NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION 作:ASNE
シンジとアスカが退屈な入院生活を送っていたある日、トウジ、ケンスケ、ヒカリの三人組がレイと共に病室に見舞いにやってきた。他のクラスメイトたちも二人が入院したと聞いてお見舞いに行きたかったのだが、如何せん二人がNERVの中でも幹部クラス並に重要人物であるため大勢に今の居所を知られる訳にもいかず代表して三人がレイと共に見舞いに訪れた次第である。
「センセ、ホンマに大丈夫なんか?」
「あー……うん。見た目ほどは酷くないよ。九月には学校に戻れると思う」
「それは良かった。ここには来れなかったけど、クラスの皆すごく心配してたぜ」
「そっか……それは申し訳ないな」
「はいこれ、二人の分のプリント。毎週ここに持ってくるから」
「ヒカリ、ありがと~。レイ、一緒にやりましょ?」
「うん、アスカ」
病院に居るため、声のトーンを抑えながらわいわいするシンジたち。
「そういやセンセたちの怪我の位置、一緒なんやな」
トウジにそう指摘された二人は、思わず顔を見合わせた。
「そりゃそうでしょ。乗ってる機体にアタシら二人共シンクロしてんだから」
そうトウジに呆れ顔で言うアスカとシンジの体には、全く同じ箇所に傷があった。右頬、両腕、左足。体の見える箇所ほとんどが包帯やガーゼで覆われ、見るに痛ましい姿となっている。……もっとも、本人たちは使徒の遺伝子の影響で回復は常人よりも早いためあまり気にしていないのだが。
「怖くないの?」
ヒカリにそう尋ねられたシンジはそっと微笑んだ。
「怖いよ。……本音を言えば、もう乗りたくない」
「なら……どうして乗るんだ?」
「簡単な話だよ、ケンスケ。……僕らが戦わなければ、世界が滅ぶから」
「「「!?」」」
シンジの返し硬直する三人。チルドレン三人は、ひどく真剣な表情で固まってしまった大切な友人たちを見つめていた。
九月になった。ラミエルの解体作業と初号機の修復作業、第三新東京市の復旧作業が同時並行で進んでおり、NERVの面々はてんてこ舞いであった。そんな最中、とある招待状がNERVに届いた。宛先は、『日本重化学工業共同体』。……ジェットアローンである。
「あー……あのポンコツロボか。確か時田って人とリツコさんが揉めたって聞いたけど……」
夕飯の食卓で頗る不機嫌そうなミサトから見せられた封筒を見たシンジは、それを見てああ、という風に得心がいった表情を浮かべた。シンジからその招待状を受け取ったアスカは、自分が日本に居なかった時の出来事のために興味深そうにその招待状をレイと共に眺める。
「で、前はどうだったの?」
「原子炉が暴走して僕とミサトさんで止めたんだけど……実はそれリツコさんが父さんの指示で意図的に暴走させたはず」
「なるほど……で、どうなの、リツコ」
ミサトが御呼ばれしていたリツコに話を振ると、リツコはお茶をすすった後楽しそうに話し始めた。
「司令が言うにはそういう小細工はしないそうよ。単純な力比べで終わらせるって」
「力比べ?……そういうことか」
シンジは少しの間考えたが、すぐに得心して笑った。
「零号機とジェットアローンの力比べ……あんたの出番よ、レイ」
「頑張る」
そして、ジェットアローンのお披露目会当日。ミサトとリツコの他に、パイロット三人も同行していた。全員がドレスコードに則った服装をしているのだが、シンジとアスカは包帯がまだ外せていない状態で強引に退院したため包帯姿が目立ち、ただでさえNERVから来た人間のためかなり目立ってしまっている。
「ありゃま、目立っちゃってるわね」
「別に他の人たちがどう思おうが関係ないわよ、ミサト」
「アスカ、怪我が治りきってないのに来た僕たちも悪いんだから……」
式典が始まり、団体の沿革やジェットアローンについての動画が流されたがNERVの面々は冷めた目つきで見ていた。
「つまんない……」
「アタシも……」
「二人共、我慢なさい」
所在なさげにゆらゆらさせる少女たちに我慢するように言うリツコ。……そして遂に、リツコと時田の質疑応答が始まった。
「発言、よろしくて?」
「……これは高名な赤木リツコ博士。お越しいただき光栄の至りです」
「質問よろしいでしょうか?」
「はい、どうぞどうぞ」
「先の説明によりますと内燃機関を内蔵とありますが」
「ええ、本機の大きな特徴です。150日間の連続作戦行動も保証されております」
「しかし、格闘戦を前提とする陸戦兵器にリアクターを内蔵するのは安全性にリスクが大きすぎるかと思われますが」
「5分も動かない決戦兵器よりは役に立つと思います」
「遠隔操縦では緊急対処に問題を残します」
段々とリツコの表情が硬くなり、彼女がイラついているのが分かる。見守るミサト達にも段々と怒りが溜まり始めた。
「パイロットに負荷をかけ、精神汚染をする兵器よりは人道的だと思います」
「……そのパイロットは、そのリスクを承知で戦ってるんだけど?」
時田に反論したのは、リツコではなく見守っていたアスカだった。アスカはリツコからマイクを受け取り、時田に向けて啖呵を切り始めた。その表情は驚くほど冷たく、静かな怒りに満ちている。
「貴方は?」
「件のエヴァのパイロットの一人よ。惣流・アスカ・ラングレー」
「なるほど……貴方のような少女だったとは……」
「別に同情してもらわなくても結構よ。アタシらは、それを承知で乗ってるんだから」
アスカの発言に、会場内が大きくどよめく。アスカはそれを全く意に介さず、時田は対照的に動揺していた。
「そ、そのような大怪我をしてでも乗ると?まだ成人してもいない少年少女を乗せて戦わせ、怪我をさせる兵器に何故乗れるんだ!?」
「……勘違いしているようだけど、あれは兵器ではないわ。世界を守るための希望。それが、人造人間エヴァンゲリオン。私たち人類が使徒に対抗することの出来る、唯一の切り札」
「……だ、だが、あれは武器を持っていたじゃないか!」
時田が大慌てで機器を操作し、モニターに映し出されたのは先日のシャムシエル戦の時の記録映像。初号機が銃を持って立ち回る様が映され、会場からは感心したような声が上がった。
「……機密をまあよくもぬけぬけと。武器を持っていたから何?あれはヒトを傷つけるためのものではなく、人類の未来を守るためのものよ」
「し、しかしだな……」
「じゃあ聞くけど、アンタらは使徒の秘密は解明できたの?どうやって使徒をあの歩く原子炉で倒すのか、説明してもらいましょうか」
「そ、それはこれから……」
「……はあ。呆れた、そんな体たらくで使徒を倒そうだなんて。アンタらに任せていたら、人類滅亡まっしぐらじゃない」
「ぐうッ……」
とうとう言葉に詰まって何も言えなくなる時田。アスカはそんな彼に、決定的な一言を突きつけた。
「アンタはただ、自分の玩具をひけらかしたいだけの子供大人。そんなアンタに、アタシらのために寝食を削ってまで全力で戦ってくれているリツコたちNERVのカッコいい大人たちを馬鹿にする資格はない!」
「な、な……」
「アスカ……」
アスカの一言に時田は怒りで顔を紅潮させ、リツコは目尻に涙を浮かべて両手で口を覆った。
「い、言わせておけば……」
「悔しい?だったら、証明してみせなさいよ。アンタらのジェットアローンは、まともに動けるってことを」
「何……?」
「勝負しましょう?NERVの零号機と、そっちのジェットアローンで。どうする?乗るかしら」
「……後悔するなよ」
こうして急遽予定を変更してエヴァとジェットアローンの勝負と相成り、レイ以外の客は制御室に移動して観戦することに。怒りで冷静さを失う時田は当初自信満々であったが、結果は明白。零号機に足の関節を破壊され、力なく倒れ零号機に支えられる様子を見て、無言で崩れ落ちた。
「……」
「確かにジェットアローンは優れているわ。……でも、アタシらのエヴァの方が上だったわね」
アスカはそう言い残してシンジたちと共に去ってゆく。膝をついて己の最高傑作の哀れな姿を見つめる時田に、リツコが隣に立って声を掛けた。
「誰かに認めてもらうには、まず貴方から歩み寄らなくてはダメよ。かつての私も、あの子たちもそうだった」
「……貴方に、何が……」
「エヴァを生み出したのは、私の母よ。私は彼女を超えようとしたけど、いつの間にか彼女になろうとしていた。……それではダメなのよ。確固たる自分を見つけなければならない。……私たちと一緒に、見つけてみない?」
「……」
何も言わぬ時田。しかし、答えは決まっている。
先に出口へ向かったアスカたち。シンジはアスカに、先程感じた疑問をぶつけてみた。
「どうして、あそこまでしたんだい?」
「……時田は、昔の私よ。誰かに認められたがった、昔の私。鏡を見ているようで、つい熱くなっちゃった」
「そうだと思った。今はどうなの?」
アスカはシンジの腕に抱きつくことで、返事とした。
「ちょ、アスカ!?」
「……知ってるでしょ?私の旦那様」
シンエヴァの本予告、見ました。あれには、エヴァの全てが詰まっている。座して待ちます。
次の舞台は、大海原!シンジとアスカはドイツに渡り、その帰りに襲い来る使徒ガギエル!
次回、NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION
「The Voyage」
さあて、次回もサービスサービスゥ!
追記
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=252405&uid=139107
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