NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION   作:ASNE

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―心の傷は、未だ癒えず。


Mind and body(前編)

時を遡り、日を改めて対シャムシエル戦の作戦立案を葛城家で行っていたのだが……(加持は裏の洗い出しのために不在)。

「え?アスカが乗るの?」

意識の外にあった提案に驚くミサト。アスカはコクリと頷くと、詳しい説明を始めた。

「正確にはアタシとシンジが、だけど。いわゆるタンデムシンクロね」

「……それは、何故?シンジ君とレイはパーソナルデータが近いから互換性があるけど、あなたとシンジ君じゃあ……」

リツコが抱いた疑問はもっともである。前史でアスカが相互互換の試験実験を行わなかったのはアスカが拒否したから、ということもあったが、実はアスカのパーソナルデータではシンクロできる確率は低いと考えられていたからだ。

「ま、確かに”以前までの”アタシだったら無理だと思うわ。でも今のアタシは……リリスの力に覚醒したからレイと同じリリスの遺伝子が組み込まれている。その点では、レイのパーソナルデータに近づいたはずよ」

「「!」」

先日シンジとアスカの話を聞いた時、彼らが使徒の力を覚醒させ、ヒトの域を超えたことは既に聞いていた。その副次的な効果が、アスカの遺伝子に現れていたのである。

「確かにシンクロ率の扱いで言えば、僕の方が上です。でも……戦闘技術の方は幼い頃から訓練を受けていたアスカの方が圧倒的に上なんです」

シンジはそう言うと、リビングのテーブルの上にこの間書いた使徒に関するレポートのシャムシエルのページを取り出した。詳細な資料を見ようと、大人二人がが身を乗り出して覗き込む。

「今回の使徒の武器は光の一対の鞭のみ……のはずです。学習進化で新しい力を手に入れている可能性もありますが……とにかくこの鞭は厄介ですよ。僕の反射神経じゃとらえきれないスピードで飛んでくるし、パレットガンは効果なしなので……突撃してプログレッシブナイフで攻撃を喰らいつつ仕留めなければ倒せませんでした。……これはどの使徒にも言えることですが……確実に仕留めるにはナイフか格闘戦で近距離から攻撃を浴びせるしかありません。または……超火力の遠距離攻撃しか効きませんでした。なので技術部の方たちには、強力な近接武器を用意してほしいんです」

「確かにそうね。射撃はほぼ牽制にしか使えないだろうし……シャムシエルには取り回しの良い拳銃だけ用意してくれればいいわ。後は……奴の動きを封じれるものが欲しいわね」

二人が腕組みして指を顎に添えながら言うと、ミサトが何か思いついたようだ。

「確か使徒捕獲用のネット、あったわよね。リツコ」

「ええ、あるけど……」

「それを上手く使えば鞭を封じれるかもしれない。次の使徒の武器って鞭だけなのよね?」

「はい、多分」

「だったらアスカの操縦で使徒を指定のポイントに誘導して、そこに用意したネットで動きを封じ、無防備な所に射撃かナイフを叩きこんで撃破。これがベストね」

「「「おお~」」」

ミサトの立てた見事な作戦に思わず拍手をする三人。こうして対シャムシエルの作戦が立案され、実行されることとなったのである。

 

 

 

 

 

時は戻り、アスカとシンジは初号機のエントリープラグ内で出撃を待っていた。初号機のパーソナルデータは既にアスカに切り替えられており、シンクロ率が若干下がったものの問題なく起動していた。

(シャムシエルと戦うのアタシ初めてだからなァ……ちょっと緊張するかも……)

前史ではアスカは未経験だったため、少々緊張気味であった。

「ねえ、シンジはどう……」

振り向いて尋ねようとしたアスカは、シンジの表情を見て思わず硬直してしまった。……シンジの顔色が、分かりやすく悪い。

(もしかして、シャムシエル戦はシンジの鬼門の一つ?)

アスカは前史の時、トウジとケンスケが勝手に抜け出して迷惑を掛けたとしか聞いていない。だが……流石に察することが出来た。

(シンジ……あのバカ二人組を巻き込みかけたのね……)

「……あんまり神経質にならない方がいいわよ。前の時みたいなことは、きっと起こらないわ。大丈夫、落ち着いていきましょ」

アスカがシンジを励まし、心を安定させるように声をかけると、シンジの顔色は幾分よくなった。

「……そうだよね。アスカ、心配かけてごめん」

「ううん。ミサト達にも念押ししておいたから、大丈夫」

 

 

二人は精神統一をして、出撃の合図を待つ。数分後、通信回線が開かれた。

『いい、アスカ、シンジ君。手はず通りにお願い』

「分かってるわよ。そっちこそ、へましないでよ?」

「アスカ……すみません、こっちは大丈夫です」

『日向君、例の物は?』

『既に、ポイント208にスタンバイしてます』

『タイミングはこちらで測ります。誘導お願い』

「「了解!」」

最後の作戦の確認が行われた後、ミサトは出撃を命じた。

『では、発進!』

「「エヴァンゲリオン初号機、起動!」」

初号機の目が開くと同時にシャフトが開放され、高速でシャムシエルの正面に射出された。肉眼で確認できたシャムシエルは、今の所違いは見られない。

「シンジ、行くわよ」

「了解、スタンバイしておくよ」

兵装ビルの武器コンテナから拳銃を取り出し、初号機は上に跳んだ。

「まずは、挨拶代わりッ!」

空中から数発シャムシエルに銃弾をお見舞いするが……聞き覚えのある音と共にA.T.フィールドが展開されてあっさり弾かれた。

「ちッ、やっぱ弾かれるか!」

「アスカ、来るよ!」

「分かってる!」

空中から降下し、地上に着地する隙をシャムシエルが見逃すはずもなく鞭を飛ばしてくる。

(思ってたよりも早い……!というか弐号機と違うから反応が鈍いッ!)

着地と同時に空いている左手をアスカが伸ばし、シンジが念じてフィールドを展開し、攻撃を防ぐ。

「このまま目標ポイントまで誘導するッ!」

アスカは初号機をバク宙させて何度も回転しながら後ろに下がり、左方向に移動してシャムシエルの鞭が届かないところまで移動してゆく。勿論その間も射撃を繰り返し、シャムシエルを挑発する。

シャムシエルも今の場所では初号機を仕留められないと悟ったのかその場から移動を開始し、初号機を追撃した。

そして、シャムシエルが浮遊しながら目標ポイントに近づくのを確認したミサトは、オペレーター陣に指示を出した。

「対使徒捕獲用ネットスタンバイ!」

「了解。ポイント208の捕獲用ネットを起動!」

「全て問題なく作動可能です!」

「葛城さん!」

日向に頷き返したミサトは、初号機に通信を入れた。

「二人共、使徒が目標ポイントに到着するわ」

『オッケー、こっちもスタンバイするわ』

初号機は鞭が届くギリギリの距離で足を止め、拳銃を構えて待機する。

そして目標ポイントにシャムシエルが到達し、うねうね動く鞭が本体寄りになった瞬間、ミサトの指示が飛ぶ。

「作動させて!」

「「「はいッ!」」」

シャムシエルの左右のビルから設置された捕獲用ネットが飛び出し、左右から使徒の体を絡めとって動きを封じる。さらに使徒の後ろにニブロック開けた所から新たなビルが出現し、捕獲用ネットを射出して後ろに引きずり倒した。

「アスカ!」

「わかってるっちゅーの!」

拳銃を左手に持ち変えると、プログレッシブナイフを抜き放って逆手持ちし、ジャンプしてそのまま上に剥き出しになったコアを狙う。

「「いっけーッッッ!」」

A.T.フィールドを応用してナイフに纏わせ、鋭さとリーチを強化するシンジ。編み出されたA.T.フィールドの応用の一つである。

そのままシャムシエルを仕留めようとしたが……悪寒が二人を襲った。

……その悪寒は的中し、絶えず動いていたシャムシエルの肋骨のようなものが射出され、ネットの隙間から鋭い矢のように初号機に襲い掛かった。

「「『『なッ!?』』」」

思わぬ攻撃手段に驚愕する、前史を知る四人。何とか体を捻って方向転換し骨を躱したものの、ネットが一部切り裂かれて自由になった鞭がアンビリカルケーブルを切断した。

「ケーブルが……!」

『アンビリカルケーブル、断線!』

『エヴァ初号機、活動限界まで後五分!』

何故活動限界が五分ということになっているかというと、ゼーレに対する偽装である。モニターには五分と表示されてはいるがその実うっすらと∞のマークが表示されており、記録上も偽装するためにあと五分とマヤが偽って発言したのだ。

 

 

その時、またシンジの頭の中で過去の映像がフラッシュバックする。

(またか……!)

射撃が通じず、恐怖のあまり使徒に背を向けて切断されるアンビリカルケーブル。鞭で投げ飛ばされた先に居た、トウジとケンスケ。彼らをプラグの中に入れた後、撤退命令を無視して『逃げちゃ駄目だ』という強迫観念に囚われ、特攻した。

「くッ……」

「シンジ!?」

頭を押さえ、俯くシンジ。アスカは心配そうに一瞬後ろに目線を向けたが、攻撃を回避して二子山まで後退した。

「……大丈夫?」

「……うん、もう大丈夫だ」

振り返って、シンジの様子を確かめるアスカ。シンジは一度目を瞑った後、かっと目を見開いた。彼の表情から、迷いは消え失せていた。

「僕がフィールドで攻撃を防ぐ。アスカ、プログレッシブナイフで止めを」

「了解!」

拳銃を投げ捨て、右手で力強くナイフを握り締めて跳躍する初号機。

シャムシエルはその場から動けないものの、先程発射した肋骨を再生して再び発射し、鞭を振り回して貫こうとする。

「アスカ、そのまま行って!」

……が、シンジが左右に分けて作った強固なA.T.フィールドに阻まれて攻撃は通らなかった。

「ありがと!……どぅおりゃあああああああ!」

アスカは自分で出したA.T.フィールドでプログレッシブナイフを強化し、高速で縦方向に回転しながらシャムシエルに叩きつける。

「こんのぉ……さっさと倒れなさいッ!」

「アスカ!」

シャムシエルもただでは倒れまいとA.T.フィールドを張って抵抗してきた。アスカは貫こうとさらに力を込め、シンジが力を貸した。

「「いっけえええええッ!」」

シャムシエルのA.T.フィールドに段々と罅が入り……次の瞬間、砕け散ってシャムシエルのコアを一撃で貫通した。

 

 

NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION

EPISODE5 Scratch of heart




アスカはレイと同じリリスの遺伝子を得、さらにシンジの母の存在を知り彼女に認められているために初号機とシンクロ可能になりました。……実の母ではないため、シンジには劣りますが。
シャムシエルの進化。新たな攻撃手段が追加され、A.T.フィールドが強化されました。……初号機を追い詰めるには至りませんでしたが。ここから使徒の進化は徐々に加速していきます。
シンジの心の傷は癒えてはおらず、実はこれはアスカにも言える話です。

では、また次回で。
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