神獄塔メアリスケルター AnotherFinale 作:謎のコーラX
「ふ!、は!」
マリアチャイルドに設けられた自室で、俺はサンドバッグを殴っていた、日課のようなものでもあり、今の自分ではヒカリに守られてしまう、あの地上に出てすぐに現れたメルヒェン、あいつらは普通に戦っていたが俺達にはジェイルとは比べられないほどに強い力が感じられた、俺は腰を抜かし、ヒカリは俺の前に立っていた。
「はぁ!」
サンドバッグを貫く、中のクズ布が出てくる、ここに来て5個目が駄目になった、サンドバッグは壊せても、俺にはこの地上の一番弱いメルヒェンにも勝てる気がしない、だけど、こんなところでただ守られているなんて、俺は嫌だ。
「だけど、人間の俺には限界がある……どうすれば」
「人間さん、苦悩してるねリリー」
「そうだねサリー、苦しそうだよね」
「!?、誰だ!」
俺はベッドのほうを見る、そこには蝶のような羽を生やした同じ顔の少女がそこにはいた。
「わたしサリー」
「ぼくはリリー、苦しんでるね、人間さん、あ、この羽偽物だよ、
同じような声で混乱しそうだが、サリーは赤い羽、リリーは青い羽という違いでなんとかするしかないか。
「何のようだ」
「わたしはただ導くだけ、その目をしてる人間はあまりいないから、ついてきて」
「まぁぼくたちについてこれたらだけどね」
「!、まて!」
リリーとサリーと名乗った双子は、窓から飛び出していった、一体何なんだ、俺も窓から出て、近くの木に飛び移る。
双子はまるで羽毛のように軽やかな足取りで家々の屋根に飛び移り、なんの迷いもなく走っている。俺にはそれほどの身体能力は無く、地を蹴ってあいつらを追っている。
しばらくすると、裏路地に入り複雑な道を通っていく、俺の体力がもうすぐ尽きるかの時、双子はある扉の前で静止した。
「やるね、ぼくたちについてこれるなんて、驚いたねサリー」
「そうだねリリー、わたしの予想ならすぐにバテるはずだったけどね、ま、それじゃあ人間さん、わたしたちはこの辺で、後はきみ次第だよ」
「あ!、おいいきなり現れていきなりなんなんだよ!」
双子は高く跳躍して、再び家々を飛び移ってこの場から消えた、そして俺の前には一つの扉だ、やつらが連れてきたここに何があるっていうんだ、まぁ無駄足で終わるのもしゃくだし入るとするか。
「ごめんください……と」
俺は扉を開き、中に入ると、すぐに鉄の匂いが鼻をつく。温度も外よりかなり暑く、まわりには重火器から近接武器など様々な武器が飾られている、これは……鍛冶屋か?。
「……誰だ」
その奥にある、カキンカキンと金属がぶつかる音の先には、赤く熱くなっている鉄を、叩いている人がいた。
「えっと、なんか双子に誘われてきた……です」
「ほう……あのガキ達か、それなら盗人ってわけでは無さそうだな」
その人は叩くをやめて、俺のほうに振り返る、年は40代くらいか、髪や顔は整えられてはいるが、服はボサボサで、黒い汚れが多数見える。
「……アスカだ、お前は」
「マモル、えっと、ここは鍛冶屋なのか?」
「あぁ、それも……
「血式武器か、つまり血戦御用達の鍛冶屋ってことか?」
「まぁそうなる、とりあえずここで話していると熱中症になるだろう、こっちだ」
アスカは右のほうにある、ドアを開き、中に入った、俺も続いて中に入ると、冷たい風が身体を癒やし、目の前にはソファーと長テーブルがある、来賓室、休憩室とも言うやつか?。
「座れ」
俺は言われた通り、ソファーに座る、アスカは俺と反対側のソファーに座った。
「さて、ここに血式少女以外がきたということは、お前は少女達に任せずに、自らが戦いたいと思ってるってことだが」
「あぁ、その通りだ」
アスカは俯くと、目を鋭くして、話を続ける。
「そうか……、この血戦都市には敵は4種類いる、一つはメルヒェンやナイトメア、これはお前らも知ってることだな、もう一つは白月教団、ナイトメアの因子を取り込んでやがり、白い月、それに類ずる少女を信仰してるイカれたやつらだ」
白月教団……確か血戦とは敵対関係だったか。
「次にネクロ・ナイトメアガール、ドロシーが組織した、血式少女の死体を主戦力としたやつら」
シンデレラの死体のやつらか、明らかに意思はみなれなかったが。あるやつらもいるのかね。
「そして最後にジェノサイド・ピンク、血式少女とほぼほぼ同じやつらだが傲慢で自己中心的、その中でも処刑台少女と呼ばれるやつらは強大な戦闘力と殺戮衝動を持ってるらしい」
……初めて聞いたよな?、なんでか知らんが、前にも何処かで聞いたような……いや、今は気にしないでおこう。
「そして、お前ら人間は、そのどれにもまともに勝てない、無駄に命を散らし、最弱のメルヒェンでも犠牲が出る、非効率的だし、血式少女に任せるのが普通の人間の考え方だ」
確かにそうだろう、ジェイルでもまともにメルヒェンを戦おうとは思わなかった、ハーメルンの時だって皆で……?、いや、あのときはすぐに花坂さんに助けてもらったわけだよな……どういうことだ、勘違いにしては実感があるような……いや、そんなことよりもだ。
「俺は……勝つために戦うんじゃない、守るために戦うんだ、ヒカリを守れれば、メルヒェンを殺せなくてもいい」
アスカは目を丸くして、再び俯き、苦笑した、どこか悲しそうな目をになると、俺のほうを見る。
「……僕にはそんな意思は持てないな、守るべき我が子は人を導く立役者、力の無い僕にできるのはこうやって戦う武器を造ることだけ……良いだろう、マモル、お前に武器を造ってやる、メルヒェンに特効のある武器をな」
「ほ、本当か!」
「あぁ、そのグローブから見て拳で戦うんだろう、一週間待て、その時になったらお前の自室に直接渡しに来る、ただ、僕の武器を持つということは」
「わかってる、覚悟はしているさ、メルヒェンと戦うことを強いられるんだろ」
「……物分りの良い子供は好きだよ、それじゃあ僕はきみの武器を造る、帰ってもいいよ」
「あぁ、ところで採寸とかはいいのか?」
「お前の手を見ただけでわかる」
「すげぇな」
○
マモルが帰り、アスカは一人、ソファーに座っている。久しぶりの前を向いた人間、ただ力を求めるやつらとは違う、守りたいという意思を持った人間、自分には無い心の強さを持っている人間、アスカにはそれが眩しくて、嫉妬してしまうが、どこか満ち足りている。
「お父さん、久しぶりに良い顔してるね」
いつの間にか部屋の端に、マリアチャイルドが立っていた、しかし、アスカは驚くことなく、笑みを浮かべる。
「マリアか、仕事はいいのか」
「終わらせて来たよ……あなたは強いですよ、残された父親はこの都市には多い、私達を恨む人は多いでしょう、なんせ母親が死んだ原因にもなった子供なんですから」
「恨まないさ、僕には、そんな資格はない……無力な僕は、
マリアチャイルドは何も言わずに、アスカの隣に座る。
「……恨みませんよ、あなたは無力なのかもしれない、だけど、誰に力を与えることはできる、私にとって、貴方は誇りべき父親ですよ」
「――マリア」
久しぶりに、アスカは泣いた、それをマリアチャイルドは優しい笑みを浮かべて、彼を抱きしめた。