色の少年   作:火の車

4 / 86
臆病者

楓「__ひ、広い。」

 

 ホテルの部屋に入って最初

 

 僕から出た感想がこれだった

 

 しかも、1人部屋という事で

 

 月ノ森凄いって思う

 

楓「おっと、この後すぐ海に行くんだっけ?」

 

 僕はスケジュール表を確認した

 

 今日はもう、基本は海で過ごすらしい

 

 むしろ、自由な時間の割合が大きい

 

楓「ともかく、準備して行こうかな。」

 

 僕はそう呟いた後、

 

 荷物をまとめてから海に移動した

__________________

 

 僕は海が好きじゃない、むしろ嫌いだ

 

 色々な理由はあるけど、一番は......

 

楓(__き、気持ち悪い......)

 

 沖縄はもう、海開き済みだ

 

 だから、一般の人たちだっている

 

 人には1人1人、別々の色がある

 

 それが多く混ざり合う、海と砂浜

 

 ここは僕と相性最悪だ

 

七深「か、かえ君、大丈夫~?」

楓「だ、大丈夫だよ。」

七深「すごく顔色悪いよ?」

 

 絵の具を何色も混ぜた時

 

 すごく汚い黒色になるのは知ってると思う

 

 今、僕が見てるのはそう言う景色だ

 

 見てるだけで頭が痛くなる

 

七深「かえ君って今、どういう景色が見えてるの~?」

楓「汚い黒色。」

七深(つまり、絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜた感じかな?)

楓「海が好きになれない理由はこれだよ......」

七深「何か抜け道とかないの~?」

楓「抜け道?」

七深「そうそう~。」

楓「ある、と言えばあるかな。」

 

 でも、これはほとんど使えない

 

 下手をしたら不審者になっちゃうし

 

七深「それってどんなの~?」

楓「僕が見てるのは生きてる人の色なんだけど、それは厳密には混ざってるわけじゃなくて重なってる状態なんだ。だから、近くにある一人の1人の人に集中してればマシにはなる、かな。」

七深「なるほど~。じゃあ、私の事見てる~?」

楓「え?」

七深「気にしないから見てたらいいよ~」

 

 広町さんは僕の前に座った

 

 目の前には綺麗なオレンジ色だけが見える

 

 心休まる優しい色だ

 

七深「あ、顔色良くなったね~。」

楓「すごく助かるんだけど、こんなに見られて嫌じゃない?」

七深「大丈夫大丈夫~。」

教師「__そこの2人。」

楓、七深「はい?」

教師「海に来たんだから何かしなさい。最低、一回は入る事。」

楓(な、何だろうその制度。)

七深「はい~。」

 

 広町さんがそう答えると、

 

 教師は歩いてどこかに行った

 

七深「仕方ないから行こっか~。かえ君は大丈夫?」

楓「広町さんを見てれば、なんとか。」

七深「じゃあ、海にレッツゴ~。」

 

 僕と広町さんは海の方に行った

__________________

 

 海に入ったのは2回目だけど

 

 普通に冷たい

 

七深「ほら~、広町の水着だよ~。」

 

 広町さんは羽織ってた服?を脱ぎ

 

 水着姿になった

 

楓「よく似合ってるね。」

七深「あはは~、普通だよ~。」

楓(普通よりは可愛いと思うんだけどな。)

 

 それにしても、海に来て何をするんだろう

 

 別に泳ぎが出来るわけでもないし

 

 遊ぶネタがないね

 

七深「海まで来たけど、何か話そっか~。」

楓「そうだね。岸にいても何か言われるし。」

七深「じゃあ、かえ君の好きなもの教えてよ~。」

楓「僕は風景画が好きだよ。」

七深「お~。」

 

 広町さんは頷きながらこっちを見てる

 

 そして、こう言ってきた

 

七深「渋いね~。」

楓「え?そうかな。」

七深「広町は好きだよ~、そう言うの~。」

楓「広町さんはホラー映画とかが好きなんだよね。」

七深「うん~!すごく面白いんだ~!」

 

 広町さんは嬉しそうな顔をしてる

 

 僕もホラーが苦手というわけではないし

 

 夏はよく1人で見たりもする

 

楓「今年の夏に何か面白そうなの始まるらしいけど。」

七深「あ、見に行くよ~!かえ君も行こうよ~!」

楓「いいよ。まぁ、予定合わせたりが__」

男子「__お、おい、誰か溺れてないか?」

楓、七深「?」

 

 僕たちが話をしてる途中、

 

 どこからかそんな声が聞こえて来た

 

 僕と広町さんは指さされてる方を見た

 

七深「ほ、ほんとだ!だ、誰だろう?」

楓「あ、あれ......」

七深「かえ君?」

楓「や、八潮さん。」

七深「え?」

 

 少し遠くだけど、僕にはわかる

 

 見たことのある綺麗な水色

 

 でも、色が弱弱しい

 

楓「い、行かないと!」

七深「あ、危ないよ~!助けを呼んぼうよ!」

 

 僕が八潮さんの所に行こうとすると

 

 広町さんは僕の腕を引っ張ってきた

 

楓「は、放して!」

七深「ダメ、ここは管理の人を呼んだ方が......」

楓「もう、色が弱くなっていってる!管理員さんが来る気配もない!周りの誰も、助けに行く気配もないんだ!」

七深「でも、かえ君が言っても何もできないよ~!泳ぎ苦手って言ってたじゃん!」

楓「......それでも。」

七深「っ!」

 

 僕は広町さんの手を振り払って

 

 目に全神経を集中させた

 

 八潮さんの色が良く見える

 

楓「僕は、臆病者だから。」

七深「かえ君......?」

楓「目の前で人を見捨てるのが、怖くて仕方ない!」

七深「!」

 

 僕はそう叫んで、八潮さんの方に向かった

 

 早く、向かわないと......!

__________________

 

 ”瑠唯side”

 

 岸から遠く離れた海

 

 その中に沈みゆく一つの影がある

 

瑠唯(ここは、どこ......?)

 

 溺れ始めてから、かなり時間が経った

 

 体は冷え切り、体の感覚が鈍くなってる

 

瑠唯(思えば、教師に海に入れと言われ、準備運動を怠ってしまった。その結果が、これね。)

 

 瑠唯は両足が攣り動かすことができない

 

 ただ、体の力を抜き目を閉じている

 

瑠唯(あの教師、死んでも恨み続けましょうか......)

 

 瑠唯は諦めたような顔をした

 

 今の状況で助かる確率はない

 

 その事は瑠唯本人が1番理解してる

 

瑠唯(碌な人生じゃなかったわ。結果だけを優先して、家の体裁を守って。)

 

 瑠唯から体の感覚が消えた

 

 本格的に死が近づいて来たのだろう

 

 意識は段々と薄くなり、

 

 視界は暗くなっていく

 

瑠唯(もう__)

楓「や、しお、さん......!!!」

瑠唯(誰、かしら......もう、眠りそうなのに......)

 

 瑠唯は謎の声と光を感じながら

 

 意識を失った

 

 ”楓”

 

 追いつけた

 

 少し波に流されたけど、色を追えた

 

 僕の目も、捨てたものじゃない

 

楓(よ、よし!掴んだ!)

 

 僕は八潮さんの腕を掴み、

 

 何とか、顔を海面に出せた

 

 海に入ってるから、分かりづらいけど

 

 かなり冷たくなってる気がする

 

 早く、暖かい場所に運ばないと

 

楓「待ってて!今、助けるから!」

瑠唯「......」

楓(気を失ってる、か。)

 

 でも、まだ色は失われてない

 

 まだ、助けられる

 

 僕は八潮さんを背負い、泳ぎだした

 

楓(八潮さんだけは、沈ませちゃいけない!)

 

 と言っても、僕にはこの状態で泳ぐ力はない

 

 でも、足掻いてもがくことは出来る

 

 泳ぎは出来なくても、前進する力さえあれば

 

楓「ぜぇ、ぜぇ......!!」

 

 岸が、遠い

 

 でも、少しずつ近づいてる

 

楓(死ぬ気で動かせ、死んでも動かせ!必死に!)

 

 息が荒くなって口や鼻から水が入ってくる

 

 まずい、僕も息が出来ない......!

 

 はやく、はやくついてくれ!

 

 僕は必死に手足を動かした

 

 八潮さんから手を離さないように

 

 その時、不思議な感覚がした

 

楓(__これは、砂......!)

 

 砂に、触れた!

 

 そして、見えた、岸が

 

 僕は力を振り絞り、八潮さんを岸にあげた

__________________

 

楓「__ぜぇ、ぜぇ......はぁ、はぁ......!」

 

 なんとか、なった......

 

 いや、終わりじゃない

 

 僕は無理やり体を起こし、

 

 八潮さんの方に体を引きずった

 

楓「八潮さん!大丈夫!」

瑠唯「......」

楓「だ、駄目だ!病院かどこかに、運ばないと!__っ!」

 

 僕が立ち上がろうとすると、

 

 目の前が激しく揺れ動いた

 

 あまりにも色を追い過ぎたのと、

 

 海の中で無理をし過ぎた代償が来た

 

楓(動け、動いてくれ!今はそんな事してる場合じゃない!)

七深「__こ、こっちです~!」

救急隊員「いたぞ!倒れてる!」

楓「広町、さん......?」

七深「2人とも、大丈夫!?」

 

 僕が動こうと葛藤してるうちに

 

 広町さんが誰かを連れてきてくれた

 

 広町さんは僕の方に駆け寄ってきた

 

七深「かえ君!」

楓「あ、あはは、助けた、よ。」

七深「す、すごすぎるよ!かえ君!」

楓「でも、限界......」

七深「かえ君!?」

 

 僕は疲れか何なのか

 

 すっと意識が抜けていった

__________________

 

 ”瑠唯”

 

瑠唯「__ん......ここは......?」

 

 私は医務室らしき部屋のベッドで目を覚ました

 

 妙に暖房器具が周りに置かれてる

 

 そして、気を失う前の記憶が蘇ってきた

 

瑠唯(あれは、一体......)

 

 気を失う直前

 

 私に手を伸ばして来た何か

 

 あれは、人のようにも光のようにも見えたわ

 

救急隊員「目が覚めましたか。」

瑠唯「はい。ご迷惑おかけしました。」

救急隊員「こちらこそ、救助が遅れて申し訳ない。危うく、命を失うところでした。」

 

 救急隊員はハキハキと話してる

 

 助けてくれたのはこの人なのかしら

 

救急隊員「横の彼がいなければ、どうなっていたことか。」

瑠唯「横の彼?__っ!?」

楓「すぅ......すぅ......」

救急隊員「あの場でただ一人、あなたを助けに行った男の子です。本当に勇敢な子です。」

 

 横にいるのは衛宮楓君

 

 私は心底驚いた

 

 印象では気弱でか弱そうな男の子

 

 でも、私を助けたのが、彼?

 

救急隊員「おっと、私は目覚めたと報告に行かなければならないので、失礼します。」

瑠唯「え、えぇ。」

 

 救急隊員は部屋から出て行った

 

 この部屋には私と衛宮楓君の2人が残された

 

 私は彼の方を見た

 

楓「zzz......」

 

 彼は穏やかな顔で眠っている

 

 少し幼さが残る表情を見ると

 

 間違えても勇敢、なんて言葉は出てこない

 

 でも、今助かっていると言うことは

 

 さっきの話は全て事実という事

 

瑠唯「......っ。」

 

 今、不思議な鼓動を感じた

 

 心拍数が激しく上昇してる

 

 これは、なんだというの?

 

瑠唯「衛宮楓君、あなたは、一体......///」

 

 私は静かにそう呟いた

 

 医務室にいる間、

 

 私は不思議な鼓動と顔の熱さを感じていた

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。