リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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二手に分かれ、城塞に侵入したなのはと政宗、ヴィータと成実の前に、それぞれ豊臣五刑衆第四席 宇喜多秀家と、その配下である屍鬼神(しきがみ) 牛頭、馬頭が立ちはだかる。

それぞれ未知の力を駆使する輩を前に、苦戦するなのは達に果たして勝機はあるのか…!?

烏天狗「リリカルBASARA StrikerS 第五十五章…進軍するぜ!」


第五十五章 ~血風大堅城! 屍鬼神達の進撃~

「Get up!! Ya――――haッ!!」

 

「……………ッ!」

 

政宗と秀家は互いに地を蹴り、相手目掛けて疾走する。

それぞれの瞬発力に後衛を担うなのはは思わず目を見張った。2人共に駆け抜ける姿は文字通りの迅雷と烈風に例えても過言でない…

瞬く間に間合いを詰め、互いに得物を交える。

 

「Ha! 得体のしれない化け物に頼っているかと思ったら…俺の六爪(りゅうのつめ)にこれだけ立ち会えるたぁ、中々見どころのあるガキじゃねぇか!!」

 

まさに天上で荒れ狂う竜が如く、振り乱される六振りの(かたな)

 

「………取らせはしないよ……ッ!」

 

それに対し、秀家の長笛はその凶爪を尽く、受け止め、弾きながらバックステップで距離をとると、落ち着いた物腰のまま反撃に移る。

 

「………“死笙針(ししょうじん)”」

 

長笛の筒先を政宗に向ける様に構えた秀家を見た政宗は片眉を顰ませながら、六爪を構える。

秀家の放つ吹き矢は、直撃すれば人体は愚か、強固に造られている筈の要塞の壁すらも軽々と粉砕する程の威力を持っている事は、政宗も既に認知済みだった。

 

《Chain Bind!》

 

しかし、広間に聞こえた電子音声と共に、長笛の筒先に息を吹き込もうとした秀家の手が止まった。

見ると秀家の足元の床にはピンク色の魔力光でできた円形の魔法陣が形成され、そこから生える様にして伸びた複数の鎖が秀家の両足と胴体、両腕を絡め取っていた。

 

「……これは…………!?」

 

これには流石の秀家も僅かながら驚いたのか、僅かばかし怪訝な表情を浮かべていたが、そこへ強い視線を感じ、その方向に目を向ける。

そこには政宗の後ろでレイジングハートをこちらに構えるなのはの姿があった。

 

「手を動かせなかったら…その笛も意味はないよね…?」

 

レイジングハートの穂先を秀家に突きつけながら、なのはは少し口角を釣り上げながら話しかける。

その様子を見た秀家は、この拘束魔法が目の前にいる白い魔導師の仕掛けた罠である事に感づいたが、それでも動揺したり、怒りを顕にする様な事もなかった。

まるで人形の様に目の前の危機的状況に際しても事務的な対応をする秀家に、なのはは不気味ささえも覚えた。

 

「Good Job! なのは! Have a Party!宇喜多秀家!」

 

なのはのアシストに感謝しつつ、政宗は片手に握りしめた三振りの刀を振り上げながら飛びかかっていく。

あとはこのまま秀家を一太刀で斬り伏せてThe end!…その筈だった。

 

「………我が身に宿れ…屍鬼神(しきがみ) “烏天狗”」

 

だが、その前に秀家は静かに詠唱すると同時に、秀家の巻きつけていた長数珠の中で、心臓の辺りの部分に翳されていた一際大きな珠が突然紫色の光を放ち、それに併せるように彼の全身が、突然、黒いオーラに包まれ、同時にその身体から強い“気”の様な衝撃波が発生して、斬りかかろうとしていた政宗の身体をその圧力で押し返すだけでなく、身体に巻き付いていた鎖型の拘束魔法を砕いてしまったのだった。

 

「What!?」

 

地に滑るように着地しながら、政宗は驚きの声を上げながら再び眉を顰めた。

隣に立つ、なのはも同様の表情を浮かべて戸惑っている。

 

一方、謎のオーラに包まれた秀家の身体には変化が起きていた。

髪の上半部を染めていた黒い部分が、下半部の白い部分にまるで墨が染まる様に侵食していき、完全な黒色へと変化していく。

その瞳も虚ろ気な薄紫色から、まるで血に飢えた獰猛な獣のような赤く光った禍々しいものへと変化していく。

 

やがて、秀家を包み込んでいたオーラは漆黒の靄の様になって秀家の身体を完全に包み隠してしまった。

やがて、それが突然煙のようにパッと消えた時……秀家の姿はまるで別人の様に変わっていた。

 

武者装束と道服のアシンメトリーだった服装は、一転して黒と薄紫を基調とした修験者の服装のような完全な道服姿となり、首には山伏がつけるような、細長いきれ地3筋を緒で結んで連ね、所々に丸型の菊綴をつけた結袈裟(ゆいけさ)と呼ばれる装飾具を掛け、その背中からは同じく漆黒の双翼を生やし、髪の色もまた、翼と同じ完全な黒一色へと変わっている。

そして、口元はカラスの嘴を思わせる、尖った黒い覆面で覆い隠されていた。

 

「………チィッ! やはり、二対一とあれば流石の(あるじ)様も“素”で戦うのはキツいみたいだな…!!」

 

「ッ!? その声は…烏天狗(crow野郎)か!?」

 

政宗が驚いて問いかけた。

覆面で隠された秀家の口から出てきたのは、先程まで彼に代わって自分達と問答していた烏型の獣人の発していた声と同じものだった。

 

「その通りだぜ独眼竜。俺は、(あるじ)様が付けている“大心珠(おおしんじゅ)”に俺様の魂の宿った珠を予め取り込ませて置いて、何時でも主様が念じるだけで、こうして“憑身(ひょうしん)”出来るように仕込んでおいたのさ! テメェらがどんな技を仕掛けてこようともすぐに応対出来るように!!」

 

手品の種を明かすような饒舌で語りかける秀家…の身体を借りた烏天狗。

その中には聞き慣れない単語がいくつか混じっていたが、政宗となのははそのうち一つ『大心珠(おおしんじゅ)』とは、今しがた秀家の豹変の際に真っ先に異変が生じていたあの長数珠の中にあった一際大きな珠の事であろうと、予想する事ができた。

 

「……つまりは…今の秀家()の身体は烏天狗(貴方)が借りているという事?」

 

「そういう事になるな。 まっ、それが俺達屍鬼神(しきがみ)を操る者の最大の強みだからな」

 

得意げに物語る秀家(烏天狗)に対し、なのはが問いかけた。

 

「ねぇ…そもそも、貴方達…“屍鬼神(しきがみ)”って……一体なんなの?」

 

秀家(烏天狗)はなのはの問い掛けに暫く黙った後、ゆっくりと語りだした。

 

「日ノ本の遥か古の時代…『平安』と呼ばれていた時代だ…当時、天下統一の野望を果たすために残虐な侵略を繰り返した末に帝の地位を確立させた『平家』の長 “平清盛(たいらのきよもり)”は、その長きに渡る覇道の中で、武芸を極めた僅かな者のみが習得できる異質な力『気』の存在を発見し、それを上手く活用すれば、日ノ本だけでなく、天上天下全ての世界を制する事が出来るのではないかという野心を懐き、そいつを利用してどんな強固な軍勢も圧倒できる『不死身の兵隊』を作るようにある高名な2人の陰陽師に依頼したのさ。その男達の名は“安倍晴明”…そして“道摩法師”……」

 

秀家(烏天狗)の口から出た人物の名前になのはも政宗もそれぞれ目を見開いて驚いた。

 

“安倍晴明”はなのはの世界においては日本を代表するSF系の創作物でよくテーマにされる程に著名な陰陽師であり、政宗達の世界の日ノ本でも同じく、歴史に触れた者であればその名を知らぬ者はいない。

 

対して、“道摩法師”はそのライバルにして、敵役だったという意見もあるなど、晴明よりはどちらかといえば悪名高い陰陽師であった。

さらに、政宗達の世界ではもう一つ、彼の名を知らしめる偉業があった。

 

大谷吉継(Mammy野郎)が使う“呪術”と呼ばれる類の礎を築き上げたのも、その“道摩法師”って野郎だって話を聞いた事があるぜ…」

 

政宗がまるで独り言のような口ぶりで、なのはに補足を入れた。

対して、秀家(烏天狗)は引き続き語り続ける。

 

「2人の陰陽師は、“気”には二種類の力…森羅万象あらゆるものから発せられる「外気功(がいきこう)」と、鍛錬の末に悟りの境地に達する事の出来た選ばれし人間が、『チャクラ』と呼ばれる人外の力が封じられているとされる人体の極秘部位を開く事で放たれる「内気功(ないきこう)」との二種類に分けられる事を突き止め、晴明は内気功を駆使して人間そのものの可能性を広めようとしたが、それに対して、道摩法師は外気功を利用して、人ならざる物の怪…“妖魔”を作り出そうと考えたのさ。

そして、人間の放つ悪意、欲念、邪心、絶望などの心の“闇”と外気功を呪法で練り合わせる事で、最終的に九十九(くじゅうく)もの妖魔を生み出した……」

 

「それが… “屍鬼神(あなたたち)なの?」

 

なのはが尋ねた。

秀家(烏天狗)は頷き、まるでそれが誇りであるかのように、仰々しく、声高らかに宣言してみせた。

 

「そうだ! 人間の業から生まれ、人間の陰我を糧に力を得る俺様達は、お前達人間の事は全て知りつくしている! その愚かしさ! 醜さ!というものを!!」

 

秀家(烏天狗)は突然、糾弾するかのような口ぶりで、政宗となのは達に向かって言い放ってきた。

 

「人間は弱い! 富、名声、力…あらゆる俗の物を前に、それを持たぬ者は見苦しくそれを追い求め、実際にそれを手にした者は驕り、決して満たされる事のない欲に振り回され、溺れてゆきながら、100年と満たない儚い人生を過ごす! …この城塞にいた“えりーと”だのと豪語していた魔導師共が良い例だ!!」

 

秀家(烏天狗)の言葉は明らかに嘲りの色が濃くなってきた。

 

「同じ有象無象とはいえども、この“ミッドチルダ”とかいう世界の人間の質は日ノ本(俺達が住んでいた世界)よりも大分低いって事がよくわかった! 日ノ本(あっち)は成り上がる為の欲に飢えた弱者が多かったが、こっちの人間は“魔法”なんて力があるばかりに、驕り昂ぶった弱者が多いみたいだな! 同じ“弱者”でもまだ欲に飢えた連中の方が獲物としては手応えがあると思うぜ?!」

 

秀家(烏天狗)の指摘に、なのはは返す言葉がなかった。

この城塞の主 『星杖十字団』R7支部隊の人間は彼の言う通り、自分達の特権に胡座をかき、魔法の力を過信し、魔法を持たぬ者を偏見だけで蔑視する程の慢心に溺れており、その結果、政宗ら伊達軍のみならず、秀家が操る屍鬼神達に成すすべもなく、壊滅の顛末を迎える事となった。

そんな格好の実例を前に、投げかけられた嘲りに、反論する言葉がなのはは思いつかなかった。

 

「Ha! そういうテメェも随分、偏見が過ぎるんじゃねぇか? カラス野郎!」

 

だが、政宗はそんな秀家(烏天狗)の嘲りに対しても少しも臆する事なく、堂々と啖呵を切って返した。

 

「確かに“魔導師”って連中は、謙虚な奴らだけとは限らねぇ…R7支部隊(ここの連中)セブン・コアタイル(その飼い主)のように欲に飢えた腐りきった特権階級もいる…しかし、それが何だってんだ? それを言えば、日ノ本(俺達の世界)にだって力や欲に溺れた連中は大勢いる! 現にこうして“天下”を狙うこの俺をはじめとする群雄割拠の武士共…勿論、テメェのMasterの豊臣(Boss)だって、テメェに言わせたら愚かしく、醜いってもんだろうよ! だが…そんな醜くとも、そいつなりに真っ直ぐ生きようって奴はいるもんだ!」

 

話しながら、政宗は真剣な眼差しを秀家(烏天狗)に向けた。

 

「それにテメェの言い分じゃ、まるで魔導師である事そのものが、この世界の連中を弱くしているみたいに評してるみたいだがな…力そのものに良し悪しなんて存在しねぇ!」

 

「「…………ッ!?」」

 

今度は政宗が糾弾するような口ぶりで反論し始めた事に、秀家(烏天狗)だけでなく、話を聞いていたなのはも驚く。

 

「少なくとも、ここにいる“高町なのは”のような、バカ正直な程に真っ直ぐに自分の信じる道を進もうとする、純粋さ、直向きさを持った骨のある魔導師だって沢山いる。そんな人間の強さの可能性も触れてもいないくせに、そんな得意満面に人間を語るなど、片腹痛いってもんだぜ!」

 

(ば、バカ正直ッ!?)

 

政宗の啖呵を聞いて、なのはは自分達魔導師を擁護してくる事を嬉しく思った反面、使われた言葉のセンスにややショックを受けたのか、思わず白目を浮かべる程、愕然としていた。

 

対して、秀家(烏天狗)は政宗の糾弾に多少驚かされながらも、すぐに不敵に笑って返してた。

 

「ほぉ、かの“独眼竜”が、この世界の紛い物な戦士(もののふ)共に肩入れとは滑稽だな」

 

秀家(烏天狗)はそう言いながら、その両手に白と黒の羽扇を出現させて、手にとった。

 

 

「それじゃあ、見せてもらうじゃないか…アンタのいう、この世界の魔導師共の“強さの可能性”というものをなぁ!!」

 

 

秀家(烏天狗)が二色の羽扇を勢いよく振り下ろすと、強烈な旋風がその場に巻き起こり、既に半壊状態に近かった大広間の床に転がっていた瓦礫やガラス片を巻き上げながら、2人に向かって迫っていく。

 

《Ovall Protection!》

 

レイジングハートから技名が鳴ると同時になのはは地面に手を当て、政宗と自分を包み込むようにしてピンク色の球体型の障壁魔法(シールド)“オーバルプロテクション”を張って、突風から身を守った。

だが、それを想定していたのか、最初からそうなるのが狙いだったのか、この隙に秀家は二色の羽扇からそれぞれ4本ずつ両刃で出来た骨を生え伸ばすと、地面を蹴って2人に向かって突進していく。

政宗もまた、六爪を構えると同じく地面を蹴り、両者は真正面からそれぞれ得物を振り落として激突した。

 

六本の刀と2つの羽扇が衝突する度に火花が飛び散り、周りの熱を加速させる。

凡人には目で追うのがやっとなぐらいに目まぐるしい剣戟を数十回交わした後、両者は互いに大きく後退した。

 

「やはり…独眼竜相手にまともに剣戟で挑むのは骨が折れるな…ならば…!」

 

秀家(烏天狗)は目標をなのはに切り替え、彼女目掛けて突進しながら、羽扇の片割れの黒い方を横に薙ぐ事で、その首を一太刀で刎ねようとした。

 

《Flash Move!》

 

「ッ!?」

 

しかし、その前になのはが、同じく地面を蹴ると自分に向かって突進をかけてきたのを見て、思わず驚愕の表情を浮かべてしまった。

その隙になのはは秀家(烏天狗)との間合いを詰めながらレイジングハートを振り上げる。

 

「フラッシュインパクト!」

 

なのはが技名を叫びながら、レイジングハートの穂先を秀家(烏天狗)に目掛けて振り下ろす。

その動きの鋭さなどは政宗の剣技には遠く及ばないが一応形にはなっていた。

その薙ぎ払いを秀家(烏天狗)はあっさりと羽扇の片割れでいなしつつ、もう片方の羽扇で改めてなのはの喉を切り裂こうと薙いでくる。

 

ピカッ!!

 

「!? ぐあっ! な、なんだこの光は!?」

 

秀家(烏天狗)の羽扇とレイジングハートの穂先がぶつかりあった途端、突然炸裂音と同時に強い閃光を放ち、それをまともに受けた秀家(烏天狗)は思わず顔を庇いながら後ろに飛び退いてしまう。

なのはの数少ない近接戦闘用魔法“フラッシュインパクト”は圧縮魔法を施したレイジングハートによって近接攻撃打撃を加える格闘魔法である。

圧縮した魔力は、命中時に閃光を伴って炸裂することで、一時的に相手の視界を奪う効果があった。

 

「ショートバスター!!」

 

思わぬ一手に面食らった秀家(烏天狗)へ追い打ちをかけるように、なのははカートリッジを1発リロードさせながら、レイジングハートの穂先を秀家(烏天狗)に向け構えると、ピンク色の魔力光によるパイプ管程の太さの魔力レーザーを放つ。

全力は…流石に屋内である為、危険と判断したなのはによって、ある程度加減調節されたレーザーが大広間の床を裂くように焼き切っていき、後退していた秀家(烏天狗)を追い詰めるように迫っていった。

 

「小癪な! 風よ守れ!!」

 

秀家(烏天狗)が忌々しげに叫びながら、羽扇を持った両手を胸の前で交差させるように構え、振り払うような動作で広げると、彼の身体を包むように風の障壁が球形に形成された。

 

すると、秀家(烏天狗)を壁際に追い込み、そのまま直撃する筈だった“ショートバスター”は風の障壁に弾かれ、防がれてしまった。

 

「ふっ……どうやら、“牛頭(ごず)”、“馬頭(めず)”の憑代にしてやったここの長とその片棒の魔導師共よりは腕は立つみてぇだな…しかし、所詮は術式ありきのトーシローだな。 素振りの力はまるでなってねぇな」

 

秀家(烏天狗)がなのはの実力をそう評す中、それを聞いたなのはと政宗は彼の言い放った言葉の前半部に含んだ意図を察し、眉を顰める。

 

「ここの長と片棒の魔導師って…!? まさか…リマック三佐とフェートン二尉の事じゃ…!?」

 

「アンタ…アイツらに一体何しやがった…?」

 

「リマック? フェートン? あぁ…あのマヌケ共はそんな名前だったのか?フッ…何をしたかだと?」

 

秀家(烏天狗)は嘲るように鼻を鳴らすと、それに応えるかの様に突然、城塞の外の方から獣の様な咆哮と、複数の建造物が砕かれる様な轟音を伴った喧騒が聞こえてきた。

 

「この叫びを聞けば判るだろう?…2人共、我が同胞の屍鬼神の良き憑代にして糧となってもらったのさ。どうせ、欲を貪るだけの無用の命だ。奪ったところで問題ないだろう? …にしても、この様子だと、お前らと一緒にいたチビ助2人も今頃奴らにたっぷりと可愛がられているのだろうよ?」

 

「なんですって!!?」

 

目を見開きながら叫ぶなのは。

改めて、目の前の少年…というよりは、その少年が操る異形の怪物『屍鬼神(しきがみ)』の情け容赦無さに戦慄するのだった。

 

「……それじゃあ貴方は…リマック三佐とフェートン二尉を屍鬼神(しきがみ)の生贄にしたって事なの!? なんて酷い事を…!」

 

なのはの非難を受け、秀家(烏天狗)は皮肉るように目を細めながら再び鼻を鳴らした。

 

「おいおい! あんな欲に溺れたクズ共なんかを憐れむなんて、アンタもどんだけお人好しなんだぁ!? おい、独眼竜よぉ! これがアンタの言う、そこの“高町なのは”とかいう女の“強さの可能性”って奴かぁ?!」

 

「Shut up! Crow野郎!!」

 

秀家(烏天狗)の嘲笑を聞いた政宗がその怒りで力を解放した途端、周りの闘気がさらに高まり、身体と六爪に蒼い電撃がほとばしる。

 

「その優しさこそがテメェの知らねぇ人間の良さのひとつだ! コイツは俺が出会って来た人間の中で、誰よりもその“優しさ”ってものに溢れていやがる! それを侮辱する事は…この独眼竜が許さねぇぞ!!」

 

「政宗さん……!?」

 

なのはが思わず唖然となって政宗の方を見据えていると、政宗はなのはの方を向き、軽く微笑みかけた。

その隻眼の目線には、なのはへの信頼と敬意の念の込められているように見えた。

なのははその視線に戸惑いながらも、やがて小さく微笑みながら頷き返した。

 

「やれやれ…どうやら“奥州の独眼竜”っては、噂よりも、とんだ腑抜けだったみてぇだな!」

 

そう秀家(烏天狗)は不愉快げにフンと鼻を鳴らしながら、侮蔑する。

 

「それとも…? この微温湯の様な世界に居着いている間にそこの女のくだらねぇ“情”に絆されちまいやがったってかぁ!?」

 

「Whatever!あまり俺達を舐めていると火傷じゃすまねぇぜ? Show time!!」

 

「ほざけぇっ!!」

 

政宗と秀家(烏天狗)は叫び合いながら、それぞれの刀と羽扇を手に、地面を蹴った…

 

 

 

爆発と共に巻き起こる爆風と黒煙、それに乗って吹き飛んだ城塞の壁の残骸に紛れながら、ヴィータは転がる様に城塞から飛び出すと、そのまま気流に乗る様に飛び立ち、地表すれすれの高度で、レシオ山の森の木々の間を掻い潜って移動していた。

 

待て! 逃がすものか!!

 

グァッハッハッハッハッ!! こうしてネズミ共を追い立てていると、関ヶ原での蹂躙を思い出すわ!!

 

二人の後方から馬頭(めず)が羽型の魔力弾を手裏剣の様に投擲し、牛頭(ごず)が手にした石柱と、その巨体の双方を駆使して、木々をなぎ倒しながら追い立ててくるのを僅かに振り返りながら確認したヴィータは、「チッ」と舌打ちをする。

 

「コイツら…頭は足りねぇが、身体はかなり頑丈みたいだな」

 

「急げ姉御! このままじゃ追いつかれちまうって!!」

 

そう成実は、飛行するヴィータの背中に乗りながら、けしかけるように叫んだ。

 

「………って重ぇぇよ!! 何当たり前みてぇに人の背中に乗ってんだテメェ!!」

 

当然、ブチ切れたヴィータにそのまま遠くまでぶん投げられてしまうのは…当たり前だよねw

 

「ぶいよん!!」という謎の悲鳴と共に深々と木々が群生した場所に放り込まれた成実に続いて、ヴィータもその後を追うように飛び込んで、身を隠した。

2人を見失った2体の巨大な屍鬼神は、慌てて疾走していた足を止めり。

 

「ブルルッ」とまるで本当の馬の様に荒く息を吐きながら、馬頭は辺りの森を伺った。

 

…普通には逃げ切れぬと踏んで、身を隠したか……

 

ヌッハッハッハッハッ! 今度は“かくれんぼ”か! よい! ならば森の木々ごと薙ぎ払って見つけ出してくれるわ!!

 

牛頭はそういうなり、手にした石柱を力任せに振り回し、近くにあった木を次々にへし折り始めた。

 

待て! そんな手当たり次第な探し方では見つかるものも見つからないぞ!?

 

そう言って窘める馬頭に対し、牛頭はフンと一際強い鼻息をついた。

 

ハッ! どうせこの辺りの森は全て潰すのだ! だったら、今吹き飛ばしてしまうのも同じ事だろうに!

 

そういう問題ではない! 無尽蔵に動けば、相手に不意打ちを入れる隙を与える事に――――

 

聞き分けのない悪ガキを諌めるように馬頭が荒々しい口調で諭していると、突然、森の木々の隙間から一陣の風が吹き付けてきた。

その直後―――

 

 

「おおおおおりゃあああああ!!」

 

怒気篭もった掛け声と共に、ギガントフォルムに変形させたグラーフアイゼンを振りかぶりながら、ヴィータが木の上から滑空して迫ってきた。

対する牛頭は攻撃を受ける寸前、上手く石柱で受け流す。

 

不意打ちがなんだって? どうせ当たらなければ、恐れるに足らぬ事!!

 

そう叫びながら、牛頭は力強く、一太刀で巨大な大木をまるで木の枝のように軽々とへし折ってしまう程の凶悪な威力の打撃をヴィータに向かって容赦なく振う。

それに対し、ヴィータは複雑に伸びる大木の枝を伝うなどしながら、牛頭の回りを俊敏に飛び回る事で攻撃を避けていく。

 

「あんまり私を舐めんじゃねぇぇぇぇ!」

 

ヴィータが牛頭への敵意をむき出しに叫びながら、牛頭へと飛びかかりながら、等身以上の巨大な鎚の形態になったグラーフアイゼンを、容赦なくの頭部に向けて振り下ろす。

だが、牛頭は石柱をふりかざして、ギガントフォルムさえも先程と同じ様に受け止めてしまう。

しかし、今度はより重量ある形態だった為か、先程よりはややヴィータに優勢に競り合う事が出来ていた。

 

愚かな! 我が憑代より手に入れた術を受けよ! 霞の刃(ヴェロス・カラザ)!!」

 

馬頭がそういって牛頭と力比べで競り合うヴィータ目掛けて人差し指を突き出すと、その指先に先程撃ってきていた羽の形をした魔力弾が形成される。

 

「………ッ!? その技名って…!? まさか…!?」

 

競り合っていたヴィータが馬頭の言葉を聞いて、目を見開いて驚く。

そして、白い魔力弾がヴィータを狙い放たれようとしたその直前…

 

「ぜぇいやああああああああああああああああああ!!」

 

馬頭の足元の地面を突き破って飛び出してきた人物…それは成実であった。

成実は砂塵と小石を撒き散らしながら、ロケット弾のような勢いで地面から飛び上がりながら無柄刀を片足の指で掴んだ右足を蹴り上げる。

無防備な人間が食らったら、確実に一刀両断にされるばかりの鋭い斬撃が馬頭の胴体を左脇腹から右胸にかけて、傾斜に走る。

思わぬ不意打ちを受けた馬頭の指先から魔力弾が消滅した。

しかし、一撃自体は、馬頭の鋼の様な肉体にとっては浅い傷しか刻む事が出来なかった。

 

「ぐぅっ…!? ほ、ホントなんだよコイツら!? クソ固ぇ!!」

 

然様な脆刃! 我らには通じん!!

 

馬頭は叫びながら、両手の爪を鉤爪のように鋭く延ばしながら、宙にいる成実目掛けて、それを振り払ってくる。

 

成実は華麗な宙返りを決めながらすぐ後ろにあった大木の枝に飛び乗ると、そのまま、隣の木の枝に向かって身を躍らせ、飛び移ってみせた。

それと同時に、成実が最初に乗った枝のあった大木は馬頭の振り下ろした鉤爪によって、一太刀でバラバラにされる。文字通りの“粉砕”であった。

 

痛っ!?

 

その一部…バラバラになった枝の一本が馬頭の頭を通り過ぎて、背後で競り合っていた牛頭の頭に直撃する。

勿論、牛頭にしてみれば小石がぶつかった程度のダメージにしかならないだろうが、それでもグラーフアイゼンと石柱による競り合いの最中であったヴィータにとっては、一気に押し切る為の格好のチャンスだった。

 

「吹っ飛べえええええええええええええええぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ヴィータの気合の掛け声と共にカートリッジがリロードされ、魔法の力を受けたグラーフアイゼンが猛烈なパワーを発揮し、振動する。

そして、一気に牛頭の巨体を石柱ごと吹き飛ばしてみせた。

 

ぐおっ!?

 

ぐはっ!?

 

弾かれた牛頭の巨体が後ろにいた馬頭、そして、今しがた馬頭が吹き飛ばした大木の後ろに生えていた数十本の木を巻き込みながら地面の上を滑り、やがて粉塵を上げながら轟音と共に止まる。

 

その隙に成実が木の枝を伝って、地面に着地したヴィータの元に戻ってくる。

 

「やっりぃ! やるじゃん姉御!」

 

「バカ。油断は禁物だ。ギガントフォルムでさえも砕けねぇ身体してんだ。今の一撃も対したダメージにはなってねぇ」

 

ヴィータの懸念は、すぐにそのまんまであった事が証明された。

薄れる砂塵からは大した怪我を負った様子の見えない牛頭と、馬頭が地面を大きく揺らしながらゆっくりと歩み出てきた。

 

あててて…おい、馬頭! 何やってんだよ!? お前がヘマこくから、我までもあのチビに一矢報いられちまったじゃねーか!!

 

……大して痛くもないのだから、別に構わないだろ?

 

ゴキゴキと音を立てながら首を整えつつ文句を述べる牛頭と、それに対して冷ややかに答える馬頭の姿を見据えて、ヴィータは重々しい溜息を漏らした。

 

「…案の定、ピンピンしてやがる…どんだけ頑丈な身体してるんだ?」

 

「どうするよ? もっかい逃げる?」

 

成実が尋ねると、ヴィータは啖呵を切る様な口ぶりで返した。

 

「何の為にコイツらをここまでおびき寄せたと思ってんだよ? ここなら、こっちも全力全開で打って出られるってもんだ! ついてこい! 成実!」

 

ヴィータはそう叫びながら再度、グラーフアイゼンを振りかぶりながら、滑空して突撃する。

そんなヴィータに続くように成実も無柄刀を口に咥え、両手に直刀と木刀を構えながら全力で疾走して後を追う。

 

小癪な!! 場所を変えても同じ事だ!!

 

馬頭が嘲るように叫びながら、突き出した左手の指先から再三羽型の大型の魔力弾を乱射する。

 

しかし、ヴィータは得意のアクロバット飛行で、成実は軽業やパルクールのようなバク転や側転でそれを巧みに避けつつ、2体の怪物との距離を詰めていく。

緒戦では全く未知な能力に翻弄される事となったが、しばらく後退しつつ、ある程度その能力の全容を、ヴィータは数百年分の守護騎士としての勘、成実は奥州の野山の中で培った野生の勘によって、それぞれある程度技を見切れるまでになっていた。

 

「ギガント…ハンマァァァァーーーー!!!」

 

ぐおおおおおおおおおぉっ!!!

 

三牙月流(みかづきりゅう)奥義…“まぐなむすとらいく”!!」

 

貴様の脆刃は我が身体には通じないと言っただろうに!!

 

ヴィータと牛頭、成実と馬頭がそれぞれ激突した。

 

 

ガキィィィィンッ!!!

 

 

とりわけヴィータの打撃魔法『ギガントハンマー』は、全力で打ち込めば要塞の壁さえも打ち砕くだけの威力がある。

しかも、相手が明らかに人間ではないとわかっている以上、手加減する余地もない。

初めから全力全身で振りかざして放った正真正銘の全力全開だった。

 

しかし、その一撃は牛頭の持っていたあの手にしていた当人同様に異常に強固な石柱を粉々に粉砕しただけで、牛頭自身はそれを耐えきってみせた。

 

……ほぅ。我が手にしたものはどんなものでも我の皮膚と同じ物質に変換されるというのに…そいつを打ち砕くとは、貴様…チビにしては中々力があるみたいだな

 

「あんまり、“チビ”、“チビ”って言うんじゃねぇーぞぉぉ!!!」

 

いちいち自分の癇に障ってくる事を容赦なく突いてくる牛頭の不遜な態度に、ヴィータは憤懣を顕に叫んだ。

 

 

その隣では、鉤爪を振り立てた馬頭が、変則三刀(?)を構えて向かってくる成実の一撃を真正面から受け止めた。

 

成実の変則三刀(?)と馬頭の鉤爪が激突して、火花が散る。

しかし、牛頭と馬頭(彼ら)の耐久力が一国の城塞以上のものである事は、流石の成実だって、十二分に理解しているし、ましてやヴィータ程のパワーもない自分が同じ様に力比べに挑むような愚行はしなかった。

成実はすぐに武器を戻して、後ろに飛び退いた。

 

……野猿にしては少しは知恵も働くみたいだな。ならばこれでどうだ!?

 

馬頭はそう言って両手を素早く振りかざすと、成実の直ぐ側にあった大木の群れに向かって白色の魔力刃を斬撃に乗せて飛ばした。

 

「ぅおっとッ!!?」

 

成実の真上から魔力刃に斬られた大木の大きな枝が落石のように次々と降り掛かってくる。

まともに食らえば、軽症では済まないだろう。

 

「そうはホタルイカのぬた和え!! 夜間の森における戦闘に限っては小十郎の兄貴以上と目される俺を舐めんじゃねぇーぞ!!」

 

成実はそう言うと、落ちてくる大木の破片に向かってジャンプしてみせると、それを足場代わりにして巧みに宙に向かって登って行ってみせた。

 

なんだと!? アイツ…本当に猿じゃないのか!

 

成実の予想外な動きに、馬頭は驚きと呆れの感情を兼ね揃えた声を上げる。

その間に、成実は一番高い場所を飛ばされていた枝の破片に飛び乗ると、天上に浮かぶ双月をバックに、地上にいる馬頭に向かって得意満面に叫んでみせた。

 

「へっへ~ん!! 見たか、この馬野郎!! この伊達軍一番槍 成実にかかりゃ、例え火の中、草の中、森の中! …あっ、でもやっぱ火の中はちょっと無理か…とにかく森での戦闘は俺にとって得意中の得意なんだ!! ここじゃどんな小細工仕込んだところで―――」

 

残念ながら、成実の勝ち誇った啖呵を最後まで言い切る暇は与えられなかった。

成実の話を途中まで聞いた馬頭が、途端に近くにあった大木を手でへし折り、そのまま自分に向かって投げつけてきたのである。

 

「ふぇっ!?」

 

ミサイルもかくやのような速度で飛来してくるそれを避ける余地は成実になかった。

 

「ゲゲッ!? 嘘で―――ぶいよんッ!!?

 

呆気なく、大木が直撃した成実はそのまま大木諸共、近くの森へと墜落したのだった。

その様子は、地上で牛頭と交戦中だったヴィータの目にもはっきり捉えられていた。

 

「成実ええええぇぇぇぇぇぇッ!!? ったくだから油断すんなって言ったのに、あの大バカーーーッ!!!」

 

直前に自身が忠告した傍から、あまりにマヌケなミスをしでかした成実に怒り心頭に叫びながら、ヴィータは牛頭の拳を避けると、急いで成実の後を追って、また森の中を低空飛行で逃げる羽目になった。

 

……どうやら、知性も猿同然みたいだな……

 

…ったく、ちょこざいなチビ共だな!!

 

良くも悪くもアホ丸出しな成実に呆れる馬頭に対し、牛頭は文字通りの『二度手間』な戦闘にまどろっこしさを感じたのか憤然とした様子で、再び、森を舞台にした“鬼ごっこ”に興じるのだった……

 

 

 

 

「行くぜ!」

 

「「っ!?」」

 

烏天狗を“憑身(ひょうしん)”させた秀家は、憑身させる前とは比べ物にならない速度で突進しながら、羽扇を振りかざしてきた。

それは読んで字の如く、天狗の様な素早さだった。

 

髑髏渦(どくろうず)!!」

 

「くっ」

 

秀家(烏天狗)が両手を交差させるように振ると、2つの羽扇から人間の頭蓋骨が浮かんだ小さな竜巻が2発放たれた。

 

一発は政宗が六爪で弾きながら回避。

 

もう一発は背後にいたなのはに向かって飛来し、なのははそれを手先に浮かべた障壁魔法(ラウンドシールド)を盾にガードした。

その間に秀家(烏天狗)は羽扇を素早く政宗の首目掛けて、斬り結んでくる。

 

「Be slow!!」

 

「ッ!?」

 

……しかし、政宗も黙ってそれを受けるわけがない。

六爪を構えてから、秀家に対抗して、踏み込んでくる速度は一刀時の比ではない。

秀家(烏天狗)は咄嗟に防御の姿勢をとった。

政宗はそれを見越した上で、右手に持つ三爪を渦を巻くように回転させ――

 

「MAGNUM!!」

 

その勢いのまま、秀家(烏天狗)の心臓目掛けて突き出した。

 

扇風陣(せんぷうじん)!」

 

「ぐぅ…ッ!?」

 

しかし、秀家(烏天狗)は咄嗟に羽扇を振るい、突風を起して政宗を無理矢理に押し戻した。

思わぬ反撃に政宗は思わず、吹き付ける猛風に圧されそうになるも、どうにか足に力を込めてその場に踏みとどまり、六爪をもう一度秀家(烏天狗)に向かって振り下ろした。

秀家も刃を露出させた羽扇を振り、両者は剣戟を交わす。

金属音と共に火花が薄暗い大広間を一瞬だけ明るく照らした。

お互いに、一撃一撃が速く、重い。

 

「そろそろだな…Charge!」

 

「なにっ…ぐあっ!?」

 

突然、頃合いを見切っていたかのように意味深な一言を呟いた政宗に、秀家(烏天狗)が怪訝な顔を浮かべるが、その直後、六爪の斬撃を弾いた羽扇を握る手に太い針を刺されたかのような刺激が走った。

 

「…ちぃぃっ…電撃か!?」

 

よく見ると、政宗の持つ六爪に青白い光が宿り、時折ビリビリと小さな稲妻が走っている事に気づいた秀家(烏天狗)はそれが、政宗が気で生じさせた電気である事に気づき、舌打ちをした。

 

危うく得物を落としそうになるも必死に堪え、その痺れを振りきるかのように羽扇を横薙ぎに払う。

その一撃を後ろに跳んで回避し、余裕とばかりに笑う政宗。

 

「Ya! 眠気覚ましには丁度良かっただろ?」

 

「……チィッ…やはり俺だと白兵戦は不利か……」

 

秀家(烏天狗)は電撃で痺れた手を庇いながら、悔しそうに呟いた。

どうやら、屍鬼神も、人間同様に得意、不得意が存在する様で、今秀家の身体に取り憑いている烏天狗も、移動速度や風を操る術が使える反面、真正面から剣戟を交わす事は苦手であるようで、一見政宗と渡り合っている様に見えて、その実、練達者であれば見過ごす事のない隙を作りやすい様子だった。

 

(なのは! 俺が合図したら、奴に魔法を撃ち込め!)

 

政宗はバックに着くなのはに念話越しにそう指示を出した。

 

(どうするの?)

 

(Crow野郎の動きは掴んだ! 俺に考えがある!)

 

なのはに問いかけに政宗はそれだけを応えると、再び秀家(烏天狗)に向かって斬り込んでいく。

再び、剣戟を仕掛けようとする政宗に対して、秀家(烏天狗)は同じ轍は踏まないと言わんばかりに、再度羽扇を振って、風を操り、それを刃代わりにして政宗と切り結ぼうとした。

しかし、それを見た政宗は思い通りの行動に出てくれたと言わんばかりに、不敵な笑みを浮かべた。

 

(今だ!なのは!奴の背後の壁を撃て!)

 

政宗が念話で指示を出すと、なのはは言われるがまま、レイジングハートの穂先を秀家(烏天狗)ではなく、その後ろにあった壁に狙いを定め、その周辺に5つの魔力弾を投影した。

 

「アクセルシューター! シュート!」

 

先程のショートバスター同様に半分くらいの威力に調節した魔力弾を発射する。

それに気づいた秀家(烏天狗)は一瞬、羽扇を振り払って、もう一度風で避けようかとも考えたが、その間にも容赦なく迫ってくる政宗の斬撃のラッシュの存在に気づき、やむなく横に跳んで避けた。

直後、魔力弾が壁にぶつかって炸裂し、巻き起こった爆風が秀家(烏天狗)を吹き飛ばす。

 

「隙を見せたな! PHANTOM…」

 

そこへ政宗は、容赦なく電撃をチャージした六爪を振りかぶりながら、飛びかかる。

狙いは勿論、一刀両断。

 

「ぐぅ…!?」

 

しかし、秀家(烏天狗)もまたそれに気づくと即座に身を躍らせ、どうにか直撃は回避しようとしたが、完全に避ける暇はなかったらしく、政宗の振り下ろした青白い六本の巨大な斬撃は秀家(烏天狗)の数メートル前で炸裂した。

 

「ぐああああぁぁぁぁぁッ!!」

 

斬撃で発生した雷撃を伴った衝撃波が秀家(烏天狗)を包み込む。

直後、彼のいた場所だけでなくその後ろの壁…遂には大広間の天上や床さえも吹き飛ばし、実質的に部屋を半壊させるほどの威力を見せつけた。

 

「政宗さん!」

 

確かな手応えを感じた政宗が六爪を振り払っていると、後ろにいたなのはが駆け寄ってきた。

その表情には安堵の色が浮かんでいた。

 

「Thanksなのは。Nice Assistだったぜ」

 

「えへへ…よかった…///」

 

サムズアップを決めながら褒めてくれた政宗に、なのはは思わず頬を赤く染めながらも彼が無事であった事に安堵する。

 

しかし…

 

 

 

 

「……烏天狗を打ち勝つなんてね……やはり、日ノ本でも有数の武将なだけの事はあるね…流石だよ。伊達政宗……」

 

「「ッ!!?」」

 

外壁のひとつと半分、天井も殆どふっとばされた大広間に、響いた声に、緩みかかった政宗となのはの表情が一転する。

2人が視線を向けると、半壊して吹きさらしになった大広間の端…崩れ落ちて先端になった床の絶壁に、再び元の姿格好に戻った秀家が立っていた。

手にしていた得物も再び長笛に戻っていた。

 

「……あれだけの一撃を受けて、無事だとはな……つくづく“豊臣五刑衆”ってのはMonster揃いみたいだな…」

 

「…別に無事じゃないよ……今の一撃で烏天狗も相当な負荷を負った……しばらくは“憑身(ひょうしん)”出来ないだろうね……」

 

再び元のポーカーフェイスに戻り、冷淡な口ぶりで話す秀家に、政宗は再び六爪を構えながら言った。

 

「それじゃあ、ここからはテメェが相手になるってか?Creatures Tamer」

 

「………いや……僕だけじゃないよ……」

 

秀家はそう言うと、長笛を横に構えて、突然演奏を始めた。

 

 

《♪~~~~ ♪~~~~~》

 

 

「!?」

 

秀家が奏でだした音楽は今まで政宗達が聞いたことがなかった音調だった。

 

その曲を聞いた途端、政宗もなのはも突然、背筋にゾクリと冷たく重いものが伸し掛かった様な感覚を覚える。

 

ここまで見せてきた下手な召喚術とは明らかに違う…

 

何か途方もなく強大な何かを呼び出そうとしている予感を感じさせた。

一体何をしようとしているのかわからないが、このまま秀家を放っておくと大変な事が起こりそうな予感がする。

 

そう直感したなのはは、レイジングハートの穂先を秀家の頭を狙って構えようとしたが……

 

 

「グオアアアアアアアアアァァァァッ!!!?」

 

「「ッ!!?」」

 

 

突然、地の底から響くような咆哮が聞こえ、それと共に城塞全体が激しく揺れ動いた。

あまりの振動になのはも政宗もその場に立つ事さえままならず、思わずよろけてしまう。

 

「ま、政宗さん!? これって……」

 

「今度は何だってんだ!?」

 

なのはと政宗の額に冷たい汗が流れる。

明らかに容易ならぬ事態が起こった事を察した2人は顔をこわばらせていた。

 

 

ドゴオオオオオンッ!!!

 

 

突然、一際大きな轟音と振動が走る……

 

 

同時にバサリと何か羽ばたかせるような物音が、切り開かれた部屋の大穴から見晴らす夜景に響き渡った。

 

 

その直後、“それ”は政宗となのはの前に堂々と姿を見せた。

 

 

漆黒の巨体…

 

禍々しい形をした翼…

 

鋭く長い尻尾…

 

頭と両翼の前縁、胴体、尻尾に付けられた古代の鎧の形を模した重厚感溢れるプロテクターとその表面を血管のように走る赤いライン…

 

このミッドチルダにおいても早々に目にかかる機会の少ない存在が、そこにいた。

 

 

 

「こ……これは…まさか……」

 

 

なのはが戦慄し、顔を引きつらせながらその正体を呟いた……

 

 

 

 

「…魔竜…!?…それも滅多に存在しない“古代竜”……!!?」

 

 




遂に、姿を見せたR7支部隊の切り札…もとい、秀家が手に入れる事に成功した格好の戦力 古代魔炎竜 アルハンブラ…

コアタイル派さえも扱いに苦慮した程のこの超危険生物を前に、なのは、政宗はどう立ち向かうのか…!?

一方、牛頭、馬頭の強固な肉体を前に決定打を見いだせないヴィータと成実の運命は…!?

次回、更に波乱不可避!?


ちなみに1日過ぎてしまいましたが、昨日8月6日は、「リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-」連載開始一周年の記念日でした。

本当は今回の更新分も昨日の内に投稿したかったのですが間に合いませんでした…(苦笑)

そんな杜撰な投稿体勢ですが、これからも引き続きよろしくお願い致します。
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