オレの周りの女の子達がフルネームを教えてくれない 作:画面の向こうに行きたい
そうですね。アル・カポネが近所の眼鏡屋さんを含む敵対マフィア7人をハチの巣にした日ですね。
作者の世代だと、ユニウスセブンに核ミサイルが撃ち込まれた日でしょうか?
あれからもう20年・・・
その日はいつも通り始まった。
「さっさと起きなさい。このクズ!」
お玉を持った霞ちゃんがおこしに来た。
「おはよう霞ちゃん」
「おはよう霞」
布団がやけに暖かいと思ったら響ちゃんが潜り込んでいた。
「ちょっと響!またこのクズの布団に潜り込んで!」
「今朝は寒かったからね」
「アンタももう中学生なんだから、クズの布団に入らないの!」
霞ちゃんは響ちゃんを引きずり出して、
「さっさと着替えて来なさい」
響ちゃんをオレの部屋から追い出した。
「アンタのことだから、どうせ誰からも貰えないと可哀想だから仕方なくあげるわよ。感謝しなさい」
ピンク色の可愛い箱をくれた。
今日はバレンタインか。
「毎年ありがとう。霞ちゃん」
「1個ももらえないと可哀想だから仕方なくあげるのよ?わかってるの?」
その後、朝食の席で響ちゃんが、
「とても不本意だけど、多分必要になるから」
と紙袋をくれた。折りたたまれて中身は空っぽだった。
「何も入ってないじゃないか?」
「今にわかるよ」
響ちゃんと霞ちゃんと一緒に家を出ると途中で綾波に会った。
「おはようございます。お兄ちゃん、霞さん。響ちゃんも」
「「「おはよう」」」
綾波は顔を赤くしながら、
「あの!今日はバレンタインなので、お兄ちゃんに」
綾波がカバンから取り出したのは、お馴染みのメーカーが期間限定で出しているバレンタイン仕様のチョコレートだった。
中学生のお小遣いには少なくない出費だろう。
「ありがとう綾波」
綾波の頭を撫でて礼を言い、チョコをカバンにしまった。
1限を霞ちゃんと合流した榛名と一緒に受ける。
「先輩」
霞ちゃんにも聞こえないように小さな声で榛名が囁く。
「先輩のために作りました。霞先輩にはナイショですよ?」
綺麗にラッピングされた小箱を霞ちゃんから見えないように差し出してきた。
「ありがとう。榛名」
昼休み
「ぱんぱかぱーん!ハッピーバレンタイン」
愛宕さんと高雄さんからもチョコレートをもらった。
「ちょっと!高雄さん!愛宕さん!」
「心配しなくても、日頃お世話になっているお礼だから。霞ちゃんのダンナをとったりしないわよ」
「べ、別にそんな心配してないわよ!」
そろそろカバンに入らないな。そういえば、響ちゃんが紙袋をくれたっけ。このためじゃないだろうけど、ちょうどいいや。
「レージ」
ゴトが後ろ手に何かを隠しながら、
「今日は、日本だと、旦那様にチョコレートをあげる日なんですってね」
そう言いながら差し出された小箱には日本語が書いていなかった。
「これ、海外のメーカーで日本では販売してないんじゃなかったかしら?」
「雑誌で見たことある」
「前にもらった時に美味しかったからレージにも食べて欲しくって」
「『美味しかったから』で海外のチョコレートを取り寄せるなんて・・・」
「それよりも先輩。この後、榛名とデートしてくれませんか?」
可愛らしくおねだりする榛名。しかし、
「ゴメンな。鈴谷からお茶したいって呼び出されているから」
「仕方ありません。今日は鈴谷さんに譲ります。特別な日ですからね」
高雄さんが心配そうに、
「令司君、いつか刺されないように気をつけてね?」
???
「セ〜ンパイ!おっそーい!」
鈴谷がオレの腕に抱きついてきた。
「センパイの方が遅かったから今日はセンパイの奢り」
「はいはい」
S○S団の団長みたいな理由で奢らせようとする鈴谷。まぁ、そのつもりだからいいんだけどさ。
席に座ると鈴谷が顔を赤くしながら、
「センパイ、いつも鈴谷にご馳走してくれるからそのお礼に」
鈴谷からもチョコレートをもらえた。
「ありがとうな。鈴谷」
鈴谷からのチョコレートを紙袋にしまった。
「うん。って!センパイ、チョコもらい過ぎ!」
鈴谷はびっくりした様子だ。
「せせ、センパイ!それ誰からもらったの?」
「鈴谷も知っている人だよ。綾波に榛名にゴト。高雄さんと愛宕さん。それから霞ちゃんにももらったな」
「みんな危ないじゃん!」
何が危ないんだ?
「センパイの鈍感。女誑し!」
義理チョコもらったくらいで酷い言われようだ。
「もう!それで、センパイ。この後、ゲーセン行く?」
「いや、鳳翔の女将さんがみかんをお裾分けしてくれるから取りに行かないといけないんだ」
「あの人が1番危ないのに!」
???
開店前の鳳翔にて、
「いやー、こんなにたくさん。すみません」
「いえいえ。こちらもたくさんいただいて食べきれないので助かりました」
微笑む女将さん。
「そうそう。今日はバレンタインデーなので令司さんにもチョコレートを差し上げますね」
レジの横には小さなチョコレートが山盛りになった小籠があった。その中からくれるのかと思ったら、わざわざ別に用意してくれていた。
「他のお客さんにはナイショですよ?」
2人きりなのにわざわざ耳元で囁く女将さん。
その時オレはどんな表情だったのだろうか?
「それで、本当に紙袋いっぱいにチョコレートをもらって帰ってきたんだ?」
帰宅後、紙袋を見て冷たい目の響ちゃん。
「響ちゃんも知ってる人から義理チョコをもらっただけだよ」
なぜかますます冷たい目になって、
「兄さんはいつか本当に刺されるよ?」
なんで響ちゃんも高雄さんと同じ心配をしているんだろう?
「まぁいいや。それじゃあ私は部屋に戻るよ」
結局、今年は響ちゃんからもらえなかったな。
まあ、中学生にもなったら兄貴に義理チョコあげるのも嫌がる年頃か。
そう思いながら冷蔵庫を開けると見慣れない箱があり、その上には「あげる」とだけ書かれた手紙が載っていた。
みなさんもうっかりハチの巣にされないように知り合いのマフィアに話しかける時に注意しましょうね。
作者はマフィアどころかチンピラの知り合いもいませんけど。
みかんのお裾分けはもちろんチョコレートを渡す口実です。