色の少年   作:火の車

37 / 86
責任?

 作戦が決まった翌日の日曜日

 

 今日は二葉さんを抜いたバンドの皆と集まってる

 

 ......秋宮紅羽として

 

透子「__うわぁ、マジで別人みたいじゃん。」

ましろ「こ、これはこれで(良い!)」

七深「いつもの可愛い系と違ってかっこいい系だね~。(いつか、このかえ君も......///)」

瑠唯「1度フラれたのが不思議なほどね。」

紅羽「勘弁......してください......」

 

 僕は頭を抱えながら項垂れた

 

 こんなつもりじゃなかったんだ

 

 本当なら、今頃全部終わってるはずだったんだ

 

 なんで、こうなったんだろうか......

 

透子(てか、結構イケメンじゃん///衛宮の性格でこの外見なら、もっと早く落ちてたかも///)

七深「それで、方針は前に考えた通りだけど、出来るの?かえ......紅羽君。」

紅羽「なんで言い換えたの?(いいんだけど。)」

七深「偶々つーちゃんが来ちゃったらやばいじゃーん。」

ましろ「つくしちゃん、今日はお家の用事で他県にいるよ......」

 

 この際、呼び方は良いや

 

 問題はなんて言ったって二葉さん

 

 広町さんの作戦通りに行けば、諦めてもらえる

 

 けど、もし仮に傷つけたりしたら......

 

瑠唯「作戦自体は悪くないわ。後は、えみ......秋宮君が上手くやるだけね。」

紅羽「そうですね。僕なんかで大丈夫でしょうか......」

 

 僕の演技力で大丈夫だろうか

 

 正直、今までもボロが出そうになってたし

 

 一人称とか気を抜いたら間違えそうになるし

 

ましろ「きっと大丈夫だよ!だって、すごくかっこいいもん!」

紅羽「そ、そうなんだ......ははっ......」

瑠唯(彼、過労で倒れるんじゃないかしら。)

紅羽「ま、まぁ、決行はテストが終わってお休みになるので、そこにします......」

 

 テストに関してはお兄ちゃんがいるから大丈夫

 

 勉強を教えるの上手だし

 

 今回は倒れる必要はなさそうかな

 

透子「まっ、頑張んな!夏休みは楽しいこと考えてるからさ!」

紅羽「え、何かするんですか?」

透子「それはお楽しみって奴じゃん!」

七深(聞いてないよ~?)

瑠唯(......聞いてないわ。)

ましろ(聞いてない......)

 

 あ、桐ケ谷さん、今初めて言ったね

 

 皆がそんな顔してる、色を見るまでもない

 

紅羽「まぁ、皆に合わせますよ。でも、取り合えず、二葉さんの事を僕......いや、俺が解決しないと......」

ましろ、透子、七深、瑠唯「っ!?///」

紅羽「えぇ!?」

 

 僕が意気込んでると、4人は机に頭を叩きつけた

 

 なんで、こうなったの?

 

 てゆうか、何もなかったよね?

 

ましろ(俺、俺って言った......///)

透子(ちょっとオラッた感じの衛宮もいいじゃん///)

七深(可愛いとカッコいい......うぅ~!揺れる~!///)

瑠唯(......ただの一人称だと言うのに、なぜ......?///)

 

 な、何だかよく分からない

 

 けど、嬉しそうだし、いいかのな?

 

 その場ではそう思う事にして

 

 テスト終了後のお出かけについて考えた

__________________

 

 ”つくし”

 

 テスト1日目の前日

 

 衛宮君から秋宮君の話を聞いた

 

 どうやら、お出かけの話、OKしてくれたみたい

 

 それを聞いてから私はかなり浮足立ってて

 

 家に帰るまでの事は全然覚えてない

 

つくし「......///」

 

 ベッドに突っ伏して、ボーっとしてる

 

 嬉しくて、顔が熱くて、ドキドキして

 

 思いっきり叫びたい気分だけど、妹たちがいる手前出来ない

 

つくし(夢、じゃないんだよね///本当に、テストが終わったらまた会えるんだよね?///)

 

 私は手足をバタバタさせた

 

 夢じゃない、本当にまた会えるんだ

 

 しかも、一緒に1日お出かけできるんだ

 

紅羽『......きっと、また会えますよ。』

つくし「きゃー!///」

 

 楽しみ過ぎる

 

 全くテストに集中できる気がしない

 

 少しでも集中したら秋宮君の姿が浮かんできちゃう......

 

つくし(も、もしかしたら......///)

 

紅羽『俺、やっぱり二葉さんの事が好きだよ。』

 

つくし(なーんて......///)

 

 また告白されたりするのかなぁ......

 

 されたら絶対に断れない

 

 そうなったら、2人で登校したり、お弁当食べたりしたりして......

 

つくし(本当に、楽しみだな......///)

つくし妹「__お姉ちゃん何してるの?」

つくし「な、なんでもないよ!?///」

 

 突然の妹の来訪に驚き

 

 赤くなった顔のまま妹に弁明した

 

 今でこの調子じゃ、1週間も持たないよ......

__________________

 

 ”紅羽”

 

 期末テストが終わった翌日

 

 今日は試験休みで学校がない

 

 そんな日に僕はウィッグにメイクを身に着け、公園の噴水前のベンチに座ってる

 

「__あの人、結構イケメンじゃない?」

「声かけてみる?1人だし。」

紅羽(二葉さん、早く来てぇ......)

 

 待ち合わせ時間までもう少しの頃

 

 周りには若い女の人がたくさんいて

 

 なんだかすごくヒソヒソされている

 

 お兄ちゃんのメイク、すごすぎるよ

 

 平凡な僕がこうなるんだもん......

 

つくし「__あ、秋宮君!!」

紅羽「あ、ふ、二葉さん!」

つくし「ご、ごめんなさい!!」

 

 二葉さんは慌てた様子で走ってきた

 

 もう夏なのにこんなに走って

 

 汗もダラダラかいてて、肩で息をしてる

 

紅羽「ど、どうしたの?あ、ハンカチだけど、これ使って!」

つくし「あ、ありがとう......///」

 

 そう言って、二葉さんは渡したハンカチで汗を拭い始めた

 

 こんなに焦って、どうしたんだろう?

 

 しかも、待ち合わせギリギリなんて言うのも考え難い

 

紅羽「何かあったの?そんなに焦った様子で。」

つくし「そ、それが、今日が楽しみで寝坊しちゃって......///」

紅羽「え?」

つくし「目覚まし時計も3個くらい用意したのに、全部セットし忘れて......」

紅羽「あっ(察し)」

 

 二葉さんのいつもの様子から考え、全てを察した

 

 普通ならありえないと思うけど、そう思えない

 

 本当に、しっかりしてるのに、おっちょこちょいだ

 

紅羽「あはは、二葉さんは面白いね。」

つくし「うぅ......///」

紅羽「少し休んでから行きましょうか。ほら、座ってください。」

 

 僕はそう言いながらベンチを指さした

 

 季節はもう夏

 

 熱中症とかも怖いし、ゆっくりした方がいい

 

紅羽「はい、スポーツドリンク、あと塩飴もあるよ。」

つくし「な、なんでこんな物まで準備してるの?」

紅羽「夏だからね。熱中症対策はしてて損はないよ。」

つくし(すごくしっかりしてる......///)

 

 まぁ、自分にも必要なものだけどね

 

 体が弱いから、夏ならすぐに倒れちゃうし

 

 塩分、水分の補給は必須だ

 

紅羽(さて、ここからどうしようか。)

 

 一応、今日の計画は考えてある

 

 出来るだけ、二葉さんには楽しんでもらわないといけない

 

 最後には、秋宮紅羽はいなくなるんだし

 

つくし「今日は、これからどこに行くの?」

紅羽「うーん、そうだなぁ......」

 

 二葉さんの要望

 

 それはまるで、漫画のようなデート

 

 だから、今日の待ち合わせはここなんだ

 

紅羽「この公園、色々出来る事があるんだ。」

つくし「そうなの?」

紅羽「うん、だからボートとかに乗ってみるのもいいかもね。」

つくし「!」

紅羽「衛宮君から聞いてるよ。そう言ってたって。」

 

 ごめんなさい、二葉さんから聞きました

 

 自分の事を名字で呼ぶのは変な感じだなぁ

 

 そして、騙すたびに心が痛くなってくる

 

つくし「い、行きたい!」

紅羽「よかった。じゃあ、そろそろ行こうか。」

つくし「うん!」

 

 それから、僕と二葉さんは立ち上がり

 

 公園の中にある湖に向かった

__________________

 

 この公園の中の湖はとても広くて

 

 ボートのレンタルもしてる

 

 休日、ここは有名なデートスポットらしい

 

 けど、今日は平日で結構すいてるみたいだ

 

つくし「__わぁ!すごい!」

紅羽「は、ははっ、そうだね!」

 

 僕は今、二葉さんと一緒にボートに乗ってる

 

 けど、ここで大問題が起きた

 

 そう、水の中に入ったオールが重すぎるんだ

 

 非力どころの話じゃない僕はもう、腕がはちきれそうだ

 

紅羽(くっ......筋力が足りない......!)

つくし「水の上って、なんだか涼しく感じる!」

紅羽「そうだね。空気もいい。」

 

 ボートに乗ったのは初めてかもしれない

 

 景色は良いし、風邪も気持ちい

 

 しかも、二葉さんが嬉しそうにしてる

 

 これなら、オールを漕ぐのがきつくてもおつりがくる

 

つくし「本当に漫画みたい!」

紅羽「衛宮君に聞いたからね。期待に答えられたようでよかったよ。」

 

 僕は笑いながらそう答えた

 

 二葉さんもやっぱり、普通の女の子だ

 

 漫画の世界に憧れて、それが現実になって嬉しそうで

 

つくし「秋宮君!今度はあっち行きたい!」

紅羽「が、頑張るよ。(腕、崩れ去るかも......)」

 

 そう苦笑いを浮かべつつ、僕はオールを漕ぐのを再開した

 

 あっちこっち湖の中を漂って

 

 偶に雑談しつつ、水の上で1時間ほど過ごした

__________________

 

紅羽(__なんとかなった!!)

 

 湖から出て、僕は心の中でそう叫んだ

 

 腕が本当にはち切れるかと思った

 

 けど、やりきったんだ

 

 腕に亀裂が入ったような感覚があるけど、二葉さんが嬉しそうで満足だ

 

つくし「次、どこいこっか!」

紅羽「そ、そうだなぁ......」

「うぅ......どうしよう......」

紅羽、つくし「?」

 

 次に行く場所を思い出そうとしてると、近くで子供が1人で泣いてる姿が見えた

 

 僕と二葉さんはそっちの方を向き

 

 少しして、お互いに顔を見合わせた

 

紅羽「どうしたんだろう?迷子?」

つくし「なのかな?放っておけないし、声かけてみる?」

紅羽「そうだね。」

 

 僕はそう言って女の子の方に走った

 

 色がおかしい

 

 悲しみの色が以上に濃い

 

 まるで、大切な人が亡くなった時みたいな......

 

つくし「どうしたの?なんで泣いてるの?」

女の子「え、お姉ちゃん、誰......?」

つくし「お姉ちゃんたちはあなたの味方だよ。何かあったの?」

紅羽(この色は、何だろう......?)

 

 異常だ、この色は

 

 今までこんな色は見たことがない

 

女の子「お母さんの......指輪......」

紅羽「え?」

女の子「死んじゃった、お母さんの指輪......投げ捨てられちゃった......!」

紅羽、つくし「なっ!!」

 

 俺も二葉さんも絶句した

 

 この子は今、母親の形見を捨てられたと言った

 

 それをちゃんと飲み込んでからは怒りがわいてきた

 

 誰だ、そんな惨いことをしたのは......?

 

紅羽「......誰が、やったの?」

女の子「そこにいる......男の子......」

 

 女の子が指さした方には小太りの意地悪そうな男の子がいる

 

 その近くには親と思われる女性

 

 その2人はノウノウと楽しそうに遊んでる

 

紅羽「......」

つくし「あ、秋宮君......?」

紅羽「......ごめん、少し目を閉じてて。」

 

 僕は小さな声でそう言い、2人の方に近づいた

 

 ......醜い

 

 こんなに醜い色も今まで見たことがない

 

 許せない

 

 ただの自己満足かもしれない、誰も望まないかもしれない

 

 けど、これを放ってたら、僕に生きる価値はない

 

紅羽「ねぇ、君。」

男の子「あ?なんだよ!」

紅羽「君さ、あの女の子の大切な指輪、投げたよね?」

男の子「へ!そうだけど?なんだ?仲間に入りたいのか!」

紅羽「......」

 

 可哀想な子供だ

 

 持つべき罪の意識を持ててない

 

 僕ならそんな事をしたら死にたくなるのに

 

 本当に......

 

男の子「__へぶっ!!!」

紅羽「......」

母親「ちょ、ちょっと!?何してるの!?」

 

 僕は男の子の頬をぶった

 

 母親が文句を言ってきてるけど、気にしない

 

 あの子の痛みはこの程度じゃない

 

紅羽「今、あなた達が1番大切なものを持ってこい!!!」

男の子、母親「ひえ......っ」

紅羽「全部どこかに投げ捨ててやる!!!あなた達がしたことはそう言う事だ!!!なのに、なのに......!!!」

 

 怒りが止まらない

 

 こんなの、恐喝もいい所だ

 

 でも、僕がどうなったっていい

 

 この2人を、どうにかできるなら

 

紅羽「今から僕があの湖に突き落としてやる!!!ついて来い!!!」

つくし「!!」

男の子「は、放して!!!いやだ、いやだ!!」

母親「きゃああ!!はなして!!息子をどうする気ですか!!」

紅羽「あなたも突き落とす!!」

 

 僕はない力で男の子を引きずる

 

 後ろからは鳴き声と喚き声が聞こえる

 

 けど、まったく気にしない

 

 この2人は許さない、絶対に

 

母親「あんな指輪と息子の命が平等な訳ない!!!放しなさい!!」

紅羽「......は?」

母親「あっ......」

男の子「うわっ!」

 

 母親の言葉を聞いて僕は男の子から手を放した

 

 今、なんて言った?

 

 亡くなった母親の形見

 

 あの子にとっては命と同じくらい大切なはずだ

 

 それを、平等じゃない?

 

紅羽「......もういいですよ、消えてください。」

母親「な、何の権利があって......」

紅羽「......譲歩、しましたよ。」

母親「っ!な、何なのよ!顔がちょっといいだけの癖に!」

男の子「ま、ママ~!!」

 

 あの親子はそう言って逃げていった

 

 僕としたことが、少し大人げなかった

 

 結局、何の生産性のない怒声を出しただけだ

 

 もっと、出来る事はあったのに

 

 そんな事を思いながら、二葉さんの方に戻った

 

女の子「お、お兄ちゃん......」

紅羽「ごめん、怖がらせちゃったね。」

つくし「う、ううん、そんな事ないよ!」

 

 正直、僕にできることは少ない

 

 しかも、これをするとバレてしまうかもしれない

 

 でも、そんな事言ってられない

 

紅羽「君の指輪は、死んでも見つける。」

つくし「でも、どうやって......?」

紅羽「大丈夫、出来るよ。」

つくし「え......?」

 

 もう2時間以上たってるんだろうか、色はない

 

 けど、僕にはある

 

 無くなった色を見る方法が

 

紅羽「__うぐっ......!!」

つくし「秋宮君!?」

紅羽(......見えた!)

 

 女の子の手から、色が伸びて行ってる

 

 幸い、湖の中には落ちてない

 

 木々の中に紛れ込んでるみたいだ

 

紅羽「ちょっと、行ってくる。」

つくし「だ、大丈夫!?フラフラしてるよ!?」

女の子「お兄ちゃん......!?」

紅羽(頭、痛いな......)

 

 いや、弱音はダメだ

 

 指輪を見つけるんだ

 

 その一心で僕は無理やり見てる色を辿った

 

 木々の間を通って、草をかき分けて

 

 伸び続ける色に向かって行く

 

紅羽「__ここに......あった!」

つくし「見つかったの!?うそっ!」

 

 僕の手の中には銀色の綺麗な指輪

 

 派手さは少ないけど、淡い色をしてる

 

紅羽「あっ......」

 

 そして、その指輪にある色を見て、視界が潤んだ

 

 あの男の子の色なんかどうでもいい

 

 それ以外の2つの色

 

 色はあの女の子の色、そしてもう1つ

 

 女の子に似てる、少しだけ濃い色

 

 これは......

 

紅羽「お母さんの、色か......」

女の子「お兄ちゃん......?」

紅羽「良い、お母さんなんだね......!この指輪、大切にするんだよ......!」

 

 僕は女の子に指輪をはめた

 

 まだ指が小さくて、親指にはめるのがやっとだ

 

 けど、これでいい

 

 お母さんは、いつもこの子を守ってる

 

 それくらい、お母さんが色濃く残ってる

 

女の子「ありがとう、お兄ちゃん!」

紅羽「もういいから、今日は家にお帰り。」

女の子「うん!またね!またお礼する!」

 

 女の子はそう言って元気に走って行った

 

 よかった、役に立てて

 

つくし「あ、秋宮君......」

紅羽「二葉さん、ごめんね。お出かけの続き、しよ__っ!」

つくし「!?」

紅羽(あれっ......?)

 

 体に力が入らない

 

 そうか、色を無理やり見た代償が来たんだ

 

 しまった......

 

紅羽「ご、ごめん。すぐに立つよ。」

つくし「いいよ、分かってるから。」

紅羽「っ!」

つくし「もうっ、やっぱり......」

楓「な、なんで......?」

 

 二葉さんはため息をついてからこっちに近づいて来て、僕のウィッグを外してしまった

 

 なんでバレちゃったんだ!?

 

 ボロはほとんど出てないはずなのに......

 

楓「あっ......!」

つくし「衛宮君!?」

 

 僕は地面に膝をついた

 

 目の前がふらふらする

 

 しかも、眼球の奥が焼けるように痛い

 

つくし「もう、仕方ないんだから......」

楓「!」

つくし「......これで、ゆっくりできる?///」

 

 二葉さんに、膝枕をされた

 

 後頭部に柔らかい感触がある

 

 上を見上げると、紅潮した二葉さんの顔が見える

 

 あれ、どうなってるんだろう?

 

楓「なんで、気付いたの......?」

つくし「最初はあの親子に怒鳴ってるときだよ。僕って言ってたから。」

楓「え?」

つくし「それで、あの指輪を見つけた時の動きで確信した。」

 

 ボロ、出まくりだったね

 

 指輪を探したことは仕方ないけど

 

 怒ってるときに一人称が変わるのは僕の落ち度だね

 

 全く僕は......

 

つくし「ほんと、衛宮君の無理する癖って治らないんだね。」

楓「いつでも、こうなわけじゃないと思うけど。」

つくし「偶にでも、心配な人は心配なの......私も。」

楓「?」

 

 二葉さんは沈んだ声でそう言った

 

 まぁ、流石に今日はちょっと無理したかもだけど

 

 でも、それであの子の笑顔を守れたんだ、悔いはない

 

つくし「秋宮君って、衛宮君だったんだね。」

楓「え、あ、ま、まぁ......」

つくし「じゃあ、あの男子生徒が言ってたのは本当だったんだね。」

楓「そうとも......言えなくもないかな?」

 

 全部バレちゃったか......

 

 二葉さんを傷つけないためだったのに

 

 結局、自己満足で全部台無しだ

 

楓「ごめんね、騙してて......」

つくし「別にいいよ?」

楓「え?」

つくし「助けてくれたのは確かだし、すごく楽しかったし......それに......///」

楓「?(あれ、色が......)」

 

 二葉さんの色が妖しく輝いた

 

 顔は紅潮してて、笑みを浮かべたまま僕の顔を覗き込んでる

 

 そして、しばらくして、ゆっくり口を開いた

 

つくし「秋宮君は、衛宮君だから......///」

楓「ま、まぁ......(そうだね。)」

つくし「そう、だから__ちゅ///」

楓「!?」

 

 その瞬間、僕の世界は止まった

 

 頬にはやわらかい感触

 

 そして、二葉さんの顔が視界にいっぱいに広がってる

 

 数秒して、二葉さんは離れていった

 

つくし「責任、とってよね///」

楓「へ......?」

 

 二葉さんは舌なめずりをしてからそう言い、僕はそんな素っ頓な声を出した

 

 何についてかは分からないけど......

 

 けど、その時の二葉さんの表情はすごく綺麗で

 

 いつもと様子が違う......と言う事は分かった

 

 ......責任って、なんなんだろう?

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。