色の少年   作:火の車

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二人のお昼休み

 熱が引いて、今日は学校に復帰だ

 

 1日休んじゃったのはかなり痛い

 

 けど、何より楽しい日々がまた始まるんだ

 

 今の僕はそっちを楽しいと思う気持ちが強い

 

 なんだか、不思議な感覚だ

 

楓(皆、元気かな?1日だけど。)

 

 広町さんはチャットの数が凄かったし

 

 倉田さんは画面越しに哀愁漂ってたし

 

 八潮さんは体温とか状態を聞かれた

 

 こうして考えると、すごく元気そうだね

 

 僕はそんな事を考えながら教室のドアを開けた

 

七深「__かえ君~!!」

楓「わっ!ひ、広町さん!?」

七深「心配したよ~!」

ましろ「な、ななみちゃん!ずるい!」

楓「ど、どうしたの?」

 

 教室に入った瞬間

 

 広町さんが飛びついてきた

 

 僕が転ばない程度に加減してる辺り、この行動が理性的なことが分かる

 

 でも、なんで?

 

七深「心配が行動に出てるんだよ~!」

ましろ「わ、私も......!}

楓「ま、待って、僕じゃ2人も支えられないよ!」

 

 復帰早々、騒がしい

 

 けど、元気そうで何よりだ

 

 女の子に抱き着かれるのも、悪い気はしないし

 

 でも2人は無理かな

 

 僕にそんな筋力は備わってないし

 

透子「朝から何やってんの?たくっ。」

楓「あ、桐ケ谷さん!昨日はありがとう!」

透子「あー、いいっていいって。あたしは桃缶持っていっただけだし。」

ましろ「と、透子ちゃん!」

七深「なんでかえ君のポイント稼いでるの~!」

透子「言いがかりにもほどがあるでしょ!」

 

 桐ケ谷さんは溜息を付きながらそう言った

 

 って、ポイント?そんなのあるの?

 

 いつからそんな制度が......

 

ましろ「ほんとに......?」

透子「ほんともほんとだって。な、衛宮?」

楓「そうですね。」

 

 桐ケ谷さんが面倒くさそうな顔でそう聞いてきたので、僕はそれに頷いた

 

 なんで、2人とも焦ってるんだろう?

 

 色を見た感じ、財布を落とした時くらい焦ってる

 

ましろ「え、衛宮君がそう言うなら......」

七深「かえ君が言うならほんとみたいだね~。」 

透子(あたしへの信頼、無さすぎじゃね?)

楓「そう言えば、八潮さんと二葉さんは?」

透子「八潮は生徒会で、二葉は寝坊。」

楓「二葉さん、大丈夫なんですか?」

 

 二葉さんが寝坊って珍しい

 

 疲れちゃってるのかな?

 

 バンドのリーダーもしてるし、負担があるのかな?

 

 だとしたら、手伝えることは手伝って行かないと

 

透子「まぁ、大丈夫っしょ。(ただドジってるだけだし。)」

楓「そうですか?」

七深「そうそう~。かえ君は広町に構ってたらいいんだよ~。」

ましろ「ず、ずるい!私も!」

楓「あ、あの、普通にお喋りじゃ駄目なのかな?」

 

 その後、僕はなんとか席に着き

 

 しばらく広町さんたちとお喋りをしたりしてた

 

 1日しか間が空いてなかったけど

 

 やっぱり、広町さんや倉田さんと話すのは楽しく感じた

__________________

 

 午前の授業を終えて、お昼休み

 

 今日、僕は1人で中庭でご飯だ

 

 広町さんは先生に呼ばれて職員室

 

 倉田さんと二葉さんはお手伝い

 

 桐ケ谷さんはクラスの人たちと食べてる

 

楓(うーん。)

 

 ほとんど誰かとお昼ご飯を食べてたし

 

 1人と言うのは結構寂しく感じる

 

 そう言えば、今日、八潮さんに会ってない

 

 本来は僕なんかが関われない高嶺の花のような人なんだけど

 

 会いたいって......そう思う

 

楓(八潮さんが来てくれたりしないかな?前みたいに。)

瑠唯「__あら、衛宮君。」

楓「あ、八潮さん!」

瑠唯「体調はいいみたいね。安心したわ。」

楓「はい!お陰様で、もう元気です!」

 

 八潮さんの事を考えてたら、来た

 

 なんだろう、すごく嬉しい

 

 そして、心臓が破裂しそうなくらい動いてる

 

瑠唯「広町さんと一緒ではないのね。」

楓「はい、先生に呼ばれて。」

瑠唯「そう。なら、一緒に食べましょうか。」

 

 八潮さんはそう言って僕の横に座った

 

 風邪で靡いた髪から爽やかな良い匂いがする

 

 女の人って、皆良い匂いがする

 

 高校生になって、初めて気づいた

 

楓、瑠唯「......」

 

 一緒にお昼ご飯を食べるのは良い

 

 でも、僕たちの間には会話が少ない

 

 八潮さんは元から口数が多い人じゃないし

 

 僕も、なんだか緊張して話せない

 

 けど、それも少し心地いいと思ってしまう

 

 僕は、少し変なんだろうか?

 

 ”瑠唯”

 

瑠唯(......何を話せばいいのかしら。)

 

 衛宮君の横に座って5分

 

 私はずっと、そのことを考えている

 

 共通の話題が少ない、私自身が不愛想

 

 そんな要素が重なって、一向に口を開けない

 

 今までの自分の行いを呪いたいわ......

 

瑠唯(彼は......)

楓「~♪」

瑠唯(......今日も可愛いらしわ///)

 

 会話はない

 

 だけれど、横を見れば彼がいる

 

 嬉しそうに鼻歌を歌う姿は愛らしい以外の言葉では言い表せない

 

瑠唯「それは、私達が練習している曲ね。」

楓「あ、分かりましたか?何回も聞いて頭に残っちゃって。」

瑠唯「素晴らしい鼻歌だったわ。才能があるんじゃないかしら?」

楓「あはは、ないですよ。」

瑠唯(......そうかしら。)

 

 歌を歌う衛宮君を想像する

 

 きっと、プロのような洗礼された動きは出来ない

 

 けれど、必死に頑張る、健気な姿を見せてくれるはず

 

 それはきっと、多くに人を引き付けると私は思う

 

楓「僕は、バンドみたいな激しいことは出来ないので。」

瑠唯「そう。(......?)」

楓「なので、八潮さんたちが演奏してるのを見るので満足です。」

 

 なにかしら、この違和感は

 

 バンドをする性格じゃない

 

 そう捉える言葉のはずなのに......どこか、違和感がある

 

瑠唯「......じゃあ、私はあなたの期待に答える演奏をしないといけないわね。」

楓「今でも、八潮さんのバイオリンは素敵ですよ。かっこいいし、綺麗です。」

瑠唯「......そうっ///」

楓「過去に月ノ森音楽祭で演奏したと聞いたことがあるので、いつか聴いてみたいです。」

 

 彼の頼みは断れない

 

 恋愛において、先に好きになった方が負け

 

 そう言う事を言ってる人がいた気がする

 

 けど、今はまさにそう思う

 

 だって、自分自身がその状況なんだもの

 

瑠唯「いつでも聴かせるわ。2人なら。」

楓「そうですか?じゃあ、楽しみにしてます!」

瑠唯「......っ///(ま、眩しいわ......///)」

 

 本当に敵わない

 

 私が私じゃなくなっていく

 

 けれど、不思議と不快に感じない

 

 むしろ、変えられるのが悪くないとすら思ってしまう

 

瑠唯「......衛宮君。」

楓「はい?」

瑠唯「その......あなたが交際する女性に求める条件、と言うものはあるのかしら?」

楓「え?」

瑠唯「......」

 

 なんてことを聞いてしまったんだろう

 

 こんな事を言うなんて、暗にあなたが好きですと伝えるのと同義

 

 これでは......

 

楓「相手に求める条件......」

瑠唯「......(そうだったわ。)」

 

 彼は、鈍感とよく言われている

 

 その事を今思い出した

 

 助かったわ

 

楓「その、この人だ、って思わせてくれることでしょうか。」

瑠唯「?」

楓「この人じゃないといけないって、思える人といるのが、1番幸せなんだと思います。」

 

 彼は迷いのない目でそう言う

 

 少し、分かる気がする

 

 私も、彼に対して似た感情を抱いてる

 

 彼でなければ、受け入れられる気がしないもの

 

楓「あ、で、でも、僕がその人に釣り合わない可能性の方がはるかに高いので、努力しないとですね!」

瑠唯「そうかしら。あなたは十分__」

楓「?」

瑠唯「なんでもないわ。」

 

 あなたは十分、素敵な人間よ

 

 そんな言葉、とても口には出せない

 

 口に出せば、私はどうにかなってしまう

 

 羞恥心とは、厄介なものね

 

楓「八潮さんはどうなんですか?」

瑠唯「どう、とはどういう事かしら?」

楓「その、相手に求める条件とかです!」

瑠唯「私の、相手に求める条件......」

 

 衛宮君の質問の後、少し考える

 

 なぜ、私は彼に好意を抱いているのか

 

 助けられたことが理由なのは分かっているけれど

 

 それをあえて言語化するなら......

 

瑠唯「......あなたのように、強く優しい心を持った、愛嬌のある男性、かしら。」

楓「え......?」

瑠唯「っ!///ご、ごめんなさい、そういうつもりでは......///」

楓「わ、わわ分かってます!!(び、ビックリした......)」

 

 無意識のうちに言葉が出てしまった

 

 彼も焦っている

 

 いつもならこんなことはないというのに

 

楓「ぼ、僕は教室に戻りますね!!あの、そろそろお昼休みも終わりなので!!」

瑠唯「あっ......」

 

 彼は早口でそう言い

 

 走って教室の方に行ってしまった

 

 真っ赤な顔をした彼はやはり愛らしかった

 

 けれど......今の私と大差ないわね

 

瑠唯「......教室に戻らないと。彼の言う通り、もう時間だわ。」

 

 どうしましょう

 

 今の顔の紅潮と激しい動悸......

 

 これらは教室に戻るまでに収まるかしら?

 

 戻ってくれないと困るわ、だって

 

 ......こんな姿、他には見せられないもの

 

 

 

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