リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition- 作:charley
政宗「…っていうかアンタこれ、去年と同じようなPatternじゃなかったか?」
ギクッ!?
なのは「うん。2020年~21年の時も10月くらいで急に萎えて、クリスマスも年越しスペシャルも書けずに、2月くらいに再開してたよね?」
ギクギクッ!?
政宗「とどのつまりは……2年連続で同じ事繰り返してるって事かあああぁぁぁ!!!?」
アイムソーリィィィィィィッ!!
政宗「無理矢理英語使って謝るな!!」
……はい。ホントに、読者の皆さん申し訳ありませんでした。
何故か年末年始が近くなると決まって鬱&スランプが悪化するのがここ数年の悪癖になっていて、我ながら本当にどうにか出来ないかと悩んでいるところです。
そんなわけで、リリカルBASARA StrikerS 再開します。
家康「だから、そのフレーズも去年やってたんだっての…」
スバル「い、家康さんも言うようになりましたね」
家康「だってワシ、本編でもしばらくほったらかしだし…」
スバル(完全に拗ねてる!?)
第一管理世界 ミッドチルダの中でも有数の歴史情緒溢れた観光都市 ラコニアであったが、それが今や無残な戦場へと変わり果てていた。
街のあちこちから上がった火の手が天上の夜闇を紅く照らし、既に市街地中心部では3分の1もの建物が巨大な獣のかぎ爪によって抉られ、崩れ落ち、悲惨な地獄絵図へと変わり果てていた。
その悲惨な地獄絵図の真上では、街をこのような有様へと変えた張本人である古代魔炎竜 アルハンブラが飛び交っている。
時折、地上から武装隊の魔導師が発砲したものであろう魔力弾が空を俊敏に飛び交う魔竜に向かって飛来するのが見えるが、巨体を誇る翼竜相手には文字通り“蚊が刺す”程度にしかならず、竜の気を引くことすらままならない有様だった。
ただ一人…魔竜の背後から張り付くように、追跡しながら飛行し、その行く手を阻むように魔力弾を撃ち込む航空魔導師…“エース・オブ・エース”高町なのはを除いて……
古代竜を追って街に入ってから10分経っていた…
なのはは古代竜 アルハンブラをどうにか地表へ落し…とまではいかずとも、せめて制止せんとしていたが、彼女の力を持ってしても古竜の進撃を止める事はできない。
レイジングハートの柄を握る手は汗ばみ、額からは冷や汗が流れ落ちていた。
中遠距離用魔法に特化している反面、近接戦闘用魔法のバリエーションに乏しいなのはにとって、一定の距離を保ちつつも、戦闘に持ち込むほか勝ち目はないように思えたが、如何せん、古代竜の方もその図体に見合った巨体に似合わず機敏であり、なかなか懐に飛び込めないのだ。
加えて、相手は相当なタフぶりを見せている。
先程放ったディバインバスターに全くダメージを負った様子を見せなかったのが何よりの証だった。
(このままじゃジリ貧だ……)
なのはは、内心焦りながらも必死に打開策を考える。
するとその時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
《
(レイジングハート?)
それは、いつも自分を支えてくれる愛機である相棒の声であった。
《
(……やっぱりそうか…どおりでリミッターありきとはいえど、私のディバインバスターをまともに受けて、あの調子だものね…)
なのはは、前方で天上の双月に向かって上昇しようとするアルハンブラを見据えながら心の中で呟いた。
依然、その巨体にさしたるダメージは負っておらず、まだまだ絶好調といった調子だ。
しかし、それでも…なのはには自信があった。
確かに出力リミッターが掛けられ、AAクラスまで能力を制限されている今の自分の攻撃は、厄介な魔装具の装甲に身を包んだ古代竜相手には分が悪いかもしれない……
だが、この
…… そんな相棒が自分の力を信頼しないわけがなかった。
(やってみせるよ。レイジングハート!!)
なのはの心強い返事を聞き、嬉々として答えたかのようにレイジングハートは先端部分を光らせる。
《
レイジングハートの言葉を受け、なのはは力強く頷いた。
そして再び前を向き、飛行する古代竜の姿を視界に収めると、レイジングハートの先端部分から、複数の光の玉が浮かび上がってきた。
この間になのはの脳内には、これから行うべき戦術プランが展開される。
刹那の後、なのはは即座に行動に移った。
古代竜を追うなのはの前に、いくつもの桜色の閃光が瞬く。
その閃光の正体は、なのはが自身の周囲に展開した誘導弾である。
誘導弾はなのはの意思に従い、アルハンブラに向かって飛翔していくが、当然のようにアルハンブラは上空へと回避する。
しかし、その動きは既になのはも想定済みだった。
なのははすぐさま追撃用のアクセルシューターを射出する。
誘導弾に続き、今度はなのはが得意とする射撃魔法であるアクセルシューターが発射される。
高速で飛ぶアクセルシューターは、空中へ逃れようとするアルハンブラに対して追随し、次々と着弾していった。
誘導弾、砲撃魔法と立て続けに攻撃を受けたアルハンブラは、煩わしそうに吼えながら降下を始める。
そこへ、なのははさらに追い打ちをかけた。
なのはの右手に握られた白銀の杖型デバイス…愛機の銘を冠した真紅の宝石のような意匠を持つそれを前方に突き出すと、先端に環状の魔法陣が展開され、そこから巨大な砲門が出現する。
なのははその砲身に膨大な魔力を流し込み、照準を合わせると……
《Divine Buster!》
「シューート!」
引き金を引いた。
撃ち出された魔力の奔流は一直線に、まるで流星の如く、夜空を駆け抜ける。
大気との摩擦によって生じたプラズマを伴いながら、なのはの放った一撃――ディバインバスターは、そのままアルハンブラの巨体を覆う装甲…それが無い唯一の箇所…頭部と胴体をつなく朱色の爬虫類質な表皮を持った首を狙って、一直線に飛んでいった。
直後、大爆発が巻き起こる。
「……命中した…ッ?!」
なのはは制止しながら、思わず呟いてしまい、すぐにそれがあまり縁起の良くない一言であった事を思い出した。
(こういうのって“フラグ”って言うんだっけ…)
なのはが、うっかり滑らせてしまった一言に忸怩を思う間もなく、宙に立ち込める白煙の向こうから…
空をも揺るがさんばかりの古竜の咆哮と共に煙が一瞬にして一閃の旋風と共に振り払われる。
勿論、アルハンブラの身体には傷一つついていなかった。
(ぐっ……命中直前に身体を僅かに逸らして、胴体の装甲に当てる事で防いだのね……)
意外に頭の回転も回る敵の厄介さに、珍しく唇を噛み締めて、昂ぶる感情を顕にするなのは。
そんな彼女に対し、アルハンブラは口元を大きく歪めさせると、大きく息を吸い込んだ。
そして次の瞬間、大気を震わす程の轟音を伴って、炎熱のブレスを放ってきた。
灼熱を帯びた深緑色の業火が、真っ直ぐになのは目掛けて襲いかかってくる。
「くぅ……ッ」
咄嵯の判断で、なのはは障壁を張って防御を試みる。
しかし、いくら強固な防護壁とは言えど、この近距離では直撃を免れない事は明白だった。
それでも、なのはは必死に堪えようとした。
だが、その抵抗は虚しくもあっさりと破られてしまう。
「きゃあああぁぁッ!?」
障壁越しにも伝わる衝撃と爆圧に耐え切れず、なのはは悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。
その先には、市街地の中心部から少し離れた場所にある広場を中心とした市民公園があった。
「うわああっ!?」
なのはが、悲痛な叫びを上げて吹き飛んだ先で待ち構えていたものは、硬い地面ではなく柔らかな芝生に覆われた公園の広場だった。
なのはの事を受け止めてくれた芝草がクッションとなり、なのはは痛みを感じることもなく、無事に着地することができた。
なのはが無事であることを確認するように、レイジングハートが点滅する。
《
レイジングハートの声を聞き、なのははホッとした表情を浮かべた。
幸いなことに、なのはが受けたダメージはバリアジャケットが守ってくれたおかげで殆ど無かった。
しかし、それはあくまで表面上の話であり、なのはの心の中には焦燥感が募っていた。
(このままじゃまずい……なんとかしないと……)
状況は依然変わらず、なのはの劣勢である。
そもそも、なのはは最初から単独で勝てるとは思っていなかった。
相手は古代竜と呼ばれる存在で、本来ならば人間が敵うような存在ではないのだ。
だからこそ、なのはは初めから勝つ気など毛頭なかった。
今なのはが出来ることはただ一つ――奴の動きを少しでも止めて、ラコニアの街の被害が広がる事がないように時間を稼ぐことだけ…。
「高町!」
背後から聞こえてきた声になのはが振り向くと、片倉小十郎がこちらに向かって駆けつけてくるのが見えた。
「小十郎さん!」
「高町! 一体何が起こっているっていうんだ!? なんなんだあの竜は!?」
「それが…」
今は時間が惜しい為、なのはは話の要点のみを抑えた簡潔な説明をしていく。
それでも、R7支部隊の惨状と、“宇喜多秀家”なる豊臣五刑衆の一人と出会った事、そして秀家の手でR7支部隊が封印していた危険な古代竜 アルハンブラが復活した事を話した。
「……宇喜多秀家……そういえば豊臣の与力の大物の一人として“宇喜多”の名を聞いた事は知っていたが……まさか五刑衆の一人がそいつだったとはな…」
小十郎は呟きながら、2つの月をバックに飛ぶアルハンブラを睨みつける。
「にしても…またとんでもないものをけしかけてきたものだな…それでどうする?」
尋ねる小十郎になのははバリアジャケットに付いた砂埃を払いながら答えた。
「なんとか、私が止めてみせる。倒す…のは流石に無理かもしれないけど、それでも応援が来るまで少しでも街の被害を抑えないと! 小十郎さん! 六課からの応援は!?」
「ハラオウンとシグナムが先行して向かっている。アイツらもこの街の状況は遠目から見えている筈だから、一刻も早く駆けつける筈だろう。ただ、真田や徳川、フォワードの4人はヘリで向かっているからもうしばらくかかりそうだ」
「そっか…でもフェイトちゃんとシグナムさんが来てくれるだけでも、百人力だよ」
「成実やヴィータはどうした? それに政宗様は?!」
小十郎が問いかける。
「ヴィータちゃんと成実君は、別の敵と遭遇したみたいで、2人共まだレシオ山で戦ってるみたい。政宗さんは私にアルハンブラの対処をお願いして、一人宇喜多秀家を相手にR7支部隊隊舎に残って…」
「そ、そうか…まったくあの御方はまた無謀な事をなさる……」
そう呆れるような声質でため息を零す小十郎であったが、次の瞬間にはその表情は緊張で強ばった。
今、2人がいる公園に空から吹き付ける風の“圧”が変わったからだ。
なのはも小十郎もそれがなにか巨大なものが天上から迫ってきているのであると感知し、同時に空を見上げる。
案の定、空からは魔竜アルハンブラが大口を開けながら、急降下してきているのが見えた。
「来るぞ! 構えろッ! 高町!」
「くっ!?」
なのはは、再びレイジングハートを構えると、迫りくるアルハンブラに対して迎撃態勢を取り、小十郎も右腰に下げた愛刀“黒龍”を引き抜いて、上段の構えをとってみせた。
「やああぁぁっ!!!」
「唸れ… “
気合の声とともに、なのはは目の前に展開した魔法陣から無数の誘導弾を、小十郎は突き出した刀に青白い電撃を走らせ、鋒から一筋の閃光として放つ。
放たれた誘導弾と電撃の閃光は真っ直ぐアルハンブラに向かって飛んでいくが、アルハンブラは再び口を大きく開くと、そこから黒炎を吐いて、向かってきた誘導弾と電撃を全て焼き尽くしてしまう。
「そんな!?」
「ぐぅ…ッ! やはり俺の“鳴神”程度の技では、あの巨体を貫く事はできないのか…」
小十郎が歯痒そうに唸るが、その間にアルハンブラは眼前にまで迫っていた。
「危ない! 小十郎さん!…ショートバスター!」
なのはが杖先を向けると、アルハンブラに向かってディバインバスターよりも一回り程小規模な太さの桃色の魔力砲が発射される。
狙いは勿論、装甲に守られていない首――
しかし、アルハンブラは、やはりその巨体に合わぬ身軽なローリングを披露して、砲撃を回避してみせると、そのままなのは達の方へと突っ込んできた。
「避けて!」
「ぐっ!」
なのはの叫ぶ声を合図に、2人はそれぞれ反対の方向に向かって地面を蹴り、大きく身を撥ねさせながら、地表に向かって体当たりをかましてくるアルハンブラの巨体をどうにか避けるも、その衝撃で巻き起こった風圧で、それぞれ吹き飛ばされてしまった。
「きゃあぁっ!!」
勢いよく地面に叩きつけられたなのはは苦悶の表情を浮かべながら、何とか立ち上がろうとするが、全身を襲う痛みのせいでうまく力が入らない。なのはが立ち上がれないままでいる間にも、アルハンブラはゆっくりと地面を這って、近づいてくる。
その光景を見て、なのはの心中に恐怖心が生まれる。
そして、遂にアルハンブラがなのはのすぐ目の前までやってきた時、アルハンブラは大きく息を吸い込むような動作を見せる。
(まずい!?)
アルハンブラの行動を見たなのははすぐに危険を感じ取り、身体を動かそうとするが、やはり思うように動かない。
次の瞬間には、アルハンブラの口から先程と同じ黒い炎が吐き出されるだろう。
「やい魔竜! 余所見してんじゃねぇ!」
だが、その前にアルハンブラの背後から小十郎が飛び出してくると、サッと背中に飛び乗ってみせると、それを覆う黒い装甲めがけて、電流の走る刀を突き立てようと、振り下ろした。
ガキィィン!!
しかし、装甲は突いた刃を全く通さないばかりか、まるで水面の様に円形に広がる赤黒いオーラの波紋を浮かばせたかと思いきや、次の瞬間にはバチバチと弾けるような音を立たせながら、刀を一人手に押し返してしまった。
「ッ!? こいつは…唯の鎧じゃねぇのか!?」
小十郎が弾かれた黒龍を見据えながら、戸惑う声を上げていると…
それを察知したアルハンブラが翼を大きく広げ、その場で回転し始めてしまう。
「なにぃ!?」
慌てて小十郎は振り落とされないようにしがみつくが、あまりの遠心力によって、次第に手の力だけでしがみついている状態になってしまう。
「ぐぅ…! こいつはとんだ……暴れ馬ならぬ暴れ竜だな……!!」
それでも諦めず、小十郎は必死に食らいつき続ける。
その間、なのははというと……
(動けない……! このままだと、私も小十郎さんも……!)
アルハンブラの回転に巻き込まれまいと、なのははその場から動こうとしたが、今しがた吹き飛ばされた際に地表に何度も叩きつけられた衝撃で一時的な脳震盪を起したのか、中々視点が定まらずに起き上がる事ができなかった。
その間にも遂にアルハンブラは小十郎を振り落とすように回転する速度を上げていき、遂に耐えられなくなった小十郎はその背中から振り落とされると共に、公園を囲むように広がっていた木々に向かって、まるで砲弾のような勢いで吹き飛ばされてしまった。
数本の木々をなぎ倒しながら吹き飛び、一際大きな大木に激突した事でようやく止まった。
「ぐはぁ……ッ!?」
「小十郎さん!?」
額から血を流しながら、力なく項垂れる小十郎を見て、なのはが思わず悲痛の声を上げるが、そんな彼女に向かってアルハンブラは口を開き、再び黒炎を吐こうとする。
(もうダメ……!)
迫りくる死の気配を前に、なのはは目を閉じて覚悟を決める。
だがその時――
「なのは!」
不意に頭上から聞こえてきた声に、なのははハッとして目を開く。
そこには自身のアルハンブラの間の地表…その数メートル上空に黒を基調としたバリアジャケットに白色のケープを羽織り、金色の光刃で出来た大鎌を模したハーケンフォームの愛機 バルディッシュを構えたフェイトが、なのはを庇うように背中を向けて浮遊していた。
「フェイトちゃん!」
「なのは、遅くなってごめん! 今の内に…!」
「あ、うん!」
フェイトに促されるまま、なのはは起き上がると、もう脳震盪も治った事を確認してから、地面を蹴って再び空に向かって舞い上がり、駆けつけてくれた親友の隣に並び立つ。
突如、アルハンブラが雄たけびを上げると、口から黒い炎を吐き出した。二人はそれを躱しつつ、一定の距離を離そうと更に空の方へと上昇した。
「なのは。あれってひょっとして、古代竜…?!」
「うん。今は説明している時間がないから簡潔にしか説明できないけど……新しい豊臣五刑衆が現れて、その子がR7支部隊で封印されていたあの竜を解き放ったの」
上空へ上昇しながら、なのはとフェイトは眼下にいるアルハンブラの姿を見ながら会話をする。
「新しい五刑衆…!? それに『
「それが…、私も色々とまだわからない事だらけで……確かな事は、あの竜は性質も能力もかなり危険だって事と…! このまま野放しにしていたら
「わかった! でもどうやって?」
「それは……」
なのはがそこまで言いかけた時だった。
口を大きく開いたアルハンブラが空気を震わせる程の怒号を吼えると、翼を広げ、上空にいるなのはとフェイト目掛けて、一直線に突っ込むように飛翔し始めた。
2人は咄嗟に二手に分かれる様に飛んで、アルハンブラの突撃を回避する。
地上と違い、巻き起こる衝撃は然程大きくはなく、回避に成功した2人はアルハンブラとの一定の距離を置きながら、もう一度空中で合流した。
「そういえば、シグナムさんも一緒に先行していたんだよね? シグナムさんは?」
「私ならここにいる」
なのはの問いに答えたのは、いつの間にか背後にいたシグナムであった。
さらに彼女の横には、肩を借りる形で支えられた小十郎の姿もあった。
「小十郎さん!? 大丈夫!?」
「あぁ。なんとかな…ハラオウンがお前の救援に現れたのと同じ時に、シグナムが駆けつけて最低限の処置は受けた…しかし、空中戦となると空戦魔導師でない俺は出る幕がなさそうだな…」
シグナムの肩を借りながら小十郎は歯痒そうな表情を浮かべながらそう呟いた。
するとシグナムも、火を吐きながら暴れるように飛ぶアルハンブラを睨みつつ、唸るように話す。
「片倉の話からして唯ならぬ事が起きたとは予想していたが…よりによって“古代竜”が相手とは……久しぶりだな。竜を相手にとるのは…」
そう話すシグナムの小十郎を支えていない方の手は既に愛剣のデバイス レヴァンティンの柄にかけられていた。
「シグナムさん、フェイトちゃん。レイジングハートの話ではあの竜が纏っている装甲は強力な魔力耐性のある魔装具なの。だから、ただ魔法を撃ち込むだけじゃダメみたい」
なのはがそう2人に忠告すると、小十郎も補足する様に言い添える。
「その上、あの装甲そのものが相当固ぇ。俺の黒龍もまるで刃が通らなかった…おそらく魔法だけでなく“気”の力も通じねぇ…」
「なるほど。つまり、あの竜に対する最も効果的な攻め手は……」
「…装甲を覆っていない箇所を近接用の技を打ち込む!」
シグナムの言葉にフェイトは遠くにいるアルハンブラの姿を見据えながら、今ある戦法で一番有効であろう戦略を口に出した。
外見は、赤い鱗に覆われたワイバーンのような外見のアルハンブラの身体の内、漆黒の装甲に守られた箇所は頭部、胴体、3本の巨大で鋭利な爪先、そして長く太い尾と、両翼の前縁部分である―――
つまり、首と翼の前縁以外の部分と、足首はむき出しの状態であるというわけだ。
「よし。 奴は私とテスタロッサ…否、ハラオウン隊長と2人で相手する。高町隊長は一度片倉を地上にいる陸士隊の医療班に預けにいくついでに、ご自身の回復と装備の補填を…」
任務中との事で公務モードで話しながら、シグナムは肩を貸していた小十郎をなのはに預けてくる。
そして、なのはは小さく「はい」と返事をして、小十郎に肩を貸しながら抱えた。
「小十郎さんを届けたら、すぐに戻ってきます。それまで少しの間お願いね」
「すまない2人共…こんな時に力になれなくて……油断するんじゃないぞ」
なのはの肩を借りた小十郎がフェイトとシグナムに向かって頭を下げながら言った。
それに対し、2人は振り返りながら頼りがいのある微笑を浮かべながら頷いた。
「まかせて」
「無論だ」
その言葉を聞いた小十郎は安心したように笑みを浮かべると、なのはに連れられて地上の街に向かって降りていった。
*
その頃―――レシオ山の山中では、獣道を街に向かって駆け下りて行く政宗の姿があった。
宇喜多秀家を一先ず退けた後、他に彼の放った屍鬼神や生存者の姿がない事を確認してからR7支部隊隊舎を出ようとした政宗であったが、その時になってようやく、自らが街へ降りる為の手段がない事を失念していた事に気づいたのだった。
アルハンブラの出現によってその対処のために、ここへ訪れる際には空から空輸してもらったなのはを、一足先に街へと送り出してしまった。それに、彼女以外で空を飛ぶ事のできるヴィータは成実と共に別の敵と戦っている。
こうなれば自力で街へと降りるしかなかった政宗であったが、日ノ本の国と違って、馬などそうおいそれと見つかる環境ではない。
それならば、せめてこの
「Shit! まさか、五刑衆相手に打ち合った直後にTrail Runningなんざする羽目になるとはな! 今日はとんだHard Scheduleだぜ!」
政宗は一人悪態をつきながらも、木々の間を掻い潜る様にジグザグに走り、岩や木の根などで凸凹の激しい細道を、慣れた様に身軽な足取りで駆け抜けていった。
そして、ようやく山の中腹にある切り開かれた場所まで辿り着くと、彼はそこで大きく息を整え、呼吸が整った所で改めてそこから見えるラコニア市街の様子を伺う。
しかし、そこに広がっているのは惨劇であった。
建物の多くは崩れ去り、あちこちから火の手が上がっている。
そして、その惨状を作り出したであろう元凶の魔竜と思しき巨大な影が火を吐きながら街の上空を旋回する様に飛び交っていた。
時折、その周りで閃光が何度か光るのが微かに見えたが、その閃光を放っているのがなのはなのか、それとも応援に駆けつけた別の魔導師なのかはここからでは確認する事ができなかった。
「こいつはマズいな…早く山を下りて、せめて小十郎と落ち合わねぇと……!」
焦る気持ちをどうにか抑えつつ、政宗が再び麓へと続く道を駆け出そうとしたその時だった。
「急げって姉御ぉ! もっと速く飛べないのさぁ!?」
「うるせぇ! お前がいなかったらともっと速く飛べるっつぅの!! いいから黙ってろ! バカ成実!!」
背後の森の奥から聞き慣れた2人分の騒ぎ声がふいに聞こえてきた。
一瞬でその声の主達が誰なのかわかった政宗は、声のした方へと振り向く。
すると、政宗の視界の先に広がる木々の向こうから、成実を抱えながらこちらに向かって地表から2、3メートルのところを低空飛行で飛んでくるヴィータの姿が見えた。
「成実! ヴィータ! Stop! Stop!!」
「―――ッ!? 政宗!?」
「あっ! 兄ちゃん! 無事だったの!?」
政宗の姿に気づいたヴィータは、慌てて飛行速度と高度を落とすと、政宗と数歩分の距離を開けたところに着地しながら、抱えていた成実を雑に投げ出した。
「ほびろん!?」とマヌケな声を上げながら、地面に顔からダイブする様に落ちる成実を尻目に、ヴィータは単刀直入に政宗に問い詰める。
「政宗! 一体、どうしてまたあんなバケモンがR7支部隊の隊舎にいたんだよ!? なんでお前はなのはと一緒じゃないんだよ!? アタシらと分かれた後に、一体何が起きたんだぁ!?」
「落ち着けヴィータ。気持ちはわかるが少しCoolになれ。詳しくは道行きでゆっくり話してやるから、まずは俺をなのはの下へ連れて行ってくれないか? あのDragonを追って先にDown Townに向かったんだ」
政宗の説き伏せる様な落ち着いた声のおかげで彼以上の焦燥に駆られていたヴィータも少し頭をクールダウンさせる事ができた。
「あぁ。アタシもなのはからの念話で、それは聞いている。よし、アタシが抱えてやるから、一先ず街へ行こう。まずは小十郎にもこの状況を説明しないといけないしな」
「It’s up to you…」
そう言って、先程まで成実を運んでいたように、今度は政宗を抱える形で飛び立とうとするヴィータだったが、そこへ成実が慌てて起き上がりながら詰め寄ってきた。
「ちょ、ちょちょちょちょっとヴィータの姉御ぉ!? それじゃあ俺はこっからどうすりゃいいんだよぉ?!」
「「走って下りろ」」
政宗とヴィータから声を揃えて返ってきた答えに、成実は思わず「ゲゲェッ!?」と顔を顰める。
「日頃から奥州の野山駆け回ってるお前の足なら、こんな山の獣道くらい10分もあれば下りられるだろ?」
「ええぇぇぇっ!? んな事言ったって、俺今空きっ腹で、山を駆け抜けるだけの体力残ってない―――」
「Go for it! …ヴィータ頼む!」
「あぁ!」
成実の抗議を最後まで聞きもせずに、政宗はヴィータを促し、2人はそのままラコニア市街地に向けて、飛んで行ってしまった。
「うおいいぃぃぃぃっ!!! ちょっと、兄ちゃんんんん! 姉御おぉぉぉぉ!!」
「そりゃあんまりといえば、あんまりだああああぁぁぁ!!!!」と成実の悲痛な叫びを背中に浴びながら、2人は市街地に向かって山を沿う様に飛びながら、下りだした。
そして、ようやく成実の声が届かなくなったところで、盛大にため息をついた。
「はぁぁぁぁぁぁ…! これでやっと、無駄に神経尖らせる必要がなくなった…」
ヴィータの言葉を聞いた政宗は、すぐにその理由を悟る。
「この様子だと…だいぶ振り回されたみたいだな。
「振り回された…なんてもんじゃねぇよ。ったく、もう
心底疲れた様子でそう息巻くヴィータの様子に、政宗は一時でも抱いていた彼女や成実への心配が杞憂であったと確信し、失笑するのだった…
*
小十郎を抱えたなのはが地上へ降りていくのを確認したシグナムは再びアルハンブラの方を向いてレヴァンティンを鞘から引き抜いて、構えを取る。
同じくフェイトも、バルディッシュを構えた。
「さて…では始めるとするか」
「うん。だけど、まずはあの竜の動きを止めないと」
「うむ…ならば、私が陽動を行う。テスタロッサはその隙に翼を狙ってくれ」
2人は視線を交わし、頷いた後、それぞれ別の方向へ飛び立つ。
フェイトが狙ったのは、アルハンブラの首元だった。
アルハンブラはフェイトの存在に気付いたのか、首をぐるりと回すようにしてフェイトの姿を視界に入れる。
だが、その時既にフェイトはアルハンブラの真上に到達しており、バルディッシュを振りかぶっていた。
「行くよ! ハーケンセイバー!!」
叫び声と共に振り下ろされた一撃は、アルハンブラの右の翼を斬り裂く。
しかし、翼膜を傷つける事に成功しただけで、肝心の本体には傷をつける事はできなかった。
「硬すぎる……ッ!?」
悔し気に表情を歪めながらも、フェイトは更に追撃を加えようと再びバルディッシュを構えるが、そこでアルハンブラは突如首を大きく仰け反らせ、天に向かって口を開く。
そこから吐き出されたのは、業火の如き炎の渦だった。その攻撃の正体に気づいたフェイトは、慌てて
それでも、どうにか受け身を取って着地すると、すぐに屋根を蹴って、空中へと戻ってみせた。
一方、シグナムの方はというと、アルハンブラの左の翼を狙っていた。
なのはと違い、こちらは装甲に守られていない翼の表面にある”体側膜”と呼ばれる部位を狙ったのだが、やはりこれもダメージを与えはしたものの、致命打にはならなかったようだ。
「…!? 翼の装甲とまではいかずとも、違う意味で、高い耐久性があるようだな……」
シグナムの接近に気づき、今度は逆に自分の方から距離を詰めてくるアルハンブラに対し、シグナムは冷静に対応し、振り下ろされる前足を避けつつ、反撃の機会を窺う。
そして、アルハンブラが攻撃しようとするタイミングを見計らい、一気に懐へと踏み込むと、胴体部分に対してレヴァンティンを振るった。
斬撃自体は、硬い鱗に覆われた皮膚を切り裂き肉まで達する事ができたものの、骨にまで刃を通す事はできない。
だが、それこそが狙いだった。
レヴァンティンを引き戻し、間髪入れずにシグナムは次の攻撃を繰り出す。
それは、カートリッジを使った魔法によるものだ。
レヴァンティンが魔力で生成した炎に包まれると同時に、刀身に刻まれた古代ベルカ語で文字が浮かび上がる。
――"紫電一閃"―――
シグナムの持つ剣技の中で最速を誇るその一撃は、アルハンブラの身体を一文字の傷跡を残して両断する…その筈だった。
ガキィンッ!!
しかしその直前、何かに阻まれる様な音を立てて、シグナムの攻撃が弾かれる。
何が起こったのか分からず、一瞬呆気にとられてしまうシグナムだったが、次の瞬間にはその原因を理解する事になる。
シグナムの放った高速の一太刀目を防いだのは、アルハンブラの前足の爪だった。
「この竜…こんな芸当までできるのか!?」
シグナムが目を見開きながら驚愕していると、それを好機と踏んだのか、アルハンブラはすかさずもう片方の前足を繰り出してきた。
シグナムは咄嗟に身を捻りながら避ける。
しかし、完全に避け切る事ができず、アルハンブラの鋭い爪先が左肩の
思わず顔をしかめるシグナムであったが、すぐに態勢を立て直すと、一旦距離を取った。
「シグナム!」
そこへ、空中に戻ってきたフェイトが合流した。
フェイトもアルハンブラのあまりの硬さに驚きを禁じ得なかったが、それでも持ち前の沈着さを乱す事なく、その脳裏には次の手を考案しつつあった。
(シグナムの『紫電一閃』を足の爪だけで弾くなんて…!? やっぱりあの竜は、ただの古代竜じゃない…! あれだけの巨体と魔力を有しながら、その上知性までも、他の古竜と比較して格段に高い…! 恐らくは古代ベルカか、その時代に繁栄した高度な魔法文明の時代からの産物……ッ!)
つまりは、通常の竜を対処するのとはまるで異なるという事だ。それが分かっているのはフェイトだけではなく、シグナムも同じであった。
彼女もまた、先程の攻防で相手が並の竜ではない事を実感し、改めて気を引き締め直していた。
そして、二人揃って視線を向ける先には、既に次なる攻撃の準備を終えている巨大な魔獣の姿があった。
再び開かれた口から吐き出されるのは、灼熱の火炎である。
二人はそれぞれ左右に別れるようにして回避するが、その炎の射程距離は凄まじく、そのまま二人がいた場所を突き抜けて、そのまま地上にあった教会らしき古調な建物へと命中し、瞬く間に建物全体を火に包み込んでしまった。
「しまった!?」
「な、なんて威力だ…!?」
アルハンブラの予想を超える火力に驚愕するフェイトとシグナムだが、炎に包まれたあの建物の中に逃げ遅れた人がいないか、それを案ずる間も与えられなかった。
すかさず、アルハンブラの方から仕掛けてきたからだ。
今度は前足ではなく、装甲に包まれた尻尾を器用に振りかざすようにして、突進してくる。
当然、その標的となっているシグナムとフェイトは、その場から飛び退くようにして回避したが、アルハンブラはその動きを読んでいたかのように素早く方向転換すると、今度は横向きに回転しながら尻尾を振り回してきた。
シグナムとフェイトは慌てて防御に入るが、やはりアルハンブラの尻尾による攻撃は凄まじく、二人は簡単に吹き飛ばされてしまう。
それでも、咄嗟にフェイトがそれぞれの背面に三角の魔法陣型の
とはいえ、衝撃までは吸収しきれなかったようで、背中を強く打ち付けられたシグナムは、息が詰まりそうになる。
一方、アルハンブラの攻撃はそれだけでは終わらない。
再び口を開き、そこからまたしても火炎を吐いてくる。
「クッ……!」
シグナムは咄嵯にレヴァンティンで前方を切り払うように振い、薙ぎ起した旋風で、炎を防ごうとするが、相手の方が一枚上手だった。
シグナムが起こした風圧はアルハンブラの吐き出す炎によって相殺されてしまい、忽ち巻き起こった爆発により、フェイト、シグナムは風に煽られて一気に数十メートルも後ろに押し戻されてしまう。
そこへ、アルハンブラが追撃を仕掛けてきた。鋭い牙が並ぶ顎門を開いて迫りくる様は、まさに死の宣告に等しい。
(シグナム! だったら、二人で同じ箇所を狙ってみよう! 一人の技では届かなくとも、二人同時にやれば…!)
(よし…! やってみるか)
シグナムとフェイトは、態勢を整え直し、即座に技を繰り出す体勢を取る。
「バルディッシュ!!」
《Yes! Sir!》
「レヴァンティン!!」
《Ja!》
フェイトとシグナムの声に応えて、それぞれの
それに合わせるように、柄を握るフェイトとシグナムの両手にも力が籠った。
「ハーケン…セイバーッ!!!」
「紫電……一閃ッ!!!」
裂帛の気合いと共に、フェイトがバルディッシュを、シグナムがレヴァンティンを、それぞれ渾身の力を込めて振るう。
次の瞬間には、目映い閃光が瞬き、大気を引き裂くような甲高い音を立てて、金色と薄紫色に輝く2つの剣閃が放たれた。
それは、一瞬にしてアルハンブラの胴体の背に命中した。
命中した2人同時に放った斬撃は装甲の魔力によって、それぞれ本来の技が与える威力の半分以下にまで抑えられてしまった為、アルハンブラの生身の肉体にこそダメージを負わせるには至らなかったものの、その分重なり合うように放たれた2つの剣閃の重みは、流石の強固な装甲をも斬り裂く事ができ、遂にはその一部をタイルのように剥がし落してみせた。
「効いてる……ッ!?」
「いや……まだだ」
シグナムの言葉通り、アルハンブラは全身を覆う装甲の一部が欠け落ちた事で僅かに動きを止めたものの、すぐに何事も無かったかのように再び前進を開始する。
しかも、それだけに留まらず、今度はアルハンブラの方から仕掛けてきた。
これまで以上の怒気で迫ってきたアルハンブラを前にして、フェイトとシグナムはすぐさまその場から離れようとするが、その前に、アルハンブラに異変が起きた。
なんと、こちらに向かって飛んでくるアルハンブラの周囲に巨大な円形の魔法陣が展開され、その周りを取り囲むように複数の巨大な魔力弾が形成されだしたのだ。
それも、魔法陣に描かれているのはミッドチルダでも古代ベルカの文字でもない、フェイトもシグナムも今まで見たことがない楔形の未知の文字であった。
「なッ!? なんだあれはッ!?」
「魔法陣!? ただの竜にそんな高度な魔法が使えるわけが…ッ!?」
これにはシグナムだけでなく、フェイトまでもが驚愕する。
だが、アルハンブラは口を大きく開きながら、2人に向かって突進しつつ…
咆哮と共に周囲に投影させた巨大な魔力弾を2人に目掛けて同時に撃ち放って見せた。
アルハンブラの口から発射された魔力弾の数は全部で6つ。
シグナムとフェイトは、慌ててそれぞれ左右に分かれて回避飛行に移る。ところが……
「ッ!? 誘導弾!?」
アルハンブラの放った魔力弾は右側に回避したシグナムに向かって3発、左側に回避したフェイトに3発とそれぞれ標的を狙って、自我を持っているかのように的確に追跡にかかってきたのだ。どうやら、あの魔力弾には誘導性が付与されているらしい。
シグナムとフェイトは、それぞれの魔力弾に追い立てられるように地上へと降下していく。
しかし、このままの状態で街に入れば、どこかの建物に命中してさらなる被害を出してしまう事は明白なので、二人はそれぞれ、ギリギリ上空圏に踏みとどまる形で態勢を整え直し、まず先に追ってくる魔力弾を迎え撃つ事にした。
フェイトは、バルディッシュを振り被り、魔力刃を形成して向かってくる巨大な魔力弾を撃墜する構えをみせた。
シグナムも同様の考えにレヴァンティンを構え、カートリッジを1発リロードさせて迎え撃った。
「ハアァッ!!」
シグナムがレヴァンティンを振るうと、刀身が炎に包まれ、それを横薙ぎするように振り払った瞬間、自分に向かってくる3発の魔力弾に向かって炎の斬撃が飛ぶ。
そして、フェイトも同じく魔力刃を放って飛来する魔力弾を相殺しようと試みる。
二人同時に放った斬撃は、見事に魔力弾と衝突し、火花が散ったかと思うと、砕けるように爆ぜ、その直後、凄まじい閃光と高熱を帯びた爆風が二人に直撃する。
「くうぅっ!」
「ぬあぁッ!!」
長年の戦歴から得た反射神経のおかげで、爆風が身体を吹き飛ばす寸前のところで、それぞれ
「ぐぅ…ッ!? 一体あの竜はなんなんだ!? さっきの芸達者な動きといい、古代竜といえども、野生の竜にこんな性能や魔法陣を張る程に強大な魔力弾が撃てる筈がない!!」
「…とにかく…! これ以上厄介な新技を出される前に、さっきのフォーメーションでもう一度、あの竜の装甲を剥がしていって―――」
そう指示を出そうとするフェイトだったが、彼女の言葉が終わらない内に、煙幕のように立ち込めていた土埃を割って、アルハンブラが大口を開けて真上からフェイトに食らいつきにかかってきた。
「テスタロッサ!!」
「ッ!? く……ッ!!」
シグナムの声に反応して咄嵯に身を翻すフェイト。すると次の瞬間、直前までフェイトがいた空間をアルハンブラの顎が通過し、そのまま真下にあった市街地に墜落するように着地し、勢いを殺す事なく、街の家屋を次々とぶち抜き、なぎ倒しながら土煙を上げて滑走する。
そして、アルハンブラが動きを止めた場所は、不運にもラコニア市の中心部に位置する広場だった。
旧暦時代から残る宮殿を改装したという市庁舎を中心とし、元はその庭園であったというこの広場は、定期的に露天市場が開かれるなど、市民の憩いの場として利用されていただけでなく、有事に際しては臨時の避難場所としての機能を果たしていた。
そう…即ち、大勢の市民が避難していたこの場所にアルハンブラは突っ込んでしまったのだ。
「「「「「きゃああぁぁぁーッ!?」」」」」
「「「「「うわああぁぁぁぁッ!?」」」」」
広場に避難していた市民からは突然現れた巨大な怪物を前に、次々と悲鳴が上げ、あちこち逃げ道を探さんとパニック状態となった。
アルハンブラはそんな人々の悲鳴などを気にもとめないようにまるで何かを探すように、何度も首を巡らせて辺りを見回していた。
そこへ、上空から後を追ってフェイトとシグナムが舞い降りてきた。
「皆さん! 逃げてください! 早く!」
フェイトが無辜の人々を少しでもアルハンブラから遠ざけようと必死に呼びかけるなか、シグナムはアルハンブラを牽制する様にその前に立ちはだかり、レヴァンティンを構えた。
「ぐぅ…! よりによって更に戦いにくい場所に堕ちてきてくれたものだな…ッ!」
シグナムは、忌々しげに吐き捨てると、改めて眼前の敵であるアルハンブラと対峙する。
先程までの戦いの舞台であった空中と違い、ここには大勢の民間人が大勢いる。こんな場所でさっきみたいな強力なブレスやましてや魔力弾など使われてしまったら、それこそ一瞬で数百…否、数千もの命が失われる事になりかねない。
そして、こちら側の放つ魔法や技も、場合によっては周囲に被害が及ぶ危険性があるものも少なくない為、当然技の威力にも加減を掛ける必要がある。
唯でさえ、魔力リミッターがかかって本来の実力の3分の1程度に抑えられている自分達にとって、手加減を強いられるのはなかなかに酷な状況であった。
「こうなったら…どうにかして、もう一度空中に押し返すか、人のいない場所に誘導しながら戦うしかないね」
そう行ってフェイトもまたシグナムの隣に降り立ち、バルディッシュを構える。
シグナムとフェイトは徐々に悪化していく状況下の中で、アルハンブラとの
あぁぁぁ、去年(2021年)に続いてまたやってしまいました……3ヶ月以上の空白期間。
まぁ、今年は辛うじて1月中に続きが書けましたが…ってそんな問題じゃないか(苦笑)
とりあえず、今年の目標はずばり『年末バテしないように気を付ける事』と『年末特別編を書く事』とします。まだまだ先の話ですが…
とにかく、調子がいい時もあまり勢い付けすぎてガス欠しないように上手く加減しながら今年もどうにか作品が一話でも多く更新できる様に頑張っていきますので、皆様、遅くなりましたが本年もよろしくお願い致します。