神獄塔メアリスケルター AnotherFinale 作:謎のコーラX
僕は護りたい、アリスを、皆を、でも僕にできるのは誰かの盾になるか、支援することしかできない。
じゅうぶんだと皆は言う、だけど僕はただ皆だけに戦わせるのは辛いんだ。
そうだ、だからこれは妥協に近いのかもしれない、イッスンさんの申し出を受けて、地上の血式少年の皆さんのように戦う力を得るために。
でも駄目だったんだ、正直に言ってしまえば才能がない、元から“殺す“という行為に抵抗があったのだと思う、メルヒェンの死は慣れているけど、今相手する敵には人型がいる、
――無理だろう。
躊躇い、殺されると、イッスンさんは言っていた、その次に、その優しい心、絶対に捨てるなよとも言っていた。
これからも僕は、仲間を護るだろう、戦えなくても、僕はそれだけはなんとしてでも成し遂げるつもりだ。
○
「はん……綺麗事、甘くて愚かな考え、それができたのは運が良かっただけでしょうに」
「えっ!?」
いつの間にか、ジャックは何処かの廃墟に立っていた、知らない場所だ、壊れた家屋、小さな光が数え切れないほどにたくさん見える夜空が広がり、本物の月が辺りがほんのりと明るく照らされている。
明らかに地上の風景だ、しかし、見たことない場所にいる、夢なのだろうとは思ったが。
「夢じゃないからね、これはお前と
月明かりに照らされて、今ジャックと話している人物が姿を見せる。かぐや姫のような和服を着たジャックと同じくらいの少女だ、しかし、髪は白く、頭からは角が、肌は青白く、広角の上がった口の端からは牙らしきものが見え、瞳は青く目線は鋭く、獣のようにこちらを見据えている。
「そう、わっちは
「……きみは誰なんだい」
ジャックは数々の疑問を一度思考の端に置き、まず目の前にいる彼女が誰なのか聞いた。ジャックの記憶の中の
もしそちらなら話し合いができるのかもしれない、だから今は、彼女が何者なのかを探ることにする、この考えが筒抜けであっても。
「ふーーむ」
少女は諦めた様子でしかめていた表情を緩め、話し出す。
「うん、ごめんわかんない、わっち自身、今ここにいること自体がわからないし、記憶も殆どさっぱり真っ白、どうしようね本当に」
なんとなく本心なのだとジャックは理解する、不思議な感覚だが嫌な気はしない、一応は警戒は解いてもよさそうだと思い、少女に一歩ずつ近寄っていき、だいたい3メートルほどまで来ると足を止める、その際特に少女から何も言われず、攻撃しようとしもしてこない。
「あの、なんて呼べば良いんだろう、きみのこと」
「好きに呼べばいいよ」
「好きにって……」
「ふむ、困らせてしまったか、そうだな……」
少女は地面に生えている花を見つけ、その花の部分だけをその手の鋭利な爪で切り裂いた。少し少女は満足げに見えた、もしかしたら自分も?、と少し思い、若干引いた。
「ん、そうだね、リッパーとかどうかな?」
「リッパー……切り裂く?、花のほうじゃないんだ」
「
「やっぱり僕の思考が読めるみたいだね、僕はわからない感じだけど」
少女改め、リッパーの感情はなんとなくわかる、近くに来てみたらそれが不思議とそれが濃くなったような気がする、今のリッパーの感情は不安 それと好奇心。そのようなことがジャックは頭の中に浮かんだ。
ここが普通の場所ではないのは確かなのだろう、夢と違い意識は明瞭、足を踏みしめる、夜の風が冷たいという感覚もある。
本当によくわからない場所だ、でもまずはリッパーからの話を聞こうと耳を傾ける。
「まずわっちが知ってることだと、今わっちとジャックは一心同体ってところかな、ほれ」
リッパーが腕をつねる、するとジャックにもそこと同じ痛みのような感覚がする、試しに自分もと頬をつねる、やはりリッパーにも同じところが赤くなっている。
「不思議でしょ、それとそちの考えはわっちはわかるが、そちは別のモノがわかる感じかな?」
「うん、僕はきみの感情がわかる感じみたいだ、今は好奇心と不安……と、侮蔑?」
「うん当たり、ジャック、そちは本当に愚者だね、それほどまでに理想的な現実を味わってきたのだろう」
「理想的な現実?」
その言葉に、少し眉をひそめる、しかし確かに僕が思い描いた、理想にほぼ近い世界なのだろう、今までも一人も死なずに、つうや人魚姫も復活して、辛くても皆生きてる今は本当にその言葉がぴったりなのだろう。
「今までは良かったが、だがこれからはどうする?、正直言って護れるか怪しいところだ、相手はナイトメアなど雑魚とも思える連中だぞ」
「
「少しね、記憶におぼろげながら恐怖が染み付いている、今までがハードならこれからはベリーハード、ジャック、それでも護る
「……何か力があるのかな」
リッパーの話しぶり、試すような感情が流れてきて、そうなのだろうかと思う。
「まだわっちとしても測りかねているけどね、ジャック、
「受け入れる?、それってどういう」
「わからん、とりあえずイエスかノーか言え」
「い、イエス」
ほぼ即答だった、力があるなら欲しい、護るだけではない戦う力が、それを聞くとリッパーの姿がおぼろげになっていくのが見える。
「ま、とりあえずはここまでかな」
「え?、ちょっと!、ここから出る方法は!」
「知らん、勝手に目覚めるんじゃないかな」
「そんなむちゃく――」
リッパーが完全に消えた瞬間、ジャックは目が覚める。
「ちゃ……な」
昨日眠ったベッドの上、確かな朝日、見覚えのある部屋、どうやら戻ってきたようだと、帰ってこれて良かったとジャックは安堵し、起き上がる。
「よっ、おはようジャック」
ふと、何処からか先程まで聞いていたリッパーの声が聞こえた、声のした方向、部屋の隅に目をやると、そこには確かに、リッパーの姿があった。
「えっ……えぇぇぇぇ!!」