”空港”
6月も下旬に入り、梅雨も明けてきたころ
とある空港に一気の飛行機が着陸した
機内から出て来る乗客
全員、どこか疲れた様子を見せている
?「__うぉー!日本だー!」
だが、その中に1人、紅葉の様な赤色のセミロングくらいの長さを1つにまとめた髪
頭にはゴーグルを装着し、金色の目を輝かせた男がいた
年齢は20代前半と言ったところだろうか
?「日本では6月で、そろそろ梅雨が明けたころかな!この空気、日本の匂いがするなぁ......」
その男は大きく深呼吸をした
それはまるで本当に空気を味わっているよう
?「楓、元気にしてるかな?」
その男は小さくそう呟き
大荷物を受け取った後
空港から軽い足取りで出て行った
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”楓”
土曜日のお昼
今日は朝からアトリエでバンド練習だった
僕も少し勉強したり、練習のお手伝いをしたり
いつもすることがない休日を有意義に過ごせてる
今は、休憩中でお昼ご飯を食べてる
透子「__いやー、ななみすごすぎ。」
七深「あはは~、それほどでも~。」
瑠唯「目覚めさせたのは衛宮君よ。お手柄だわ。」
楓「いえ、そんな。あれは僕のためでもあるので......」
ましろ(謙遜してる。可愛い。)
つくし(ずっと思ってるけど、何したんだろ。)
透子「そー言えばさー。」
楓「?」
話の途中、桐ケ谷さんが僕の方を見た
何か気になる事でもあるのかな?
そう思い、僕も桐ケ谷さんの方を向いた
透子「衛宮ってそいつのすごさみたいなのも分かるんでしょ?」
楓「はい、分かりますよ。だから、ずっと広町さんをすごい人だって思ってたんです。」
透子「だったらさ、こんなすごい奴の色見て驚いたりしなかったの?てゆうか、なんで判断できんの?」
楓「あー......」
ましろ(あれ、珍しく複雑そうな顔してる?)
瑠唯(彼のこんな表情は珍しいわね。)
桐ケ谷さん、すごい所に気付くね
確かに、八潮さんや広町さんみたいな色を初めて見ていれば、僕は間違いなく腰を抜かしてる
けど、僕は特に驚かず受け入れられた
それには、理由がある
楓「実は、色が見えるようになって初めて見た色が、八潮さんや広町さんと同じ種類のものだったんです。」
透子「はぁ!?」
つくし「そんなにすごい人が身近にいたの!?」
楓「えっと、身近と言うか......兄です。」
ましろ、七深、瑠唯「!?」
そう言えば、兄がいるって言ってなかったっけ
だから、こんなに驚いた色をしてるんだ
別に隠してたわけではないんだけどな
つくし「お、お兄さんがいたんだ。」
楓「うん。」
透子「どんな人?衛宮の兄貴だし、似てたり?」
楓「いえ、兄は僕とは真逆です。色んな才能に恵まれて、体も強くて、容姿も綺麗でカッコいい。」
ましろ「そ、そんな人が......お隣なのに知らなかった。」
楓「いつも僕に構ってくれてたし、高校からは海外に行っちゃったからね。大学も確か向こうで入って、もう卒業してるはずだけど。」
七深(かえ君のお兄さん、是非ともご挨拶を......!)
そう言えば、日本に帰ってこないのかな?
卒業したら帰って来るって言ってたけど
何だかんだで連絡はないし......
七深「すごさは分かったけど、性格はどうなの~?」
透子「そうだ。衛宮の真逆じゃ、相当悪いんじゃないの?」
楓「いえ、普通に優しくて気さくですよ?少し変ですけど。」
透子「そりゃ、別の意味で真逆だ。」
ましろ(衛宮君が変って言うのって、相当なんじゃ......)
瑠唯(彼が尊敬してる辺り、かなり優れた人間のようね。)
皆、お兄ちゃんにすごく興味があるんだなぁ
折角、初めてお友達が出来たし、会ってもらいたいな
けど、今どこにいるかもわからないし
難しいかなぁ
楓(今、何してるんだろ。)
それから僕はお昼ご飯を食べて
皆の練習が始まると同時に勉強を始めた
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練習は3時になった所で終った
桐ケ谷さんはいつも通りダウンして
倉田さんと二葉さんも疲れた色をしてる
やっぱり、八潮さんの練習はハードだ
でも、皆のレベルも着々と上がってるし
効果は確かにあると感じられる
透子「衛宮ー......」
楓「はい、水ですよね?」
透子「飲ませてよー。」
楓「零れますよ?」
瑠唯「......桐ケ谷さん?」
透子「げっ」
桐ケ谷さんと話してると八潮さんが近づいて来た
すると、桐ケ谷さんは体を起こし
少し、後ずさって行った
瑠唯「あの練習では満足できないようね。」
透子「い、いや、ちょっとした冗談じゃん?何もそんな怒んなくても......」
七深「え?激辛ソースで元気になりたい?」
ましろ「......」
透子「おい、マジでやめろ!謝るから!ななみはそれしまって、シロは今までにないくらい冷たい目やめて......」
桐ケ谷さんは本気で怯えてる
広町さんのソースは確かに怖いけど
あんなになるかな?
七深「も~、そういう冗談はやめなよ~?......間違えて色々しちゃいそうだし~。」
透子(こ、こわっ。ななみ、なんかヤバくなってね?)
ましろ「私は怒ってないよ?」
透子(怒ってはないだろうな。だって、軽蔑した目してたし......)
瑠唯「桐ケ谷さん、次の練習からあなたに特別なメニューを与えるわ。」
透子「お前はまだ怒ってんのかよ!?」
た、大変そうだ
もっと、労わってあげないといけないかな?(逆効果)
カップ焼きそばとか用意する方がいいかな?
つくし「折角、練習も早く終わったし、何か食べに行かない?」
七深「お、いいね~。」
瑠唯「時間もあるし、断る理由もないわ。衛宮君は?」
楓「僕も大丈夫ですよ。」
ましろ「私も。」
透子「じゃ、クレープ食べに行こうよ!そばクレ美味しいんだよね~!」
楓、七深(クレープかぁ、最近食べたなぁ。まぁ、いいけど。)
透子「よっしゃー!レッツゴー!」
楓、七深「おー。」
つくし(透子ちゃん、若干ヤケになってる。)
それから、僕たちは皆でアトリエを出て
この前行った駅前のクレープ屋さんに向かった
......そばクレって何なんだろう?
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駅前まで来た
暑いからか、テーブル席はまだ空いてるし
ここで食べるのには特に問題はない
今はみんなで注文をしてる
透子「__あたしはそばクレだけど、皆はどうする?」
七深「広町は激辛地獄クレープ~。」
ましろ「いちごが入ってるのがいい。」
楓「あ、僕も。」
瑠唯「......生クリームとチョコだけでいいわ。」
つくし「カスタードと生クリーム!」
そばクレ......ちょっと重すぎる
気になってたけど、完食できる気がしない
そもそも、炭水化物に炭水化物は......
その、ちょっとカロリーが高いんじゃ......
瑠唯「ここは私が代表として出すわ。」
透子「おぉ!太っ腹ー!」
瑠唯「後で返すのよ。衛宮君以外。」
透子(お前は衛宮に甘くないと死ぬのか?)
楓「い、いえ、キッチリ返します。すいません。」
流石に奢られるのはちょっと......
申し訳なさ過ぎて逆に喉を通らなそうだ
相手が八潮さんだったら尚更
瑠唯「そう......」
七深「かえ君はこういう子だから~。」
ましろ「良いって言っても聞かなそうだもんね。」
透子「じゃあ、あたしはクレープ持って行ってるから!八潮、よろしく!」
つくし「衛宮君も行くよ。」
楓「はい。(3人は何を話してたんだろ?)」
そんな疑問を抱きつつ、僕はテーブル席に移動した
最近、すごく甘い物食べてるなー
それにしては体重は増えないけど......
なんで太らないんだろう?
透子「__いただきまーす!」
瑠唯「うるさいわよ。」
つくし「ま、まぁまぁ、盛り上がって食べるものだし!」
ましろ「美味しい......」
皆、八潮さんにお金を返して
それぞれのタイミングでクレープを食べ始めた
前のと同じだけど、美味しい
七深「かえ君はまた苺なんだね~。」
楓「うん。苺が好きっていう訳ではないんだけど。」
ましろ(衛宮君とおそろい♪)
瑠唯(......味が濃いわ。)
楓「?」
八潮さん、クレープ苦手なのかな?
ちょっとだけ、顔をしかめてる気がする
確か味の濃いものは苦手って言ってたし
かなり無理して付き合ってくれてるんじゃ
楓「八潮さん、大丈夫ですか?味が濃いものは苦手なんじゃ。」
瑠唯「大丈夫よ。」
透子「ルイー!顔が怖いぞー!」
瑠唯「いつも通りよ。」
ましろ、つくし(確かに。)
瑠唯「......表情がいつも通りと言っただけで、いつも怖いとは言ってないわよ?」
ましろ、つくし(ば、バレてる!?)
楓(怖い事なんてあったかな?)
ずっと優しいと思うけど
話すときは軽く微笑んでくれるし
しかも、可愛いし
「__でー。」
透子「ん?」
楓「どうしました?」
透子「いや、今、衛宮が呼ばれてたような気がして。」
つくし「そう?」
ましろ「聞こえなかったけど。」
僕も特に何も聞こえなかった
そもそも、人も結構いるし、聞き間違いもある
しかも、僕なんかを呼ぶ人間なんていない
「__えでー。」
透子「いや、やっぱり聞こえてるって!」
瑠唯「今のは、私も少し聞こえたわ。」
楓「本当ですか?」
ましろ「あれ......?」
つくし「あの人、こっちに走って来てない?あの荷物持ってる人。」
楓「え?」
僕は二葉さんが指さした方を見た
その方向には、こっちに走ってくる影が一つ
すごい荷物があるのにすごいスピードだ
って、あれ......
?「__楓ー!」
透子「やっぱりいたじゃん!って、誰?」
つくし(女......いや、男の人だ!綺麗な人だなぁ)
?「久しぶり楓ー!」
え、なんでここに?
か、海外にいるんじゃないの?
楓「お、お兄ちゃん!?」
ましろ、七深、透子、つくし「お兄ちゃん!?」
瑠唯(この人が?)
皆、驚いた顔と色をしてる
でも、多分、僕が一番驚いてる
さっき話をしたばっかりなのに!
なんでこんなにタイミングがいいんだ......
?「わぁ!楓に一杯友達がいる!しかも、みんな可愛い!」
楓「な、なんで帰ってきてるの!?」
?「勿論、楓に会いたくなって帰ってきたんだよ!大学も卒業したし!」
お兄ちゃんは変わらず元気に話してる
理由はまぁ、本気と冗談が半々くらいかな
昔からこんな感じだし
楓「お兄ちゃん。自己紹介して。皆が困惑してるから。」
凪沙「あ、そっか。じゃあ、僕は衛宮凪沙!好きなもの楓、趣味も楓!」
透子(いきなりぶち込んできやがった!!)
つくし(超ブラコン!?)
七深「流石お義兄さん。」
ましろ「すごく分かります!」
瑠唯「素晴らしいご趣味だと思います。」
楓「3人とも!?こ、これは冗談ですから!」
お兄ちゃん、昔からこれ言うよね......
別に僕は嫌じゃないし良いんだけど
お兄ちゃんのイメージを損なうからやめて欲しい
ていうか、広町さんの言い方おかしくなかった?
凪沙「いい子達だね、楓!」
楓「と、取り合えず、家に帰っててよ。僕ももうすぐ帰るから......」
七深(こんなかえ君も珍しい~。)
凪沙「そうだねぇ。荷物も置きたいし、父さんと母さんにも会いたいしね!」
お兄ちゃんはそう言って僕に背中を向けた
こんな大荷物、よく持てるよね
僕なら絶対に潰されてる
凪沙「じゃあ、僕は先に帰ってるね!それじゃあ、楓の友達の皆もまた!」
つくし「は、はい(また?)」
嵐のように去って行った
流石、お兄ちゃんだ......
相変わらず、一瞬での勢いもすごい
そして、この喧騒の中でも色が異様に目立つ
楓「え、えっと、あれが僕のお兄ちゃんです......」
透子「確かに、真逆だったわ。」
つくし「似てる所もない事もないけど、真逆だね。」
七深「お義兄さんとは話せることが多そうだね~。」
ましろ「うん、すごく語り合えそう。」
瑠唯「素晴らしい趣向を持っている方だったわ。」
僕は溜息を付き、一口クレープを食べた
お兄ちゃんが帰ってきたのは嬉しいけど
本当に、なんで帰ってきたんだろう?
昔から謎が多いし、よく分からない