NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION   作:ASNE

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Climax Point One(後編)

ヤシマ作戦開始、四時間前。エヴァ二機及び専属・予備パイロット三名、現場指揮の本部職員らとと共に作戦実行地区に到着。本番前最後のブリーフィングが行われる。

「では改めて、本作戦における各担当を伝達します」

ミサトとリツコは眼前に直立不動の姿勢で立つ三人の若き戦士たちに、それぞれの役割を伝える。

「まずは砲手担当、零号機。レイよ」

「はい」

レイはコクリと頷いて返事を返す。今の彼女には、確かに彼女自身の感情が息づいていた。

「この配置は、貴女の射撃適性の高さ。それから……遺憾ながらまだ実戦配備用の改修がされていないため、使徒の攻撃に耐えうる状態にないことからこの配置となりました」

リツコはそう言うと申し訳なさそうに視線を下げた。このような表情は前史では見られなかったことからも、今のNERVがいかにまともになっているのかが分かる。……もしかすると、ディープな人間関係のためかもしれないが。

「そして防御担当、初号機。シンジ君、アスカ。あなた達に、盾を託します」

「「了解」」

二人は不敵に笑う。この二人ならば、どんな攻撃にも負けないはずだ。

「ヤシマ作戦の第一段階は、戦自・国連軍・NERV合同の間髪入れない全方位飽和射撃。目標の自動迎撃システムを誘発させ、エネルギーを出来る限り消費させ注意を逸らします。その後に第二段階に移行。零号機の陽電子砲による超火力遠距離射撃により目標のコアを撃ち抜き撃破。可能性は低いけど、相手側からの反撃があった場合は初号機が全力で防御。いいわね!」

「「「はい!」」」

三人の返事の何処にも不安は感じ取れない。……これからも彼らは、いいチームとしてやっていけるだろう。

「時間よ。三人共着替えて」

 

 

 

用意された仮設の更衣テントに入り、各々のプラグスーツに着替えた三人。

(どうして二人は、またエヴァに乗ることを決意したのだろう?)

ふと疑問に思うレイ。レイは前史で二人がどれだけ傷つき、心を壊されてしまったのかを知っている。だからこそ、未来を変えるためとはいえ数多くの痛みを味合わせたエヴァに再び乗ることを決意させた、その心の根底にある理由を知りたいのだ。

「……どうして二人は、エヴァに乗るの?あれだけ貴方たちを傷つけた、エヴァに……」

エヴァ二機を固定している仮設デッキに座り込み、作戦開始を待つ三人。それぞれ乗機の前に座って運命の瞬間を待つ中、レイは二人にそう尋ねた。シンジはそれを聞いてクスリと笑い、アスカはそれを見てきょとんというような顔をした。

「どうしたの?」

「いやあ、前は僕が聞く側だったからさ。今回は逆だなって」

「あら、そうなの?」

 

アスカにそう聞かれたので、レイはコクリと頷いた。

「そうなんだ。……アタシは、未来が欲しい」

アスカは数十秒ほど沈黙した後、静かな口調で語り出した。

「アタシは前、エヴァのパイロットになるために色々なものを切り捨ててきた。両親とも疎遠だったし、飛び級したからまともな学生生活を送ることもなく友人もほとんどいなかった。……アタシが大学に通ったのはステータスのためであって友人なんていらないって思ってたからね。……でも、間違いだった。アタシが切り捨ててきたものはヒトが生きるために必要なものばかり。アタシは自分で自分を追い込んでたのよ。だから、アタシは『普通の生活』を手に入れるためにもう一度エヴァに乗ると決めた」

アスカはそう言って立ち上がり振り返ると、瞳に強い決意の光を宿しながら初号機を見つめた。

「……アスカらしいな。……僕はもっと皆と触れ合いたい。僕らは、不完全だ。何処か欠けていて、その心には穴がある。その穴は、皆が埋めてくれるんだ。前の僕は心に壁を作ってしまったから、サードインパクトのトリガーとなりえてしまった。……まだ怖いけど、でも僕はもっと皆を知りたいと思う」

シンジはそう言いながら立ち上がり、アスカの隣に並ぶ。アスカは微笑むと、シンジの肩に頭を乗せてそっと寄り添った。

「……私は、もっと『ヒト』を知りたい。私にはまだ、自分の心すら何か分かっていないけど……それでももっと知りたい。ヒトとして、生きていたい」

レイも立ち上がり、己の乗機を見上げた。

しばらく三人はそうしたまま黙って立ち続けたが、やがてシンジが時計を見て時を告げた。

「時間だ。行こう」

「そうね」

「ええ」

三人はエントリープラグの挿入口へと歩き出す。その中でアスカは一度振り返り、レイに告げた。

「安心して。レイは、何があってもアタシたちが守るから」

―その言葉はこの後すぐ、現実となる。

 

 

そして、カウントダウンがゼロとなり、ヤシマ作戦が遂に始まる。

「時間です」

現場指揮のためのNERVの特殊指揮車に乗り込んだミサトたちが、シンジたちに作戦開始を告げる。

「作戦開始よ。……すまないわね、貴方たちに世界の運命を背負わせて」

その表情に影を落とすミサトに対し、その影を吹き飛ばすようにアスカが不敵に笑う。

『気にしないで、ミサト。いっつも背負ってるんだから、その大小は関係ないわよ』

『僕らなら大丈夫です。行きましょう』

『……頑張る』

三人の反応を確認したミサトは、気分を切り替えると毅然として指示を飛ばす。

「ヤシマ作戦発動、戦自・国連軍に連絡。無人機・自動砲台による全方位飽和攻撃を開始。陽電子砲の接続状況は!?」

「現在、第三次接続を完了。第四次接続を既に開始しています!」

マコトがキーボートをものすごいスピードで叩きながら返答する。他のオペレーターも最大効率で作業を進めていた。

 

一方、NERVからの連絡を受けた戦自・国連軍はラミエルへの攻撃を開始していた。

「NERVからのゴーサインを確認!」

「よし。各砲座砲撃開始!無人攻撃機も急速発進!ゴ―ゴーゴー!」

全方位から物凄い物量の砲撃が開始され、ラミエルは表面の穴から無数のレーザーを網目状に発射。ミサイルや砲弾を次々迎撃し、砲台や無人機を破壊してゆく。

「無人攻撃機第一陣、壊滅!」

「第三第五対地攻撃システム、蒸発!」

「悟られるわよ、間髪入れないで!次!」

使徒の攻撃による被害は拡大する一方ではあったが、ヒトがその手を緩めることは無かった。―すべては、人類の未来(明日)のために。彼らの心は、その言葉の下で戦い続けた。

 

 

 

 

そしてついに、使徒を葬り去る一発の準備が整う。

「第四次接続、完了!」

「陽電子砲に供給する電力システム、接続完了!異常ありません!」

オペレーターたちの準備完了を知らせる言葉を聞いたミサトは、作戦を最終段階に移行させた。

「最終安全装置、解除!」

「撃鉄起こせ!」」

「射撃用最終所元、入力開始!」

陽電子砲の安全装置が解除され、ヒューズが装填される。うつぶせとなって狙撃位置に付いた零号機のエントリープラグ内でレイが狙撃用スコープを覗きこんで狙撃位置の最終調整を行っている。その頬は心無しか紅潮し、息も荒くなっていた。

(碇君とアスカが託してくれたこの一撃、外す訳には……!)

感情というものを獲得していたレイ。その影響が思っていた以上に、彼女の在り方に影響を与えていた……。

「第五次最終接続!」

零号機が最終調整を完了させたのを確認したミサトは、陽電子砲と電力供給システムの連結を開始させた。

「全エネルギー、超高圧放電システムへ!」

「システムと陽電子砲との接続、完了しました!」

「カウントダウンを開始する!10、9、8……」

ミサトのカウントダウンを聞きながら、レイはスコープを覗いて未だ迎撃を続けるラミエルのコアに狙いを定める。

その一方、後方で盾を持って控えている初号機のエントリープラグ内。シンジとアスカは顔を見合わせると、静かに頷きあった。

「……1、0。レイ、撃って!」

「……ッ!」

ミサトの合図と同時にレイが引き金を引き、発射されたエネルギーの奔流と化した電力の弾がラミエルを貫く。ラミエルは悲鳴のような甲高い音を上げて迎撃を止め、血しぶきのように体液を吹き出す。

「やったの!?」

……リツコのその言葉とは裏腹に、ラミエルは一瞬体を傾かせかけたものの立て直して反撃の一撃を放った。

「外した!?このタイミングで!?」

「きゃあッ!」

「「レイ!」」

初号機が瞬時に動けない零号機の前に飛び出して盾を構えるが、幸い砲撃は逸れて背後の二子山に直撃し―蒸発させた。

「「「!?」」」

前史と比較するとその破壊力は向上しており、パイロット三名は思わず目を見開いた。それでも倒さなければならない彼らは、体勢が崩れた乗機を定位置まで再び動かす。

指揮車の方も幸い無事であり、転倒していたミサトたちも体勢を立て直して立ち上がった。

「まだいけるわね!?」

「はい!幸いエヴァ二機と陽電子砲、給電システムは無事です。第二射、いけます!」

「よし!レイ、聞こえてたわね!もう一発、次で仕留めて!」

『はい……!』

所定の狙撃位置に戻った零号機は狙撃用の装備をパージし、自分の手で決着を付けるべくスコープを覗き込んだ。

「零号機、G型装備をパージ。以後の射撃最終システムの操作は、パイロットのマニュアル操作になります!」

「ヒューズ交換、砲身冷却終了!」

「目標、本部直上ゼロ地点に到達!」

ラミエルが出現直後からドリルで掘り進めていた装甲版が全て破壊され、NERV本部に迫る。ゲンドウたちはただ子供たちを信じて、その場を動かなかった。

「……レイ、頼んだわよ!」

ミサトへの返事の代わりに無言で小さく頷きながら、レイは射撃の最終調整を始めた。

「……覚悟はいいかい?」

「……いつでも」

シンジとアスカも覚悟を決め、初号機は盾をしっかりと構え直した。―次の瞬間、今度こそ止めを刺さんと先程よりも威力・正確さの格段に上がった一撃がラミエルから放たれた。

「目標内部に、再び高エネルギー反応ッ!」

「やばいッ!」

レイは思わず目を瞑りかけるが、使徒から放たれた必殺の一撃は目の前に立ちはだかった一機のエヴァによってせき止められた。

「初号機……!」

『『ぐううううッ!』』

『初号機のシンクロ率、急速に上昇!このままでは……』

手に持って前に構えられた特殊な盾により攻撃を防いでいた初号機だったが、数秒で盾は原型をとどめることなく融解していき、その熱が機体とパイロット二人を炙ってゆく。その悲鳴は指揮車と零号機の通信回線にも響き渡り、レイは焦りの表情を浮かべて狙撃の操作をしながら声を荒げてミサト達に尋ねる。

「まだなんですか!?」

『あと二十秒!』

『盾が保たない!』

そんな中遂に盾が完全に融解して消滅し、初号機は両手を突き出してA.T.フィールドを張り、零号機を守る。

『ああああああああッ!』

「碇君!?」

『僕のことは、気に、するな……!撃て、綾波……!』

「碇、君……」

レイは思わず手を止めかけたが、シンジの叱咤するような声で再び視線を前に向け直した。

 

フィールドを懸命に張り続けるシンジであったが、ラミエルの高火力に耐え切れずフィールドも徐々にひび割れてゆく。その隙間から伝わる熱が初号機とパイロットを焼いていき、どちらにも傷が増えてゆく。

(まずい、このままじゃ……!)

それでも意志の力で懸命に踏ん張り続けたが、遂にフィールドが割れかけ……もう一枚のフィールドがその前に現れた。

「!?」

シンジは驚いた表情をして後ろを振り向くと、アスカが歯を食いしばって両手を前に突き出していた。

「アタシも居るの……忘れちゃった?」

「アスカ……」

「……レイ!アタシらには構うなッ!使徒を撃て!」

『アスカ……!』

―次の瞬間チャージが完了し、スコープのセンターにコアが重なったその瞬間、レイはトリガーを引いた。銃口から放たれたエネルギーがコアを貫き、ラミエルは硬直して悲鳴を上げた。その体に空いた穴からは大量の血を吹き出し、ラミエルは己の血の海に沈んでいった。

 

「碇君、アスカ……ッ!」

レイは崩壊したラミエルに目もくれず、ボロボロになって倒れこんだ初号機に向けて零号機を走らせた。そして初号機の下に辿り着いた零号機はその体を抱き上げた。……初号機の全身の装甲はほとんど黒色に変色してボロボロに崩れ、素体にまでダメージが及んでいた。ダメージの影響からか緊急射出システムが作動しなかったためプログレッシブナイフを取り出し、無理矢理初号機のエントリープラグを引きずり出した。

「二人共……!」

地上にエントリープラグをそっと置いた後、零号機のエントリープラグから飛び出したレイは焼かれて高温になったハッチを躊躇うことなく回し、ハッチを解放した。

「大丈夫!?」

レイが中に飛び込むと、シンジとアスカは体を寄せ合って席に横たわっていた。彼らの顔には火傷による痛々しい傷があり、恐らく彼らのプラグスーツの下にも痛ましい傷があるだろう。レイは二人に駆け寄り、その体を揺さぶる。

「二人共、大丈夫!?ねえ、二人共……!」

「……そんなに、揺らさないでよ……生きてるからさ……」

そう言いながらアスカは閉じていた目をそっと開けた。シンジも同時に目を開け、そっと微笑む。

「……どうして、こんなになるまで……」

「……感情、出せるじゃない……」

「!?」

アスカの指摘にレイはさっと硬直した。……その反応は、もう普通の人間と変わりない。

「……大丈夫、君はもう立派な人間だよ、レイ……」

「……そう、ね……」

シンジとアスカは再びそっと目を瞑り、微笑みながら眠りについた。レイは救助隊が来るまで、涙を流しながらそっと寄り添い続けた。

 

 

 




原作とは反転した役割、大ダメージを負った初号機。そして負傷してしまったシンジとアスカ……次回から果たしてどうなる!?
次回、NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION
「Prepare for the next stage」
さあて、次回もサービスサービスゥ!
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