オレの周りの女の子達がフルネームを教えてくれない 作:画面の向こうに行きたい
7月でコレだと8月には50度くらいになるのではと危惧している画面です。
こんな気温でマラソンするとか最早別の競技ですよね。
今回はリクエストのあった鳳翔さん回です。
その日、大学帰りに電車に乗っていると、珍しい人に会った。
「あら?令司さん?」
「あ、女将さん」
行きつけの小料理屋『鳳翔』の女将さんと店以外で会うのは初めてかもしれない。
「お出かけですか?」
「いえ、学校の帰りです」
いつもの割烹着姿も素敵だが、きちんと着物を着こなした女将は古き良き大和撫子といった趣がある。
「女将さんはどちらへ?」
「ちょっと銀座までハミコンを買いに」
え?ハミコン?銀座まで?銀座にレトロゲーム店でもあるのか?女将さんってレトロゲーマー?
「銀座までハミコンを?」
「ええ。ニ越まで」
ニ越?レトロゲーム展でもしてるのか?いや、ちょっと待てよ。
「何のソフトを買うんですか?」
「『けだものの森』って言うらしいですけど、ご存知ですか?」
わかった。女将さんはゲームを全部『ハミコン』って言うタイプの人だ。なら話は早い。
「なら銀座まで行かなくても大丈夫ですよ。次の駅で降りましょう」
女将さんと共に途中下車して駅前の大型店『オオヨドカメラ』に寄る。
「えっと、ここって写真屋さんですよね?」
「ええと、とりあえず行きましょうか」
入り口でゲーム売り場を調べてエスカレーターに乗る。
「これですかね?」
「ええ、これです。ありがとうございます。早速、包んでもらいますね」
オレが渡したソフトの空箱をいそいそとレジに持って行く女将さん。
「お待たせしました」
プレゼントの小箱を抱えて戻って来た女将さん。
「令司さんのおかげでスムーズに買い物が出来ました。馴染みのお客さんから、お子さんの誕生日プレゼントを代わりに買っておいて欲しいと頼まれていたので」
「お役に立ててよかったです」
「あの、よかったらお礼にこの後食事でもいかがですか?」
「いや、そんな大袈裟な」
「もしかしてお忙しいですか?」
「いや、ヒマです」
結局、女将さんに押し切られ食事に行くことになった。
近くで済ませるのかと思ったが、わざわざ銀座まで移動して、高級そうなレストランに入った。
あまりに場違いな雰囲気に、女将さんが本日のコースと白ワインを注文したあたりまで緊張で記憶がほとんどなかった。
「あの、ココって高いんじゃないですか?」
しかし女将さんは微笑んだまま、
「令司さんが気にするほどではありませんよ。ドレスコードがあるような高級店でもありませんしね」
よく考えたら大学帰りだったからジーンズにポロシャツだった。周りの男性がみんなスーツなのですごく目立つ気がする。
そんなオレの緊張もワインを飲んでたら解れていった。
上品な前菜から始まったコース料理の美味しさも相まってワインを飲み過ぎたかもしれない。
食後のコーヒーを飲みながら、
「でも意外ですね。女将さんがフレンチのレストランに連れてきてくれるなんて」
「和食のお店だとどうしても自分のお店の事を考えてしまうから洋食の方が気楽に食べられるんですよ」
職業病ってヤツか。
「ねぇ令司さん?この後もお暇ですか?」
オレの右手に自分の手を重ねながら、そう聞いてくる女将さん。アルコールのせいか、上目遣いの瞳が潤んでいるように見える。
オレは思わず生唾を飲み込んだ。
その雰囲気をぶち壊す着信音!
「ごめんなさい」
女将さんが慌てて電話に出た。
「はい。あら、社長さん。ええ。プレゼントは用意してありますよ。え?今日?お渡しは明日のはずだったのでは?急に出張が入った?わかりました。1時間後にお店で。はい。はい。では」
女将さんは申し訳なさそうに、
「ごめんなさい。プレゼントを渡さないといけなくてなりました」
「いえ、オレも響ちゃんが待ってるので帰ります」
こうして、オレ達は駅で別れた。
別れ際に女将さんが、
「この続きはまた今度ですね」
と言った気がするが気のせいだろう。
なお、帰ったら響ちゃんに厳しく問い詰められたのは言うまでもない。
鳳翔さんはゲームを全部「○ァミコン」と呼んでそう。
作者の勝手なイメージです。
ちなみに作者はボンビーなのでフレンチのフルコースとか食べたことありませんのでイメージです。
次回はあまりに暑いので海に行けたらなと思います。