色の少年   作:火の車

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暴露

 日が落ちて、段々と外は暗くなってきた

 

 街灯もポツポツと点き始めて

 

 もう、夜になろうとしてる

 

 そんな中、僕は広町さんのアトリエにいる

 

楓、七深「......」

 

 さっきからずっと、重い空気が流れてる

 

 アトリエに来てから30分、僕たちは無言のまま

 

 心臓がバクバクして何を言えばいいか分からない

 

 ど、どうしよう......

 

七深「......かえ君。」

楓「う、うん。」

七深「私達、友達だよね......?」

楓「それは、もちろん。」

 

 僕は小さく頷いた

 

 広町さんがあえて普通を演じる理由

 

 それを知っても、変わる気はない

 

 だって、そうしたら......

 

七深「じゃあ、話すよ......」

 

 広町さんは静かにそう言い

 

 少しだけ息を整えた

 

 僕もその様子を見て固唾を飲んだ

 

 こんなに辛そうな広町さん、初めて見た

 

 その事にかなり動揺した

 

七深「昔、私は周りに特別だって言われてきたんだ......と言っても、ただ成績が学年トップで芸術の分野で注目されただけなんだけど。」

楓(なるほど、だから、こんなアトリエまで持ってたんだ。)

七深「学年一番の有望株って、勝手に言われてた。」

 

 ちょっと納得した

 

 月ノ森と言っても一高校生

 

 そんな子がアトリエを持ってるのは不自然だった

 

 けど、そういう事情があったんだ

 

七深「最初は良かったんだ。みんな、なんでも出来るんだって認めてくれて、私の周りにはたくさんの友達がいた......けど、いつの日か、全部無くなった。」

楓「!」

七深「テストで満点を取っても、コンクールで賞をとっても、あっそうとか、嫌みだとか......一緒のコンクールに出てた子には嫌がらせとかされて。それで段々、私の周りからは人が消えていった......」

楓「......っ」

 

 胸が苦しい

 

 広町さんは、どんなに辛かっただろう

 

 彼女はただ、普通に生きてただけ

 

 それでも、周りから見ればそれは異質なもので

 

 知らない内に距離を取られてしまう

 

 そんなの、残酷以外の何物でもない......

 

七深「だから、普通になろうって思った。そうすれば、変な期待も嫉妬もない、ただの学生として生きてられる。友達だって、それから少し出来るようになった。」

楓(広町さん......)

 

 大体、事情は分かった

 

 広町さんはただ、友達が欲しかっただけなんだ

 

 そのために自分なりに考えて、結論を出した

 

 広町さんは自分を曝け出せない苦しみより、友達がいない苦しみを拒んだ

 

 けど、それじゃあ......

 

楓(広町さんは結局、苦しいままじゃないか......!!)

 

 そんなの許されていいわけがない

 

 広町さんはいい人だ

 

 こんな僕と一緒にいてくれて、笑ってくれる

 

 困ったときはいつも助けてくれる

 

 弱い僕を肯定してくれる

 

 僕はそんな広町さんを見捨てるなんてできない

 

楓(そんな事をしたら、僕に生きる価値なんてない......!!!)

七深「かえ君......?」

楓「......広町さん。紙とペンとカッター貸して。」

七深「え、い、いいけど......」

 

 広町さんは首を傾げながら立ち上がり

 

 テーブルの上にさっき言った物を準備してくれた

 

楓「広町さん。これから僕がすることを絶対に止めないで。」

七深「え?」

 

 広町さんの心は言葉なんかじゃ救えない

 

 いや、今この場で全てを解消することは出来ない

 

 だからまず、少なくとも僕の前だけでも、本当の広町さんでいてもらう

 

 必要なのは、誠意を示すこと

 

 正直、色々と怖い

 

 けど、これくらいの事をしないと

 

 あとは僕の覚悟一つのみ

 

 僕は紙にある事を書きなぐった

 

七深「こ、これは......?」

楓「契約書って言うのかな?よく分からないけど、そんな感じの物。」

七深「!(こ、これ......!)」

 

 契約書に書いたことはいくつかあるけど

 

 分かりやすく言うと『僕は広町さんを裏切らない。』

 

 ただ、それだけ

 

楓「きっと僕は広町さんを遠ざけた人たちよりもさらに平凡だと思う。出来る事なんてほとんどない、無能って呼ばれる人間であることは間違いない。」

七深「そ、そんなこと......!」

楓「でも1つ、違う事がある。」

七深「......?」

楓「それは、僕が広町七深っていう人間を好きだってことだ!!」

七深「!?///」

 

 僕は思い切りそう叫んだ

 

 友達として、広町さんが好きだ

 

 だからこそ、彼女には本心でいて欲しい

 

 そのためなら、なんだってする

 

楓「こんな事で揺らぐほど、広町さんの心の傷は浅くないと思う......だから......!!」

七深「何してるの!?」

楓「......っ!!!(~!!!痛い痛い痛い!!!)」

 

 カッターで自分の指を切った

 

 こんなに痛いのは初めてだ

 

 正直もう泣きそう......

 

 けど、泣き言なんて言ってられない

 

 僕は契約書に拇印をつけた

 

楓「僕は僕の全力を持って、広町さんと向き合う!!」

七深「かえ君......(なんで、そこまで......)」

楓「ただ、大好きな友達と一緒にいたい!友達に辛い思いをして欲しくない!本当はバンドの皆の前でもだけど、難しいなら、僕の前だけでもいい、本当の広町七深を曝け出してほしい!!」

七深「本当の、私......?」

楓「うん。きっと、そう出来るのが、本当の友達だと思うから。」

 

 なんとか、言い切れた

 

 息切れして目の前がチカチカしてる

 

 けど、これでいい

 

 それだけ全力を出せたんだ

 

 きっと、僕の気持ちは伝わってくれたはず

 

七深「......バカだよ。」

楓「っ!」

七深「そんな事のために、そんなことまでしちゃうなんて......かえ君は相変わらず、大馬鹿だよ......」

 

 広町さんはそう言いながら僕の手を握った

 

 その声は酷く震えていて

 

 綺麗なソファに水滴がポタポタと零れてる

 

七深「ずっと、辛かった......自分が、好きになれなくて......」

楓「じゃあ、広町さんが自分を好きになれるまで付き合うよ。」

七深「うぅ、グス......かえ君......!」

楓「大丈夫。僕は勿論、バンドの皆だって、広町さんを受け入れてくれるよ。だから、いつか、自分を好きになれる日が来る。勇気をもって。」

 

 今まで、たくさんの色を見て来た

 

 その中で、感情で色の様子が変わるのも見た

 

 けど......

 

楓(こんなに綺麗な喜びの色、初めて見た。)

 

 きっと、広町さんは欲しかったんだ

 

 ただ、自分を好きでいてくれる友達を

 

 才能とか、能力とか

 

 そう言う浅い部分じゃなくて、もっと深い

 

 心で通じ合える友達が

 

楓「死んでも裏切らないよ。それしか、僕には出来ることがないから。」

七深「ううん......十分だよ......!」

楓「なら、よかった。」

 

 そう言って、僕は広町さんに笑いかけた

 

 よかった

 

 もう、広町さんは大丈夫だ

 

 色を見ればわかる

 

 この色はそう簡単には乱れない

 

楓(よかった、一歩、進めた......)

七深「か、かえ君......」

楓「どうしたの?」

七深「かえ君は私を友達として好きなの......?///」

楓「うん、友達として好きだよ?それがどうかしたの?」

七深「......やだ///」

楓「え?」

 

 広町さんが何かを呟いた

 

 やだって聞こえたけど

 

 どうしたんだろう?

 

楓「えっと、何が?」

七深「ただの友達じゃ、やだ......///」

楓「......?(どういう事だろう?)」

 

 ただの友達じゃ、やだ

 

 つまり、普通じゃなく

 

 何か特別である必要がある

 

 じゃあ......

 

七深「だから、その、私と///__」

楓「と言うことは、親友の方がいいって事?」

七深「__え?」

楓「ただの友達じゃない友達、つまり親友って事だよね!いいよ!広町さんとなら、それも楽しそう!」

七深「......あ、うん、そうだね~!親友だよ~!」

楓「親友......なんだかいい響きだね!」

 

 友達だけじゃなく親友まで......

 

 こんなの生まれて初めてだ!

 

 いいなぁ、親友......

 

七深(かえ君の鈍感さは筋金入りだね~......)

楓「親友かぁ、親友......!」

七深(でも、かえ君が嬉しそうだし......まぁ、いいかな~!)

楓「広町さん?」

七深「どうしたの~?」

楓「そろそろ時間も遅いし、帰ろうかなって。」

七深「え?」

 

 広町さんが一気に悲しそうな顔をした

 

 え、ど、どうしたの?

 

 何か変なことでもあったの?

 

七深「......今日は帰らないで?」

楓「え?でも、明日は学校だし。」

七深「大丈夫。車で送るから......お願い、今日はかえ君と一緒にいたいの......」

 

 広町さんが腕に抱き着いてきた

 

 こ、困ったな

 

 固まったみたいに腕が動かせない

 

 広町さん、力強くない?

 

楓「じゃ、じゃあ、家に連絡してくれるなら。」

七深「わ~い!やった~!」

楓「あ、あはは、嬉しそうだね。」

七深「もちろん、すっごく嬉しいよ~!」

 

 これだけでこんなに喜んでくれるなら

 

 まぁ、僕の事情くらいどうにかしよう

 

 折角、前向きになってくれたところだし

 

七深「かーえ君!」

楓「今度はどうしたの?」

七深「大好きだよ~!///」

楓「っ!!(」

七深「~♪(お洋服の用意とかしないと~♪)」

楓(......?)

 

 広町さんは僕から離れ、どこかに電話をかけ始めた

 

 なんだろ、今の感じ

 

 心臓が飛び跳ねた?

 

 そして、今も激しく動き続けてる

 

楓(また、これだ。)

 

 あの日と同じ現象

 

 一体、なんなんだ?

 

 全く分からない、けど、なんでなってるかは分かる

 

楓(さっきの広町さん、可愛かった。)

 

 広町さんの容姿がいいのは見たらわかる

 

 今までも普通に可愛いと思ってた

 

 けど、それは普通にって事で

 

 他の皆にも同じように思ってる

 

楓(だけど、今のは......)

 

 少し赤味がかった、綺麗な笑顔

 

 それは今までの普通に可愛いじゃなく

 

 まるであの日の八潮さんみたいで

 

 特別、可愛かった

 

 

 

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