NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION   作:ASNE

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難産だった……。


Second contact(後編)

その日の2-Aは、朝から大盛り上がりであった。風の噂で転校生が、しかも二人入ってくると言うのだ。男女ペアで、どちらも美形だというのである。

「聞いた聞いた?」

「転校生でしょ?楽しみだよね~!」

「美形って聞いたけど、カッコいい系かなあ?」

女子たちと同様に、男子たちも浮足立っていた。

「女子も居るってよ!」

「噂によると、すっげー美人なんだってさ!」

「ワンチャンデートとかも……!」

そうしてはしゃぐ男子たち。しかし、そういうのに喰いつくはずの少年、相田ケンスケは何故かむすっとしていた。彼らしからぬ行動に怪訝そうに思った親友、鈴原トウジは彼に声をかけた。

「何や、不満そうやなケンスケ」

「……別に」

そう言ってそっぽを向いたケンスケ。こりゃ駄目だ、とトウジは委員長に話しかけに行った。

(どうして情報が何もないんだ……!)

この少年、相田ケンスケは実は父がNERVに勤めており、先日噂になったパイロットについて勝手にハッキングして情報を得ようとしていたのである。……しかし、彼はパイロットが同世代、ということ以外何の情報も得ることが出来なかった。

それもそのはず。エヴァンゲリオンの関連情報、そのすべてのアクセス権限が一気に引き上げられ、ケンスケの父のアクセス権限では閲覧不能になってしまったのである。この措置は、シンジたちチルドレンの身に万が一があってはならないとゲンドウの指示によって行われた。

 

そして教室内がざわざわしていると、教室の前のドアが開いて担任の老教師が入ってきた。ぴたっと教室内の会話が止まり、生徒たちはしゅばばばと自分の席についた。

「……よし、綾波以外全員居るな。さて、もう知っているとは思うが転校生が二人今日から君たちの仲間になる。入って来なさい」

開いたドアから二人の真新しい制服を着た生徒が入ってきた。一人目は中性的で華奢な、優しそうな美少年。二人目は豊かな長い茶髪を赤いリボンでポニーテールに纏めた美少女。二人は教室に入るとすぐに自分の名前を書き、クラスメートたちに向き直ると微笑んだ。

「「みんな、よろしく」」

次の瞬間、クラス中が男女共にどっと騒ぎ出す。予想以上の歓声に、シンジとアスカも若干引いていた。

(「シンジ、うちのクラスってこんなに居たっけ?」)

(「多分、僕が短時間であっさり使徒を倒したから、被害が少なくて疎開する人も少なかったんじゃないかな?その影響で前よりも人数が減ってないんだと思う」)

こしょこしょと話をした後、二人は老教師にある提案をした。

「あの、先生。これ、一時間目自習にした方がいいんじゃないでしょうか……?」

「アタ……私もそう思いました。一人ならともかく二人だから収集が付かないと思いますし……」

若干呆れ顔の二人の提案に、老教師も一つ頷くと生徒たちに指示を出した。

「……では、一時間目は自習とする。出席は二時間目に改めてとるのでそのつもりで。二人の席はそことそこだ。洞木、後は任せる」

「は、はい!」

二人の席を指さした後、老教師は出席簿を抱えて教室のドアをガラリと開けて出て行った。彼が出て行ったのを確認すると、アスカは一つ咳払いをしてクラスメートたちに向かって話し始めた。

「コホン。……さて、色々聞きたいことがあると思うけどまずは簡単に自己紹介から。アタシの名前は、惣流・アスカ・ラングレー。名前から分かると思うけど、アタシは純粋な日本人じゃなくて日本人とドイツ人のクオーター。四分の一だけ日本人の血が入ってるってこと。ママがハーフだったからね。で、この度一身上の都合により日本に来日してこのクラスに転入してきました。ここまでで、何か質問は?」

すると、複数人が一気に話し始めてまたうるさくなり始めたため、ヒカリが一喝した。

「こら、アナタたち!二人が困ってるでしょう!?」

『……』

怒ると怖いと分かっているため、生徒たちは一斉に口を噤んだ。

「これでいい、惣流さん?」

ヒカリの名前の呼び方に一瞬寂しそうな笑みを浮かべた後、アスカは静かに微笑んだ。

「アスカでいいわ。……質問がある人が居れば、手を上げてね。はい、そこの貴方」

間髪入れず上がった手の中から一人を選び、その質問を受けた。

「えっと、趣味は?」

「趣味、ねえ……。特にないかな。まあ、ショッピングとかカフェとかは好きだけど。次」

「ドイツに居たってことは、ドイツ語ペラペラ?」

「そうよ、日本語も話せるけどまだまだ勉強中」

「彼氏は?」

三回目の質問で割とガチなものが来たため、アスカはシンジと顔を見合わせた。

「……その質問は、割と時間かかるから”シンジ”の自己紹介の後でいいかしら?」

「あ、はい……」

『……!』

アスカがシンジを呼び捨てにしたため騒ぎ出し、その関係について察する者も出てきた。

「……じゃあ、”アスカ”からバトンを受けたので自己紹介させてもらいますね。僕の名前は、碇シンジ。父の仕事の都合で十年ほど親戚に預けられたのですが、この度この街で働く父に呼び出されて転校して来ました。では、質問をどうぞ」

今回もまた次々手が上がる。先程は男子の方が多かったが、今回は逆に女子が多い。

「スポーツは得意なの?」

「いや、全然。どっちかっていうと部屋でまったり過ごしたい派かな」

「じゃあ、何をするのが好きなの?」

「家事全般かな。あ、後、習ってたからチェロが弾けるよ」

「……惣流さんとの関係は?」

その質問をしたのは……ケンスケだった。どうやら彼は今回も、アスカに憧れの感情を抱いているらしい。

(ケンスケを傷つけたくはないけど……ここで宣言しておいた方が今後のためになるかな)

シンジはアスカを左手で抱き寄せ、アスカはシンジの狙いに気付いたのかノリノリでシンジの頬にキスをした。

『ああーッ!?』

「……こ、こーゆーことよ。アタシとシンジは恋人で……婚約者」

『婚約者ァ!?』

無理もない。彼らはまだ、十三歳か十四歳の幼い子供なのだ。この歳で婚約者が居るということが、あまりにも異常なのだ。

「そ。言っとくけど、別に親が決めた訳じゃないから。アタシら自身の意思で、お互いを一生愛すると決めた」

「外見だけじゃない。僕たちはお互いの内面を知りつくした上で、相手をパートナーとして選んだ。……ごめん、これだけは譲れないんだ」

「アタシらには、他の人を愛することは出来ないのよ。……本当に、ごめんなさい」

二人は大変申し訳なさそうに、頭を下げた。息を呑むクラスメートたち。言外に理解したのだ。……自分たちに入ることの出来る隙はないし、入ることなどもっての外だと。

「い、いいよ!気にしないで!」

「そ、そうだよ!気にすんなって!」

口々に申し訳なさそうにしている二人に対してフォローを入れるクラスメートたち。頭を上げてほっとした様子のシンジとアスカは、これからの学校生活に思いを馳せるのであった。

 

 

 

 

二、三、四時間目と授業をこなしたシンジとアスカ。シンジは知っている内容だったので普通についていけていたが、アスカは前史ではまだ来日していなかったため悪戦苦闘しながらも地頭の良さで何とかついていった。そして、昼休み。シンジはアスカと二人で昼食を食べようとしたところ、トウジに声を掛けられた。

「転校生、ちょお面貸せや」

「アタシも?」

「……そうや」

「りょーかい」

「あ、ならお弁当持ってってもいい?ついでだから一緒に食べようよ」

「か、かまへんけど……」

と、いうことで屋上のドアを開けると、既に二人ほど待っていた。

「ケ……相田君?」

「ヒ……洞木さん?」

「悪いね。俺も聞きたいことがあったからさ……」

「ご、ごめんなさい。ちょっと聞きたいことがあって……」

二人共少し気まずそうにして謝ってきたため、シンジとアスカは二人を宥め、用件を聞くことにした。

「別に謝らなくていいんだけど、取り敢えず鈴原クンのから聞きましょうか」

「あ、それだったら俺も一緒に。内容ほぼ一緒だから」

「そうなんだ……じゃあ話って何かな?」

シンジは後ろに居たトウジに向き直り、彼の瞳を真正面から見据えた。

「さっきは上手く誤魔化しとったが……おのれがあの紫色のロボットのパイロットやろ?」

トウジはシンジの瞳を真っ直ぐ見返し、単刀直入に言った。

「!よく分かったね」

「ケンスケが言うとったんじゃ。パイロットは同じ学年じゃと。さっきおまんらが”一身上の都合により”って言うた時、確信に変わったわ」

「そっか……でもなんでそれを?」

お互いの目を見て真剣に話す二人を、他三人が見守る。アスカは腕組みして背中を敷居に預け、微笑んでいた。

「妹を、サクラを助けてもろうて、ほんまにありがとう!」

勢いよく頭を下げるトウジ。シンジは困ったように笑い、トウジに頭を上げるように言った。

「……頭、上げてよ。あれはたまたま僕が気付いただけだし、保護したのは保安部の人たちだから。……もし僕が気付いてなかったら、巻き込んじゃってたと思うから、お礼は受け取れない」

「け、けんどな……」

「……シンジの言う通りよ」

なおも言いつのろうとするトウジを止めたのは、腕組みして目を閉じたままのアスカだった。

「アタシらが守らなければならないのは、この街に居る人たちだけじゃない。この世界そのものよ。アタシらNERVが負けたら―世界が滅ぶ」

『!?』

アスカの言葉に三人の顔が引きつり、シンジはアスカの言葉に頷いた。

「今回は運よく気づけたからよかったけど、敵も段々強さを増すだろうし、その分余裕も無くなる。―見に行こうなんて思わないでよ。特に、そこのメガネ」

アスカは目を開くと、ケンスケを指さしてジロリと睨みつけた。

「アンタ、NERVにハッキング仕掛けたでしょ?今回は見逃したけど、次やったらアンタら親子共々重い罰が下されるから」

「な、なんで……」

「NERV舐めんな。アタシらは、お遊びでやってる訳じゃないから。ゲームと現実は違うのよ」

十四歳とは思えない殺気をケンスケに叩きつけるアスカ。ケンスケは怯え切ってしまい、シンジは苦笑しながらアスカの両肩をポンポンと叩いた。

「アスカ、落ち着いて」

「……ごめん、言いすぎた。でも、命を守るためにも気軽にパイロットに志願したり、見に行こうなんて思わないでほしい」

「二人もお願い。僕らのせいで、誰かを傷つけたくないんだ」

二人の顔は歪み、言葉は悲痛に満ちていた。三人は思わず息を呑む。

「……分かった。もう二度としないよ」

「わしもや。……もしこいつがやらかしそうになったら、わしが体張って止めるさかい」

「わ、わたしも……二人が無茶しないようにちゃんと見張っておくから!」

アスカは後ろを向き、両手を肩に置くシンジの顔を見た。シンジは微笑み、静かに頷いた。

「……ありがと」

「じゃあ、お昼食べようか。―トウジ、ケンスケ、委員長。僕は、シンジでいいよ」

『!』

 

 

 

屋上に座り込み、和やかにとりとめのない話をする五人。その中でふと、アスカはヒカリの話したいことを聞いていないことを思い出した。

「そういえばヒカリ、アタシたちに聞きたいことがあるんじゃなかった?」

ヒカリはあ、という顔をすると一旦箸を置いた。

「昨日の午後……二人デートしてなかった?」

「「え?」」

 

 

昨日の午後、ヒカリは学校帰りにその日の夕飯の食材を買おうとスーパーに向かっていたのだが……その道中で一組の若いカップルとすれ違った。同年代であったため、思わず振り返るヒカリ。

二人は腕を組み、楽しそうに会話をしていた。

(あれ、あんな子たちうちの学校に居たっけ……)

 

 

「あー……すれ違ってたのか。あれね、アタシらこのリボンとかを買いに行ってたの」

後ろに手を伸ばし、自分の髪を纏めるリボンをつまむアスカ。

 

 

 

午前中にリツコやミサトと話した後、昼食後に二人はショッピングに繰り出していた。腕を組んだまま、今日のショッピングについて話す二人。

「リボン?」

「そ。髪型、ポニーテールにしようかと思ってさ。纏める用に欲しいなって」

「……いいんじゃない?」

「それと、シンジの服も見繕わないとね♪」

「ええ!?」

てっきりアスカの買い物だと思っていたシンジは、自分に飛び火させられたため驚愕した。

「だぁって、シンジ顔はいいんだから……もっとオシャレしないとね♪」

「え~……」

自分に拒否権がないことを悟ったシンジはガックシとなり、アスカは隣でクスクス笑う。ちょうどその時、二人はヒカリとすれ違っていたのだ。

その後二人はお互いに服を選んで着せ替えをし、シンジはアスカに赤のリボンをプレゼントして喜ばれたのは余談である。

 

 

 

 

それから二週間程は、平穏な毎日が続いた。シンジ・アスカが学校に通い始めてから一週間後には傷が完治していないもののレイが学校に復帰し、レイを加えた六人で一緒に行動するようになった。レイは五人と一緒に過ごす中で少しずつ失ってしまった感情を取り戻してゆく。

 

 

とはいえ、シンジたちチルドレンは何もしなかったわけではない。放課後、二日に一回はNERV本部に行って訓練を受けた。その訓練は―銃を使った生身の戦闘訓練であった。

おそらくほぼすべての使徒を殲滅した後、NERV本部はゼーレとの決戦の場になるだろう。戦自が動くかどうかはまだ定かではないが、本部の直接占拠を狙って戦闘部隊を送り込んでくるはずだ。それに加え、敵対する組織や世界の覇権を狙う組織がチルドレンの身柄を狙ってくる可能性は、決して低くはない。ミサトが己を庇って銃撃戦を行い、負傷して命を落としたことを知るシンジは自ら志願し、アスカも同調して志願した。ミサト達は逡巡したものの、その覚悟を汲んだ加持が教官役を引き受け、スパイの洗い出しの合間を縫って二人に訓練を施した。飲み込みの早いシンジと、長く訓練を受けたアスカは銃の扱いの基礎をこの二週間でものにし、今では密かに帯銃を許可されている。

 

 

 

お弁当を食べた後、シンジは屋上に寝転んでS-DATの音楽を聴き、アスカはその片方のイヤホンを借りて隣に寝転ぶ。レイも真似をしてアスカの反対側に寝転び、穏やかな時間が流れていた。

―だが。

「「「ピリリリ!」」」

その三人の電話が同時に鳴り、雑談をしていたトウジたちは中断して三人に目線を向けた。

シンジたちは飛び起きると、急いで身支度をして屋上から出るべく立ち上がる。

「センセ、もしかして……」

「……うん、来たみたいだ。三人はシェルターに」

「くれぐれも、出てこないでよ!」

「……じゃあ、また」

三人は足早に屋上のドアを開けて出てゆく。トウジたちは彼らを見送った後、急いで教室に戻るべく立ち上がった。

「ほんなら、行こか。……ケンスケ、分かっとるとは思うが……」

「行かないよ。―碇たちが真剣に命がけで戦ってるんだ。邪魔は出来ないよ」

そう言うケンスケは、何か憑き物が落ちたような表情をしていた。トウジとヒカリは微笑んだ。

「じゃ、二人共。避難しようか!」

「おう!」

「ああ!」

 

 

「……税金の無駄遣いだな」

使徒襲来とはいえ、すぐにエヴァンゲリオンが出撃出来るわけではない。国連軍にも面子があり、威嚇射撃が間断なく撃ち込まれている。……A.T.フィールドに阻まれているため、何の意味もないのだが。

「委員会より再び、エヴァンゲリオンの出撃要請が出ています」

青葉がそう報告すると、ミサトは不機嫌そうに愚痴をこぼす。

「うるさいやつらね……言われなくても出撃させるわよ。初号機に繋いで」

エヴァ初号機との通信回線が開かれ、モニターに”二人”のパイロットの姿が映し出された。操縦席に座るのは……なんとアスカ。後ろに仮で増設されたシートに、シンジが座る。

「いい、アスカ、シンジ君。手はず通りにお願い」

『分かってるわよ。そっちこそ、へましないでよ?』

『アスカ……すみません、こっちは大丈夫です』

「日向君、例の物は?」

「既に、ポイント208にスタンバイしてます」

「タイミングはこちらで測ります。誘導お願い」

『『了解!』』

 

何故アスカがシンジと共に初号機に搭乗しているのか。そして、彼らの作戦とは一体?

 

To be continued......

 

 

 

 




トウジたちとのファーストコンタクト(二度目)は何とか穏便に終わりました。
チルドレンに帯銃させたのは、この章の終盤から次章にかけて対人、対組織がメインになるので自分の身が危険に晒される機会が多くなるためです。より戦いが、現実味を帯びていきます。
そして、エヴァ初号機に乗るアスカ。この謎の答え合わせは、次回まで持ち越し。




何とかシャムシエルを撃退するも、心の不安定な部分が垣間見えるシンジ。
一方レイは、肉体と魂の在り方に、疑問を抱く。
次回、NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION
「Mind and body」
さあて、次回もサービスサービスゥ!
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