神獄塔メアリスケルター AnotherFinale 作:謎のコーラX
その日は、満月が綺麗な夜だった、月見を楽しむために、休暇もかねて、血戦ビルの屋上に私は足を運んだ。
そこには既に先客がいた、ドロシーだ、ドロシーは一人、柵の上で月を見上げていたんだ、何時もの笑顔ではなく、とても悲しそうな表情を浮かべて。
「……あ!、マリアチャイルドじゃーん!、どしたの?、こんな夜中にさー!」
私を視認すると、ドロシーは何時もの笑顔を作った、だがあの表情を見たからだろうか、私には今のその笑顔がとても作り物に見えてしょうがない。
「あぁ、私は少し月見にね、団子も持ってきた……少し話でもするか」
「するするー!」
私は台にピラミッド型に乗せた団子を置いて、座ってあの月を見ることにした、隣にドロシーをそばにおいて。
「……なぁ、ドロシー、貴方、この都市に来て、楽しいと思ったことがあったか」
「そだねー、楽しいよー、皆優しいしさ」
「ぐぅっ!」
嘘だ、それもかなりの嘘だとこの胸の痛みが教えてくれる。
「……ここでは貴方を楽しませられないみたいね」
「――ごめんね、ワタシ、
ドロシーの表情が再びあの悲しいものとなった。
「なら、どうすればいい、貴方は頑張ってくれてる、私は本気で楽しんでほしいんだ、この世界で」
「……ふふ、優しいことで、もっと堅物だと思っていたのに、これは新しい発見ね」
ドロシーは団子を摘み、口に入れる。
「おいし……ねぇ、マリアチャイルドさん、もし、やり直せるなら、世界を変えられるなら、きみはどうしたい」
不思議な質問だった、やり直す、世界を変えるか、私は後悔は既に過去に置いてきた、けど、そうだね。
「……私は変えたいかな、おじいちゃん達からよく聞くね、メルヒェンがいない、こんなにも世界が歪んでない、平和な綺麗な世界……私はそれを見てみたいかな」
「なら!、ワタシに」
「けど、駄目なんだよ、それはここで生きる人々を否定すること、失った者達の否定、私はそれを背負って、生きていかないといけないんだ」
「……偽りを重ねた答えね」
一瞬、泣きそうな顔をしたかと思うと、怒ったような顔からまた笑顔を作る。
「何か言ったかな」
「うん、マリアチャイルドさん、きみはそんな人だ、自分というモノを押し殺して、否定して、我慢して、人々のために、その血液の一滴さえ捧げる、そんな人だよ」
ドロシーは立ち上がり、杖に乗って宙を舞う。
「……ワタシはワタシがやるべきことをする、この世界のために、悲しみをこれ以上生み出さないために」
ドロシーはそう言って去っていった、また会えると、この時はそう思っていたんだ。
――1年、ドロシーはそれ以来姿を見せなかった、何か悪いことをしたのか、あの時、ワタシに、いったい何を言いたかったのだろう。
その答えは、今ここにあるのだろう。
○
「はぁぁぁぁ!」
空中にてドロシーはいくつもの巨大な火の玉を作り、マリアチャイルドに向けて放つ、それをマリアチャイルドは刀で斬って落とし、メアリガンをドロシーに向けて発射する。
「ぐっ!」
ドロシーの肩に命中し、その口から濁った血液が吐かれる。
「ぬぁぁぁ!!」
ドロシーは地面から神獄塔の半分ほどの巨大なブリキの人形を作り上げる、その拳をマリアチャイルドに振り下ろす、大きな破砕音が響く、マリアチャイルドは、光線にて、ブリキの人形の腕を溶かし、そのまま跳躍して、ブリキの人形の頭を切り落とした。
「何故だ!ドロシー、貴方は人々の信頼を裏切るのか!」
ドロシーから放たれる様々な属性の攻撃を避け、当たりながら、空中にいるドロシーに向かっていく。
「ワタシはワタシがやるべきことをする!、こんな歪んだ世界を救済するために、ワタシはこの世界を否定してでも、ワタシは全世界の不老不死を目指す!」
更にドロシーは攻撃を激しくしていく、それでもマリアチャイルドは止まることはない、傷つき、焼かれ、貫かれても、そして、その刀がドロシーの胸に突き刺さる。
「私は……人間を守っていく、そのためなら、たとえ違った価値観の正義だろうとも、私は己を貫く」
「ごふっ……ふふ、強い、強い
二人は落下し、地面に転がる、ドロシーから気配を薄まっていく、マリアチャイルドはドロシーの死が近いことを予感する。
「私は、それが世界のためなら、強いだけでもいい」
「――あはっ、後悔はしないだろうけど言っておくよ、その正義が、近いうちに、敵を生み出すことになるだろう――予言して――あげる」
ドロシーはそう言って目を閉じ、動かなくなった。
「……」
マリアチャイルドは傷だらけの身体で、血戦都市に向かって歩き出した。
○
勝った、殺した……だが、それは生まれた。
伝令から噂から聞いた、世界の都市が壊滅したと、一人は糸を使い、一人は氷を使い、一人は黒い光を使うと、世界に悪夢に包まれた、残されたのは血戦都市のみ……やつらはこう名乗った、悪夢を生み出す者、世界を救う者、
○
「……なるほど、で、殺したはずの、ドロシーが生きていたとね」
「えぇ、正直言って驚いたわ、確実に死んだと、そう思えるほどに死体となっていたのに」
「……赤ずきん、シンデレラ、どう思う、マリアチャイルドの印象」
二人は数秒考えた後、口を開く。
「あんたにも正義があるんでしょうね、でもまっすぐすぎる気もするわね、別の道あっても自分の信じた道行くでしょあんた」
「わたくしは少し羨ましいですわね、悪いことを考えないその姿勢は」
「……そうか、マチ、貴方は私のことをどう見ます」
「どうも、マチはマチの信じた道を行く、正義とか悪とか関係なく、仲間を守る、助ける、そしてマチが間違っているなら、仲間にたすけてもらうよ」
「そうですか……話は以上ですか、では、また明日」
「おう、またね」
3人が去った後、マリアチャイルドは屋上に向かった、今日もまた、綺麗な月が浮かんでいる。
「――最初の友達……そう思っていたのにね、ドロシー」
一人、月を見て、団子を食べる、マリアチャイルドだった。