リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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地上本部 統合事務次官の息子 セブン・コアタイル……
その想像以上に下衆な人間性に呆気にとられるなのは達だったが、遂に我慢の限界を迎えた政宗が介入。

お見合いは破綻し、とうとう政宗、小十郎とセブンと彼を護衛する星杖十字団 R7支部隊との抗争に発展する事なってしまった。

果たして戦いの行方は…?
そして政宗はセブンの毒牙からなのはを守りきる事ができるのか…?

成実「食の呼吸 壱ノ型…早食一閃!」

政宗「……どんな呼吸だそれ…?」

小十郎「リリカルBASARA StrikerS 第四十九章 よく来たね…私の可愛い野菜たち ...」

政宗「それじゃあ、唯の『ベジタリアンなお館様』じゃねぇか…」


第四十九章 ~嵐を呼ぶ見合い 激突! 奥州伊達軍VS星杖十字団~

ラウンジの窓からホテルの外へと出た政宗と小十郎の2人はホテルの中庭へと戦いの舞台を移していた。

先程のラウンジでの喧騒による激しい振動と爆音の影響か、中庭ではホテルの従業員達が悲鳴を上げながら、慌てふためいている。

もしこれが、貸し切りではない一般客もいる状態だったら、パニックが起こっていた事は間違いないであろう。

 

そんな一般人も入り乱れる状況にも関わらず、星杖十字団R7支部隊員達は容赦なく魔力弾や魔力レーザーを放ち、その隙を付いて政宗達に拘束魔法(バインド)をかけようとする。

 

「Yeah Haーーーッ!!」

 

「遅い!」

 

だが、政宗も小十郎も軽々とした身のこなしで飛来する弾幕を避け、身体に纏わろうとした輪っか状のバインドをサーベル型の模造刀で振り払ってみせる。

そして、魔力弾を発射し、次の弾をデバイスの穂先に灯そうとした隊員の一人に向かって、政宗は地面を蹴って迫ると、その手首を狙って模造刀を振り下ろした。

刃が無いため切断効果こそないが、それでも骨を砕く感触は覚えた。

 

「ぐあああぁぁぁ!?」

 

その隊員は苦悶の声をあげてデバイスを落とし、その場で膝をついて折れた手首を押さえた。

 

「くそぉ! 非魔力保持者の分際で―――!!?」

 

「そうはさせん!」

 

少し離れた場所にいた別の隊員が怒りに任せて、5、6個の魔力弾を自分の周りに投影し、政宗に向かって集中砲火を放とうとするが、その前に小十郎が政宗の背中を庇うように駆け出し、その隊員の鳩尾辺りに模造刀を突き立てた。

 

「うっ!? うぐぅぅぅぅぅ…!?」

 

隊員も地面に膝をつき、うめき声を上げながらうつ伏せに倒れた。

その様子を見ていたオサムやエンネア、そして他のR7支部隊の隊員達の間にも動揺が広がる。

 

「こいつら……本当に非魔力保持者か…!?」

 

「しかも、あんなおもちゃの剣如きで……」

 

エンネアやオサムが、信じられないと言わんばかりに呟くのを、彼らの後ろから見ていたセブンが苛立たしげに睨みつけた。

 

「えぇい! たかが非魔力保持者2人相手になんたる様だ!? しかも相手はまともな武器も持っていないのだぞ!? オサム! エンネア!これ以上、お前達の部下が不甲斐ない様を見せるようなら…上官であるお前達にも何かしらの責任をとってもらう事になるぞ!?」

 

「「っ!?」」

 

セブンの脅しをかけたような一言を聞いたオサムとエンネアの顔から血の気が引いていくのを、政宗、小十郎の視線からもはっきりと見えた。

 

「お…おのれ…無礼な非魔力保持者共め…! こんな連中のせいで、我らまでも坊っちゃんからの信頼を失いそうになるとは…」

 

「これ以上、貴方方如きに好き勝手させるわけにはいきません。全力でかからせてもらいます…」

 

そう言いながら、オサムやエンネアがセブンを守る様に前に出てきた。

彼らの持つデバイスは形状こそ他の隊員と同じ杖型であったが、それぞれ専用にカスタマイズされた特注品の様であった。

 

オサムは柄の部分が他の隊員の持つ物よりも半尺分長いロングタイプ。

 

エンネアは、反対に他の隊員達よりも柄を短めに切り詰めたタイプのものを2本携えた双銃ならぬ双杖スタイルをとっていた。

 

「政宗さん! 小十郎さん!」

 

と、丁度そこにようやくなのはとヴィータが追いついてきた。

 

「お願いします!セブン准陸佐! 皆さんを止めて下さい!」

 

必死に呼びかけるなのはだったが、セブンは顔に残虐な笑みが浮かべながら、それを一蹴する。

 

「高町空尉。残念だが、それは出来ない相談だね……貴方の部隊の委託隊員達は身の程も弁えず、畏れ多くもこの僕や星杖十字団に対して堂々と手向かってきたのだ。今更、泣こうが土下座しようが、あの2人……特に貴方の恋人などと宣ったあの“ダテ・マサムネ”なる無礼なサンピン男の事は、絶対に許すつもりはない!」

 

セブンが大見得をきりながら声高に言い放ったが、そんな安い脅し文句如きなど、政宗には毛ほども効果はない。

 

「随分、大口叩くわりには、ずっと部下任せか? アンタも名門貴族魔導師の御曹司っていうなら、自分の力でかかってこいよ? そうしたら、少しは骨のある奴だと認めてやってもいいぜ?」

 

軽く挑発する様に言い放つ政宗の無礼さに対して、オサムやエンネアは額に青筋が浮かぶ程に怒りを顕にするが、セブンは尚も不遜な笑みを崩さない。

 

「ふん! 何を寝ぼけた事を…俺は端から人を駒の様に動かす宿命(しゅくめい)の下に、生まれてきた男だぞ? ましてや、お前達下級国民共の相手を何故、俺が直々に請け負わないといかんのだ? これだからお前達、下級国民の考える事は野蛮で愚かというものだ!」

 

「そういうアンタは野蛮を通り越して下衆(Subordinate)だって事を自覚した方がいいぜ? Chicken野郎…」

 

政宗の不敵な挑発にセブンの表情が憎悪で歪む。

 

「……いつまでそんな生意気な口が叩けるかな? オサム! 例の“あれ”でいけ!!」

 

「!?……ハッ!!」

 

突然、セブンが意味深な命令を下すと、オサムは咄嗟に辺りを見渡し、そして事の成り行きを見守っていたホテルの従業員の中から、手頃な女性従業員を見つけると、自身の手にした他の隊員達よりも長めの杖型デバイスの穂先を向けながら、術名を唱えた。

 

「ウィトルウィウス・バインド!!」

 

拘束(Restraint)!》

 

「ッ!? きゃああああああああああああぁぁぁぁ!!」

 

デバイスが電子音を上げると共に突然デバイスを向けられた先にいた無関係の女性従業員がまるで十字架を掛けられたかのように両手両足を広げるような姿勢でバインドをかけられ、そのまま宙を浮遊させて、自分の手元に手繰り寄せた。

 

「「「ッ!?」」」

 

「んなっ!? テメェッ! 一体なんのつもりだ!?」

 

その様子を見ていたなのはや、政宗、小十郎が息を呑み、ヴィータがオサムに向かって非難の声を浴びせた。

だが、オサムは勝ち誇った様に引き寄せた女性の頭にデバイスを突きつけながら、政宗達に向かって言い放つ。

 

「これ以上抵抗をするのならば、貴様らと同じ非魔力保持者のこの女に傷がつく事となるぞ?」

 

「何…?」

 

政宗も小十郎も怒りを通り越して、思わず呆気にとられた。

自分達の形勢が不利と悟った途端…あろうことか、無関係の一般市民を人質にする。

とても管理局の精鋭部隊のする事とは思えない卑劣極まるやり口は、最早狂気さえも感じられた。

 

「テメェら…それでも時空管理局の優秀戦力か!? 守るべきはずの民を人質にとって、敵を無理矢理に制圧しようだなんて、んなもん『正義』でも、なんでもねぇ事もわかんねぇのかっ!?」

 

小十郎が模造刀を構えたまま、オサムに向かって怒号を浴びせる。

それに対して、オサムは「なにがおかしい?」と言わんばかりに嘲り笑った。

 

「我々『星杖十字団』が創設されたのは、この地上に蔓延る悪の掃討に追いつかずにいる不甲斐ない地上本部の代わりに一秒でも早く、多くの敵を掃討する為…その為には貴様らのような単純な腕っぷしや、機動六課の様な生温い優しさだけではダメなのだ! 時にはこうした情を捨てた“合理的”な戦法も必要!」

 

「…そのために、無関係な市民を巻き込む事も辞さないってか…? 『最強のElite部隊』などと聞いて呆れるクズ共だな」

 

政宗はまるで汚い物を見るような軽蔑の眼差しで睨みつけながら、忌々しそうに唇を噛んだ。

 

「ヴィータちゃん…」

 

「わかってるよ。もうこれ以上黙って見ているわけには―――ッ!?」

 

見かねたなのはは、密かにレイジングハートをセットアップしようとして、ヴィータも地面を蹴って、女性を助けに行こうとするも、そんな2人の前に、エンネアが立ちはだかった。

見ると、彼女の持つ二振りの短杖のデバイスの一つは集っていたホテルの従業員達の方に向けられる。

 

「貴方方も余計な真似はなさいませんように…それともここでもう一人、一般市民から人質が出てもよろしいのですか?」

 

「くっ……テメェら、ホント正気かよ…?」

 

「敵の制圧には多少のリスクは必定…これもまた“必要悪”なのです……」

 

そう胸を張って語るエンネアだが、彼女らの考えややっている事は最早“必要悪”の域を逸脱し、“卑劣”と言わざるを得ない……

そんな戦法を平然ととってみせるR7支部隊の冷酷極まるやり口に、ヴィータも、なのはも冷や汗を浮かぶ程に戦慄した。

一方、政宗達が抵抗できなくなったのを確認したセブンは勝利を確信してほくそ笑む。

 

「さてと、生意気な下級国民共。よくも僕らに楯突いた上に、随分と手を焼かせてくれたじゃないか…この“落とし前”はたっぷりとつけてもらうよ?」

 

「………俺らにどうしろってんだ?」

 

政宗が睨みつけたまま尋ねた。

するとセブンはニヤリと笑みを零し、勿体ぶった様子で宣告する。

 

「君達がやるべき事はひとつだ…そのオモチャを地面に置き、この僕に降伏しろ」

 

「…What?」

 

「何…っ!?」

 

「僕は“広い心”の持ち主だ。さっきは「絶対に許さない」と言ったが、正直これ以上、下級国民といえども無駄に血が流れる様な事も望んでいない。だから、特別に最後の慈悲を与えよう。君達がここで泣いて土下座し、これまでの自分達の愚かで無作法な振る舞いを詫びて、素直に高町空尉の事を諦めて僕に“献上”すると宣言するのであれば、今なら許してやらないでもないが、どうする?」

 

セブンの勝ち誇った様な宣言を聞きながら、政宗も小十郎もそれが嘘である事を直感的に見抜いた。

これだけ病的な自尊心や非魔力保持者への歪んだ優越感に毒された男だ。

そんな自分をここまで手こずらせた政宗達を、土下座くらいで許す筈がない。

 

おそらく、土下座した瞬間に部下達に命じて集中砲火を浴びせようという魂胆であろう…

 

《政宗! 小十郎! もう我慢ならねぇよ! アタシも手ぇ貸す! 一緒にこのクソッタレ共を叩きのめそうぜ!!》

 

セブン達の背後でエンネアの牽制を受けながらも、ヴィータが政宗達に向かって念話を飛ばしてきた。

 

(手ぇ出すなって言っただろ! ここでお前らまでこいつらと対峙したら、それこそ、このバカ息子一味の思うつぼだぞ! ここは俺と政宗様でどうにか乗り越える!)

 

《乗り越えるったって小十郎! この状況をどうやって凌ぐっていうんだよ!?》

 

(それを今考えている! とにかく、俺達の事は気にするな!)

 

そう返しながらも、小十郎は必死にこの状況を打破する一手がないか頭をフルに回転させて考える。

降伏の選択肢はない以上、強行打破しか手はないが、それでも無関係の人間を見捨てるわけにもいかない…

厄介なのが、刀や銃と違って、魔法は様々な手段で攻撃の効果を発揮する点である。

先程の魔力弾やレーザーから、バインド、さらには電撃や火炎など多種多様な超常現象を手先一つで、瞬発的に起こしてしまう。

こちらから下手に動こうとすれば、忽ち、人質にされている女性がどんな目に遭うかわからない。

 

特に、今彼女を拘束しているオサム・リマックなる男は、R7支部隊の部隊長だという。

仮にもセブンお気に入りの部隊の要職を務めているだけの男故に、どんなスペックの持ち主であるかまるで予想がつかなかった。

 

「さあ、どうするんだ? 泣いて許しを乞うか、ここで血を見るか…? どちらが良いか、まさかそれさえもわからない程にお前達も愚かではないだろう?」

 

「………Shit!」

 

厭味な笑みを浮かべながらセブンが言い放つ。

戦闘などの危険な事や汚れ仕事を部下に任せ、自分は安全な場所で偉そうにふんぞり返るという、どこまでも悪辣なセブンに対し、政宗が歯痒そうに睨みつける。

 

そんな政宗の顔を見て、セブンは愉悦に満ちた表情でほくそ笑んだ。

 

「無様な顔だなぁ…そう、その顔だよ。その顔を見るのが楽しみなんだ。 僕の手の内に踊らされた愚かな連中が苦しめば苦しむほど、楽しみは大きい! ましてや、畏れ多くもこの僕に楯突いて邪魔をするような痴れ者が、苦しむ様は余計にな!!」

 

「く………っ」

 

「なんだその目は? まだ降伏する気になれないのかな? だったらこれを見ればどうかな!?」

 

セブンは焦れた様子でそう言いながら、懐から金色のメダルが付いた略綬の様なものを取り出してきた。

 

「“W(ワイルド).SEVEN(セブン).”! セットアップ!」

 

セブンの掛け声と共にメダルは金色の光を帯び、瞬く間に杖型のデバイスへと形を変える。

その杖を見て、なのはは思わず驚きの声を上げた。

 

「れ…レイジングハート!?」

 

なんとそれは。なのはのレイジングハート・エクセリオンのエクシードモードに似た形状の穂先を持った模造品の様な品だった。

唯一の違いは、中央に虹を構成する七色の魔石が組み込まれ、レイジングハートよりも豪華絢爛な造りとなっていた事である。

 

「驚かれましたか? 高町空尉。私の愛用デバイス『W(ワイルド).SEVEN(セブン).』は、我がコアタイル一族が経営する企業『メラーク重工』から、私が第七陸士訓練校主任教官に着任した祝いとして、父上の発注で贈呈された特注デバイス。開発に当たって、研究班は貴方の『レイジングハート・エクセリオン』を参考にしてこれを造ったそうですよ。まさかこのような形で、貴方にこの杖の性能をお見せする事になるとは思いませんでしたが…」

 

そう言ってセブンが手に持ったW. SEVEN.に対して何かを指示すると、その穂先の魔石の内、黄色い魔石に光が灯った。

 

《Riot Sander!》

 

電子音と共にW. SEVEN.の穂先に青白い電流が走り始める。

 

「まっ、まさか…!?」

 

「マジかよッ!?」 

 

「Stop it!!」

 

セブンが今から何をしようとしているのか察したなのは、ヴィータ、政宗が声を上げる中、セブンは躊躇いなく、オサムの隣でバインドにかけられたまま浮遊させられている女性の脇腹をW. SEVEN.で突いた。

 

 

バリバリバリバリバリバリッ!!!

 

 

「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁ!?」

 

 

忽ち、女性の全身を雷が走り、女性は悲鳴を上げながら身を悶えさせる。

その様子を見た野次馬達からも悲鳴が上がった。

中には女性と親しいと思われる従業員の何人かが女性の名を呼んで泣き叫ぶのも聞こえた。

それを聞いた政宗の顔にさらなる怒りの色が浮かんだ。

 

「テメェ…聞きしに勝るDastardだな…どこまで性根が腐りきっていやがる…?! 仮にも時空管理局のImportant postの息子ともあろう人間が、関係ない一般人を平気で傷つけるだなんて…やっていい事と悪い事があるぜ!?」

 

政宗が鋭い視線でセブンを射抜きながら非難する。

 

「テメェがどんな名誉ある家柄の人間だか知らねぇが…こんな不条理なViolenceが、まかり通るとでも本気で思ってんのか!?」

 

「通るさ! さっきも話していたとおり、このラコニアの街は、俺の寵愛するR7支部隊が管轄し、全面的に治安維持に貢献している…そしてR7支部隊と共にこの街には我がコアタイル家が多額の資金援助をしているのさ。 故にこの街の連中は否が応でもコアタイル家に従うのは当然の義務! 特に非魔力保持者(下等国民)など、弾除けかこうした“駆け引き”の時にしか利用価値はないからな!」

 

「なんだと!?」

 

政宗からの糾弾をまるで意に介さず、セブンは得意満面に両手を広げるジェスチャーを交えながら、高らかに宣言する。

 

「まぁ…流石に“殺したり”、“後遺症が残る程の重症”を負わせてしまってはその限りではないがな…その辺りは俺も“広い心”で配慮してやっているから安心していいぞ? 今の魔法“ライオットサンダー”も最低限、後遺症の残らぬ程度に加減した暴徒鎮圧用の“安全”な魔法だ。だが、お前達が答えを出さない限り、彼女はいつまでも苦しみ悶える事になるぞ?」

 

「…!? Screw you! Are you crazy!!」

 

政宗が鬼のような形相で睨みつける。

まさに残酷極まる無茶苦茶な要求…

これには我慢出来ず、思わず飛び出しそうになる政宗を、小十郎が引き止めた。

 

(政宗様! お気持ちはこの小十郎も重々承知していますが、ここで短気に逸ってはなりませぬ!)

 

今、下手に自分達が動いても、人質が余計に苦しむ事になる。

命をとられる程の重い攻撃ではないとわかっているとはいえ、実際に人質に手を出された以上、ますます下手に動くわけにはいかないと小十郎は判断したのだった。

 

正面にいる政宗と小十郎、そして背後にいるなのはとヴィータは、それぞれに唇を噛み締め、セブン達の鬼畜な所業を睨みつけた。

 

 

「さあ、2回目といこうか?」

 

 

セブンは愉悦の笑みを浮かべながら、再度電撃を帯びたW. SEVEN.の穂先を女性に突きつけた。

 

 

「や…やめてください……お願いします………お願……い……っ」

 

 

先程の電撃で、髪が乱れ、服の所々が黒く焼け焦げ微かに白い煙が上がった女性が弱々しい声で嘆願する。

その言葉を満足気に聞きながら、セブンは悪辣な笑みを浮かべ、政宗と小十郎の方を一瞥した。

 

「恨むなら、あの2人を恨みたまえ。 アイツらが僕にしつこく楯突き続けるから、君が無駄に苦しむ事になっているのだ」

 

そう冷淡に言い放ちながら、セブンが躊躇いなくW. SEVEN.の穂先で、今度は女性の右頬に突こうとした時――

 

 

「待てッ!!!」

 

政宗の叫び声が中庭に響き渡る。

それを聞いたセブンの手が止まり、政宗達の方に視線が向いた。

 

「……小十郎」

 

「……はっ…」

 

政宗と小十郎は、お互いに頷いて示し合わせると、それぞれ持っていた模造刀を投げ捨てた。

 

「ま、政宗さん……!!」

 

政宗の苦渋の決断を垣間見た、なのはが思わず震える声を上げた。

ヴィータもまた、何とも言えない表情で政宗達を見つめていた。

 

「ほう…やっと、答えを出したか」

 

「これでOKだろ…? …そいつを解放しろ! 今すぐに!!」

 

「あぁ…そうだな…だが、その前に……」

 

セブンはニィッと歯をむき出しながら、前にいたオサムに向かって手短に命令を飛ばす。

 

「これだけの騒ぎを起して、我々の手を焼かせ、しかも関係のない一般人をも巻き込んだのだ。その償いというわけではないが…彼らにこのミッドで生きる上で必要な“礼儀”というものを教えてやれ。オサム」

 

「はっ!」

 

命令を受けたオサムが嬉しそうに頷きながら、ゆっくりと前に出てくる。

 

セブンの言っている事は最早、何もかもが筋違いというものだった。

乱闘騒ぎを仕掛けてきたのはセブン達の方だし、一般人を巻き込んだのもセブン達である…しかし、人質を痛めつけるという最低最悪な方法で政宗達を無力化した事で、完全に勝利を確信したセブン達はそんな不条理極まる理屈を平然と嘯きながら、政宗達に“償い”という名目の“報復”を決行しようとした。

 

「ダメ! 政宗さん!今助け―――キャアッ!」

 

遂に見ていられなくなったなのはが、首にかけていたレイジングハートをセットアップしようと手に持つが、その前に背後に回っていたR7支部隊の隊員2人によって両腕を掴まれる事で阻まれてしまう。

 

「なのは! この―――」

 

「動かないでください」

 

ヴィータがグラーフアイゼンを振りかぶるが、そこへエンネアが瞬間移動のように俊敏な動きで接近して、ヴィータの胸と顔の前にデバイスを突きつけて、動きを止めた。

 

「クッ…離して! やめてくださいセブン准陸佐! お願いだから、もうやめて!!」

 

「そうはいきませんね! 私は心の広い男ですが、ひとつだけどうしても我慢できないものがあるのです! それは…身の程も知らず、私に敬意を向けないばかりか、あろうことか楯突こうとする! そんな“非魔力保持者(下級国民)共の愚かさや無神経さ”ですよ!!」

 

セブンは最早狂気さえも感じさせる様な執念深い視線を政宗達に向けた後、高らかに言い放った。

 

「やれ! 嬲り殺しにしろ!!」

 

「ハッ! 仇なす愚者に粛正の閃光を…! 落ちよ!“雷鎚(トールハンマー)”!!」

 

オサムはデバイスを天高く掲げ、詠唱を唱える。

すると、政宗達の斜上の天上に4本の光の柱が現れた。

政宗や小十郎はその正体にいち早く気づき、歯を食いしばる。

 

「It's all over with me……!」

 

「……万事休すか…」

 

政宗と小十郎が覚悟を決め、目をキツく閉じた瞬間だった―――

 

 

 

「……ぐがッ!?」

 

 

ズブンッ!

 

 

「「「「「なっ!!!?」」」」」

 

 

政宗達に向かってデバイスを振り下ろさんとしていたオサムの姿が突然消えた―――

 

否、厳密には突然足元から地面に“何か”に引きずり込まれたのだった。

当然オサムが消えると同時に、政宗達に降りかからんとした光の柱は煙のように消失し、さらにバインドにかかって空中に拘束されていた人質の女性も、バインドが砕けて地面に落ちる。

 

その前に、同じく突然の事態に目を奪われていたエンネアの隙をついたヴィータが、地面を蹴って地表を滑るように滑空して、地面に叩きつけられそうになる寸前で女性を抱いて救出した。

 

「なっ…!? なんだ!? なにが起こったんだ!? オサムは…!? オサムはどこだ!? どこへ消えたぁ!?」

 

まさかの事態にセブンが露骨にうろたえた声を上げながら、オサムの姿を求め、中庭を見渡す。

 

すると突然、地面の下から、何かが暴れまわるような喧騒が聞こえてくる―――

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォォン!!!

 

 

刹那、大きな音が響き、先程オサムが立っていた場所に丸い穴が開かれた

何か下から大きな衝撃がかけられた事でぶち壊されたらしい。

 

「ぐはああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「だぁっしゃああぁぁぁ!!おらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「「「「し、成実(君)ッ!!?」」」」

 

その穴から、全身を殴打されてボロ雑巾みたいな状態になったオサムが吹き飛ばされ、それを追いかけるように両手に白鞘直刀と木刀を握り、口に無柄刀を咥えた成実が飛び出してくるのが見えた。

 

まさか、ここにいるはずがない人間がド派手に登場した事に政宗、小十郎、なのは、ヴィータは声を揃えて仰天する。

 

ふっ飛ばされたオサムは、先程まで光の柱が出現していた辺りの高さまで吹き飛び、そこで上昇を止めて、重力に任せて落下しようとする。

 

そこへ成実が直刀と木刀を握った腕を交わすようにして身構えながら、オサムをちょっとだけ見下ろせるだけの高さまで舞い上がった。

 

三牙月流(みかづきりゅう)奥義… “いなずまどかん”!!」

 

技名を叫びながら、成実が文字通り電流の走る峰側に返した直刀と木刀を縦に振り下ろした。

 

「グバアァァァァッ!!?」

 

文字通り落雷のような速さで再び地表にあった穴へと叩き落されたオサム。

激しい轟音と砂埃を上げる中、成実は後を追うように落下しつつ、直刀と木刀を一度背中に戻し、代わりに口に加えていた無柄刀を手に持って、一層強力な電撃を溜めていく。

 

「吹っ飛べやぁぁぁ!!」

 

成実が投げ飛ばしてきた無柄刀がブーメランの様に回転しながら、砂埃の晴れないオサムの落ちた穴へと吸い込まれるように落ちた。

 

 

ドオオォォォン!!

 

 

直後、二度目の爆音と振動と共に穴の中から閃光が煌めいた。

そして穴の中から反射されるように戻ってきた無柄刀を口で受け止めた成実が政宗、小十郎の前に鮮やかな着地を決めて見せる。

 

一瞬だけ呆然としている彼らだったが…逸早く再起動した小十郎が成実に向って叫ぶ。

 

「成実! なんでお前がここにいるんだ!?」

 

背中から浴びせられた小言にビビった成実が振り返ると、そこに怒りと困惑を混ぜればこんな表情になるのだろうという様な表情をした小十郎がいた。

 

「あれほどダメだって言ったのに…なんでついてきたんだ!? いや! そもそもどうやってついてきた!?」

 

「あ、いや…これには色々と事情があってさぁ…!!」

 

小十郎の剣幕に狼狽えながら、必死に弁解しようとする成実だったが、そこへセブンの度を失った叫びが飛んでくる。

 

「な…なんなんだ!? お前はッ!? こいつらの仲間か!!?」

 

エンネアや他の隊員達も、謎の襲撃者によってオサムが倒された事に動揺し、唖然としたまま動けずにいた。

 

そんなセブン達に気がついた成実は、ニヤリと笑みを浮かべ、そして直刀と木刀を再び手に取りながら、名乗りを上げる。

 

「はっ! 俺は奥州伊達軍 特攻隊長……伊達藤五郎成実! 筆頭 伊達政宗の義弟(おとうと)だぁ!!!」

 

「ぐぅっ…つまり、その下級国民の係累というわけか!! フン! そんな蛮族みたいなガキと兄弟とは…流石は愚連隊上がりのサンピンだな!! エンネア! お前達! あのガキ共々、コイツらをやってしまえ!!」

 

セブンの命令を受けたR7支部隊の隊員達がデバイスを構えるのを見て、もう一度模造刀を手に取ろうとした政宗と小十郎だったが…

 

「兄ちゃん! 兄貴! そんなガラクタなんか使うこたぁねぇよ! ほら、これ!!」

 

成実がどこからともなく、2人にとって見覚えのあるものを取り出し、投げ渡してきた。

 

それは政宗の愛刀“六爪(りゅうのかたな)”に、小十郎の愛刀“黒龍”と“山吹”だった。

 

「俺達の刀…!? フィニーノに預けていた筈なのに、どうしてこれを……!?」

 

“黒龍”と“山吹”を受け取りながら、小十郎が尋ねる。

 

「いやぁ、こんな事になるんじゃないかと思って、こっそり シャリオ(メガネの姉ちゃん)とこからパクってきたんだよ! な! でも結果(オー)(ライ)じゃない? だからさぁ、勝手についてきた事については、これでチャラって事で頼むよぉ?!」

 

「調子の良い事言うな! それとこれとはだな―――!?」

 

成実の頼みに、小十郎は尚も憤然とした態度で窘めようとするが、政宗はフッと小さくほくそ笑んだ。

 

「いいじゃねぇか小十郎。OK、成実。勝手に着いてきた事に関しては、お前のこのFine playに免じて不問にしてやる!」

 

「政宗様…!?」

 

「やりぃ! 流石は兄ちゃん!!」

 

受け取った六爪を両腰に装備しながら、政宗の隻眼に再び闘気が宿った。

 

「それよりもどうだ? こうして奇しくも久々に伊達軍の筆頭・副将・特攻隊長(三幹部)が揃い踏みしたんだ! あの井の中でどっぷり温水に浸かって肥えまくったFat Frog共に“竜の(party)”ってものを教えてやろうぜ!?」

 

「………承知!」

 

「っしゃあぁ! 合点承知のはらこ飯!!」

 

そう言うと、政宗は腰に下げた鞘から六爪を全て引き抜いて、六爪流の構えをとった――――

政宗の右側に立った小十郎は、黒龍を左脇に構え―――

左側に立った成実は、口に無柄刀を咥え、両手に構えた白鞘直刀と木刀と併せた変則三刀流“三牙月流(みかづきりゅう)”の構えをとりながら、それぞれ立ち並んだ。

 

 

「さぁ! 行くぜ! Elite warriors!! テメェらに本当のPartyってもんを教えてやるぜ! Let's rock!!」

 

 

奥州伊達軍を率いる三匹の“竜”が、ここに集結した瞬間だった――――

 

「お……おのれぇ…! 非魔力保持者(下級国民)共ぉ…!!?」

 

怒りのあまりに、明らかに余裕が無くなった事が窺える声質でセブンが叫んだ。

 

「お前達みたいな愚連隊風情が、地上(ミッド)最強の精鋭師団である“星杖十字団(せいじょうじゅうじだん)”に勝てるとでも思っているのか!?」

 

「Ha! その愚連隊相手に人質を使わないと太刀打ちできねぇ連中が『ミッド最強』を名乗りやがるとは、とんだ笑い話(Funny story)だな!」

 

「……せいぜい、吠えるがいい。 直ぐに笑えなくしてやる!!」

 

セブンは青筋を浮かべながらも、不敵な笑みと共に片手を上げた。

すると、政宗達を包囲する様に20人程の特殊な形状のバリアジャケットを装着した魔導師達が集まった。

 

それに併せるように、成実が造った地面の穴から全身黒焦げになったオサムが這々の体で這い出てきた。

 

「ぼ、坊っちゃん…! 申し訳ございません! このオサム…油断してつい、思わぬ不覚をとってしまい―――」

 

「黙れっ! この無能が!」

 

必死に頭を下げて詫びようとするオサムだったが、セブンはそんな彼の頬をW. SEVEN.の穂先で強かに打ち付けた。

 

「ぐぅ…!?」

 

「肝心な時にヘマしやがって、このトンマめ! その上、あんな田舎者の悪ガキ如きに不覚をとるだなんて、それでも神聖なる“7”の数字を預かりし部隊の隊長か! これ以上、俺を苛立たせる様な無様な姿を曝け出すようなら…今ここでその部隊長の肩書と佐官の資格を取り上げてやってもいいのだぞ!!」

 

「っ!?」」」

 

セブンのその一言に、オサムはまるで鞭を打たれたかのようにビクリと身体を震わせる。

 

「か、必ずや汚名を返上しますので…どうかそれだけは…!」

 

「だったら、さっさとあのサンピン共の首を取ってこい!! この能無しがぁ!」

 

最早、最初に見せていた貴族らしい気取った振る舞いや優雅な言葉遣いも完全にかなぐり捨てて、セブンは叫んだ。

 

その叫びに背中を圧される様にして、オサムは集結した隊員達の一歩前に進み出る。

 

「おのれぇぇぇ…非魔力保持者の愚民共ぉ……貴様らのせいで…貴様らのせいで俺はぁぁ…!!」

 

成実に食らった雷撃の後遺症と、オサム自身の屈辱と怒りで、こめかみだけでなく、顔の上半分全体に青筋が浮かび、目は半ば白濁して白目になりかけていた。

 

「貴様らだけは許さん…! 『星杖十字団』の名にかけて…貴様らをこの場でミンチにしてくれる!!」

 

「ミンチ…挽き肉! いいねぇ! どんな飯にしてくれんの!? つくね!? 肉団子?! それともこの世界で定番っていうハンバーグ!?」

 

「ほざけ!! 逆賊共おおおぉぉぉぉぉッ!!」

 

成実の食べ物ボケに対するツッコミの代わりに、オサムが特大の魔力レーザーを放った事で、伊達軍とR7支部隊の戦端は開かれた。

 

 

 

 

「皆さん! こっちです!!」

 

「早く逃げろ!」

 

星杖十字団隊員達の意識が完全に政宗達に集中している間に、なのはとヴィータは、不幸にもオサムに人質に使われ、セブンから理不尽な暴行を受けた女性を含む、ホテルの従業員達を安全な場所に避難させる事にした。

 

「大丈夫かな? 政宗さん達…」

 

助け出された女性に肩を貸しながら外へと逃がしながら、心配するなのはに対し、ヴィータが励ますように言った。

 

「大丈夫だって。小十郎もいるし、使い慣れた武器も手にできたみたいだからな」

 

ヴィータは轟音と振動で建物が揺れる度に、天井から壁の破片が崩れて、従業員に降り掛かってくるのを障壁(シールド)魔法で防ぎながら、中庭の方を振り返っていた。

中庭の方からは激しい戦闘の喧騒と男女の入り混じった叫び声が聞こえてくる。

どうやら、伊達軍三将とR7支部隊との激突は既に苛烈を極めている様子だった。

 

「ヘッ! あの成実(悪食バカ)が現れたのは予想外だったけど、今回ばかりは「よくやった」って褒めてやらねぇとな。ヤツのおかげで、逆転できたんだからな」

 

「でも…どうやってここまで着いてきたんだろう? 成実くん…」

 

「さぁな。アイツの事だから、飛行機の下にしがみついてでもきたんじゃねぇのか?」

 

「ま、まさか。いくらなんでもお猿さんじゃないんだから…」

 

ヴィータがさり気なく言った推測を、苦笑しながら否定するなのはだったが、その実、正解は『飛行機の車輪にしがみついて着いてきていた』というあながち間違いでもなかった事を、この数十分後に知ることとなるのを、なのはもヴィータも、まだ知る由もなかった…

 

 

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁッ!?」

 

中庭に、R7支部隊員の断末魔の叫びが響き渡った。

 

背中を合わせた竜の“右目”…副将 片倉小十郎と、“牙”…一番槍 伊達成実がそれぞれまた新たに隊員を一人ずつ討ち伏せたのだ。

勿論、本当に斬るわけにはいかない為、二人共それぞれ真剣は峰に返している

 

小十郎は額に汗のひとつ浮かべずに、いつもの冷静沈着な面持ちで、残る隊員達を見据えながら戦術を考え、成実は両手に携えた白鞘と木刀を手の上でクルクルと廻して弄びながら、無柄刀を咥えた口の端をニイッと釣り上げて、この戦いをまるで子供の遊びの様に楽しんでいる様子を見せた。

そんな、彼らの余裕な態度が癇に障ったのか、残っていたR7支部隊の隊員達は2人の前後左右に展開すると、デバイスの穂先を一斉に構え…

 

「「「「食らえ! クロスフォーメーション!!」」」」

 

声を揃えて叫びながら、四方からの射撃を仕掛けてきた。

それに対して成実は「ヘッ!」と鼻で笑いながら、三刀を構えてみせようとする。

 

「“下手な河豚(テッポウ) 数食ゃ当たる”ってか?! テメェらの遅ぇ弾なんか、俺の三牙月(みかづき)流で全部叩切って――――」

 

「成実! 跳べ!!」

 

「うぉっ!?」

 

突然、何かを悟った小十郎が成実の襟首を掴み上げると、そのまま空に向かって投げ飛ばし、自分もそれに続いて地面を蹴って跳び上がった。

 

直後、2人が立っていた場所を四方から4つの光弾が交差して交差した。

的を外した魔力弾はそれぞれ対峙していた相手のデバイスに吸い込まれるようにしてそのまま消失するが、その様子を見て、小十郎は小さく安堵の溜息を漏らしながら、成実の襟首を掴んだまま地に着陸した。

 

「な、何だよ兄貴! なんでそんな大げさな避け方すんだよ?」

 

体勢を立て直すと同時に敵に向かって斬りかかっていきながらも、文句を垂れる成実に対し、小十郎は再び撃ってきた魔力弾を黒龍で弾きながら、冷静に忠告する。

 

「油断するな。成実…今の攻撃、正面から迎撃しようとしていたらお前のどこかの急所に一発命中していたぞ」 

 

「へっ!? どういう事!? だって今のこの世界でいう鉄砲みたいなもんだろう? だったら当たる前に弾叩き落としちまえばいいじゃん?!」

 

素っ頓狂な口調で尋ねる成実を聞いて、小十郎は改めて、この伊達の若き猛将には改めて、この日ノ本とは異なる未知の世界“ミッドチルダ”における戦い方をちゃんと教導していく必要があるなと痛感した。

 

今だって、自分が昔教えたことわざをうろ覚えで引用していたが、『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』が正解なものを見事に魚の河豚に置き換えたデタラメことわざになっていた。

 

「確かに“射撃魔法”は “鉄砲”の砲術とほぼ同じだ。しかし、魔法の弾は日ノ本の鉄砲と違って、撃った弾を自在に操って軌道を制御したり、今の連中の様に撃った弾を再回収するといった変則技が使える。厄介な戦術なんだ」

 

「はっ、はぁっ!? なんだよそれ!? ずっりぃっ!!」

 

ちょうど放たれてきた魔力弾を、身体を思い切り反らせて避けながら成実が叫んだ。

 

「それに、この世界じゃ砲術自体もかなりの進化を遂げている。今のは別方向に配置した射手から同時の的に向かって弾を放ち、的を交差させるように射抜く『十字砲火』というヤツの更に厄介な技だ。普通の鉄砲でこれをやろうとすれば、標的の先に味方がいたら同士討ちの危険性があるから、一度に二方向しか射手を置けないが…R7支部隊(コイツら)は味方が撃った弾ならそのまま回収する術があるらしい…だから“四方向からの同時射撃”なんて芸当が使えるわけだ」

 

小十郎の言う通り、今の攻撃を普通に迎撃しようとしていたら、あらゆる方向から飛来する魔力弾の全てを凌ぎ切る事が出来ず、一発はまともに食らっていたはずである。

 

しかも、味方へと誤射(フレンドリーファイア)の対抗策を興じているのか、味方の撃った弾ならばそのまま吸収する形で回収してしまうという特注のデバイスの仕様も併せる事で、浴びせる火力も倍増しさせる事ができる。

 

魔法を過信しすぎているが故の接近戦への対処の不慣れな一面が強い事は否めないが、仮にも地上本部傘下においては“最強戦力”と目されるだけの事あってか、魔法の長所を生かしたその戦術自体は、小十郎を持ってして『合理的』と認めざるを得ないものであった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!! 非魔力保持者めぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

突如、オレンジ色の熱線が、憎しみの篭もった怒号と共に小十郎、成実を狙って飛来してくる。

 

「どぉえぇっ!? 兄貴ぃ! これはどうすんのさぁ!?」

 

扇状に軌道を描きながら中庭の芝生を焼いて迫ってくる熱線を見て仰天する成実に対し、小十郎は手短に指示を飛ばした。

 

「全力で走って避けろ!!」

 

「ヘッ! それ俺が一番得意な避け方!」

 

成実は嬉しそうに笑いながらそう言うと、まるで野山を自由に駆け回る猿の様に軽やかに地面を蹴り、あっという間に熱線から距離を開いてみせた。

その様子を見ながら、相変わらず身体の頑丈さと身軽さだけは見事だなと感心しつつ、小十郎は別の方向に向かって地面を蹴る。

そして、魔力弾の弾幕を撃ってくるR7支部隊員達の間を駆け抜け、その先にいた熱線の正体である魔力砲を放つ、部隊長 オサムの姿を捉えた。

 

小十郎は魔力砲の真下を潜りながら、オサムの懐に飛び込み、その手元を狙って片手で黒龍を振り上げながら刺突を放つ。

 

「ふんっ!」

 

オサムは咄嗟に片手を突き出して、障壁(シールド)を張ると、小十郎の突き出してきた刃を防いでみせた。

その反射神経に、小十郎も舌を巻いた。

 

「今の動きを防ぐとは…流石は部隊長を務めるだけの事はあるか…?」

 

「笑止! 先程は油断していたが為に、思わぬ不意打ちに対処しきれなかっただけだ! 真正面からぶつかれば、魔法も使えぬ貴様らの攻撃など、恐れるに足らん!!」

 

オサムはデバイスを手の上で回転させてから、穂先を小十郎に突きつけつつ、宣言する。

 

「ここまで我々の誇りを踏みにじったのだ!最早五体満足で済むと思わない事だな! あの生意気な眼帯男や俺に恥をかかせた煩わしい毛虫小僧…そして貴様の首と引き換えに、俺はもう一度坊っちゃんから、側近として認められるのだ!!!」

 

「ほぅ…大した意気込みだな。そんなに大好きなご主人様からの信用を取り戻す事に必死か?」

 

対する小十郎は黒龍を脇に構えて、冷静に応える。

 

「言っておくが…テメェのそれは“忠誠心”でも、なんでもねぇ…! ただ単に上等な餌を与えてくれる飼い主に追い縋って、媚び諂っているだけの情けねぇ“飼い犬”も同然だ!!」

 

「黙れぇ! 黙れ黙れ黙れ黙れえぇぇぇ!! 魔力無き逆賊風情に、俺の何がわかるううぅぅぅぅぅ!!!」

 

オサムが叫びながら、自身を中心に12個の魔力弾を投影し、それを一斉に小十郎に向かって発射した。

しかし、小十郎はそれを身のこなしで避けつつ、黒龍で斬り捨てていく。

 

「ぐぅッ!! ならば、これでどうだ!?」

 

今度は巨大な光球を手元に出現し、それをデバイスを使って打ち飛ばして、小十郎にぶつける。

魔力を持たない普通の人間の使う日本刀如きで、これだけ巨大な光球を食い止めたり、はたまた切断する事などまずは出来ないはず…

そう、オサムは確信していた…

 

しかし―――

 

「“十六夜(いざよい)”!!」

 

小十郎は光球に対して、逃げる事も、避ける事もせずに、自ら突進しつつ、☓の字を描くように連撃を浴びせて、その動きを止めた上、すかさず放った刺突で光球を貫き、まるでガラス細工が砕けるかの様にバラバラにして消滅させてしまった。

 

「んなっ!?」

 

非魔力保持者である筈の小十郎にできるはずがない芸当を目の当たりにし、オサムは激しく動揺を見せる。

よく見ると、小十郎の刀には青白い電撃が走っているようにも見えた。

 

「ば…バカな……!? 貴様は……非魔力保持者の筈であろう!?」

 

オサムはわけがわからないと言わんばかりに混乱しながら、糾弾する様な叫びを上げた。

 

確かに、今、自分達の前に立ちはだかっている3人の男達、いずれからも魔力の気配は全く感じられない。おそらく、3人とも魔力保有指数は0の筈である。

魔力が一切ない人間が、デバイスでもない何の変哲もない普通の刀を使って雷を操るだなんて普通に考えてもありえない。

 

だが、現に目の前にいる男の手にした刀…いや、全身に電撃がほとばしり、それでいて全く動じている様子さえも見せていなかった―――

 

「そうだな…確かに俺達は“魔導師”ではない…だが……ハァッ!」

 

小十郎がそう言いながら、構えた愛刀 黒龍に気合を入れてみせると、その刃の周りに青白い光が纏わり、今まで以上にはっきりと青白い稲妻が刀とそれを握る小十郎の全身を走った。

 

「このとおり、“魔導師”と肩を並べて戦うだけの力は持っているつもりだ!!」

 

「ッ!?……おのれぇ! 得体のしれん力を使う“異端者”がぁ! 構わん!お前達、 同時に攻めろ!!」

 

“異端者”…それはコアタイル派の人間の間でよく使われている。非魔力保持者の中でも、魔法とは異なる奇怪な戦術を駆使して、魔導師同様の超越した力を持った者に対する差別用語であった。

 

驚愕と恐怖を足したらそんな感情になるであろう凄まじい形相を浮かべながら、オサムが叫んで、近くにいた男女2人ずつのR7支部隊員に支援攻撃を命ずる。

命令を受けた4人の隊員達はそれぞれの方向から、先程オサムが撃った魔力砲よりは細身だがスピードのある熱線を同時に発射して、小十郎を一気に焼き払おうとしてきた。

 

「駆けろ! “斬月(ざんげつ)”!!」

 

小十郎は地面を蹴ると、魔力砲を発射するそれぞれの隊員達の懐へと迫り、すれ違いざまに峰側に返した黒龍でそれぞれの手と足を峰打ちして、へし折っていく。

 

「ぐあああああぁぁぁぁ!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「痛いぃぃぃぃぃ!!」

 

「腕が!? 足がぁぁぁぁ!!!」

 

悲鳴を上げながらのた打ち回る隊員達を背にして、小十郎は小さく笑みを浮かべながら、再度オサムと対峙する。

 

「…戦における軍隊の優劣を決定づけるのに最後の鍵となるのは心と技と身体の“経験”だ……テメェの部下共には、それが致命的に足りてねぇ」

 

「ぐぅ……おのれぇぇ……」

 

オサムは頭が混乱していた。

 

以前、どこかで『一部の次元世界では魔力を持たない者も、魔法とよく似た人間離れした術式を使えるようになる特別な術が存在する』という話を聞いた事があったが、所詮は非魔力保持者達が魔導師への妬みで興した噂話か妄想に過ぎないと全く相手にしていなかった。

しかし、今目の前にいる非魔力保持者が行使するそれは紛れもなく、その術である。それも想像していたものよりも遥かに強力なものだ。

 

(ぐぅぅ……こうなったら、市内周辺の所轄の部隊を応援に呼んで…)

 

オサムは、魔力で強化した身体能力を使って、一度この戦場をから退避し、さらなる応援を呼ぶ事を考えた。

相手が唯の非魔力保持者でなく、“異端者”であるとわかった以上、このまま考えなしに交戦を続けるのは得策ではない。

主君 セブンを前にして敵に背中を見せるなど、本来であれば言語道断な真似であるが、しかし今はそれにこだわっている猶予はない。

この異端者はここで確実に倒さなければならない…そのためには恥や外聞を捨てようが、方法は厭わないのが最善の策なのだ。

オサムは地面を蹴って、ホテルの屋根の上に飛び乗って、安全を確保してから、即座に所轄の部隊向けに緊急念話(エマージェンシーコード)を飛ばす事を考えた。

 

緊急念話(エマージェンシーコード)とは星杖十字団の各部隊長に与えられた作戦特権のひとつであり、それを発令する事で発令者の周囲50キロ圏内にいる陸上部隊の内、近い場所にいる部隊を最低3部隊、最大10部隊に強制招集をかける事ができる。

をかける事ができる。

 

そしてこのラコニア市内にいる陸上部隊は全てR7支部隊の傘下にある武装隊が5チーム配備されている。

彼らを招集すれば少なくとも400人の増援が期待できる筈だ。

 

『地上最強の精鋭』と名高い部隊としては屈辱的な戦略だが、背に腹は代えられない…大切なのは“勝つ”事だ…

屋根に向かって飛翔しながらオサムは密かにほくそ笑んだ。

 

しかし―――

 

「唸れ! “鳴神”!!」

 

「ガァァッ!?」

 

突然背後から聞こえてきた小十郎の叫びの直後、オサムの背中にまるで落雷を撃ち込まれた様な衝撃と激痛が走った。

バランスを崩したオサムは中庭へと落下する。

 

「オサム部隊長!?」

 

何人かの残っていた隊員達が悲鳴に近い声を上げた。

 

「が……ぐぁっ………ぁ…」

 

落下の衝撃で地面が抉られて出来たクレーターの真ん中にうつ伏せながら、オサムは苦悶の声を漏らして、僅かに顔を上げ、鋒から白煙を立てる黒龍を手に自分の目の前に着地した小十郎を睨みつける。

 

「そ…そんな………バカな……この俺が……こんな……異端者……ごと…き…に…っ!?」

 

そこが限界だったらしく、力尽きて顔を伏せ、意識を手放した。

 

「“非魔力保持者”の次は“異端者”呼ばわりか? その歪んだ選民思想にとらわれている限り、テメェらはいつまでも井の中で肥え果てるだけの蛙と同じだ!」

 

小十郎は、倒れたオサムを見下ろしながら、鋭く言い放つ。

すると、小十郎の周囲でその未知の能力と圧倒的な剣技を前に動きあぐねていたR7支部隊の隊員達が、部隊長を倒された事で怒り、一斉に小十郎の周りを取り囲んだ。

 

「おのれ、逆賊! よくもオサム部隊長を―――ガァッ!?」

 

だが、隊員の一人の威嚇が終わらない内に、小十郎はその隊員の頭を黒龍で峰打ちし、部隊長同様に地面に叩き伏せて失神させた。

荒々しい本性を滲ませた瞳で、自分を包囲するR7支部隊員達を睨み付けた。

 

「まだ本当の“戦”ってものを学び足りないってのか…? テメェらがそういうつもりなら、仕方ねぇ…もっと教えてやろう……その代わり…」

 

地の底から響くような声と共に小十郎は黒龍の刃を返し、その刃に眩い光を走らせる。

 

 

「ここからの授業料は……テメェらの“血”と“命”で払いやがれッ!!

 

 

「「「「「ひっ!!? ヒイイィィィッ!!!?」」」」」

 

 

小十郎が放った恫喝に、彼等の身体が震え上がった。

そして彼等は次々とデバイスを取り落として腰を抜かし、その場に尻餅を着いて動かなくなった。

中には失禁している者も少なくなかった……

 

 

「……やれやれ…これが『地上最強の師団』とはとんだお笑い草だな…」

 

 

滑稽な彼等の様子に、小十郎は思わず吹き出しそうになるしかなかった。

 

 

 

「食らえ!」

 

「Ha! slow過ぎてあくびが出るぜ!」

 

政宗はホテルの中へ再び戻り、長い廊下を舞台に、副隊長 エンネアと高速の追撃戦を展開していた。

魔力の恩恵があるとはいえ、流石はR7支部隊の副隊長を務めるだけあってか、それなりの速さと身のこなし…そして2本のショートカットされた短杖から放たれる、連射性に優れた魔弾の弾幕は並の人間ではとてもではないがさばき切れるものではなかった。

 

その速さに優れた魔法を初見で受けた時は思わず政宗も多少なりとも驚いたし、この時は成実が合流する前だった為、手元に六爪(りゅうのかたな)が無く、小十郎が咄嗟に持ち出した観賞用のサーベルを使っていたとはいえ、政宗とも互角に近い戦いを繰り広げる事になった。

 

だが、それだけだった…

 

こうして六爪を手に入れ、ある程度の交戦を交えた今となっては、政宗にしてみれば、その自慢のスピードもすっかり見切る事ができていた。

 

政宗は廊下の床だけでなく壁も使って走りながら、飛来してくる水色の魔力弾を六爪で弾き、斬りつける。

 

「やめときなCrossdressing woman。今のテメェじゃ、俺達には勝てねぇぜ」

 

「……減らず口な上に、その不遜な態度…つくづく虫酸が走りますね。貴方は」

 

諭すように話しかける政宗に対し、エンネアは冷静な物言いながらも、その声には明らかな怒りが含まれていた。

 

政宗は不意に足を止めて、踵を返すと六爪を振りかぶって、エンネアにかかっていく。

エンネアは咄嗟に二振りのデバイスを顔の前で交差させるようにして構え、身体を包み込むように魔法陣型の障壁(シールド)魔法を展開する。

6本の刀と障壁がぶつかり、閃光とガラスが打ち付けられるような音が半壊した廊下に広がる。

 

「貴方は確かに並の非魔力保持者よりは強い…それも圧倒的に…それは認めましょう。しかし…どんなに武芸を極めていても…所詮、魔力を得ていない人間に魔導師を超える事などできないのですよ!!」

 

エンネアは叫びながら障壁ごと政宗を無理矢理に押し戻すと、2本のデバイスの穂先に青白い光を収束させ、それを自分の身体の周りに円を描くように振るった。

するとその軌道上に長い羽の様な形を模した特殊な形状の魔力弾が投影され始める。

エンネアがもう一度、デバイスを振るうと、それはブーメランの様に一人手に回転し始めた。

 

霞の刃(ヴェロス・カラザ)!!」

 

「――――ッ!!?」

 

エンネアが両手を広げるようにして、デバイスを振るって合図を出すと、回転する羽型の魔力弾が一斉に政宗に向かって飛来してきた。

普通の魔力弾と違って、まるで生きた鳥の群れの様に牽制のとれたその魔力弾は青白い光の渦のように廊下の中を行き交い、豪華な装飾の柱や壁、床を容赦なく刳り、政宗の周りを縦横無尽に飛び交って翻弄する。

政宗はそれを華麗なバックステップで避けるが、ひとつの光の羽が頬を掠り、

僅かに切れた傷口から少量の血を吹き出させた。

 

(こいつは遊んでいると少し厄介だな……)

 

政宗は何を思ったのか、6本出していた六爪(りゅうのかたな)の内、5本を鞘に収めると、後ろに退きながら、残った一本の刀に意識を集中させるようにジッと構えつつ、乱れ飛び交う光の羽の群れを見据える。

 

「ハハハハハッ! どうですか!? これが魔導師と非魔力保持者との間を分け隔てる絶対的な力の差というもの! それを知らずに数々の悪口雑言を吐いた己の痴がましさを、後悔しなさい!!」

 

エンネアがその慇懃な口調の中に隠してきた他のコアタイル派同様の下衆な選民意識を顕にした様な尊大な言葉を叫びながら、デバイスを振るい、政宗に向かって光の羽の群れを殺到させる。

 

「“DRAGOON STRATHER(ドラグーンストレイザー)”!!」

 

直後、政宗は一刀の刀を振り払い、三日月型の斬撃波を打ち放った。

それは光の羽の群れにぶつかると斬撃波は蒼色の光でできた竜の形を模した気の結界となって光の羽を全て纏わりつくようにして拘束してしまった。

 

「ヘッ…!?」

 

その技を目の当たりしたエンネアは、目が完全な正丸の形になり、天上に浮かぶ、蒼い竜を見据えていた。

それまで見せてきた冷静沈着な面持ちからは想像もつかなかった様な間抜けな顔であった。

 

「な……なんで……!? なんで、非魔力保持者に……こんな芸当が……!?」

 

呆気にとられていたエンネアは、その間に政宗が自分の目の前に迫っていた事に気づく事が出来なかった。

我に返った彼女が慌てて、再度障壁魔法を展開しようとするが、その前に政宗は峰を返した一刀で、エンネアの腹を薙ぎ払う形で吹き飛ばした。

 

「ぐはああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

そのまま廊下の中を独楽の様に回転しながら吹き飛ばされ、突き当りの壁に激突し、そのまま外の中庭へと投げ出されていくエンネア。

その様子を見て、政宗はニヤリと笑いながら、不遜な口調で言い放った。

 

「覚えておきな! FantasticでunprecedentedなSupernatural powerに魔導師も非魔力保持者もねぇって事をな!!」

 

政宗はこの短い交戦の中で、この『地上本部最強の精鋭師団』の実情を大まかにだが把握する事ができた。

 

他の“星杖十字団”の部隊全てがこうであるとも限らないが、少なくともこのR7支部隊は、『セブンの側近』という彼らにしてみればこの上ない名誉ある役職であるが、精鋭部隊としては生温い任務にすっかり胡坐をかいてしまい、ここ最近は機動六課の様なまともな戦いらしい戦いを経験していないばかりか、鍛錬も怠っていた様である。

 

それは、下手に軍の高官などから贔屓された精鋭軍などが陥りやすい典型的な悪パターンのひとつだった。

下手に権力と特権を与えられ、“驕り”が生じてしまったら、どんな精鋭戦力も忽ち無用の長物への変化してしまう…

 

政宗が交戦したエンネアや、先程まで対峙していたオサムもまた、本来ならなのは達の様な優秀な魔導師として相応の活躍を見せるだけの逸材であろうものが、碌でもない飼い主に飼われてしまった事で、知らず内にその才能を溝に捨ててしまったのであろう。

 

政宗は僅かではあるがR7支部隊の隊員達に同情心の様なものを覚えるのだった……

 

 

「くそぉ…ッ!…たかが3人の非魔力保持者相手に、なんたる醜態……! 信じられん! まさかR7支部隊の質がここまで低いものだったとは…!!」

 

セブン・コアタイルの苛立ちは最高峰に達しようとしていた。

自らに歯向かってきた愚かな非魔力保持者(下級国民)達に手こずらされ、見かねて本来なら自ら腰を上げるべきでない戦いであるにも関わらず、重い腰を上げて援護してやったにも関わらず、一時は制圧寸前と思われた戦況を思わぬ新手の不意打ちで台無しにされ、3人になった非魔力保持者(下級国民)達相手にR7支部隊はさっきまで以上に太刀打ち出来ずに次々と倒れていく始末…

 

最早、コアタイル派…そして自分にとってはとんだ恥晒しである。

 

「せ、セブン様…! リマック部隊長、フェートン副隊長…両名方ともやられました…ッ!!」

 

R7支部隊の一人の男性隊員…准陸尉の胸章を付けた隊員がセブンに駆け寄り、恐る恐る報告する。

おそらく、残っている隊員達の中で一番階級が高い故に伝令役を押し付けられたのであろう。

 

「なんだって!? 残る戦力は?」

 

「私を含めて、13人です…准士官以上は私だけ…他は全員戦闘不能…!」

 

「チィッ! どいつもこいつもグズばっかが!!」

 

准陸尉はセブンのそんな表情やそんな言葉遣いをする場面を見た事がなかった。二度と拝む事がないように願いたかった。

 

「し、しかし……セブン様。相手は、並の非魔力保持者ではありません…魔法とは異なりますが、同様の技も使っています…恐らくは“異端者”の類ではないかと…!?」

 

「…黙れ! 今更、連中がただの非魔力保持者か“異端者”かなど、そんなものはどうでもいい!! これ以上、あの愚かな逆賊共に好き勝手させるなと言っているんだ!!」

 

「し、しかし…リマック部隊長やフェートン副隊長も倒された今、我々だけでどうやって―――」

 

准陸尉のその言葉は、最後まで言い切る事が出来なかった。

その前に、セブンが腹に突きつけたW. SEVEN.の穂先から放たれた鋭い閃光が彼を吹き飛ばし、背後にあった建物の壁へと叩きつけていたからだ。

 

「ほざけろよ、この腰抜けが…! 栄光の“7”の数字を掲げる崇高な部隊に、貴様の様な者など必要ない!」

 

セブンは吹き飛ばした准陸尉を一喝すると、残っている隊員達に圧力をかけるように檄を飛ばした。

 

「お前達もだグズ共! これ以上、俺を苛立たせるなよ…!?」

 

「「「「「―――ッ!!?」」」」」

 

セブンの言葉を聞いて、残存する12人の隊員達はそれぞれ子犬の様に震え上がり、怯えた。

 

「Ha! なんだ? あれだけ大口叩いてかかってきたくせに、もうPartyもFull swingか?」

 

「!?」

 

気がつくと、セブンの目の前には、大の字になって倒れているエンネアを尻目に、政宗が六爪を一本だけ抜いた状態で颯爽と歩み寄ってきていた。

微かについた掠り傷以外は大した怪我さえもなく、全く息を切らしていないところを見ると、苦戦らしい苦戦もしていない事が伺えた。

 

さらにセブンが視線を逸らすと、オサムは少し離れた場所に生じたクレーターの中で倒れ伏しており、彼を打ち倒した小十郎が自慢のオールバックを整え直しながら、同じく落ち着いた歩調で歩み寄ってくる。

 

そして、彼らの奥では、残る隊員達の内の何人かが、すばしっこく立ち回る成実を相手に必死に魔力弾を乱射して、攻撃を仕掛けていたが、それも半ば翻弄されており、明らかに劣勢な様子を見せていた。

 

「ちぃっ! こいつらぁ…! 揃いも揃ってとんだ役立たずじゃねーか…!!」

 

忌々しげに舌を打つセブンに、政宗は皮肉を含めて忠告を投げかけた。

 

「いい加減に負けを認めろよ? これ以上、抗っても見苦しいだけだぜ? Royal Prince」

 

「諦めるだって? バカを言え! なんで俺がお前達みたいな礼儀も教養もない下級国民如きに白旗を上げなければならないのだ? それに俺の今日の目的は、高町なのはだ。彼女をモノにするまでは決して諦めるものか」

 

「……テメェも相当なStalkerだな。Narcissistで傲慢な上に、そのしつこさとくりゃ、顔と家柄以外、褒められそうな点がひとつもねぇな」

 

政宗は完全に余裕をかました様子でセブンをこき下ろした。

 

「本当に減らず口が減らない愚民風情が…上等だ!…ならば、お前達に“偉大なる魔導師の息子”としての俺の力の真髄を直接味あわせてやる!!」

 

セブンはW. SEVEN.を誇示する様に振りかぶり、全身を金色の光に包み込むと、その服装は金色の鎧を纏い、紅のマントを翻したどこぞの王族の人間の格好のような豪華な仕様のバリアジャケットへと変わっていた。

 

変身を完了したセブンは、まるで格闘技の試合前に選手が見せる派手なパフォーマンスの様な大げさな動きを見せる。

 

(コイツ…今までまともな任務や実戦に出た事がないな……日ノ本(俺達の世界)の戦でそんな踊りをやっていたら、『先手を打ってくれ』とでも言っているようなもんだぞ……)

 

セブンの無駄だらけな動きに、小十郎は内心冷ややかに評しながら、黒龍を構えるが、そこへ政宗が念話で制止をかけてきた。

 

(待ちな、小十郎。このStupid sonはどうしてもこの俺との戦いをご所望みたいだ。ここはコイツの“やる気”を組んで、俺が直々に相手になってやる)

 

(政宗様。確かにこの男はR7支部隊(護衛)の連中程、脅威ではございませんが…それでもご油断だけは召されませぬように…)

 

(I know that…だが、こんな奴相手に両の眼を使うなんて野暮な真似すりゃ、竜の名折れってもんだ)

 

政宗はそう言って念話を切り、セブンと対峙する。

 

「覚悟しろ! 異端の力を使おうが、所詮お前は非魔力保持者(下級国民)! 偉大なる大魔導師の血を継ぐ俺の前には遠く及ばない事を思い知らしてやるぅぅぅ!!」

 

セブンはそう叫びながら、5つの魔力弾を投影し、そのまま政宗に向かって発射してきた。

先程戦ったエンネアに比べると、その速度は雲泥の差であったが、それでも一応エリートだけあってか、中の上くらいの速さと威力はあるようだ。

 

それを刀で凌ぎながら政宗は冷静に、セブンの力量を解析していく。

 

「ほらほらほらっ、どうしたぁ!!!? 俺の攻撃を前に怖気づいたのか!? ハッ! お前がどうやってエンネアを倒したのかは知らないが、どうせ安いトリックでも使ったんだろ!? 現にこうして、正攻法で戦えばお前は俺に反撃ひとつ出来ないではないか?」

 

この勢いを乗って、セブンは完全に余裕を取り戻していた。

政宗が飛来する魔力弾を一発消す度に、もう一発…それを消すと更にもう一発…絶え間なく出現させる魔力弾で政宗のスタミナが消費するまでゴリ押しで迫る戦法を取る様子だった。

 

そんなセブンの猛攻を前に政宗は……

 

(反撃できないわけじゃねぇよ…“まだ、してない”だけだ)

 

心の中で冷ややかにツッコんでいた。

勿論、これを言葉にして直接伝えたところで「虚勢は見苦しいぞ!」と一笑に付されるだけだろうと思い、口に出すつもりは毛頭なかった。

 

そして、既にセブンの実力について確定的な査定が下されていた。

 

 

この男ははっきり言って、自分がこのミッドチルダで出会ってきた人間の中で一番の“雑魚”である―――と…

 

 

魔法の心得こそは人並みよりちょっと上程度かもしれないが、長所らしい長所はそれだけの事…

簡単に激情に駆られ、冷静さを失い、出たとこ勝負な指示ばかり飛ばし、やっと重い腰を上げたと思ったら、攻撃も単調で、特異な技能も特に持っているわけではない…

ましてや、自分がこの世界にやってきてから出会った魔導師達は、なのはやフェイト、はやてやヴォルケンリッター…そして若手ですらスバルやティアナ、エリオ、キャロの様な優秀な才能を持った未来ある逸材ばかりを身近に見てきた為、彼女らに比較して見れば、オサムやエンネアらR7支部隊の隊員…そしてこのセブン・コアタイルという男の実力は、言ってみれば『子供のお遊び』レベル……身も蓋もなく言えば、それが結論だった。

 

「お前は畏れ多くもコアタイル家の後継者である俺に楯突き、その神聖な見合いを台無しにしてくれた…この不敬は万死に値する! 最早、許されるものとは思わない事だな! 身ぐるみを全て剥がして、我が家紋の焼印を背中に押し、大勢の民衆の前でバインドで磔にしてさらし者にして――――」

 

「だからテメェは、やる事、言う事、考える事がいちいち古いんだよ。“Jet-X”!」

 

「!!? ひぇっ!? “ロイヤルガード”!」

 

政宗は呆れた様にぼやきながら、刀を振るい、一発の小さな雷撃弾を発射して反撃した。

勿論、政宗にしてみれば子供を相手にするかのような手を抜きまくった反撃だが、それさえも危うく当たりそうになったセブンは慌てて、大げさにもクリスタルケージ製の障壁魔法を形成して、身を守った。

このバカ息子は、どうやら自分が傷つく事には全く慣れていないようである。

 

「はぁ…! はぁ…!…すー…はー…お、俺としたことが…少々調子にノリすぎてしまったみたいだな…!危うく下級国民の無力な手向かいなんぞに当たるところだったよ」

 

「……その割には冷や汗の量が半端ないけどな? もしかして、あんな虚仮威しにビビったのか? You idiot!」

 

「っ……!? いつまで身の程を弁えないつもりでいるんだ!? 下級国民が!!」

 

「その下級国民相手にいつまでも手こずらされているって現実を、アンタもいい加減に受け入れろよ? “上級国民”様……You’re dumb!」

 

「おのれぇぇぇぇ! 劣等人種の分際があああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

怒りで半分狂乱した状態のセブンが、政宗への殺意を込めて、既に何度目ともわからない咆哮を上げながら、距離を取り、W. SEVEN.を天に向かって掲げてみせた。

 

「我が崇高なるミッドチルダの魔導師の祖 ユリウスよ…偉大なる“7”の数字の名の下に、天に楯突く愚かな逆賊共に、今こそ制裁の鉄槌を下したまえ……」

 

セブンの詠唱に合わせて、W. SEVEN.の穂先に電磁波を帯びた巨大な金色の光球が形成され始めた。

その魔力量は計り知れないのか、収束に伴いセブンの周囲が小さな地震が起きたかのように振動し、ビリビリと空気が張り詰めていくような感覚を覚える。

 

「必殺……“ギルティフィーバスター”!!」

 

セブンが陳腐な魔法名を唱えると同時にW. SEVEN.の穂先の手からそんな雷撃の魔法が放たれた。

まるで発電装置が暴走したかのように、無造作に放たれた大量の細身の魔力レーザーが無造作に中庭中を飛び交う。

 

「ぬおっ! こいつは危ねぇ!」

 

「政宗様!…成実!気をつけろ!!」

 

「えっ!? ってなぁぁっ!!? なんだよあれぇぇ!?」

 

対峙していた政宗は勿論、見守っていた小十郎や、残りの敵兵を掃討していた成実も、まるでディスコライトのように中庭とその周囲の地面や建物を照射し、無尽蔵、無差別に焼き払っていく魔力レーザーの大群には流石に度肝を抜かされた。

 

勿論、政宗と小十郎にしてみれば、こんな無茶苦茶で制御のとれていない魔法を躊躇いなく実戦で用いてきたセブンのあまりの無神経、無配慮ぶりに、違う意味合いで度肝を抜かされたという事なのだが……

 

3人はそれぞれ、横に飛んだり、ジャンプしたり、走るなどして全力で回避していった。

 

「ギャアァァァ!?」

 

「せ、セブン様!? 私達もまだここに――――あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!!!?」

 

しかし、何十本も放たれた魔力レーザーはまるで怒り狂う蛇の様に、宙を蛇行して辺り一帯を焼き払い、遂には僅かに残っていた味方のR7支部隊員の若輩達を容赦なく吹き飛ばしてしまった。

 

 

(アイツ…!?敵も味方も関係なしか!?)

 

(最早、貴族や魔導師云々の話ではありません! あのロクでなしは、人の上に立ってはならない類の人間です!!)

 

政宗と小十郎は回避しながらも、念話でセブンの無茶苦茶な振る舞いをそれぞれに詰った。

 

「ハハハハハハハッ!! 見たか劣等人種共!! これぞ、崇高な貴族魔導師ならではの魔法! この技を解放してしまった以上、お前達の負けは確定したも同然! 力尽きてその身が消し灰にされるまで、この閃光の暴風が止まる事はない!!」

 

(Shit! 雑魚のくせに、面倒な技使いやがって! それに偉そうな口叩いてるが、とどのつまりは、テメェで技がControl出来ねぇって事だろうが!)

 

政宗は必死に魔力レーザーを回避しながら、セブンの虚勢だらけでいい加減なこの大技を心の内で酷く毒づいた。

おそらく、セブンはこの技を完全に習得しているわけではなく、その威力と見栄えの派手さだけを優先して、あとはデバイス自体の高性能に頼る事でどうにか放射こそできるものの、あとの制御は全くできていないようだ。

 

その証拠に、セブンのデバイスを握る手は激しく揺れ、かなり不安定である事が一目瞭然である。

自らの見栄と、政宗達への敵意の為だけに、完全に習得していない技を実戦に持ち出すという軍事組織のエリートとしては前代未聞な愚行を平然としでかすセブンに、政宗は苛立ちと呆れの溜息を吐いた。

 

それでも、この魔力レーザーの威力自体は凄まじいものである事は事実である。

このまま、闇雲に逃げ回っていたら、自分達だけでなく、ホテルの周辺にも被害が及ぶ可能性があるわけだ。

どうにか、これを止める方法はないかと政宗が考えを巡らせようとしたその時―――

 

「アクセルシューター!!」

 

突然、背後から飛来してきた一発のピンク色の魔力弾が魔力レーザーの発射元であった巨大な光球に命中して、相殺する形で消滅させた。

 

「何っ!?」

 

セブンが驚愕し振り向くと、そこにはバリアジャケットに着替え、アクセルモードのレイジングハートを構えたなのはが立っていた。

一瞬の出来事に、政宗達ですら呆気にとられてしまっている。

 

「いい加減にしなさい! セブン准陸佐!如何に貴方が統合事務次官の息子であろうとも…私のお見合いの相手であろうとも…これ以上の勝手な振る舞いは、機動六課の分隊長として見過ごすわけにはいきません!!!」

 

毅然とした口調で糾弾するなのはの隣に、ヴィータもやってきて立ち並んだ。

2人の姿を見た政宗は、無事にホテルの従業員達の避難誘導は完了した事を察した。

 

「セブン・コアタイル。これ以上無闇に暴れてこのホテルを破壊し、街に危害を及ぼすつもりでいるのなら…“乱心者に対する緊急措置”としてテメェを一時拘束させてもらうがいいのか?」

 

なのはの糾弾と、ヴィータの挑発的な問いかけを聞いたセブンの顔が怒りで激しく歪む。

 

「ふざけるなぁッ!! 所詮は本局の重鎮方のお気に入りなだけの成り上がりの分際で、このセブン・コアタイルに指図する気か!? 庶民風情がいい気になるなぁぁぁぁッ!」

 

なのは達の言葉はセブンの逆鱗に触れたのか、咆哮を上げながらW. SEVEN.の穂先を、彼女達に向けて構える。

最早、目の前にいる人物が直前まで見合い相手として固執していた人物である事など、最早脳裏にない事が、その血眼になった顔から十二分に伺い知れた。

 

「どいつもこいつも俺をナメやがって!! こうなったら、全員まとめ――――」

 

 

刹那、蒼い影が、サッとセブンの身体の脇を通り過ぎる。

同時に、セブンの握っていたW. SEVEN.に違和感を感じた。

一体何が起きたかと、少し動かそうとしたところ、豪華絢爛な杖型のデバイスは穂先から3段階に分けて、バラバラに切断され、地面に崩れ落ちてしまった。

同時にセブンの王族装束のようなバリアジャケットも、解けて、勲章を全身に着けた紅色の制服姿に戻った。

 

「なっ!? お、お…俺…俺の…!!? で…でば…でば…デバイス…ッ!!!?」

 

真ん中より先が斬り落とされ、柄だけになってしまった愛器を前に、声と身体を震わせるセブンが前を見ると、いつの間にかそこには背後で魔力砲から逃げ回っていた筈の政宗が刀を手に立っていた。

政宗だけではない。周りを見ると、自分を囲む様に小十郎、成実がそれぞれ愛刀を手に、何れも殺気を全開にしながら立っていた。

 

 

「Ha! なのは! NiceなTimingだったぜ! おかげで、このバカのSpecial trickを叩っ斬る絶好のChanceが出来たぜ!」

 

「えへへ…なんだか、美味しいとこ取りしちゃったみたいでごめんね♪」

 

まる汚いものを斬ったと言わんばかりに血糊もついていない刀を大きく振り払いながら政宗が言い放つと、なのはが照れくさそうに笑う。

 

「なっ!? ひ、卑怯だぞ!!」

 

セブンは舌を縺れさせながらも、自分達の事を棚に上げて、政宗達を非難する。

勿論、そんな説得力のない非難など政宗は微塵も意に介する事はなかった。

 

「人質とったりしたテメェが言えた口じゃねぇだろうが…それよりも……」

 

政宗はゆっくりと、一刀を手にしてセブンに近づきながら、落ち着いた…しかし、ドスの効いた声で語りかけていく。

 

「テメェにはっきり言っておいてやる。テメェは確かにこの世界の社会では相当なEliteなのかもしれねぇ…だがな、身なりはEliteでも、テメェのその心は、テメェが散々見下している“下級国民”以下のDustだ!!」

 

「お……俺が…下級国民以下……だと…!!?」

 

政宗の容赦のない一言に、怒りと慄きで震え上がるセブン。

 

「なのはは、テメェみてぇな、何もしねぇで自分は世界の中心とでも思い昂ぶった勘違い野郎と所帯を持つ気なんざまったくねぇし、ましてやテメェらの低劣な圧力に屈する事もねぇ! もしこれ以上、しつこく俺の女に言い寄るつもりでいるのなら――――」

 

政宗は話しながら刀を大きく振りかぶって見せた。

まさか、そのままセブンを斬り捨てようとするのかと、止めようとするなのはとヴィータだったが、次の瞬間には政宗の刀が一閃…振り降ろされた。

 

 

パサッ……

 

 

すると、セブンのチャームポイントのひとつだった女性のように艷やかな金色の長髪が頭の真ん中辺りでバッサリと両断され、バラバラと足元の周りに落ちる。

同時にセブンの着けていた自慢の勲章達も次々に真っ二つに切り裂かれて、足元に散らばる髪の毛にポトポトと落下した。

 

そして、政宗は呆気にとられているセブンの目の前…ほんの2,3ミリの差の距離まで刀の鋒を突きつけると、殺気を込めた隻眼の眼光を飛ばして、今までで一番のドスの効いた声で一言言い放った。

 

 

「今度はテメェのその悪趣味なLong hairじゃなくて、身体が真っ二つにされると、そう思え……」

 

 

政宗はそこで一度言葉を区切り、大きく息を吸い込むと…

 

 

 

「Understaaaaaaaaaaaaaaaaaaaand!!!!!?」

 

 

 

中庭中…いや、この界隈中に反響せんばかりのボリュームで怒鳴りつけた。

真正面からそれを喰らったセブンが吹き飛び、地面を転がり、ちょうどそこに転がっていた戦いの余波でへし折れた中庭にあったモニュメントに激突してようやく止まった。

幸い頭は打たなかったのか、直ぐに顔を上げるが、その目にはこれまでとは一転して、明らかな恐怖の色に染まっていた。

 

 

 

「ひ、ひいいぃぃぃぃぃぃぃッ!! お、おお、お助けええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

まるで金メッキが剥がれたかのように、貴族としてのプライドもへったくれもない様な情けない悲鳴を上げながら、セブンは倒れているオサムやエンネアらR7支部隊員達をそのままに、一人遁走しようとするが、腰が抜けてしまったのかまともに立ち上がる事もできず、床を必死に這えずりながら逃げようとした。

 

だが、そこへさらなる2つの容赦のない追い打ちがかけられる。

 

 

ガッ!

 

ザクッ!!

 

 

突然目の前に何かが刺さるような音が聞こえ、セブンが恐る恐る見上げると、そこにはそれぞれ鬼の様な形相をした小十郎と成実がまるで仁王像の如く立ちはだかってるのが見える。

さらに地面に這いつくばっていた両手へ視線を移すと、左右双方の親指と薬指の間の隙間…右手側には小十郎が黒龍を…左手側には成実が無柄刀を突き立てていたのだった。

 

「ぴぃぃ!?」

 

それを見た事で、セブンはさらに戦慄し、錯乱状態に陥った。

 

「兄ちゃんからのヤキだけで済むと思ってんのか? このどてかぼちゃ野郎…! 汚ねぇ手ぇ使って、兄ちゃんを散々苦しめやがった分…きっちり俺がヤキ入れてやっから覚悟しやがれ!!」

 

「それから…見合いの席では剣術はおろか、和食…特に“ネギ”を侮辱する様な戯言抜かしてやがったな…? その落とし前もたっぷりつけてやらねぇといけねぇな…」

 

それぞれ片手の拳を対する掌にバンバンと打ち付けるポーズをとったり、指をバキバキと鳴らしながら、それぞれ額に青筋を立てて宣言してくる成実と小十郎の背後には一瞬怒れる2匹の竜の幻影が浮かび、それがセブンの恐怖心に決定的な拍車をかけた。

 

 

 

「びええええぇぇぇぇぇ!!ぱ、パパァァーーーーーー!!」

 

 

((“パパ”ッ!!?))

 

 

股間から滝のように小便を垂れ流し、涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら、セブンはまるでゴキブリの如き速さで、地面を必死に這いながら、這々の体でホテルの中へと逃げていった。

 

その途中で衝撃的な父親への呼び方を、条件反射的に発してしまい、なのはやヴィータを驚愕させながら…

 

見合いが始まるまでとは正反対の、その惨め極まる姿は、実に情けなく、そして滑稽だった―――

 

 

「あっ!? 待ちやがれ! このヤロー!!」

 

慌てて追いかけようとする成実を、なのはが止めた。

 

「成実君、もういいよ。とりあえず、これでお見合い自体は破談になったし、セブン准陸佐も多分あれで懲りたと思うから……」

 

「えぇー!? でもどうせなら、一発ぐらいぶん殴って、あの憎ったらしい鼻っ柱へし折ってやった方がよかったんじゃないの?」

 

「いいじゃねぇか。とりあえず、なんとかはなったんだし…それに流石にあんな救いようのないバカ息子でも直接ぶん殴っちまうのはマズいからな」

 

そう言って、ぶーぶーと文句を垂れる成実や、やや不満顔の小十郎を窘めながらもヴィータは清々しい笑顔を浮かべる。

 

「それよりも…でかしたぞお前ら! アタシらの分まであのクソムカつく連中を叩きのめしてくれて!」

 

「フッ…正直俺も、胸がかなりすく戦いだったぜ」

 

小十郎が微笑を浮かべながら言った。

 

「特に成実! お前は特に大金星上げてくれたな! 勝手について来た事については後で問い詰めるとして、とりあえず褒めてやるぜ!!」

 

「えっ!? 金星ってなに?! 黄金色の金平糖みたいなやつ!? いやっほーい! 甘いものは大好きだぜ俺!!」

 

「あぁ! 甘いもんでもなんでも、後で食わしてやるよ!!」

 

盛り上がる3人を横目に、なのはが、刀を鞘に収める政宗に駆け寄って話しかける。

「政宗さん」

 

「Ah?」

 

「ありがとう…♡ 助けてくれて」

 

「Hum…悪ぃな…あんまりCoolじゃなかったな…」

 

「ううん。 政宗さんは私が言いたかった事を代わりに言ってくれたようなものだよ。 私もセブン准陸佐の態度は許せなかったから」

 

なのはがそう言って笑顔を浮かべると、政宗の表情も自然と緩んでくる。

 

「それにしても断れてよかったな。 あんなド屑なmilky boyと所帯なんて持ったら、お前の身が穢れちまうぜ」

 

「ふふふ。 彼には悪いけど政宗さんの言うとおりだね」

 

政宗の言葉になのはは、小さく笑った。

一先ず、お見合いは無事に破談に追い込む事ができた…

 

とはいえ、これで全てが終わったわけではない事が政宗もなのはもわかっていた……

おそらく、セブン達はこれで黙って引き下がる筈はない。

それに成り行きとはいえこれだけの大騒動に発展してしまったのだ…色々と各方面に説明をする必要がある……

 

それを物語るかの様に遠くから、警邏隊の緊急車両のサイレンが近づいてくるのが聞こえた。

 

まだまだ、政宗達がこの地でやるべき事は沢山ありそうだ―――




オリジナル版ではありそうでなかった伊達軍三大幹部集結戦!

これを書きたいが為に、リブート版では成実をオリジナル版よりも早く登場させたわけです!
いやぁ、書いててホント楽しかったなw


そして、我らがリリバサ最大のヘイト要員 セブンのバカ坊っちゃんと、リブート版より新たなに登場したその取り巻き共『R7支部隊』も見事に、この記念すべき初集結のかませ役として大暴れしてもらいましたw

さて、オリジナル版ではこの先、五刑衆のあの人が登場したり、本来はこの後に成実が合流する事になったのですが、果たしてリブート版の今後はどんな展開になるのか……実はまだ完全にプロットが完成されていなかったりするのはここだけの話w(おい!)
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