リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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地上本部の巨大派閥“コアタイル派”の首魁にして、ミッドチルダの貴族魔導師の名門『コアタイル家』との御曹司とのお見合い話を持ちかけられたなのは。

当然、なのははそれに乗り気ではないが、相手が相手だけに下手に断るにも難儀な事になるのは容易に想像がつく…

そこではやてから提案されたのは『政宗を恋人役にして、同伴させる』というなのはにとっては嬉しいやら、恥ずかしいやらわからなくなるように奇策であった…


政宗「リリカルBASARA StrikerS 第四十六章! マヨネーズが足りないんだけどぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

成実「あれ? 兄ちゃんも食べるの? 『土◯スペシャル』?」

政宗「食うか! 中の人ネタで言っただけだ! 誰が犬の餌なんぞ…!」

成実「えぇぇぇ!? めっさ美味そうじゃん!」


第四十六章 ~お見合い騒動(パニック)!? 伊達軍“大根”乱!?~

部隊長室において、『なのはと政宗を恋人役にして、共にお見合いの席に立ち会って話を断る』という奇策が正式に決定されてから1時間後―――

 

「痛ててて! 勘弁してくれよぉぉっ! 兄貴ぃぃぃぃ!!」

 

機動六課隊舎2階廊下では、猫の如く襟首を掴まれた成実が、憤慨した小十郎に引き立てられていた。

 

「…ったくテメェというやつは…六課に正式に入隊して早々、俺の畑に忍び込んで盗み食いを働くたぁ、どういう了見だ!?」

 

「だ、だってさぁ! 今日はシャマルの姐さん、“けんしゅー”とかで一日留守にしてっから、飯食わせてもらう機会がなくて! 腹が減ったからちょっと食べさせてもらおうと思っただけなんだって!」

 

「だったら、食堂にでも行けばいいだろうが! なんで俺の畑に忍び込むんだ!」

 

襟を掴まれた成実が必死に弁解しつつ、隙あらば逃れようともがくが、小十郎はピシャリと一蹴し、がっしりと襟元を掴んだまま離そうとしなかった。

 

今日も今日とて、また隊舎屋上の小十郎の菜園に忍び込んで、人参をつまみ食いしていた成実であったが、見回りに来た小十郎に見つかって、壮絶な追いかけっこの果てに捕まり…この様へと至ったわけである。

 

「なんだよぉ! ちょっとくらい食わせてくれてもいいじゃねぇかぁ! 兄貴のケチ!」

 

「ダメだ! お前に“ちょっと”食わそうものなら、まだ熟していない野菜ばかりか、苗や肥料、挙げ句に埋めたばかりの種や、土の中にいるミミズまで食い尽くされかねないからな! 事実、そうやってこの世界で既に13もの農園を荒野に変えた“前科”がある以上、尚の事、ここでのお前の行動は厳しく取り締まる!!」

 

「そ、そんなぁぁ!? 兄貴“ごむたい”だよぉぉぉ!?」

 

「無体も大根もあるか!」

 

小十郎に一蹴され、成実はガックリと肩を落とした。

 

成実がミッドチルダに漂流してから機動六課にやってくるまでの間に菜園消去屋(ファーム・イレイザー)の異名で、甚大な被害を及ぼした農家や菜園に対する被害は六課の後ろ盾である本局の尽力によって、どうにか訴訟問題が起こる事もなく、無事に解決したものの、それをきっかけに小十郎は、成実の病的な食い意地と卑しん坊ぶりを見咎め、日ノ本にいた時以上に厳しく粛正する事を決めていた。

 

「とにかく! 今日という今日は、きっちりと政宗様にも、お前のその考えなしに喰らおうとする意地汚い素行を正してもらわねば―――んっ?」

 

ブツクサと呟きながら、小十郎が隊舎中央のメインエントランスの上階(アッパーロビー)に差し掛かった時であった。

 

「うわぁ~! なのはさんも、政宗さんもすごいですねぇ!」

 

「本当にお似合いですよ!二人とも!」

 

突然スバルとエリオの歓喜の声が聞こえてきて、小十郎は思わず足を止める。

そしてアッパーロビーの吹き抜けから下のフロアを除くと、エントランスの隅にある休憩コーナーにて、スバル達フォワードメンバーが誰かを囲むようにして騒いでいた。

 

「? あれ? スバル達じゃん? なにやってんの?」

 

「さぁ…どうやら、政宗様もいるみたいだが…」

 

小十郎は成実を掴んだまま、エントランスの階段を降りて、一階までくるとフォワードメンバーの囲んでいる人物を良く見てみる。

 

「んなっ!!?」

 

「ぅえっ!?」

 

しかしその姿を確認した途端、小十郎も成実も思わず口をあんぐりとさせて頭を木づちで殴られたような衝撃を受けた。

なにしろスバル達が囲んでいる人物は…

 

「や…やっぱり、変かなぁ? 政宗さん」

 

「いや…“変”っていう以前に…これ見合いじゃなくて婚礼の服じゃねぇか!!」

 

何故か白いウェディングドレス姿のなのはに、黒い紋付き袴姿の政宗であったからだった。

もちろんこの衣装は、言うまでもなくはやての私室で、彼女から突如着さされたものである。

 

当然、仕立てる際には、何故はやてが『ウェディングドレスや男性用袴なんて持っているのか?』というツッコミが政宗から飛んだものの、はやては「急に入用になる時に備えてや。用心、用心♪」とよくわからない言い分ではぐらかされたのだった。

 

「何言うてんねんな政ちゃん。 これくらい二人の熱愛ぶりをアピールするような衣装の方がインパクトあってえぇと思うよ」

 

二人の隣では、衣装を用意した張本人であるはやてがヘラヘラと笑いながら、二人に向けて親指を立ててサムズアップする。

 

もちろん、それは完全にはやてのデタラメであり、本当は彼女自身が二人にとんでもない衣装を着せて楽しみたいだけである事が丸わかりだが…

 

「ふざけんな! これならまだペアルック(matching)の方がマシだろうが!!」

 

政宗のツッコミにティアナやキャロは「ごもっとも…」と言わんばかりに苦笑いを浮かべた。

 

「は、はやて部隊長。 政宗さんの言う通り、これは見合いというよりはもはや結婚式の衣装じゃないんですか?」

 

ティアナがそう指摘すると、はやては「なにいってるんだ?」と言わんばかりに答え出す。

 

「何言うてんねんなティアナ。こうしておけば、もし相手から『本当に真剣に愛し合っているのか?』とか聞かれた時に、『すぐにでも結婚する気でいます』って自然な返事を返す事ができるやないか」

 

「いや、それメチャクチャ不自然だと思いますよ…」

 

ティアナが冷や汗を浮かべながらツッコんだ。

 

「う~ん…はやてちゃん。やっぱりこれはちょっとやりすぎじゃないかな? 普通の正装でいいと思うんだけど」

 

当のなのはは、衣装自体は満更でもない様子を見せながらも、はやてに対して苦笑を浮かべながら物申した。

すると、政宗もはやてに懇願するように叫び出す。

 

「頼むからはやて。なのはの言う通り、普通の衣装にしてくれ! こんな姿を小十郎や成実にでも見つかっちまったら、色々と大変な事になるぞ!」

 

「その通りです…政宗様」

 

「ほら…小十郎さんだってこう言って――――えっ!?」

 

「「「「「へっ!?」」」」」

 

不意に聞こえてきた言葉の主に気づかないまま話していたスバルが、一瞬硬直する。

なのはやはやて、そして政宗も不意に挟んできた声の主の方に目をやり、そして思わずギョッとなった。

 

「政宗様…一体これはどういう事なのですか…ご説明願いましょうか…?」

 

「ごぶぅ!? 痛ってーー!!」

 

そこに立っていたのは、襟首を掴んでいた成実を床に落とし、ズズズ…と黒いオーラを放った小十郎。

その姿に、政宗だけでなくなのはやはやて、スバル達も思わず戦慄し、数歩程後ろに退いてしまう。

 

「いや…あの小十郎さん! これは違うの…!」

 

「そ、そう! これはあくまでお芝居…」

 

慌てて弁明しようとするなのはとはやてだったが、それを遮るように小十郎が呟きはじめる。

 

「政宗様…この片倉小十郎…政宗様が幼少期 まだ“梵天丸”の名で呼ばれていた頃から常に貴方にお仕えし続け…私用でも、戦場でも常に貴方の為にこの身を捧げ、貴方の為にこの身体を盾にして、お守りし続けてきました……それなのに…それなのに…」

 

怨嗟の呪文の様に呟くように延々と語る小十郎に、これはマズいと内心焦りだす政宗やなのは、はやてにフォワードチームの4人…

だが、次の瞬間、小十郎のとった行動は、政宗達の予想の斜め上をいくものだった…

 

 

サーーーーーーーーッ

 

 

なんと、小十郎は突然滝のように涙を流し出した。

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

まさかの小十郎の号泣に驚く一同。

 

「あ…あの小十郎さん!?一体どうしたんですか!?」

 

中でも小十郎とは何かと関わりの深いキャロは、彼らしからぬ過ぎる行動に半ば混乱してしまう。

 

「この小十郎に相談も無しに、高町と婚礼を開こうだなんて……そりゃあんまりといえばあんまりだああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

突然、床に膝を付き、拳で地面を何度も打ちながら、悔しさを顕に号泣し始める小十郎。

 

 

「「「「「ええええぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーー!!?」」」」」

 

 

なのは達は勿論の事、政宗でさえも見たことのない、小十郎のキャラ崩壊な姿に全員、思わず呆けた叫びを上げるばかりだった。

 

「政宗様ぁぁぁぁ!! まさか貴方に、高町の様な、出会ってまだ半年も経たぬ若い女子(おなご)を“身請け”しようだなんて俗な下心があっただなんてえぇぇぇぇぇぇぇ!! この小十郎! 失望の涙で目が見えませんーーーーーーーーーーー!!」

 

「おいぃぃぃぃぃ!? なんかとんでもない方向へ勘違いしてんぞコイツぅぅぅぅ!!」

 

天を仰ぎながら、頭を抱えて絶叫する小十郎に、政宗はどう対処していいかわからず混乱した様子で叫んだ。

すると、小十郎は今にもなのはに斬りかからんといわんばかりに、文字通りの血眼になりながら、ズンズンと詰め寄った。

 

「高町ぃぃぃッ!! 一体、何時の間に政宗様に言い寄ったんだ!? 婚礼の儀はいつ上げる気だぁ!? お前はその年にして、なかなか清楚で賢明な女だと一目置いていたのに、蓋を開けてみればそんな尻の軽い女だったとはなぁぁぁぁ!!?」

 

「え、えええええぇぇぇっ!? なんか私の事も変な風に勘違いされてるぅぅ!!?」

 

「小十郎!まずは俺達の話を聞けよ!!」

 

っとそこへ、さらに場の空気を混乱させる人物…成実が割り込むように詰め寄ってきた。

 

「兄ちゃん! ひでぇじゃねぇかよ! 俺に黙って、そこのなのはって姉ちゃんと“レンコン”食おうとしていたなんて! 俺にも食わしてくれよぉ!」

 

「“レンコン”じゃなくて“婚礼”だ! バカ!! っていうか“婚礼”でもねぇよ!! いいからお前は引っ込んでろ! 話が余計にこじれる!!」

 

成実(卑しん坊馬鹿)を脇に跳ね除ける政宗に、小十郎が涙と鼻水で汚れた顔をズイと近づけながら詰め寄ってくる。

 

「政宗様! 奥州筆頭ともあろう貴方がそんな不埒な結婚など、この小十郎が絶対に許しませぬぞぞおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「だから誤解だ!! つぅか、顔拭け!!」

 

「“ゴカイ”!? 兄ちゃん! レンコンだけじゃなくて“貝”まで食おうとしてたのかよ!?」

 

「だからお前は出しゃばってくんなっつってんだろうが!!!」

 

政宗をしつこく詰め寄る小十郎に、成実の根本的に方向性の違う食い物ボケまで挟まる事でこの場は完全に混沌の極みとなってしまった。

混乱極まる伊達軍の面々のやり取りに、なのはも、はやてもFW(フォワード)の4人も完全に介入するタイミングを失ってしまう。

 

彼らの姿からは、もはや『奥州の雄』としての威厳や風格は完全に失われていた。

 

「政宗様! もし本気でこの場で婚礼を考えているのであるならこの小十郎! かくなる上は腹を斬ってでも貴方の軽薄さをお諌めします!!」

 

そう叫びだすと、唐突に政宗の前で正座をする小十郎。

 

「お…おい!ちょっと待て!」

 

「待ちません! それが“竜の右目”としての小十郎最後の務めです!」

 

「いや、そうじゃなくて!…お前それ刀じゃなくて“大根”だろうが!?」

 

そう叫んで指摘する政宗が指さした先には、何故か刀の代わりに握られたのはどこからともなく取り出された大根…

もちろん、屋上の菜園で採れた野菜の一つである。

最早、意味不明な行動をとりだした小十郎に、これはいよいよマズいとFW4人(特にキャロ)も心配になる。

 

「小十郎さん! 僕達がちゃんと説明しますから、とりあえず気を確かにしてください!!」

 

エリオが必死に宥めるが、小十郎はそれが心外とでも言わんばかりに憤然となる。

 

「失礼な! 俺は正気だ!! 俺の言動のどこがおかしいというんだ!?」

 

これまたどこから取り出したのか、きゅうりをちょんまげのように頭の上に乗せながら自信満々に話す小十郎に、FWは全員ドン引きする。

 

「いや、それぇぇぇ! それ証拠だってぇぇぇ!!」

 

ティアナが声を張り上げてシャウトする。

この辺りから、場はますます混乱を極めていくようになる。

 

「とにかく止めるなお前達! 政宗様が…よりによって男としての最もあってはならぬ『ヤ◯チン』などに身を貶されるのを黙ってみているくらいなら、この片倉小十郎 例えこの場で腹を切ってでも、政宗様に目を覚まして頂く所存!!」

 

「こ、小十郎さん! ここロビーですから、そんな大声で『ヤ◯チン』なんて言っちゃダメですよぉ!!」

 

「…いや…キャロも思いっきり言っちゃってるし…」

 

ロビーいっぱいに響かんばかりのボリュームで叫ぶキャロに、スバルが失笑しながらツッコミを入れた。

っとそこへ、またしても余計な茶々入れを加えてくるのが、食べる事以外何も考えていないコイツ―――

 

「えっ!? 『ヤリ◯ン』って何? ヤリイカの仲間!? ちょうど兄貴も大根持ってるし煮付けにしようぜ!」

 

「いやいや成実君。 『ヤリ◯ン』とヤリイカは全然ちゃうってば。…まぁ、確かに『チン』ってイカみたいな臭いがするって言う話らしいけど…」

 

「はやてちゃん!! こんな時に下ネタなんか言わないで!!」

 

涼しい顔をしながらとんでもない事を言い出すはやてに、なのはが顔を真っ赤にしながらツッコんだ。

一方、ティアナは尚も大根を脇腹に充てがおうとする小十郎を制止しようと奮闘する。

 

「小十郎さん! とにかく一回落ち着きましょうよ! そもそも大根じゃ切腹できませんし!」

 

「じゃあ何なら斬れるんだ?! 人参か!? ごぼうか!? スイカか!?」

 

「だから野菜なんかで腹が斬れないって言ってるんですよ! ていうか最後に至っては円形のものになってるし!」

 

ラッシュで仕掛けてくる小十郎の小ボケに、ティアナが必死にツッコんでいく。

 

「まあまあ小十郎さん。ほら、チョコレートでも食べて落ち着き♪」

 

そう言いながら、はやては懐から、ミッドチルダではメジャーな『レイワ・ミルクチョコレート』という銘柄の板チョコを差し出してくる。

 

「おい、はやて。ガキじゃねぇんだから、そんなもんに釣られる奴がいるわけ―――

 

政宗のその指摘が終わらない内に―――

 

 

「…ウガアアアアアアアアアァァァァァ!! ソイツハ、オヤツ! オレノ、オヤツッ!!」

 

「って言ってるそばから、あっさり釣られてんじゃねぇよ! お前は!!」

 

成実が、空腹時に珍しい食べ物を見る事で起こす禁断症状『先祖返り』の発作を起こしてしまい、小十郎達を押しのけて、はやてに飛びかかろうとした。

 

「うわわわっ!? 成実ってば! はやて部隊長を襲おうとしないで!!」

 

「こんな時に、余計にややこしくなるような事しないでよ!!」

 

「ガルルルルルルルルルルッ!! オレハ、クウ! チョコレート、クウ!!」

 

スバルとティアナが慌てて後ろから成実を羽交い締めして取り押さえるが、成実は白目を剥いたまま、獣の様な叫び声を上げながら、振り払おうと暴れまわる。

すると、それを見たはやては面白がり…

 

「はーい。成実くーん。取ってきて」

 

そう言って、チョコレートを遠くに投げてみせた。

 

「ウガアアアアアアアァァァァァッ!! チョコレートオオオォォォォォォォォ!!」

 

っとハッハッと大口を開けて舌を出しながら、チョコレートを追いかけて駆け出していく成実の姿は最早野犬以外の何者でもなかった。

その様子を見た政宗は、恥ずかしいやら、情けないやらで、柄にもなく顔を真っ赤にしながら、片手を顔に充てがう仕草をした。

 

「政宗のお心を改める為だ! ルシエ! モンディアル! 介錯を頼む!!」

 

「ダメです小十郎さん! 兄上が言ってましたが、武士は切腹する際には白装束を―――」

 

「そういう問題じゃないでしょエリオ君! っていうか、そもそも大根で切腹は出来ないってば!!」

 

 

「ウメエエエエエェェェ!! チョコレート、モットヨコセェェェェェェ!」

 

「うわわっ! 成実ってば!! チョコの包み紙は食べ物じゃないよ!!」

 

「野良犬か! アンタは!?」

 

 

一方ではしつこく大根で腹を斬ろうとする小十郎と必死に制止しようとするエリオとキャロ…もう一方でははやての投げたチョコを包み紙諸共かぶりつく成実にどんびきするスバルとティアナ…

傍から見れば『カオス』なロビーの窮状に、気がつけば、その唯ならぬ喧騒を聞いた六課の一般スタッフ達が各所から「何事か!?」と集まり始めていた。

もう収集が付かなくなった現場に、遂に政宗の堪忍袋が遂に切れ……

 

 

 

「お前らいいかげん、少し頭Cool Downしろ!! この野菜バカと悪食バカ共おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

怒り心頭と言った様子で怒声を上げ、混乱した現場を鎮めるのだった。

 

ちなみにそれを聞いたなのはが「あっ…私の台詞ちょっとアレンジしたみたい…」とメタ的な事を呟きながら照れたのはここだけの話である…

 

 

 

 

その後、政宗となのはが必死に事情を説明する事によって、小十郎の誤解やアホ化する程のキャラ崩壊は治まり、成実の先祖返りも、結局最終的にはやてが持っていた分だけでは足りず、ロビーの自販機から追加で購入した分を加えて合計35枚の板チョコを食べさせる事でようやく落ち着き(尤も、その前に成実は自販機ごと喰らおうと襲いかかろうとする一幕があったが)、混乱した事態は何とか終息した。

 

「…そ、そうだったのですか…。ならば、初めからそう言ってくださったらよかったのに…」

 

「だから俺達が説明しようとしたのに、お前が勝手に勘違いして暴走したんだろうが」

 

我に返った事で、流石にさっきの暴走が些かやり過ぎた事を自覚してか、バツが悪そうに言葉を詰まらせる小十郎に、政宗が呆れながら指摘する。

 

「それじゃあ、小十郎さん達もこの作戦協力してくれるん?」

 

はやてが尋ねるが小十郎の表情は未だ半信半疑な様子だった。

誤解は解けたとはいえ、『なのはと政宗を“恋人”に仕立てる』点に関しては、小十郎は素直に首を縦に振りかねるようだ。

 

「しかしだな……幾ら芝居とはいえ、政宗様と高町を恋人にする意図がわからん」

 

釈然としない様子の小十郎であったが、はやても先程政宗に仕掛けた時の様に理不尽な『懲戒処分』をチラつかせながら、無理矢理懐柔する手立てを使おうとはしなかった。

 

万一に、ここで『屋上菜園没収』なんて強権を発動しようものなら、怒りに狂った小十郎が再び暴走して面倒な事になるであろう事は、この間の菜園消去屋(ファームイレイザー)事件や、つい今しがたの騒動を通して嫌という程理解していた。

 

「確かに、その高町の見合い相手だという“コアタイル”とかいう奴がいけ好かない事も、この見合いは蹴るべきな事も理解できる。しかし、その為にわざわざ政宗様を“伴侶”に仕立て上げようとする結論に至る理由が理解しかねると言っているのだ」

 

「せやから、その説明もさっき散々したやろ? 見合いの席に相手の恋人がおったら、真偽を問い詰められる余地かてない。まさにナイスな策っっちゅうわけや」

 

「……日ノ本じゃ、恋人を同伴させる非常識なお見合いなんかないぞ」

 

「いや、普通お見合いっていうはどこの世界でもそうですって…」

 

ティアナが脇から口を挟むように指摘した

すると、なのはが畳み掛けるように小十郎に語り始めた。

 

「まぁ、要するに…政宗さんの役目は、今回のお見合いを上手く潰す方向に運んでいける様に色々と横からサポートしながら、私を“牽引”していく役目。それ以上でもそれ以下もないから安心してください。ね?」

 

「う……うむ…そ、そうなのか…? そういうことなら納得……出来るような、出来ないような……?」

 

小十郎はまだ不承不承ながらも、少し受け入れる気持ちに傾いた様子だった。

一方、成実は……

 

「えっ!? “けんいん”!? お見合い潰すのに、なんで兄ちゃんがそこのなのはって女の、しょんべんなんか採る必要があるわけ? 畑の肥やしにでもするの?」

 

純粋な眼を向けたまま声高らかにそう尋ねるが、言われたなのは達は成実が一瞬何の話をしているのかわからず、戸惑ってしまい、その言葉を意図に気がつくのに数秒の間を要した。

 

「それは“検尿(けんにょう)”でしょうが大バカ! なのはさんが言ってるのは“牽引(けんいん)”!!」

 

とんでもない聞き間違いに、ティアナが赤面しながらツッコんだ。

見るとなのはも顔を真っ赤にしながら、顔を逸していた。

一方の成実は、なんでみんな恥ずかしそうな視線を投げかけてくるのかわからず、キョトンとしていた。

どうやらウケ狙いで下ネタをかましたつもりではなく、本当にわかっていない様子だった。

 

 

すると、見かねた政宗は頭を乱雑に掻きながら、なのはに耳打ちで話しかける。

 

 

「なのは。もう成実(このバカ)には、丁寧に説明してやるだけ時間の無駄だ。こうなったら、コイツを一秒で堕とす“Back hand”を使え」

 

「えっ!? Back hand(奥の手)って…?」

 

意味深なワードを聞いて戸惑うなのはであったが、それから政宗が暫く耳元で話す言葉を聞き、「えっ!? そ、それだけでいいの…?」っと困惑していたが、やがて頷き、成実の方を向いた。

 

「えっと……成実君って“お寿司”が大好きなんだよね? だったら今回の作戦に協力してくれたら、成実君が食べたいだけ“お寿司”ご馳走してあげるよ?」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 

いきなり子供だましも甚だしい提案をし始めたなのはに、FWの4人も思わず呆気にとられた。

 

「な、なのはさん……流石にそんな子供だましみたいな方法で…」

 

「仮にも彼は“戦国武将”なんですから、そこまで見くびった様な真似は……」

 

流石に成実を軽視し過ぎているかのような応対に、スバルとティアナは思わず一言物申す形でフォローを入れ、エリオとキャロは心配そうに成実を見つめる。

 

「……おい」

 

すると、当の成実はキッとなのはを睨みつけ―――

 

 

「何でも協力させていただきます!! “なのは姉ちゃん”ッ!!」

 

 

そう叫びながら、なのはの前に片膝を付いて、服従を示すポージングをとった。

 

 

ずしゃぁぁぁぁぁ!!

 

 

まさに政宗が言ったとおり、ものの“一秒”で堕ちた成実のあまりのあっけなさに政宗となのは、小十郎以外の一同がこけた。

 

 

「そ…それでいいの…? 成実…」

 

「アンタって…ホントおめでたいくらいバカね……」

 

 

床に這いつくばったスバルとティアナからツッコまれるが、当の成実本人は数ある好物の一つをご馳走してもらえればそれでいいと思っているのか、周囲からの呆れの視線など屁でもない様子であった…

 

 

「……Sorry なのは…俺、義理とはいえ、コイツが弟な事が恥ずかしく思えてきた…」

 

「…ゆ、愉快で楽しい子じゃない。あははは…」

 

そんななのはの気を使った言葉が余計に虚しく聞こえる政宗だった。

 

 

 

 

機動六課隊舎にて、お見合い打開の為の政宗となのはの『偽装恋人作戦』の最後の障壁であった小十郎が(渋々ながら)ようやく納得していた頃…

 

ミッドチルダ・首都クラナガンから北に500km程の場所に位置する街 プリンスロイヤル自治都市―――

 

ミッドチルダにおいて古来から続く由緒正しき貴族魔導師コアタイル一族によって代々に渡り統治されてきたこの街は、総人口約20万人の内、18万人近くが魔導師であり、ミッドチルダにおいても特に魔法が生活の大部分となっており、様々な行政サービスなどで魔導師が優遇されるなど統治者の掲げる思想をそのまま体現したような市政が敷かれている事から別名『魔導師の楽園』と皮肉を含めた名で呼ばれる街だった…

 

表向きにはミッドチルダの他の都市の例に漏れず、時空管理局の統治管轄下とされているが、実際には現在でも変わらずコアタイル家が統治権の殆どを把握しており、行政、公的機関を完全に支配下においている他に、独自に発案した法律までも存在するなど、世間では「九割区分独立国家」とされていた。

そんなほぼ独立国家に近い“魔導師の楽園”のランドマークが、街の中心部に建つ巨大な宮殿“ポラリスパレス”であった。

 

外見は台形型の基部となる“本丸”と7本の尖塔によって構成された荘厳な雰囲気の巨大な建造物で、中央に聳える最大の塔『“ドゥーベ”の塔』を囲むように並び立つ残りの6本の塔“メラク”、“フェクダ”、“メグレズ”、“アリオト”、“ミザール”、“アルカイド”と名前が付けられ、それぞれの塔を結ぶ回廊フロアは穏やかかつ高貴な雰囲気の中庭となっているまさに豪華絢爛な造りであった。

この宮殿の本丸の一部区画は、管理局に提供されており『ミッドチルダ北部第七陸士訓練校』として運営されてもいたが、その区画の丁度真上にあたる“フェクダ”の塔は、塔全体が第七陸士訓練校の中でも優等生の為に用意された教育・訓練施設となっており、その最上階に、校内の最高権力者にあたる人物の為の校長室が存在した。

 

その校長室の一角に設けられた応接セットに、向かい合って座る2人の男達の姿があった。

 

「なるほど……それで…来年、貴方の息子を、是非に我が第七陸士訓練校に入校させてもらいたいと…?」

 

上座の席に腰掛けながら、鼻持ちならない言い回しでそう話していたのは一人の若い男性だった。

年は20代半ば程、男ながら金色の髪を長く伸ばしながら、それでいて違和感のない端麗な容姿を持っていたものの、銀色の高級スーツに豪華な装飾品をまとい、自分を誇示するかのように派手に着飾ったその格好が些か、魅力を減点させているように見える。

 

「えぇ…まぁ…そういう事なのでございます…」

 

対する下座には、黒髪をポマードでしっかりと塗り固めて七三分けにしてメガネをかけた腰の低そうな中年が、小さくする様に座り、こめかみからとめどなく流れる冷や汗を度々ハンカチで拭う仕草をしながら、会釈する。

 

「…ヘラルド社長。貴方のお子さんを思うその気持ち。この“セブン・コアタイル”…とても感銘を受けたよ。けれども…僕も地上本部 統合事務次官…そしてこの第七陸士訓練校の理事長 ザイン・コアタイル少将の息子とはいえ、“名目上”はこの学校の主任教官に過ぎないんだよ? 生徒の“入学”を手引きするにも、それ相応に骨を折る事になるんだ。だからここで、おいそれと貴方と口約束を交わしても、果たして後に本当に言葉通りに果たすことができるかどうか…」

 

そう芝居をかかった様な動きを交えながら、意味深に言葉を焦らしつつ、「ヘラルド社長」と呼ばれた下座に座る男へチラリと視線を投げかける金髪の男……この男こそ、時空管理局・地上本部のナンバー2である統合事務次官 ザイン・コアタイルの息子にして、名門貴族魔導師『コアタイル家』の次期当主、そして此度のなのはの見合い相手である “セブン・コアタイル”准陸佐であった。

 

役職はこの第七陸士訓練校の主任教官…にも関わらず、本来ならば校内における最高権威者が使用する筈の校長室を、我が者顔で使っているこの様子から見てもわかるとおり、セブンは、この学校の理事長も務める父 ザインの権力を傘に来て、訓練校の校長を含む全教官をコアタイル家に従属する魔法至上主義派の局員 通称“コアタイル派”の面子で固め、実質的に校長以上の権力を得て、学校全体を支配する立場にあった。

故に教職員や生徒の選別も全て、彼の意のままに操れるのだ。

そんな彼が、敢えて自分の権威を半信半疑に評したのも、当然の事ながら謙遜からではない…

 

それを理解していたヘラルドも、彼の言葉と視線に促される様に慌てて、脇に置いていた手荷物のひとつだった紙袋から丁寧に梱包された菓子折りの箱を取り出してきた。

 

「とんでもない! 貴方様の権威はお父上に次ぐ崇高なものであると誰もが信じておられます。…こちらは些少ではございますが、セブン様の大好物の例の“高級クッキー”でございます。どうぞお納め下さい」

 

テーブルに置かれ、差し出された菓子折りの箱を見て、セブンは満足げな笑みを浮かべる。

 

「ほぉ、気が利くじゃないか。流石は我がコアタイル家御用達の製菓会社『ウィンカー社』社長。こうした気配りは抜かりないみたいだな」

 

話しながら、セブンは菓子折りの梱包を乱雑に開き、蓋を開けて、中に詰まった小分けにされた高級クッキー…を迷う事なく梱包紙と一緒に応接セットの脇に用意されたくずかごに投げ捨ててしまうと、その下の箱の底一面に黄金色に輝く金貨がぎっしりと詰められているのを確認した。

 

「……10万ワイズ金貨が……20枚か…?」

 

中身を確認したセブンは、少々期待外れと言わんばかりに失望した様な表情を浮かべながらボヤく。

 

このミッドチルダをはじめ、時空管理局の多くの管理世界内で広く流通している通貨『ワイズ』は、大きく部類して3種類に分けられている。

1つは『1』『5』『10』『100』『500』の5種類に分けられた硬貨―――

2つ目は『1000』『5000』『10000』の3種類に分けられた紙幣―――

そして3つ目があまり一般には出回らないが、固定資産としても活用される『100000』『1000000』に分けられた金貨である―――

 

セブンが受け取った菓子折り箱の中に詰まっていたのは外縁が金で、内側がプラチナでできた『100000』ワイズ金貨であった。

 

「あの……セブン様…? お気に召しませんでしたか?」

 

セブンの表情が曇っている事に気づいたヘラルドが恐る恐る尋ねると、セブンはわざとらしくため息をつきながら、頭を振った。

 

「ヘラルド社長…僕は確かに貴方の会社の“クッキー”は大好物だよ。しかし…“高級”と銘打っているのだから、もう少し“重い”ものだと期待していたのだけど…ちょっと貴方を買いかぶり過ぎていたかなぁ?」

 

「………!? も、申し訳ございません! 私とした事が、配慮が足りず…! の、後ほどもう一箱“同じ品”を送らせて頂きますので、どうぞご容赦のほどを!」

 

セブンの言葉の意図を察したヘラルドは必死で取り繕いながら弁解すると、セブンは小さくため息をつきながら、菓子折りをテーブルの上に置いた。

 

「……まぁ、いいとも。僕は“広い心”の持ち主だからね。それじゃあ、あとの事は任せておきたまえ」

 

「な、何卒よろしくお願い致します……では…失礼します……」

 

ヘラルドはヘコヘコと何度も頭を下げてから、手荷物を引っさげて、校長室を出ていった。

ヘラルドが部屋から立ち去ったのを確認したセブンは、残された菓子折りの箱を改めて一瞥しながら不機嫌そうに舌打ちをした。

 

「チィッ! 気の回らない凡人風情め…! この俺に図々しく頼み事をしておきながら、これっぽっちの“気持ち”しか示せないなんてな……これだから下級国民共の誠意はたかがしれているんだ!」

 

セブンがブツクサと愚痴を呟いていると、再び校長室のドアが開かれた。

 

「失礼致しますよ。セブン“坊ちゃん”。『ウィンカー社』のヘラルド社長は一体何用だったのですか?」

 

新たに部屋に入ってきたのは大柄な体格に、灰色に近い薄い茶髪を刈り上げた髪型に無精髭を生やした熊のような雰囲気の強面の男だった。

 

彼の名はオサム・リマック―――

時空管理局陸上特殊作戦群『星杖十字団』R7支部隊の部隊長を務める男だった。階級は三等陸佐。

 

「あぁ。いつもの事だよオサム。自分の息子を是非我が第七陸士訓練校に入校できるように俺の力を借りたいと、縋ってきたのさ」

 

脇に近づいてきたオサムに目をくれないまま、セブンは懐から革袋を2つ取り出すと、その内のひとつに菓子折り箱から取り出した10万ワイズ金貨を入れ始めた。

 

「ほぉ…いつもながら、第七陸士訓練校の人気は、このミッドにおける他の訓練校と比べても抜きん出て凄いものですな。して…ヤツの頼みを聞き入れるので?」

 

オサムが菓子折りに詰まった金貨に目をやりながら尋ねる。

 

「バカ言うな。誰があんな奴の息子など、ウチの訓練校に入れるものか」

 

「はっ?」

 

「当たり前だろう? この俺の手を借りたいというのであれば、相応の“誠意”を示すのは当然の話だ。 それを…こんな端金(はしたかね)を詰めた小包をひとつかふたつだけで済ませようとは、甚だ図々しい。そうだとは思わないか?」

 

「まぁ、確かにそれはそうですが。普通こういう時は最低でも100万ワイズ金貨を50枚程詰めてこそ、はじめて“感謝”と呼べるものを…」

 

傲慢極まるセブンの言葉に少しも疑う事なく頷いて肯定しながらも、すぐに懸念を口にするオサム。

 

「とは申せ…数はどうあれ“誠意”をお受け取りにはなられたのでしょう? でしたら、流石に約束を果たさなければ、きっとヘラルドも黙っていない筈ですぞ?」

 

「なぁに。「一応推薦はしたが、理事長の鶴の一言で反故にされた」…とでも言えば、アイツも否が応でも受け入れざるを得まい。それに奴の息子には代わりにそれ相応な訓練校の推薦でも廻してやるさ。下級国民に相応しい底辺校にでもな…」

 

ふたつめの革袋に金貨を入れながら、愉快げな笑みを零すセブンに、オサムは同調する様に笑った。

 

「流石は坊ちゃん。そうやってコアタイル家に追従する庶家から、第七陸士訓練校への裏口入学やご自身の顔が効く部隊・企業への不正な進学や配属、就職の為の斡旋をして、私腹を肥やす…まさに歴史ある貴族魔導師の次期当主である貴方だけに許された悪どい小遣い稼ぎですな」

 

「おい、オサム。人聞きの悪い事を言うなよ。これは“人材斡旋・職業紹介”という名の立派なビジネスなんだ。仕事や進学先を紹介して、相手から感謝の“気持ち”を受け取る事の何が悪いっていうんだ?」

 

「いえ。決して咎め立てしているわけではありません。ですが、世間にはそんな坊ちゃんの“ビジネス”でさえも法に触れる行為だと騒ぎ立てする奴らも少なくない以上、そうしたトラブルに備えて、私のような存在もまた必要不可欠であると…そう思って頂ければ…」

 

手を揉むような仕草をしながら、諂笑をかましてくるオサムに対して、セブンは意地の悪い笑みで応える。

 

「フン。欲張りめ…つべこべ言っているが、俺がこうして稼いでいるおかげでお前らも“お零れ”を頂戴している事を忘れるんじゃないぞ?」

 

セブンは話しながら、大小それぞれ金貨を移し終わった革袋のうち、小さい方をオサムに手渡した。

 

「10万ワイズ金貨が5枚…合わせて50万ワイズだ…俺の取り分が少ない分、お前も今日はこれで我慢してくれよ?」

 

「とんでもない。セブン坊ちゃんのご配慮にはこのオサム。いつもながら感服しております。どうぞ、これからもご贔屓に」

 

年齢は勿論のこと、階級の上でも自分よりも下な筈の准陸佐であるセブンに対して、上官どころか、まるで君主に接する様に平伏し、何度も頭を下げるオサム。

その異様な光景は、彼らコアタイル派が地上本部…ひいては時空管理局の中でも如何に歪んだ思想や常識に毒されているかを物語っているようだった。

 

「そういえば、坊ちゃん。聞きましたよ」

 

セブンから受け取った革袋を懐に収めながらオサムが言った。

 

「ん? 何がだ?」

 

「お見合いですよ。ザイン閣下が前々からお進めになられていた例の本局の実験部隊“機動六課”との見合いの話…正式に決まったそうですね?」

 

「あぁ。その話な…あの非魔力風船オヤジのレジアスにバレると色々と邪魔されそうだから、今までは水面下でコソコソと手を回しながら事を運んでいたのだが…そのレジアスが持病の発作とかでしばらく療養する事になったらしいから、今のうちに話を進めようと、トントン拍子に決まったというわけさ」

 

セブンはさも当然の事のように得意げな表情を浮かべた。

 

「それは実に幸運! それもお相手は、今やミッドチルダでも国民的英雄である、かの“エース・オブ・エース”! 高町なのは一等空尉とは! まさに坊ちゃんに相応しい人材ですな!」

 

「当然だろうオサム。なんたって、このコアタイル家次期当主である俺の見合い相手という名の栄光を与えられた幸運な女だぞ? それ相応の容姿、知性、経歴、魔導師としての技能(スキル)があればこその人選だ。強いて言うなら、ミッドの貴族魔導師の出身でなく、『チキュウ』とかいう管理外世界の辺境(ど田舎)の庶民の家出身という点だけが残念だが…まぁ、この際その点に関しては俺の“広い心”で大目に見てやるつもりさ」

 

この場になのはがいれば憤慨していたであろう侮辱的な暴言を平然と吐く。

このセブンという男…見合い相手であるなのはに対する愛情など微塵も感じていない様子であった。

そればかりか、『ミッドチルダで一番高貴な貴族魔導師の御曹司である自分には、本局最優クラスの魔導師であるなのはがふさわしい』という虚栄心や選民意識だけで彼女を求め、その内面にはこれっぽっちも興味を抱いていない。

彼にとって、恋人…ひいては妻となるべき女性でさえも自らの親や家の七光りによる権力を示すためのトロフィーのような扱いにしか考えていないのだ。

 

「しかし…ザイン閣下としては、坊ちゃんの嫁探しというよりは、機動六課そのものを我らコアタイル派に組み入れる事が目的のご様子みたいですが…?」

 

「それは俺も聞いている。しかし、本当の目的はそれだけじゃない。本局の三提督からも一目置かれた部隊と親戚になる事で、コアタイル家は一気に本局との距離も近づきやすくなる」

 

オサムが尋ねるが、セブンはそれさえも「何がおかしい」と言わんばかりに鼻で笑いながらあっさり肯定する。

息子も息子であれば、その家も家である…

 

「機動六課を架け橋に三提督やその他の重鎮方、ひいては聖王教会とのパイプを繋ぐことができれば、いずれ本局の実権もコアタイルの一族が掌握する…なんて事も夢じゃなくなるのだぞ? だからこそ“パパ”は―――」

 

「えっ?“パパ”…?」

 

饒舌に語っていたセブンの口から出た奇妙なワードに、オサムは思わず片眉を顰めた。

 

「あっ…! んん゛ッ! ち…“父上”は、敢えて貴族魔導師の出身者のいない民間部隊である筈の『機動六課』から見合い相手として選定したわけだ」

 

慌てて咳払いをして誤魔化しながらも、セブンは話を続ける。

 

「勿論…最終的な人選は俺が選んだのだがな。高町空尉の他には、あと2人…お前も知っているだろうが、“フェイト・T・ハラオウン”執務官…そして“八神はやて”部隊長の2人が候補にあったが…その2人に関しては確かに名声や実力、人柄、容姿こそ高町空尉にも劣っていなかった。それに、ハラオウン執務官は美貌、八神二佐は権力に関して言えば、高町空尉以上のものではあったが…2人共それぞれ“経歴”に些か問題があったからな…お前も知っているだろう?“P(プレシア)T(テスタロッサ)事件”や“闇の書事件”は…」

 

「えぇ。勿論」

 

「局の歴史アーカイブでも必ず名前が上がる程の2つの大事件にそれぞれ重要参考人として絡んでいた“犯罪歴”は流石に見過ごせないからな。…やはり、清廉潔白な高町空尉こそが俺の伴侶に相応しい女であると思ったわけさ」

 

「なるほど。しかし…“エース・オブ・エース”もラッキーな女ですな。容姿に優れ、類まれなる魔導師としての才覚を有していただけで、管理外世界の庶民出身の小娘が坊っちゃん程の御方と見合いできるのですから」

 

「あぁ、文字通りの“玉の輿”だな。俺はいずれミッドで一番の名門貴族の当主となる男だぞ? そんな俺とは、本来なら箸にも棒にもかからない筈の身分の出自でありながらも、妻にしてもらえるチャンスをやったのだから、高町空尉には大いに感謝してもらわないとな。クククク…5日後に彼女がどんな顔をして見合いの席にやってくるのか楽しみだ」

 

セブンは顔の下で手を組みながら、不遜な笑みを零す。

もしここになのはがいれば、感謝どころか、怒りに震えるような腐りきった会話が平然と繰り広げられていた。

地上本部においてナンバー2であり、ミッドチルダ最大の名門貴族の御曹司という自らの地位を鼻にかけ、この世界に住む者は誰であろうとも自分を崇め、称賛する事が当然…そんな傲慢極まりない思想が透けて見えるようだった。

 

「さてと……では今夜は前祝いにコイツで派手に遊びに行くとするか」

 

セブンはそう言うと、自分の取り分である10万ワイズ金貨15枚の入った革袋を抱えながら、立ち上がった。

 

「坊っちゃん。今夜はどちらに?」

 

「そうだな。いつものカジノでクラップゲーム…っといきたいが、残念ながらこの程度の端金では軍資金にもならないからな。久々に贔屓のキャバクラで、お気に入りのシェリー樽熟成のウイスキーを煽りながら、綺麗どころを呼んで、パァっとやるくらいで我慢するか」

 

「いいんですか? お見合いが近いというのに女遊びなんて…少々軽薄過ぎじゃないですか?」

 

オサムが尋ねるが、セブンはさも当然であるかの様に返す。

 

「だからこそだろうが。見合いの前に“女を抱く”予習をしておいて困るもんでもあるまい。なんたってあの“エース・オブ・エース”だ…いつでもあの身体を存分に“楽しむ”事になってもいいように入念に気合を入れておかないと…」

 

「…やれやれ。セブン坊っちゃんも本当にお好きなようで…」

 

「お前も来るか?“護衛”として…」

 

「勿論。お供致します」

 

愉悦に満ちた笑みを浮かべ合いながら、セブンはオサムを従者の様に伴いつつ、部屋を出ていく。

 

なのは達が懸念していた見合い相手は、その懸念していたものよりも、遥かに問題に満ちた人物であった――――

 

 

 

夜も更けてきた頃―――

なのはは、一人隊舎前の波止場に腰掛けていた。

 

遠くに見えるミッドチルダの夜景を眺めていると、大都会の真ん中に地上本部の超高層ビルが見える。

 

「……政宗さんと…恋人…か」

 

そう呟くなのはの脳裏に浮かんでいたのは、政宗の不敵な笑みだった…

 

伊達政宗…今まで自分が知り合ってきた男性とは一味も二味も違う男性―――

傲岸不遜かつ大胆不敵な絵に描いたような『俺様系』の性格で、普通に考えたらなのはの性格には、あまりにミスマッチな人物ともいえる。

 

しかし、今日のはやてから偽装恋人の案を告げられた時の露骨な動揺からわかるとおり、

 

最近のなのはは自分が完全に政宗に惹かれ、政宗を意識している事を、薄々実感していた…

でも一体何時…?

 

政宗達と初めて出会った時、ガジェットの新型に捕らわれた自分を助けてくれた時―――?

 

それとも、ホテル・アグスタで、親友のユーノと共に西軍の将 島左近に追い詰められた時に助けられた時―――?

 

はたまた、この間の六課が敵の潜伏侵略の計略にかけられた折に、自らも後藤又兵衛捕らえられた時に助けてくれた時―――?

 

 

「って。私ったら…政宗さんに助けてもらってばっかりじゃない…」

 

なのはは3度も政宗に助けられてばかりいる自分の不甲斐なさと、それ以上にずっと恋愛には無縁だった筈が、こんなあっさりと異性を意識するようになってしまった自分の“ちょろさ”の2つの意図を含めて、自嘲する様に苦笑を浮かべた。

 

その時だった…

 

「Why are you laughing? なのは」

 

「えっ!?…政宗さん!?」

 

聞こえた声になのはが慌てて振り向くと、そこには政宗が立っていた。

やや疲れた様な表情で笑いかけながら、なのはの方に近付き、彼女の真横に立つ。

 

「べ…別に!どうしたの?」

 

「Nothing much。さっきはいろいろ済まなかったな…うちの小十郎や成実が迷惑かけちまって…」

 

「う…ううん! 私達こそゴメンね。 はやてちゃんが勝手にあんなお話進めたせいで、政宗さんにこんな面倒な事押しつける事になっちゃって」

 

「That’s life…それにはやてとしては、こないだ俺が起こしたRunaway panicの落とし前のつもりで命令したんだろうな…」

 

「そ、そうかもね…にゃはは…」

 

半分諦めた様にボヤく政宗に、なのはは苦笑しながら応えた。

それからしばらくの間、2人は黙って夜のミッドの海を眺めていた。

 

「ねぇ…政宗さん」

 

「なんだ?」

 

不意になのはに呼ばれて、政宗は横目で彼女の方を見やる。

 

「どうしても嫌だったら…別にいいんだよ? お見合い……私一人で行くから大丈夫だよ」

 

「Ah?」

 

なのはは、やはり今回の見合いに政宗を巻き込む事に引け目を感じるのか、遠慮がちに彼の意見を求めた。

政宗が一緒にいてくれるのは心強いし、それに『偽装』とはいえ“恋人”になる事は嬉しいというのが今の自分の本音である。

 

それでも政宗の気持ちを聞かないで、彼に協力させるわけにはいかない…任感の強いなのはらしい考えであった。

 

「別に心配すんな。俺もとっくに腹は決めたぜ」

 

幸い、なのはの心配は杞憂であった…

 

「あれだけ前評判の良くねぇElite野郎との見合いなんだ。お前一人で行ったところでどうにか穏便に蹴れるわけがねぇ。正直、果たして俺がついていったところでTravelもなく解決できるかわからねぇしな」

 

「にゃはは…自分で言っちゃうんだ…」

 

なのはは冷や汗を浮かべながら小さく笑った。

すると、政宗は思い出したように話し出す。

 

「それにな…」

 

「それに?」

 

「実は言うと俺……これでもMatchmakingは何度も経験した事あるんだ」

 

「えっ!? そうなの!?」

 

なのはが目を丸くしながら尋ねると、政宗は頭を掻きながら少し照れくさそうに話しだす。

 

「奥州を統べていた頃には、よく小十郎から『筆頭たる者、所帯を持つという事も経験しておけ』とかなんとか言われてな…やれ名門の庄屋の娘だとか、あの地方領主の娘だとかいろんなとこから俺のFiancé候補を連れてこられてたんだ。 まぁその都度、最後は決まって『天下をとるまでは愛人なんていらねぇ』ってSignature phraseと共に逃げてたんだけどな…」

 

「へぇ~…政宗さんが…フフッ…」

 

政宗の意外な経験に、驚きながらも可笑しく思うなのは。

 

「Ah? なにが可笑しいんだ? 俺が見合いするのは変とでも言いたいのか?」

 

「あっ! ゴメンなさい。別に悪い意味じゃないんだよ」

 

ムッと睨みつける政宗に、なのはが慌てて謝罪を入れる。

それを聞いた政宗は再び表情を崩して、なのはを安心させるように語りかける。

 

「まぁなんにしてもだ……俺は見合いの蹴り方に関してだけはそれなりに熟知してるから、Followはしてやる。 だから…お前は何も心配すんな。Just leave it to me!」

 

そう言いながら政宗はなのはの頭に手を置き、そのまま頭を撫で始めた。

 

「ひゃうっ!?」

 

突然の事に驚いたなのはは、一瞬政宗を見つめるが、見る見る内に顔が真っ赤に染まっていく。

 

 

「ま…まさむねさ…………ご…ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

なぜか謝りながらなのはは、赤くなった顔を隠すようにして慌てて踵を返して、隊舎に向かって駆け出していった。

 

「?……Ha! あいつ。今日はよく顔色が変わりやがるな……」

 

一人残された政宗は、一瞬呆気にとられていたが、すぐに面白おかしそうに笑うのだった―――

 

 

 

「ま…ままま…政宗さんに頭を…頭を…なで…なでられ…!?」

 

その後、フェイトとの共用である分隊長用の自室に戻ったなのはは、数人分も寝られるほどのスペースのある巨大なベッドに倒れ込み、ゴロゴロと横に縦に転がりまわっていた。

 

「どうしよう…恥ずかしいのに…恥ずかしいのに…♡」

 

なのはは、仰向けに寝そべって部屋の天窓から見える二つの月を見つめる。

 

「恥ずかしいのに……すごく嬉しい…♡」

 

なのはは呟きながら、胸が熱くなるような感覚を覚えた。

その恥じらい方は最早“偽装”ではない、正真正銘の“恋人”を意識した恥じらい方であった……

 

 

お見合いの日は近い…

 

 




っというわけで、オリジナル版同様に派手に暴走した小十郎と相変わらずマイペース卑しん坊バカな成実も加わって余計カオスな光景になる六課でしたw

っていうか、リブート版はオリジナル版よりも下ネタ率が高いような…(苦笑)

そして、オリジナル版よりもちょっと早く登場した、リリバサ最大のヘイト要員であるバカ息子―――セブン・コアタイル。
久々に書いたけど、ホントクズですねwコイツw
まさに(作者の)お前が言うなですが、こうして胸糞な場面書いていると、後々どんな風に鼻を明かす場面にしようかすごく楽しみになってきますねw

次回からいよいよ、波乱のお見合いに突入します。
果たしてリブート版ではどんな事になるのやら……?
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