色の少年   作:火の車

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悪感情?

 僕は今、頭を抱えてる

 

 お兄ちゃんが教師になって、僕の事を公言

 

 別にお兄ちゃんが普通なら全く問題はなかった

 

 けど、現実は容姿端麗、能力は折り紙付き

 

 そして、ここはお金持ちの生徒が集まる月ノ森学園

 

「__あなたのお兄様をぜひ紹介してください!」

「いえ、私に!」

「家なら、親族全員、裕福な生活をさせられますわよ!?」

楓(はぁ......)

 

 そんな条件が揃えば、こうなってしまう

 

 皆、優秀なお兄ちゃんが欲しい

 

 もしくは外見にひきつけられた人もいる

 

 人って難しいよね

 

 興味もなかった人間とこんな理由で話さないといけないんだから

 

楓(疲れた......)

 

 今までお兄ちゃんと学校が被らなかった

 

 けど、一度でも同じ学校になっていればこうなってたんだと思う

 

 日本にいる時は女の人がよく家の前にいたし

 

透子「みんな、衛宮が困ってるだろ!詰め寄るのは止めとけって!」

「桐ケ谷さん。」

「まぁ、そうですわね。彼の気分を害することはしたくありませんし。」

「今日は引きましょう。」

 

 桐ケ谷さんの一声で周りにいた人たちが離れていった

 

 か、かっこいい

 

 女性だけどイケメンだ

 

七深「かえ君、大丈夫?あれだけ集まったら色が混ざってるんじゃない?」

楓「それはまだ大丈夫だよ。これくらいなら。」

透子「それにしても現金な奴らだよなー。眼中にもなかったくせにわざわざ隣のクラスから来てるのもいたじゃん。」

楓「お兄ちゃんは完璧だから、仕方ないよ。」

 

 お兄ちゃんは実際に凄い

 

 あんなすごい大学を首席で卒業して

 

 こんな大勢の人に注目されてる

 

 弟としてこれ以上に誇らしいことはない

 

透子「まっ、カタログスペック通りなら完璧だよね。(ブラコン以外は。)」

七深「普通の女の子なら誰でも、ってレベルじゃないかな~?」

透子「引く手あまただろうねー。」

楓「そう......なんだよね。」

 

 昔から、お兄ちゃんは期待されてきた

 

 父さんと母さんは自由に生きろって言ってたけど

 

 学校の先生や他の周りの大人は違った

 

 それは100点なんて優しいものじゃない

 

 勉強、運動、その全てで120点を求めらる

 

 なのにお兄ちゃんはそれすらも軽々飛び越えて来た

 

透子「弟としては複雑な感じ?あんなに凄くて、モテる兄って。」

楓「いえ、お兄ちゃんのことは尊敬してるので......」

透子「そーなんだ。(だったら、その顔は何だっての。)」

七深(かえ君、やっぱりちょっと様子がおかしいんだよね。)

 

 2人は僕の方をジッと見てる

 

 ちょっとだけ疲れたかも......

 

 今日は朝だけでも色々あったし

 

七深「ねぇ、かえ君__」

凪沙「楓ー!」

楓「お、お兄ちゃん!?」

凪沙「家庭科準備室にいたけど女の子しか来ないし、僕から来たよ!」

 

 うん、それはそうだよね

 

 だって、自分で居場所言ってるんだもん

 

楓「お兄ちゃん、朝のあれはなに?」

凪沙「いやー、楓への愛が爆発しちゃって、つい。」

楓「僕、すごく恥ずかしかったよ?」

凪沙「可愛かったよ!」

楓「......」

透子(カレカノにしか見えねぇ。)

 

 だから、可愛いは止めて

 

 もしかして、お兄ちゃん、僕の性別忘れてる?

 

 そんなに男っぽくない?

 

 いや、確かに昔はよく間違えられたけど

 

透子「せ、先生って衛宮......弟のこと好きすぎないですか?」

凪沙「勿論!楓が女の子なら、とっくに僕がお嫁さんにしてるよ!」

楓「出来ないよ......(出来てもしないけど......)」

凪沙「まぁ、それは流石に冗談だよ。楓は恋愛対象ではないからね。ただ、世界一大切なだけ!」

透子(ただとか、そうゆうレベルじゃないんだよなー。)

 

 お兄ちゃんに恥じらいはないのだろうか

 

 いや、無いと思う

 

 恥ずかしがる姿なんて見たことないし

 

楓(はぁ......)

凪沙「じゃあ、僕は授業の準備をしないといけないから行くよ!楓をよろしく!」

七深「はい!」

透子「は、はいー。(嵐みたいな人だなー。)」

 

 お兄ちゃんは教室から出て行った

 

 なんでだろう、どっと疲れた

 

 嫌いとか、そういう感情はあり得ないけど

 

 もう少し、配慮して欲しい......

 

透子「お疲れだね、衛宮。」

楓「はい......」

 

 僕は小さな声で返事した

 

 周りからの視線で余計に疲れた

 

 恥ずかしいし

 

七深「でも、いいお兄さんだよね~。弟の様子を見に来るなんて。」

楓「......うん、いいお兄ちゃんだよ。」

七深(うーん......)

透子(やっぱ変なんだよな。)

楓「少し、席を外しますね。」

 

 僕はそう言って席を立って

 

 教室を出た

 

 そして、戻ってきたのはお昼休みが終わる直前だった

__________________

 

 ”透子”

 

 衛宮の様子がおかしい

 

 あの兄に振り回されてるから、とも思ってた

 

 けど、あの人が帰って来る前から衛宮はあんな感じだった

 

 嫌いってわけじゃないだろうけど

 

 なんだかなー

 

透子(__うーん。)

 

 放課後、あたしはまだ教室にいて

 

 衛宮もまだ、帰る準備をしてる

 

 まぁ、あいつには世話になってるし?

 

 こんな時くらい、な?

 

透子「おーい、衛宮ー。」

楓「はい?」

透子「放課後、時間ある?」

楓「ありますが、どうしましたか?」

透子「遊びに行くよ!」

楓「え?」

 

 衛宮は驚いた顔をしてる

 

 こいつはストレス解消の仕方を知らない

 

 いや、正確にはストレスを感じないようにしてる

 

 人に悪感情を抱くのを嫌がってる、かな

 

 そんな感じがする

 

楓「あの、僕、お勉強が__」

透子「いいから!」

楓「あの、ちょっと!?」

 

 あたしは無理やり衛宮を引っ張った

 

 どこ行くかはまーったく決めてないけど

 

 まっ、どうにかなるっしょ!

__________________

 

 と、いう訳で

 

 取り合えず、静かな公園に来た

 

 いやね、いつもならそこらへんで遊ぶけど

 

 衛宮は人混みとか騒がしいのが苦手

 

 だから、そんな場所言ったら本末転倒じゃん?

 

 だから、日陰多くて静かで落ち着けるここ!

 

 我ながら模範解答でしょ!

 

楓「__すごい。ここ、2時間以内には誰も通ってない。」

透子「そうでしょー!あたしはここを通ってる人なんて見たことない!」

楓「それは、大丈夫なんですか?」

 

 さて、衛宮の話を聞くのは良いけど

 

 最初からそれじゃ疲れるよねー

 

 だから、なんか違う話から入ろ!

 

透子「衛宮ってさー。」

楓「はい?」

透子「好きなやつとかいないのー?」

楓「!?」

 

 あたしがそんな質問をすると

 

 衛宮の顔は一瞬で真っ赤になった

 

 なんか、女子みたいな反応だな

 

 まぁ、それがまかり通るのが衛宮なんだけど

 

楓「え、えと、それは......分かりません。」

透子(ありえませんとは言わないんだ。)

楓「最近、自分が分からないことが多くて......」

透子(......え、重い話?)

 

 まさか、マジな話?

 

 なんか冗談半分で聞こうと思ってたのに

 

 あたし、まさか話題間違えた?

 

楓「元々、かっこいいって尊敬してた八潮さんを可愛いと思ったり、最近は壁が無くなった広町さんにも同じようことを思ったり......」

透子「な、なるほど。」

 

 マジじゃん

 

 いやでも、それはちょっとあたし的にマズい

 

 それじゃ、シロが報われなさすぎる

 

 これはまたどうにかしないと

 

透子「じゃ、じゃあ、衛宮は2人が好きなの?」

楓「そうだとしたら......自分が不誠実すぎて死にたくなりますね......」

透子「い、いやいや。」

 

 こ、こいつ、真面目すぎだろ

 

 2人と付き合うのとかはそりゃ不誠実だけどさ

 

 高校男子だしさ、好きになるくらいはあるんじゃない?

 

透子「それくらいはいいじゃん?付き合うときに相手が1人ならいいだけだし?」

楓「いえ、2人とも僕よりも遥に上の次元の人なので......僕なんかにこう思われたら迷惑でしょうし。」

透子(なわけないだろ!多分、告られたら泣いて喜ぶだろうし!)

 

 こいつ、鈍感って言うか卑屈すぎだろ

 

 自己肯定感があまりにも低すぎだし

 

 てか、あそこまであからさまなのになんで気づかないんだよ

 

透子「衛宮は自分のこと好きになる女子とか考えたことある?」

楓「ありません。いるわけないので。」

透子「(いるんだよな。)じゃあ、今考えよ。」

楓「......?」

 

 衛宮は困惑してる

 

 こいつ、マジでヤバいんじゃ......

 

 ルイはまだともかくとして、ななみは気づけよ

 

 すごいアピールされてんじゃん

 

透子「仮に衛宮を好きな奴がいて、告白してきたとする。相手はまぁ、ルイとかななみとかシロを想像してみ?」

楓「はい。」

透子「衛宮はそのうちだれかに告白されたら、どう答える?」

楓「......」

透子「!」

 

 衛宮の雰囲気が暗い

 

 真剣に考えてるって感じもする

 

 けど、それだけじゃない気がする

 

 ただ事じゃないよ、これ

 

 いつもの優しい雰囲気なんてないもん

 

楓「......全員、断ると思います。」

透子「!?」

楓「僕に、その資格はないです。お兄ちゃんとは違うので......」

透子(ど、どういう事?)

 

 待って、訳わかんない

 

 衛宮なら、絶対に受け入れると思ってた

 

 でも、その答えは待った逆で

 

 しかも、理由に関しては全くの謎

 

 資格がないって、一体......

 

透子「衛宮はさ、妙に卑屈だよね。」

楓「そうかもしれないですね。」

透子「そうなってる理由、聞かせてよ。」

楓「......」

 

 衛宮はうつ向いてる

 

 ちょっと踏み込み過ぎたかな

 

 自分の事を進んで話すタイプでもないし

 

透子「あの兄も、関係あるんじゃないの?」

楓「......お兄ちゃんだけではありません。むしろ、周りは何も悪くなくて、僕が悪いんです。」

透子「!」

楓「......お話しします。出来れば、他言はしないようにしてください。」

 

 衛宮はいつもより低い声でそう言い

 

 少しだけ押し黙った後

 

 ゆっくり、口を開いて行った

 

 

 

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