”瑠唯”
2泊3日、彼と同じ屋根の下で過ごすことになった
少し前の倉田さんの家に行った時とはわけが違う
本当に、同じ建物の中に彼がずっといる
今、私はその事実のせいで落ち着かない気持ちになってる
瑠唯(ど、どうしましょう......///)
私自身、彼への好意は自覚してるし
性に関する知識も持ち合わせてる
そんな状況では、嫌でも意識してしまう
万が一、彼に迫られたりしたら......
瑠唯(......ありえないわ。衛宮君よ......?///)
万が一はあり得ない
彼は誰よりも真面目で、下心とは無縁
間違いなんて起きるわけがない
そう、頭では分かってる、分かってるのに......
瑠唯(少し、くらいなら......///)
今まで、私にそういう目的で近づいて来たであろう人物は少なからずいたし
それらは全て粉砕してきた
なのに、そんな私が今はこの様
下心を持って、彼と接してしまっている
瑠唯(......寝ましょう。これ以上考えたら、頭がどうにかなるわ......///)
私はそう考え、一旦思考を停止させ
もう寝てしまおうとした
けれど、何故かその日は眠れなくなって
最終的に、私が眠れたのは3時間後だった
__________________
”楓”
今日は旅行に出発する日だ
この3日間はずっとワクワクしてて
課題ももう9割くらい終わらせてしまった
あんまり早く終わらせ過ぎるのは良くないんだけどね
ましろ「__衛宮君!」
楓「あ、倉田さん!おはよう!」
ましろ「おはよう!」
家の前に出ると、同時に倉田さんも家から出て来た
夏らしい涼し気な服装で、手には大きなカバンを持ってる
女の子の荷物ってやっぱり多いんだなぁ
僕の2倍くらいあるんじゃないかな?
楓「すごい荷物だね?」
ましろ「え?そうかな?これくらいなら普通だと思うけど。」
楓「こ、これが普通なんだ。」
ましろ「うん、衛宮君は逆に少ないね?」
楓「まぁ、必要なものが少ないからね。」
普通、こう言う時って『荷物持つよ。』みたいな感じで荷物持ち位するんだろうけど......
僕は倉田さんよりも力が弱い
腕相撲でも全員に盛大に負けたしね
......我ながら情けない話だね
楓(はぁ......僕も筋力欲しいなぁ......ボディビルダーとまでは言わないから、せめて平均くらい......)
ましろ「どうしたの?」
楓「いや、なんでもないよ......あはは......」
ましろ(すごくダメージ受けてる。なんで?)
これについては、もう考えないでおこう
考えてもダメージを受けるだけだし
楓「そう言えば、僕たちはここにいていいんだよね?」
ましろ「うん、お迎えが来るらしいよ?」
楓「さ、流石、お嬢様だね......」
ましろ「そうだね。きっと、すごく高そうな車で来るんだよ。黒塗りのやつ。」
楓「あー。」
すごく想像できた
テレビとかでよく見るよねぇ
すごく高そうなリムジン、みたいな
けど、まぁ、言ってもテレビで見ただけ
流石に高校生のお迎えなんかにそんな車、来るわけないよ
ましろ「あっ、透子ちゃんから連絡来た。もう着くって。」
楓「じゃあ、もう車とか見えるんじゃな......い?」
ましろ「どうしたの、衛宮......くん?」
透子「__おーい!衛宮ー!シロー!」
楓、ましろ(なにあれ?)
桐ケ谷さんから連絡が来てすぐ
向こうから見たことも無いような車が走ってきた
その車の色は想像通りの黒色だけど
サイズが完全に予想外だった
どうやってこの住宅街を走って来たのか疑問に思うほど長くて
テレビで見たリムジンの2倍くらいある
楓、ましろ「」
七深「おまたせ~、2人とも~!」
透子「なんて顔してんの?ウケるんだけど!」
楓(あぁ、そうだ......)
ましろ(皆って、学生である前にお嬢様だった......)
僕と倉田さんは唖然としてる
だってさ、一般人は乗用車くらいしか見ないんだよ?
なのに、来たのは想像の斜め上を行くサイズのリムジンで
ビックリすると言うか、思考が停止した
透子「いや~、ルイが車用意してくれたんだよね~!」
楓「そ、そう、ですか。」
八潮さんのお家かぁ......
オリエンテーションの後に一回来たけど
こんな車には乗ってなかったような......
運転手「__どうぞ、衛宮様、倉田様。」
楓「あ、ありがとうございます。」
ましろ「お、お邪魔します(?)」
そう言って、僕と倉田さんは車に乗り込んだ
桐ケ谷さんはずッと笑ってたけど
僕達にとっては笑い事じゃないんだよ
なんて、ずっとそんな事を思っていた
__________________
楓「......」
ましろ「わ、わぁ......」
車の中も、僕たちの想像以上だった
やろうと思えば、この中でも生活できそうだ
うーん、色々とおかしいなぁ
瑠唯「おはよう、衛宮君。どうぞ、おかけになって。」
楓「は、はい。失礼しま__」
透子「おーいおい、ルイ?抜け駆けはさせないよ?」
瑠唯「......何のことかしら?」
楓(抜け駆け?)
って、何の事だろう
何かを競ってるのかな?
この状況で競うってよく分からないけど......
七深「ほら~、広町の横においで~。」
つくし「いや、私の方においでよ!」
ましろ「私の方が、落ち着くと思うよ......?」
透子「いや、あたしの膝の上乗りなよ!」
楓「き、桐ケ谷さんのはおかしくないかな?」
流石にそれは嫌だね
男以前に同年代として扱われてないし......
透子「いや、どうせ衛宮、あたし達より体重軽いじゃん。あ、ふーすけ以外か。」
つくし「それって小さいって事!?」
透子「衛宮が軽すぎるって事だよ。」
七深(そ、それを言われるとダメージが......)
ましろ(女子としての何かが傷ついてる......)
瑠唯(......)
楓(え、え?何だろ、この空気。)
なんだか、みんなが沈んでる気がする
この一瞬で何があったんだろう
僕の体重の話になったら、いつもこうなる
なんでだろう
透子「瑠唯と背も変わんないのに、すごいよねぇ。」
七深「とーこちゃん、それ以上は止めよう。私達の立場無くなるから。」
ましろ「うん......」
透子「な、なんかごめん。」
瑠唯(......私はベスト体重よ。健康上、何の問題ないわ。)
それにしても、どこに座ればいいんだろう
車酔いする方だし、端の方がいいなぁ
瑠唯「衛宮君は車酔いしそうだし、窓際に座りなさい。」
楓「え、あ、ありがとうございます。」
七深「じゃあ......かえ君の隣はジャンケンで。」
楓「え?」
ましろ、透子、つくし「いいよ......!」
皆の色が強張ってる
ジャンケンって、こんな感じだったっけ?
いや、流石に違うよね
七深「いくよ~......!」
広町さんの掛け声の後
皆一斉に手を出した
その結果は......
瑠唯「私の勝ちね。」
七深「うぅ......」
ましろ「負けちゃった......」
つくし「強い......」
透子「さ、3回勝負!」
瑠唯「往生際が悪いわね。」
楓「え、えっとぉ......」
なんで僕の隣なんて取り合ってるんだろう?
別に何の得もないのに
楓「僕の隣なんてなんの意味もないですよ?やっぱり、女性は女性同士でいた方が楽しいでしょうし!」
七深(そうじゃないよ~......かえ君~......)
ましろ(衛宮君、気遣いでダメージ与えないで......)
透子(こいつ、鈍感極めすぎだろ......)
つくし(折角だから、膝枕してもらおうと思ってたのに......)
よし、これで解決かな?(※違います)
皆、今日は様子がおかしいな
わざわざ、こんな事で争うなんて
楓「それじゃあ、八潮さん、失礼しますね?」
瑠唯「え、えぇ......///」
僕は八潮さんの隣に座った
近くに座ると、すごくいい匂いがする
なんて言うんだろ、花の匂いとかじゃない
八潮さんを表すような透き通った香りだ
楓(すごく、落ち着くなぁ......)
瑠唯(何を、話せばいいのかしら。)
透子(お前らは付き合いたてのカップルか!)
こうしてるだけで何時間でもいられそう
目を閉じたらすごく安心する
そう......まるで小川の流れる草原みたいに
瑠唯「......っ」
楓「?(今、肩が当たった?)」
瑠唯「ごめんなさい、少し寝不足で。」
楓「そうなんですか?」
珍しいな
八潮さんはいつも規則正しい生活をしてるのに
何か問題があったのかな?
色的に体調に問題があるようには見えないけど
楓「でしたら、眠った方がいいんじゃないですか?到着まで結構時間があるんですよね?桐ケ谷さん?」
透子「うん、結構あるかな?」
瑠唯「そう......なら、お言葉に甘えるわ......」
楓「じゃあ、どうぞ!」
瑠唯「え?」
楓「短い時間ならいいですが、長時間座ったまま寝るのは体に悪いでしょうし、膝位お貸ししますよ?」
ましろ、七深、つくし、透子「んん!?」
楓「?」
どうしたのかな?
僕、何かおかしなこと行ったかな?
うーん......
楓「あ、もしかして、この車、何か睡眠用の機能ありますか?」
瑠唯「いえ、特にないわ......だから、ありがたく、使わせてもらうわ。」
楓「はい!」
八潮さんはそう言って寝転び
僕の太もも辺りに頭を乗せた
前に広町さんにしてもらったことがあるけど、寝やすい人は凄く寝やすい
何より、寝転んだ方が疲れも取れるしね
瑠唯(......彼を、近くに感じる。)
楓「おやすみなさい、八潮さん。」
瑠唯「......えぇ。」
八潮さんは軽く頷い手から目を閉じた
目を閉じてもすごく綺麗でかっこいい
......けど、可愛らしくも見える
僕はしばらく、そんな姿を眺めていた
ましろ、七深、つくし、透子(な、なんとか挽回しないと!!)