神獄塔メアリスケルター AnotherFinale 作:謎のコーラX
俺には、名前が……ある、メアリーっていう名前が、いつ、誰が与えてくれたのかはわからない、けど、他の血式少女みたいに自ら名乗った感じではないのはわかっている。
俺は何時ものように、マッチを擦り、妄想にふけっていた、血戦都市でも誰も俺のことを視認しない、いや、時々視線を感じることはあるか、気のせいってやつかもしれないが。
マッチが消え、幻が消える。
「はぁ……ノルマ、こなすか」
俺は何時も通りに、商店街で、マッチを売る。
「マッチ……マッチはいりませんか……なんてね」
今日も一本も売れずに終わるんだろう、そう思っていたんだが、一人、俺と同じ赤い髪の女がこっちに近づいてくる。
「マッチね、マチが造ったやつ以外のも使うのもいいかもね、1つくれないか?」
「お前……俺が見えるのか?」
驚きだった、存在感が極めて低い俺のことを視認しているんだ、こいつは。
「はぁ?、何だお前、幽霊かなんかなのか?、こわ」
首を傾げ、不思議そうにしてやがる、なんなんだいったい。
俺は、人通りが少ない路地裏で、マッチを再び擦っている、今回は一人ではなく、こいつも一緒だ、何処からともなくマッチを出現させる様はマジックみてぇだ。
「な、なぁ、あんたなんて名前なんだ、俺は……メアリー、だと思う」
「マチはマチだ、メアリー、お前も血式少女に見えるが、どうしてこんなところにいるんだ」
「あんたにはわからないとは思うが、俺は存在感が薄いんだ、それに根暗だし、こんなマッチの幻覚を見て笑ってるやつだぜ?、どうなんだって話だ」
こいつは一切笑うことなく、俺の話を聞いてやがる、良いやつなんだろうな、仲間も多そうだ。
「ふむふむ、なるほど、まぁ人の自由だからどうこう言うつもりは無いが、頑張れ」
「は、頑張れね、何をどう頑張れってんだ」
俺が苦笑したとき、商店街のほうで、悲鳴が響いた。
『きゃぁぁぁ!、メルヒェンよぉ!』
「……マチは行くぞ、お前はここで待っていろ」
「お、おう、頑張れ」
「うん、頑張るさ」
マチは、俺に一瞥すると、すぐさま走り出してった。
「……少し、興味があるな」
俺は好奇心からか、そいつのあとを追った。
『うぇぇん!、お母さん!』
何匹ものメルヒェンが現れて、人々は逃げまどっている、一人残された男の子は、涙を流しながら、母親を呼んでやがる、なんだろうな、すげぇ既視感だ。
『あっ』
男の子は躓き、転んだ、そこに一匹のメルヒェンが近づいてくる。
大人はメルヒェンに近づくことができず、ただ見守ることしかできない、そしてメルヒェンの手が、男の子の頭を。
「やめとけ」
掴みことができず、逆にメルヒェンの頭が吹き飛んだ……あの小さなマッチの投擲によって、いややっぱ既視感あるぞ。
「さっさと逃げろ小僧」
「う、うん!、ありがとうお姉ちゃん!」
男の子が逃げるのを見守る背中に1体のメルヒェンの爪が振り下ろされる、確かこのとき陽炎だった気が……、マチはその爪を片手で摘んで止めた。
「邪魔するなよな」
マチはもう片方の手に、大きなマッチを出現させる、それを一薙すると、メルヒェンの身体が横に真っ二つになりやがった。
『ギギィ!?』
「どうした?、来ないのか?」
残りのメルヒェンはマチのただならぬ雰囲気に怯えている。
『ギ、ギギギィ!!』
メルヒェンどもは1体では駄目だと思ったのか、固まって襲いかかる。
「力の差もわからないとは愚かだな、お、そうだ、試しにやってみるか」
マチは大きなマッチ棒に火をつけて、メルヒェンどもに向けた、火は大きくなり、次の瞬間、マッチ棒の火が巨大な炎となって、放射される。
『グギャァァァァ!!』
メルヒェンどもは一瞬でその炎に包まれて、灰となった。
「ふぅ、意外とできるな、ただマッチ棒がこうなるのはどうなんだって話だが」
持っていたマッチ棒もまた消し炭になっている……少し違うが、あぁ、そうだ、これはまるで
「ん?、なんだ見てたのか、メアリー」
俺が物陰から見ていたのを見つけたマチは、俺に近づいてくる。
「……あんた、強いんだな」
「まぁな、正直物足りなさが凄いが、なぁメアリー、今後も仲良くできないかね」
仲良く、仲良くね、俺と、マチと……。
「……へへ、お前は良いよな、強くて、存在感があって、きっと仲間だってたくさんいるんだろ」
「何が言いたいんだ」
本当にすげぇよ、いろいろと違うところがあるが、妄想の俺そのものだった、だからこそ……自分が嫌になる。
「俺なんてな、こんな弱くて、存在感無くて、仲間も一人もいないんだぜ?、そんな俺と、あんたが仲良くなんて」
「決めつけは良くないな」
「は?」
「お前がそんなのは現実から逃げているからだ、自分を変えようと思わないからだ」
……あぁ、そんなの、そんなこと。
「―――わかってる、わかってんだよ!」
俺はそう叫んで、逃げるように路地裏まで走っていった。
「……メアリー、ねぇ」
マチはそれを、ただ哀しそうに見守っていた。