NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION   作:ASNE

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平穏、しかし世界は大きく動き始める。


reunion(前編)

父ゲンドウたちとの和解を果たしたシンジ。ゲンドウとレイの仲直りを見守っていた彼は、ふとあることを思い出した。

(そう言えば、ダミープラグはどうするんだろう?)

いいタイミングで二人が離れたので、シンジは早速尋ねてみることにした。

「父さん、綾波関連なんだけど……ダミープラグは、どうするの?」

ゲンドウは下にずれていたサングラスをぐいっと上げ、元に戻す。一瞬、目尻の下に涙が見えた気がした。

「私としても破棄したいところなのだが……ゼーレの老人たちに我々の反逆を悟られる訳にはいかん。ダミーの開発はしばらくは予定通りに続ける。……すまんな、レイ」

「……いえ」

レイは首を横に振り、ゲンドウに優しく微笑む。

「我々は、変わらなければならない。シンジ、他に必要なことはあるか?出来る限りのことは、我々大人がしよう」

シンジは少し悩む素振りを見せた後、『家族』二人について頼むことに決めた。

「……二つあるんだけど」

「聞こう」

ゲンドウはシンジに向き直る。レイは嬉し涙で泣き疲れたのか、横になって眠った。

「まずは、加持さんのことなんだけど……」

「……加持リョウジ一尉、か」

「父さん、加持さんの裏の顔知ってるよね?」

「日本政府内務省調査部と、ゼーレの秘密工作員だな」

「……加持さんを、こっちに引き込もうと思っているんだ。加持さんは、ミサトさんのために全ての真実を知ろうとして……前の世界で死んだ。ミサトさん……泣いて悲しんでた。僕もアスカも勿論、悲しかった。……父さん、お願い。加持さんを助けてほしい」

シンジは加持との思い出と、泣き崩れるミサト……悲しむアスカを思い出す。……絶対に、死なせる訳にはいかない。

「……分かった。彼への対応は、シンジたちに一任しよう」

「ありがとう……。あ、後……」

口ごもるシンジ。ゲンドウはシンジのその様子を見て、ニヤリと笑う。

「セカンドチルドレン……アスカ君だな?」

シンジはかあッ……と顔を真っ赤に染め上げる。……こういう所は、まだまだ以前と変わらない。

「うん……」

「やはり、そうか」

シンジは照れ隠しでゲンドウから顔を逸らしながら、己の望みを伝えた。

「アスカだけでも、こっちに呼んでおきたいんだ。アスカは頭がいいから僕には思いつかないことを考え付けるだろうし、今のアスカならきっと僕と一緒にシンクロ出来る。それに……ア、アスカと一緒に居たい」

「……」

ゲンドウは黙って、続きを促す。

「アスカは確かに、勝気で自信たっぷりの女の子だ。……でも、本当は違う。寂しがり屋で、甘えん坊なんだ。きっと、寂しがってる。それに……ドイツ支部にはゼーレの息がかかっているかもしれないんだ。そんな所に、アスカを居させたくない」

シンジが見せる、男としての顔。ゲンドウはそんなシンジを見て、心なしか嬉しそうだ。

「……男らしくなったな、シンジ。分かった、何とかしよう」

ゲンドウは座っていた丸椅子から立ち上がり、スース―と寝息を立てるレイの頭を一撫ですると病室から出た。シンジは慌てて父の背中を追い、病室から出る。シンジが病室から出ると、ゲンドウが何処かに電話をしているところだった。シンジが聞いても理解出来ない言語でゲンドウが誰かと言葉を交わし、何かを確認していた。直前までの会話から察するに、ゲンドウはドイツ語でドイツ支部の司令と言葉を交わしているのだろう。少し会話をした後、父は電話を切り、シンジに向き直る。

「ど、どうだった?」

「少し渋ったが、彼女の優秀さを引き合いに出してドイツ支部を持ち上げれば何とかなった。もっとも、本人は今基地に居ないらしいが」

「え?アスカは、何処に?」

「所在は把握している。彼女の、両親が住むところだ。加持一尉が同行しているから、問題ないだろう」

「あ……」

シンジは前史で、アスカが継母と話すのを見ていた。あまり仲がいいとは言えず、距離を取っている状態。……きっと、関係を修復するために行ったのだろう。

(アスカも、前に進んでいるんだね)

「加持一尉に連絡を取るか?」

「……うん、一応。でも、アスカの邪魔はしたくないな」

「分かった」

ゲンドウは今度は、別の携帯を取り出して電話をかけ始めた。電話を変えたのは、安全のためだろう。

 

 

 

 

アスカはしばらく両親に抱いてもらった後にようやく泣き止み、顔を上げて立ち上がった。

『ありがとう、パパ、ママ。……アタシ、もうすぐ日本に行かなきゃいけない。エヴァのパイロットとして、この世界を守るために。多分……当分こっちには戻って来れないと思う。でも……ここはアタシの家だから。たまに帰ってきても、いい?』

『構わないよ。遠慮することはない。いつでも好きな時に、帰っておいで』

『そうよ、アスカ。あなたはこの家の子供なんだから』

アスカはまた泣きそうになってしまい、瞼をごしごし擦る。そして、とびっきりの笑顔を浮かべた。

『ありがとう!』

 

(アスカは今頃、両親とどんな話をしているのだろうか)

加持は乗ってきた車に寄り掛かり、煙草をふかしながらアスカが戻るのを待っていた。

(アスカは確実に、変わった。虚勢を張るのを止め、心の弱さを受け入れた感じがする。それに俺からも距離を取った……恐らくサードチルドレン、碇シンジ君が関係しているのだろうが。強くなった、のだろうな。理由は分からないが。……それに比べて俺は……)

思考がどんどんネガティブな方向に進んでゆき、加持が過去の回想に入ろうとした瞬間……玄関のドアが開いてアスカが出てきた。二言三言両親と和やかに、そして嬉しそうに会話をした後、車に戻ってくるアスカ。彼女は泣きはらして目を真っ赤にしているものの、とても晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。どうやら……上手くいったらしい。

「お待たせ、加持さん。行こっか」

「もういいのかい?」

「うん。ちゃんと思いは伝わったから」

「……そうか。なら、行こうか」

加持が運転席のドアを開けた瞬間、加持の携帯が鳴り出す。

(誰だ?)

「ごめんな、アスカ」

加持は開いた携帯の画面に表示されている名前を確認し、表情が険しくなる。

(碇司令……!?)

全てを知る、謎多き司令。アスカの件もあり、いつになく真剣な表情をして電話に出る。

「はい、こちらNERV特殊監査部、加持リョウジ一尉」

『私だ』

「碇司令、本日はどのような趣で?先日仰せつかったことは、まだ大分先ですが……」

『その件はまた改めて命じる。先程、君とセカンドチルドレンに本部への転属命令を出した。すぐに荷物を纏めてこちらに来たまえ』

ゲンドウからの思わぬ辞令に、加持の勘が告げる。これは、アスカの変化と関係があると。

「!?随分とまた性急な……理由を伺っても?」

『大したことではない。セカンドチルドレンには、こちらでサードチルドレンにその戦闘技術を叩きこんでもらう。君には彼女の護衛と……こちらでの極秘任務を頼みたい。指示は君が到着し次第……また改めて話す』

 

 

アスカもまた、真剣な表情を浮かべながら加持の横でゲンドウと彼の会話を聞いていた。

(碇司令の言葉……柔らかくなってる。シンジ……説得できたのね。アタシと加持さんの転属命令……もう日本に行ける。シンジに会える!)

真剣ながらも、嬉しさで内心ニヤニヤしているのを懸命に悟られないようにするアスカ。そんな彼女に、携帯が差し出される。

「加持さん?」

「碇司令からだ。君と話がしたいそうだよ」

アスカは携帯を受け取り、耳に当てた。

「お電話変わりました。セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーです」

『……こうして直接話すのは、初めてになるか』

「はい、そうだと思います。碇司令」

『……話は全て、シンジから聞いた。すまなかったな、アスカ君』

電話の向こうで頭を下げる気配がしたので、アスカは慌てて声をかけた。

「あ、頭を上げて下さい!もう、済んだ話ですから。……それに、エヴァのパイロットになれなかったら、私はシンジたちに出会えていないので。感謝してます、そのことについては』

『……ありがとう。息子を、よろしく頼む。シンジに変わる』

少しして聞こえてきたのは、この世界では初めて聞く、されどとても懐かしい声だ。

『……アスカ?』

「シンジ?」

『……』

「……」

二人は少しの間無言で、お互いの存在を確かめ合った。少しした後、沈黙を破ったのはアスカだ。

「……聞いてた?アタシ、もうすぐそっちに行けるから。ちゃーんと、アタシの部屋、準備して待ってなさいよ!」

『……もちろん。アスカの大好きなもの、作って待ってるから』

「……ありがと、シンジ。……愛してる」

『……ぼ、僕も愛してるよ。アスカ』

 

 

 

NEON GENESIS EVANGELION RETROGRESSION

EPISODE3 True Love




ぎこちないながらも、親子関係の再構築を始めるゲンドウとシンジ。加持の心の動き。両親との絆を取り戻したアスカと、義父として初めて接するゲンドウ。そして……待望の主人公カップルの電話越しの再会。次回は、早くも来日が決まったアスカ、シンジ、ミサト、加持にスポットが当たります。お楽しみに。
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