神獄塔メアリスケルター AnotherFinale 作:謎のコーラX
――やめて!、殺さないで!
――いやぁ!化け物!
――お前なんて生まれて来なければよかった
――死んでしまえ!
――怖いよぉ!
悪意、憎悪、殺意、恐怖、様々な声が、塞ごうとも、ハーメルンの耳に入ってくる。
「ァァァァァ!!」
飛び起き、奇声を上げ、荒い息を吐いた、多量の汗が流れ、身体が震えている。
「ここは?、われはいったい」
部屋は綺麗で、最低限のモノしか置かれていない。
「なんだ?……われに何が起きたというんだ」
ハーメルンは自分の今の顔を見るために、立てかけられた大きな長めの鏡を見る、そこにはいつもの自分がそこに映っていた……いや、一つおかしな点がある、右目だ、右目の本来白いはずの眼が黒くなっているのだ。
「こ、これは……前に聞いたわれがブラッドスケルター化したときの……でもわれは平常だ、なのに何故?」
「それは、あなたが普通の血式少女ではないということだ」
「何者!」
ハーメルンはベッドから降りて、入ってきた少女に敵意を向ける。
「一応はじめましてかな、私はマリアチャイルド、地上唯一の都市、血戦都市を守護するものであり、長だ」
「マリアチャイルド?……どうやら敵ではにゃいみたいだが、何用だ」
「……」
マリアチャイルドは黙り、ハーメルンを観察する。
「……本当によく似ている、肌も、髪も、瞳も」
「な、何を言ってるんだ」
「……ハーメルン、告げておく、このまま何もせず過ごした場合、貴方の心は、悪意に侵され、
「なっ!?、何をいってにゅのだ!、われはそんなことには……!」
ハーメルンは言い切れなかった、先程の夢、もしも毎日見ることになるとなれば……、ジャックやアリス、マチに危害を加える可能性が、頭を過る。
「ならない、とは言えないだろう、関係性がわからないが、もう一人のハーメルンを私は見ている」
「もう一人の……われ?」
「そう、そいつも前は貴方みたいな性格だったが、いつしか、人類の敵として、私達に牙を剥いた」
「……このままわれが、この都市に残る選択をした場合、どうするつもりだ」
「何もしないという選択を選んだなら、私が直々に、殺してやろう……一つ、その病とも言うべきモノの治す方法を一つ、教えてあげる」
「なんだ?」
「もう一人のハーメルンが言っていたことだ、アイツさえ消えれば、アイツを取り込めば、ワレは元に戻れる、と、そのアイツがたぶん貴方なんだろうね」
「……今、そのもう一人のわれは何処にいる」
「わからない、ただ、最近村の大人が消えたとの情報が入った、村々を辿れば、もしかしたら……ね」
「……われは、われは仲間を失いたくない、このままあやつらを手にかけるなら……われはここを去ろう」
「……利口な考えだ」
○
その日の深夜、ハーメルンは黒い服を着て、手には食べ物や様々な道具が入った袋を持って、都市の外に立っている。
「……ではな、皆、帰ってくるときは、われは元に戻れるように」
「あら、何処に行くつもりかしら、ハーメルン」
ハーメルンは都市に背を向けて、出発しようとした時、後ろから声がかけられた、聞き慣れた声、ハーメルンは振り返る。
「グレーテル……」
「私もついていくわ」
「ぼ、僕も行くよ、グレーテルが行くなら」
そこには、グレーテルと、荷物を袋に詰めたヘンゼルがそこに立っていた。
「駄目だ、われはいつそなたらに牙を剥くか怪しいのだぞ」
「そう、でも私、今の貴方のその状態、とても興味深いと思うの、ここにいるよりも凄くね」
「われが怖いとは思わぬのか?」
ハーメルンは、失う恐怖があった、地下にいた頃の、メルヒェンを容易く屠ってきたはずなのに、仲間を、グレーテルを失うのがこんなにも怖い。
「私を満たすのは未知なるモノの解明、それとお菓子ね、大丈夫よ、もし危なくなったら、ヘンゼル兄さんと一緒に離れるわ」
「うん、僕、頑張って逃げるよ」
「――こうきゃい、後悔……しないのか」
「後悔?、そんなモノにふけるくらいなら、もっと調べることに頭を回すわ」
「……良いだろう、われも、一人は寂しいと思っていたところだ」
「そ、じゃあ……行きましょうか」
ヘンゼルとグレーテル、そしてハーメルンは、地上に出た夜に、血戦都市を離れ、旅を始めたのであった。