様って……正直…やばくないですか、ねぇ? ねぇってば、ねぇ…」

 

又兵衛はゆっくりと床に仰向けに倒れ込みながら、天井を仰ぎつつ、この様な様に落ちぶれてしまった自らの境遇を振り返った。

 

この“ミッドチルダ”なる異世界にやってきて最初に課せられた任務は、西軍の尖兵として、『機動六課』なる組織と協力関係を結んだ徳川家康と、その東軍に寝返ったいう真田幸村の2人の首を狩る事だったが、それをあの阿呆の主君 官兵衛は何を思ったのか、『家康に取り入ろう』などと宣い出し、そのせいで足並みが揃わなかった結果、家康、幸村の首をとるどころか、官兵衛のヘマに巻き込まれる形で敗退。

そのせいで自分まで「無能」の烙印を押されて、謹慎処分を課せられてしまった。

 

しかし、自分は官兵衛とは違ってあくまでも豊臣の為に戦おうとしていた事を考慮され、汚名返上を兼ねて、西軍参謀 大谷の仕組んだ二度目の六課襲撃計画において別働隊として加わる事を許され、敵の主戦力の一人 ”高町なのは”を捕縛する事に成功し、残る六課の強力な戦力2人も追い込むなど、全て順調に運んでいた。

 

 

あの男……“伊達政宗”が現れるまでは……

 

 

あの男の噂は天下分け目の戦が始まる以前から又兵衛も耳にしていた。

“奥州筆頭”を豪語し、その大胆不敵な行動力と統率力、そして武力によって瞬く間に奥州の地を掌握し、東軍の主力勢力のひとつとして名を馳せた名将……

 

自分にないあらゆるものを手にしたこの男を又兵衛は以前からいけ好かず思っていた。

だが実際に対面し、その実力を目の当たりした事で、又兵衛の中に巣食う政宗へのジェラシーは完全な憎悪…そして“狂気”へと変わる事となった。

 

又兵衛はなんとしても政宗をこの手で殺そうとした。

そしてその執念のおかげか、一瞬…ほんの一瞬ながら政宗を追い込むところまで持ち込めた。

しかし、そんな絶好の好機を潰したのが……あの“高町なのは”なる女だった。

 

「あのアマぁぁ…オレ様の処刑を邪魔しやがってぇ……あの高町とかいう女が茶々入れて来なかったらオレ様は今頃、伊達の首を手土産にして豊臣の与力に……あぁ、畜生、畜生、畜生、畜生…」

 

呪詛を吐くように恨み節を口にしながら、なのはに対する憎しみを募らせていく。

勿論、それは傍から見れば唯の八つ当たり同然な負け惜しみに過ぎないが、様々な意味でプライドをへし折られた又兵衛はとにかく、この恨み、憎しみを政宗、そしてなのはにぶつける事で、自らの心の傷を少しでも慰める事しか考えられなくなっていた。

 

 

「お、おい…又兵衛! しっかりしろ、又兵衛!」

 

不意に耳に入った声に又兵衛がムクリと身体を起こす。

すると、傍らには自らの“一応の”主君…官兵衛が立っていた。

彼の後ろには西軍に協力しているスカリエッティとかいう科学者の“娘”とだというセインとウェンディの2人が連れ立っていたが、今の又兵衛にとってはどうでもよかった。

 

「キケ、キキケケケ……! オレ様、終わってんじゃね? 実はもう、終わっちゃってんじゃね?」

 

主君である官兵衛が駆けつけたにも関わらず、又兵衛は自棄気味に軽い口調でそう呟き続けていたが、徐に、生気の無くなった赤い両目を官兵衛、セイン、ウェンディに向けて投げかけてくると…

 

「オレ様破れて~山河在り~♪ 城春にして~草木深~し♪」

 

「な…なんか歌い始めたっス…」

 

「だ、大丈夫なの!? この人…」

 

突然誰に向ける事もなく奇怪な唄を歌い出した又兵衛を見て、ウェンディとセインは顔をひきつらせながら、数歩後ろに下がった。

一方の官兵衛は、必死に又兵衛に呼びかけ続ける。

 

「こら、弥八郎! 基次! 黒田八虎の後藤又兵衛!」

 

「時に~感じて~…花にも、涙を~…そ~そ…ぎ~……♪」

 

「お…おい…?」

 

「別~…れを~…恨んで~……恨…んで~…♪ う、う……恨…ん…で……う、うう、うぐっ! う…!」

 

「「…………………」」

 

やがて掠れるような歌声は嗚咽へと変わり、そのまま膝を地につき、又兵衛は床に突っ伏して泣き始めた。

そんな情緒不安定な又兵衛にセインもウェンディも言葉を失う程にドン引きしていた。

 

「な、泣くんじゃない、又兵衛…! 一度や二度くらいの失敗がなんだ! ちょっとツキが無かっただけじゃないか!?」

 

官兵衛は嘆く家臣をどうにか励まそうと、慌てふためきながら必死に慰めの言葉を考えていた。

 

「小生を見ろ! 運なし、ツキなし、手柄なし! 宵越し銭もなしなれば、色恋話も生まれてこのかた二十四年間一度もなし!そればかりか、城持ち時代は配下の腰元や街の遊女共にさえ『ブ男』呼ばわりされてバカにされる始末! かつては次期五刑衆(最高幹部)と目されるだけの豊臣の有力与力だったのが、今や都より遥か彼方、九州は筑前の僻地で鉱山奉行の閑職務め! それでもどっこい! こんなに元気に生きてるだろうが!」

 

「おっちゃん…それ、自分で言ってて悲しくならない?」

 

自分の悲惨な身の上を何故か胸張りながら話せるだけのポジティブシンキングを掲げる官兵衛に、セインが呆れ気味にツッコんだ。

 

「又兵衛! 小生はな! お前さんを助けに来たんだよ! 今しがたここにいるセインとウェンディから聞いたんだが、どうも行長の野郎がお前さんを処罰するつもりでいるらしい! アイツ、きっと先の失敗の一件をかこつけてお前さんを玩具にするつもりでいるみたいだぞ!」

 

官兵衛の言葉を聞いて、床に伏せていた又兵衛がピクリと反応する。

 

「だが心配するな! 小生の忠臣よ! 奴の尋問にはこの小生も立ち会ってやる! そしてなんとかお前さんの処分を穏便に済ませてもらえるように掛け合ってやるから! なっ! 安心しろ!」

 

「……………」

 

「さぁ、又兵衛! 小生愛用の手拭いで涙を拭いて、顔を上げろ!」

 

「ってきったなッ!? それいつから洗ってないんスか!?」

 

そう言って、官兵衛が懐から取り出してきた軽油や煤等で薄汚れた薄灰色の手拭いを見てウェンディは、思わず顔を青ざめながらツッコんだ。

 

「こういう愛着あるものは下手に小綺麗なものより使い古したものの方が雰囲気あるだろうが!」

 

「いや、『使い古す』のと『洗わない』のとは全然違うと思うけど…」

 

官兵衛とセインがそんな掛け合いをしていると、又兵衛がゆっくりと起き上がった。

 

「おぉ?! 元気が出たか!? 又兵衛! さぁ、ツキに見放された者同士! 胸を張って、地面の下を掘り進んで行こうじゃないかっ! 安心しろ、お前さんを行長の玩具にはさせん! 同じツキ無し者同士! 貴重な仲間を失わせるわけにはいかんからなぁ!」

 

官兵衛がそう言いながら豪快に笑っていると、又兵衛は俯いたまま、ブツブツと何かを呪文のように呟き始める。

 

「…あ、…あ~? あぁ~~~!!…オレ様、わかっちゃったぁ…」

 

「うん!?」

 

「わかっちゃった、わかっちゃった! わかっちゃいましたぁ!」

 

不意に顔を上げた又兵衛は、瞳孔が開いた爬虫類のような瞳で官兵衛達を見つめながら笑い始める。

その明らかに狂気的な笑顔に、本能的に恐怖心を覚えるセインとウェンディだが、官兵衛はそれに気づいていないのか呑気に笑みを返した。

 

「おお!? 小生の優しさが、ついに伝わったか!? よし! 小生がお前さんを守ってやるからお前さんは何も恐れる事なく行長のところへ―――」

 

そう言って近づきかけた官兵衛の目の数センチ先に、又兵衛は愛用の奇刃の鋒を突きつけてきた。

 

「あれっ!?」

 

何が起きたのわからずに呆気にとられる官兵衛に向かって、又兵衛は狂気的な笑顔を浮かべたまま高らかに宣言した。

 

 

「ぜぇ~~~んぶッ!! オマエの所為だったんだよ、この阿呆官があッ!?

 

 

「えっ…!?」

 

状況が理解できずに呆然と佇む官兵衛の首目掛けて又兵衛は奇刃を大きく振りかぶり、そして鋭く振り下ろしにかかった。

 

「おっちゃん!」

 

咄嗟にセインが官兵衛に飛びつき、真横に倒れ込むように身体を逸らせた直後、官兵衛が今しがた立っていた場所を又兵衛の一閃が走り、空気を斬った。

 

「オマエにツキが無くて…ッ! オマエが無能で…ッ! おまけに、阿呆の木偶だから…部下のオレ様まで、あんな三下にやられちまう羽目になったんだ…ッ!」

 

又兵衛は空振りした奇刃をそのままぶら下げる様に持つと、ゆらりと魍魎の様な足取りでゆっくりと官兵衛とセインに向かって歩み寄っていく。

 

「おまけに…小西の阿呆がオレ様を処分…? ふざけんな…ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなぁぁぁッ!? あぁんな南蛮かぶれの若造に、なぁんでオレ様が玩具にされねぇといけないんだぁよぉ!! あぁ~ムカつく…ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつぅぅぅぅぅぅくぅぅぅッ! こうなったのも…ぜぇぇぇぇんぶオマエが悪いんだよぉぉ! 阿呆官んんん!!

 

「な、な、何~~~っ!? なんでそうなるんだぁぁ~~~~~!!?」

 

「お、おおお、おっちゃん! ヤバイよ! この人、完全にとち狂っちゃってるって!?」

 

「セイン! それと又兵衛――じゃなかった! 官兵衛のオッサン! んもぅ! この2人名前似ててややこし過ぎるッス!!」

 

追い詰められる官兵衛とセインを見て、ウェンディが必死で呼びかける。

しかし、今は固有武装も手元にない丸腰の状態で助けに入る事はできず、どうする事も出来ずにいた。

 

「キャッハアアアアアァァァァァ!!!」

 

「ぐぉっ!?」

 

再度振り下ろしてきた奇刃を鉄球でどうにか防ぎながら官兵衛は、セインを背中にかばいながら必死に又兵衛に呼びかける。

 

「ま、待て! 又兵衛! 落ち着けっ!! 何をどう考えたらそんな結論になっちまうんだよっ!?」

 

「うっせぇよ…ッ! 阿呆官…オマエのマヌケにゃ、もう付き合いきれねぇっつってんだよぉ…! オレ様の手柄を邪魔して…堕ちぶれたオレ様をオマエなんかと同じ土俵に立たせて、コケにしやがって……! オマエ程度の木偶武将風情に仕えてきた為に、オレ様はずっと…ずぅぅぅぅっと! バカにされてきたんだぁッ! もぉぉぉぉ、こんなのたくさんなんですよぉぉぉぉぉぉぉ…!!」

 

「しょ、小生は何もコケになんてしていないぞ!?」

 

問答を交えながらも、それぞれ奇刃と鉄球で激しく打ち合い、攻防を交わす黒田主従。

 

「今までさぁ…! 早く豊臣で成り上がって…皆から認められる為に、阿呆のオマエなんかの顔立てて付き合ってきたけどさぁ……! もう…その必要もないや…」

 

「? ど、どうするつもりだよ?」

 

「…やめだッ! やめだやめだやめだやめだぁあッ! オマエの部下なんぞ、たった今やめてやる…ッ!」

 

又兵衛からの宣言に、官兵衛は衝撃を受けた。

 

「お、おいお前さん正気か!? 今、ここで黒田軍を辞めちまって…この先どうしていく気なんだよっ!?」

 

「うるさいんですよぉ! これから、オレ様は独りだぁ…ッ! 何をするのも、自由だぁ…ッ!」

 

そう叫びながら、又兵衛は部屋の天井を走る太い排気口のダクトに目を向けると、そこに目掛けて、奇刃をブーメランの様に投げつけ、真っ二つに切り裂いた。

切り裂かれたダクトの内側はちょうど人が一人分通れるだけのトンネルとなっていたが、そのトンネルを見つめて、又兵衛はペロリと口の周りをなめずりながら呟くように言った。

 

「オレ様はぁ…もう二度と…誰の言いなりにもならねぇ…誰にも…舐めた口は聞かせねぇ……オレ様は…オレ様の好きなところへ行って、好き勝手に生きていってやるのさぁぁ…ッ!?」

 

「ま、待て!? 落ち着け、官兵衛…じゃなかった、又兵衛!?」

 

「おっちゃんが名前間違えてどうすんの!? おっちゃんこそ落ち着いて!」

 

「と、とにかく早まった事をするんじゃない! ここは一回頭を冷やして―――」

 

セインに宥められながら、官兵衛はダクトに向かって飛び上がろうとする又兵衛を取り押さえようと、枷に付いた鉄球の繋がった鎖を投げ縄のように飛ばす。

しかし、又兵衛は既のところでジャンプしてそれをひらりと避けると、そのまま切り裂かれたダクトの中へと飛び込んでいった。

 

「こ、こら! 戻ってこい又兵衛!? 又兵衛さん!? お~~~~~~~い、又兵衛や~~~~~~~~~~い!?

 

「マズいっスよ!? これ脱走じゃないっスか!!」

 

「ウェンディ! すぐに警備のガジェットドローンを動員して、アジトの全出入り口を封鎖するようにウーノ姉に知らせて!!」

 

セインがウェンディに指示を出すのを尻目に、官兵衛は又兵衛が消えたダクトに向かって必死に呼びかけるが、必死の呼びかけに対し、ダクトからは又兵衛の「ケーケッケッケッ!」という狂気を帯びた笑い声だけが木霊の様に返ってくるだけで、やがてその声も少しずつ遠ざかるように小さくなっていき、やがて何も聞こえなくなってしまった。

 

「ほ、本当に行っちまいやがったのか…!? そんな…戻ってきてくれ、又兵衛……戻って、こぉおおおお~~~~~~いっ!?

 

 

官兵衛の虚しい叫びがダクト…そしてアジト中に反響して聞こえるのだった……

 

 

 

 

 

又兵衛の脱走を知らされたアジト内の管理を担当するナンバーズの1番 ウーノは即座にアジトの全ての外へ繋がる場所…

正規の出入り口は勿論の事、排気用のダクトや排水用の水路、ガジェットドローンの発進口に至るまで、全ての出入り口という出入り口を封鎖した上、アジト防衛用のガジェットドローンに内部は勿論、周辺の森に至るまで全てをくまなく索敵させた。

 

…しかし、又兵衛の身柄を発見する事は出来なかったばかりか、ダクトの排気口のひとつが無理矢理こじ開けられて、何かが外に出ていった痕跡さえも見つかったのだ。

 

この騒動を受け、スカリエッティと、西軍筆頭軍師の大谷吉継、御意見番 皎月院の3人はウーノの他、4番 クアットロ、そして刑吏奉行の小西行長と、今回の当事者である官兵衛、セイン、ウェンディの3人をスカリエッティの研究室に呼び出し、今後について話し合う事となった。

 

「…やはり、現場の状況から考えて、後藤又兵衛は既に我々の勢力圏外へ逃走されたものと思われます」

 

ウーノが冷静な表情を崩さないまま報告すると、行長がつまらなそうにため息を漏らした。

 

「…流石は“蜥蜴”だけに逃げ足の素早さだけは大したものですね…今宵の“遊興”は無しという事ですか…」

 

行長の言葉を聞いた官兵衛は、やはり又兵衛を処罰の名目で甚振ろうとしていた思惑を知り、非難の眼差しを向ける。

 

「それにしても大谷殿、皎月院殿…2人にとってもこれはマズいんじゃないかな? いくら外様武将の配下といえども、西軍の将が一人逃げ出したとなれば…」

 

スカリエッティは、それぞれあまり動揺した様子を見せていない大谷と皎月院に声をかけた。

 

「まぁ、そう急くな…スカリエッティ…所詮、あやつは官兵衛の配下。我ら豊臣とっては然程、重要な戦力というわけでもない」

 

「そういう事だね。 三下が一人逃げたところで、わちきらの計略に大した影響はないよ」

 

「なっ!? 仮にもアイツは小生の部下だぞ! それを言うに事置いて主君である小生の前でなんて事を―――!?」

 

自らの配下を散々にこき下ろされて憤慨した官兵衛が、大谷達に詰め寄ろうとするのをセインとウェンディが止めた。

すると、そんな官兵衛に対して、クアットロが厭味っぽく話しかけてきた。

 

「とはいえ“脱走”は重大な事案ですからねぇ~。部下の方がそんな大それた事しでかしちゃって、この責任はどうとって貰いましょうかぁ? “暗の官兵衛”さん」

 

すると行長も、それに便乗する様に意地の悪い笑みを官兵衛に投げかけてくる。

 

「セニョリータ・クアットロの仰るとおりですね。部下の責任は主君が負うのが武士の社会の習わしです。ならば、あの三下の(ペカーゴ)は主君である貴方が代わりに受けるべきという事になる…」

 

行長はまるで獲物の首をとったかの如く、慇懃無礼な笑みで官兵衛を見つめながら話す。

その穏やかな口ぶりの所々に得意気な感情が感じられ、苛立ちを際立たせる。

 

「当然、罰は貴方方にも科せられる事となりますがね……」

 

「うぇ!? わ、私達もっスか!?」

 

「な、なんで!?」

 

不意に行長から自分達に矛先を向けられた事に動揺するウェンディとセイン。

 

「当然でしょう? 貴方方も、あの場にいたというのに後藤の逃亡を阻止出来なかった。私が奴の処罰の宣告を言付けたのは貴方方二人だ。当然、ヤツの身柄を私に引き渡すまでの責任は貴方達にあった…ならばお二人も(カスティゴ)を受けるのは当然の事でしょう」

 

「そ、そんな無茶苦茶な…私達はただ官兵衛のおっちゃんに、あの又兵衛って人を連れてくるように伝えろって言われただけですし…」

 

「あ~ら。 言い訳なんてしちゃダメでしょ。セインちゃ~ん♪ 小西様から“罰を受けろ”と言われたのだから、ここは素直にお受けしないと?」

 

「ど、ドクター…」

 

ウェンディが懇願するように親的存在であるスカリエッティを見据える。

すると、スカリエッティは行長に対して釘を指すように話す。

 

「行長君。多少の罰は仕方ないとはいえ、セインもウェンディも私の大事な“娘”だ。くれぐれも重い罰に処すのは…」

 

スカリエッティの言葉にセインとウェンディは安堵の表情を浮かべた。

すると、行長は少し不満げに顔を顰めながら…

 

「………御意。ならば、“電撃込みの鞭打ち”程度ではどうですか?」

 

「……それなら致し方ないね」

 

「「「ど、ドクター!?」」」

 

スカリエッティの裁断にセインやウェンディは勿論の事、話を聞いていたウーノさえも意表を突かれた面持ちで彼の方を見据えた。

 

冷酷非道な卑劣漢で名高いスカリエッティだが、少なくとも自ら手掛けた娘達(ナンバーズ)に対しては人並みの愛情を向けてきていた。

すなわち、敵対者にどんなに残酷でサディスティックな事をしようが、ナンバーズに対してそれをするのは良しとしない筈であると彼女達は信じていたのだ。

そんなスカリエッティの口から出たのは、そんなナンバーズにとっての“確信”を覆すような非道な一言だった。

 

「ドクター! 何も鞭打ちに処す必要もないではありませんか! 大体、今までだって失敗した妹達(ナンバーズ)へ体罰なんて科した事などなかったというのに!」

 

「わかっていないな、ウーノ。今までの私達は私と君達(ナンバーズ)という“家族”という内でやってきたから、多少のミスは大目に見れる余裕があった。しかし、今この“同盟”成しているのは、私達だけではないのだよ?」

 

見かねたウーノが珍しくスカリエッティを非難まじりにピシャリとした口調で諌めるが、スカリエッティはさも平然とした表情で反論する。

そこへ、大谷も口を添えてくる。

 

「今、スカリエッティ一味(ぬしら)と豊臣とは同盟の関係にあるが、ある程度のやり方は我らのやり方に合わせるとスカリエッティも同意しておる…そして、失敗を犯した者は、例え身内なれども相応の罰を与えるのが豊臣(我ら)のやり方ぞ…」

 

「そ、そんな……」

 

大谷の言い分に唖然となるウーノに対し、クアットロは寧ろそれを歓迎する様に軽い調子を崩さなかった。

 

「まぁまぁ、いいじゃないですかウーノ姉様ぁ。セインもウェンディも前々からミスが多い子なのに姉様達は説教以上の罰も与えなくって結構甘々だと思ってたんですよねぇ~。ここは少し気を引き締め直して貰う為にも、ちょっとキツめにお灸を据えてもらった方がいいじゃないですかぁ?」

 

「クアットロ! 貴方までなんて事を―――!?」

 

クアットロの度が過ぎる程に軽薄な発言をウーノが窘めるのを尻目に、行長は腰に下げていた愛用の鞭 “黒縄鞭”を手に取ると、それを両手で掴んで撓らせながら、ゆっくりとセインとウェンディに向かって歩み寄った。

 

「そういう事です。とはいえ貴方方は我ら西軍の大事な“同盟相手”ですし、一人当たり鞭打ち100回の“生温い”刑で勘弁してあげましょう」

 

「「―――ッ!?」」

 

地面を黒縄鞭で打ちながら、近づいてくる行長にウェンディは顔を引き攣らせて、恐怖の表情を浮かべ、セインは震えながらも妹を庇って背中の後ろに隠した。

 

「おや、妹を庇うおつもりですか? お優しい事ですね。……ですがどのみち、2人共打たれる運命にありますけど!!」

 

行長はそう嘲るように言い放ちながら、セインとウェンディ目掛けて、黒縄鞭を振り下ろした。

鋭い鞭が蛇の様に宙を走り、風を斬りながら、二人めがけて襲いかかっていく。

しかし、黒縄鞭が二人を弾かんとしたその時、真横から巨大な球体が割って入り、黒縄鞭を打ち返しながら、鈍重な音を立てて地面に落ちた。

その球体に繋がった鎖の先にいたのは勿論…

 

「官兵衛のおっちゃん!?」

 

官兵衛だった。

言わずもがな、今の一撃も官兵衛が行長の黒縄鞭からセインとウェンディを守る為に枷に付けられた鉄球を投げつけたものだった。

 

「……セニョール黒田、それは何の真似ですかな?」

 

楽しみを邪魔されて露骨に不満げに睨みつけながら、抗議する行長だったが、官兵衛も伊達に元豊臣軍与力であるが故、五刑衆第三席に列する男からの狂気の眼差しを前にしても腰が引く様子はなかった。

 

「行長…今日の又兵衛の脱走については、主君であった小生一人の責任だ。セインとウェンディ(コイツら)には何の非もない…。罰を与えたければ小生一人に与えればいいだろ?」

 

「か、官兵衛のおっちゃん…?」

 

セインは官兵衛がここで自分達を庇ってくれた事に驚きながら、今までになく毅然とした態度で行長と対峙する彼を見つめる。

 

「これはしたり。普段はご自分の手柄と面目ばかりにご執心の貴殿が…そんな小娘2人を庇い立てする様な侠気を持っていたとはねぇ…?」

 

「その“小娘2人”相手に、そんな悪趣味な得物で笑いながら制裁しようとする誰かさんなんかよりは、よっぽど侠気はあるってもんだがな?」

 

官兵衛は臆する事なく、行長に啖呵を切ってみせた。

 

「…ほぉ…この私に向かってそれだけ堂々と言い返すとは人並み以上に肝は据わっていますね。流石は腐っても豊臣が誇る“二兵衛”の片割れか…」

 

行長はそう官兵衛を讃えながらも、その蛇の様な眼の奥にギラギラと何かが燃えたぎる気配を感じさせた。

 

直後、行長は不意をつくように官兵衛に向かって黒縄鞭を振るい、その大柄な身体に2回打ち付けた。

 

「ぐぅ…っ!?」

 

「官兵衛のおっちゃん!?」

 

歯を食いしばりながら唸り声を上げる官兵衛にセインが思わず声を張り上げた。

官兵衛は彼女の方を向くと、首を横に振りながら制し、それから様子を静観していた大谷、皎月院、スカリエッティの方へと顔を向けた。

 

「なぁ。それでいいだろう…? 小生に追加の謹慎を課すのならすればいいし、鞭打ちにしたけりゃ、今みたいに小生が代わりに打たせてやる。その代わりコイツらの処分は勘弁してやってくれねぇか?」

 

「おっちゃん…」

 

官兵衛の意外な優しさを目の当たりにしたセインとウェンディは驚きを隠せないまま、彼らのやり取りを見守った。

すると、皎月院がキセルを燻らせながら落ち着いた口調で話し始めた。

 

「まぁ、いいんじゃないかい? 黒田がこうして身体張ってまで頼んでいるんだ。 たまにはコイツの顔を立ててやっても罰は当たらないと思うよ」

 

「…皎月院殿がそう裁断するのであれば是非にそうしてもらえるとありがたい。 やはり、私も“不必要”に娘達を傷つける事はどうも気が引けてね…」

 

皎月院の意見に続き、スカリエッティの今更なフォローを聞き届けた大谷は静かに頷くと、浮遊する輿に乗って官兵衛に近づいていく。

 

「よかろう官兵衛…此度はぬしの意を汲んで、そこの2人の事は不問といたそう…その代わりに、ぬしには通常の罰に加えて、以後“特別な使命”を受けてもらうぞ」

 

「と、“特別な指令”ってなんだ?」

 

官兵衛が尋ねた。

 

「なに簡単な事よ…ぬしの手で“脱走者・後藤又兵衛を見つけ出し、西軍に連れ戻す事”…」

 

「…なに?」

 

「脱走は確かに問題事案であるが、とはいえあの又兵衛が徳川に寝返るとも普通ならば考えられん…この脱走が豊臣(我ら)に対する反逆なのか否かは、しばらくあやつを泳がせて、その挙動を把握してから判断しても遅くはなかろう。無論…」

 

大谷は冷徹な眼差しで官兵衛を一瞥しながら、釘を刺す様に補足の言葉を、語気強めにに投げかけた。

 

「やつを説得しても西軍に戻る気がなかったり、万が一に東軍や時空管理局に加わる動きを見せていた場合は……ぬしの手で始末するのだ」

 

「ッ!?」

 

官兵衛は露骨に動揺した様子を見せた。

 

「期限は我らの“計画”が発動する時まで…少しばかし猶予は与えるが、なるべく急いだ方が良いぞ」

 

そう言って底意地の悪い笑みを浮かべる大谷に続いて、行長も黒縄鞭を撓らせながら言葉を添えた。

 

「覚悟はよろしいですね…? もしもペルソナル大谷の指定した期限以内に後藤を連れ戻すか始末出来なかった場合は、代わりに貴方が死刑台へ立つ事になりますから…!」

 

「……あぁ。それでかまわんよ」

 

「そんな…! おっちゃん!?」

 

半ば無理難題な要求に躊躇う事なく承知する官兵衛に、セインが心配して声を上げるが、官兵衛は再度、首を横に振って制止するのだった。

 

「話は決まりだね。では今日はこれで解散としようか」

 

皎月院の一言で、話し合いは一先ず終了となるのだった…

 

 

 

スカリエッティの研究室から解放された官兵衛はセイン、ウェンディを伴って私室のある区画への通路を歩いていた。

セインとウェンディは数歩前を鉄球を引きずりながら歩く官兵衛の背中を気まずそうに見据えていた。

 

「その…官兵衛のおっちゃん?」

 

セインが恐る恐る官兵衛に話しかける。

官兵衛は振り向かないまま返した。

 

「なんだ? 6番(セイン)?」

 

「その……さっきはありがとう…私とウェンディを行長(ヘビ野郎)から庇ってくれて…」

 

「あ、ありがとうっス…」

 

素直に先程の一件についてお礼を述べるセインとウェンディに対して、官兵衛はあまり慣れないせいか思わず失笑してしまった。

 

「気にするな。小生はただ、あの拷問好きのイカれ野郎の事がいけ好かなかったからな…あそこでアイツの悪趣味(たのしみ)を奪って、出鼻でも挫いてやろうと思っただけだ」

 

「でもそのせいでおっちゃんが処刑宣告されちゃったんだよ?」

 

セインは心配そうに語りかけるが、しかし、官兵衛はそれさえも「それがどうした?」と言わんばかりに然程気にしていない様子だった。

 

「『処刑』なんて言葉は小生にとってはもう慣れっこだよ。豊臣軍の与力だった頃は三成や行長から、秀吉や半兵衛に対する態度や任務中の不手際とかで、一日に平均5回は「斬首する」だの「処刑」だのとどやされたり、嫌味吐かれたくらいだからな…今更アイツらの脅し文句如きに怯えるこたねぇよ。もしも本当に殺しにかかってきたなら、全力で迎え討つまでよ」

 

そう啖呵を切ってみせる官兵衛の良くも悪くも不敵な態度に、セインは半ば呆れ、そして半ば感心の想いを懐きながら見つめていた。

 

「それよりもだ。小生にとっては、大事な家臣に逃げられちまった事の方が堪えるってもんだよ…」

 

「あの“又兵衛”って人の事っスか?」

 

ウェンディが尋ねた。

 

「別にいいじゃないっスか。言ったらあれっスっけど、あの人なんか凶王様や小西様とは違うベクトルで色々ヤバそうな人ですし、正直いなくなって清々したんじゃ―――」

 

「馬鹿野郎!」

 

官兵衛が奮然と一喝した。

 

又兵衛(アイツ)は我が黒田軍が誇る猛将だったんだ! そりゃあ確かに人間性はアレだったし、小生も決して主君として敬われていたとは言えなかったがな…戦に出向く時に辛子が練り込まれた兵糧丸*2持たされたり、家臣団で開いた酒宴に小生だけ呼ばなかったりされたし…」

 

「いや…それ敬われてないどころか、完全に嫌がらせされてるじゃないっスか…」

 

ウェンディのツッコミを挟みながら、官兵衛の力説は続く。

 

「だが、道を正せば将として見込みがある奴だったんだ! だからこそ小生は又兵衛を右腕に置いて、共に天下を手に入れる為に日々精進し、そして空回りして酷い目に遭い続けてきた! いわば、“一蓮托生”の関係だったんだ!」

 

「なんだかビミョーな“一蓮托生な関係”っスね。それ」

 

「…………」

 

ウェンディは呆れていたものの、セインはどこか意味深な面持ちで官兵衛を見つめていた。

 

「あぁそうさ! 小生然り、又兵衛然り…黒田軍は言わば“日陰者”の集まりさ! しかぁし! そんな“日陰者”と誹られるような奴でも、努力すりゃあ必ず天下を治めて日の目を見る事が出来るようになるって事を証明する! それが我ら“黒田軍”の方針ってもんだ!!」

 

官兵衛はそう強気な口調で高らかに宣言したかと思いきや…

 

「それなのに…共に日向を目指して歩んでいた筈の又兵衛が今ここで出ていっちまうだなんて……あぁ~又兵衛や~~…戻ってきてくれぇ~…」

 

「ってON・OFFモードの差が激しすぎるっス! 強気なのか弱気なのか、はっきりしろっスよ!!」

 

まるで蛍光灯の様に躁と鬱の2つの表情を見せる官兵衛にウェンディはちょっと苛つきはじめていた。

すると、今まで黙って聞いていたセインが…

 

「それならさ…官兵衛のおっちゃん。 あ、アタシがおっちゃんの右腕になっちゃダメかな?」

 

「「うん?」」

 

唐突に妙な事を言い出したセインの一言を聞いて官兵衛とウェンディの目が点になる。

 

「いや、だから…あの又兵衛って人の代わりにアタシが黒田軍に加わって、おっちゃんの右腕として支えてあげてもいいかなって思ったんだよ」

 

「お、お前さんが!? なんでまた?」

 

官兵衛が驚きながら尋ねると、セインは照れくさそうに笑いながら話し始めた。

 

「いやぁ、官兵衛のおっちゃんの話を聞いてたらさぁ、なんだかおっちゃんってアタシと結構似た境遇なんだなぁって思ってさ…

アタシもナンバーズの中じゃ、どちらかといえば『劣等生』扱いされてさぁ、クア姉なんかには露骨に見下されたり、妹達からもウーノ姉やトーレ姉、チンク姉程尊敬されてるってわけでもないし…言ってみればおっちゃんと同じ“日陰者”ってわけ」

 

「そ、そうなのか…?」

 

「だから、おっちゃんの日陰者なりに這い上がろうって気持ちはよく分かるし、そんなおっちゃんの数少ない味方(っと信じてた人)にいなくなられてショックな気持ちや…自分がやる事なす事にとことん運がなくて貧乏クジ引いて酷い目に遭っちゃう気持ちも痛いほどわかる…だから、ここは同じ“日陰者”同士でつるめば、傷を舐め合う…ってわけじゃないけど、少しはおっちゃんの慰めになるんじゃないかと思ってさぁ」

 

「な…なんスか? その理由…?」

 

セインなりに官兵衛を気遣ったと思われる動機を聞きながらも、その趣旨がいまいち理解出来ずに困惑するウェンディであったが、一方それを聞いた官兵衛はというと…

 

6番(セイン)……小生の気持ちがわかるってのか…?」

 

最初は訝しそうな表情をしていた官兵衛だったが、彼女の思いやり(?)を聞き、その意図を悟ると何故か前髪に隠れた両目から滝のような涙を流し始めた。

 

「しょ…小生の想いを理解して……同情してくれる奴だなんて日ノ本にいた頃も含めてお前さんが初めてだよ。しょ、小生は…小生は生まれてこの方二十四年…こんな温かい情を向けられたのは初めてだよ…う、うぅぅぅ…」

 

「え、えぇ…?! それ泣くとこっスか?!」

 

「わかるよおっちゃん~。皆から馬鹿にされて、使いっぱしりにされて…ここらでそいつらを見返す為に一旗上げてやりたいってのはアタシも同じだから」

 

「おおぉぉ!? 本当か!? よっし! そこまで言うお前さんの肝っ玉気に入った! 6番(セイン)…いや、セイン! お前さんを我が黒田軍の新しい将として召し抱え、そして…三成や刑部達を凌ぐだけのどでかい一山を掘り当てて見せてやろうかぁぁ!!」

 

「おぉ! 流石は官兵衛のおっちゃん! よっ! “暗の官兵衛”! “豊臣の二兵衛”! “最低最悪の魔王”! 」

 

「そうだ! 3つ目の二つ名はよくわからんが、もっと小生を拝めろ! いいねぇ! 久々に一軍の長らしい待遇じゃねぇか!!」

 

先程までの意気消沈ぶりが嘘の様にテンションを上げ、盛り上がり始める官兵衛とセインに、ウェンディは完全についていけなくなって困惑する。

 

「あのぉ…っていうか、又兵衛って人の事はもういいんスか?」

 

ウェンディが冷や汗を浮かべながら指摘した言葉は、最早官兵衛とセインの耳には届いていなかった…

 

 

そんなわけで……この日、黒田官兵衛は後藤又兵衛という狂気的な家臣を失うと同時に、セインというどこか自分と似た戦闘機人の部下を手に入れたのだった。

 

 

 

 

その頃、そんな黒田官兵衛の配下から抜け、西軍から離脱した後藤又兵衛はというと…

既にスカリエッティのアジトのあった山岳地帯から遠く離れた山まで逃げ延びていた。

 

既に時間は夜も更け、天上に浮かぶ2つの月が最高潮に達していた真下に広がる森の木々の中で一際大きい大木の幹に飛び乗って身体を休めながら、又兵衛はもう追手のガジェットドローンがいない事を再三確認すると、「ケケケ…」と狂気的な笑みをこぼした。

 

「これで…俺様は自由だぁ……誰を殺すのも…どうやって殺すかも、自由だぁ…ッ! キキ、キキキキ…ッ!」

 

又兵衛は改めて、一人になり、自由の身になった事を心から喜びながら、同時に自らのプライドに泥を塗った2人の存在に向けて、憎悪と殺気を滾らせていく。

 

「まずは……伊達、政宗ぇ…そして高町、なのはぁ…だったっけ…?…オマエらだぁ……!」

 

又兵衛は遥か彼方…首都クラナガンがある方向に向かって真っ赤に染まった目で見据えながら、ブツブツと呪詛の言葉を呟き続けた。

 

「オマエらを必ず、し、し……処刑してやる……ッ! 突き刺したり、斬り刻んだり……? 千切ったり! 剥いだり! 潰したり! 抉ったり! 身につけたり、頬ずりしてやるぅッ!!」

 

又兵衛はまるで獣の咆哮のような叫びを上げると、不気味なエコーをかけながら周囲の森の中を風に乗って反響した。

その声に威嚇する様に森のどこかからか獣の遠吠えが返ってきたが、そんな事又兵衛は気にも止めなかった。

 

「待ってろよぉ、高町なのは……そしてぇ伊ぁぁ達、政宗ぇえええええええッ!!

キキ、キケキャアァアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

又兵衛は再び咆哮を残すと、天に舞い上がるように高く飛び立ち、そのまま木々から木々に飛び移るようにしながら、怨敵 政宗達を探して流浪の旅を始めるのであった……

 

 

*1
今で言う刑務官と死刑執行人の職を併せた役職の事。

*2
日本の戦国時代から江戸時代にかけて使われていた米粉や蕎麦粉などと香料、生薬を混ぜて丸薬状にした携帯保存食の事。




っというわけで今回はオリジナル版における官兵衛とセインの不幸コンビの結成話のリメイクでしたが、又兵衛がオリ武将でなくなったおかげでだいぶ別物な物語になりましたね。

そして、オリジナル版よりもだいぶ早く西軍より独立した又兵衛。彼の行く先に待つのは希望か? それとも絶望か?
又兵衛の今後の凶行…否、活躍にご期待下さい(笑)


ちなみに今作における官兵衛の年齢ですが、当初は見た目のイメージから勝手に『36歳』と設定していましたが、最近になって『初期の構想では“24歳”という設定だった』という衝撃的なエピソードを知ったので、変更させてもらう事にしました(っていうか普通に自分よりも圧倒的に年下だった事にショック…どう見ても30だろ!(←分かる人にはわかる洋画吹き替えネタw))
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。