世界は色で満ちている
それは当たり前にあるもので、
誰も、それを特別意識することはない
色は空気と同じようなものなのかも知れない
でも、もし、
色を特別にとらえる人間がいたら
その人間が見る世界とは、
一体、どういうものなのだろうか
__________________
朝、ごく普通の住宅街の一軒家
その一室で僕は目を覚ました
楓「__朝......だよね。」
僕は衛宮楓
今日から月ノ森学園に通う、
別にお金持ちでもなんでもない、
普通の一般家庭の生まれの男です
楓(今日から、高校生なんだ。)
僕の目には新しい制服が写ってる
月ノ森は裕福、もしくは優秀な人が集まる
本来なら、僕なんかが踏み入れる事はない
そのはずだったんだけど......
楓(校舎、綺麗だったなぁ......)
風景画みたいに綺麗な校舎だった
偶々、近くを通りかかって、一目惚れだった
どうせ3年間も通うなら、あんな所で過ごしたい
その思いで先生の反対を押し切って受験した
でも、頑張った甲斐あったなぁ......
楓「って、今何時だろ__へ?」
時計に目を向けた瞬間、僕は絶句した
僕の目がおかしくないなら。
時計の針は8時10分を指している
今日の集合は8時30分のはず......
楓「う、うわぁぁぁあ!!!」
僕はベッドから飛び降り
急いで制服に着替えて
階段を駆け下りた
__________________
楓「__お、おはよう、母さん!」
夏葉「あら、起きたのね?」
リビングに来ると、
母さんがエプロンをつけ
いつも通りの緩い声で話しかけて来た
そして、首を傾げた
夏葉「どうしたの?制服なんて着て?」
楓「今日、入学式だよ!」
夏葉「......え?」
僕がそう言うと、母さんは目を丸くした
そして、横のカレンダーを確認し
段々と顔が青くなっていった
夏葉「ひゃぁぁぁあ!!!」
楓「忘れてたの!?」
夏葉「あ、明日だと思ってたわ!」
楓「もう流石、僕の母さんだよ!」
夏葉「と、取り合えず、急いで準備するわ!」
母さんは急いでリビングを出て行き
ドタドタと階段を駆け上がる音がした
その後、またリビングのドアが開いた
一勇「おーう、楓ー。」
楓「あ、おはよう、父さん。」
一勇「どうしたよ?高校の制服なんて着て?」
楓「今日、入学式。」
一勇「......え?」
父さんは母さんと同じようにカレンダーを見て
段々と顔を青くした
本当に、似たもの夫婦というか......
一勇「わ、忘れてたぁぁぁあ!!!」
楓「もう、流石だよ!」
一勇「い、急いで準備してくる!!」
楓「まぁ、保護者はまだ時間あるから......」
一勇「おう!......っと。」
楓「?」
リビングを出ようとした父さんは
急に足を止めて、僕の方を向いた
そして、財布からお札を出した
一勇「父さんからの入学祝だ。」
楓「え?」
一勇「高校生活、ガンバレよ。」
父さんは僕の肩に手を置いた
別に、無理してお小遣い渡さなくてもいいのに
楓「父さん......」
一勇「ふっ。」
楓「一つ、言いたいことあるんだけど。」
一勇「なんだ?」
楓「そのパジャマのズボン、破れてるよ。」
一勇「......なに!?」
父さんは自分のズボンを確認した
父さんがリビングに来た時から気付いてた
かなりひどい破れ方してるけど、
まぁ、母さんの仕業だろうなぁ......
一勇「だ、だからお隣さんが笑ってたのか!」
楓「ま、まぁ、そうだろうね。」
一勇「かっこつかねぇなー!ははは!」
楓「それが父さんだよ。」
一勇「ひどいな。まぁ、いいだろう!着替えてくる!」
父さんはリビングを出て行った
僕はリビングにある時計を確認した
楓「......あっ。」
遅刻ギリギリって事忘れてた
時計は8時17分
これは......
楓「は、走らないと!!」
僕は慌てて家を出て
桜並木を眺める余裕のないまま
月ノ森まで急ぐことになった
__________________
そこそこ長い道のりを速くない足で走り
なんとか、時間内に月ノ森についた
まだ結構、登校中の人もいる
せ、セーフ......
楓(僕のクラスは......うっ。)
クラスの表の前には結構な人がいる
これは少しだけしんどいな......
でも、クラスを確認しないと
楓(え、えっと、クラス......)
?「__そこのあなた、大丈夫?」
楓「え?ぼ、僕ですか?」
?「えぇ。顔色が悪いようだけれど。」
クラスを確認しようとしてると
僕と背が変わらない女子生徒が話しかけて来た
すごく綺麗な人だ
こんなきれいな人もいるんだ
楓「す、すみません。人混みが苦手で......」
?「そう。」
楓「......」
?「あなたの名前は何かしら?」
楓「衛宮楓、です。」
?「そう。」
女子生徒は僕を少し見た後
クラス表が貼ってある方を見た
そして、再度、僕の方を見た
?「あなたはB組よ。衛宮楓君。」
楓「は、はい。ありがとうございます。」
?「体調が悪いなら無理はしない事ね。」
女子生徒はそう言うと、
どこかへ歩いて行った
すごく、綺麗な人だった
少しだけ体調が良くなった気がする
楓「あれ?」
足元を見ると、
緑色のハンカチが落ちていた
これは、さっきの人のだ
楓(どうしよう。今から届けに行く、のは厳しいし。)
何とか空いた時間に私に行けるかな
見つけるのは出来るし
僕はそう考えて、急いで教室に向かった
__________________
教室に来ると、想像より賑やかだった
イメージでは、もっとピシッとしてると思ってた
けど、意外と普通の高校っぽい部分もあるんだ
そう思うと、少しだけ安心した
楓(ぎりぎりだった......)
僕が席に着くと8時25分
もう少しで遅刻する所だった......
楓(取り合えず、一旦目を閉じよう。)
教室の中くらいの人数なら大丈夫
流石に慣れてるから
でも、過度な人混みは頭が痛くなる
僕の持ってる難点の1つだ
楓(さっきの人、綺麗だったな。)
綺麗な水色の人
目が大きくて、姿勢も良くて
歩き方も綺麗で、モデルみたいだった
あれがお嬢様か......
楓(雲の上の存在言って、ああいう人の事を言うんだな。)
?「ねぇ~?」
楓「うん?」
誰かが話しかけて来たので
僕はゆっくり目を開けた
?「もう移動だよ~?大丈夫~?」
楓「あ、す、すみません。すぐ行きます!」
僕は席から立ち上がり
急いで廊下に出て移動を始めた
?(せわしない子だな~。)
__________________
月ノ森の入学式ってすごい緊張する
なんか、どこかで見たことがあるような人もいるし
見るからにお金持ちそうな人もいるし
胃に穴が開きそうだ
司会『__新入生代表の挨拶。』
楓(代表?どんな人だろ。)
?「はい。」
楓「!」
新入生代表として呼ばれたのは、
さっき見た、綺麗な水色の人だった
この人、やっぱりただモノじゃなかったんだ
水色の人は悠然と真ん中を歩いて、壇上に上がった
瑠唯『新入生代表の八潮瑠唯です。』
楓(八潮瑠唯かぁ......)
すごくオーラがある
堂々と挨拶をする姿も様になってるし
相当すごい人なんだな
楓(それにしても、綺麗だなぁ。)
?「すごく見てるね~。」
楓「え?あ、さっきの。」
七深「私は広町七深だよ~。同じクラスの~。」
楓「衛宮楓です。」
僕は広町さんに頭を下げた
普通に喋っちゃってるけど、大丈夫なのかな
駄目だろうけど
七深「かえ君って呼ぶことにするよ~。」
楓「え、まぁ、どうぞ。」
七深「それでさー、かえ君てるいる......じゃなくて、八潮さんが気になるの~?」
楓「え?気になると言うか、綺麗な人だなーと。」
七深「ふむふむ~。」
広町さんはニヤニヤしながら僕を見てる
なんなんだろうか
七深「分かるよ~。可愛いもんね~。」
楓「まぁ、そうですね。」
七深「気持ちは分かるよ~。」
何の気持ちだろう
ていうか、さっきからにやけ過ぎだし
変わった子なのだろうか
七深「頑張りなよ~。」
楓「???」
広町さんと話してるうちに
入学式は終わり、
僕は教室に戻った
__________________
教室に戻った後は担任の先生の紹介
後は事前に出てた課題の提出をして
その日は下校することになった
僕はすぐに教室を出て、廊下を歩いてる
楓「あ、いた。や、八潮さん!」
瑠唯「はい?って、あなたは今朝の。」
楓「はい。今朝はありがとうございました。」
瑠唯「別にいいわ。それで、何か用かしら。」
楓「えっと、これ、落としてましたよ。」
瑠唯「あら。」
僕は八潮さんにハンカチを渡した
八潮さんはそれを受け取りポケットに入れた
瑠唯「ありがとう。助かったわ。」
楓「いえいえ。八潮さん、綺麗な水色で見つけやすかったです。」
瑠唯「っ!?」
楓「じゃあ、僕は失礼します。」
僕はそう言って
下駄箱に向かって歩きだした
今日はなんだか、すごく満足だ
”瑠唯”
瑠唯(な、なぜ......!?///)
私は困惑していた
同時に激しい羞恥心を感じていた
だって、今、彼は水色と言った
それは......
瑠唯(なぜ、私の下着の色が......!?///)
まさか、見られていた?
でも、そんなはずは......
しかも、彼がそんな人には見えない
どういうこと......?
七深「あ、るいるいだ~。」
瑠唯「広町さん。」
七深「どうしたの~?」
瑠唯「......なんでもないわ。」
七深「?」
瑠唯「失礼するわ。」
私は迷いを晴らすように歩いた
取り合えず、この件は忘れましょう
考えても自分を追い込むだけよ
七深(どうしたんだろう~?)
これが、色の少年こと衛宮楓と
月ノ森の才媛、八潮瑠唯の出会い
そして、高校生活の始まりだった