リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition- 作:charley
謎の光に引きずり込まれた2人が行き着く先に待ち受けるのは…
家康「リリカルBASARA StrikerS 第一章 出陣だ」
第一章 ~異世界・ミッドチルダへ! 時空を超える東照権現と若き翼達との出逢い~
謎の光が降りかかり、それに照らされた地中の深くへと引きずり込まれた時、家康はそれが日ノ本に大きな戦乱を齎した自分達への神か仏の裁きであるものかと錯覚していた。
自分はこのまま冥土へと導かれるのか…薄れる意識の中でそう覚悟を決めてさえいた。
それから幾刻の時間が過ぎたのだろうか? 不意に深い水底から這い上がってくる様に、白く染まっていた視界が徐々に開いてくる感覚がした。
「うぅ……こ…ここは?」
視界が完全に晴れるのを待ちながら、家康は自分の五体と全ての感覚が無事である事を確認する。
周囲は静寂に包まれていた。それも先程までとは違い、遠くから聞こえていたはずの大砲や兵士達の怒号も一切聞こえてこない。
(この静けさは…戰場ではないのか?)
その時、ようやく家康の視界から光の靄が取り払われた。見えたのは雲1つ無い青空だった。
ここで自分が地面に寝転がった状態にある事に気づいた家康は、上半身をゆっくりと起こしていく。
だが目の前に広がったのは、家康が予想していたものとは大いに異なる景色だった。
鉄でできた城のように巨大かつ箱のように精巧な四角い謎の建物が、文字通り大地を埋め尽くさんばかりに立ち並び、互いに凌ぎを削りあうかの如く天に向かって伸び競い合っている。
さらにその建物の隙間からかすかに見える遥か先にある山々の形も自分が見慣れていた日ノ本のどの山にもなかったものばかりだった。
果ては、大空すらも家康が見慣れていたものと似て非なるものであった。
家康が自らに例える太陽の他、真っ昼間であれば見える筈がない月…いや厳密には月のような丸く巨大なものが青空の中にいくつも浮かんで見えていた。
「なっ!? …一体どこなんだ。ここは?…どう見ても関ヶ原…否、日ノ本とは違う…」
自分が異郷の地に降り立っている事に気づいた家康は混乱しそうになる脳裏を必死に理性で抑えながら、ひとつずつ自分の今置かれた状況を把握していく事にした。
まず自分が今立っている場所を調べようと足元を見た家康は、今いるこの場所も“鉄でできた箱の様な建物”のひとつの屋上である事を知った。
恐らく、ここは関ヶ原にあったどの山よりも高い位置であろうと察する。さらに詳しく調べようと建物の端まで行くと、そこから見える景色は実に雄大で好奇心旺盛な家康の冒険心をなかなかに擽らせる大パノラマだったが、生憎今の家康にこの感慨に浸る余裕はなかった。
「そうだ! 忠勝は…!? 忠勝!忠勝!!」
家康は思い出した様に、辺りを見渡しながら叫んだ。
もちろん、それは自分と共にあの謎の光に吸い込まれた家臣の名である。
だが、家康の呼びかけに対して返ってくる返事はなく、何もない屋上に新たに人の気配が感じられる事もなかった。
「忠勝の姿はない…っという事はここに飛ばされたわけではないという事か…それに三成や左近もここにはいないようだな…」
家康は再度、屋上を見渡し、先程まで雌雄を決しようとした宿敵とその側近の姿がない事を確認した。
そもそも、仮にこの場に三成主従も一緒にいたとすれば、家康が意識を取り戻す前に斬り捨てていた筈だ。
「三成…思いも寄らない形でお前との戦いは預けられる事になってしまったが……いつか必ず、お前との決着はつけよう…」
家康は着けられなかった勝負と、行方のわからない宿敵の事を想いにはせながらも、ひとまず今この状況をどう打破すべてきか考える事に専念する。
「兎に角……ここが関ヶ原ではないとなると…まずはここがどこなのか知るべきだな。 よし! とりあえずこの地の住人を探してみるか」
そうつぶやくと家康は、屋上の端に立ち、そして躊躇する事なく高く羽ばたくように飛び上がると、一気に建物の真下に向けて落下していった。
これは日ノ本でもよくやっていた家康の得意な移動術のひとつである。
武器を捨て、身体ひとつ、拳ひとつで戦ってきた家康にとって、並大抵の野山や崖っぷちを降りるのも容易い事だった。
だが、そんな家康の考えはすぐに無意味なものとなってしまう。
そのまま、飛び降りて地表近くになったところで、宙返りを決めて着地すると考えていた家康の視界にすぐに飛び込んできたのは、さっきまでいた建物と同じ形の建物であった。
「うわぁっと!!こ…こいつはマズい!…ああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」
予想していたものより遥かに早く地面が見えた事で宙返りのタイミングを完全に誤ってしまった家康は、体勢を崩し、地面に上手く着地する事ができずにそのまま建物の屋上の床を突き破ると、一階、二階、三階と次々に屋上の下の階層の床を尻もちで砕きながら落ちていった。
そして、最終的に六階層分の床を破ったところで、家康はようやく体勢を直す事に成功し、無数の瓦礫と一緒に七階層目の床に倒れたのだった。
「あいててて…これは傷が残るなぁ…」
普通ならそれで死ぬと思われる程の大スタントであったが、伊達にこれまで数々の死地を己の拳だけで潜り抜けてきた家康ではない。
多少のかすり傷を負ったものの大した怪我もせず、すぐに起き上がる事ができた。
「やっぱりこういう馴れない場所では無茶をするものじゃないな……っ!?」
家康がそう言いながら腰を上げた。
初っ端から出足を挫き、煤まみれになった自分の姿を改めて見下ろし、「こんな姿、とても忠勝達には見せられないな…」と一人自嘲する様に苦笑を浮かべた。
その時、家康の目の前に築かれた瓦礫の山から等身大のサイズの影が突き破るように飛び出してきた。
家康がそれに気づくと同時に現れた影に一瞬赤く鋭い光が灯る。
本能的に危機感を覚え、咄嗟に身体を横にそらして、その場から退いた直後、今しがた家康が倒れていた場所に一閃の光線が命中し、積み重なっていた瓦礫を吹き飛ばした。
「誰だ!?」
家康は目つきを鋭くさせながら、拳を握りしめて身構えつつ、光線の飛んできた方向を見据える。
だが、そこにいたのは人ではなかった。
真ん中に目のようなものがついた卵型のカラクリ兵器がその場に浮遊していたのだ。
「浮いてる!? これは、カラクリ…なのか!?」
驚く家康を他所に、カラクリ兵器は真ん中の赤い目玉の様な発光体に再び赤い光を灯すと先程と同じ閃光を放ってくる。
見事なバックステップでそれを鮮やかに避けながら家康はカラクリ兵器との距離を詰める。
「何かはわからないが、友好的な存在ではないらしいな…はあぁぁ!!」
家康はカラクリの中心にある発光体を狙い、力を込めて正拳突きを繰り出した。
すると家康の拳はカラクリを貫通し、黒い煙と火花を散らしながら、動きを止めて数回バウンドして、積み上がっていた瓦礫を撒き散らしながら床に転がり落ちた。
それを見た家康が安堵の表情を浮かべかけるも、すぐにその顔つきが険しいものになった。
家康の周囲にたった今破壊したばかりのカラクリ兵器が数機、家康を囲むように浮かんでいたのだった。
「奇怪な建物に…奇怪な空…お次は奇怪なカラクリとは…本当にワシはとんでもない異郷に来てしまったようだな…」
苦笑気味につぶやきながら、家康が再び身構えようとした。
その時―――
「だああああああああああぁぁぁぁ!!」
家康の背後から飛び出してきた青い影が、対峙していたカラクリ兵器達の間を駆け抜け、それと合わせるかのようにカラクリ兵器達が爆発していった。
「なんだ!?」
家康が驚いている間に取り囲んでいたカラクリ兵器達は瞬く間に破壊、沈黙する。
家康の周囲を回るように青い影はカラクリ兵器達を撃墜していき、そして最後の一体が何かに突き抜かれたと同時に大爆発が発生し、爆風と衝撃が家康を襲った。
「!?」
爆発で発生した煙が完全に晴れたとき…
「お…
家康の前には一人の少女が立っていた。
「ふぅ~、よかったぁ!どうやら間にあったみたいだね!」
青い短髪で少年のような雰囲気をもったその少女は、額に鉢巻きを巻き、足に車輪の付いた鉄の靴を履いて、右手には手を完全に覆う程の大きさの装甲をしていた。
影の思わぬ正体に家康があっけにとらわれていると、少女が家康の下に駆けつけてくる。
「あのぉ、そこの貴方。大丈夫ですか?」
「あ…あぁ。 すまない。助かった…」
家康は唖然としながらも、一先ず少女の問いかけに頷き、答えた。
「いやぁ、ちょうどこのビルでガジェットドローンの掃討作戦をしてたら、急に隣のビルから「屋上から民間人が飛び降り自殺した」って連絡があったものだから、ビックリして飛んできたんですけど…」
「と、飛び降りだって…そ、それって…もしかしてワシの事か!?」
どうやら、自分が先程の建物から飛び出し(と同時に隣に立っていたこの建物に落下)した様子を誰か観ていた者がいたらしい。
そして、その人物達には家康の行動は『飛び降り自殺』と見てとられた様だった。
「あれっ? 飛び降りじゃないんですか?」
「い、いや決してそんなものではないのだが…ま、まぁなんて説明すればいいだろうか…?」
傍目からすれば自殺にしか見えない自分の日常的な行いを目の前にいる無垢そうな少女にどう説明すればいいかわからなくなった家康は、少しばかし考えたが、結局良い答えは見つからず、無理矢理に話題を変える事にした。
「…それにしても、あれだけのカラクリ兵器を一瞬で倒してしまうとは君なかなか大した実力じゃないか。 まだ若い様だけど一体どこの軍の武将かな?」
家康が尋ねると、少女は「ほぇ?」っと呆ける。
「ぶ、武将?…えっと…軍っていうか“時空管理局”の者なんですが…」
「? んっ?」
少女がそう答えると、今度は家康が同じように呆けた。
「じくう…かんりきょく…? それは…一体…?」
聞いた事のない言葉を聞いて、困惑するように首をかしげる家康を見て、少女は何かを察したのかハッとした表情になる。
「…もしかして貴方…!?」
少女がそう言いかけたその時、少女の背後に先ほど倒された筈のカラクリ兵器の残骸の中から半壊状態ながら一機が這い出てきた。破壊が甘かったのか、まだ動力が生きていたのであろう。
カラクリ兵器はそのまま少女に向けて光線を放とうとした。
「!?……危ない!!」
家康はすかさずカラクリ兵器に向けて駆け出し、機体の中心に強烈なボディブローを放った。
そのまま拳を振り下ろして二撃目を加えると、カラクリ兵器を木端微塵に砕いた。
「えっ!? ええええぇっ!?」
その様子を観ていた少女……スバル・ナカジマは思わず驚きの声を上げた。
見た感じ民間人だと思っていた青年が、自分が魔法とデバイス(簡単に言えば魔法を駆使する武器である)を駆使して戦っていた機械兵器を、まるでスイカを潰すかの様に破壊してしまった。それも魔力も使用せず、素手の力だけで…
スバルは魔導師達によって編成された巨大公安組織『時空管理局』に所属する陸戦魔導師であり、そのファイトスタイルは姉から教わった『シューティングアーツ』という特殊な格闘技を駆使して戦う管理局に属する魔導師の中では珍しいものである。
しかし格闘をメインで戦うとはいえ、自身の技の威力を強化させる為に魔力による補助は必要だ。ましてや今自分達が追っている敵 機械兵器『ガジェットドローン』は自分達のような戦闘のプロでも苦戦させ、最近管理局の手をやたらと煩わせている厄介なもの。
普通の民間人…ましてや丸腰の人間が太刀打ち出来る相手では到底無かった。
しかし、目の前に立つ今しがた飛び降り自殺をしていたであろうこの青年は、そんなガジェットドローンを腕っ節ひとつで、デバイスすらも持たずに破壊してしまったのだった。
「ふぅ…危なかったな」
家康は粉々になったガジェットの残骸を見下して一息ついた。
すると背後からスバルは恐る恐る声をかける。
「あの…もしかして貴方は…『次元漂流者』ですか?」
「んん?…じげんひょうりゅうしゃ…とはなんだ?」
話がよくわからない家康にスバルは詳しい説明をする事になった…
*
「つまりこういう事だな。この地は、ワシがいた日ノ本の国がある世界…その『地球』だっけ? そこではなく、『ミッドチルダ』という別の異世界であり、ワシは何らかの形でこの世界に飛ばされてきた…いわば迷子のようなもの…っという感じでいいのかな?スバル殿」
「えぇ。簡単に言えばそう言う事です」
あれから十数分かけてスバルは家康に、今家康に置かれた状況の説明と、この世界の仕組みや魔導師、そして魔法という存在について一から簡単な説明をしていた。
ちなみにその間に二人は互いの自己紹介を済ませたが、スバルはミッドチルダ出身の人間である故に、地球の歴史はほとんどわからなかった為、家康の名前を聞いても違和感を覚えなかった。
「しかし『魔法』という妖術のようなものが繁栄し、その使い手である『魔導師』達によって統治された世界か…随分とワシも変わった世界に飛ばされてしまったのだなぁ。スバル殿、この世界にはワシみたいに別の世界の人間が飛ばされるという事は頻繁にある事なのかな?」
「えぇ、些細な事が原因で異世界の人間が迷い込むという事はよくある事なんですけど…家康さんみたいな特別な力を持った人が迷い込むのは珍しい事ですよ」
スバルは家康によって破壊されたガジェットドローンの残骸に目を配りながら話す。
「あの“ガジェットドローン”という兵器は、『AMF』という魔法を無効化させてしまう構造を持ったいわば、私達魔導師の天敵のような存在なんです。倒すには私みたいに直接機体に物理的な攻撃を使わないと破壊する事ができないんです。でもその為には多少魔法によって技を強化させておかなければ攻撃を当てる事は難しくて、普通の非魔力保持者…あっ、家康さんみたいに魔力を持たない人の事です。その非魔力保持者が素手だけであれを倒すのは本来無理な話です」
「それを己の力で倒したワシは、スバル殿からすれば異端というわけ…か。確かにワシは腕っ節に多少自信はあるのだが、この世界ではそれがこれほどまでに凄い事であるとは…」
「あのぉ、もう一度聞きますが、家康さんの世界には本当に魔法がないんですよね?」
スバルが確認するように聞いてくると家康は少し考え、そして応える
「うん。確かにワシが使うのは己の拳と絆の力のみだが…強いて言えば、ワシの世界にはワシも含めて“気”という秘術を用いて戦う者がいるが…」
「き? それが家康さんの世界でいう魔法とか?」
「いや…魔法というかなんて言えばいいのかな…? 魔法とはまた違う力なのだが…似たようなもの…なのかな?」
家康の話を聞きながら、スバルはますます謎に包まれた素性を抱える彼に対して、不思議と好奇心のようなものが湧き上がってくるのを感じていた。
普通であれば、『次元漂流者』はそのまま管理局内の専門の機関に引き渡すのがセオリーだが、彼は普通の対処に終わらせるべきでないとそう直感したのだった。
「う~ん…これはもう少しゆっくり話を聞くべきかもしれませんね。家康さん。私と一緒に来てください。家康さんがこの世界の住人ではないと判った以上、私は貴方を『次元漂流者』として保護しなければいけませんから」
「そうか。承知した」
スバルの言葉に家康は素直に従う事にした。
家康としても、ここが日の本どころか異世界であると判った以上、このまま当てもなく、闇雲に歩き回るよりも、素直にこの世界の住人に従って動いた方がなにかしらの情報が入るはずだという考えがあった。
スバルはとりあえず下に居る仲間と合流しようと話し、二人は瓦礫の散乱したフロアを歩き出した…
*
その頃、家康とスバルのいた階層から数フロア下層部の階では…
「クロスファイヤー……シューーート!!」
両手に拳銃のような形の武器を構えたオレンジ色のツインテールにした少女 ティアナ・ランスターと―――
「ソニック……ムーブ!!」
槍型の武器を振りかざす赤髪の少年 エリオ・モンディアル―――
「フリード! ブラスト……フレア!!」
目の前に浮かんだ小さな白い龍 フリードリヒを従えたピンク色の髪の少女 キャロ・ル・ルシエ―――
スバルのチームメイトである3人の若き魔導師達が、それぞれ数十体のガジェットドローンを相手にそれぞれ奮戦していた。
「ねぇ!今回のガジェット達は少し数が多いと思わない?」
ティアナは、自分達を取り囲むガジェット達に銃型のデバイス『クロスミラージュ』の銃口を向けて、次々と魔力弾を放ち、これを確実に撃墜していきながら隣で戦うエリオとキャロに問いかける。
「そうですね。昨日の現場では60機程出てきましたが、今回は100機はいますね」
「スバルさん、上に民間人がいるって言って探しに行きましたけど、大丈夫でしょうか?」
背中合わせにエリオが槍型のデバイス『ストラーダ』を振るい、キャロがグローブ型デバイス『ケリュケイオン』を光らせてエリオに補助魔法をかけながら言葉を返す。
3人は最初、スバルを加えた四人でこの建物に突入し、建物内部を占拠していたガジェット達の殲滅活動を順調に行っていたが、「建物内部に屋上から民間人が入り込んだ」という情報を受けたスバルが単身救助に向かった事で、ティアナ達は少しであるが押されぎみだった。
「まったくあのバカスバル!!民間人助けに行くのはいいけど、後に残る私達の事も考えてよね!!」
ティアナは一人立腹しながら、迫ってくるガジェットを撃ち落とす事で、怒りを紛らわしていた。
その時、四人の耳にスバルの声が聞こえてくる。
≪ティア?エリオ?キャロ? 皆、聞こえる?≫
「「!?…スバルさん!!」」
「(ちょ…スバル!!あんた民間人探すのにどんだけ時間かけてるのよ!?おかげでこっちは今結構大変なのよ!」
口に出さずにスバルに文句を言うティアナ。
ちなみに今、それぞれ近くにいるわけではなく、何かしらの器具も持っていないこの状況で彼女達の会話が成立しているのかというと、これは魔導師特有の能力のひとつで、通信器具無しで心の中で会話するという『念話』というものだ。
≪ご…ごめんティア!ちょっといろいろあって…でも言ってた民間人の人は無事保護したよ!待ってて今そっちへ…って家康さん!?なにしてるんですか!?………えぇ!?飛び降りる!?それはちょ…待って下さい!それは…≫
突然念話越しのスバルの声質が動揺した者に変わり、ティアナ達は違和感を覚える。
「ちょ…スバル!?あんた一体どうし…」
ティアナが強い口調でスバルに状況の説明を聞こうとした…その時だった。
突然ティアナ達とガジェットドローンの群れとの間の天井が突き破られ、無数の瓦礫と共に家康と彼にしがみついたスバルが落下してきた。
「ああああああああああああああああ!!どいてぇぇぇぇぇティアぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!」
「えっ!?ちょ…待っ…うぎゅぷ!!!?」
ティアナが回避する隙もなく、家康とスバルの身体がティアナを押しつぶし、ティアナは倒れ込んで顔を床に積み重なった瓦礫の山に埋め込ませてしまう。
そしてその上に家康とスバルが尻もちをつく形で乗っかる。ちなみにスバルは落下の際に飛んできた石ころに頭をぶつけたのか、目を回して気を失っていた。
その光景を見て亞然とするエリオとキャロ。
「むっ!ここにもカラクリ兵器がいたか!!よし!ワシに任せておけ!」
そんな彼らを他所に家は周囲に展開するガジェットの群れに気がつき、すかさず立ちあがって拳を構える。
傍から見れば自殺行為な家康の行動にティアナ達3人…とりわけティアナは呆気にとられ、そして叫ぶ。
「ちょ…誰よアンタ!? ってか丸腰でなにしようとしてるのよ!? 危ないわよ!」
だが、ティアナの制止の声も、ガジェットを倒さんと拳に力を込める家康には届いていなかった。
「我が絆の力…受けてみよ!! 天道突き!!」
拳に金色のオーラを放ちながら拳を構え…
「はぁぁぁぁ!!」
ガジェット達に向けて巨大な風圧を伴った正拳突きを放つ家康。
突き出された拳から放たれた気と風の合わさった波動は目の前に展開していた全てのガジェットドローンを巻き込み、その全てを爆散させ、フロア中にその破片を散らした。
「うわぁ!?」
「きゃあ!?」
まるで隕石の如く飛んできたガジェットドローンの破片に、エリオとキャロが慌てて身を伏せながら回避する。
「ちょっと!? 一体何なのよこれ―――いだぁ!!」
ティアナも分けが分からずに混乱しながら、飛んでくる破片を回避しようとするが、運悪く破片の一つが眉間に命中し、その場に卒倒してしまった。
そして波動が完全に止み、ガジェットを殲滅した事がわかると家康は息をついて、決めの言葉を言おうとする。
「人の全てを結ぶまで!」
「「……………………………」」
いきなり登場して、さらに派手なパフォーマンスを決めてみせた家康に、唖然とするエリオとキャロだったが、すぐに我に返るとそれぞれ目を回して気絶していたスバルとティアナの下に駆け寄る。
「大丈夫ですか!?ティアさん!!」
「スバルさん! しっかりしてください!!」
「えっ!? …はっ! スバル殿!?」
エリオとキャロが慌てふためきながらスバルとティアナの下に駆け寄り、それぞれ身体を起こそうとしているのを見て、ようやく家康も背後の状況に気づき、スバル達の下へと駆け寄る。
「う、う~~~ん…あ、あれ? ここは誰? 私はどこ?」
「いたた…ったくなんだっていうのよ…」
幸いにも2人とも軽く気を失っていただけだったようで、家康達が身体を揺するとすぐに目を覚まし、起き上がった。
「大丈夫か!? 一体、誰がこんな事を…」
「…ってアンタでしょうがーーーー!!!」
素で心配しながら尋ねる家康にティアナが怒りのツッコミを上げながらその頭を引っ叩いたのも…まぁ無理はないよね…
*
ティアナの手痛いツッコミを食らった後…必死に謝ってなんとか許してもらえた家康は改めて、スバルからティアナ達に、自分の素性とここまでの経緯を説明してもらった。
ちなみにティアナ達も日本の歴史に関しては判らない為、家康の名前にも特に反応はしなかった。
「っというわけで、家康さんについては部隊長達にも詳しく話を聞いてもらった方がいいと思うんだ」
「確かにその方がよさそうね。わかったわ。とりあえずここのガジェットドローンは殲滅できたみたいだし、“ヴィータ”副隊長や“なのは”さんに合流して、隊舎へ連れて行きましょう」
「宜しく頼む。え~と…君は…?」
家康はティアナに頭を下げるが、彼女の名前がわからない為、続く言葉が見つからない。
それを見たティアナは、まだ名乗っていない事に気づき、自己紹介をする事にした。
「ティアナ・ランスター。スバルの仲間で時空管理局 遺失物管理部『機動六課』のフォワードチームの隊員よ」
「?…その『きどうろっか』や『ふぉわあどちいむ』とはなんだ?」
「あぁ、さっき説明した時空管理局の中の一部隊で、私達が所属している部隊です。まぁ細かい説明は後ほどしますが」
新たな未知の単語を聞いて首をかしげる家康にスバルが横から助け船を出した。
おかげでなんとかティアナの言葉をある程度理解する事の出来た家康に、続いてエリオとキャロが自己紹介をする。
「はじめまして。エリオ・モンディアルといいます」
「えっと…キャロ・ル・ルシエです。宜しくお願いします」
するとキャロの肩に、先ほどキャロの指示を受けながらガジェット達相手に奮戦していた小龍 フリードリヒが止まる。
「キュクル~~~~~」
「あっ!?ごめんねフリード。貴方の紹介もしないとね」
キャロは謝りながらフリードを抱き上げて紹介する。
「この子は私の使い魔のフリードリヒです。私達はフリードって呼んでます」
「ほぉ、フリードか。これはなかなか珍しい『鳥』であるな」
家康はそう言ってフリードを誉めるが、その言葉でその場の空気が固まる。
「あの…家康さん……フリードは鳥じゃないんですけど…」
「えっ!?そうなのか!?す、すまない! 鳥じゃないのなら…あれか!? 新種の蝙蝠とか?」
家康はあわててフォローしようとするが、かえってそれがキャロとフリードを傷付けた。
「ひ…ひどいです…鳥はまだわかりますけど……新種の蝙蝠だなんて…」
「キュルゥ~……」
今にも泣き出しそうになるキャロとフリード。
「ああぁ!!す…すまないキャロ殿!初めてみる生き物だからてっきり物の怪の類かと思ったのだが、さすがにそれは言うのは失礼かと思って言葉を考えて…へぶぅ!?」
「全然弁えてないでしょ!本人達の前で『物の怪だの大っぴらに言うな!!」
「いや…ティアさんも思いっきり言っちゃってますけど…」
家康のあまりの天然ぶりに。思わず頭を叩きツッコミを入れるティアナ。
その横からエリオがティアナのツッコミに、さらにツッコミを重ねてきた。
そんなやり取りにキャロとフリードはとうとう涙目になってしまう。
「ううぅぅ……フリードは物の怪でもないですよぉぉ……」
「キュルル~~………」
「あああ!本当にすまない!キャロ殿!!今のはワシの失言だ!この通り!許してくれ!!」
キャロに必死に頭を下げて謝る家康を見て、ティアナはため息をつきながら彼に聞こえないように、スバルに耳打ちで話す。
「スバル。彼の事でひとつだけわかった事があるわ。彼…少なくともアンタと同類か、それ以上の“ド天然”ね」
「ははははは……それ私も含まれるの…?」
二人は半ば呆れながらキャロに必死に謝る家康を見守るのだった。
*
「あぁ? 次元漂流者らしき奴を保護した?」
家康達の居る超高層ビルの前は、時空管理局の職員や、騒動を聞きいれて駆け付けた野次馬などの大勢の人だかりで賑やかになっていた。
その中で、赤い髪に三つ網に分けた少女…機動六課 スターズ分隊副隊長 ヴィータは怪訝な表情で部下からの念話に耳を傾けていた。
≪えぇ、一応魔導士ではないみたいなのですが、ガジェットドローンを複数機、たった一撃で全滅させる程の戦闘能力を持っていて、とても普通の非魔力保持者ではなさそうです≫
「はぁ!?魔法を使わずにガジェットを全滅!?そいつ質量兵器でも隠し持っていやがったのか!?」
念話越しに聞こえる同じスターズ部隊の部下 ティアナからの報告にヴィータは思わず自分の耳を疑いそうになる。
≪いえ。それが…信じられないのですが、確かに素手でガジェット達を一纏めに吹き飛ばしたんです≫
「なんだよそれ!? さっぱり状況がわからねぇって!」
思わず声を荒上げてしまったヴィータに周囲の局員や遠巻きに見守っていた民間人達の注目が集まる。
あわててヴィータはその場から離れ、近くに止まっていた管理局の武装隊の特殊車両の裏へ行って、念話を続ける。
「一体どういう奴なんだ? いくらAMFが魔法を使わない攻撃には無意味とは言え、ガジェットドローンは破壊工作用に開発された質量兵器だぞ。表面を覆っているプレートだけでも装甲車並の防御性を誇るんだ。魔力のねぇ人間が素手だけで倒せるわけねぇだろ」
≪でも実際、彼は魔法ではないのですが、魔法に似たような力を使ってガジェットを倒してしまったんです≫
「魔法ではないけど魔法に似た力…話がよくわかんねぇけど…?」
≪そ…それに関してはまた後ほど説明します!とにかく彼は普通の民間人とは違うみたいですが、私達に敵意を向けるわけではないので別に敵対者ではないかと思います。強いて言えばスバル並に天然ですけど…≫
ティアナの報告を聞いたヴィータは最後の「スバル並の天然」というワードになにか疲れのようなものを感じたが、特にそれに関してそれ以上追求しようとはせず、次の指示を送る事にした。
「わかった。とにかくここの鎮圧は完了したなら、お前らはその次元漂流者を連れてこい。その間に隊舎にいる“フェイト”達にも連絡して尋問の準備を整わせておくから」
≪了解!≫
そう言って念話を切ったヴィータの前に、空からツインヘアーの栗色の髪で白と青の魔導師の服…バリアジャケットを着た女性が舞い降りてきた。
「ヴィータちゃん。空中のガジェットドローンⅡ型の編隊の殲滅終わったよ。そっちはどう?」
「おぉ、なのは。今ティアナから連絡があって建物内のⅠ型の群れもすべて片付いたそうだ。アタシが出る幕はなかったみたいだな」
少々つまらなそうに話すヴィータに女性…機動六課 スターズ分隊隊長 高町なのはは、思わず笑みを浮かべる。
「フフッ。それほどまでにあの子達が成長してるって証拠だからいいことじゃない?」
なのはは、かわいい後輩たちがいる現場のビルを見つめながらヴィータに話しかける。
「まぁな………そういえばティアナからの報告で、ビル内で次元漂流者らしき人間を保護したそうだってさ」
「えっ!?こんなビルの中で!?」
「あぁ。しかもそいつが少々普通の非魔力保持者とは異なる野郎らしくてな…」
「どんな?」
なのはが問いかけると、ヴィータはティアナからの報告をそのままなのはに伝えることにした。
「魔導師ってわけではないみてぇだが、素手でガジェット達を倒す程の戦闘能力を持っているそうだ」
「えぇ!?」
時空管理局本局の武装隊に所属し、これまで様々な次元漂流者を保護してきた経験のあるなのはも、こんな次元漂流者は初めて聞いたらしく驚きの声を上げた。
「それかなり危険な漂流者じゃないかな?もしかしてスバル達その人と戦闘になったりとかしてない?」
なのはがそう心配すると、ヴィータは首を横に振った。
「心配ねぇよ。ティアナ曰くそいつスバル並のド天然らしいけど、敵対する姿勢は見せてないらしいから、少なくともアタシらと戦う意志はないらしい…」
「えっ!?スバル並に天然?」
「あぁ。つまりはなかなかの“バカ”って事だろうよ。とにかくそいつも一緒に連れ帰って、そいつから詳しく事情を聞いて…」
その時だった。
突然なのはとヴィータの前、スバル達の居るはずのビルの壁が突然大爆発を起こし、正面の壁や窓ガラスを全て吹き飛ばした。
「「「「えええええええええええええええええええええええええええええ!!!?」」」」
たちまち周囲一帯は騒然となり、なのはとヴィータにも戦慄が走る。
何事かと周囲が見守る中、立ちこもる煙の中から一人の青年が出てきた。
「よし! なんとか道は開けたな。みんな、出てきても大丈夫だぞ!」
言うまでもなく家康である。
家康はビルから出る為に気の力でビルの壁を吹き飛ばしてしまったのだった。
当然ながら後ろに居たスバル達は砂埃に塗れてまっ白になっていた。
「た…確かに早く外へ出ようとは言ったけど……」
「まさか壁を無理矢理吹き飛ばして外に出るなんて……」
「どれだけ常識外れなのよ? アンタは……」
「っていうか魔法を使ってないならそれだけの破壊力の源は、本当にどこからきてるんですか?……」
エリオ、キャロ、ティアナ、スバルは口々に家康に抗議する。
しかし家康は…
「手っ取り早くてよかっただろう? ワシは家臣の一人にこうやって何度も危機を救われたんだ」
…っと得意そうに話していた。
「「………………………」」
そんな彼を茫然と見つめるなのはとヴィータ。
「び……ヴィータちゃん…さっき言ってた『スバル並の天然』っていう理由…すごく理解できたね…」
「あぁ…本当にタダもんじゃないみたいだな…いろんな意味で…」
この場に居る全員の頭に思い描いた事を代弁する二人であった…