神獄塔メアリスケルター AnotherFinale   作:謎のコーラX

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ネタバレ全開でいきます、二度目ですがメアリスケルターFinaleのネタバレがあります、ご注意ください



















18話 救われぬ者と救われた者のその後

一人、ある老人が歩いている、老人は流れに沿うようにある者の命令を受けて行動した、思考に靄がかかり、まともに抵抗できなかったが彼は知っている、あの存在は自分の敵だと。

 

「……ふむ」

 

老人の身体が崩れていく、いな、()()()が解けているのだと、老人は考える。

 

その姿は数分のうちに変貌した、少年がそこには立っていたのだ、眼鏡を整え、思考する、今の状況はどういうことなのかを。

 

「これはどういうことなのだろうか、私、いや()は確かにあの監隊塔で終わっていたはずだ、妻と再開し、ああは言ったが死んだとは思っていたさ……そうだ、妻は今何処にいるんだ」

 

『ここにおりますわ』

 

少年の頭の中から声が聴こえる、見知った声だ、その声がすぐに妻だと気づき、安堵するが、思考はまだ止めない。

 

「これは妻の意識と僕の意識が融合されたのだろうか、だが誰がなんのために?、いや、そもそも僕は本当に僕なのだろうか、擬態化にはマモル達や僕のような例がある、そもそもこの世界だ」

 

少年は遠くに目を向ける、そこには荒廃した、侵食された大地があるが、ある一点だけ緑が、綺麗な建物がそこにはあった、復興にしては早すぎる、あのデジャブしか感じない地下でのこともある、だとするならば。

 

「……この世界全てが擬態化によるもの、そしてあそこにあるのはその擬態化が解けたと言ったところか、ジャック達は監隊塔のウィッチクラフトに無事願えたか。さて、アイツの動向も気になるところではあるが、まずは僕がどうすべきかだな」

 

『あなたの好きなようにするべきでしょう』

 

「……そうかもな、僕は()()()、今再び、彼女らと共に進むべきだろう」

 

ジュウは血戦都市に行こうとするため歩を進めようとした瞬間、妻が先程までよりも強い声で叫ぶ。

 

『ジュウ!、上です!』

 

今の名前を、ジュウの名を妻が言うよりも少し早くに、ジュウはその場から飛び退いた、その直後、ジュウが元いた場所に拳が振り下ろされ、地面を抉った。

 

「ふん、やはりそう上手くはいかないものだな不意打ちは、害虫の分際でも察知能力は高いことは知っていたからな」

 

ジュウはその顔に見覚えがあった、服こそ黒いフード付きのローブになっていてもわかる、元の世界での黒幕――。

 

「賀東か、お前もこっちに来ていた、いや、蘇ったが正しいか」

 

「まさか貴様の顔を2度も見る事になるとはな、まぁいい、これで最後なのだからな」

 

賀東が指を鳴らす、すると一人の少女が彼の側に空から現れた。

 

処刑台少女(ジェノサイド・ピンク)なのは確かだろう、しかしまるで見たことない少女だ、髪は綺麗に切り揃えられたボブカット、ゴアスーツらしきその服装はギロチンのようなスーツにプレートの鎧を身に纏い、角は額からの一本角、武器は丸みを帯びたメイスのようにも見えるが、持ち手には柄の部分に何か回転しそうな部位がつき、メイスの殴打部分には割れそうな切れ目が4つあり、開く仕組みがあるのだろう、それがどのような使い道かは考えるのも恐ろしい。

 

「一応紹介してやろう、苦悩の梨だ」

 

「……どうも」

 

苦悩の梨と呼ばれた少女は一礼する、明らかに敵意と呼べるものは感じられない、今まで見てきた3人は性格破綻者ぶりを見せてきたが、目の前の苦悩の梨と呼ばれた少女は武器を持っていなければ無口の普通の少女にも見える。

 

「……ごめんね」

 

苦悩の梨はそのメイスを構え、一瞬で間合いを詰める。

 

(やはりはや――!)

 

なんとか避けようにも身体が追いつかず、そのまま苦悩の梨のメイスのフルスイングをくらう、メキメキという腕と肋骨から鈍い痛みが伴う音が響き、ジュウは3メートルほど滑空した後、地面に転がった。

 

「ぐぁ……くっ」

 

息ができない、肺が痛い、骨が刺さってはいないだろうが、強い力が加えられ、空気が通らないのだろうと痛みの中でなんとか思考する、苦悩の梨はそのままゆっくりとジュウにトドメをささんと歩み寄ってくる。逃げなければ、このまま寝転がってれば死ぬのは確定だ、しかし、身体は起き上がることはできずにただ悶るだけ。

 

(くそ、こんな死に方では、駄目だろう、まだこの擬態化世界のことを何も知らないと言っていい状況で……)

 

苦悩の梨はジュウの頭の前で歩みを止め、また「ごめんね」という言葉の後にメイスを振り上げる。

 

「すまない、赤ずきん……」

 

メイスはそのままジュウの頭に振り下ろされる。

 

 

――ことは無かった。

 

「ぐっ!」

 

誰かが苦悩の梨にぶつかり、彼女はそのままよろめき、攻撃してきた相手を睨む。

 

「だれ」

 

「正義の味方……なんてね!」

 

ジュウを救ったその男は、その顔はジャックに似ているが、野性的な笑顔はとても彼にはできない表情だ、

 

「間に合ったようで何よりだよ」

 

その彼の後ろから一人の女性が現れる、ジュウは直感的だが、理解できた、知り合いだと、気配から、声音から、そして内なる妻から。

 

『ジュウ、あの人、ワタシ知ってる、いや、もしかして――!』

 

妻の声に涙声と呼ぶべき、感嘆の声音をしていた。

 

既に会っているのだ。老人の身体、博士と呼ばれたときに、その時の女性は名をフユと名乗っていた。だが今ならわかる、驚嘆、ありえない、不可思議、彼女はここにいるはずのない存在なのだ。

 

『姉さん!』

 

「チェシャラミリカ!」

 

二人はフユを()()での、本来の彼女の呼び方で叫んだ。

 

「改めて久しぶりだね、ハウテハロデ、それにチェシャラエミィ」

 

正体を明かすように、フユもまた二人の母星での呼び名で応えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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