函館戦争。
五稜郭の戦い。
それらは熾烈を極めた。
まさしく最先端の強大にして巨大な要塞が生み出す色とりどりな悲劇。
それほどまでの要塞であろうとも、幾千幾万の兵卒による攻撃、
函館港を制圧され、港内からの艦砲射撃に晒されては、
兵の補充もなく、元々の数も多くない旧幕府軍にとっては勝利の鍵とはなり得なかった。
要して低く作られた城壁は、砲の曲射を防げず、また、兵士の侵入もまた防げなかった。
明治2年5月18日
榎本武明ら、旧幕府軍は衆議にて降伏を決定した。
幾人かの離脱者について知らぬままに・・。
15年後。
朝鮮半島にて。
「総員、いるか?」
「・・・おります当主殿」
「柳井、当主殿はやめろ。ここでは隊長と呼べ」
「はっ!」
「よろしい。・・我々に課せられた任は食糧庫の破壊である。表向きの任務はな。では、裏向きの、我々が達成すべき任務、目的はなんであるのか、総員理解しておるか?岡野少尉、答えよ」
「はっ!我らの目的は、何よりまず戦争、および戦闘の経験を積むことにあります。」
「うむ、そうだ。食糧庫の破壊など、私なら目をつむってもできる、が、それでは貴君らが成長せん。そうなっては隊の存続すら危ぶまれるのだ。
だが、戦闘経験を積むためには、何より生き残らねばならん。死ぬなよ?少尉」
「はっ!了解いたしました!」
「よろしい。では総員、装具を点検、終わり次第作戦を開始する。」
「「「「はっ!」」」」
総員20名の実に小規模な特殊部隊。
俺の俺だけの、俺のための隊。
俺が管理できるだけの人数のみを集め、統率し、鍛え上げた部隊である。
500年で鍛え上げた技術を使い、鍛え上げた部隊。
彼らが戦国時代に生きるものであったなら、まさしく伝説であろう力と技量がある。
前世からの人体知識やトレーニング技術。
かつ、それらに加えて強化のために使われる魔法やスキル。
彼らの骨格は生きた金属で構成され、彼らの成長とともに身体に合わせ変形する。
彼らの筋組織は、高硬度に線維化しており、それらは銃弾も通さない。
その他、心臓も肝臓も、果ては脳も、それに合わせて強化された強化人間。
それが彼ら、第462小隊の面々である。
強化兵の存在は、元帥にしか知られていない隠された部隊である。
強化兵の人員は、かつての長州藩奇兵隊によって構成されており、山縣元帥の協力の下で運用される部隊である。
山縣には、不老不死の研究や若返り、最強の兵卒の研究として、隠れた部隊として運用させてもらっている。
その運用費用は完全に独立したもので、山縣以外には、元帥指揮下の単なる私設小隊としてしか知られていない。
その運用費用、小隊の資金源は偽造貨幣や偽造貴金属だが、そもそも武器弾薬のほとんどが中で作られており、費用は小隊員の給与や食料雑貨の購入程度にしか使われておらず、誰しもが疑問にも思わないだろう。
山縣にも、いくらかの若返り処置や老化抑制の手術を施してはいるが、珍しく長生きだな、といった程度の印象しか持たれまい。
必要以上に若返り、髪が黒くなったり、肌艶に張りやら潤いやらが出てくれば違うのだろうが、多少程度なら、「新発売の化粧品だ」程度でごまかせるし、人間なんてある程度年齢がいってしまえば、そう大きく変わりはしない。
多少の若返り程度ならごまかしは容易い。
いずれは人員も自弁するが、それには今しばらく時間がかかるだろう。
鋼の錬金術師、あれにでてくるホムンクルスのように、裏切られてしまっては元も子もないのだから。