リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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はやての思いつきからはじまったなのはの見合い取り潰し作戦…政宗との『偽装恋人作戦』は、小十郎の勘違いからの暴走という不測のトラブルを招きながらもどうにか了承を得る事に成功した。

そして、いよいよ見合い当日を迎えるのだが……

小十郎「リリカルBASARA StrikerS 第四十七章…出陣だああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

キャロ「マイクが壊れちゃいました!?」



第四十七章 ~嵐を呼ぶ見合い 幕開けは前途多難!?~

あっという間に5日の時が流れ、いよいよなのはのお見合い当日の朝を迎えた。

 

既にこの見合いに対する返事は「NO」と決めているなのはの心に対し、天上の神はまるで皮肉を投げかけるかのように、この日は朝から雲ひとつ無い快晴の天気であった。

初夏の日差しが照りつける清々しい天気は、なのはは好きであったが、今日に限っては少しだけ恨めしく思えた。

 

「…………………」

 

そして、その隣では、政宗がなのは以上に落ち着かない様子を見せていた。

だが、彼の場合はお見合いに対する不安というよりは自分の今の姿格好が落ち着かない様子だった。

 

勿論、一応言っておくが、前回はやてに着せられ、小十郎の発狂(笑)原因となった婚礼装束ではない。

 

なのはは、明るいピンク色で統一したワンピース姿であり、首にシルクのストールを巻いて上品さを増していた。

さらに首元には待機状態のレイジングハートをペンダント替わりに付けてファッションの一部に加えている。

そして、髪はいつものように結んでおらず、完全にストレートなロングヘアであった。

 

一方の政宗は黒いタキシードを纏い、プレーンノットに結んだ蒼色のネクタイを首に巻き、紐の形状が稲妻を模したデザインが施された小洒落た眼帯を付けていた。

これでも、はやてが可能な限り『動きやすい服装』としてチョイスした服装であったが、政宗にしてみればこれでもまだ、動きづらいのか、窮屈そうにしていた。

 

「やっぱり、こういう服は性に合わねぇな…」

 

「そんな事ないぞ独眼竜。なかなか様になっているじゃないか」

 

「うむ! どこから見ても、なのは殿の良き“夫婦(めおと)”に見えるでござるぞ!!」

 

改めて自分の格好を見下ろしながらボヤく政宗に対し、家康と幸村がそれぞれ政宗の格好を素直に称賛するが、政宗にしてみればそれは皮肉のように聞こえてならなかった。

そして、政宗以上に2人(特に幸村)の称賛を気に食わずにいたのは、言うまでもなく小十郎であった。

 

「真田…冗談でも俺の前で“夫婦”などと軽々しく口にするな…俺はまだ完全に此度の作戦を了承したわけではないのだからな…」

 

現在、機動六課に委託隊員として所属している戦国武将7人の中でも最も大きな威圧感の持ち主である小十郎であったが、そんな小十郎に正面から睨みつけられる事は、如何に伊達軍の好敵手として何度も相対してきた幸村もなかなか慣れるものではなく、思わず震え上がりそうになった。

 

「おい、片倉。見合い当日になってそんな事を言うやつがあるか? それに、結局見合いには政宗だけでなく、お前も行く事になったんだから、そんなに神経質になる事はないだろう?」

 

「う…うむ…それは確かにそうだが…」

 

シグナムは、そうしかめっ面の小十郎を宥めると、小十郎はバツが悪そうに返した。

 

あれから連日に渡り、六課では見合いに向け、入念に話し合いが繰り広げられ、その過程で政宗一人だけではなく、同じスターズチームの ヴィータと、この手の駆け引きに秀でた知将である小姑―――いや、小十郎を“立会人”として同伴させる事が決まったのだった…

 

なのはは、政宗と二人きりではなくなった事を少し残念に思いながらも、信頼できるヴィータと小十郎が同伴してくれる事になり、少なくとも心強さは倍増しになった。

 

ちなみに、小十郎とヴィータの2人はそれぞれ黒のスーツにネクタイと、シークレットサービスのような格好であったが、小十郎がそれを着用した姿を見たはやてや慶次は初見で「もろにヤ◯ザの若頭」と吹き出し、それを聞いた小十郎が刀で威嚇しかける一幕があった事はまた別の話である。

 

更に言えば、政宗と小十郎のそれぞれの愛刀は、当然ながら持っていけるわけがない為、朝からデバイスマスターのシャリオの下に預けてあった。

 

 

「いやいやいや、なんでだよッ!? なんで小十郎の兄貴は付いていけて、伊達軍特攻隊長である俺が兄ちゃんに付いて行っちゃダメなんだよ!!?」

 

そんな中、朝から騒々しいテンションで声を張り上げるのは、伊達軍随一のトラブルメーカー 成実である。

政宗だけでなく小十郎までも選ばれた今回の見合い同伴要員に自分だけ外された事に納得がいかず、こうして見合い当日の朝である今に至っても、まだ事ある毎に文句を喚いていたのだった。

 

「…だから、八神やハラオウンも、何度も言ってるだろ? 今回は如何に混乱を招かずに縁談を断る方向に持っていくかが重要なんだ。 頭を使う事など“からっきし”なお前の出る幕は微塵もない」

 

同じ説明を何度もしてきた事で疲れたのか、小十郎はやや気だるげな声質で言い放った。

 

「……な、なかなか容赦ないね。右目の旦那」

 

「こ、怖い先生みたいですぅ……」

 

そんな小十郎の話を聞いていた慶次とリインは引き気味に呟く。

 

 

ここ、隊舎のメインエントランスの待合スペースには現在、なのはと、政宗、小十郎、ヴィータの同伴者3人。

そして、はやて、リイン、フェイト、シグナムの4人と、長期任務の為に不在の佐助を除く6人の武将達が集まり、間もなく到着するというコアタイル家からの“使いの者”の到着を待っていた。

 

 

「う…うぐぅ…そ、そりゃ確かに俺ぁ、兄ちゃんや兄貴より頭使う事は得意じゃねぇけどさぁ…でもこれでも俺ぁ、ちったぁ頭良くなったんだぜ?」

 

小十郎の筋は通っている説法にたじろぎながらも、尚も噛みつこうとする成実。

すると小十郎は唐突にこんな事を問いかけた。

 

「ほぅ…では7×8は?」

 

7()8()!」

 

「はい。問題外!」

 

迷いなく即答した成実に、冷ややかな視線を投げかけながら一蹴する小十郎。

 

「掛け算もまともに出来ねぇのによく“頭良くなった”なんて言えるな!」

 

「いやいや、ホント良くなったんだって! 最近はやっと自分の名前もひらがなで書けるようになったんだからな! エッヘン!」

 

「威張って言う事かよ…」

 

ヴィータが呆れながらツッコみつつ、エントランスの壁に備えられた掛け時計を一瞥した。

 

「んで…コアタイルからの迎えってのは一体何時来るんだぁ? もうそろそろ約束の時間だってのに、一向に現れる気配がねぇんだけど…」

 

ヴィータは足の爪先をトントンと何度も床に打ち付けながら、苛立たしげに話す。

時刻は現在8時55分。コアタイル家からの送迎が到着するのは9時の予定であるが、未だに六課の正門の警備員から送迎の車が通った旨の方向は届いていない。

 

「もしかして道が混んでいる…とかじゃないかな?」

 

フェイトが自分の右手に付けた腕時計と、壁の掛け時計を見比べながら言った。

 

「それなら、普通連絡とかするもんじゃない? それに今日はクラナガン近辺の幹線道路もハイウェイも、どこも流れはスムーズだってあるぜ?」

 

慶次が愛用のスマホで渋滞情報のアプリを開き、確認しながら答えた。

こういうちょっとした調べ物の為にスマホを利用する癖は最早完全な現代人といえた。

 

「むむむ…迎えを寄越す側でありながら、遅刻とは何たる不躾な者共でござろうか!!」

 

「それか…所詮、『貴族魔導師と関わりのない官民混合の変わり者の部隊』って事で、俺達先方さんから見くびられているのかもしれないねぇ…」

 

元よりコアタイル家に対して快い印象を抱いていない幸村や慶次は、それぞれ奮然と憤ったり、遠回しに皮肉を吐いた。

 

お見合いの話が舞い込んでから5日間…政宗をはじめ、(勉学がからっきしダメな成実を除いた)六課にいる戦国武将達はコアタイル家をはじめとする『貴族魔導師』について、なのは達から教えてもらい、ある程度の知識を叩き込む事ができた。

 

“貴族魔導師”とは、古代ベルカの時代から管理局による次元世界の連合統治がはじまる新暦00年以前の時代にかけてミッドチルダにおいて様々な魔法に関わる術式や発明、文化を起し、現在まで続く次元世界の魔導師文化の礎を築いた偉大な魔導師達の末裔である歴史ある家系に属する魔導師達に対して使われる敬称の事で、『貴族』と銘打ってあるものの、一般的にいう『◯爵』等の官位は存在せず、そればかりか、一般魔導師とも正式な身分の別け隔てがあるわけではないのだという。

 

とは言っても、魔法の長き歴史に大きな功績を果たした名誉のある血筋である彼らの存在は、魔法の恩恵によって繁栄しているミッドチルダをはじめとする時空管理局の統治管轄内の一般社会の間では、決して蔑ろにするわけにもいかず、現在に至るまで実質的に殆どの貴族魔導師の家系の者は時空管理局において重役職のポストを得たり、一地域や都市の自治権を与えられたり、次元世界においても有数の巨大企業を運営する、魔導師、非魔力保持者問わず偉大な功績を果たした者に贈られるミッドチルダの名誉勲章『聖エムリス勲章』を授与される等、一定以上の地位、名声、富を得る事となる。

そんな現状あってか、この制度を否定する者からはこうした管理局を始めとする周囲の必要以上な厚遇が、彼らを増長させ、“魔法至上主義”などの悪辣な選民思想を芽生えさせるきっかけになったと指摘する声も少ないという。

 

そればかりか、ミッドチルダの一部の貴族魔導師が自治権を与えられている地方においては、統治者である貴族魔導師が主導となって魔導師を優遇したり、逆に非魔力保持者を侮蔑する様な独自の法制や特権制度を施行している街なども存在するといい、今回なのはの見合い相手であるコアタイル家が統治権を得ているミッドチルダ北部・プリンスロイヤル自治都市もそのひとつであるのだそうだ。

 

ちなみに具体的にどの様な制度があるのか家康が尋ねたものの、この時の講師役だったはやて曰く「聞いたところで、気ぃ悪なるだけやから、詳しくは聞かん方がえぇ」とことだが、それを聞いただけで、相当独善的で酷い制度があるのか容易に想像する事が出来たのだった…

 

 

「そもそもホンマに車で迎えに来るかもわからへんからなぁ。こないだのメッセージには『朝の9時に迎えを寄越します』って漠然なメッ―――メッ―――ふぁぁ…メッセージしか書いてなかったし…」

 

そのはやてが、小さくあくびを混じえながら話した。

 

「はやてったら…部隊長なんだから今のうちからシャキッとしなきゃ」

 

「んな事言うたかて、フェイトちゃん。あのコアタイル派の偉そうな方々を相手すると思うとどうにも、いつも程にやる気が起きひんわぁ」

 

フェイトの忠言に対し、辟易した様子で応えながら、ぐで~ん…っとソファーの上でだらけ始めるはやてを一瞥し、呆れながら頭を振った後、小十郎は政宗となのはの方を向いた。

 

「政宗様。この5日の間、幾度も口酸っぱくして申し上げたと思いますが…今日はあくまでも…あくまでも! “芝居”である事を忘れぬ様に! 常にそれを頭に置いて頂ますよう、よろしくお願い致します!」

 

「はぁ~…OK、OK……ったくこの5日の間にその台詞、何度お前から聞いたと思ってんだよ?」

 

「これも含めると“3678回”です」

 

「……具体的な数字覚えてんのかい!?」

 

政宗がツッコんでいると、横からなのはが苦笑いしながら助け舟に入った。

 

「小十郎さん。政宗さんなら大丈夫ですよ。私は政宗さんの事をしっかり信じていますし―――」

 

ところが、その一言がきっかけに小十郎の矛先が今度は向けられた。

 

「そういうお前も心配なのだ。高町。まさかとは思うが…お前、政宗様が“恋人”を演じられるのを、心做しか喜んだりしてないだろうな?」

 

「えっ!?」

 

図星を突かれたように呆気にとられた表情を浮かべるなのは。

 

「俺はそれを心配しているのだ。 偽装で恋人になるみたいなノリのつもりが、いつの間にか本当に恋人同士になりました…なんて展開は、ミッドチルダ(この世界)やお前の出身の地球(世界)じゃよくある話だそうじゃないか? それも偽装恋人作戦をきっかけに親しくなって、気がついたら本当にお付き合いしていました…みたいな展開は“お約束”であるとか…ブルルル! そんな軽薄な交際など、この片倉小十郎! 政宗様の右目として、断固認められん!!」

 

大げさに頭を振りながら、一人興奮して話す小十郎にシグナムとヴィータが冷ややかな視線を投げかけた。

 

「……最早、“右目”というよりは、唯の小うるさい姑だな……」

 

「…っていうか、んなラブコメみたいな話、誰から仕入れた情報だよ?」

 

ヴィータの言葉が聞こえた小十郎は迷うことなく、慶次とはやてを指差した。

 

「この2人から」

 

小十郎が宣言すると、政宗達の冷ややかな視線が慶次とはやてに集中する。

中でもなのはの視線は「余計な入れ知恵しやがって!」と言わんばかりにやや睨みつけているようにも見えた。

 

(な…なんか…なのはちゃんだけ、俺らの事、すっげぇ睨みつけてくるんだけど…なんで?)

 

(さ…さぁ…な、なんか気に障るような事したかな…!?)

 

なのはから向けられる理由のわからない気迫に怯える慶次とはやて。

その時、なのはに助け舟を出してあげたのは家康だった。

 

「片倉殿。そんなに固く考えすぎなくてもいいじゃないか? 独眼竜もなのは殿もこういう事については十分“節度”を弁えた性格だって、ここにいる全員保証付きだろう?」

 

家康のフォローの言葉にフェイトとヴィータ、シグナムが同調して頷くが、そんな中、幸村と成実だけは会話の趣旨をよくわかっていないのか、キョトンとした表情を浮かべながら尋ねる。

 

「お、各方。一体、“こういう事”とはどういう意味でござるか?」

 

「え、えぇっと…それは…」

 

説明に困ったフェイトが言葉をつまらせるが、そこへ慶次がヘラヘラと笑いながら…

 

「まぁ、要するに『恋人ごっこ』のし過ぎて、寝床の上にまで『ぱーりぃ・ないと!』持ち越すな」って話だよ」

 

余計な軽口を叩いて、なんとか穏便に収まりかけた場の空気を一変させる。

 

「け、慶次さん!?」

 

「余計な事吹き込むなよ! 前田!!」

 

なのはと政宗が慌てて窘めるが、もう手遅れだった。

慶次の話を聞いた幸村は……

 

「ね、ねね…寝床の上で…ま、政宗殿となのは殿が……ぱーりぃ・な……!!? は、破廉恥でござぶふううううううううううっぅぅぅぅッ!!!!」

 

「いやあああああぁぁぁっ!! 幸村さんがまた鼻血噴射して失神したぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

いつもの通り、真っ赤になった顔から蒸気と鼻血を噴射させて卒倒し、フェイトが悲鳴を上げ…

そして小十郎は小十郎で―――

 

ぱーーーーーりぃぃぃぃぃないぃぃぃぃぃぃぃと!!!!? そ、それは本気でございますか!? 政宗様ぁぁぁぁぁぁぁ!! それに高町いぃぃぃぃぃぃ!!」

 

っとまたしてもキャラを崩壊させて暴走モードに入りかけながら政宗となのはに詰め寄る。

 

「の、NO! NOに決まってるだろ! いちいち本気にするな小十郎!」

 

「っていうか、ここへきてまた暴走なんてしないでくださいぃぃぃぃ!!」

 

お見合いに出発寸前の今になって、またまた面倒な状況に立たされ、なのはも政宗も内心辟易しながら必死に抑えようとするが、そこへ拍車をかけるのが例によって成実…

 

「“ぱーりぃ”って何!? 兄ちゃんとなのは姉ちゃん。2人だけ、寝床でこっそり美味いもんでも食おうっての?! ずりぃって、そんなの!! 俺にもくれよぉ!!」

 

「だから、意味わかってねぇなら会話に入ってくんなお前は!! つぅか、お前ホント頭の中、食うことばっかか!!」

 

何もわからないまま、小十郎と政宗、なのはの口論に乱入しようとして、政宗に一蹴される。

このカオスな状況を見たシグナムとヴィータは原因を作った張本人である慶次を睨みつけた。

 

「前田ぁっ! このバカ! テメェが余計な事言うから、また小十郎が暴走しちまったじゃねぇか!!」

 

「一度あぁなった片倉を鎮めるのは楽じゃないのは、お前だってわかっている筈だろ! 本当に余計な事ばかりしおって!!」

 

「ええぇぇぇっ!? お、俺はちょっと場の空気を和ませようと思っただけだって!? まさかこうなるとは思ってなかったんだよ!?」

 

3組のゴタゴタを宥めながら、家康が頭を抱えた。

 

「み、皆! ここは少し冷静になって――――」

 

そう宥めようとしたその時だった―――

フェイトと一緒に幸村を介抱しようとしていたはやての前に、ホログラムモニターが投影される。

 

《八神部隊長!》

 

「グリフィス君。どないしたん?」

 

映像に映った部隊長補佐のグリフィスの切羽詰まった声がその場に響き、騒いでいた面々がピタリとその動きを止めた。

 

《それが…シャトルが一機、隊舎の敷地に向かってまっすぐ降下してきています! 間もなく、隊舎の裏手に着陸するものと思われます!》

 

「しゃ、シャトルやて! い、一体どこの―――!?」

 

はやての言葉を遮る様に隊舎全体を激しく揺れるような振動を伴うジェット音が政宗らエントランスにいた全員…否、隊舎にいる全員に襲った…

 

 

 

 

時はほんの数分前に遡る―――

機動六課の隊舎の裏手に広がる中庭に空から一枚の大凧が音を立てずに舞い降りてきていた。

それが完全に地面に堕ちる前に、その正面にしがみ付いていた一人の忍…猿飛佐助が回転を決めながら飛び降りてきた。

 

「はぁ~…やっと帰ってきたよ~。 いやぁ、流石に一週間ぶっ通しの張り込みは身体にくるねぇ~」

 

佐助は肩や首をゴキゴキと音を立てて廻しながら、爺臭い独り言を呟いた。

 

この一週間ほど、佐助ははやてらロングアーチから、入院療養を余儀なくされた地上本部総司令 レジアス・ゲイズ中将や彼の一派の動向監視を依頼され、首都クラナガン中央区画にある聖王教会病院・クラナガン総合医療センターへと張り込みを行っていた。

 

しかし、張り込み中は特にレジアスの派閥に特に大きな動きがあったり、レジアスの容態が急変するといった様子もなく予定通り退院し、私邸において在宅療養に移った事から、これ以上調査する必要がなくなった為、今日ようやく任を解かれ、久々に隊舎に戻ってきたのだった。

 

「とりあえず、ロングアーチに報告書を提出したら、一眠りさせてもらおうかねぇ…ん?」

 

そのまま隊舎の裏手口に向かって歩を進めかけた時―――

 

「♪~~~」

 

裏手口の方から、ヴァイスが鼻歌を唄いながら、水を汲んだバケツと洗車用の清掃道具を手にこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

 

「あれ? ヴァイスの旦那?」

 

「ん? よぉっ!佐助っち! 任務上がりかい?」

 

「んまぁ、そんなとこ。ところでどうしたのさぁ? 随分、機嫌が良さそうだけど?」

 

「あっ、わかるぅ~?」

 

そう言って、ヴァイスの表情はニヤニヤと幸せの絶頂に達しているような満面の笑みを投げかけてきた。

 

「そ、相当いいことがあったみたいだな…顔がすっげぇ事になってるから…」

 

佐助が若干引きながら話した。

 

「んな大げさな事じゃねぇよぉ。 今から愛車のバイクの洗車するとこなんだよ。 バ・イ・ク♪ しかもご自慢のトカティのS2RXの最新モデルをさ♪」

 

「えっ!? あ、あぁ…! そっか。旦那のバイク、保険効いて戻ってきたのね」

 

話しながら佐助は、以前 政宗が引き起こしたクラナガン市街地への甚大な破壊被害 『クラナガンの暴れ竜騒動』の折に、六課が負った唯一の損害であったヴァイスの愛車であったバイクの災難を思い出す。

 

ヴァイスはあの事件で政宗(元凶は、独断で彼にバイクのキーを貸してしまったはやて)のせいで愛車のバイクを無残に破壊されてしまった。

 

それも敵ガジェットに向かって特攻に使われ、最後はヴァイスの目の前で『敵諸共木っ端微塵』という最悪な経緯でミッドチルダの海の藻屑にされたヴァイスのバイクは、その後、どうにか引き上げこそされたものの、既にバラバラのヘドロまみれのスクラップと成り果て、最後の望みをかけて六課の整備班のスタッフ達に直せないか相談してみるも…

 

 

「ヴァイス陸曹。それ本当に陸曹のバイクですか? 俺達ぁてっきり、海釣りしてて間違えて釣り上げちゃった鉄クズ寄せ集めて持ってきたのかと思いましたよ」

 

 

っと整備班の若衆達に大笑いされた上、診断する間もなく『直せる見込みなし』と判断され、そのまま廃車となった…

 

それからしばらく、ヴァイスは文字通り抜け殻のような状態になって過ごしていたのだが、その様子を見かねた佐助に慰められたのをきっかけに元気を取り戻し、それをきっかけに気が合う友人同士となったのだった。

それでも佐助は、ヴァイスの前でバイクに関する話題は慎むように気を使っていたが…

 

「フフフ…保険が無事に下りて、最新モデルになって戻ってきたんだよ~♪」

 

そう説明しながら、は身体をバレリーナのように回転させて舞い踊ってみせた。

相当、愛車が戻ってきた事が嬉しいことが嬉しいようである。

 

「あははは…そ、それはよぅござんしたね…」

 

「ありがとよ~。 まぁ、俺が壊したわけじゃないし、当然っちゃあ当然なんだけさぁ。っというわけで今日も今朝から熱心に磨こうと思ってさぁ」

 

「えっ? 普通、ガレージで磨かないの?」

 

佐助は尋ねるが、ヴァイスは「とんでもない!」と言わんばかりに頭を激しく振った。

 

「折角、納車仕立ての新車だぜ!? まだ、試し乗りも十分にしていないってのに! ガレージなんかで掃除できるかよ!? 他の車の排気ガスでせっかくのピッカピカのボディが台無しになっちまう! だから、空気のキレイな裏庭でワックスがけしようと思ってさぁ」

 

ヴァイスが話しながら、指差した先には、裏庭の木々に囲まれ、切り開かれたような場所にまるで、モニュメントの如く、大切に置かれた真っ赤なボディのバイクが駐車されていた。

 

「こ、こだわっているなぁ…旦那も…」

 

「そりゃバイクは俺の生きがいだからなぁ~…あっ、よかったら佐助っちも見る? 俺のピッカピカの愛車♪」

 

「………いや…遠慮しとくわ…」

 

ドン引きの佐助を他所に、ヴァイスはバケツと清掃道具を持ちながら、上機嫌に愛車の停めてある場所に向かおうとした。

 

「ピッカピッカに磨こ~ね~♪ バイ~ク……ん?」

 

「おっ?」

 

すっかり上機嫌になっていたヴァイスと、そんなヴァイスの浮かれっぷりに若干引いていた佐助は、自分達の頭の真上にくるまで、その物体に気が付かなかった。

不意に、バイクの置いてあった場所を中心に大きな影がかかり、何事かと2人が怪訝な顔を浮かべる間もなく、不意に耳をつんざく様なエンジン音が聞こえてきた。

 

「あっ? なんだ?」

 

2人が揃って空を見上げ―――

 

 

「「え゛っ!? ま、マジで!?」」

 

 

ステレオ放送のように見事に息ピッタリな口調で仰天した。

何と、遥か上空から一機のシャトルジェット機が空から舞い降りてくるところだった。

細長い三角形のシャープな造形の機体の後部に取り付けられた両翼に備えられたブースターから噴火の様に凄まじい炎と熱風を噴射させながら垂直で降下してくるそれは、明らかに目の前の裏庭に着陸しようとしていると察した佐助は慌ててヴァイスを抱えて、その場から逃れようとするが…

 

「ああああぁぁっ!? ちょ、ちょっと佐助っち! ストップ! ストォォォップ!! 俺の、俺のバイクが! 俺のバイクの上にジェット機がぁぁ!?」

 

「旦那! 今はそんな事言ってる場合じゃないって――――」

 

シャトルが降下してくる丁度その中心点に納車したてのバイクが置きっぱなしである事を思い出したヴァイスが、慌ててバイクを回収しに引き返そうとし、佐助がそれを必死に制止している間に、シャトルは轟音と振動と共に裏庭に着陸した。

 

グシャァッ!!!

 

当然、その真下にあったヴァイスのバイクを、靴で蟻を踏み潰すように、機首の真下から出した車輪でぺしゃんこにし――――

 

 

「ギニャアアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

「俺のバイクウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

 

垂直着陸の逆噴射の熱風の風圧で佐助とヴァイスを紙人形のように軽々と吹き飛ばした後、シャトルはようやくエンジンを停め、隊舎全体を襲った風圧と爆音が静止した。

 

 

 

 

「い、一体何事や!?」

 

隊舎裏手口からはやてを先頭にした六課の隊長、副隊長陣と委託隊員の武将陣、朝食後のウォーミングアップ中だったフォワードチームや、ロングアーチ、そして最後に六課の一般スタッフらが続々と出てきて、シャトル機の周りを集まった。

はじめは、敵襲かとも思えたが、シャトルの尾翼に誇示する様に描かれた『“金と銀の色をした2匹の蛇によって構成されたウロボロスの輪”と、その中に収められた“ルビー、サファイア、エメラルド、アメジスト、アクアマリン、トパーズ、ダイヤモンドの7種類の宝石で構成された北斗七星”』の紋章を見た六課の隊員達はすぐにそれは違う事を察した。

 

その紋章は紛れもなくミッドチルダ最大の貴族魔導師“コアタイル家”の家紋であったからだ。

 

やがて、シャトルのドアが開かれ、同時に自動的にタラップが展開されて、地面との間を繋ぐと、開かれたドアの向こうから数人の管理局の魔導師―――それも一般の陸士隊や航空隊とも異なるレアメタル製の特殊な形状のヘルメット…古代ギリシャの騎兵の鉄兜のようなデザインのそれを被り、両手両足に金属質なデザインのプロテクターやレガースを取り付け、胸部には深緑色の防弾ベストを着用し、その上には金色の刺繍が施された黒いクロークを羽織い、その背中にまるで誇示するかのように金装飾の特注品の杖型デバイスを背負った異質な集団が現れ、優雅な足取りでタラップを下りてくる。

 

その様子を見ていた六課の一般スタッフやロングアーチ達は思わず息を呑んで、どことなく怯えた様な様子を見せた。

 

「家康さん!」

 

スタッフ達の間をかき分けながら、スバル達フォワードチーム4人が家康達に合流した。

 

「スバル。一体、彼らは……?」

 

家康が尋ねる間もなく、ティアナが苦虫を噛んだような表情で背後のシャトル機と下りてきた集団を見比べながら呟いた。

 

「“星杖十字団(せいじょうじゅうじだん)”…どうして彼らがここに…」

 

ティアナの口から出た単語に、家康は一瞬デジャブを感じていた。

 

「星杖十字団…!? 確かそれって、地上本部の数少ない精鋭軍という…」

 

家康は、5日前にシグナムから聞いた話を思い出しながら言った。

 

星杖十字団(せいじょうじゅうじだん)”――――

 

地上本部直轄の陸上特殊作戦群の通称であり、地上本部の中でも重鎮の護衛やその直接指揮による重要な作戦に際してのみ動員される文字通りの精鋭(エリート)師団の総称である。

 

全員が陸空問わず優秀な魔導師約1000人で構成され、それを十連隊に分けられており一個連隊の総数は平均100人程度。通常の武装隊と違い、各部隊は『R◯(Regiment-◯)支部隊』と呼称されるなど差別化が図られている他、一般隊員ですら全員が『曹』以上の階級を有し、通常の陸上警備隊(陸士隊)、航空警備隊(航空隊)はおろか、ミッドチルダ領内の一部の地域では本局付きの武装隊よりも上位の権限を有する時さえもあるのだという。

 

「その精鋭軍がどうしてまた……?」

 

家康が怪訝に思う中、シャトルから下りてきた魔導師達の先頭を歩いていた人物―――肩下で切りそろえた髪を跳ね上げるようにした金髪と碧い鋭い目つきが特徴の男装の麗人のような雰囲気を纏わせる女性が、この場に集まった人々の中からなのはの存在に気がつくと、冷徹な眼差しを向けたまま、ゆっくりと近づき、彼女の前に立つと、サッと背後に伴った隊員達と共に敬礼した。

 

「古代遺物管理部“機動六課”分隊長 高町なのは一等空尉ですね?」

 

「は、はい…。貴方は…?」

 

「申し遅れました。私は“星杖十字団”R7支部隊副官。“エンネア・フェートン”二等陸尉です。セブン・コアタイル准陸佐からのご命令により、貴方をお迎えに上がりました」

 

「はぁ…ご、ご足労ありがとうございます。ですけど、自家用機で迎えに来るのであれば、できれば事前に報告を―――」

 

「セブン様が現地でお待ちしております。詳しいお話は道すがら機内でお聞きしますので、早速参りましょう」

 

なのはの言葉を無理やり遮る形でエンネアは、彼女を半ば無理矢理にシャトルに乗せんと促し始めた。

 

「え、ちょ…ちょっと……」

 

困惑するなのはの手を無理矢理掴もうとした星杖十字団の隊員の手を、横からフェイトが叩く形で防いだ。

 

「なんですか!? 貴方達は!? いくら、迎えとはいえども、前触れもなくいきなり管轄外の部隊の用地にそんな巨大な航空機を着陸させた上、挨拶もそこそこに、高町空尉を連れて行こうとするだなんて、幾らなんでも不敬ではないですか!?」

 

地上本部の精鋭部隊相手にも少しも臆する事なく、フェイトはキッと睨みつけながらエンネアに噛みついた。

エンネアはそんなフェイトの方を振り向くとそっけない口調で言い出した。

 

「…我々はセブン様から「お見合いの開始時刻までに高町空尉をお連れするように」とのご命令を受けています。ここで貴方方といちいち問答している暇はないのです。何か抗議があれば、後ほど、我が部隊の広報課に申し付け願いましょうか? 同じく副隊長のハラオウン執務官殿」

 

「な、なにぃ! そっちが約束の時間ギリギリに来やがったくせに偉そうに―――」

 

「よせ。ヴィータ」

 

話を聞いていたヴィータが憤然としながら、抗議をしようとするが、シグナムが制止した。

 

「まだ何か?」

 

エンネアが軽く挑発するかのような口ぶりで尋ねてくる。

その目つきからして、とても六課とは友好的な関係には慣れそうな雰囲気ではなかった。

 

「では、参りましょうか? 高町空尉」

 

エンネアはなのはの背中に手を回して、軽く2、3度叩くと、改めてジェット機に向かうように促しながら、歩き始めた。

 

「待ってください!」

 

そこへはやてが慌てて声をかけた。

エンネアは心底鬱陶しそうにはやてを睨みつける。

 

「今度は貴方ですか? 機動六課部隊長 八神二佐…まだなにか?」

 

「おたくらは知らされているかわかりませんけど、今日のお見合い…我が機動六課からは “同伴者”を付けるつもりでおりますので、高町空尉の他にあと3人連れて行ってもらえませんか? フェートン陸尉」

 

対するはやては、そんなエンネアの鋭い視線にも怯む事なく、逆に毅然とした眼差しを返しながら言い放った。

 

「同伴者?」

 

エンネアは冷たい眼差しのまま訝しみ、傍にいた隊員の一人に目で合図を送った。

すると、その隊員はホログラムコンピュータを展開して、手短になにかのリストのような文面を表示して確認した。

 

「……いえ。特に送迎便の搭乗予定リストには高町空尉以外に登録されてはいません」

 

「そうか……だったら、搭乗させるわけには参りません。我が部隊はあくまでもセブン様のご指示があった者のみを送迎する様に承っていますので…」

 

融通の効かない様子を見せるエンネアであったが、そこへ―――

 

「おいおい。たかが、送迎の人数調節もできないっていうのか? Elite部隊とか大げさに名乗っているわりにガキのお使いLevelの融通も効かせられねぇとは、大した事ねぇ連中だな」

 

露骨に聞こえた一言に場の空気が凍りつく。

特にエンネアら“星杖十字団”の隊員達は一斉に刃物の如き視線を声の主の方に向ける。

そこにいたのは、言うまでもなく政宗だった。

 

「貴様ぁ! それはどういう意味だ!?」

 

「言うに事おいて、我ら地上(ミッド)唯一の精鋭 『星杖十字団』を愚弄するか!?」

 

エンネアの脇に控えていた隊員達が声を荒げるが、それに怯む政宗ではない。

そのやり取りを見守っていた六課のスタッフ達…特にロングアーチメンバーを始めとする非魔力保持者のスタッフは顔を青くしながら、政宗と星杖十字団を見比べる。

一方、家康や幸村、小十郎、慶次や、シグナム、ヴィータは政宗に同調する様に呆れたような表情で星杖十字団を見ていた。

 

「あのなぁ…見合いっつぅのは、例え呼ばれる側も、そいつのAssistとなる“立会人”が必要だろ? 俺やそこにいる2人は、その“立会人”として同伴したい。もちろん、これは機動六課部隊長であるはやてからの指示だ。なら見合いに立ち会っても文句を言われる筋合いはないってもんだろう? You see?」

 

後ろにいた小十郎とヴィータの2人を顎で示しながら政宗が言った。

 

「このっ…非魔力保持者の分際で…!!」

 

「待て」

 

政宗が魔導師でない事を確認した上で、この無礼千万な非魔力保持者に目にものみせようためか、隊員達が前に出ようとしたが、エンネアに制止された。

どうやら、エンネアは他の隊員同様に非魔力保持者への蔑視こそ抱けども、他の隊員よりは場の分別をわきまえる事ができる冷静さを持ち合わせているようだった。

 

「八神二佐。この男の言う話は本当ですか?」

 

エンネアが尋ねると、はやては毅然とした口調で返答した。

 

「えぇ。そのとおりです。幾らコアタイル派(そちら)に主導権のあるお見合いとはいえ、六課(私達)から一人も立会人を付けさせてもらえないなんて事はありませんよね? もし、そんな非常識なお見合いなのでしたら、流石に私達も今回のお話…お受けしかねますが、それでもよろしいですか?」

 

はやてが挑発する様に言った。

エンネアは不愉快気に睨みつけるが、言い返す言葉はないようだった。

 

「確かに筋は通っていますね…そういう事でしたら、仕方がありません。 いいでしょう。では貴方方の言う“立会人”の同伴は許しましょう。…ですが、我が部隊がコアタイル家より御貸与賜りし、プライベートシャトルジェット『グランデオス』は、本来ならば乗務員以外の非魔力保持者の搭乗が許されない特別便。 そちらの非魔力保持者の二人は乗務員用区画に搭乗して頂く形になりますので、あしからず」

 

「……OK。別に構わねぇぜ」

 

「こっちはテメェらからの饗しなんぞ、何一つ期待しちゃいねぇよ」

 

堂々と啖呵を切って返す政宗と小十郎に、エンネア以外の星杖十字団隊員は忌々しげに睨み返す。これがなのはの送迎という任務中でなければ、確実にその背中に背負ったデバイスを手にとって、攻撃を仕掛けていたであろう事は確実である。

エンネアもまた、彼ら程に露骨な敵意を向けているわけではないが、明らかに何か含めた様な冷たい眼差しで政宗と小十郎を一瞥すると、シャトル機の方へと引き返していった。

 

「それじゃあ、八神部隊長。行ってきます」

 

「うん。幸運を祈ってます」

 

なのはが手短にはやてに敬礼すると、同じく敬礼を返すはやてに見送られ、見合いの主役と立会人3人は、星杖十字団隊員達に続いてシャトル機へと向かった―――

 

 

 

 

「ふぅ…なんとか無事に送り出せはしたけど……」

 

「あの様子では、円満に見合いを断る方向には持っていけそうにないでござるな……」

 

なのは達が搭乗して、すぐに再び両翼のジェット噴射で垂直離陸し、あっという間に東の空に向かって飛び立っていくシャトル機を見送りながら、フェイトと幸村はそれぞれため息まじりでボヤく。

ちなみにシャトルが引き上げた事で、裏庭に出てきていた六課のスタッフ達の大半は隊舎に切り上げ、今この場に残っていたのは、はやて、フェイト、シグナム、家康、幸村、慶次とフォワードチーム4人だけだった。

 

「まあ、ヴィータや小十郎さんも一緒やし、そう無茶な事は起きひんとは思うけどねぇ…」

 

やはり不安げな面持ちを隠せないながらも言葉を添えるはやての隣で、ティアナは複雑な面持ちで空を見上げていた。

 

「まさか『星杖十字団』を迎えに寄越すだなんて…例の噂は本当だったって事ね」

 

「ティアさん。“例の噂”とはなんです?」

 

「エリオ。それについては私から説明するよ」

 

エリオの質問に対して、説明してくれたのはフェイトだった。

 

フェイトの言うところによると『星杖十字団』は、表面上は地上本部上層部の直轄下とされているが、実際のところは「当時首都防衛隊高官だった現在の統合事務次官 ザイン・コアタイルが、本局との戦力格差を憂う地上本部防衛長官 レジアス・ゲイズに“借り”を作らせる目的で、自らの個人的なコネや、コアタイル家やその一族によって運営される“B(ビック).D(ディッパー).財団』から私財を投げ打つことで人員や備品を集め、創設した」…っという設立の由来や、未だにB.D.財団から多額の出資を受けている事、その隊員の殆どはコアタイル家の総本山であるプリンスロイヤル自治都市出身者で構成されている為、ザインが指揮権の殆どを掌握している状態にあり、在籍する隊員もほぼ全員がコアタイル派という、実質的にザインをはじめとするコアタイル一族の親衛隊と言っていい存在と成り果てていた。

 

特に今しがた迎えにやってきたR7支部隊は、ザインの息子 セブンから、かなりの寵愛を受け、事実上、彼の私兵と化しているという話で有名だったそうな。

 

「わざわざ地上本部の数少ない優秀戦力を私物化できるだけ、自分達には権力がある…そう誇示しているつもりでいるのかねぇ…?」

 

「それか…腕づく、力づくでもなのはに「うん」と言わせるつもりでいる気でいるのかもしれないな…」

 

慶次とシグナムがそれぞれシニカルに呟いた。

 

「なのはさん…大丈夫かなぁ…?」

 

そう言って、既にシャトル機の機影が見えなくなった東の空に向かって不安げに見つめるスバルの肩に手を乗せながら、家康が励ます。

 

「大丈夫さ。独眼竜を信じよう。それに片倉殿、ヴィータ殿だっているんだ。そう大変な事にはならないと思うぞ」

 

「そうだといいんですけどね…」

 

スバルがそう話していると、キャロが落ち着かない様子で辺りを見渡して何かを探していた。

 

「あのぉ、そういえば、さっきから成実さんの姿が見えないんですけど…」

 

この言葉を聞いた家康達も思い出した。

そういえば、成実の奴がいない。

 

「えっ!? あ、確かに…皆でここに来た辺りから見かけていないような…どこいっちゃったんだろう?」

 

「トイレとちゃうか?」

 

フェイトとはやてがそう話していたところへ、隊舎の中から、戻って行った筈のシャリオが大慌てで駆け戻ってきた。

 

「部隊長! フェイトさん! 大変! 大変ですぅぅぅぅ!!」

 

「しゃ、シャーリー!? どうしたの!?」

 

「そ、それが…政宗さんと片倉さんから預かっていたお二人の刀をデバイス保管庫にしまっておいたのですが…ついでなので、ちょっと手入れでもしておこうと思って、今取りに行ったら、どっちも無くなっていて…慌てて、監視カメラの映像を調べたら、こんな光景が…」

 

駆け寄ってきたシャリオは息を切らせながらも、必死で報告しながら、皆が見える様に大型のホログラムモニターを展開して、同じく展開したホログラムコンソールを操作して、映像を映し出した。

そこに映っていたのは…

 

「「「「「し…成実(さん)(君)ッ!!?」」」」」

 

デバイス保管庫から堂々と政宗の六爪(りゅうのかたな)と小十郎の黒龍を片手に抱えて出てきた成実の姿だった。

 

「し、成実だよね!? これ!? どういう事なの!?」

 

「なんでアイツが政宗さんと小十郎さんの刀なんか持ち出すのよ!?」

 

わけがわからないと言わんばかりに叫ぶスバルとティアナだったが、映像の端に表示された時間が、丁度、星杖十字団と政宗が押し問答をしている頃であった事に気づいた家康やフェイト、はやて、シグナムはハッとした表情を浮かべる。

 

「しゃ、シャーリー! さっき、送迎機がここを飛び立つ時のここの様子が映った監視映像出してくれる?!」

 

「は、はい!」

 

はやてに促されたシャリオが急いで映像を切り替える。

新たに映し出されたのは、なのは達が搭乗した後、垂直に上昇していくシャトルジェットの様子であった。

映像の中ではある程度の高度に達し、シャトルジェットの着陸用の車輪が機体に収納される様子が映っていた。

 

「……!? シャーリー! ここで映像を停めて! そして機体の後部右側の車輪の辺りをアップしてみて!」

 

フェイトの言われた箇所の拡大化した映像を投影すると、探している者の姿があった。

望遠である為はっきりと映っていたわけではないが、そこには確かに映っている。

収納される車輪の上に必死にしがみついている蒼緑色のマタギ風の装束と編笠を被った一人の悪ガキ…成実の姿が…

 

「や、やっぱり着いて行っちゃったんだ……」

 

「あのバカが…あれだけダメだと言ったのに…」

 

フェイトが青ざめながら話す隣で、シグナムは頭痛をこらえるように頭を抱える。

 

「ど、どうするよ!? はやて! とりあえず、先方にこの事、伝えるか!?」

 

「いやいやいや! そらマズいって慶ちゃん! 許可もなく非魔力保持者がもう一人乗り込んどったなんてバレたら、それこそ向こうからどんな文句言われるかわかったもんやないで!!」

 

「それに、あのプライベートシャトルジェット『グランデオス』ってたしか、情報漏えい防止の為に飛行中の外部との念話は、完全遮断されている仕様だった筈ですよ」

 

シャリオが慌てふためきながら、補足を加えた。

 

「こうなったら、私が後を追って成実を連れ戻しましょうか?」

 

「無理やってシグナム! いくら空戦魔導師でも最新鋭のシャトルジェットに追いつくなんてできひんって!」

 

はやてがそう話しながら、頭を悩ませていると…

 

「あっ! はやてちゃん! 皆! ちょっと! 大変だってば!」

 

と裏庭の防風林の中から出てくる人物がいた。

 

先程、シャトルジェットの着陸の風圧でふっ飛ばされた佐助である。

吹き飛ばされただけでなく、地面に何度もバウンドして叩きつけられた為か、その迷彩柄の忍び装束はボロボロになり、顔も煤と砂埃に塗れ、髪の毛も葉っぱが付いてボサボサに乱れていた。

だが、彼に肩を貸してもらってようやく立つ事の出来ていたヴァイスはもっと酷い状態だった。

身なりが佐助同様の惨状である事に加え、それ以上に何か精神的なショックを受けたのか、文字通り顔色は『真っ白』になり、頬骨がはっきりと浮かぶほどに痩せこけてしまい、まるで生きる屍のような有様になっていた。

 

「佐助!? 一体どうしたっていうのよ―――ってヴァイス陸曹!? な、何!? 何があったの!?」

 

いち早く彼らの元に駆け寄ったティアナが思わず仰天しながら、叫んだ。

するとヴァイスは焦点の合わない目で必死にシャトルジェットが離着陸した跡を目で追いながら、掠れる声を上げる。

 

お…俺の……バイクは……?

 

「えっ!? バイクって…? あれの事でござるか?」

 

幸村がそう指を指し示した先にあったのは、シャトルジェットの車輪の跡を中心にバラバラに散らばっていたスクラップの山だった…

それを見た瞬間、ヴァイスは目を丸くした後…

 

お…俺の……帰ってきたばかりの……バイクが……またしてもバーラバラ………アーヒャッヒャッヒャッヒャッ!!

 

意味不明な笑い声を上げながら、そのまま白目を剥き、口から泡を吹きながら、仰向けにぶっ倒れて失神してしまった。

 

「ヴァイスの旦那ぁ!?」

 

「ヴァイス陸曹ぉ!?」

 

「バイク殿―――あっ、間違えた。ヴァイス殿ぉ!?」

 

慌てて呼びかける佐助とティアナ、幸村…そして、少し離れた場所ではヴァイスの事など意にも介する事なく成実の事についてどうするか話し合うはやてやフェイト達を見るにつけ、スバルはますます自分の不安が増長したように感じた。

 

「い、家康さん……本当に大丈夫なのかなぁ…このお見合い…?」

 

「う、うん……なんか…ワシも心配になってきたかも…?」

 

家康が冷や汗を浮かべながら、柄にもなく弱気な事をボヤくのだった…

 

 

果たしてこの見合い、どうなることやら…

 




いよいよ始まるお見合い…

オリジナル版と違って、レジアスに代わって、小十郎、ヴィータ、そしてこっそりついていった成実が居合わせる中、バカ息子 セブンとの会談は果たしてどんな事になるのか…!?

そして、納車間もなくスクラップにされたヴァイスのバイクはもう一度保険が下りるのか!?(笑)

ティアナ「……多分、無理でしょ」

佐助「いや、辛辣だな! おい!?」
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