NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION   作:ASNE

6 / 23
吠えよ、初号機。


courage(前編)

前回と同じように、使徒の真正面に射出されたエヴァ初号機。シンジの思考が戦闘モードに切り替わり、操縦桿をきつく握りしめる。

(さあ、行こう。エヴァ初号機……母さん。心のままに)

『いいわね、シンジ君』

「はい!」

シンジは前とは違い、力強く返事を返した。

『最終安全装置、解除。エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!』

『シ……「すみませんリツコさん、こっちで勝手にやります!」ちょっと、シンジ君!?』

リツコの指示を待たず、シンジは初号機を走らせてジャンプさせた。

辺りを上から見渡し、トウジの妹―鈴原サクラを捜す。

(サクラちゃん……どこだ!?)

素早く周囲を見渡し、シンジはビルを二つ行った先の角を右に曲がり、三つビルを先のビルに小さな女の子が隠れているのを見つけた。

(居た、今すぐ何とかするッ!)

「おおおッ!」

着地と同時にサキエルをA.T.フィールドで覆った右拳でサキエルのフィールドごとぶん殴り、都合ビル五つ分以上真っ直ぐ奥に吹き飛ばす。サキエルはフィールドを展開する間もなく吹き飛ばされ、突き当りのビルにめり込んだ。初号機のツインアイが眩しく輝く。

「ミサトさん、ビルの影に女の子が!使徒を僕が引き付けているうちに、早く!」

『何ですって!?日向君、急いで保安部に保護させて!』

『はい!』

シンジが初号機で指さした先に女の子の姿を確認したミサトが、大慌てでオペレーターの日向に指示を出す。シンジは使徒に向き直り、その動きを観察する。

(さあ、どこからでも来いッ!)

次の瞬間、体を起き上がらせながら光の槍を伸ばしてくるサキエル。頭部の右側を狙ってきたその一撃を、間一髪で体をスライドさせて避ける初号機。

(こいつ、学習してる!?)

前史にはない攻撃パターン。初号機の強力な一撃に呼応して、使徒も進化したのだ。

(まずい、長期戦は避けないと……ミサトさん、まだか!?)

シンジはサキエルが続けて放った光線を避けながら、市街を駆け回ってサクラから引き離す。

そして、何発目かを避けた時。ミサトから、待望の知らせが届いた。

『シンジ君、女の子は無事よ!今こっちで保護したわ!』

「……了解!」

その言葉は、シンジにとって全力解放の合図。初号機のアンビリカルケーブルをパージし、その力を解き放つ。

「行くよ、母さん!」

「ルオオオオオオォォォッ!」

初号機が歓喜の雄たけびを上げ、サキエルに飛び掛かると地面に引きずり倒す。コアの前の肋骨のようなものを外に開いてへし折り、剥き出しになったコアを捕食する。

シンジはシンクロ率を400パーセント手前で止まるように初号機―ユイをなだめすかしながら捕食音をBGMとし、必死に制御した。

(僕が溶けちゃうからこらえてくれ……母さん……)

意識が飛びそうになりながらも、S2機関の取り込みを何とか終えたシンジはシンクロ率を元に戻した。初号機の口元は血に塗れ、まるで悪鬼のようであった。だがその瞳は従来の機械的なツインアイであり、シンクロ率400パーセントまで至っていないことが分かる。

(ふう……ちょっと疲れたな……)

何やらミサト達が呼び掛けているが、そんなことは疲れ果てたシンジには何の意味もなさない。インテリアに寄り掛かると、目を閉じて回収されるのを待つのであった。

 

 

 

少し時は戻り、NERVの第一発令所。初号機が使徒の前に姿を現した。

「いいわね、シンジ君」

『はい!』

ミサトはシンジの力強い返事にその決意を感じ取り、頷いた。

「最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」

最終安全装置が解除され、初号機が自由になる。リツコがまず歩くようにと指示をした瞬間、初号機が走って助走をつけ、ジャンプした。

「シ……『すみませんリツコさん、こっちで勝手にやります!』ちょっと、シンジ君!?」

「シンジ君ったら……でも動いたわね、初号機」

ミサトが感心した声を上げ、無視されてピクついていたリツコもそれには頷いた。

「ええ。ここまで動かせるとは……シンジ君には何かあるわね」

発令所に詰めるスタッフたちも、驚きや感動の声を上げている。そして若干発令所の集中が緩んだ瞬間、シンジが雄たけびを上げる。

『おおおッ!』

初号機が着地と同時に使徒をぶん殴り、思いっ切り吹き飛ばす。その拳には、A.T.フィールドが纏われていた。

「おお……!」

「エヴァ初号機から、A.T.フィールドの発生を確認!」

「A.T.フィールド……やはりエヴァにも使えたのね」

やはり、と頷くリツコ。そこに、シンジの切羽詰まった声が届く。

『ミサトさん、ビルの影に女の子が!使徒を僕が引き付けているうちに、早く!』

「何ですって!?日向君、急いで保安部に保護させて!」

「はい!」

ミサトの指示に心得ていた日向は、保安部に指示を出して救助に向かわせる。画面の向こうでは、初号機が間一髪で使徒の攻撃を避けていた。

「槍が伸びた!?」

「あそこまでは、槍は伸ばせなかったはずなのに……まさか学習しているの!?」

 

上段では、ゲンドウと冬月がこそこそ言葉を交わす。

「おい碇、不味くないか?」

「……問題ない。いざとなれば、初号機が暴走するはずだ」

 

「日向君、まだなの!?」

「あともう少しです!」

画面の向こうでは、初号機が何度目かの使徒の眼からの光線を回避し、街の一部が爆発で吹き飛ぶ。今は余裕があるから大丈夫だが、いつ直撃するか分からない。本来はミサトたちが指示をしてやるべきだが、使徒と戦闘するのが初めてなのと、初めて稼働する初号機など、初めて尽くしで指示を出す余裕はなく、見守ることしか出来ないでいた。そんな彼らに、朗報が届く。

「女の子、無事に収容しました!」

日向の言葉を聞いたミサトが、すかさずシンジに伝える。

「シンジ君、女の子は無事よ!今こっちで保護したわ!」

『……了解!』

シンジの力強い返事。それと同時に、初号機がアンビリカルケーブルをパージした。

「エヴァ初号機、アンビリカルケーブルをパージ!内部電源に切り替わります!」

青葉が叫ぶ。それと同時に、シンクロ率をモニターしていたマヤからも悲鳴のような報告が上がる。

「シンクロ率、急速に上昇!80、90……100パーセントを突破しました!上昇、止まりません!」

「何が起こっているの!?」

「まさか……」

混乱する発令所。その中で真実を知る三人はあることに思い至る。……そして、シンジから決定的な一言が告げられる。

『行くよ、母さん!』

『ルオオオオオオォォォッ!』

「「「!?」」」

「下顎部装甲、損壊!」

(まさか、もう目覚めたというの、彼女が……)

「碇、これはいかんぞ……初号機は既に……」

「……も、問題ない。この件は、暴走として処理する」

(母さん、だと?シンジ、お前は何を……)

リツコ、ゲンドウ、冬月は起きたことを悟り、険しい表情を浮かべた。

初号機は吠え、使徒を引きずり倒すとコアを剥き出しにしてそれを捕食する。その様子を見たマヤや一部の女性職員が、口元を抑える。モニターに映るシンジは、何かを懸命にこらえていた。

「使徒を、喰ってる……」

「S2機関を、取り込んでいるんだわ……」

 

口元を抑えながらシンクロ率をモニターしていたマヤが、あることに気付く。

「シ、シンクロ率安定しました。399.99パーセントです……」

(身体崩壊の一歩手前、か。やはりシンジ君は、エヴァとお母さんのことを……)

一同が見守る中で初号機は捕食を終え、立ち上がると元の状態に戻る。シンクロ率も、それに合わせて元の数値に戻った。シンジは脱力し、インテリアに頭を預けて目を閉じた。

「シンジ君、ちょっと、シンジ君!初号機の回収、急いで!」

『は、はい!』

使徒殲滅は為されたものの、その内容は波乱に満ちていた……。

 

 

 

NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION

EPISODE2 RE-BIRTH




トウジの妹の名前ですが、TV版では明かされていないため新劇場版の「サクラ」を使わせていただきました。
初号機の早すぎる覚醒、そして使徒の強化。シンジたちはエヴァの力をフルに使えますが、それに対抗して使徒も学習し、強化されてゆきます。その結果がどのようになるかは、今後のお楽しみに。
では、また次回で。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。