色の少年   作:火の車

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僕じゃない俺

 ”つくし”

 

 今日、私はラブレターを貰ってしまった

 

 嬉しいか嬉しくないかなら、もちろん嬉しい

 

 けど、お互いの事を考えたら断らないといけない

 

 まだまだ、私達は高校1年生だし

 

 正直、何をしたらいいかもわからない

 

 だから、断るために手紙に書かれてた校舎裏に来た

 

つくし(ど、どんな人が来るんだろう。)

 

 断ろうとは思ってる

 

 けど、私だって全く興味がない訳じゃない

 

 この状況に若干喜んでるのも事実なわけで......

 

 今、少しだけ複雑な気持ちでもある

 

?「__お、お待たせしました。」

つくし「あっ。」

?「遅くなってすみません......」

 

 校舎裏で10分くらい待ってると

 

 青い髪で身長は男子の中では程々くらい

 

 声は低いけど、優しいそうで腰が低い男子生徒だった

 

 誰だろう、この人?

 

?「ぼ......俺は、秋宮紅羽です。」

つくし「秋宮、君?」

紅羽「よ、よろしくお願いします。」

 

 秋宮君はそう言って深く頭を下げた

 

 緊張してるのか、喋り方がぎこちない

 

 こんな初心な人も中々いなさそう

 

 けど、なんだか、初めて会った気がしないような......

 

つくし「あの、秋宮君って、どこかで会った事ある?」

紅羽「えぇ!?そ、そんな事はないんじゃないかな!?ぼ、俺もずっと遠くから二葉さんを見てただけだし!」

つくし「そう?」

 

 なんだか、変な子だなぁ

 

 こんな子も月ノ森にいるんだー

 

 珍しいって言うか、おかしいとすら思える

 

 私はそんな秋宮君をジッと見ていた

 

紅羽(な、なんとかなる......?)

 

 ”紅羽”

 

 はい、ここまでで分かると思いますが

 

 秋宮紅羽の正体は僕、衛宮楓です

 

 なんで髪が青いのとか、声が低いのとか、二葉さんに顔がバレてないのか

 

 その辺りはお兄ちゃんに変装を手伝ってもらった

 

 髪はウィッグ

 

 声は気合でどうにかして

 

 顔は特殊メイクでどうにかしました

 

紅羽(ば、バレてないなら、良い感じに断って貰おう。)

つくし「えっと、今日はあのお手紙ありがとうね?」

紅羽「い、いえ、こちらこそ、わざわざ。」

つくし「それで、返事なんだけど......」

 

 二葉さんが話しを進めてくれてる

 

 これなら手早く終わらせられそう

 

紅羽(いや、でも、大丈夫なのかな......?)

 

 あのテニス部の人

 

 かなり二葉さんを嫌ってるように見えた

 

 ここで断られて全部終わるのかな?

 

 いや、終わるだろう

 

 そんなに暇な人じゃないはず、きっと

 

つくし「ごめんなさい。秋宮君の事は嫌いじゃないけど、告白は断らせて欲しいの。」

紅羽「は、はい、こちらも申し訳ありませんでした。今日は、ありがとう。」

つくし「うん、またね、秋宮君。」

紅羽「は、はい。」

 

 二葉さんはそれだけ言って歩いて行った

 

 その背中を見送り、僕はホッと息をついた

 

 よかった......胃袋吐き出しそうだ

 

 こんなに緊張するんだね......

 

紅羽(今日は帰って、勉強しないと......)

 

 僕はそんな事を考えながらその場を離れ

 

 家庭科準備室に向かった

 

 変装して人を騙すなんて、二度とごめんだ

__________________

 

 ”楓”

 

 翌日も僕はいつも通り学校だ

 

 テストも近いので授業も真面目に受けて

 

 休み時間もテスト対策で

 

 お昼休みは空き教室を借りて、皆でお弁当を食べてる

 

透子「__それで、ふーすけは昨日のどうなったの?」

楓「!」

 

 お弁当を半分食べ進めたころ

 

 桐ケ谷さんが二葉さんにそう話題を振った

 

 一瞬体が硬直したけど、僕はあくまで平静を装った

 

つくし「断ったよ。すごくいい人そうだったけど。」

ましろ「どんな人だったの?」

つくし「優しくて腰が低くて、青髪で顔は可愛い系、声は結構低かったかな?」

七深「名前は~?」

つくし「名前は、秋宮紅羽君だったよ。」

瑠唯「......?」

七深「あー......(察し)」

 

 僕、あの土壇場でよく名前思いついたよねー

 

 元の名前が秋関連だから適当に付けたんだけど

 

 うーん、中々いいセンスかもしれない

 

瑠唯「......衛宮君?」

楓「はい?」

瑠唯「二葉さんが言ってる秋宮君って、まさか......」

楓「い、いえ?僕じゃないですよ?髪だって青くないですし?」

瑠唯「誰もあなたとは言ってないわよ?」

楓「!?」

 

 マズい、完全にバレてる

 

 多分だけど広町さんも気づいてる

 

 この2人は流石に察しがいい

 

七深「かえ君~、やるね~。」

楓「あ、あはは......」

瑠唯(変装した衛宮君......悪くないわね///)

 

 ま、まぁ、本人に気付かれなければいいや

 

 なんだか変な汗が出て来た......

 

つくし「あ、ちょっとお花摘みに行ってくるね?」

透子「花摘み?なら中庭にもあるよ?」

つくし「そういう意味じゃないよ!///もう!///」

 

 二葉さんはそう叫びながら出て行った

 

 桐ケ谷さん......鈍感すぎるんじゃ

 

 流石の僕でも分かる事だったのに

 

楓「......?」

ましろ「衛宮君、どうしたの?」

楓「いや......(あの色は......?)」

 

 二葉さんが出て行った後

 

 窓の外で見覚えのある色が動いた

 

楓「す、すいません、僕もお手洗いに行ってきます。」

透子「ん?もって、行くのは衛宮だけじゃね?」

瑠唯「あなたはもう少し教養を身に付けなさい。」

七深「行ってらっしゃ~い。」

ましろ「早く戻ってきてね?」

 

 僕はそう言われ那から席を立ち

 

 教室を出て、取り合えず、お兄ちゃんの所に向かった

 

 ちょっと、マズいかもしれない

__________________

 

 ”つくし”

 

つくし「__ふぅ......」

 

 お花摘みを済ませ、私は廊下を歩いてる

 

 ほんと、透子ちゃんには困ったものだよ

 

 皆の前で言うなんて恥ずかしいのに

 

1「おい、二葉。」

つくし「はい?」

2「なんで、昨日すぐに帰ってたんだよ?」

3「お高く留まってんじゃねぇぞ?」

つくし「え?」

 

 いきなり男子生徒に口々にそう言われ

 

 私は一瞬、何が起きたのか理解できなかった

 

 なんで、この3人が怒ってるのか分からない

 

 昨日って、なんのこと?

 

つくし「あなた達って、A組だよね?何の用?」

1「だから、昨日の手紙だよ。見たんだろ?」

つくし「え、手紙?それは、人が来て断ったけど。」

1「は?適当なこと言ってんじゃねぇよ!」

 

 なんで怒鳴られてるの?

 

 え、私何もしてないよね?

 

2「お前が日頃から注意ばっかしてうるさいから呼び出して放置して笑ってやろうと思ってたのによぉ。さっさと帰りやがって。」

3「最低だな。このことは言いふらしてやる。」

つくし「どういうこと?昨日、書いてあった通りに校舎裏に行ったけど......」

1「言い訳はいらないんだよ!」

つくし「きゃ!!」

 

 私は1人の男子に腕を掴まれた

 

 運動部でガタイも良くて、力も強い

 

 逃げようとしても逃げられない

 

つくし「は、放して......!!」

2「いっつもムカつくんだよ。しっかりしてるか何だか知らないが小言ばっか言いやがって。このチビ。」

3「お前の事は言いふらしてやるよ。告白の現場に来なかったクソ女ってな!」

つくし「来なかったも何もちゃんと行ったもん......」

 

 目に涙が溢れて来た

 

 私は、委員長として役割を果たしてた

 

 なのに、それを否定されて悲しくなった

 

 他の皆も、こんな風に思ってるのかな......

 

 そんな後ろ向きな思考をしてしまう

 

1「お前を委員用の座から降ろしてやるよ。覚悟しろよ。」

紅羽「__いい加減にしたらどうなんだい?そこの人たち。」

つくし「あ、秋宮君......?」

1「あ?なんだお前。このチビの味方か?」

紅羽「そうだよ。昨日、二葉さんに手紙を渡したのは俺だ。」

2,3「は?」

 

 秋宮君はそう言ってこっちに近づいてきて

 

 男子生徒から私を引きはがし

 

 優しく抱き寄せてくれた

 

つくし「!」

紅羽「君たちの今の行動と言動は全て撮影させてもらった。これを学校に報告されたくなければ、もうこんな事は止めるんだ。」

1「なっ!いつのまに......!」

2「さ、流石にヤバいぞ。」

3「お、俺は何もしてない!」

 

 男子3人はそう言って少しずつ距離をあけ

 

 秋宮君から逃げるように後ずさった

 

 あの剣幕だった男子達が一瞬で落ち着いた......

 

つくし(秋宮君、すごい......)

紅羽「もう、二葉さんに手出しするんじゃないよ?その時にはこれを学校に報告するからね。」

1「......チッ、行くぞ。」

2,3「あ、あぁ。」

 

 秋宮君の言葉の後、男子達は去って行った

 

 この出来事の間、秋宮君の腕の中で小さくなって

 

 いつの間にか、制服を掴んでしまっていた

 

 そんな私に、秋宮君は優しく声をかけて来た

 

紅羽「大丈夫?二葉さん。」

つくし「う、うん。ありがとう......」

紅羽「礼には及ばないよ。俺が二葉さんを助けたかっただけだから。」

 

 優しく頭を撫でてくれる

 

 いつもなら子供扱いしないでって言う

 

 でも、今は恐怖心からか、すごく落ち着いてる

 

 暖かくて、ほっとする......

 

 けど、それ以上に今は心が重たい 

 

つくし「......秋宮君......」

紅羽「どうしたの?」

つくし「私って、うざいのかな......?」

紅羽「え?」

 

 そんな面倒な質問をしてしまった

 

 自然と、この言葉が漏れ出てしまった

 

 秋宮君は困惑した様子で首を傾げてる

 

 うぅ、申し訳ない......

 

紅羽「......そんなことないよ。」

つくし「......?」

 

 数秒間の静寂の後、秋宮君は優しくそう言った

 

 私が顔を上げて秋宮君の顔を見ると

 

 彼は優しくこっちに笑いかけていた

 

紅羽「二葉さんは、委員会も先生のお手伝いも頑張ってるじゃないか。」

つくし「......そう、なのかな。」

紅羽「うん。そんな健気な姿を見たから、俺はあの手紙を送ったんだ。だから、二葉さんは自分を卑下するんじゃなくて、自分を褒めてあげて欲しいんだ。」

つくし「......っ!」

 

 その言葉を聞いて、私の鼓動が早くなった

 

 優しい笑顔が眩しくて

 

 体温を感じると、段々と顔が熱くなってくる

 

 なんだろう、これ......?

 

紅羽「自信をもって、二葉さん。俺はずっと応援してるし、味方だから。」

つくし「あっ......」

 

 秋宮君はゆっくりと私を引きはがした

 

 その時、私は胸にぽっかり穴が空いたような感覚に襲われた

 

 寂しい、もう少し、そんな感情が溢れてくる

 

 あれ、まさか、私......

 

紅羽「俺は行くよ。じゃあね、二葉さ__」

つくし「ちょ、ちょっと待って!」

紅羽「ど、どうしたの?(バレた!?)」

つくし「その......///」

紅羽(バレては、ない?)

 

 顔が熱くなって、次の言葉が出ない

 

 心臓が動き過ぎて苦しい

 

 これって、そういう事なんだよね?

 

つくし「また、会いたいな......///」

紅羽「え?」

 

 私はなんとかそう言葉を絞り出した

 

 駄目だ、昨日フッたのに

 

 お互いのために良くないって思ってたのに

 

 逆に私が、秋宮君を......

 

紅羽「......きっと、また会えますよ。」

つくし「......?///」

紅羽「またどこかで。二葉さん。」

つくし「っ!///」

 

 秋宮君はそう言って微笑んで

 

 駆け足でどこかに行った

 

 追いかけたいと思った

 

 けど、あの微笑みに完全に見惚れてしまった私はその場で立ち尽くして、彼を追いかける事が出来なかった

 

 その後、私が正気に戻ったのは

 

 心配した透子ちゃんが迎えに来て、声をかけられた時だった

 

 

 秋宮君......また、すぐに会えるよね?

 

 

 

 

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