NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION   作:ASNE

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Prepare for the next stage(前編)

「酷い有様ね……」

リツコはNERV本部の格納庫でそう言ってため息を吐いた。彼女の視線の先にあるのは、先のラミエルで中破して見るも無残な姿になった初号機。現在破損した全身の装甲の撤去作業が進められているところだ。内部の素体にもダメージが及んでいるため、新しく装甲を取り付けるには素体の修復を待たなければならない。見積もりでは、少なくとも二か月は出撃不能である。

「あら、ここに居たのね」

リツコが振り返ると、リツコと同じように作業着とヘルメットを着用したミサトが近づいてきていた。

「ええ……シンジ君とアスカは?」

ミサトは一瞬顔を曇らせた後、その質問に答えた。

「大丈夫、先程容体が安定したと連絡が入ったわ。……情けないわね、ホント……」

シンジとアスカは救護班が到着した後直ぐにNERV専属の病院に搬送され、怪我の治療が直ちに行われた。……どうやら彼らの傷は思った以上に重傷であり、一時容体が悪化しかけたが医師たちの必死の治療の甲斐あって容体は今は安定し、静かに病院のベッドで眠りについている。

「それは私も同じよ。……後始末はもう終わったの?」

「まだよ。今は報告のために一時帰還しただけ。もう碇司令に報告は終わったから、現場に戻る前に顔見せとうこうと思ってねん」

「なるほど。……レイ、大丈夫だといいけど……」

 

 

 

 

リツコが案じていたレイはというとヤシマ作戦終了後からずっと二人に付きっきりであり、昨日からほとんど一睡もせずに二人の傍に付いていた。シンジとアスカは同じ病室に入れられ、レイはその病室の丸椅子に座って襲い来る眠気と戦ってうつらうつらしながらも彼らの目覚めを待っていた(勿論性別に配慮してカーテンで仕切られてはいるが)。そして遂に眠気に負けてしまい、首をがくりと下げてレイは夢の世界に旅立ってしまった。レイが眠っていると、病室のドアが開いて一人の男性がそっと入ってきた。

「こりゃまたぐっすりと……一日中二人の傍に居たはずだからな。気が張り詰めすぎて疲れるのも当然だ。寝かしておくか」

男性―加持はそう言うと果物が入ったバスケットを備え付けのテーブルに置き、煙草を取り出そうとして止めた。

(いかんいかん。病室で煙草はまずいな)

代わりにバスケットの中に入っていたリンゴを一つ手に取ると、一緒に持ってきた果物ナイフを使ってシャリシャリ皮を丁寧に剥き始めた。その音を聞いてレイが目を覚まし、ゆっくり顔を上げた。

「う、ううん……」

「起こしちゃったか?こりゃ失敬」

「加持、さん……?」

「おはよう、レイ」

「……あれ、私……」

レイは何が何だかという風に頭をキョロキョロと振り、眠気を段々と覚ましてゆく。

「……寝たのかしら、私?」

「そりゃあ気持ち良さそうに。ほとんど一睡もせず付き添ってたんだろ?無理もないさ」

レイは寝顔を加持に見られたことを悟り、ほんのり赤面した。その後はしばらく皮が剥ける音だけが病室に響いた。

「……自分を責めてるのかい?」

加持がそう言って沈黙を破った。彼の瞳は穏やかに凪いでおり、レイを優しく見つめていた。

「……二人は、私を守るためにこんな傷を。私が一射目を外さなければ、こんなことには」

その言葉の端々に、悔恨を滲ませるレイ。……彼女が人形に戻ることは、二度とあるまい。そう確信した加持は、彼女の背中を押してやることにした。

「シンジ君とアスカは、己の役割を果たしただけさ。君を守る、という役割をね。レイも上手く自分の役割を果たしたと俺は思うぞ。じゃなきゃ俺たちは今こうして話せていない。君が、俺たちみんなの命を救ったんだ。シンジ君とアスカを含めてね。誇っていいことだ」

「……でも……」

「君がそうやって自分を責め続けていると、二人が目覚めた時に悲しむと思うぞ。―前を向いて、笑って生きるんだ。それこそが、我々人間のあるべき姿だと俺は思う」

「前を向いて、笑う……」

「まあしかし、今のその顔じゃ映えんな。……少し寝てきたらどうだい?仮眠室があるだろうからね。ゆっくり考えるといい」

レイはしばらく何かを考える素振りを見せた後、椅子から立ち上がって加持に一礼して出て行った。

「……ありがとうございます」

加持は暫くレイが出て行った方を見つめていたが……。

「……これでよかったのか?」

「……結果的にね」

加持がベッドに目を向けると、シンジとアスカが目を開けていた。

「自分で伝えても良かったんじゃないのか?」

「……アタシが言ったら逆効果だと思うけど」

アスカは上半身をベッドから起こすと加持が差し出してきたリンゴ一切れをつまみ、口の中に放り込んだ。

「どちらにしろ僕らに出来るのは背中を押すことだけですよ。レイの生き方は、彼女自身が決めるべきだ」

シンジもそう言ってリンゴを掴み、齧って会話を続けた。

「……それはさておき。スパイの洗い出し、どれぐらい終わりました?」

加持はその言葉を聞くと本職としての顔つきに変わり、腕を組んで報告を始めた。

「八割がたの洗い出しと人員の入れ替えは終わった。……が、残り二割はまだ尻尾すら掴ませて貰えない。よほどの手練れが送り込まれたんだろうな」

「……流石ね。日本政府と戦自の方は?」

「政府に動きは今の所はないが……戦自には不穏な動きが見られる」

そう言って加持が取り出したのは、彼が入手したらしき戦自の極秘ファイル。二人はそのファイルを受け取るとその中身に目を通し……顔をしかめた。

「「トライデント……」」

そう、そのファイルの内容は前史で彼らにとってほろ苦い思い出となった少女『霧島マナ』が深く関わる戦自が極秘で開発していたロボット『トライデント』に関するものだった。

「……やらせておけばいいわ。どうせエヴァには遠く及ばないポンコツだし」

「アスカ、言い方。……おそらく同年代のスパイが接触してくると思います。彼らは犠牲者だ。僕は……救いたい」

「……分かった。もし不自然な転校生が現れたら動きを探るよ」

 

 

 

 

 

NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSIONN

EPISODE7 Wisdom




今話から第一章第二部開始。前回までが第一部、新劇場版で言うと序に当たるパート。
第二部は基本的にレイを中心に動いていきます。
初号機はマグマダイバー、サンダルフォンまで戦線離脱。その理由はと言いますと、次の次の使徒、分裂するイスラフェル君を初号機と弐号機が相手にした場合前史からのコンビネーションで瞬殺してしまうのは明白。これだとレイがあまり成長出来ず、シンジやアスカと交流を深められないので一旦初号機を外しました。
そして、今後に繋がるフラグを投下。トライデント、即ち鋼鉄のガールフレンドのシナリオを何処かでやります。
次回はジェットアローン回。お楽しみに!
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