リリカルBASARA StrikerS -The Cross Party Reboot Edition-   作:charley

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家康が機動六課のメンバーとして馴染み始めていた頃…
ミッドチルダの某地では、家康を探し彷徨い歩く“凶王”と、それに手を差し伸べようとする“悪魔”…決して出会ってはいけない2人が出会う事となった…

三成「リリカルBASARA StrikerS 第四章出陣せよ!」



第四章 ~凶王と狂人 陰謀の同盟!~

家康が初の六課での訓練でその実力を知らしめた日の夜…

機動六課の隊舎のある首都クラナガンから遙か遠方にある辺境のとある山岳地帯…

深く青々と生い茂った夜の森をひたすらに彷徨い歩く一人の男の姿があった。

鳥の嘴のような形をした銀色の髪に、黒と紫の鎧を纏い、その目には憎しみと怒りが浮かんでいる。

そして、手に持った鍔の重なる長刀を強く握り締め、どこへともなく、何かを一心に探し求めるように、深い藪の中を進んでいく。

 

「家康ぅぅ……どこにいるんだ? 家康ぅぅぅぅ………殺す…必ず見つけ出して、今度こそ貴様を…この手で斬滅してやるぞぉぉぉ………!!」

 

男の名は凶王 石田三成―――

今は姿の見えぬ怨敵の姿を脳裏に描きながら、静かに、されど激しく怒り、憎しみ、そして嫌悪の炎を燃やしていた。

 

「三成様ーーーー!! 三成様ってば! いい加減にここらで休憩しましょうよ!」

 

執心しながら森を進む三成の後ろを追いすがるようについてきた青年…紅を主体とした燃え上がるような色合いの薄手の戦装束に金の胴当て、首輪、具足を揃え、片方のもみあげを紅く染めた茶髪に、小振りの双刀を携えた男…島左近は疲れ果てた表情でそうボヤいた。

だが、そんな側近に対し、三成は殺しにかかり兼ねないような殺気の籠もった眼力で睨みつける。

 

「黙れ! 左近ッ!! 休みたくば貴様一人で休むがいい! 私は必ず今日中に家康を見つけ出し、関ヶ原で果たせなかった雪辱をなんとしても果たさねばならないのだ!!」

 

「またそれッスか…? もう昨日からずっと同じ事言ってるわりに、俺らこうしてどこともわからない山の中這いずり回ってるだけじゃないッスかぁ…飯もろくろく食ってねぇし…あぁ~腹減ったなぁ…」

 

左近は辟易した様子でボヤきながら、近くにあった木に凭れかかろうとした。

 

シュバッ!

 

「ひゃうっ!?」

 

直後、風を切るような音が響いたかと思いきや左近の凭れかかろうとしていた木がゴゴゴと響くような音を上げながら、真っ二つに斬れ、そのまま砂埃を上げながら地面に倒れた。

「あっ…あらまぁ~…見事真っ二つに…」と呟きながら、呆気にとられる左近の頬に、三成はピタピタと鞘から引き抜いた長刀の刃を当てた。

 

「貴様……今何か言ったか……? もう一度言ってみろ? もしそれが脆弱な泣き言や愚痴であるのなら、その減らず口を二度と叩けぬ様に、ここで斬首するッ!!」

 

「ヒィッ! い、いやあのそのッ! えっと…こうして三成様と、家康を探して山の中を歩き周るのはその…わ~い、た~のし~~~~!! なぁんちゃって!」

 

冷や汗を流しながら必死に言い訳する左近を睨みつける三成だったが、やがて…

 

「見え透いた嘘などつきおって…その場になおれ。斬首する」

 

「うええええぇぇ!!? ちょ、ちょちょちょちょっと三成様!? ごめんなさい! 俺、嘘つきました!! 正直言います! 俺、生意気にも三成様に文句言ってしまいました! すみまっせぇぇぇぇぇん!!」

 

必死に謝りながら、何度も頭を下げる左近に対し、三成は小さくため息を漏らす。

 

「フン……やはり下らぬ世迷い言であったか…ならば、斬首だ」

 

「酷ッ!? 正直に言ったのにそれあんまりじゃねッ!?」

 

左近のツッコミの声が暗い森中を木霊せんばかりに響き渡る。

周囲に反響する左近の叫びに不愉快げな表情を浮かべながら、三成は長刀を鞘に収めた。

 

「……冗談だ。それよりも貴様の戯言を聞いていたら興が冷めたわ。今夜はここらで野営か…」

 

「そ、そうッスか!? じゃ、じゃあ俺、焚き火に使えそうな木でも集めてきます!」

 

三成の側近についてからそれなりの年月が経っている左近であったが、三成の二言目には「斬首」と言って本当に刀を抜いて突きつけてくる悪癖は、未だに本気なのか冗談なのかわからなかった。

 

(冗談にしたって笑えねぇよ…)

 

左近はそう心の中で身震いしながら、主の為に野営の準備にかかるのだった。

 

 

それから左近は森の中でも比較的広がっていそうな場所を見つけ、そこに焚き火を焚いて仮の野営地とした。

焚き火の炎に当たりながら、左近は小さくため息を漏らした。

 

「それにしても三成様…俺達、これからどうなっちまうんスかねぇ…?」

 

一方の三成は焚き火の傍ではなく、少し距離を開けた場所に佇み、天上に浮かぶ2つの月を忌まわしげな目で睨みつけたまま答える。

 

「わかりきった愚問など不要だ左近。 我々がこの地にいるという事は家康も必ずどこかにいる…見つけ出して今度こそ決着をつける!! それだけの事だ…」

 

「いや、だからその“この地”が、どこなのかさえもわかんないんスよ! その時点でもう俺達“ツキ”に見放されてると思いません!? …ってかツキはつきでも“月”が2つもある時点で、ここが日ノ本じゃないってのは、もう一目瞭然じゃん!!」

 

夜空に浮かぶ2つの月を指差しながら左近がツッコむが、三成はそんな事など微塵も気にしている様子を見せないでいた。

 

「いくら山奥とはいえ、このわけのわからない土地に来てから一度も人間に会ってさえいないし…やっぱりここ、あれじゃないッスか? 所謂「黄泉の国」って奴!? って事は俺達死んだ!? やっぱ死んじまったんじゃないッスか!? あっ!でも死んじまったんだったら、腹なんか減らねぇよな?…って事はやっぱ生きてるって事!? 死んでるのに生きてるってどういう事?! もう何がなんだかわかんないッスよおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

話しながら、段々と早口になり、最後には再び叫び出した左近に、三成は表情ひとつ変えぬまま鞘に収めたままの長刀でその頭を殴りつけて、制止した。

 

「はざまっっ!?」

 

「だから黙れと言っている! ここが常夜の地であれ、どこであれ…家康が私の手の届く場所に存在する限り…私の目的に変わりはない!!」

 

「…だぁから、家康だってここにいるかもわからないでしょうに…」

 

頭にできたタンコブを撫でながら、ボソリとツッコむ左近。

すると焚き火の火が弱くなってきたので、新たに数本木の枝をくぐらせながら、今度は真面目な話をしだした。

 

「まぁ、家康を探すのもいいッスけど。とりあえず、明日は誰か俺達以外に人がいないか探してみた方がいいんじゃないッスか? 今の状態で家康を見つけてもこっちは三成様と俺しかいないんスよ? 刑部さんだって、足軽の皆さんだって、ましてや他の“五刑衆”や西軍側の武将達、それにあの “皎月院”の姐さんだって―――」

 

左近が話していたその時だった―――

突然三成の背後の森の中から予期せぬ乱入者が現れた、木々の間を素早くくぐり抜けた複数の影が三成目掛けて突っ込んでくる。

 

「構えろ!! 左近!!」

 

「えっ!? ちょ、うわっと!!?」

 

身を翻しながら、長刀に手をかけつつ、突っ込んできた影をかわしながら、三成は突如飛び出してきた謎の影を冷静に見据え、既にその姿を捉えていた。

一方の左近は、完全に休憩モードに入っていた事が仇となってか、予想外の不意打ちに出遅れてしまい、地面を転がり倒れながらも、どうにか双刀を引き抜いた。

気がつくと、三成達の周囲を幾多の等身大の卵型の謎の物体が浮遊しているのが見えた。

 

「な…なんスかコイツら…? 一体どっから…?」

 

「知った事ではない…何であれ、我々の障壁としてかかってくるのであれば……全て斬滅する! 続け、左近!! ひとつたりとも、討ち仕損じるな!!」

 

「が…合点承知ッス!」

 

敬愛する主君の命を受けて、即座に自らを奮い立たせた左近は双刀を構え、臨戦態勢に入る。

 

「へへへッ! 少し不覚をとっちまいましたが、こっからは全力でいかせて貰いますよ三成様! 西軍一番槍!豊臣の左腕に近し“島左近”! いざ…入り―――」

 

「遅い!」

 

「へっ!?」

 

三成の一喝に唖然となる左近。

三成の右手にはいつの間に抜き放たれたのか長刀が握られていた。

 

「あれ? ひょっとして…」

 

左近が呟いている間に三成がゆっくりと長刀を納刀する、やがてチンッっと完全に鞘に収まる音が響いた。

その瞬間、周囲を漂っていた謎の球体群が次々と真っ二つにされ爆発していった。

 

「あら…? ひょっとして、俺、お役御免…?」

 

「フン…どうやら『討ち仕損じる』までもなかったようだな…」

 

三成はつぶやきながら、地面に転がる謎の球体の残骸を見据えた。

それは機械仕掛けのカラクリ兵器だった…だがそれは三成達の見慣れたカラクリ兵器とは明らかに造りの違う、観たこともないカラクリだった。

 

(機械仕掛けの傀儡か…しかし、見たところ長曾我部や徳川で造られているような代物ではなさそうだが…)

 

「三成様!」

 

謎のカラクリ兵器を調べていた三成を左近が呼び止める。その声には少なからず不平不満が含まれていた。

 

「なんだ?左近」

 

「『なんだ?』じゃないッスよ! せっかく珍しくかっこよく命令出してくれたんだったら、お一人で全部やっちゃわないで、俺にも少しくらい花持たせてくれてもよかったじゃないッスか!!」

 

「貴様の無駄な口上を聞いている暇などなかった事は明らかであろう。それを毎度、毎度、下らぬ茶番じみた事を…左様な芸事の真似をする暇があるなら敵を一人でも斬る事を考えろ」

 

「茶番って…あれ俺の大事な名乗りなのに…」

 

ブツクサと文句をぼやきながら、三成の傍に近づいた左近は足元に転がるカラクリ兵器の残骸に目をやる。

 

「それで、三成様? このカラクリ兵器は一体…?」

 

「知らぬ。だが、これをけしかけてきた奴はすぐにわかりそうだな…」

 

「?」

 

突然、暗い森の中を見渡しながら、どこへともなく三成が声を上げた。

 

「出てこい! 姿は見えずとも、貴様は我々を監視しているのであろう! 斯様な機械傀儡などけしかけて何が目的だ!? 姿を見せろ!!」

 

「み、三成様!? 一体、誰と話して…?」

 

長刀に手をかけながら叫ぶ三成に左近はわけがわからずに混乱していると、不意に三成達の目の前の宙にホログラムの映像が浮かび上がり、紫色の髪を肩まで延ばし、白衣を纏った男が現れた。

 

「うおっ!? な、なんだ!?」

 

「……………誰だ? 貴様は?」

 

映像の中で不気味な微笑を浮かべる白衣の男に、左近が驚き仰け反る傍で、三成は鋭く射抜くような冷たい声で尋ねる。

 

《いやあ、初めまして…というべきかな? しかし、大したものだよ。私の作品である“ガジェットドローン”を50機近く纏めて一瞬で撃墜するだなんて…それも非魔力保持者である君が…》

 

「何をわけのわからない事を言っている? ここに広がるガラクタ共は貴様の差し金というわけか?」

 

三成の殺気と怒りの籠もった声で詰問されているにも関わらず、白衣の男は気障っぽい態度を崩さないでいた。

 

《少し試したかっただけだよ。無礼は承知の上さ。気に障ったのなら謝るよ。すまなかったね》

 

「この程度のガラクタなど退屈しのぎにもならん…それよりもう一度問う…貴様は何者だ? 何故我々を試すなどした?」

 

謝罪の言葉を口にしながらもその表情には微塵の謝意も感じられない白衣の男の態度に、三成は更に殺気と怒りを増長させながら男を睨みつけて、詰問した。

そんな三成の様子に、傍らにいた左近の方が思わず身震いする程だった。

 

《そうだね。まずは自己紹介すべきだったね。失敬…私の名はジェイル・スカリエッティ…君に折り入って、良いお話を持ってきたのさ。石田三成君》

 

「「ッ!!?」」

 

初対面のはずの白衣の男…スカリエッティから出た三成の名に、三成自身も左近も思わず目を見開いて驚愕する。

 

「アンタ…なんで三成様の名前を……一体、何が目的だ?」

 

先程までの軽い調子とは打って変わって、敵意と懐疑に満ちた威圧的な口調で左近が問い詰める。

 

《それに関しては色々と事情があってね。その辺りの説明も追ってしたいのだけれども…その前に、早速だが本題に入らせてもらおうか》

 

「本題…?」

 

左近が怪訝な表情を浮かべながら返す。

 

《率直に言おう…西軍総大将にして覇王・豊臣秀吉が左腕…豊臣軍最高執行機関“豊臣五刑衆”主席…石田治輔少部三成……この私と手を組まないかね?》

 

「なんだと…!?」

 

スカリエッティの言葉に、三成も左近も本能的にキッと睨み返した。

特に左近は完全に敵愾心をむき出しにした様子でスカリエッティに向かって言い放つ。

 

「三成様の事…随分わかってるみたいだけど…いきなり、こんなわけのわかんない刺客共をけしかけておいて『手を組もう』なんて言われて、『はい、いいですよ』なんて三成様が素直に応じるとでも思ってるわけ? だとしたら、アンタって相当なバカか、ものの交渉の才能ってもんがまるで素寒貧だぜ?」

 

《ハハハハ。なかなか手厳しい意見だね。さすがは三成君の重臣・島左近君だ。君の言う通り、こんな挨拶程度で君たちが了承しかねる事は私も十分承知の上…》

 

「ならば何故、決裂するとわかっている交渉に望んできた?」

 

既にいつでも斬りかかる事ができるように長刀の柄に手をやりながら、三成が問い詰める。

だが、スカリエッティは三成に焦らすような口ぶりで、切り札を出すように語りかけてくる。

 

《君達が探している…“徳川家康”なる男の居所を私が把握していると言えば…どうかね?》

 

「「ッ!!!?」」

 

今にも長刀を抜刀しかけていた三成の手が止まった。

その様子を見たスカリエッティはニヤリと微笑を浮かべる。

 

《まずはお互い立体映像(ホログラム)越しではなく、直接会って話そうじゃないか。今の情報は君達にご足労願う為の挨拶料代わりと思ってくれたらいい。尤も…私の招待を君達が受け入れてくれるのであれば…の話だけどね》

 

「…こんな怪しさ全開の物言いで、テメェなんかを三成様が信用するとでも思ってんのかよ?」

 

左近は双刀を振り上げ、スカリエッティの浮かぶホログラムスクリーンを斬り裂こうとする。

だが、その時思わぬ人物がスクリーンに投影された。

 

《主らの警戒も尤もであろうがな…生憎、この男の申し出を蹴るのは得策ではないぞ。三成、左近……》

 

「ぎょ…刑部!? 何故貴様が…!?」

 

「刑部さん!? 無事だったんッスか!?」

 

スクリーンに映った新たな人物…全身に包帯を巻き、誰の担ぎ手も居ない輿の上に乗って空中を浮遊している不気味な雰囲気のこの男は三成、左近の両名ともによく知る男…石田軍及び西軍の筆頭軍師にして強大な妖術の使い手。関ヶ原では家康惨殺しか頭のない三成に変わって西軍のすべてを取り仕切っていた三成の親友・大谷吉継その人だった。

 

《三成、左近…おそらくは主らも既に承知であろうが…我々が今いるこの地は日ノ本とはまるで異なる異郷の地…まず主らに必要なのは、我らが置かれている今の状況を把握する事…そして、その上でこれからどうするべきか考えねばならん…その為にも、まずはこのスカリエッティなる男の勧めに乗る事が得策であろう…》

 

「…………………」

 

大谷の吹いた言葉に三成はしばし考え込むようにして動きが止まる。

これを機に、スカリエッティは畳み掛ける事にした。

 

《徳川家康なる者を殺したいという君の気持ちは私もよくわかる…しかし今の君はこの世界について何もわかっていないし、そもそも自分がどういう状況なのかさえわかっていない》

 

「…………」

 

《私…いや、私達と手を組めばその全てを教え、そして協力させてもらうよ。お互いに良い結果を生む為にね…》

 

スカリエッティの囁くような言葉に三成は不快げに溜息を漏らした。

 

「すぐに貴様の使いをここに寄越せ…刑部もそこにいるというのであれば、迎えに向かう」

 

三成の返答にスカリエッティは満足そうに笑みを浮かべた。

 

《理解して貰って嬉しいよ。それでは早速、迎えを寄越すから、それについてくるといい》

 

「フン…貴様のような下郎如きの誘いに乗じるなど虫唾が走るがな…」

 

三成はそう吐き捨てながら、抜きかけていた長刀を再び鞘に収めるのだった…

 

 

 

 

時同じ頃…

場所はミッドチルダの首都クラナガンの郊外にあるとある森林。

静寂に満ちた筈の森の中に、突然晴天のはずの空から稲妻が落ちてきた。

しかも稲妻の落ち方は尋常ではなく、何本もの稲妻が一本に集結、大きな一本となって地面に命中した。

 

轟音の後、落雷の衝撃でできたクレーターの真ん中には二人の男が倒れていた。

一人は青い兜と服に身を包み、六本の刀を腰に差してその顔には右目に眼帯が付いている青年。

もう一人は刀を携え、黒いオールバックの髪型に、顔に刻まれた傷跡が特徴の長身の男だった。

間を空けずにオールバックの男が起きあがった。

 

「ん? こ…ここは?…」

 

男は周囲を見渡して、そして傍で倒れている主を見つける。

 

「政宗様。目を覚ましてください。政宗様」

 

男が青年の身体を揺すると、青年はゆっくりと目を覚ます。

 

「Ah? 小十郎? ……い…一体なにが起きたんだよ?」

 

「私もよくわかりません。ただ気が付いた時には…」

 

男の言葉に青年は辺りを見回す。

 

「what? ここはどこだ?」

 

「さあ…よくはわかりませんがこの雰囲気からして…もしかしたらここは日ノ本ではないかもしれません」

 

男…片倉小十郎は長年戦の中で経験した勘を効かせて現状を素早くそして的確に分析する。

それを聞いた青年は自嘲気味に笑うと、夜空に浮かぶ星空を見上げる。

 

「なるほど…お前の勘は正解みたいだぜ…小十郎」

 

「えっ!?」

 

青年の言葉に小十郎が夜空を見上げ、そして驚愕する。

夜空の中に浮かぶのは2つの大きな月…いや、この場合惑星というべきだろうか…

 

「なっ!?こ…これは一体!?」

 

「Ha!こいつは面白い…」

 

それを見て驚く小十郎とは正反対に、青年はどこか期待を寄せるようなはずんだ声を上げる。

 

「こいつは面白そうなParty Venuesに歓迎されちまったもんだぜ。小十郎」

 

そう言って青年…『独眼竜』の異名を持つ奥州筆頭 伊達政宗はニヤリと口を吊り上げさせた…

 

 

さらに同じ頃…

ミッドチルダの別の場所には、2つの火の弾が落下していた…

 

ミッドチルダ首都 クラナガンの某ビルの屋上。

そのど真ん中には焼け焦げたような黒い炭が残り、まだ煙が微かにだが立ち込めて、微妙に熱を帯びていた。

 

そして今、この焦げ臭い煙の漂う屋上には2人の青年の姿があった。

一人は茶髪に真っ赤な紅色の服に赤いハチマキ、手には長い槍が二本。その首には六枚の小銭でできた『六文銭』なる首飾りがかけられていた。

 

もう一人は、明るめの茶髪に迷彩柄の忍び装束を身に纏い、手には少し大きいサイズの手裏剣が二つ握られている。

 

「大将~。どうみてもここは日ノ本のどこの場所でもなさそうみたいだぜ」

 

迷彩服の青年は、標高200メートル近くの高層ビルの屋上であるにも関わらず平然の屋上の端まで行き、これ以上乗りだしたら転落するというまで身体を乗り出してミッドチルダの夜景を散見する。

 

「うむ。そうか、物見ご苦労であった佐助」

 

紅の服の青年…甲斐武田軍総大将代行 真田幸村は赤髪の青年…配下である真田忍隊隊長 猿飛佐助の報告を聞き、頭を捻る。

 

「佐助。ではこれから我らは一体どうすればいいだろうか?」

 

幸村は屋上の真ん中に腰をかけて、今後の行動に関して相談する。

幸村の問いかけに佐助は頭を掻きながら答える。

 

「どうするもなにも…まだ夜だし下手に行動しない方ってのが一番だと思うぜ。

周辺の建物や地形から推測してここは俺達の想像もつかないような異国の地である事は間違いなさそうだし、まずは慌てずに下手に派手な動きを見せない方が…」

 

佐助は、そう最もな意見を進言しようとするが…

 

「おおぉ! あれは一体なんでござろうか!?」

 

佐助の説明中にも関わらず幸村は、夜空を飛んでいく飛行機に興味を示し、それを追って駆け出してしまった。

 

「って大将ぉ!ちょっと聞いてんの!? だから下手に行動を起さないように…って大将ダメだって!そっち行っちゃ!」

 

「え!?何か申したか?さす、けえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」

 

佐助が声をかけた時はすでに時遅し、飛行機に目を奪われながら足を進めていた幸村はビルの端まで行き、佐助が注意している最中にその足を踏み外してビルから落ちて行った。

 

「ああぁ!? もう! だから言わんこっちゃない! 折角総大将として型が付いてきたし、もう安心かと思ってたらこれだよ。まったく! 真田の大将!今助けに行くぞー!」

 

佐助は愚痴をこぼしながらも幸村を助ける為に、彼の落ちた場所から後を追って飛び降りた…

 

その後、幸村は空中で凧を展開させた佐助によって間一髪で救助されたが、その後佐助に少々怒られたそうな。

 

 

 

 

とある地下にある研究所の一室―――

漆黒の中、四隅に並んだいくつもの培養カプセルが不気味に輝くその部屋に三成、左近の二人は案内されていた。

そして、到着するや否や、三成はある映像を見せつけられる事となった。

三成は己の持ちうる憎悪、怒りの感情の込められた鋭い眼光を放ちながら、目の前に映し出されたモニターを睨みつけていた。

 

モニターに映るのは、なのは達機動六課のメンバー…そして三成にとって憎き宿敵である男…家康だった。

 

「…やはり貴様もこの世界に来ていたのか………家康ッ…!」

 

三成の胸中では途方もない怒りと憎悪が込み上がっていた。

あの時、関ヶ原で決着を果たせなかった悔しさ…

家康を斬滅するどころか、詫びの言葉すら引き出す事のできなかった自分の不甲斐なさ…

そして、それらを含めた、自らが神の如く崇める今は亡き君主 豊臣秀吉へ対する申し訳なさ…

そのすべてが、彼の胸に滾り続ける憎悪を、より増長させていた…

 

「…さて。これで私が信用に足りうる人間である事を理解してもらえたかな? 三成君」

 

すると彼の背後から三成をここへ招き入れた張本人…ジェイル・スカリエッティが、不気味な微笑を浮かべながら三成の傍へやってくるが、三成はまるで彼の言葉が聞こえていないかのように、ただモニターを睨みつけたままだった。

 

「ふん…こんなもの見せつけられたからって俺達にどうしろっていうんだ? まさかこれだけの事で、三成様をこんな場所に呼び出したって言うんじゃないだろうな?」

 

代わりに三成の傍らでその様子を見守っていた左近が、警戒心を隠さないまま睨みつけながら言った。

だが、三成はそんな事などどうでもよいと言わんばかりにモニターに写る楽しげに笑う家康の姿を睨みつけながら呟く。

 

「おのれ家康……私が卑下されるのは構わない…だが…秀吉様を軽侮したまま奴を斬り刻んでも…意味が無い!!」

 

三成は刀を顔の前にやると、わずかに鞘から引き抜いて、そこに映った自分の憎悪に満ちた顔を見る。

 

「我々と同じ様にこの異郷の地に飛ばされたというのに、こんなにものうのうと笑っている奴の姿を見ると…ますます腹立たしさを感じる! 許さん…必ずや、この手で己の犯した罪の深さを思い知らせ…そして…首を刎ねてやる!!」

 

長刀を再び鞘に収め、モニターに向かって声を荒上げる三成の言葉を黙って聞いていたスカリエッティであったが…

 

「ふ…フハハハハハハハ!」

 

突然に軽く含み笑いを浮かべたかと思うと、大きな声で笑い出した。

 

「何がおかしい!?」

 

突然に笑い出したスカリエッティに、三成は殺気を立たせながら振り返る。

 

「いやはや。 君みたいに愚直なまでにご主人様に忠実な人間というのも初めてみるものでね…」

 

「ッ!? テメェ! 三成様をバカにしてるのか!?」

 

そう食って掛かる左近を飄々とした態度であしらいながら、スカリエッティは三成に語り続ける。

 

「その徳川家康という男がどういう経緯で、これほどに君の憎悪を買ったのかは私にはわからないけど…決戦の最中に伏兵を用意していたという事は、彼ははじめからあの場でまともに決着なんて着ける気ではなかったのではないかな?

そう思うと、寧ろあの場であのまま君が彼に挑めなかったのは、寧ろ君にとって好都合だったと思うがね…」

 

「…もし、そうなのだとすれば……なお許しがたい!!」

 

三成は長刀を睨みながら目を見開いて、憎悪の表情をさらに強くする。

 

「脆弱なる分際で、私との決着を付けると綺麗事をほざいた上、結局は姑息な手で秀吉様のみならず私までも陥れたという事か!!?」

 

噴き上がる激情を抑えるかのように長刀を床に突き立てる三成を、スカリエッティはまるで楽しんでいるかのように微笑を崩さずに見つめていた。

そんなスカリエッティの態度に左近はますます気に食わない想いを抱く。

 

「それで…家康は今どこにいやがる? それを教えてくれる為に三成様や俺をここに呼びつけたんじゃなかったのか?」

 

左近は釘を刺すようにスカリエッティに尋ねた。

その声質は普段三成や気心知れた仲間に向けるものとは違い、猜疑、そして敵愾心に満ちた低い声であった。

もしも、スカリエッティが三成にこれ以上の不敬を働けば、いつでも斬り捨てられるように腰に下げた双刀に指をかけてさえもいた。

 

「まあ、落ち着きたまえ。まずは建設的な話からしていこうじゃないか。例えば…先程の話の続きとか」

 

「先程の話…?」

 

左近が眉を顰めながら返す。

それを聞いていた三成もスカリエッティに向かってキッと睨みつける。

表情は冷静ながらも、彼の瞳には大きな怒りが宿っていた。

 

「貴様と『手を組め』という話か…?」

 

三成はそう問うとスカリエッティは、大げさな仕草と共に声を張り上げた。

 

「ご明察!その通りだよ!君達、石田軍…否、豊臣の強大な武力と、私の天才的な頭脳がひとつとなれば、この世に他に敵のない最強の勢力を構築させ、新たな時代を確立させる事が可能となる!」

 

「それって、アンタしか得してねぇだろうが…テメェと手を組めば俺や三成様にどんな得があるのか、教えてもらいたいね」

 

左近が鋭い口調で尋ねた。

 

「勿論。今の映像を見てもらったとおり、君達の憎き宿敵・徳川家康は、私を“広域指名手配犯”として長年追いかけている『時空管理局』についた。私の敵である管理局に君達の敵が加担しているという事…それ即ち、我々の敵は共通しているという事だよ。

私が君達の主の仇を討つのに協力する代わりに、君達が私のある“計画”に協力してもらえれば、お互いに目的は成就させやすくなる…悪い話ではないとは思うがね…」

 

「断る!」

 

スカリエッティの話が終わるや否や、三成は彼の首筋に向かって長刀を抜刀し、その鋒を突きつけた。

それでも一歩も怖気づかないスカリエッティは、冷静に同盟を断った理由を聞く。

 

「ほぉ。どうして断るのだね? 今も言ったが、この話はお互いに決して悪い話ではないと思うがね?」

 

「決まっている。貴様の態度が気に食わん!」

 

「私の?」

 

スカリエッティが首をかしげると三成は静かに言葉をかける。

 

「スカリエッティ…私が誰に仕えていた主の名を言ってみろ」

 

「君の主……? 覇王・豊臣秀吉…かね?」

 

スカリエッティが淡々と答えると、三成は突然長刀を振り上げてスカリエッティの頬に小さな切り傷を刻んだ。傷口からは少量の血が垂れる。

 

「そうだ! 私は偉大なる覇王・豊臣秀吉様を支える左腕! そしてあの御方の目指した覇業を引き継いだ男だ! それが何故貴様みたいな小物なんかと手を結ばねばならんのだ!! どんな未知の異郷に堕ちようとも…この凶王三成(きょうおうさんせい)は、貴様みたいな下賤の輩の助力を求めねばならぬ程、『常勝豊臣』の栄名を背負し者としての矜持を失ってなどいない!!」

 

一切の譲歩の感じられぬ強い意思を持った言葉で三成は叫んだ。

 

「右に同じだぜ! それに三成様はテメェみてぇな腹の底に一物どころか、十物も百物も隠し持っていそうなイカサマ臭い野郎が大嫌いなんだよ!」

 

左近も便乗するように言った。

そんな彼らの言葉に黙って耳を傾けるスカリエッティだったが、やがて高らか笑いだした。

 

「いやいや。君達は本当に誇り高い武人なんだね。ますます手を結ぶ気になったよ」

 

「テメェッ! いい加減しつこいと――――」

 

左近はとうとう我慢できなくなり、スカリエッティを一刀両断しようと、双刀を引き抜きかけた。

そこへ…

 

「まぁそう短気に逸るな…左近よ…」

 

突然、地の底から響くようなおどろおどろしい声が左近を制止する。

その声に反応した三成と左近が声が発せられた方に目を向けると、そこには2人がここへやってくる決定打になった男…西軍筆頭参謀・大谷吉継が浮遊する輿に乗ってこちらへと近づいてきた。

 

「刑部!?」

 

「刑部さん!」

 

大谷はゆったりと漂うように三成、左近とスカリエッティの間に割って入り、激昂していた三成達を仲裁にかかった。

 

「左近。我のいぬ間、三成の護衛と補佐。ご苦労であったな…」

 

「それはいいッスけど…刑部さん、なんだってこんな野郎の肩を持つんッスか!? そもそも、どうして刑部さんがここにいるんッスか!?」

 

「わちきがスカリエッティと大谷(このふたり)の間を、とりなしてやったのさ…」

 

新たな声が薄暗い部屋の中を反響した。今度の声の主は女だった。

赤や紫、黒の派手な色合いの着物を胸元がはだける程に着崩し、櫛や簪などで煌びやかに飾った女髷風の髪には黒を基調としながらも所々に銀色や紫色に染まった部分が見受けられる。屋内にも関わらず、片手には朱色の番傘を差し、もう片方の手で長煙管を燻らせていた。

これだけであれば、まるで優雅な花魁のように見えるが、その紫色のアイラインの入った鋭い目つきに、紫色に染まった唇、左側だけ充血したように真っ赤に染まった禍々しい目が不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

「フン…やはり貴様の差し金だったのか……うた」

 

「アンタも来てたんスね……“皎月院”の姐さん…」

 

三成と左近がそれぞれ不服そうに、現れた女性に語りかけた。

 

その女性…“皎月院”は、西軍ひいては石田軍においても特異ともいえる立ち位置と経緯の持つ謎めいた人物として有名だった。

 

彼女が三成の前に現れたのは、覇王・豊臣秀吉の死に伴い、豊臣が崩壊して間もなかった頃…どこからともなくいつの間にか現れ、はじめは三成の身の回りの世話を行っていたはずが、その並外れた博識と知略でいつしか石田軍の軍議にも顔を出すようになり、さらには大谷の使うものとよく似た妖術を駆使して戦でも暗躍を見せ、西軍結成の折りには、いつの間にか影の黒幕として、総大将の三成や筆頭参謀の大谷と同格以上の権限を有するまでになっていた。

 

「三成、左近。アンタ達がこの(スカリエッティ)を気に食わないのは、わちきも刑部も、百も承知だよ…けどね。この男の技術者としての才覚や持っている戦力は確かなものだよ。ここでこの男を味方にしておけば、家康を倒すのにも相当に役に立つはずさ…だから、わちきと刑部が事前に“同盟”締結の話を取り決めていたのさ」

 

「……姐さん。そりゃいくらなんでも勝手すぎじゃありませんかい?」

 

左近が非難するような眼差しを送りながら言ったが、皎月院は大して気にしないように続けた。

 

「これは決して石田軍にとっても悪い話じゃないさ……まずこのスカリエッティは、アンタ達に差し向けられた“ガジェットドローン”をはじめ、様々な兵器・戦力を有している。それにこの世界…“ミッドチルダ”の地理、情勢についてもよく把握している。欠点は、その戦力を効率よく活かす為の優秀な“将”が足りないという事…」

 

「一応、ガジェットドローンの統制や主戦力は、私の“娘”達が担っているのだが、それでも手は十分とはいえない上に、“娘”達の中にはまだ経験不足である事が否めない子も何人かいてね…」

 

スカリエッティがそう補足を加えた。

 

「それに対して、ここに集っている面々はそれぞれ並外れた武力、知略、術の使い手だけれども、率いる兵もいなければ、この異世界の土地や情勢…そしてなによりも日ノ本へ戻る為の手段さえわからない…そこで、ここからがこの“同盟”の重要な部分だよ」

 

皎月院はそこまで言うと、後の説明を大谷に任せた。

 

「我らはスカリエッティからこの世界で活動する為の兵と拠点を借り、我らはスカリエッティに将として己を貸す…そしてスカリエッティの企てる“計画”に協力し、その過程で主の憎き敵、徳川を排除する…なかなかの献策であろう?」

 

大谷は地の底から響くような声で三成を諭した。

だが、三成は冷たい眼差しで大谷、スカリエッティ、皎月院と見渡すと…

 

「回りくどい!」

 

そう一蹴した。

 

「この男の有する無用な機械傀儡(ガラクタ)などに頼らずとも、家康は私がこの手で斬首してみせる! それともこの男の手を借りる事で、私が“家康の首”以上に欲するものが手に入れられるとでもいうのか!?」

 

三成はそう言いながら、長刀を抜刀する構えを見せるが…

 

「それが“ある”………っと言ったら…どうするんだい?」

 

「……なんだと?」

 

皎月院の口から漏れた言葉に三成の手が止まった。

 

「どういう意味だ…? もっと簡潔明瞭に事を伝えろ! うた!」

 

「あぁ…いいとも。それじゃあ少し耳を拝借…」

 

皎月院は長煙管を女髷の中にしまうと、三成の傍らに近づき、話の内容が近くにいた左近に漏れないように番傘で自分と三成を遮るように隠した。

しばらくの間、他の者には聞こえない声で皎月院が三成に囁いていたが…

やがて、番傘越しに…

 

「ば…バカな!? 左様な事が……ッ!!?」

 

「できるさ。この世界にはそれを実現させる為の秘術があるのだから…」

 

動揺した声質の三成と唆すように語りかける皎月院の声が聞こえてきた。

話し終わった皎月院が番傘を閉じると、三成の表情は今までと打って変わって、激しいい動揺の中に微かな希望を覗かせた複雑な面持ちとなっていた。

三成の様子を見たスカリエッティと大谷は微笑を浮かべ、畳み掛けるように言った。

 

「君が手を組む事に同意してくれるのであれば、私は君の望みであろう“それ”を実現させる事に喜んで協力しよう。大谷殿、皎月院殿ともそれを踏まえて、この同盟を考えたのだから…」

 

「さて、三成よ…これで主もこの世界で戦わねばならぬ“理由”ができたであろう…まずはスカリエッティの手を借り、そして我らの力も貸し、共にそれぞれの“願い”を果たそうではないか。お膳立ては致す故…」

 

大谷の言葉を聞いた三成は、無言でスカリエッティの顔を睨みつけていたが、やがて小さく溜息を漏らしつつ、長刀を握る手の力を緩めた。

 

「………全て、刑部とうたに任せる…」

 

三成の言葉の意図を察した大谷と皎月院が小さく笑い、左近が驚きに満ちた声を張り上げる。

 

「ッ!? み、三成様!? 本当に手を組むんッスか!? こんな奴と…!?」

 

「余計な口出しをするな左近! 貴様は私に従っていれば十分であろう! それとも…私の判断になにか不服があるか?」

 

そう言いながら、三成は今までにみた事がない程の殺気の籠もった目線で左近を一蹴した。

敵はおろか、味方に対しても容赦なく向けられる三成の殺気に、左近もちょっとやそっとの事では動じなくなるまでに慣れてきていたが、この時の三成の執念ともいえる殺気は思わず、本当に殺されそうになる錯覚を覚えるまでに恐怖心を感じるものであった。

 

「め、滅相もございませんです、はい!」

 

半ば無理矢理に左近の了承も得て、無事に同盟が締結された事を確認したスカリエッティは満足そうに頷いた。

 

「では、三成君、左近君。今日からこの私のアジトが君達、豊臣の本陣だ。遠慮する事なく大いにくつろいでいってくれたまえ」

 

スカリエッティの歓迎の言葉に、三成はあまり興味がなさそうにため息をつくと、静かに踵を返して部屋を出ていく。

 

「これからの術策を聞かずともよいのか?」

 

「貴様らのやる事に疑う余地はない」

 

三成は大谷達の方に向かずにそう言うと、不意にスカリエッティの傍で立ち止まった。

 

「スカリエッティ…私と豊臣の手を借りるのであれば、これだけは肝に銘じておけ…

貴様の言う、私の“望み”…必ずや成就できるように貴様も死力を尽くせ…もし私のこの胸に息吹かんとしている希望が、ぬか喜びで終わる結果になろうものなら…その時は容赦なく貴様を斬滅する! わかったな!?」

 

それだけを言うと、三成は静かに去っていった。

 

「み、三成様!? どこ行くんスか!? まだここの事よくわかってないのに闇雲に出歩いたらマズいッスよ!!」

 

左近は三成の言い残した言葉を呆気にとられながら聞いていたが、やがて我に返ると慌ててその背中を追いかけていくのだった。

大谷、皎月院そしてスカリエッティは暗闇へと消えていく三成達を、黙って見送っていたが、やがて2人の姿が見えなくなくなると揃って不気味に笑い出した。

 

「…やはり、さしもの三成も“あれ”を引き合いに出されれば、この同盟、受け入れるであろうとは思っていたがな…しかし、我も未だに半信半疑であるぞ。いくら、この世界には、我らの知る常識を遥かに凌駕する知恵や技術があると申せ、斯様な事が果たして本当に可能なのか…?」

 

大谷は牽制ともとれる眼差しでスカリエッティを見つめる。

スカリエッティは自信を隠さない不敵な笑みを返して応えた。

 

「勿論。その疑い、最高の形で晴れるように尽力させていただくよ」

 

「フフフ…何はともあれ、これで同盟は正式に締結…これから長い付き合いになるかもしれないから、よろしく頼むよ…スカリエッティ」

 

「あぁ、歓迎するよ。 戦国の英雄達が入り乱れ、私の計画もさらに彩りが増すというもの…きっとさらに面白い『狂宴』を見る事になるだろうね! 実に楽しみだ!」

 

一人、芝居がかったオーバーリアクションを見せるスカリエッティに呆れながら、皎月院は、大谷に尋ねた。

 

「さてと刑部…まずは何から始めるんだい?」

 

「しからば…スカリエッティ。早速ですまなんだが、主の有するガジェットドローンなるカラクリを我らに貸して貰おうか? 数は…ざっと1000程…」

 

大谷の提示した数にスカリエッティが感心したように声を上げる。

 

「ほぉ。早速なにか一計を案じるみたいだね? 差し支えがなければ、是非にどんな策か聞かせてもらいたい…」

 

スカリエッティの質問に大谷は策を興じる際に見せる愉悦の笑みを浮かべながら言った。

 

「まずは徳川が結んだ新たな“絆”…『機動六課』なる者達の力量を存分に見極めたい…」

 

「それともうひとつ…」

 

そう皎月院は言葉を添えながら、岩肌のむき出された壁を見据えた。否、見ていたのはずっと先である様子だった。

 

「…既に何人かの“武将”がこの地に飛ばされて来ている筈…まずはそれをわちきらの目の届く範囲に集め、監視するのに容易な状況下に置いておいた方がよさそうだよ…」

 

「すると…伊達や真田もこの地に…?」

 

大谷が尋ねると皎月院は小さく頷いた。

 

「髑髏水晶による透視で見た事だから、まだ具体的な位置までは把握できていない…けど、奴らも既に日ノ本から時空を超え、この世界に来たのは確かだ。伊達はともかく、真田はうまくすれば、関ヶ原の時のようにこちら側に引き込む事も不可能ではないだろうね」

 

話しながら、皎月院は懐から野球ボール程の大きさの水晶を取り出し、掲げてみせた。

中心に髑髏の紋章が浮かんだそれは薄紫色の禍々しい光を発光させ、輝いていた。

 

「それに…奴ら以外にも既に多くの武将がここへやってきているようだ。中には“五刑衆”をはじめ、十分わちきらの味方になりうる連中も少なくない…」

 

「ほぉ…それは心強い」

 

「…スカリエッティ。アンタにはその豊臣の味方になりうる武将達を見つけ出し、ここへ呼び集めてもらいたいね。あとの調略はわちきがやる。今はより多くの“将”を集めるんだよ」

 

「わかった。任せてもらおう」

 

暗い研究室にスカリエッティ、大谷、そして皎月院の不気味な笑い声が響くのであった……

 

 

皎月院の言ったとおり…その夜はミッドチルダの各地に、いくつもの流星や謎の落雷らしきものが落下していた事が観測隊によって確認された。

観測隊は隕石との見解で進めており、あまり大事には発展しなかったが…

 

 

 

ある海辺の海岸では…

 

「―――痛ててて…こ、ここは一体どこだ…?」

 

紫色の眼帯が左目を覆った銀髪の男が、砂浜にできたクレーターの中から這い出し…

 

 

とある街を見下ろす山の高合では…

 

「フッ…未知なる異郷の地に降り立ったか……」

 

公家が被る烏帽子のような緑色の兜を被った男が、自分の置かれた状況を冷静に把握し…

 

 

とある山奥の洞穴の中では…

 

「ここはどこじゃー!! 関ヶ原に向かってた筈の小生が何故こんな場所にいるのじゃーーー!!?」

 

目元を隠さんばかりに伸びた前髪と、何故か両腕に巨大な鉄球の付いた枷を付けた大男が彷徨いながら叫び…

 

 

とある街の裏路地では…

 

「おぉ~い…ここはどこだぁ…誰か…いないのかぁ~…? ねぇ、ねぇったら…ねぇ?」

 

薄汚れた袖のない羽織に爬虫類を思わせるような不気味なオーラを漂わせた浪人風の男が、蜥蜴の様な狡猾で禍々しそうな輝きのない瞳で流離い…

 

 

とある街の酒場では…

 

ドンッ!

 

「ひぎぃやあああああぁぁぁぁ!! 痛ぇ! 痛ぇぇぇよおぉぉ!!!」

 

銃声が響き渡り、片手を撃ち抜かれた一人のチンピラが持っていたナイフを取り落しながら絶叫を上げる。

 

「泣きわめくのは、覚悟がなかった証拠だ…」

 

チンピラを銃で撃った張本人…クセのある明るめに茶髪に、凛々しい表情、グラマラスな体型に露出度の高い衣装、そして腰に何丁もの銃を下げた女が冷淡に言い放った…

 

 

 

 

この謎の落下現象の起こった現場では、見慣れぬ人物が相次いで現れていた事…

そして、その人物達が後にミッドチルダ…否、異世界全土をも巻き込むこととなる“天下分け目の大戦”における重要な登場人物である事に、まだ誰も気づいていなかった。

 

 

 

 

ちなみに…そんな一箇所であるミッドチルダ極北地区“聖地ベルカ”にある聖王教会 中庭――

 

「………………………」

 

聖王教会騎士 カリム・グラシアは目の前で倒れる一人の少年を見て亞然としていた。

顔付きこそそれなりに整っているものの、その服装はまるで童話の中に出てくる王子様のような悪趣味極まりないゴテゴテ派手衣装を着たまだ十代前半と思われる少年であった。

 

「う…う~ん…ムニャムニャ…ザビー…様~…」

 

「こ、この子は……」

 

この2人の出会いが、神聖で由緒正しかった聖王教会本部が終止符を打つと同時に、混沌の極みといえる巣窟へと変貌していく始まりであったという事は、これも誰も知る由がなかった。

 

…いや、後々にこの教会に振りかかる事を思えば、この場合は「知りたくなかった」と言った方が適切だろう……

 




はい。『Reboot Edition』最初の大きな改変点…『戦国BASARA4』より三成の側近・島左近が本格参戦します。
『4』に左近が登場した時、『リリバサ』もだいぶ話が進んじゃってましたので、一先ず回想シーンに登場させる事で対処していたのですが、正直どう扱っていいかかなり悩んでいました。っというわけで『リリバサRE』では最初から西軍陣営の重要な戦力(にして貴重な良識派、ツッコミ役)として大活躍させたいと思っています。
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