色の少年   作:火の車

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寝不足

 ”七深”

 

 バンドのメンバーが揃って、

 

 本格的に活動がスタート~

 

 ......の、はずだったんだけど

 

楓「......」

七深「か、かえ君、大丈夫~......?」

透子「なんか、すっごい気分悪そうだけど?」

楓「だ、大丈夫だよ。気にしないで。」

 

 最近、かえ君の調子が悪い

 

 目の下にクマが出来てるし、

 

 若干、顔が白くなってる気がする

 

 目に見えて疲労が溜まってる

 

つくし「そのクマ、ちゃんと寝れてるの?」

楓「あー......ちょっとだけ寝れてないかも。テスト勉強にかかりっきりで。」

ましろ「テスト勉強......?」

楓「うん。月ノ森は内容が難しいから......」

 

 かえ君は笑みを浮かべてる

 

 でも、少しだけそれは引きつってて

 

 どこか脆さを感じる

 

瑠唯「......無理は良くないわ。」

楓「!」

瑠唯「徹夜での勉強は逆効果よ。しっかりと睡眠をとって、効率よくするべきよ。」

楓「それは、分かっています。」

瑠唯「そう。」

 

 るいるいはそう言って、

 

 置いてあるバイオリンを手に取った

 

 そして、私達の方を向いた

 

瑠唯「なら、練習を再開しましょう。」

つくし「そ、そうだね!(またリーダーっぽいこと言われた!)」

楓「じゃあ、僕はいつも通りにしてるね。」

七深「がんばろ~!」

 

 私達はいつも通りの配置に付いた

 

 そして、楽器を構えた

 

瑠唯「さっきの続きから。失敗した部分を意識して。」

透子「オッケー!」

ましろ「が、頑張ります。」

瑠唯「それじゃあ__」

楓「__っ......!」

 

 るいるいのスタートの合図

 

 それが口から出る前に、

 

 どこからかバタっという音が鳴った

 

 私達は音がした方向に顔を向けた

 

七深「か、かえ君!!」

ましろ「衛宮君!?」

瑠唯「......っ!!!」

 

 そこでは、かえ君が倒れていた

 

 私は頭が真っ白になった

 

 気づけば、かえ君に駆け寄っていた

__________________

 

 ”瑠唯”

 

 彼が倒れてすぐに広町さんは家の方に行った

 

 他の3人も近くのドラッグストアに何かを買いに向かって行き、その結果、私は眠っている衛宮君と2人になった

 

瑠唯「......」

 

 症状なんて睡眠不足だとすぐに分かる

 

 少ない期間ではあるけれど、

 

 彼の体力が人並み以下だと分かってる

 

 そんな彼が寝不足になればすぐに倒れる

 

 そんなこと、火を見るより明らか

 

瑠唯(何を、そんなに気負う事があるの?)

 

 テスト勉強、彼はそう言った

 

 たかが、学校での定期テスト

 

 なのに、彼はここまで無理をする

 

瑠唯(あなたは、何だと言うの?)

 

 やはり、彼の事は理解できない

 

 やるべきことやる、その意識は良い

 

 でも、ここまで必死になる事でもない

 

 前の事も同じことが言える

 

 私を助けるのに必死になる意味もない

 

瑠唯「......教えて、衛宮君。あなたは何者で、何があなたをそうしてるのか。」

楓「......僕は、弱者です......」

瑠唯「っ!起きていたの。」

楓「眠りが浅いので......あはは。」

 

 彼は少し笑いながらそう言った

 

 でも、まだ無理をしている

 

 心配をかけないように無理やり笑ってる

 

瑠唯「それで、弱者とはどういう事かしら?」

楓「そのままの意味ですよ、八潮さん。」

瑠唯「......」

楓「僕には色を見る以外取柄がありません。その取柄すら、現代社会じゃ使えません。」

 

 彼はあざ笑うような声でそう言った

 

 それを見て、私は少し胸が痛んだ

 

 そんな事はない、そう言いたい

 

 けれど、今の彼を前にそんな言葉は易々と出せない

 

楓「それに対して、八潮さんは凄いです。」

瑠唯「!」

楓「なんでも出来て、かっこよくて......本当に憧れます。」

瑠唯(......そんな事はないわ。)

楓「出来れば、僕も八潮さんみたいになりたい......」

瑠唯(......眠った?)

 

 衛宮君はゆっくり寝息を立て始めた

 

 やはり、眠たかったのかしら

 

 なんとも可愛い寝顔で穏やかに寝てる

 

瑠唯「......衛宮君。」

 

 私は静かに彼の前髪に触れた

 

 少しだけあげてみると、

 

 彼の顔がハッキリと見える

 

瑠唯「私にも、出来ない事はあるわ。」

楓「......」

瑠唯(私は器用に人に優しくすることが出来ないわ。)

 

 衛宮君は細かな人の変化に気付く

 

 バンドのマネージャーの作業

 

 あれは彼だからこそ出来る仕事

 

 私は偶然、彼よりできる事が多かっただけ

 

瑠唯「あなたは、私の様になってはいけないわ。」

 

 彼にある、人間味

 

 私にはそれが欠落してる

 

 何でもできるとは空虚であると

 

 私はそう思う

 

瑠唯「あなたはそのまま、優しい心を持って__」

透子「__衛宮ー!取り合えず、栄養ドリンクとか買ってきたよ!」

七深「私も!なんか色々持ってきたよ!」

瑠唯「!」

 

 私は彼から急いで手を離し、

 

 平静を装いながら彼女たちの方を見た

 

瑠唯「彼は眠っているわよ。」

ましろ「そ、そっか、よかった。」

つくし「それにしても、びっくりしたね。」

透子「ほんと、そんなに大変なら休めばいいのにさー。」

つくし「責任感が強いというか、何と言うか......」

 

 4人は少し安心した様だ

 

 私もきっと、安心している

 

 彼の体調は恐らく大丈夫、

 

 起きたころにはきっと元気になってる

 

瑠唯(今は眠りなさい。)

 

 私は目を閉じ

 

 次の演奏のイメージトレーニングに入った

__________________

 

 ”楓”

 

楓「__う、ん......?」

 

 景色がぼんやりと見えてくる

 

 ここは、広町さんのアトリエだ

 

 僕はゆっくり、光に鳴らすように目を開けた

 

ましろ「あ、起きた......?」

楓「倉田さん......?」

ましろ「大丈夫?気持ち悪かったりしない?」

楓「うん、大丈夫。ごめんね。」

ましろ「ううん、全然!」

 

 記憶が断片的にしかない

 

 でも、なんだか八潮さんの顔を思い出す

 

 それと、前髪に触れられた感覚がある

 

七深「かえ君~!!」

楓「うわっ!ひ、広町さん!?」

ましろ、瑠唯「!!」

 

 意識がはっきりした瞬間、

 

 広町さんが抱き着いてきた

 

 寝て起きて、女の子に抱き着かれる

 

 うーん、夢かな?

 

七深「心配したよ~!」

楓「あ、ご、ごめんね?でも、もう元気だから。」

透子「いやー、マジで焦ったよ。急に倒れるんだもん。」

つくし「勉強が大変なら、無理に来なくてもいいよ?」

瑠唯「いえ、それでは駄目よ。」

楓「八潮さん?」

 

 八潮さんは落ち着いた声でそう言った

 

 周りの4人も首をかしげてる

 

瑠唯「元は1人で勉強してこうなったのでしょう?だったら、同じ轍を踏むことなんてないわ。」

ましろ「で、でも、お勉強はしないと......」

瑠唯「誰がするなと言ったの?」

つくし「どういう事?」

瑠唯「簡単なことよ。」

 

 八潮さんは少し息を吐いた

 

 そして、鋭い目で僕の方を見た

 

 あまりに鋭くて、少し背筋が伸びた

 

瑠唯「私が教えるわ。」

楓「え?」

瑠唯「それなら、寝不足になんてならないわ。いいでしょう?」

楓「い、いや、僕にはとてもいいはないですけど、八潮さんがいいんですか?」

瑠唯「構わないわ。人に教えることで理解を深められるもの。」

 

 ......やっぱり、八潮さんは凄い

 

 全身から自信があるって事を感じる

 

楓「それでは、あの、よろしくお願いします。」

瑠唯「えぇ。」

透子(あー、出たよ出たよ。)

つくし(八潮さんの衛宮君にだけは甘々病が。)

ましろ(私も、混ぜてもらえないかな?)

七深(......負けないよ。)

楓「?」

 

 なんだろ、倉田さんと広町さん

 

 こっちを見てる?どうしたんだろ?

 

 なにか変な所とかあったのかな?

 

楓(折角、八潮さんが教えてくれるし、頑張ろう!)

瑠唯「今日は家に帰ってしっかり睡眠をとりなさい。分かったわね?」

楓「はい!八潮さん!」

瑠唯「......いい返事ね。」

七深、ましろ(かえ君(衛宮君)可愛い。)

透子(あー、これはー)

つくし(また面倒なことに......)

 

 それから僕は八潮さんに言われた通り家に帰った

 

 そして、その晩はゆっくり眠って

 

 明日に来る勉強にキッチリ備えた

 

 

 

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