15歳のある日、私の世界は病室と窓の外から見える空だけになった。
医者のお爺さんによると、私は現代では珍しいとされる病気にかかったらしく、長く生きたとしても、成人前までと言われた。
そのため私はベッドからあまり動けず、毎日のように空を眺めて過ごしていた。
看護師のお姉さんやお母さんがお世話をしてくれたり、たまにお父さんたちが会いに来て、いろんなことを話してくれる。
他愛もないことでも、私には宝物のように大切な時間だった。
……だけど。
その時間が過ぎれば、私はいつも1人きりだ。
寒い。
辛い。
寂しい。
目に映る視界から色彩が抜けていく。
病室の暗闇が、全てを包み込む。
ああ、私は……何のために生まれたのだろう?
『——生きるのを諦めるなッ!』
「……ぁ」
——声が、聴こえた。
力強く、温かな声が。
「何処から聴こえたのだろう」とゆっくり起き上がれば、電源がついたままの携帯端末が手元に置いてあった。
どうやら、動画サイトの自動再生機能がそのままになっていたみたいで、そこには知らないアニメのワンシーンが流れていた。
——朱色の少女が大きな槍を掲げ、消え入りそうな、それでいて力強さを感じさせる歌を奏でる姿が。
「……綺麗な、歌……」
『……そうさ、命を燃やす、最後の歌——』
偶然だろうか、ポツリと呟いた私の言葉に、彼女は答えた。
傷つき、血を流しながらも戦い、散っていったその少女を、私は美しいと思った。
……
その日以降、私の生活は少しずつ変わっていった。
【戦姫絶唱シンフォギア】と呼ばれるアニメに夢中になった私は、迫る第5期までの予習配信では待ちきれず、お母さんに第1期から第4期までのBlu-rayディスクを買って欲しいと頼んだ。
最初は目を丸くしたお母さんだったが、「滅多にわがままを言わない娘の頼みだもの」と嬉しそうに承諾してくれた。
それからまもなく、買ってもらったシンフォギアのディスクをレコーダーに入れて再生。
歌を紡ぎながら戦う少女たちの姿を、適度に休憩を入れながら毎日じっくり見ていた。
——これがわたしたちのッ!
——絶唱だ——————ッ!
「………………」
第5期の最終回。
スタッフロールと一緒に流れる【
「……終わっちゃったな……」
惜しい気持ちもあったが、それに勝るくらい、感動的な
病室の明かりを消して、ベッドの上で余韻に浸りながら、窓の外を見る。
今夜は空気が澄んでいるのか、一つ一つがキラキラと輝く星空がそこにあった。
「……綺麗……2人が見てた星空みたい……」
作り話というのはわかっているものの、この星空が彼女たちの見てる星空に繋がっていると思うと、少し嬉しくなった。
もうじき夢の中へ誘われるのか、徐々に体の感覚が薄れていく。
その前に一つ、意味もなく私は星空へ願う。
(いつか……彼女たちみたいに、命を燃やすような歌を、歌えますように……)
そして、
——
「——で、奏?」
「ん、ああ……どうかしたのか?」
「してるのは奏でしょう? これから開演なのに……」
5年以上前……つまりは前世の
舞台裏からでもわかるくらいの熱気を感じて、もうすぐなんだ、と少しワクワクしている自分がいる。
……と、目の前の青の少女——風鳴翼の何処かソワソワしている様子を見て、少し笑いながら話しかける。
「……こらこら、まじめが過ぎるぞ? あんまりガチガチだと、そのうちポッキリいって、本番で失敗しちゃうぞ?」
「もう、奏はいつも意地悪だ……」
翼の表情が少し緩むのを確認できたので、リラックスが上手くいったとホッとする。
「さ、みんながあたしたちを待ってる……ステージの上くらい、楽しまないとな」
「うん。奏と一緒なら、なんとかなりそうな気がする。行こう、奏」
「ああ……あたしとあんた、両翼そろったツヴァイウィングならどこまでも飛んで行けるッ!」
「どんなものでも、超えてみせる」
……5年前に選んだ選択を、
だけどこれは義務や正義感から……ましてや天羽奏という人物だから、なんて理由ではない。
——生きるのを諦めるなッ!
朱色の少女の言葉があったからこそ、
それが、誰かの始まりを照らす、ヒカリになるように——
誤字脱字等あれば教えてください
コテハン・バーローな歌女
シンフォギア世界在住
転生前・■■奏
転生後・天羽奏
天羽奏に憑依転生した同名の少女
余命宣告を受けており、闘病生活を続けるも、途中生きる意味を見失い、精神的に限界が来ていたが、ある日、動画サイトの自動再生で流れていた天羽奏の台詞に出会い力をもらった
以降は【戦姫絶唱シンフォギア】を第4期まで履修し、第5期に備えていた
この期間、信じられないくらいの生命力を見せていたので担当医も驚いていたらしい
XV最終回視聴後、少女は眠るようにこの世を去る。享年17、奇しくも天羽奏と同じ年齢だったという
少女の魂は世界を越え、在りし日の天羽奏の魂と一体化
少女=天羽奏の形で憑依転生したため、どちらも自分であると理解している
しかし、少女の記憶にある【戦姫絶唱シンフォギア】の内容から、これから先の展開をどうするか悩んでいたときに、掲示板の使用条件を満たし、相談を持ちかけることとなる
彼女のその後がどうなったかは……まだ、誰にも分からない
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