賢者のカムイ   作:斎藤 恋

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原作前
01 カムイの生まれ


明治2年3月

 

北海道 五稜郭

 

 

 

 

「榎本さん。これで完成だわ。」

 

「斎藤さん、我々への長きにわたる援助。有難く存じます。」

 

「いやいや、気にせんでええって。わしとしちゃ、単にあの賊どもが嫌いなだけですて、のぉ土方さんよ。」

 

「・・・ふ。俺たちの墓標には悪くないだろうさ。」

 

 

「・・・・ほんと、あいつはあいつでなんであぁなっちゃったのかねぇ・・。厨二の歳三よぉ・・。」

 

 

幕府時代、安政年間より始められた五稜郭の建設は、本来の目的たる夷敵と対峙することもなく、その所有者を変えた。

 

 

 

旧幕府軍。

 

新選組残党や江戸にいた榎本ら率いる幕府海軍。

はたまた東北の各地から逃げてきた各藩の残存兵。

 

 

二度目の大坂の陣の如きまとまりに欠ける兵が集まり、史上まれにみる規模の要塞へと籠る。

 

 

 

 

五稜郭。

 

それは日の本に作られた最先端にして、日本では最大規模の要塞。

 

それは本来の大きさを超え、さらにその中身を把握しているものはただ一人しかいないというほどの複雑さと複数の機構や用途を持つ。

 

 

そしてそれを理解するただひとり。

それが私。斎藤恋だ。

 

この要塞を設計し、かつ資金提供を行い、隠し通路、隠し部屋、誰も知らないギミックを多数組み込んだ技師の一人でもある。

 

 

 

 

この元の世界に近いここへと転生して、すでに700年は過ぎた。

産まれた直後は、やれ転生だ転生特典で無双だ、などといろいろ考えてはいた。

しかし、俺は所詮、いち民間人にしか過ぎなかった一般人だ。

 

いくら無双(夢想)したところで、大勢を率いるほどのカリスマなどなければ、力を抑えて誰かに仕え続けるほどの精神力もない。

 

 

かといって、力を使って無双しても、人の評価は「鬼だ、鬼が出た・・」というありさまである。

まして、鎌倉時代や戦国時代ならなおさらだ。

 

ある程度、科学信仰が根付いた世の中でもない限り、鬼やら悪魔やらの考えは消えんだろう。

 

 

俺はそう考え、地へと潜った。

要は、商人や技師、職人として各地を放浪したのだ。

 

幸い、俺にはFFの魔法やスキル、ドラクエの魔法や特技、鋼の錬金術師の錬金術なんかの一部を使用できる身体になっていた。

なぜできたかは分からない。神か悪魔かはたまた仏か。何なのか知らないが、超常の力を持つ存在がそれには関わっているのだろう。それらからは生まれて700年間なにも言ってはこないがな。

 

 

 

蝦夷地。のちの北海道へと初めて来たのが数百年前。

アイヌの一部の民から崇拝される程度には、関わってきた。

 

 

リョサイカムイ。意味はよく知らんが、神の一柱らしい。

リョもサイもおそらく、俺の名前から来ているのだろうとは思う。

 

アイヌの地も、俺の放浪した場所の一つだ。

彼らのシャーマニズム的な宗教観は、俺のような異物を害せずに受け入れてくれる度量がある。

 

だからこそ、彼らの土地では長くを過ごした。

シャクシャインとも友誼を結んだ。

 

彼はその信念のもと、歴史通りに死んでいったが。

分かっていても、信じるということを止めない彼を、俺は止められなかった。

 

 

 

 

永く生き、大勢の者と友となり、大勢の者と別れた。

それでも俺は、未だ死を選べない。

 

別れを悲しいとは思いつつも、それは必然、とあっさり切り捨ててしまう。

転生する前からのサガを、俺は変えられずにいる。

 

 

 

 

 

 

俺は斎藤恋。

 

俺は転生者であり、

 

超常の力を持ち、

 

世界を放浪する生きた【賢者の石】である。

 

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