リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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大変長らくの間、本作の更新が途絶えてしまい本当に申し訳ありませんでした!!!

前回の更新から、気づけば約3年という月日が経ってしまいました。その間にもブックマークや感想、評価などをくださった皆さまには、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。

前回の投稿以降、自身の病気やその他諸々の事情によって創作自体から少し距離を置き、その間にも『戦国BASARA』自体すっかり下火になってしまい、一時期はこのまま創作を放棄…と考えた時期がありましたが、こんな拙い作品の続きを心待ちにしてくださった方もいたこと、そして『リリカルなのは』の新作『EXCEED』のアニメ化の発表、そしてそれに伴ってYoutubeでアップされた『StrikerS』を見直したことを契機に原点に立ち返る気持ちで再びペンを取る(タイピングを打つ)きっかけとなりました。

BASARAはオワコンと思われる方も多いかもしれません。
カプコンの昨今の様子からして続編、新作が作られる可能性も望みは薄いかと思われます。
ですがそれでも自分はBASARAが好き! そして戦国が好き!
好きならば、自分なりのやり方で世間が忘れ去ろうとしているBASARAの存在を一人でも多くの人間に思い出してもらえるような二次創作品を作っていく!
そう結論に至り、3年間放置していたリリバサを再起動させることに決めました。

今後は、少しずつではありますが、この世界の続きをお届けしていければと思っています。

物語の熱がまだ胸の中にある限り、最後まで描き切るつもりです。改めてよろしくお願いいたします!!

それでは久しぶりに…



政宗「リリカルBASARA StrikerS 第六十三章 Let's party!」


第六十三章 ~ラコニア総力戦!無間地獄を打破せよ!~

血の池から湧き出る大ムカデの群れが、地を這い、空を蠢き、まるで腐敗した大地そのものが牙を剥いたかのように襲いかかっていた。進化態となったそれらは、全身から灼熱の炎を噴き、毒々しい強酸の体液を撒き散らしながら、忌まわしい咀嚼音を立てて家康たちに迫る。

 

前衛の家康とスバルは、その猛攻を紙一重で躱しながらも、わずかな隙を縫って血の池へと歩を進めていた。しかし——。

 

「くそ! このムカデ達……! ワシらの意図を読んでいるのか!? まるでワシらを阻むかのような動きをしてくる!」

 

家康が奥歯を噛み締め、吐き捨てるように言い放つ。その直後、目前に飛びかかってきた一匹の巨躯を、鋼のような拳で殴り伏せた。甲殻の砕ける不快な音が耳をつんざく。

 

——だが倒しても、倒しても終わらない。

 

血の池からは、新たなムカデが、際限なく這い出してくる。粘つく肉体が血を啜り、炎を纏い、毒を滴らせ、次なる獲物を求めるように蠢いていた。特に家康を狙うかのような執拗さで——。

 

「……あからさまだな。狙われているのは、ワシ一人か……」

 

嫌な汗が背を伝う。だが、その汗すらも熱気と鉄臭い血の匂いに紛れて消えた。

 

「くっ! これじゃあ、いつまで経っても“葵の極み”が発動できない!」

 

焦燥。だが、諦める訳にはいかない。血の池がある限り、敵は無限に蘇り、戦局は悪化する一方だ。いずれ、ムカデ共は魔竜の力を完全に取り込み、災厄と呼ぶに相応しい脅威となる。そうなるとこの街に住む多くの人間が犠牲になるばかりか、下手をすればミッドチルダ全土が脅威に晒される可能性もある。

 

(そんな未来……ワシが断つ!)

 

家康は雄叫びと共に拳を振り上げると、眼前の大ムカデの頭部を打ち砕き、その崩れた躯体を足場に、血飛沫を撒き散らしながら前進した。

 

「おおぉお!!」

 

闘志が爆ぜる。だが、その一瞬の隙を、奴らは逃さなかった。

 

「キシャァア!!」

 

「何ッ……!? うわぁ!?」

 

横合いから飛び掛かってきた一匹に、家康の身体が弾かれるように押し倒され、地面を激しく転がった。砂塵と泥が舞い、視界が一瞬奪われる。

 

素早く受け身を取って立ち上がるが、その刹那——。

 

「——来るッ!」

 

咆哮と共に、ムカデの口腔から、灼熱の炎渦が唸りを上げて吐き出された。地を這い、空気を焼く赤黒い炎が、まるで生き物のように家康へと襲いかかる。

 

「ぐぅ……!」

 

間一髪で身を捻り、直撃こそ避けたものの、熱波が頬を掠め、肌を焼いた。じゅっと音を立てて火傷の痕が生まれる。

 

「この……!」

 

怒声と共に、家康は右拳に気を集中させ、渾身の一撃を放つ。

 

「天道突き!!」

 

その一撃は、ムカデの体を貫き、直後、炸裂するように膨れ上がった圧縮気流が、背後に控えていたムカデ共をもろとも弾き飛ばす。鈍い破裂音と共に、異形の骸が宙を舞った。

 

——だが、家康は止まらない。

 

この隙を逃すまいと、血の池を目指して突進する。しかし、その進撃に呼応するように、無数のムカデ達が口腔を開き、粘ついた強酸性の唾液を一斉に吐きかけた。

 

「——っ!」

 

視界いっぱいに飛来する粘液が、空間を歪める。腐蝕性の気配が、皮膚を、骨を、溶かすような錯覚さえ抱かせた。

家康は咄嗟にフードを被り、腕を交差させて顔面を庇う。だが、吐瀉物は雨のように降り注ぎ、腕に、胸に、次々と付着していく。

じゅう……と音を立て、衣が、甲冑が、わずかずつ蝕まれていく。

 

「ぐっ……! 時間がない……!」

 

歯を食いしばり、家康はなおも前へと進む。足場は滑り、空気は重く、焼け付くような腐臭が鼻腔を犯す。

だが、それでも——。

 

(ワシが止まれば、この場は終わる……! ならば、進むしかなかろう!!)

 

家康は、なおも歩みを止めなかった。

 

「家康さん!」

 

「スバル! 今はそこから離れないで!」

 

その様子を見たスバルが、堪らず家康の元へ駆け寄ろうとするが、それをティアナが制止した。

 

「ティア!? なんで…!?」

 

「あの大ムカデ達は私達を血の池から遠ざけようとしている……! おそらく、アイツらは血の池に近づかれるのを恐れているんだと思うわ……!」

 

ティアナはそう言うと、視線を血の池に向ける。

そこには、今もなお増殖を続ける大ムカデ達がそれぞれ、どの方向からでも家康達を阻もうと、一度扇を描くように広がりながらも、そこから一行を囲い込む様に襲いかかってくるのが見えた。

 

「今は丁度、私達と幸村さんが上手く、右翼、左翼、後方のポジションにそれぞれ立っているから、なんとか迎撃出来ているけど、これでもし誰かがそのポジションから離れてしまったりしたら…守りが崩れて、一網打尽よ」

 

「そ、そんな…!?」

 

スバルは顔を青ざめさせた。

すると、後方で二槍を振り回しながら、大ムカデ達を薙ぎ払っていた幸村も叫んだ。

 

「ティアナ殿の言う通りでござる! これだけの勢いで繁殖し続ける大ムカデの群れを相手に、どうにか今は、まともに守りの陣形を上手く成り立っておるが、少しでもこれが崩してしまったら、忽ち寄ってたかって嬲り殺しにされてしまうでござる!!」

 

「で、でも…家康さんが!?」

 

スバルは悲痛な声を上げた。

 

「落ち着くでござる! 今は…家康殿を信じて、我らはその道を開けるのを援護する事に徹しましょうぞ!!」

 

「そうよ、スバル! 今は私達に出来ることをやりましょう! 大丈夫……家康さんならきっと……!」

 

幸村はスバルを諭し、ティアナも励ましの言葉を送る。

 

「う、うん……」

 

二人はそんな二人を見て、気持ちを切り替えると、自分達の役割に専念することにした。

 

*

 

秀家の長笛と政宗の刀が幾度も火花を散らして打ち合わされる中、背後から蛟が巻き付くように迫る。

その巨体が巻き起こす暴風は、地面に散らばる瓦礫を宙に舞い上げ、視界を遮る。

その中で――

 

「抜けるよ、政宗さん! ショート…バスタァァーーーーーッ!!」

 

なのはの叫びと共に、薄ピンク色の光線が横合いから放たれる。

だが、蛟は人型上半身の両手を広げ、青白い結界のような鱗膜を展開し、それを受け止める。

 

「ほう……面白い。これが今の貴様らの力か。だが――」

 

鱗膜が破れる寸前、蛟の蛇尾が地面を穿ち、地下水脈から大量の水を噴き上げる。

 

「封魔霊蛇・『水牢陣』」

 

噴き上がった水が生き物のように蠢き、なのは達の四方を取り囲み始めた。

 

「くっ……これは――!」

 

シグナムが間髪入れず前に出る。

 

「気をつけろ! なのは! 政宗!」

 

その瞬間、蛟の蛇尾が鞭のようにしなり、シグナムに襲い掛かる。

 

「――ッ!?」

 

シグナムが受け止めた瞬間、衝撃で地面が砕け、シグナムの足が地に沈む。

 

「チッ……魔力を封じられた身体では流石に重いッ!」

 

シグナムが蛇尾を受け止めた隙に、蛟はその巨体を捻じり、頭部を大きく振るう。鋭く伸びた双角が、旋風を巻き起こしながら政宗へと突き刺さるように迫る。

 

「おいおい……強引すぎるぜ、蛇女!」

 

政宗はすんでのところで身を翻し、鋼の如き尾先が彼の立っていた石畳を砕き散らす。

 

「無駄口を叩けるのも今のうちだぞ、人間!」

 

蛟の尾が連撃のごとく唸りを上げ、振り下ろされるたびに地面が抉られ、地下に潜む水脈が唸り声を上げて噴き出した。飛沫は槍のように突き刺さり、政宗の足場を片っ端から奪い去る。瞬く間に形成される水牢が、逃げ場を削り、圧倒的な質量で圧し潰そうとしていた。

 

「囲い込みってわけかよ……だが、遅ぇんだよッ!」

 

政宗が憤怒の声を上げ、愛刀を反転させる。刃が閃光を帯び、逆袈裟に振るわれた瞬間――

ザクリ、と。

重く、鋭い破砕音が轟き、水牢の一角が切り裂かれる。豪雨のような水飛沫が四散し、一瞬だけ包囲が崩れたかに見えた。

 

だが――。

 

「破った……か、いや……!」

 

僅かに目を細める政宗の身体に、まるで生き物のように蠢く水が絡みつく。裂かれた水流は死んでなどいなかった。むしろ、蛇の如く形を成し、執拗に政宗へと絡みつく。

 

「“水蛇縛”……貴様如きが、我が水域で抗えると思うなよ」

 

蛟の冷笑と共に、水蛇が締め上げる。骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げるほどの圧力で、政宗の全身が拘束された。

 

「チッ……!」

 

悔しげな舌打ちが零れる。動けぬ政宗を前に、蛟の口が大きく開かれる。その奥に、どす黒い毒液が渦巻いていた。

次の瞬間、放たれるは猛毒の奔流――その死の予兆は、誰の目にも明らかだった。

 

しかし、その刹那――。

 

「そうはさせないよッ!!」

 

雷鳴のような声が、空を裂く。空中から桃色の光を纏い、なのはが急降下。レイジングハートの穂先が怒りに震えるかのように輝き、圧縮された光弾を解き放つ。

 

「アクセルシューター・バーストッ!!」

 

無数の光弾が星雨の如く降り注ぎ、蛟の顔面を容赦なく穿つ。着弾のたびに爆ぜる閃光と衝撃が、蛟の巨体を仰け反らせた。

 

「小癪な……!」

 

鱗膜での防御も間に合わず、砕け散った鱗が弾丸のように宙を舞う。蛟が怯んだ、その瞬間を逃さず――。

 

「シグナムさん、今ですッ!」

 

なのはの声が戦場に響き渡る。

 

「応ッ!!」

 

シグナムが疾風の如く駆ける。砕けた地面を蹴り、全身を撓らせながら突き進む。

 

「愚かな! 力を封じられし今の貴様に何ができる!?」

 

蛟の嘲りを一切無視し、シグナムは炎のような気迫を纏う。レヴァンティンが風を裂き、火花を散らして薙ぎ払われる。

 

「この烈火の将 シグナム…! 例え、魔力を封じられようと、四肢を切り落とされようと、貴様如き魔の物に臆する剣は持たん!」

 

刃が蛇腹に叩きつけられる。硬質な鱗が軋み、数枚が砕け、飛沫のように宙を舞った。

 

「小癪な…!」

 

蛟が怒声を上げ、掴みかからんと腕を伸ばす。しかしシグナムは一歩も止まらない。

柔らかな身のこなしで攻撃をかわし、鋭い太刀筋を幾度も浴びせる。まるで一点を穿つ槍のように、執拗に、正確に。

 

ザシュッ!

 

数度目の薙ぎが、ついに鱗の隙間を割り、黒ずんだ瘴気が噴き上がった。

 

「ぬうううぅぅ……そ、そんな馬鹿な……!」

 

「へっ、らしくなってきたじゃねぇか……!」

 

拘束が僅かに緩んだ瞬間を、政宗は見逃さない。水蛇を振りほどき、膝を沈めて低く構える。そして――

 

「まとめて屠るぜ――“DEATH BITE”ッ!!」

 

疾風怒濤の如く放たれた一閃。蒼く輝く残光が、空間を裂く。刃が蛟の首元を捻じ斬る勢いで薙ぎ払い、轟音と共に蛟の悲鳴が戦場を震わせた。

 

「グ、オオオオオオォォォ!!」

 

巨体が吹き飛ばされるように後退し、その背中から秀家が軽やかに飛び降りる。

長笛を棍棒の様に構え直した。

爆ぜた水煙の中、政宗が踏み込んだ。

 

「――てめぇとも、いい加減にケリをつけねぇとな。Monster tamer」

 

「……………」

 

返答はない。

ただ、静かに、冷たく…秀家の眼差しは、まるで感情という概念を知らぬような無機の色で政宗を見据えていた。

生者に向けるまなざしではない。否、生きることすら他人事――まるで“無”そのものだ。

 

「……黙ってんなら、それでもいい。剣は言葉より雄弁だからな!」

 

刹那。風が裂ける。

政宗の一閃は鋭く、獲物を仕留める獣じみた殺気を孕んでいた。

 

ガンッ!

 

耳を劈く衝撃音。

秀家は鋼鉄製の長笛で、政宗の刀を正面から受け止めていた。

軽くはじくようにさえ見える、無駄のない受け。

力の差を思い知らされるような“静かな壁”だ。

 

「笛で受け止めた…だと!?」

 

驚愕の声を上げるシグナム。

しかし、政宗は肩をすくめ、片眉を上げる。

 

「Ha! 揃いも揃ってCrazyな奴らばかりだぜ! 豊臣五刑衆!」

 

刃を押し込む。

が、秀家は微動だにせず、まるで大地に根を張った樹のように揺るがない。

 

「チッ、冗談じゃねぇな……!」

 

秀家は黙って右脚を引くと、棍のように長笛を振り払う。

ブゥン、と重低音が空気を叩き割り、政宗の顔面を薙ごうとする。

 

「ッ……!」

 

紙一重で後退する政宗。しかし、それこそが“誘い”だった。

間髪入れずに詰め寄る秀家。

無言のまま、ただ連撃を放つ。突き、払い、袈裟斬り――動きは静かだが、殺意は剥き出しだった。

 

ガンッ、ギィィン――!

 

鋼の重さが、政宗の腕を痺れさせる。

一撃ごとに骨が軋み、足場が削れ、全身が軋む。

重い。

ひたすらに、圧倒的に重い。

 

「……重ぇ。気色の悪ぃMonsterが憑いてない状態でこれだけの腕たぁ…将来が恐ろしいガキだぜ…!」

 

苛立ちと共に呟く政宗。

だが、秀家は一歩。

ただの“一歩”で、その間合いを奪い尽くす。

 

(近ェ……!)

 

呼吸すら許さぬ距離。

鋼鉄の長笛が腹部を突き上げる。

鈍く、鋭く、致命の一撃。

 

「させるかッ!」

 

政宗は鍔元で受け、そのまま全身の体重を乗せて押し返す。

しかし、秀家は揺れない。

その細身の身体に、どこまで詰め込んでいるのかと思うほどの質量感が宿っていた。

 

「ぐっ……!」

 

押し負ける――

そう悟った瞬間、政宗は後方へ身を逸らし、瓦礫を蹴る。

跳ねるように距離を取る。

 

が――

 

「……!」

 

その間隙を逃さぬ男がいた。

秀家は滑るような動きで長笛を構え、尾を口元へと運ぶ。

 

(チィッ! またあの厄介なSnipeか!?)

 

「“死笙針(ししょうじん)”」

 

秀家が小さく技名を唱えるや否や、低く、湿った音が鳴る。

操妖笛から放たれる一点突破の吹き矢。

その軌道は直線。迷いなく、政宗の眉間を目指す――まるで“死”そのもののように。

 

「政宗さん!」

 

空から、なのはの声が降る。

 

《Round shield!》

 

桃色の輝きが瞬時に弾けた。

魔法陣型の盾――ラウンドシールドが政宗の前に展開される。

 

チィィンッ!

 

鋭い金属音。

吹き矢は火花を散らし、シールドの表面で弾かれる。

細く、冷たい破片が空を舞った。

 

「Hu~、助かったぜ……Good Jobだぜ、なのは」

 

視線を外さぬまま呟く政宗。

対する秀家は、やはり無言だった。

その無表情が、却って“続ける気だ”と雄弁に語っている。

 

「やれやれ……ったく。とことんしつけがなってねぇな、宇喜多の坊ちゃんよ」

 

政宗は薄く笑う。

だが、その笑みの裏には確かな戦慄があった。

 

――“この男は、未だ序の口に過ぎない”。

 

重苦しい沈黙が、再び二人を包み込む。

 

(まだ、終わらねぇ)

 

政宗は柄を強く握り直した。

決着は、まだ先にある…

 

 

 

*

 

 

――ゴゥッ、と。

濁流のような濃霧が、視界を瞬く間に塗り潰した。

肌を刺す酸味、喉奥を焼くような刺激臭が、呼吸する度に肺へと染み込んでくる。

それは、蛟が吐き散らす“毒霧”――触れるものすべてを蝕む、邪悪な瘴気だった。

 

「この……っ、鬱陶しい!」

 

呻くように吐き捨て、シグナムが肩を震わせる。

愛剣を構え直すが、霧は十メートル先すら覆い隠し、目すら利かない。

魔力封印の枷がなおも腕に絡みつく今、視界を奪うこの濁流は、何より厄介だった。

 

「シグナムさん、気をつけて! この毒霧、長い間吸い込むと体が痺れてくる……!」

 

霧上から、なのはの声が届く。

ラウンドシールドを次々と展開しつつ、索敵魔法を撃ち込む彼女の姿が、ぼんやりと浮かび上がる。

だが――その探知すら、蛟の動きを捉えきれない。

水流に乗るように、地を這い、壁を滑り、霧に溶ける“蛇”は、まるで影法師のように掴みどころがなかった。

 

「……ちょこまかと……! ならばッ!」

 

歯噛みし、シグナムが霧を蹴立てる。

剣戟の勘、本能で“気配”を捉えた。

刹那、霧の帳から一条の影が、矢の如く迫る。

 

「遅いッ!!」

 

叫びと共に、シグナムの剣が閃いた。

鍔鳴りが霧を裂き、飛びかかる蛟の顎を正確に捉える。

鋼鉄を打ち合わせたような衝撃音が響き、蛟の巨体が押し返された。

 

「クカカッ……一端(いっぱし)に“将”などと名乗るだけのことはあるか。だが……いつまでその非力な腕で抗えるかな?」

 

低く嗤い、蛟が舌を鳴らす。

次いで、地を割って噴き上がる水流。

それはまるで、蛇が鎌首をもたげるような動きでシグナムを呑み込まんと迫った。

 

「はぁぁっ!」

 

だが、シグナムは怯まない。

踏み込み一閃、鍔元で水蛇を薙ぎ払う。

水飛沫を巻き上げ、筋力のみで押し返すその姿は、猛牛さながらの迫力を帯びていた。

 

「――なのは!」

 

「はいっ! ディバインシューター!」

 

呼応するように、なのはが空から光弾を一斉射撃。

散弾となった光の雨が、蛟の包囲網を形成しながら炸裂する。

閃光が霧を切り裂き、暗闇に隠れた蛟の姿を露わにした。

 

「チィッ!」

 

舌打ちし、蛟が再び霧の帳を纏わんとする。

だが――遅い。

既にシグナムは、射線に合わせて距離を詰めていた。

 

「逃さない……ッ!!」

 

鋭い踏み込みと共に、鋼の刃が奔る。

質量と速度、意志を乗せた斬撃が、蛟の胴体を正面から叩き斬る。

 

「ぐ……ぉぉおおおおおッ!!」

 

甲高い悲鳴が、霧に反響する。

それでも蛟は退かない。

裂けた胴体から濁った毒霧を噴き出し、シグナムを再び包囲しようと蠢く。

 

「――避けて! シグナムさん!」

 

「ッ!?」

 

なのはの警告。

それは、戦場の騎士に一瞬の隙を与えるためのものではなかった。

シグナムは本能でその意図を察し、即座に後方へ跳躍する。

 

夜空に浮かぶ彼女が、その瞬間、巨大な魔法陣を展開した。

黒煙渦巻くラコニアの夜に、燦然と輝く光輪。

 

《Divine Buster・Short Cast!》

 

「シュート!」

 

迸る光柱。

本来ならば長時間の詠唱を要する砲撃魔法――だが、なのはは無理やり短縮詠唱で叩き込む。

純白の光が毒霧ごと蛟を撃ち抜き、戦場を照らし出す。

 

「グ、アアアアアアアアッ!!!」

 

怒号とも悲鳴ともつかぬ咆哮が木霊する。

威力は本来の三分の一にも満たない。

だが、それでも確かに、蛟の鱗を焦がし、体勢を崩させるには充分だった。

 

「逃さんッ!」

 

シグナムが唸り、踏み込み。

獣の咆哮を思わせる一声と共に、剣を振り下ろす。

それは“斬撃”ではない。

単騎必勝の信念、そのものを叩きつける一刀両断。

 

ズバァンッ!

 

濃霧が裂け、蛟の巨体が地に伏す。

振り下ろされたその一撃は、霧すら断ち、蛟の動きを封じた。

 

「ま、まさか……“魔力抜き”でここまで……!」

 

呻くように呻き、蛟が血に濡れた大地に崩れ落ちる。

だが、シグナムは容赦なく、刃の切っ先をその喉元に突きつけた。

 

「……貴様如き、高貴を気取った下賤な物怪(もののけ)に魔力は不要…。我が誇りにして牙――レヴァンティンと、ベルカの騎士の底力を侮ったことが貴様の敗因だ」

 

凛然と告げる声は、まさに鉄火の如く。

それを見上げ、なのはが降下しながら笑顔で親指を立てた。

 

「さすがです、シグナムさん!」

 

「フッ……これ以上、守護騎士の偉名(えいな)を穢す失態を重ねるわけにはいかないからな」

 

夜のラコニアに、戦場の熱が静かに立ちこめる。

そして――守護騎士の誇りが、そこに確かに刻まれた。

 

 

*

 

 

空の上では、フェイト、覚醒したフリードに乗るキャロとエリオの3人が、巨大な羽を持つ大ムカデの変異種を相手に、広場内から一匹たりとも逃がさぬよう必死に応戦していた。

かつては地を這いずるだけの魔獣だったそれらは、忌まわしき古代竜の力を受け、不釣り合いなまでに巨大な羽を生やし、鈍重な体躯をものともせず、夜空を滑空する怪物と化していた。

 

「行くよ、ストラーダ! カートリッジロード!」

 

《Explosion!》

 

エリオが叫ぶと共に、愛槍ストラーダが魔力を圧縮し、甲高い破裂音と共にカートリッジが弾ける。

穂先を一閃すれば、空気が裂け、真空刃が生まれた。

 

「ルフト…メッサー!!」

 

唸る刃は、ムカデの変異種の片翼を鋭く断ち切り、その巨体は不恰好にバランスを崩す。羽を切り裂かれてなお、異形のムカデは狂ったようにのたうち、なおも喰らいつこうと迫る。

 

「ギィイ!!」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

フリードが急旋回して回避を試みるが、大ムカデは執拗に首元へと牙を伸ばしてくる。が――

 

「させない!!」

 

怒声と共に、フェイトが金色の雷光を引いて飛来した。バルディッシュの鎌刃が閃き、ムカデの首を斬り落とす。

頭部を失った巨体が、フェイトの踏み台となり、次の瞬間、彼女は反動を使って更なる高みへと跳躍する。

 

「やぁあああっ!」

 

バルディッシュの一撃ごとに、変異種達が裂け、墜ち、惨たらしく地面へと叩きつけられていく。

 

「す、凄いです、フェイトさん!」

 

キャロが思わず声を漏らす。だが、戦場の空は甘くない。

 

「ギシャアアアッ!」

 

唸る羽音と共に、今度は地を這っていたはずの大ムカデ達が編隊を組み、空中から一斉に襲いかかってきた。その数、十数匹。フェイトが反射的にバルディッシュを構えた刹那――

 

ズドオオオオオン!!

 

「ギギャウッ!」

 

突如、火球が編隊を薙ぎ払った。燃え盛るムカデ達が悲鳴を上げながら墜落していく。火球の軌跡を辿った先に、口元から黒煙を上げたフリードがいた。

 

「……覚醒したフリードの火力も凄いね」

 

「グゥウ……」

 

「…えへへ」

 

キャロが照れたように笑うが、フリードの視線が鋭く真下を向く。

 

「どうしたの? フリード?」

 

「グルルル……」

 

フェイトが疑問を浮かべると、その答えを示すように、新たな変異種が血の池から這い上がり、羽音を轟かせてこちらへと飛翔してきた。

 

「まだ来るみたいだね……キャロ!迎撃するよ!」

 

「うん!」

 

エリオとキャロが再びフリードの背上で構えるが、フェイトは僅かに違和感を覚える。

そのムカデは、他の個体とは異なる異様な「圧」を纏っていた。

 

(……あれは?)

 

その疑念が確信に変わる間もなく、大ムカデの触覚に黒い電撃が奔り、瞬時に突進を仕掛けてきた。

 

「うわっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

空を切り裂くように、フリードが急降下した。

白銀の双翼が、地上から立ち昇る炎の灯りを受けてまばゆく輝く。翼竜フリードリヒ――空を翔けるその姿はまるで神話の守護竜のようだった。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

彼の背に立つエリオが、戦場の風を正面から受けながら叫び声と共に突き出す。手にしたストラーダが煌めき、大ムカデの一体、その巨体の頭部を真一文字に薙ぎ払った。切断された頭部が落下し、地面に激突して土煙を上げる。

 

その背後、キャロがしっかりとフリードの鞍に立ち、風になびくローブを翻しながら周を見渡していた。右手にはケリュケイオン。輝くグローブ型の魔導端末が青白い光を放ち、周囲の魔力の流れを読み取っている。

 

「フェイトさん! 構えてください! 敵があちこちに分散する前に、地上へ押し戻してみます!」

 

その声にフェイトが応じ、眼下に広がる戦場を見据えながら、自身の前に防御魔法――シールドを展開した。まばゆい金の魔法陣が浮かび上がり、彼女を包むように輝く。

 

フリードが空を斬るように翼を大きく仰ぐと、空気がうなりを上げ、巨大な風圧が周囲へと放たれた。まるで嵐が吹き荒れるかのような暴風に、大ムカデ達――魔竜の力を宿したその忌まわしき群れが、次々と地上へ叩き落とされていく。

 

だが、すべてが圧倒されていたわけではなかった。中には風圧をものともせず、逆にその中で飛翔を続ける個体がいた。触角を天に向け、そこに黒い稲妻を帯びさせながら、フリードに照準を定める。

 

「ッ!? キャロ! 奴らの放つ黒い雷を受けたら、魔力が封じられてしまうの! 気を付けて!」

 

フェイトが鋭く警告する。空気を裂くような声に、キャロは反射的に顔を上げ、すぐさま危機を察知した。黒く、どこか呪詛めいた雷光が、放たれる寸前であるのを視認したのだ。

 

 「ッ……! フリード、いくよ! ――白龍翔覇!」

 

詠唱と同時に、フリードの喉奥から轟音が生まれる。開かれた口から放たれたのは、雷の力をまとった閃光のブレス。白と金の閃きが一直線に走り、黒い雷を放たんとした大ムカデの頭部へと直撃した。

 

爆音が空を震わせる。閃光に包まれた大ムカデは悲鳴をあげる暇もなく、ブレスの熱と衝撃で肉体ごと焼き払われ、空から崩れ落ちていった。

 

 

「いいよ。その調子! 二人はこのまま空中から、敵を各方面に拡散させない様に抑えていて!」

 

フェイトの指示が風に乗って届く。

 

「フェイトさんは!?」

 

エリオがストラーダを振るいながら問う。まだ中空には、血の池から湧き出した無数の大ムカデが飛び出し、蠢く闇のように動いていた。

 

「私は地上へ降りて、幸村さんや家康君達を援護してくる! エリオ、キャロ! くどいかもしれないけど、奴らの放つ黒い雷にだけは気を付けて!」

 

 再度念を押すように忠告を残すと、フェイトは魔力を収束させ、勢いよく下降を始める。光の尾を引きながら、戦場の地へとまっすぐに向かっていった。

広場の中央、血の池が、不気味に脈動を続けている。

 

「——来たか!」

 

──血の池を背に、押し寄せる大ムカデの群れ。その無数の牙と脚が地を這い、空を埋め尽くす。土煙が濛々と舞い、腐臭混じりの血風が吹き荒れる中、家康は拳を振り上げ、目前に迫る大ムカデの一匹を殴り飛ばした。

 

拳一閃。鋼の甲殻を砕き、粘液を撒き散らしながら、大ムカデの巨体が吹き飛ぶ。しかし、群れは止まらない。潰された同胞の死骸を踏み越え、次から次へと這い寄る無数の脚音が、地鳴りのように大地を揺らす。

 

「……あと少し……ここさえ押し通せば……!」

 

背後では、スバルが疾走し、ティアナが冷静に指示を飛ばし、幸村が二槍を振るって右翼を守っている。三人が作る防壁も、今や限界を迎えつつあった。踏みとどまる彼らの間隙を縫って、一際巨大なムカデが家康の真上へと影を落とす。

 

「——悪いが、ここは通させてもらう!」

 

家康は両拳を固く握り、大地を蹴った。甲冑が軋み、踏みしめた足元がひび割れる。繰駆足(くりからで)の鋭爪が、山をも断つかの如く振り下ろされ——

 

「——サンダーレイジ!!」

 

突如、空が裂けた。雷光が天地を貫き、轟音と共に衝撃波が吹き荒れる。振り下ろされた爪は稲妻に弾かれ、焼かれ、巨体が痙攣する。金色の雷が大ムカデの群れを薙ぎ払い、その進軍を一瞬にして止めた。

 

「遅れてごめん! 援護するよ!」

 

雷光の中から現れたのは、フェイト・T・ハラオウン。疾風のように舞い、愛機バルディッシュを手に家康の隣に着地する。その長い金髪が雷光に煌き、冷徹な瞳には燃えるような決意が宿っていた。

 

「フェイト殿! 助かった!」

 

「ここからは一緒に突破するよ、家康くん」

 

頷き合い、二人は前方を睨む。血の池の上空では、烏天狗が妖しき印を組み、呪詛めいた詠唱を続けていた。

 

次の瞬間、大地が震え、血の池が煮えたぎり始める。泡立つ血潮が溶岩のように跳ね上がり、そこから小型のムカデが無数に這い出してくる。血の池の縁は、瞬く間に這い回るムカデで覆われた。

 

「まずい……あれは……!」

 

ティアナが声を上げる。その口調には、冷静を保ちながらも、抑えきれぬ焦りが滲んでいた。

 

「増殖速度が……格段に上がってる! このままじゃ、大群が街にまで流れ込んでしまう!」

 

「くっ……皆も限界が近い……どうすれば……!」

 

フェイトは歯を食いしばり、バルディッシュを構え直す。全身に疲労がまとわりつく中、それでも一歩も退かぬ気迫がほとばしる。

 

その刹那、家康が叫ぶ。

 

「フェイト殿、ワシが道を切り拓く! 貴殿は上空から一気に叩いてくれ!」

 

「了解——行くよ、バルディッシュ!」

 

i(・)》(・)P(・)l(・)a(・)s(・)m(・)a(・) (・)S(・)m(・)a(・)s(・)h(・)e(・)r(・)・(・)W(・)i(・)d(・)e(・) (・)M(・)o(・)d(・)e(・)《(・)/(・)i(・)

 

電子音声が響き、バルディッシュが砲撃形態へと変形。雷撃の粒子が収束し、周囲の空気が緊張に満ちる。その傍らで、家康が黄金の手甲を振り上げた。

 

「この一撃で……突破する!!」

 

咆哮と共に、家康が突撃する。拳が振るわれるたび、大ムカデの黒光りする甲殻が砕け、血と膿が宙に舞った。

同時に、フェイトの雷撃が広範囲を焼き払い、次々と敵を蹴散らしていく。

 

——だが、それでも群れは止まらない。

 

砕けた肉体が再生し、血の池から次々と這い出る。家康の打撃に喰らいつこうと迫るが——

 

「スレッジハンマァァァァ!」

 

「シュートバレット!」

 

「紅蓮脚ぅぅぅ!!」

 

スバル、ティアナ、幸村が三方向に展開し、家康の周囲を護るように次々とムカデをなぎ倒していく。

 

「プラズマランサー!!」

 

上空から、フェイトが黄金の光球を雨のように降らせ、増殖し続けるムカデの波を抑え込む。

 

「……この道は……ワシらが繋ぐ!!」

 

家康が血の池の中心に踏み込み、血水を大きく跳ね上げながら着地する。

刹那、その足元に、黄金の光でできた徳川の家紋『三つ葉葵』が浮かび上がる。

 

「はああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

その気迫と共に、家紋の輝きは血の池全体を覆うほどに拡大していく。無数のムカデ達が、気を集中させる家康を食いちぎらんと殺到するが——

 

仲間たちが、全霊をもってその身を盾とした。

家康の拳が、今まさに——血と雷と信念を纏い、決着の一撃として繰り出されようとした。

 

「“葵の極み”!!! せぇやああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

家康が拳を振り上げると炸裂音と共に、家康の足元に浮かぶ三つ葉葵の紋が閃光を放ち、その輝きが爆発的に広がっていく。黄金色のエネルギーが血の池を中心に放射状に奔流し、沸き立つ血潮と蠢くムカデどもをことごとく薙ぎ払っていく。

 

大地が震え、地割れのように広がる黄金の奔流に飲まれた大ムカデ達が、一匹また一匹と悲鳴のような音をあげながら光に焼かれて崩れ落ちる。

 

「おおおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

家康の雄叫びと共に、《葵の極み》の波動が血の池そのものを浄化の奔流で包み込み、赤黒く濁っていた液体が次第に蒸発していく。その凄まじい光景に、誰もが言葉を失い、ただその刹那の奇跡に目を見張っていた。

 

──ついに、血の池が干上がった。

 

「……やった………?」

 

誰かが呟いた。重い静寂が辺りを包み込む。

立ち尽くす仲間たち。その場には、もはや一匹のムカデすら動いてはいなかった。

 

しかし、その平穏は長くは続かなかった。

 

「……クカ……クカカ……終わりだと……思ったかァ……?」

 

突如、空気が凍りつくような異音が響いた。干上がった血の池のあった瓦礫の山、その端に転がっていた一体の巨大ムカデが、まるで死んだふりをしていたかのように蠢き始める。

 

「!? まだ……生き残りが……!」

 

そのムカデの巨体がぬるりと起き上がった瞬間、全員が息を呑んだ。

 

「おい……なんだあれは……!」

 

ムカデの頭部が裂け、内部から黒煙と共に現れたのは、異様な一つ目。そして、ギィィ……という異様な金属音のような鳴き声と共に、カラスの嘴を模したような醜悪な口が開かれた。

 

その巨体の背から、赤と青、対となる大ムカデのような触手が蠢きながら生え広がり、天を貫くほどにうねりを上げる。しかもその嘴の奥には、屍鬼神のまとめ役にして主人である宇喜多秀家の代弁者兼知恵袋的存在──烏天狗の姿が、両目に禍々しい光を灯しながら潜んでいた。

 

「まさか……融合したのか……!」

 

家康が言葉を絞り出す。その声には、怒りでも恐怖でもなく、静かな確信が宿っていた。

 

「そう簡単に終わらせてたまるかよ。お楽しみは…ここからだろうがよぉ!」

 

烏天狗の声が、ムカデの喉奥から地鳴りのように響く。

 

「屍鬼神の恐ろしさ…とくと味わうがいい!」

 

咆哮と共に、赤と青の触手が一斉に振り下ろされた——!

 

「くっ……皆、来るぞッ!!」

 

家康の叫びが空気を裂くと同時に、赤い触手が地を叩きつけ、そこから噴き上がったのは、灼熱の火柱。炎は爆ぜ、地面を灼き、周囲にいたムカデの残骸すら瞬時に灰へと変える。

 

「なんと…!? 凄まじき火炎を…!?」

 

幸村が咄嗟に二槍を抜いて飛び退いた瞬間、青い触手が風を切って揺らぎ、そこから瘴気のような青白い霧が撒き散らされる。霧は触れた瓦礫すら腐食させ、吹き飛んだ欠片が地に落ちると、ジュゥ……と不気味な音を立てて溶けていった。

 

「この毒…普通じゃない!」

 

ティアナが即座に距離を取り、クロスミラージュを介して、毒霧の成分をスキャンする。だが即座に警告音が鳴り響く。

 

「神経麻痺を含む霊子毒素!? 直接吸ったら数秒で動けなくなるわよッ!」

 

「くっ…! これじゃあ迂闊に近づくこともできない!」

 

フェイトが跳ねるように後退し、雷撃で毒霧をかき消そうと試みる。だが、毒素はまるで意志を持つかのように揺らめきながら広がり、彼女の雷撃に抗うように霧を濃くしていった。

 

「チッ……まさか、属性まで……!」

 

家康は歯噛みしながら叫ぶ。

 

「赤いムカデは炎と爆発……青いのは毒と麻痺。……ただ融合しただけじゃない。複数の属性の性質を兼ね揃えている…!」

 

家康がバックステップで毒霧を避けながら、冷静に解析していく。

 

「屍鬼神の力とはここまで厄介なものなのか!?」

 

「ハハッ! そいつは少し違うな! この力は触媒となった古代竜から汲み取った恩恵よ! ハッ! 全くこの力の底知れなさは流石の俺様も舌を巻くぜ!」

 

烏天狗がその醜悪な嘴の奥から嗤うように言い放つ。

 

「ホントに良い世界に来たもんだぜ! 俺様達、屍鬼神(まのもの)共にとっちゃ大好物の心の闇! 魔の力!そして有象無象に蔓延る人間(エサ)共! これは日ノ本よりも蹂躙しがいがあるってもんだぜ!!」

 

再び、赤と青の触手が高く掲げられる。火と毒、熱と瘴気。互いに違う属性が、まるで挟撃するようにこちらを包囲しようと迫ってきていた。

 

「そんな事は……させない。絶対に」

 

家康が拳を構え、足を踏みしめる。

その言葉に同調する様にスバルが、幸村が、ティアナが横に並び立ち、そこへフェイトが上空から静かに降りてきて加わった。

 

「覚悟しろ烏天狗…! お前達は…ワシらがここで止めて見せる!!」

 




っというわけでホントにホントにお待たせしてすみませんでした。

成実「っていうか、あんまりにも長い間ほったらかしになってたせいで、読者の中には俺らオリキャラのこと忘れてしまったヤツとかもいるんじゃないのぉ?」

景勝「まぁ、そういう連中には、この作品のオリキャラ紹介ページとか見直させばいいんじゃねぇか?」

ティアナ「いいかげんね…」

家康「そもそも『戦国BASARA』ってどんな作品だったっけって思ってるユーザーもいたりしてな…」

スバル「い、家康さん! 仮にもこの作品では主人公の一人なんですからそんな作者みたいな自虐に走らないでください!!」

なのは「アハハ…と、とりあえずまずは『なのは見合い編』が無事に完結する様に頑張ってもらお」

……努力します by.charley
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