神獄塔メアリスケルター AnotherFinale 作:謎のコーラX
「………変わらないな、ここの空は、あれから数年経ってるのに」
ワタシは、タワーの頂上の柵にもたれながら、今までのことを思い返していた。
その中には、地上のこと、ジェイルのことなど……そして研究のことが頭の中に思い浮かんでいく。
「……よう」
「……なにさ、ハル」
隣にはハルがいる、ハルはここの携帯食料を食べながら、言葉を続ける。
「お前、なかなか嫌われているな、ここに来るまでにお前の悪口が凄かったぞ?」
「事実、だからね」
「そうかい、
「そうかもね……はは」
ワタシの口から乾いた笑いがでる、昔なら笑えていた筈なんだけどね。
「よく、顔を出せたな、フユ」
後ろから聞き覚えのある声がする、いや、少し低くなったが、ワタシは振り返る、そこには牛若丸がいた。
「牛若丸か、どうしたのかな、ワタシとは顔を合わせたくないと思っていたんだが」
「今だってそうだ、昔のお前だったら地上に出ていたらすぐに殺そうと思っていた、いたんだが……!」
牛若丸は肩を震わせる、あぁ、この子は本当に人の変化に敏感だな。
「なんなんだよ、その後悔した目は!、昔ならあんなやつらを置いていくお前が!、なんで長なんかについて!、徳にならない人の運命を変えたりしてるんだ!」
「……ゴメンとは言わない、ただの、心変わりってやつかもね」
「――!」
牛若丸は憤怒の表情で腰の刀を抜き、歩を進め、ワタシを斬りにかかる。
あぁ……本当に、すまなかったわ、牛若丸……マリア。
○
曰く、私は一人目の血式少女であり、未知の血式少女らしい、私は検査などを行った、白く清潔で、空気も美味しい。
黎明、メルヒェン、ナイトメアから人々を護る組織らしいが、既に戦える人は少ないらしい、ほとんどをナイトメアに殺されている、そんな時にフユが現れた、数々の知恵を与え、壊滅に近かった黎明を立て直した、本人は研究員としてだけでいたいらしく、長にはなりたくとのこと。本部として今だに無事な建物の多い都市の中心にあるビルだ、私もそこで生活をしている。
あれから3日、私はフユに連れられて、研究室に訪れる、そこには、一人の私と同じくらいの少年がいた。髪は黒く、顔も整っていて、イケメンの部類だろう。
「おぉ!、きみが僕のお嫁さんになる娘かい?」
「……は?」
第一声がこれである、なんなのだろうこの少年は。
「うーん、でも発展するような胸してないからねぇ、ゴメン!」
「ははは……フユこいつ殺していい?」
「駄目だ、コイツは牛若丸、オマエと同じメルヒェンの因子を宿す、血式少年だよ」
「よろしく!えっと名前なんだっけ?」
私は牛若丸から差し出された手を速攻ではたき落とす。
「マリアだ」
これが私と牛若丸の最悪の第一印象からの出会いだった
それから一年、私は4歳になり、言葉もそれなりに喋れるようになった、
「ちょっと!、マリアちゃん!、聞いてでありますー、旦那がさぁ」
「はいはいなに?、また喧嘩でもしたのかな」
あんとは最初に出会って以降はよく話すようになった、他の人と話していると、なんだか胸が痛くなるものだから、この人と話しているのが一番楽というのもある。そして私の部屋に突然上がりこんで、お酒を飲み始めたあん、完全に酔ってる感じで、机にもたれかかってる。
「そうなんでありますよー!、アスカのやつせっかく作った料理をもう食べてきたって言って残していったんでありますよー!、そういうのはほうれん草してくれでありますー!」
「はいはい、悲しかったねー、でも仲直りは早めにねー」
「うぅ、マリアちゃんありがとうございますでありますー」
私はあんを私の膝に移動させた、何時ものことだけど、この日々は悪く無い、だって、心が一番楽になる時間だから。
「そういえば、なんで私の名前はマリアなんです?」
私には名前が無かった、本来血式少女は名前を自ずと持つらしいが、そういうものは私には無かった、そんな時、あんが私につけたのがマリアだった。
「んー?、そうでありますねぇ、白くて綺麗な髪とかー、癒やされる顔とかがー、聖女様って感じがしてそんな名前つけた感じー、であります」
「ふふ、なにそれ、まぁ聖女っていうのも悪くないですね」
「でしょー――ズガァ」
「あ、寝ちゃった、まったく、だらしないんですから」
私はベッドにあんを寝かせた辺りで、扉が開き、フユが入ってくる、フユということはつまり。
「実験の時間だよ、マリア」
「……はいはい」
私は、研究室に連れられ、そのまま硝子のケージの中にはいった、それなりに広さがあり、目の前にはメルヒェンが立っている、何時もは毒物を見るような目で引き下がるが、栄養がなく、半ば凶暴状態だ、まぁもう一つ理由があるが。
「……それじゃあ、開始」
フユが指を鳴らすと、メルヒェンは私に飛びかかる、そのまま私の腕に齧りついた。
「っ――!」
痛い、肉が潰れ、骨が軋む、けど、反撃はしてはいけない、今はそういう実験だから。
「ギギィ!……ギ?」
数分経った辺りで、メルヒェンが腕から離れ、もがき苦しみだした、そのまま口からピンクの血を吐いて動かなくなる。
「ふむ、血液を致死量手前まで抜いて、別の人の血を輸血したが、なるほど、効力が現れるまで時間はあったがそれなりに薄くても良さそうだな、さて残りの血で
私にそれだけ言って研究室の奥に、フユは消えた。
あぁ、本当にこれは慣れない、クソみたいな実験、もう一年経つけど、人の命を度外視してるモノが多い、ブラッドスケルター化だったり、限界まで戦闘させられたりと、本当に嫌になる、けど……。
「……ここは」
どうやらあの後私は倒れていたらしい、齧られた右腕は包帯が巻かれ、私は病室のベッドの上だ、そして隣にはあんが寝ている、目元に涙を跡があり、哀しんでくれていたのだろう、本当にこの人はいい人だよ。
「……?、そういえばここから目の前のベッドには妊娠していたマービルさんがいたような……あの!」
私は看護師を呼んだ。
「なんでしょう」
「あの、あそこにいたマービルさんは何処に?」
「……退院されましたよ」
ふと、胸に痛みが走った、まただ、牛若丸やあん以外と話すとこれがあるんだ、本当になんだろう、と、子供の私は思った。
「そうですか、また会えると思っていたんですけどね」
「……ん?、あ!、マリアちゃん!良かったであります!、どこか痛いところは無いでありますか!?」
「いや、特には」
「良かったぁ、あ!、リンゴ持ってきたでありますから食べるであります?」
「……食べる」
「了解であります!」
あぁ、本当に心が楽になる、こんな日々がこれからも続くと、そう思っていた、私は……。
「退院されましたよ」、その言葉に疑問を抱いていたら……私は、後悔せずにいられていたのかな。