NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION   作:ASNE

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Climax Point One(前編)

シャムシエル襲来から、幾分か経過した日の放課後。シンジとアスカは、何回目かになるデートに繰り出していた。シンジは女性と『デート』なるものをするのはアスカが最初で最後だし、アスカは前史ではヒカリに頼まれてデートを何回かこなしたもののどれもつまらず、楽しめたとは言い難い。―だから、初めてなのだ。心行くまで楽しめる、本物の『デート』というものは。

「んー、おいしい!」

「ホントいい店見つけたよね、アスカ」

「ふふん、もっと褒めてくれてもいいのよ?」

カフェのテラス席で向かい合ってパフェを頬張りながら、シンジは微笑みかけ、アスカは得意げに笑う。その頬は若干赤く染まり、アスカが照れているのが分かる。

「……や、やっぱり違うわね。気持ちが通じているかいないかってのはさ」

「ん?」

「シンジも知ってるでしょ?アタシがヒカリに頼まれて、デートしてたの」

「うん」

シンジはスプーンでパフェを一口すくって口に運んだ後、コクリと頷いた。

「あの時は全然楽しくなかった……前の時のシンジの墓参りの日も、そうだったでしょ?」

「あー……確かにつまんないって言ってたね」

「ヒカリに頼まれて渋々だったしね。てかそれも、ヒカリのお姉さんのコダマさんの差し金だったってぽいし」

「……それ、お金もらってデート斡旋ってやつ?」

「あれ、知ってたんだ」

「噂になってたしね」

パフェを味わいながら、会話を途切れることなく続ける二人。

「ま、もうそんなことする気はないし、それはヒカリも分かってると思う。―アタシの心には、シンジしかいないって」

「……アスカ……」

「シンジ……」

二人は体を乗り出して顔を近づけ、キスをしようとした正にその時。二人の携帯が、同時に鳴った。

「「ッ!」」

彼らは慌てて姿勢を戻すと、慌てて荷物を纏めて会計を済ませ、店を出て行った。

……ちなみに、シンジとアスカの周りの席に居た人々は甘い空気に当てられて赤面していた。

 

 

 

 

シンジとアスカがNERV本部に駆け付けると、レイは既に本部指令室に到着しており、モニターには巨大な正八面体の青き使徒、ラミエルの姿が。前史とは異なり、その表面にはいくつもの穴があった。

「何だろう、あの穴?」

「レイ、分かる?」

「……分からない」

チルドレン三人が首を傾げる中、ミサト主導により威力偵察が行われようとしていた。

「使徒はあそこから動かない、か」

「はい、第三新東京市に出現時から一度も動いていません」

「……先の二体と比べても近距離用の攻撃手段はなし、おそらく遠距離タイプね」

隣に立つリツコに頷くと、ミサトはゲンドウたちの方に向き直った。

「これより威力偵察を行いますが……よろしいですね?」

「……構わん。我々は既に君たちに全権を委任している身だ。口を挟むつもりはない」

ゲンドウの後ろ左右で控えている冬月と加持は、黙って頷いた。

「では、偵察開始!」

「「「はい!」」」

オペレーター陣がカタカタとキーボートを叩くと使徒から少し距離が離れた所のゲートが開き、初号機のダミーバルーンを上に載せた自走砲が出現し、ラミエルに向かって直進し始めた。

「自走砲とダミーバルーン……なるほど、考えたわね」

本部の面々が見守る中、自走砲がラミエルから一定の距離に到達。その直後、その表皮に無数にある穴から、青き光が噴出し、網目状になった光がダミーバルーンと自走砲を消し飛ばした。

『は?』

思わず指令所の面々の言葉がはもった。前史であのような攻撃手段は存在しなかったし、その威力もパワーアップしている。

「さらに進化したのか……」

シンジはモニターを見つめたまま、両拳を握り締めた。アスカとレイはそっと己の手でその拳を包み、シンジの心を落ち着かせる。

「大丈夫よ。アタシらは一人じゃない。みんな一緒よ」

「……私も居る」

「……そうだね」

シンジは両隣に立つ二人の顔を見ると、そっと微笑んだ。

 

「やはり遠距離タイプ……おそらく今のは自動迎撃機構のようなものね。ミサト、どうするの?」

「……関係各所に通達、日本全国の電力を接収しそれを用いて超大火力による砲撃で奴を仕留めるわ。戦自研から買い取ったポジトロンライフルを使います。作戦開始、以降の作戦行動は『ヤシマ作戦』と呼称。エヴァパイロット各員は直ちにプラグスーツに着替え、第一種戦闘待機。いいわね!」

『はいッ!』

指令所の人間が慌ただしく動き出し、シンジたち三人は急いで更衣室へ。ゲンドウの後ろに控えていた加持も何事か耳打ちし、ゲンドウが頷くと姿を消した。―『ヤシマ作戦』、開始。

 

 

 

時を遡り、シャムシエル襲来から幾日か経った頃。後始末が完了してすぐに零号機の凍結が解除され、再起動実験を履行。滞りなく実験は終わり、その後直ぐに技術課・作戦課の面々が集められた。

「―さて。皆に集まってもらったのは他でもないわ。今後の対使徒戦略を立てるためよ」

「先の二体の使徒襲来において露呈されたのは、明らかなエヴァの使用兵器の火力不足。正式拳銃では牽制しか出来ず、プログレッシブナイフもパイロット二人がA.T,フィールドで強化した状態でなければ使徒に致命傷を与えることは叶わなかった……。これは明らかにこちらの落ち度よ。私たち大人の役割は、パイロットである子供たちになるべく負担を掛けずに使徒を倒せる環境を作ること。そのために零号機の凍結解除と起動実験を大幅に繰り上げたわ」

ミサトとリツコは周囲の面々の顔を見回しながら、真剣な表情で告げた。それを見たオペレーター陣や他のメンバーの表情もきゅっと引き締まる。

「パイロット二人から提言されたのは、遠距離からの超火力と刀等の近接武器の作製。二体の使徒のどちらもが近接攻撃で仕留められている以上、近接武器が有効なのは確か。それに加えて求められているのは、使徒の有効射程外からA.T.フィールドを打ち抜くだけの火力も必要とされてくるわ」

そう言ってリツコが取り出したのは、戦自研、正式名称『戦略自衛隊つくば技術研究所』の極秘資料だ。

「今碇司令が日本政府の許可を取って、ここの試作陽電子砲、『ポジトロンライフル』を買い取りに向かっているわ」

「え、碇司令が……?」

そう言ったマヤの顔には、『意外だ』という表情が。彼女以外にも、同様の表情を浮かべている者が複数名。……当然の反応である。碇司令と冬月副司令には秘密主義な所が多々あり、対使徒の作戦行動には例外を除いて干渉してこないため溝が出来てしまっているのは確かだ。

「……確かに司令は今まで、私たちと距離を取っていたわ。でもね、あの人もあの人なりに歩み寄ろうとしてくれているのは確かよ。……不器用な人なのよ」

「先輩……」

他の人たちも何かを察したが、何も言わずにその後は迎撃システムの運用や二体に増えたエヴァの運用について話を進めていった。

 

 

 

同時刻、ゲンドウは冬月や加持、護衛のSPを連れて戦略自衛隊つくば技術研究所を訪れていた。

「碇司令、まさか自ら足をお運びになられるとは……」

慌てて駆けつけてきた所長ら職員に案内され、ゲンドウたちは陽電子砲の実物の前に到着した。

「……これをNERVに買い取らせてもらいたい」

「……買い取り、ですか?接収ではなく?」

てっきり有無を言わさず持っていかれると思っていた所長たちは怪訝そうな表情を浮かべた。

「……ああ。NERVには、兵器開発のノウハウはまだない。だから、これからも貴官らの力添えが必要なのだ。……頼む」

ゲンドウは所長たちに向き直ると、静かに頭を下げた。ゲンドウの後ろに控えていた冬月や加持らも、続いて頭を下げる。その姿勢からは、彼らが真剣に頼んできているということが窺えた。

「……どうして、そこまでなさるのですか?」

「……守りたいものが、あるからだ。頭を下げることでこの世界を守ることが出来る手段が手に入るのならば、いくらでもこの頭を下げよう」

そう言って真剣な表情するゲンドウのメガネの奥に浮かぶのは、どこまでも明るい光。彼が本気でこの世界のことを憂いている証拠であった。

「……分かりました。そこまでされて応じないのは、国を守る者としての名折れ。くつろげる部屋にご案内いたしますので、具体的内容を詰めていきましょうか」

 

 

 

こうして、戦自研の協力を取り付けることに成功したNERVはポジトロンライフルの試作型を手に入れ、エヴァ二機の整備と同時並行で改装と使用準備を進めてきた。そして今日早速、使用する機会が訪れたのである。

 

 

 

 

NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION

EPISODE6 Pull the trigger, REI!

 

 

 




と、いうことで次回はいよいよラミエル戦!NERVはシンジたちからもたらされた情報を元に色々と事前に準備を進めてきました。事前に準備を進めておくのとそうでないのでは、大きな違いがありますからね。
加持さんはヤシマ作戦のための根回し担当。トリプルスパイをやっていた頃のコネを生かして色々裏で立ち回ってます。
陽電子砲を買い取ったのは、少しでも戦自との関係を良くするため(その予算は、余ったエヴァの修理費から出てます)。
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