リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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いよいよ迎えた見合い当日―――
なのは達の前に現れたコアタイル派の慇懃無礼な振る舞いに眉を顰めながらも、一先ず、なのは、政宗、小十郎、ヴィータの4人が無事に見合いの舞台となる街 ラコニアへと旅立った…
ところが、その機内に密かに成実が忍び込み、こっそりついていってしまった事が発覚する。

果たして、見合いはどんな事になるのか…?!

エミーナ「リリカルBASARA StrikerS 第四十八章 出陣しマン◯!」

はやて・慶次「「はい!自主規制ーーーーー!!!(怒)」」



第四十八章 ~嵐を呼ぶ見合い 御曹司 セブン・コアタイル~

ミッドチルダ東部・ラコニア―――

 

首都クラナガンから400km程離れた場所にあるこの街は、四方を小高い緑豊かな山に囲まれ、旧暦時代の遺跡が市内だけでなく都市周辺に多数存在する、風光明媚な地方都市である。

その影響から近未来的な大都会のクラナガンに対し、中世ヨーロッパを思わせる古風な造りの建築物が多いモダンな街並が特徴となっていた。

観光都市として非常に栄えているだけでなく、魔法史の歴史上としても重要な街である事から、考古学者の間では聖地と称し、ミッドの長き歴史を紐解く上では重要な土地のひとつと踏む者も少なくなかった。

 

当然、この街の観光業は周囲の街と比べても抜きん出て盛況であり、特にホテル業に至っては様々な有名所のホテルテナントが出店している他、歴史の長い名門ホテルなどが街のあちこちに軒を連ねていた。

 

そんなラコニアで、屈指の高級ホテルとして名高いのが、ここ『Cassiopeia(カシオペア) Plaza(プラーザ)』であった。

ラコニア市街地の中心部に位置するこのホテルは、旧暦時代のとある王朝風のデザインを基調としたまるで宮殿のような豪華絢爛な外観と、5階建ての建物の中心に聳える巨大な時計塔が、この街のランドマークになっており、一般の観光客のみならず、上流階級の間でも品位ある社交場として親しまれていた。

それを物語るかのようにホテルの周辺にはプールやテニスコートなどの運動施設は勿論の事、プライベートジェット用の小規模な飛行場までも隣接している。

その飛行場に、なのは達を乗せたコアタイル家のプライベート用シャトルジェット『グランデオス』が着陸したのは、機動六課隊舎を離陸してから1時間も経っていなかった…

 

「あっ! 政宗さん、小十郎さん!」

 

シャトルジェットからタラップで地上に降りたなのはとヴィータは、先に機内から降りていた政宗と小十郎に迎えられた。

2人共、心做しかその顔には既に疲れの色が浮かんでいる。

 

「? どうしたんだよ二人共? 機内で星杖十字団(アイツら)に何かされたのか?」

 

ヴィータが尋ねると、政宗は肩を回しながら、気だるげに答えた。

 

「その逆だ。アイツら、乗務員用の部屋とかいって、Engine roomの近くの壁の薄い部屋に俺と小十郎を一時間も押し込んで、放ったらかしだ。しかも座席は骨組みむき出しのpipe椅子みたいな奴だったから飛んでる間ずっと揺れてケツが痛ぇもなんのって…そっちはどんなFlightだったんだ?」

 

「えっ!? えっと…私やヴィータちゃんは……」

 

「……どうやら、俺達とはまるで違う、破格の待遇を受けたんだな」

 

気まずそうに言い淀むなのはの様子を見て、大まかに様子を察した小十郎が小さくため息をついた。

 

小十郎の言う通り、機内の最底部近くの“スタッフルーム”とされるエンジン区画ギリギリのエリアの部屋に追いやられた政宗や小十郎と違い、機内中央のメインキャビンに案内されたなのはとヴィータは、この僅かなフライト時間の間に、コアタイル家という家の財力と権力を改めて実感させられた。

 

やや暗い照明で照らされたキャビンは壁一面を深緑のビロードが張られ、まるで会員制の高級クラブの様な、落ち着いた豪華な内装が施されていた。

 

座席も通常の航空機と異なり、シートと言うよりは大型のソファーかミニベッドのような席がそれぞれ1メートル以上の隙間が空いた一列につき2席という贅沢な間合いで、それがほんの10席程度という、まさに量より質を最優先にしたような機内であった。

その代わりにサービスは本当に徹底されていた。

僅かなフライト時間の間にはフライトアテンダントが3回も飲み物を薦めてきた上に、その飲み物のバリエーションも豊富でオレンジジュース、アップルジュース。ダージリン、コーラ、コーヒーなどのメジャーどころは勿論の事、中にはベリーソーダ、ジンジャエール、ガラナ、オレンジペコ、アッサムといったこだわりどころや、果てはビールにウイスキー、ワインといった酒類までも揃っている始末。

勿論、なのは達は、これから見合いに挑む直前である事を理解してか、オレンジジュース一杯だけで遠慮したという。

 

「へっ! 俺達には水道水の一杯も寄越さなかったくせにな」

 

政宗は別に羨ましいとは思わなかったが、それでもこの待遇の差はあまり露骨過ぎるものだと呆れていた。

 

「他にもフライトアテンダントの人がメイクの直しや、マッサージとか、色々サービスしてくれるって言ってたんだけど…」

 

「それもなんだか異常なくらいにサービスし過ぎなんだよ。アタシが途中でトイレに行った時なんか、洗面台の前で女のアテンダントがタオルの載った盆持って控えていた上に、挙げ句に「ご希望であれば、用がお済みの後の“処理”もお承ります」だなんて真顔で言ってきやがったんだぜ。勿論、即断ったけど、流石にあれは引いたよ」

 

「なんだそりゃ…!? 最早、Attendantというよりは“Slave”だな」

 

ヴィータの話を聞いた政宗も引き気味にツッコむ。

 

「ホントそれ。なんだか奴隷をこき使ってるみたいで、逆に居心地悪くてさぁ……」

 

「…確か、あの航空機は、乗務員が全員非魔力保持者だったな…?」

 

小十郎が出発前にR7支部隊副隊長のエンネアが言っていた事を思い出しながら、もう一度、着陸したグランデオスの機体を一瞥する。

 

「俺や政宗様に対する待遇といい、連中が魔導師以外の人間をどう見ているのかがよくわかった気がするぜ…」

 

まだ、見合いは始まっていないばかりか、見合い相手であるセブンと顔も合わせていないというのに、この時点でなのは達は、彼が少なくとも“聖人”と呼ばれる類の良識を持った人間ではない事を教えられた様な気分であった。

 

その時、少し離れた場所でホテルの中と連絡を取り合っていたエンネアら、R7支部隊の隊員達がなのは達の方に近づいてきた。

 

「高町空尉。セブン様の準備が整ったとの事です。ご案内致しますので、こちらへどうぞ」

 

そして、エンネアの案内で一行はホテルへと続く小道を歩き始めた―――

 

 

それからほんの数分後の事…

整備員や乗務員達によって点検と清掃が忙しなく行われている『グランデオス』の着陸した後部右翼の車輪部から半分凍りついた若武将 成実が転がり落ちる様に出てきた。

 

さ…さ、さ…さみぃぃぃぃぃぃ…!! まるで氷室にブチ込まれた肉や魚になったみたいだぁぁぁぁ……ってんんっ!!」

 

ガチガチに震えながら氷像のように固まりかけていた成実であったが、その視線の遙か先に、ホテルへと向かって歩いていく政宗やなのは達の姿が目に留まった。

 

「み、見っけた!」

 

途端、成実の凍りつきかけていた目に再び生気と覇気が戻る。

 

「へ…へっへっへぇぇ!! 見つけたぜ!兄ちゃん!なのは姉ちゃん!小十郎の兄貴! 俺だけ除け者にしようったって、そうはホタルイカのぬた和えだっての! こうなったら、伊達軍特攻隊長の名にかけて、意地でも付いてってやるから覚悟しやがれってんだぁ!」

 

成実はそう言って辺りを見渡し…そして一台の荷物が積まれた軽トラックを見つけた。

幸い、辺りにいる作業員達は皆、成実の姿に気づいた者は一人もいない。

成実は誰の目にも留まっていない事を確認してから、コソコソと軽トラックに忍び寄り、まるで猫のように軽い身のこなしで荷台に忍び込むと手頃な大きさの木箱を見つけ、そこに入り込んで蓋を被った。

 

「ん? なんだ? 今の音は…」

 

運転席にいたホテルの従業員は、荷台から聞こえてきた物音に一瞬怪訝に思いながらも一通り荷物が積まれた事を確認し、車を発進させる。

 

「へっへーん! タ~ダ乗り~~~♪」

 

箱の中から顔を覗かせて上機嫌で呟く成実を乗せたトラックもまた、ホテルへと向かうのだった…

 

 

 

ホテルの中に案内された政宗達は、見合いの会場であるホテルの最上階にあるロイヤル・スイート・ラウンジに通され、そこでエンネア達R7支部隊員達は一旦引き下がった。

曰く、それぞれ前乗りでホテルに入っていたセブンや仲人のエミーナ・メアリング執政総議長はそれぞれ客室で待機しており、呼んでくるまでの間は、ここで待機していてほしい、とのことだった。

 

「Hum…送迎機だけならず、見合いの会場も抜かり無く豪華ってか…貴族って連中はどうしてこうも飾り立てるのが好きなもんかねぇ」

 

「う~ん…やっぱり“見栄”じゃねぇか?」

 

政宗やヴィータがラウンジの中を見渡しながら、ややシニカルにそんな事を話し合っていた。

派手な装飾品と豪華な家具で満ちたこの部屋は、いかにも余程の特権階級の人間でもなければ、利用するどころかお目にかかる事もままならない程の高級感に満ち溢れ、そして広さだけで見ても、機動六課隊舎のロビー程の広大さを誇る一室であった。

 

さすがは貴族魔導師の中でも最高位の御家がセッティングしたお見合い。これだけでも先方の相当な気合いの深さを感じ取る事ができた。

 

「……………」

 

一方、今回の見合いの主役であるなのはは、彼らほどに気楽に過ごす…わけにはいかない様子だった。

 

「なのは? 大丈夫か? さっきから顔色あんまりよくねぇぞ?」

 

「もしかして、緊張しているのか?」

 

話し合っていたヴィータと政宗がなのはの様子に気がついて、声をかけてきた。

 

「う、うん…それは勿論…だってこれからいよいよお見合いが始まるんだって思うとちょっと…」

 

なのはが不安げな面持ちでそう呟くのを聞いた政宗は、フッと小さく笑みを浮かべた。

 

「Don't worry. 何も一人で挑むわけじゃねぇんだ。ここには俺や小十郎、ヴィータだっている…そうだろ?」

 

政宗はなのはの傍に近づき、諭す様に話しかける。

 

「えっ…う、うん…」

 

「それに…」

 

「…?」

 

「Playとはいえ、今の俺はなのはの『恋人』なんだ。いざって時にはできる限りのfollowはしてやるつもりだ。だから…何も心配す必要はねぇ。な?」

 

そう話しながら、不意に自分の肩に手を置いてきた政宗に、なのはは思わずドキンと胸が昂ぶる様な感覚を覚えた。

 

「―――――ッ!!?」

 

政宗のさり気ない優しさを感じたなのはは、安心した様に…っというよりはまるで惚けるような瞳で彼の隻眼を見つめた。

それに対して政宗もワイルドで凛とした瞳で見つめ返す。

その時―――

 

 

「ゴホンッ!!」

 

「「ッ!!?」」

 

 

小十郎がワザとらしく咳払いして、2人の意識を自らに向けさせた。

 

「政宗様…くどいようですが、再度申し上げます。これはあくまでも『芝居』である事を念頭に置くように! 高町…お前もわかっているだろうな?」

 

「Ah…わかったっての。ったくシグナムの言ってたとおり、最早“小十郎”じゃなくて“小姑”だな」

 

「も、勿論わかってるってばぁ、小十郎さん……チィッ! うっせぇな…」

 

慌ててなのはの肩から手を離しながら政宗が宥め、なのはもそれに同調しながらも、一瞬顔を背けながら忌々しげな表情で舌を打ったのをヴィータは見逃さなかった。

 

(なんか……姑と嫁のドロドロの愛憎劇見せられてる気分……)

 

ヴィータが内心ボヤきながら呆れていたその時―――

ラウンジのドアが開いて、身なりの整ったホテルマンが入ってきた。

 

「失礼しますタカマチ様。セブン殿下らが到着なさいました」

 

ホテルマンの言葉になのはは頷いて立ち上がり、政宗達もそれぞれ彼女の下座の席の脇に立つとセブンらを迎える準備した。

 

すると部屋の一番大きな扉が開かれると、最初に星杖十字団R7支部隊の副隊長エンネアと、もう一人大柄の男が入って、直ぐにドアの両脇にそれぞれ跪いた。

 

「それでは…地上本部 統合事務次官 ザイン・コアタイルが御子息 セブン・コアタイル准陸佐のおな~~~~り~~~~!!」

 

男が張り上げた声に合わせて、どこからともなく流れたファンファーレの音色と共に、ラウンジの扉が開き、足音が聞こえる。

 

「おいおい…いつの時代のGrand familyのお出ましだよ…?」

 

「ここまで気取ってると、高貴というよりは唯のバカだな…」

 

優雅を通り越して滑稽ささえも感じる大袈裟なパフォーマンスを前に、政宗とヴィータが呆れていると、ドアの向こうから一人の豪華な服を着た男が現れた。

 

政宗達は一目でそれが、今回のなのはの見合い相手…“セブン・コアタイル”なる御曹司である事を理解した。

 

年は政宗と同い年か少し年上くらい辺りか…

前情報で送られていた写真のとおり、男でありながら金色の髪を腰の当たりまで長く伸ばしていた。

エリート特有の高飛車なオーラを漂わせながらも、少なくとも容姿だけであれば貴族の名に恥じぬ優雅さを感じさせる美男であった。

 

だが、問題はその装いである。武装隊の将校を示す袖付きの制服は、通常の茶色や、なのはの着る白、フェイトの着る黒、はやてが時折着る青色のものとも異なる。

高貴な紅に染まった特注品であり、その胸元には大小様々な形状の勲章が横一列に線を描くように並べられている。

 

更に足元をよく見ると、きれいに磨き上げられた靴にまで勲章が2、3個付けられており、まさに一人勲章ギャラリーの様なその姿は高貴さを通り越して最早滑稽以外の何物でもなかった。

本来、将校の勲章というものは胸元の片側に、多くても5、6個程度付けるだけの筈であるが、この男は全身に身につける事で自らの功績を過剰なまでに誇示している様だ。

 

政宗、小十郎、ヴィータの3人はセブンの自己顕示欲全開な服装を目視するなり、特大のため息をついた。

 

(性格や思想云々以前に、服のSensの段階で問題外過ぎるだろうが!? なんだありゃ!? ウケ狙いのつもりかよ!?)

 

(これは…想像してたものの3倍はクセの凄い野郎が来たな。赤だけに…)

 

(なんで、ここでガ◯ダムネタ?)

 

政宗が念話でツッコむ横で、小十郎とヴィータがやはり念話で漫才の様なやり取りを繰り広げる。

そんな彼らのやり取りを耳にしながら、なのはは一応は階級の上では自分の上であるセブンに向けて、敬礼をしながら迎える。

すると、セブンの後ろから、白塗り顔がインパクト絶大な女ピエロ…否、地上本部・執政総議長 エミーナ・メアリングがひょっこりと現れた。

 

「あら、“りの”さん! よかった無事に来てくれて! ドタキャンでもされちゃったらどうしようかと思ったぁぁ!!」

 

相変わらず空気を読まないテンションと、なのはの名前を覚えないテキトーぶりに六課側だけでなく、セブンや彼と一緒に部屋に入ってきたR7支部隊の隊員達からも「なんだ?こいつは?」と言わんばかりに非難の眼差しを投げかけられる。

しかし、相変わらず本人は素で気づいていないのか、ヘラヘラと軽薄な笑みを崩さなかった。

初めて、エミーナを見た政宗は言葉を失い…それから咳払いをして、隣りにいた小十郎に向かって念話を送る。

 

(小十郎…あのPierrotみたいな女についてはこの際、何があってもNo touchでいくぞ。OK?)

 

(しょ、承知……なんだか、あいつに触れたら二度と抜け出せない混沌に引きずり込まれそうな雰囲気を感じます)

 

エミーナを見た瞬間、本能的な危機感を覚えた政宗と小十郎は心の中でそう示し合わせるのだった。

 

「え、えぇ…本日は大変お日柄もよく、この様な日に議長の媒でお見合いをさせて頂き、光栄に思っています……」

 

なのはは必死に愛想笑いを浮かべながら、エミーナと握手するが、心做しか、その笑顔はやや引きつりがちになっていた。

 

「まぁ、そんなご謙遜を。ナイストゥーミーチュー♪」

 

「ゴホンッ! …そろそろ進めてくれないか? メアリング議長」

 

セブンの脇に立った先ほどの大柄の隊員が苛立たしげに咳払いをしながら、エミーナに催促する。

 

「あら、ごめんなさいね。それでは早速…ほうれい線は恋の活断層! 私、本日の仲人を務めさせて頂きます地上本部 執政総議長 エミーナ・メアリング! 53歳。結婚歴並びに恋人経験未だに無し! 即ち処女―――」

 

「貴様ではない!! セブン坊っちゃんの紹介をしろと言っているのだ!!」

 

得意満面に自己紹介をしだすエミーナに、大柄の男が電光石火のツッコミ。

 

「やぁねぇ、リマック部隊長。 お望みなら、今夜私の部屋にいらしてよくってよ?」

 

「黙れ!このピエロババア! 貴様が執政総議長でなかったら、恥辱罪で逮捕してやるところだ!」

 

「下がれ!」とピエロババアを一喝した男…R7支部隊部隊長 オサム・リマックは改めて、なのはに向かって、隣に立つセブンを紹介した。

 

「改めて……紹介しよう高町空尉。こちらにおわすお方こそ、セブン・コアタイル准陸佐である!

地上本部統合事務次官のザイン・コアタイル少将の御子息であり、名門貴族魔導師 コアタイル家の次期当主 そして若干25歳にして、時空管理局武装隊ミッドチルダ北部第七陸士訓練校主任教官を務めていらっしゃる、まさに我が地上本部の未来を背負って立たれるお方だ!」

 

オサムが胸を張りながら紹介すると、セブンも得意げな笑みを浮かべながら、なのはに向かって、まるで施しを与えるかのように、薬指以外の全ての指に大きな宝石を散りばめた指輪を嵌めた手を差し出してきた。

 

「初めまして、高町一等空尉。私は時空管理局武装隊ミッドチルダ北部第七陸士訓練校主任教官…っとまぁ、それよりもこちらの肩書の方がミッドでは広く知られておりますが…」

 

そう言いながらセブンは差し出していない方の手で、首に巻いた制服と同じ色のネクタイを少し正すと、強調するように声のボリュームを上げてアピールした。

 

「名門貴族魔導師 コアタイル家 次期当主 セブン・コアタイル准陸佐と申します」

 

セブンは態々、もう一度自分の身分を出自させてさっそくアピールを掛けてくる。

この時点で既になのは達の中で既に底辺に落ちていたセブンの評価は完全にマイナスの域に入っていた。

 

(おいおい。自分で『名門』とか言うか?普通。 まるで最上のGentlemanを思い出すぜ。いや…あっちのがまだ行儀は良かった方かもな…)

 

政宗は心の中で、日ノ本にいた頃に伊達の宿敵の一人である通称“羽州の狐”こと“最上義光”の気取った面長の顔と特徴的なカイゼル髭を思い出していた。

 

伊達家の隣国である羽州の国を治める“最上家”の当主であった義光は、隣接する伊達・上杉ともに犬猿の仲であり、政宗達とも何度か戦を交えた経験のあった因縁深い相手であったが、小田原の役以降の伊達軍の弱体化を機に東北の覇者になるべく行動を起こし、天下分け目の戦の折には、東軍総大将である家康に取り入る目的から、中立の構えを見せていた前田軍を卑劣な手段を用いて強引に東軍側に引き入れたという噂も上がっていた。

そんな文字通り“狐”の如き狡猾さと、大袈裟且つ胡散臭く、自分本位な言動から政宗ら伊達軍からも決して、人間性は好かれていなかったものの、このセブンという男はそんな義光でさえも可愛く思える程に腐りきった人間であると、政宗は本能的に直感した。

 

 

そう考えていた時、セブンの視線が不意に政宗、小十郎、ヴィータへと向けられた。

今まで存在を無視されていた感があるか、3人共特に気にしてはいなかった。

 

「おや。そこにいるのは貴方の部下ですかな? 高町空尉」

 

「あっ…いえ、部下というよりは、皆同じ“機動六課”の仲間です。私の分隊で副隊長をやっていますヴィータ二等空尉に、委託隊員の伊達政宗さんと片倉小十郎さんです。今日のお見合いには、六課からの立会人として同伴して頂きました」

 

なのはのその言葉を聞いたセブンは、3人…特に政宗や小十郎に対してまるで値踏みをするかのように、どこか嘲る様な眼差しでじっと見つめてきた。

 

「ふぅん…見たところ、そっちの男2人は魔導師でもなさそうだが…?」

 

「はい。こちらに送迎する際に確認しましたが、2人とも非魔力保持者です」

 

横に控えていたエンネアが淡々と説明していた。

途端にセブンは、小馬鹿にするように政宗と小十郎に向かってドヤ顔を決めてきた。

 

「やれやれ…機動六課とは魔力の有無や家柄、経歴を一切伴わない官民混合の実力主義の部隊とは聞いていましたが…まさかこの様な神聖な見合いの立会人に、非魔力保持者の委託隊員…それも見るからに愚連隊上がりな人間を寄越してくるとは、随分私も見くびられたみたいですね」

 

「…………」

 

「あっ?」

 

政宗の眼帯を着けた顔を見つめながら、厭味を吐くセブンの言葉に、小十郎は無言のまま眉を顰め、ヴィータもピクリと反応しながら不機嫌そうな顔を浮かべた。

 

一方、露骨に蔑まれた政宗は、表面上は冷静な面持ちを崩すこと無く、セブンの顔をじっと見つめていた。

そんな政宗とセブンを交互に見据えながら、なのはは少し語気を強めて反論した。

 

「セブン准陸佐…お言葉ですが、政宗さんや小十郎さんは今は訳あって次元漂流者として私達の部隊に逗留していますが、2人共、委託隊員としては至って真面目に任務をこなしております。素行は多少クセがあるかもしれませんが、決して『愚連隊上がり』などと蔑まれる謂れはございませんので、その辺りのところはご理解下さい」

 

なのはが少し怒っているかのような言葉にセブンは一瞬、呆気に取られていたがすぐに不遜な笑みを取り戻した。

 

「それはどうも失礼を。いやはや、高町空尉は本当にお優しいお方ですね。左様な非魔力保持者の委託隊員の浮浪者にも、慈悲深い心を向けるとは…このセブン・コアタイル。いたく感銘を受けましたとも。なぁ、オサム?」

 

「えぇ…仰るとおり。高町空尉は噂通りの慈悲深いお方ですなぁ」

 

セブンやオサムをはじめ、エンネアを覗いたR7支部隊の隊員達は口ではなのはを称賛するような事を言いつつも、その表情には明らかに嘲笑が浮かんでいた。

とても、初対面の見合い相手に対する態度ではないセブン達の態度に憤慨したのはヴィータだった。

 

「こいつら…調子乗んのもいい加減に――――」

 

「待て、ヴィータ。気持ちはわかるが、いきなりいざこざを起こすのはマズい。今は耐え時だ…」

 

ヴィータが歯を食いしばりながら踏み出しそうになるのを、小十郎が手で制した。

 

(で…でもよぉ、小十郎!)

 

(わかっている。俺も政宗様も気持ちは同じだ。見ろ)

 

そう念話で話しながら、小十郎が政宗の方を指差す。

見ると、政宗は確かに表情は冷静な面持ちを崩していなかったが、そのこめかみには、はっきりと青筋が浮かんでいるのが見えた。

自分や小十郎のみならず、それを庇おうとしたなのはの事さえも嘲笑したセブンの振る舞いに、表にこそ出ていないが、政宗の怒りのボルテージは格段に上昇した事が覗える。

 

ヴィータ同様にこの場で、その怒りを顕にしない事が不思議なくらいだった。

 

 

初っ端からギスギスしまくりな空気を知ってか、知らずか……否、おそらくは知らないであろうエミーナが、ここで、場違いにも程がある呑気な声を上げた。

 

「それじゃあ、ご両人方。ご親睦が深まったところで、まずはお席について歓談と参りましょう」

 

「いや、これのどこが『親睦が深まった』と思うんだよ!?」っと、ツッコみたい衝動を必死に抑えるヴィータや小十郎を尻目に、エミーナはセブンとオサム、エンネアをラウンジの中央にある大きな長テーブルの上座の席、なのはや政宗達を下座の席にそれぞれ促してから、自分は秘書官である男性局員のジミーを伴って、それぞれの間に用意された席に腰掛け、いよいよお見合いは幕を上げた。

 

既に自分の中では“最低最悪”の烙印を押していた政宗であったが、もう少しこのバカ御曹司…セブンの驕り高ぶる様を見守ってやろうと、その湧き上がる怒りや苛立ちが表に出ない様に必死に堪えるのだった。

 

「ささっ! 高町空尉! 私の事を知りたければ、ご遠慮無くなんでもどうぞ? 私はどんな質問でも、清く正しく誠実に、お答えしますよ!」

 

「は……はぁ………?」

 

セブンは態々、もう一度自分の身分を出自させてさっそくアピールを掛けてくる。

この時点で、政宗同様に、なのはの中でも既に彼の印象は最低最悪なものとなっていた。

できる事なら、これ以上こんな男の事など知りたくもない…

 

それでも、必死に自分の本音を抑えながら、なのはは引きつりそうになる笑顔を浮かべて、尋ねた。

 

「え、え~っと…それじゃあ…セブン准陸佐はその…ご趣味は…なんですか?」

 

「趣味ですか? 私はこう見えて“賭け事”が大好きでねぇ。毎晩カジノではVIPルームを貸し切って、仲間とポーカーかブラックジャックかバカラを楽しんでますよ!」

 

(えっ!? えぇ…えええぇ?!)

 

いきなり『賭博』という、見合いの席で言い出せば、即刻お断り間違いなしなNGワードを言い出したセブンの常識の無さに、なのはも、政宗達も思わず空いた口が塞がらなかった。

 

「驚かれましたか? なんたって私程の男となれば、カジノのVIPルームのひとつかふたつ。一晩単位で貸し切る事ができるものですからねぇ」

 

(そういう問題じゃねぇだろ!? 何、見合いの席に『Gamble』なんてLow impressionな趣味持ち出してきてんだよ!? 常識知らずにも程があるだろ、コイツ!!)

 

政宗は心の中で盛大にシャウトする。

小十郎やヴィータも同じ思いを抱いていた様で、目を閉じたまま、うんうんと同調する様に頷いていた。

 

「じゃ、じゃあ質問変えますね! 座右の銘とかってあるのですか?」

 

なのはもこれ以上、この質問に触れていたら、ますます常識外れな方向に進んでしまうと直感し、慌てて話題を切り替えた。

 

「座右の銘ですか? そうですねぇ…強いて言うなら『非魔力保持者のものは魔導師のもの、魔導師のものはコアタイル家のもの』……ですかねぇ?」

 

「…………な、なんですか? それ?」

 

(そんな座右の銘、聞いた事ねぇよ!!)

 

今度はヴィータがツッコミを決め込み、なのはの引きつった笑顔に冷や汗が浮かんだ。

 

「おっと失礼。これは私の実家に古くから伝わる直伝の辞書に記された偉言でした。まぁ、魔法の使えない下級国民や家柄の乏しい低級魔導師共には理解できないので、あまり私も公には口にしていないのですが…」

 

((((「魔法の使えない…下級国民」?))))

 

セブンの口から自然と溢れた意味深な言葉に政宗は隻眼の眉を顰め、なのはも思わず胸の内の不快感が顔に浮びそうになった。

彼の気品の仮面で隠した下劣な本性は少しずつながら、着実に垣間見えつつあった。

 

「ちなみに私は魔法史の中にある格言を集め、辞書を作る事も興味があります。偉大なる貴族魔導師達の格言を聞き、知識を高める事はとても至福の時と思えますからねぇ。尤も…私が一番至福を感じるのは、その自作の辞書を読みながら、大好物のヘンシェル諸島産のキャビアを肴に、シェリー樽熟成の高級ウイスキーを傾けている時ですが…」

 

ふてぶてしい程に気障なセブンの態度に、なのはもこれ以上、付き合いきれないと言わんばかりに辟易した表情が見て取れたが、政宗は人知れずなのはの背中を叩きながら励ました。

気持ちはわかるが、今は断るタイミングではない…もう少しだけ我慢させる必要があった。

 

「ず…随分とお洒落なものがお好きなのですね……ちなみに…嫌いなものとかは…?」

 

なのはは、心理的疲労を必死に胸の内に収めながら、困惑した笑顔で別の質問をする。

 

「嫌いなもの…ですか? あぁ…高町空尉には大変申し訳ないのですが、私、貴方の故郷の『地球』産の食文化“和食”という食事に何度か触れた事があるのですが…あれがどうも口に合わなくてねぇ…味付けにしても、見た目にしても、食材にしても、派手さがまるでなくて面白味がない……特にあの“ネギ”とかいう臭いだけの野菜を食べた時には豚の餌でも食べさせられた気分になりました。あんなものは芋虫も食べませんよ」

 

 

ベキッ!!!

 

 

刹那、変な音を耳にしたなのは、政宗、ヴィータが振り向くと、小十郎が椅子の手すりを握りつぶして悶絶していた。

直後、なのは達の脳裏にまるで魍魎の怨念の様な声が轟く様に聞こえてきた。

 

 

コ、コノクソガキガァァァ…イマスグココデ、テメェヲ、ヤツザキニシテ、ハラワタヒキズリダシテ、メンタマクリヌイテ、ケツノアナニゴボウツキタテテ――――

 

 

小十郎は顔を伏せて、なんとか向こうから表情が伺えない様にしながらも、その形相は真っ赤に染まった目から血の涙を流すというホラー映画顔負けの悍ましいものであったが、その理由は最早、語るまでもない…

“ネギ”は小十郎の大好物。

そのネギをあろうことか「豚の餌」と貶したセブンの傍若無人ぶりに、小十郎は今にも鬼神になり果てんばかりに激怒しつつあった。

 

(こ、小十郎! Stop! Stop!!)

 

(後生だから、もう少しだけ辛抱しろっての!)

 

政宗とヴィータが必死に念話で宥める中、その怒りを身に感じて震えながら、なのははセブン達の気が小十郎に向かない様に、話を逸らす事にした。

 

「そ、それにしても、お話を聞いていると、流石は名家の御嫡男でね…色々と気高いお考えを持っていらして……」

 

最早、褒めどころのないセブンに、どうにかお世辞の言葉を苦し紛れに絞り出しながら、なのはは話した。

まともな者が見れば明らかに無理矢理に褒めどころを見つけようと必死になっているのが目に見えているが、それさえもセブンは気づいていない様子だった。

 

「いえいえ。 これくらい、ミッドチルダ最高位の貴族魔導師の栄光なる“7代目”を継ぐ私にしてみれば当然。それに貴方は私を羨んでいますが、これでも私はいろいろと父上の重臣達からは色々と期待され過ぎていてねぇ。 輝かしい将来が約束されている者というのは、いろいろ面倒なものですよ」

 

「そ…そうなんですかぁ…アハハ……(何言ってんだろう? この人…)」

 

最早、ナルシストなんて可愛い話でない程に自惚れまくりなセブンに、なのはは失笑を浮かべ、とうとう心の中で明確に呆れるまでになった。

しかし、そんな事などお構いなしにセブンは芝居がかった仕草でさらに話し続ける。

 

「実は第七陸士訓練校の主任教官の役職を得られているのも、すべてはウチの家の栄光と功績があってこその賜物なのですよ。

っというのも第七陸士訓練校のそもそもの起こりは、私の祖父 コアタイル家5代目当主 ジーベン・コアタイルが設立した私立の魔術学校だったのです。同校が管理局の管轄となって以降も我がコアタイル家は第七陸士訓練校の名誉教員一族として、同校において如何に優秀かつ才能に溢れた魔導師の卵達の育成に尽力してきました。 勿論、私自身や私の妹、ここに控えますエンネアもまた、それぞれ同校を“主席”で卒業しています」

 

「そ、そうなんですか…」

 

ここへきて、セブンの話はコアタイル家の自慢話でしかならなくなってきているが、それでもなのはは“表面上は”笑顔のまま、そろそろ上手いこと断りの返事に持っていこうと考え、この話に乗る事にした。

 

「そして、父の威光を持って、地上本部に特殊作戦群『星杖十字団』が創設されてからは、我がコアタイル家は同組織との根強い連携をとる事となり、我が第七陸士訓練校は多くの卒業生を同師団に送り出してきました。特に我が右腕、オサムが部隊長、エンネアが副隊長を務めますR7支部隊は、ここラコニアの街に拠点を設け、街の周辺の古代の遺跡などを狙う盗掘者を日々取り締まる重要な使命を帯びています。

この街の治安が保たれているのは、彼らの目覚ましい活躍のおかげなのです! 本日、私がこの街を見合いの会場に選んだのは、貴方に是非、我が第七陸士訓練校のOB達の奮闘ぶりをその目で拝見していただきたいと思いましてね」

 

「は…はぁ…」

 

「そうだ。もしよかったら、この後、私と一緒にR7支部隊を視察しに参りませんか? 実はこの街の郊外にあるレシオ山という山の山頂に同部隊の隊舎があるのですが…」

 

セブンがそう言うと、オサムもそれに同調する様に頷いた。

 

「それは名案ですな坊っちゃん! かの“エース・オブ・エース”が、視察に訪れたとなれば、我がR7支部の一同、熱烈な歓迎を致すと思います! どうだね? 高町空尉」

 

「えっ…う、うーん…さ、流石にプライベートで前触れもなく視察というのはちょっとそちらの部隊に対してご迷惑かと思いますし…そういうお話はお見合いが終わる頃にお話ししませんか?」

 

「ハハハハハ! 高町空尉は本当に謙虚なお人ですねぇ! 大丈夫! もうご存知かと思いますが、このR7支部隊は実質私の意志に忠実な配下も同然です。貴方を私的に訪問させる事くらい造作もありませんよ。そうであろうオサム?」

 

「はっ! そのとおりであります!」

 

「……………」

 

なのはは、これを好機と踏んで、それとなく断る方向に持っていこうとしたが、セブンはその意図に気づいていない様子だった。

 

「ちなみに何故、R7支部隊に対して私がこれだけの、厚い加護を施すかお分かりですか?」

 

「…………ご自分の名前繋がりとか?」

 

なのはがやや気だるげに答えた。

すると、セブンは大袈裟な仕草を交えながら声を張り上げた。

 

「そのとおりです! “7”は私にとって…我がコアタイル家にとっても栄光のラッキーナンバー! ”7の数の下に一切の穢れは無い”をモットーに掲げて、教え子達にもそう教導している程に、私にとって7はとても思い入れ深い数字だからです!」

 

(こんな奴に思い入れられるなんて、まさに“lucky 7”も名折れだな…)

 

政宗は怒りを通り越して、冷ややかな目でセブンを睨みながら心の内で侮蔑した。

 

「教導…って事は、セブン准陸佐も訓練校では生徒達にご自分でお教えする事もあるという事ですか?」

 

なのはが何気なくそう質問を投げかけたが、それがセブンを余計に調子に乗らせる事になってしまった。

 

「えぇ。ご存知かと思いますが、我が第七陸士訓練校はミッドでも有数の魔法教育に力を入れた教育機関。常に優秀な魔導師を選出する為に、私が独自の訓練方法を提言し、それに基づいた訓練を行っております。すべては生徒達を魔法という絶対無二な力を持て余す事無く、有能にかつ完璧に使いこなせる素晴らしき魔導師に育てる為です」

 

ワザとらしく髪を掻き上げながら、セブンは得意げにほくそ笑みながら続ける。

その様子を見た政宗は、鋭い目つきをさらに鋭くさせる。

 

「へぇ…一体どういった訓練なんです?」

 

「そうですねぇ…まずは、第七陸士訓練校では入学する生徒達の選出も出自から選考します。貴族魔導師の家系の出身者は言わずもがな、管理局における優秀な士官の子息や息女、あるいは魔力などに才能の高い人材しか、私共のところでは入れる事はありません。才能のない凡人や、才能を使いこなせない愚か者は、それこそ平凡な訓練校にでも行っていればいいのです。ましてや魔力がない“下級国民”共など事務員や清掃係としてくらいしか、学校に入れる事もありません」

 

「「「「……はぁっ!?」」」」

 

セブンのその言葉に、政宗達だけでなく、とうとうなのはも苛立ちを押さえる事が出来ず、思わず不機嫌そうな声が漏れてしまう。

 

「そうそう。高町空尉は、たしか第四陸士訓練校の短期プログラムをご卒業なさったとお聞きしましたが……残念ですねぇ。貴方程の才能豊かな方なら、我が校に入ればきっと素晴らしい成績を残していた事でしょうに。 あんな凡人共が通う学校などではなく…」

 

ここが見合いの席である事を忘れているのか定かでないが、とうとうなのはの出身校までも罵倒し始めたセブンに、なのはのこめかみにも薄っすらとだが青筋が浮かんだ。

そんな彼らの怒りに気づいていないセブンは、そのまま『自慢』という名の凡人や民間人への嘲笑を続ける。

 

「我が校は、仮に入校できたとしても生徒各々の才能を引き伸ばせなければ意味はありません。

そこで私の考えた方針はまず訓練ごとに生徒達にノルマを与え、それが一定の数値を超える結果を出せなければ、その者は凡人と同じと見なして即退校処分。

そうしていく事でやがて学校には本当のエリートしか残らなくなる」

 

「で…でもセブン准陸佐。魔法以外にも何か生徒達の才能を引き伸ばす剣術や武術などの教訓はしていないのですか?」

 

なのはの質問にセブンは一瞬目を丸くした後…

 

「剣術? 武術?…アハハハハ! 高町空尉も冗談の上手い人ですねぇ!」

 

そう声を上げて笑い出す。

そんな彼の態度にますます不快感と怒りを覚えるなのは達。

 

「私は訓練校では魔法以外に何も教えてはいません。もちろん私に忠実なこのR7部隊の隊員達も全員魔法のみ特化したエリートばかりです。

武術なんて我々のような、真に高貴な貴族魔導師にとってはせいぜい体力づくりの為の基礎教育程度にしか役に立ちませんよ。

くだらない剣術(チャンバラ)武術(ステゴロ)などは、未だ古代ベルカやドミナリアの騎士道物語に憧れるような物好きか、それこそ魔法を使えない下級国民共が、せめて我ら魔導師と対等の位置に立ちたいが為に覚える愚の骨頂です。あんなものを覚える暇があるなら、射撃魔法の一つでも覚える方が賢明だと私は思いますけどねぇ」

 

「この野郎―――ッ!!?」

 

(待て! ヴィータ!)

 

自分達“ベルカの騎士”を愚弄する発言したセブンに対し、ヴィータが思わず、グラーフアイゼンをセットアップしながら、立ち上がりそうになるのを今度は小十郎が抑える事になった。

 

しかし、このセブンという男…悪い意味で典型的なエリート気質の男であると、政宗達は嫌という程理解できた。

 

魔法こそが最高の術であると信じ、それ以外の武術やそれを使用する者…そしてなにより魔法を使えない人間を『下級国民』と蔑み、徹底的に格下に見る…

 

まさに「高貴なのは表面だけの有象無象」という言葉がこれ以上似合う者のいない最低最悪の男であった……

 

 

「さて…随分私の事ばかり話してしまいましたが…どのみち、私としてはもう答えは出ているので、後は貴方の意見を窺うだけです。高町空尉」

 

散々、自分の自慢話を一方的にした挙げ句に、なのはの事を何一つ尋ねる事もないまま、セブンは急にプロポーズを切り出してきた。

 

「どうですか? 高町空尉。“エース・オブ・エース”の肩書を持つ貴方と、ミッドチルダ最高峰の貴族魔導師の未来を担う使命を持った私が所帯を持つことで、我々“コアタイル一族”はさらなる繁栄に向かう事は間違いありません」

 

「……………」

 

「そして…ゆくゆくは、非魔力保持者(下等国民)の分際でいつまでも我が物顔で地上本部防衛長官の椅子にのさばり続けているあの忌々しいレジアス・ゲイズをも追い落とし、地上本部を我々コアタイル派が掌握し、魔導師のための理想的な組織へと改変させる事も不可能ではない。そして私が新しい防衛長官の位についた暁には、貴方も統合事務次官の地位を与えますよ。私の“妻”という最高のポストと共に…ね?」

 

「…………………」

 

「素晴らしい未来でしょう? 今回の話、受けていただけませんか?」

 

最後は、よく飾り立てられた言葉を並び立てて追い込みを掛けようとするセブン。

しかしその言葉から伺える真の目的は、明らかになのはの幸せより、自分の名誉欲である。

こんなプロポーズ、なのはからして見れば、腹立たしい事この上無いものであった。

 

「どうした? 早く返事を返さないか。高町空尉」

 

なかなか返答を返さないなのはに、オサムが催促を促した。

 

「高町空尉。まさかとは思いますが…セブン様の申し出を断るつもりではありませんよね?」

 

すると、今まで黙っていたエンネアもまるで脅しを駆けるように言い添えてくる。

オサムとエンネアの放つ圧力に圧されそうになりながらも、なのはは意を決して断りの言葉を返そうとした。

 

「……ッ…あいにくですが―――」

 

 

 

「Ha! まさか、今のSubordinateなSpeechを、本気でProposalにしているつもりでいやがったのか? だとしたらアンタはJokeのSensも壊滅的ってとこだな!」

 

 

 

それよりも早く、政宗が広いラウンジ中に反響せんばかりにはっきりとした声量で堂々と言い放った。

 

「政宗さん!」

 

なのはの目が輝いた。

その挑発的な一言で、ここまで上機嫌だったセブンの顔から驕り高ぶった笑顔が一瞬で消えた。

そして、オサム、エンネアらR7支部隊の隊員達と共に、声の主である政宗を睨みつける。

 

「な…なんだお前は!? セブン様の告白を侮辱するなど無礼な奴め!!」

 

オサムが怒りに任せて声を張り上げる中、セブンも心底不愉快そうな怒声を政宗に向かって投げかける。

 

「私は高町空尉の意見を聞いているんだ! 立会人の出る幕などない! 下がっていろ!」

 

「Ah!?」

 

「「――――ッ!?」」

 

政宗は即座にそれ以上の睨みを返して、セブンとオサムを黙らせた。

エンネアでさえも、彼の放つ怒気と殺気に思わず息を呑んでしまう。

 

「…テメェらにひとつRevealしてやる事がある…俺はこの見合いに“立会人”のつもりで来たわけじゃねぇ…」

 

「な…なんだと!? では貴様は一体何なんだ!?」

 

オサムがやや及び腰になりながらも高圧的に問いかけると、政宗は徐に席を立ち上がったかと思いきや、突然なのはの首に両手を回して抱え込んでみせた。

 

「「「「「んなっ!?」」」」」

 

(ひゃう!? ま…政宗さん!?)

 

その光景を見たセブンやR7支部隊の隊員達だけでなく、ここまで蚊帳の外にされていた仲人のエミーナとその秘書官 ジミー、そして小十郎やヴィータ、なのは本人でさえも突然の事に驚き、なのはに至っては顔を真っ赤に染め、体温と心臓の鼓動が昂ぶってくるのを感じた。

 

 

 

「…見ての通りだ。俺は……高町なのはの“恋人(Fiance)”だッ!

 

 

 

「えぇっ!?」

 

「ば、バカな…!? それは本当ですか!? 高町空尉!?」

 

政宗が躊躇する事なく堂々とセブン達に向かって宣言すると、エミーナが思わず呆けた声を上げ、エンネアは動揺しながらなのはに確認をとる。

 

「そ…そうです! 政宗さんは私の……恋人です!!」

 

なのはは顔を赤らめながらも、はっきりと宣言してみせた。

忽ちセブン達の表情に動揺、そして怒りの色が浮かんだ。

 

「なにぃ!? するとあれか!? 貴様は自分の恋人を見合いの席に立ち会わせたというのか!? なんて非常識な女だ!!」

 

さっきまで、なのはを煽てていたはずのオサムが一転して、口汚く罵倒する。

それに対してヴィータは「テメェらが言えた口か!」と言わんばかりに軽蔑の視線を投げかけた。

 

一方、仲人のエミーナ達はまだ状況が理解できないのか口をパクパクと動かして呆然としていた。

 

「おい、セブンとかいったか? そう言う訳だ。悪いが、なのはの婚約者はもう間に合っている。つまり…出る幕がねぇのはテメェの方だ。You see?」

 

「おのれ無礼なッ! 坊っちゃんに対して何たる口の利き方を…!」

 

「まぁ、待てオサム」

 

政宗が不敵な笑みを投げかけると、オサムが、火が噴き出す如く激烈な睨みを政宗へとぶつけてくる。

それを制止したのは当のセブンだった。

 

「坊っちゃん!? し、しかしこの男は―――」

 

「そう取り乱すな。『金持ち喧嘩せず』という言葉があるだろう? ここで事を荒立てて、それこそ貴族魔導師としての品位を削ぐような真似をしては元も子もない。ダテ・マサムネ…とか言ったな? どうだろうか? ここはお互い大人同士、建設的に解決するというのは如何かな?」

 

「Hum…? どうするって言うんだ?」

 

政宗が挑発的な態度を崩さずに尋ねた。

 

「3000万…否、5000万ワイズ支払おう。 それで、高町空尉の事はきっぱり諦めてくれないかな?」

 

「んなっ!? テメェ! なのはを金で買うつもりかよ!?」

 

ヴィータが、怒りと嫌悪の感情の入り混じった様な表情を浮かべながら、奮然と立ち上がってセブンを糾弾した。

同じく、小十郎も「何を言ってるんだコイツは」と非難と蔑視の眼差しでセブンを睨みつけた。

だが、セブン自身は自分が言っている事がまるで当然の事と言わんばかりに自信満々な口ぶりで反論する。

 

「勘違いしないでほしいな。これは“示談交渉”だよ。非魔力保持者(力無き下級国民共)を相手にする時にはこうする事で、今まで全て平和的に解決してきたのさ。特に政宗()の様な品位のない野蛮な輩達を相手にした時には尚更ね…?」

 

セブンがあからさまに主を侮辱する言葉を嘯いた事に反応した小十郎が、椅子から立ち上がりそうになるのを、片手を差し出して制止すると、政宗は不敵な笑みを浮かべたまま語りかけた。

 

「……大した自信じゃねぇかRoyal Prince。 だがテメェの自慢のFatherからこんな事を教わらなかったか? 『人を見た目で判断するもんじゃねぇ』ってな?」

 

「なんだって?」

 

政宗の言葉に、セブンは怪訝な表情を浮かべながら聞き返した。

 

「…確かに俺は、魔導師じゃねぇし、魔力なんてものもねぇ。だが、それだけで俺の力量ってものを決めつけるのは、Eliteにしては些か早合点が過ぎるんじゃねぇかってちょっとしたAdviceだ」

 

「き、貴様ッ! 非魔力保持者風情が坊っちゃんにアドバイスだと!?」

 

またしてもオサムが、いの一番に激昂する中、セブンは一瞬高ぶりそうになる気持ちを鎮めるように鼻で笑いながら、頭を左右に振った。

 

「……ふんっ! そんなもの、お前みたいな下級国民から偉そうに教授される必要もない! わかりきった話ではないか! それともあれか…?」

 

そう言いながら、指をパチンと鳴らすと、彼の両脇を固めていたオサムとエンネア、そして彼らの後ろに控えていた星杖十字団R7支部隊の隊員達が一斉にデバイスを手に、いつでも攻撃態勢がとれるように身構え始めた。

 

明らかに一触即発な状況を前に、なのは達も椅子から立ち上がり、ヴィータがなのはを庇うように前に立ちながら、待機モードのグラーフアイゼンを構え、何時でもセットアップできるようにし、小十郎も政宗の脇に控えるように立って、主がいつ動き出しても良いように準備した。

 

一方、エミーナ達仲人席の者は、突然の事態にどうすればよいかわからず、冷や汗を浮かべながら、アワアワと狼狽えるばかりだった。

 

「我が地上最高の精鋭師団『星杖十字団(せいじょうじゅうじだん)』―――その栄光の“7”の数字を携えしR7支部隊―――この強力な戦力を前にして、非魔力保持者であるお前が…しかも、事もあろうに“丸腰”で手向かおうだなんて、愚かな真似を考えてはいないだろな?」

 

「…………」

 

政宗は無言のまま、セブンの不遜に満ちたほくそ笑みを睨みつける。

すると、セブンは彼にさらなる絶望を与えるつもりなのか、取ってつけた様に言い添える。

 

「あぁ、そうだ。ついでに忠告してやろう。このホテル『Cassiopeia Plaza』には、R7支部隊の中でも主戦力といえる精鋭30人が集まっている。つまり、ここでお前達がどう抗おうが、勝ち目などないという話さ…尤も…お前達が魔力保有指数ゼロの時点で勝ち目など端から存在しないがな?」

 

セブンはそう言うと、既に敵将の首を取ったかのような愉悦と蔑みに満ちた視線を政宗に投げかけてきた。

 

(な…なんて嫌な人なの……!?)

 

(とんでもねぇド腐れ野郎じゃねぇか!?)

 

どこまでも、慢心と選民思想に毒された彼の振る舞いに、なのはは勿論、ヴィータでさえもドン引きを通り越して、恐怖さえ感じた。

 

「…さて…これで、わかってもらえたかな? 下級国民君?」

 

セブンがトドメを刺すかのように、政宗に畳み掛けるように尋ねる。

すると政宗は…

 

「………OK よくわかった」

 

「ま、政宗さん!?」

 

「お、おい! 政宗!」

 

小さく頷きながら、応える。

そんな政宗の返答になのはとヴィータが驚き、セブンがニヤリと口の端を釣り上げ、歯をむき出しにしながら厭らしく笑った。

 

「結構…では、立会人ではない以上、君にはここに居合わせてもらう必要はないので、お引取り願おうか?」

 

セブンがそう言ってオサムに目で合図を送ると、オサムは後ろに控えていた隊員の内、二人の男性隊員に手短に命令した。

 

「あの不敬な男をここからつまみ出せ」

 

命令を受けた隊員達は政宗に近づき、それぞれ両脇からその腕を掴もうとした。

 

次の瞬間―――

 

 

「グアッ!?」

 

「ガッ!?」

 

 

一人は政宗が鳩尾に打ち込んだ肘鉄により、もう一人は喉元に突き立てられた手刀により、それぞれ一瞬で地面に両膝を付いて倒れ込んでしまった。

なのはとヴィータが目を丸くして驚く一方、小十郎は政宗が不覚をとるはずがないと端から信じていたのか、庇う仕草さえもとっていなかった。

 

「「「「「なっ!!?」」」」」

 

まさかの政宗の行動と、隊員2人が一瞬で倒された様子にセブンとオサム、エンネア、そして他のR7支部隊員達が動揺する。

そして、政宗は首に巻いていたネクタイを外しながら、動揺するセブンに向かって不敵な笑みを投げかけながら、啖呵を切ってみせた。

 

「テメェには、絶対になのはを渡すわけにはいかねぇ! どうしても欲しいっていうなら、テメェが崇めるその“魔法”でこの竜の首を取ってから、力づくで奪ってみせな! Milky Boy!」

 

政宗の宣戦布告も同然なその言葉に、流石のセブンもその顔に怒りを顕にする。

 

「なっ!? お、お前! この俺を誰の息子だと思っているんだ!? 俺に逆らうという事は地上本部 統合事務次官にして、ミッドチルダの貴族魔導師達の最高権威であるザイン・コアタイルに逆らうという事と同じだぞ!? つまり、俺がその気になればお前を危険分子として勾留する事だってできるのだぞッ!?」

 

見下していた筈の非魔力保持者からのまさかの反論と挑発に驚くあまり、メッキが剥がれた様に、それまでの高貴な口ぶりをかなぐり捨てて、口汚い言葉で喚きはじめるセブン。

 

「そいつは大した力だな! んで、俺を勾留してくれんのはテメェか? それともテメェの両脇にピッタリ張り付いてる忠実なPet dog共か? はたまた俺の足元で気絶しているコイツらか?」

 

政宗がセブンと、オサム、エンネア、そして床に倒れている2人の隊員をそれぞれ一瞥しながら飄々とした口ぶりで更に挑発した。

それを聞いたセブンとR7支部隊…特に部隊長のオサムは眉間に大きな青筋を立てる程に怒りを顕にする。

 

「貴様ぁ! セブン様のみならず、我ら『星杖十字団』R7支部隊までもコケにするとは、もう堪忍ならん!! エンネア!お前達! 部隊長命令だ! あの男を坊っちゃんへの“侮辱罪”と、我々への“公務執行妨害”で逮捕しろ!」

 

オサムがデバイスの穂先を政宗に向けながら、叫んだ。

それに併せる様に他の隊員達が動き出す中、エンネアは戸惑いながら確認しようとする。

 

「し、しかし部隊長…! ここで抗争など起こせば、セブン様の見合いが…!?」

 

そんなエンネアの懸念を一蹴したのは、セブン自身だった。

 

「見合いなど知った事か! 我がコアタイル家に対して然るべき敬意を払わぬ愚か者は決して許さん! それが非魔力保持者であるのならば尚更だ! オサム! エンネア! あの無神経な不届き者を叩きのめせ! 手に余る様なら“潰して”も構わん!!」

 

セブンがそうR7支部隊隊員達をけしかけると、忽ち、隊員達は部屋中に円形を描くように展開し、政宗だけでなく、部屋にいる全員を逃さない様にしてしまった。

 

「あわわわわわわ…!? ぎ、議長どうしましょう!?」

 

知らず内に自分達まで巻き込まれた事を悟ったエミーナの秘書官 ジミーが涙目になりながら狼狽える。

 

「お、落ち着きなさいジミー! こういう時は…え~っと……あれよ! タイムマシンを探しましょう!!」

 

「いや、貴方が一番落ち着いてくださいよ! っていうかこんな時にそんなふざけた事言ってる場合ですか!?」

 

キレるジミーを他所に、部屋中に展開したR7支部隊員達は何時でも政宗に向かって魔法を放てるようにデバイスの穂先を彼に向けて構えていた。

流石の政宗も、これだけの数の魔導師を相手に素手で挑むのは無謀だと悟り、心の中で舌打ちをした。

 

「政宗様…ッ!!」

 

それを見た小十郎が部屋を見渡して、ふと自分のすぐ脇にある近くの壁に立てかけられたレリーフに☓の字を描くように飾られていた二振りの儀式用のサーベルが目に留まった。

しかも、好都合な事にその周囲にはR7支部隊員達は誰も立っておらず、邪魔される心配はなかった。

 

小十郎はセブンやオサム達の視線が政宗に一点集中しているのを確認すると、すかさずレリーフに駆け寄り、二本のサーベルを鞘から引き抜いた。

 

「政宗様! 一先ずこの場は、これでお凌ぎ下さい!!」

 

小十郎が主君の下に駆け寄りながら、手にしたサーベルの内、一本を手渡す。

 

「Oh! Thank you 小十郎! それでこそだ!」

 

政宗が不敵に笑いながらサーベルを受け取り、小十郎も笑みを返して応えると、そのまま政宗と背中を合わせるようにして佇み、自らもサーベルを構えてみせた。

 

「……無礼な非魔力保持者共が…下級国民が何匹増えようが結果は変わらないぞ! やれ!」

 

セブンが合図を送るように手を挙げる。

 

「なのは! こっちだ!」

 

「で、でもヴィータちゃん…!?」

 

ヴィータはなのはを守るようにして部屋の隅に下がり、距離を取った。

 

そして、それを待っていたかのように、一組の男女の隊員がデバイスの穂先を中心に魔力弾を出現させながら威嚇の声を上げた。

 

 

「さぁ! 命が惜しくば、無駄な抵抗はやめろ!」

 

「我ら『星杖十字団』の誅伐の魔弾を受けたくなければ、大人しくセブン様に――――!!」

 

「shut up!!」

 

「「ぐえっ!?」」

 

威嚇すれば抵抗を止めると勝手に踏んだのか、いつまでも魔力弾を発射しようとせずに、能書きを垂れ続ける2人の隊員を、政宗はサーベルの一太刀で叩き伏せる。

 

サーベルは装飾用であった為、当然刃の入っていない模造刀であった。

 

しかし、物自体はなかなか良い質の金属で出来ているのか、政宗が程々に加減しながら振りかぶった一撃だけで、難なく昏倒させたのだった。

 

「ベネッサ! マルクス!…おのれ!この期に及んでまだ我々に歯向かうつもりか!?」

 

「構わん! 撃て!!」

 

倒れた仲間の名を呼びながらオサムが憤慨し、エンネアが近くにいた3人の部下に指示を飛ばした。

 

すると、指示を受けた隊員達の構えたデバイスの穂先に同じ様に魔力弾が灯った。

だが、今度は出し惜しみする間もなく、そのまま政宗に向かって発射された。

 

放たれた魔力弾は一般の魔導師達が放つそれよりは格段に速い…

プロ野球投手が投げる剛速球と称される程のスピードで、政宗に向かって飛んでいった。

 

「Ha! 遅ぇ!」

 

「そうはいくか!」

 

しかし、政宗は余裕の表情を浮かべながら三発の魔力弾の内の二発を打ち弾き、残る一発も小十郎が逆手で叩き落して、防いだ。

弾かれた三発の魔力弾はそれぞれ床と天井で一発ずつ炸裂し、轟音と共にそれぞれに大穴を開ける。

 

「ぎゃああああああぁぁぁ!!」

 

そして、残る一発はテーブルの下に隠れようとしていたエミーナの隣りにいたジミーに直撃して、爆発と共に彼を壁際まで吹き飛ばした。

 

「まぁ! ジミー!」

 

慌てて駆け寄るエミーナの前で、ジミーは体中から白煙を上げながら丸焦げになって失神していた。

それを見たエミーナは、ホロリと目に涙を浮かべる。

 

「あぁ…ジミー…貴方があと2、3歳若かったら、夜の“お楽しみ”に誘っちゃうくらいに貴方のお顔は気に入っていたのに……さよならジミー。貴方の事は次のイケメン秘書官を雇う時まで忘れないわ…エイメン」

 

そう両手を組んで祈った直後…ジミーはがばりと起き上がった。

 

「って死んでねーよ! つぅかアンタと夜の“お楽しみ”なんてこっちから願い下げだわッ! バーカ!!」

 

ジミーはとうとう溜まりに溜まった鬱憤をぶつけるようにタメ口で怒鳴るのだった…

 

 

「うぅ…ヴィータちゃん大丈夫…?」

 

魔力弾が炸裂した際に生じた爆風と粉塵から身を守る為に待機モードのレイジングハートを使って形成した障壁魔法(シールド)で身を守りながらなのはが隣りにいたヴィータに尋ねる。

それに頷いて返すヴィータは、既に騎士服(バリアジャケット)に着替え、セットアップしたグラーフアイゼンを手に持っていた。

 

「あぁ。お陰様でな……ったく! あのバカ息子と腰巾着連中が! 何が地上最高の精鋭師団だよ! いくら貸し切りとはいえ白昼のホテルで魔力弾ぶっ放しやがるなんて、無茶苦茶じゃねぇか!」

 

ヴィータがコアタイル派の強引なやり方に憤慨しながら、迫りくるR7支部隊員達をいなす伊達軍主従に向かって念話で呼びかける。

 

(政宗! 小十郎! 奴らの隙を見て、一回下がれ! アタシも手ぇ貸してやる!)

 

しかし、小十郎の返答は意外なものであった。

 

(いや…! ヴィータ、お前は高町を守れ! コイツらは俺と政宗様でなんとかする)

 

(なっ!? 何言ってんだよ!? まともな得物を持ってない今のお前らじゃ、全力を出して戦えねぇだろ!? アタシだったら、こんな魔法ばかりに特化した連中、ものの数分で全員蹴散らせる事ができる! だから―――)

 

戸惑いながらも尚も食い下がろうとするヴィータだったが、そこへ政宗が激しい戦いの手を止める事なく、冷静に念話で語りかけた。

 

(よく考えろ。仮所属である俺達ならともかく、正規隊員のお前までこのPartyに加わったら、連中に明確な敵対行為として目ぇつけられる可能性がある。それに…)

 

(それに…?)

 

(この井の中のFrog共には竜駆ける天のwideさってものを教えてやらねぇとダメみたいだからな!!)

 

政宗はそう言って、念話を遮断すると再び、R7支部隊との乱闘に集中し、ラウンジの窓ガラスを叩き割るとそのままホテルの外へと戦いの場を移した。

 

「逃がすな!! 絶対に捕まえろ! 別室で待機している連中にも収集をかけるんだ!!」

 

その様子を見たセブンやオサム、エンネアらは政宗と小十郎の後を追って、割れた窓からホテルの中庭の方へと出ていった。

その様子をヴィータは、むず痒そうに見つめていたが…

 

「ったくもぉ! 行くぞなのは!」

 

「えっ! あ、うん!」

 

自分達も中庭に向かうべくラウンジを出て、階段のある方へ向かって駆け出すなのはとヴィータ…

だったが、見合い用のドレス姿にも関わらず、なのははスカートを両手で摘みあげて走り、あっという間にヴィータの視界から消えた。

 

(…えっ!? ちょ……なのはって、あんなに足速かったか?)

 

その様子にヴィータは、思わず目を丸くしながら呆気にとられてしまった。




遂にリブート版で早く書きたかったストーリー上位5位に入るエピソードのひとつ…『なのはの見合いと、政宗VSセブン』が書けました。

自分で言うのもあれなんですが、リブート版のセブンは現時点で少なくともオリジナル版の3倍…否、5倍はクソ野郎にして胸糞野郎になっているかと思います。

読者の皆さん、コイツ(セブン)はどんどん罵倒しちゃってください!
そうした方が、後でコイツに対する胸スカシーンを書く際により力が入りそうです。

っというわけで、次回は早速その胸スカ回第一回目! 乞うご期待下さい!
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