色の少年   作:火の車

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肝試し

透子「__じゃあ、一番、行くぞー!」

 

 桐ケ谷さんは大きな声でそう言った

 

 近所迷惑と思ったけど

 

 ここは山奥だから近所の人なんていない

 

 その分、野生動物が大丈夫か心配になるけど

 

七深「私ととーこちゃんだね~。」

透子「よし!行ってくるね~!」

楓「行ってらっしゃい!2人とも!」

瑠唯「精々、迷わない事ね。」

透子「分かってるって~!」

 

 2人は暗い森の中に入って行った

 

 光源が懐中電灯だけなのは大丈夫かな?

 

 足元照らせなくて転んだり

 

 道を間違えて迷ったりしないかな?

 

 見つけられはするけど、心配になってきた

 

楓「2人とも、大丈夫ですかね。」

瑠唯「桐ケ谷さんがいるから安心はできないけれど、もしも遭難なんて事になってもあなたの目なら見つけられるわ。」

楓「はい、そうなれば死んでも見つけます。」

瑠唯「......流石に、早々そんな機会はないわよ。」

楓「あはは、ですよね。」

 

 そんな会話をして、僕は笑った

 

 僕じゃないんだから、2人がそんなヘマをするわけがない

 

 心配し過ぎだね

 

瑠唯「......それで、そこの2人はいつまでそうしてるの?」

ましろ、つくし「だ、だってぇ......!」

楓「あ、あはは。」

 

 コテージの灯りが届くギリギリの場所

 

 そこには、ガクガクと震えた倉田さんと二葉さんがいる

 

 どうやら、この2人は怖がりらしく

 

 肝試しくらい大したことないと思ってたけど、森が意外と暗くて怖気づいたらしい

 

ましろ「こ、こんなに暗いと思わなかったもん......!」

瑠唯「山奥なんだから当たり前でしょう。街灯なんてないもの。」

つくし「うぅ、行きたくない......」

 

 2人は今にも泣きだしそうだ

 

 その様子をみて、八潮さんは溜息をついた

 

 別に、怖いなら無理することもないと思うけど

 

 僕は怖くないから1人でも大丈夫だし

 

楓「じゃあ、倉田さんはここにいるといいよ。」

ましろ「え......?」

楓「今回の肝試しは少し行った所にある大樹まで行くだけだからさ、僕だけでさっさと行ってくるよ?」

ましろ「うっ......」

つくし(え、衛宮君が追い詰めてる。)

瑠唯(鬼ね。彼は親切心で言ってるんでしょうけど。)

 

 そろそろ、二葉さんと八潮さんが出発する時間だ

 

 二葉さんはどうするんだろう?

 

瑠唯「そろそろ時間ね。二葉さんは行くの?行かないの?」

つくし「い、行きます......」

瑠唯「そう。なら、行くわよ。」

つくし「はぃ......」

楓「あ、二葉さん!」

つくし「......?」

 

 僕は森の方に歩いて行く二葉さんに駆け寄って

 

 少ししゃがんで目線を合わせた

 

楓「怖いなら、八潮さんの近くにいたらいいよ!優しいから、きっと守ってくれる!」

瑠唯「!?」

つくし「そ、そうだよね?(その優しさ、ほぼ衛宮君限定だけど!?)」

楓「きっと大丈夫だよ!」

瑠唯「......えぇ、問題ないわ。」

つくし(あ、衛宮君に言われて引き下がれなくなってる。)

 

 こんな会話の後、2人も森に入って行った

 

 二葉さんが八潮さんにくっついてて

 

 何と言うか、仲のいい島に見えて微笑ましかった

 

 やっぱり、八潮さんって優しい人だなぁ

 

楓「えっと、倉田さんはどうする?」

ましろ「私は......」

楓「怖いなら無理する必要はないと思うよ?」

ましろ「うぅ......」

 

 倉田さんが泣きそうになってる

 

 そんなに怖いのかな?

 

 ......いや、待てよ?

 

楓(ここに1人でいる方が怖いんじゃないかな?昼ならともかく、今は夜だし。残ったら心細いんじゃ?)

ましろ「......?」

楓「倉田さん、やっぱり一緒に行こっか?」

ましろ「え......?」

楓「ちょっとお散歩するくらいの感覚でさ。倉田さんと一緒なら、きっと楽しいと思うんだ。」

ましろ「!///」

 

 倉田さんを連れて行くならまず、怖いって所から意識をそらさないといけない

 

 そこで、お散歩という

 

 お散歩なら、そんなに怖くない気がするし

 

楓「僕は先に行ったみんなの色を辿るだけだから、スムーズだよ。」

ましろ「あ、そっか!そうだよね!」

楓「うん、だから、大丈夫。安心して。」

ましろ「うん......///」

 

 よかった、これで大丈夫そうだ

 

 色もそれを表してる

 

 そんな事を考えながら、僕は携帯の画面を見た

 

楓「僕達の出る時間だ。行こうか。」

ましろ「うん!///」

 

 倉田さんが頷いた後、僕たちは歩きだし

 

 真っ暗な森の中に入って行った

__________________

 

 ”ましろ”

 

 森の中は、暗くてで静か

 

 周りの景色は木々に遮られていて

 

 私と隣にいる衛宮君だけの世界みたいに感じる

 

楓「空気が美味しいね。」

ましろ「?」

 

 しばらく歩いてると、衛宮君がポツリとそう言った

 

 空気が美味しい

 

 何となく意味は分かるけど

 

 実際、空気に味なんてないからよく分からない

 

ましろ「美味しいの?空気って。」

楓「美味しいよ。すっごく。」

ましろ「そうなんだ。」

 

 少し、返事が素っ気なかったかな?

 

 そう思ったけど、衛宮君は気にしてる様子がない

 

 ただ、まっすぐ前を見て

 

 偶にこっちに微笑みかけてながら歩いてる

 

楓「今まで、外に出て活動するって事が中々できなかったからね、空気の味に敏感なのかも。」

ましろ「そんなことあるの?」

楓「うーん、あるんじゃないかな?きっと。」

 

 困ったような、楽しんでるような返事

 

 私の下らない質問をしっかり考えて、尚且つ楽しそうに返してくれる

 

 多分、るいさん辺りなら『どうでもいいわ。』で流される

 

 いや、るいさん以外でもそうかも

 

楓「都会の空気も嫌いじゃないけど、排気ガスが多いのはね。」

ましろ「......考えたことないかも。」

楓「あはは、だと思うよ。案の辺りで育てば、それが普通なんだから。」

ましろ「でも、衛宮君もあのあたりで育ってるよね?」

楓「僕は小学校2年生まで、ほぼ家にいなかったから。」

ましろ「?」

 

 少し、引っかかった

 

 なんで、家にいなかったんだろうって

 

 でも、私はそれを問い詰めなかった

 

 何かの家庭の事情かも知れないし

 

 余計な詮索をされると、面倒くさいだろうから

 

ましろ「そうだったんだ。だから、今までお隣さんだって気付かなかったのかな?」

楓「あはは、そうかもね。」

 

 なんで今まで気づかなかったんだろう

 

 昔から衛宮君と一緒にいれば、幼馴染になって

 

 今頃、恋人になれてたかもしれないのに

 

 そう思うと、すごく勿体ない事をした気になってくる

 

楓「でも、3年生になったくらいからは家に戻れたし、もしかしたらどこかで会ってるかも。」

ましろ「そうだったらいいな......」

楓「まぁ、そんな事は早々ないと思うけどね。小学3年くらいなら、覚えてると思うし。」

ましろ「だよね......」

 

 私も衛宮君に会った記憶ないもん

 

 流石に、そんなに都合のいいことはない

 

 もしそんな事があるなら、運命だよ

 

ましろ「それにしても、結構長いね?」

楓「うん、見た感じはそこまで距離はないのに。」

ましろ「色は?」

楓「続いてるよ。」

 

 色が見える衛宮君は凄く頼りになる

 

 だって、こんなに暗い森なのにガイドがあるんだよ?

 

 遭難の心配なんてないから、安心する

 

楓「多分、もう少しで着くよ。」

ましろ「そんな事も分かるの?」

楓「時間ごとで色の濃さも変わるからね。長年見てたら、慣れたんだ。」

ましろ「な、なるほど。」

 

 どの程度の変化かは分からないけど

 

 絶対に普通の人じゃわからないと思う

 

楓「......?」

ましろ「どうしたの?」

楓「いや、なんでもないよ。早く行こう。」

ましろ「うん?」

 

 それから、衛宮君は少し歩くペースを上げて

 

 目的地である大樹に向かって行った

__________________

 

 目的地に着いた

 

 大樹の周りは少し開けた空間になってて

 

 空を見上げると、吸い込まれそうな満天の星空が広がってる

 

ましろ「わぁ......!」

 

 出発前はあんなに怖かったのに

 

 今はこうして感動してるから、私はチョロいと思う

 

 何より、衛宮君と一緒にこの景色を見られるのが嬉しい

 

楓「これは、向こうじゃ中々見られないね。」

ましろ「うん、そうだよね!」

楓「色で言えば、桐ケ谷さんの色が似たような感じかな。」

 

 そうなんだ

 

 やっぱり、色って個人差があるんだね

 

 私は藍色の絵の具みたいって言ってたし

 

ましろ(でもその分、混ざった時は......)

 

 考えたくもない

 

 でも、私なら発狂するほど酷い光景になるのは分かる

 

 衛宮君だって、人混みにいたら辛そうだし

 

 色を無理やり見たって言うときは倒れてた

 

 やっぱり、すごく負担があるのかな......

 

楓「どうしたの?」

ましろ「いや、その......衛宮君の色って、やっぱり負担が凄いのかなって。」

楓「え?」

 

 そう言うと、衛宮君が首を傾げた

 

 それはそうだよ

 

 だって、急に私なんかに心配されるんだもん

 

ましろ「たくさんの種類の色があって、それが混ざったりして、辛いかなって。」

楓「うーん、確かに、これのせいで人混みに行きづらかったりすることもあるかな。」

ましろ(やっぱり......)

楓「でも、その分の利点はあるよ。」

ましろ「?」

 

 衛宮君は笑いながらそう言った

 

 色が見える利点ってなんだろ

 

 ありそうではあるけど、私にはよくわからない

 

楓「物を探したりするときには便利だよ!あと、人の色々な状態もわかる!」

ましろ「確かに、それは便利かも。(よく物失くして慌てるし......)」

楓「人混みが無理って言う事を差し引いても、十分な利点だよ!」

 

 それは、どうなんだろう?

 

 ここみたいな人の少ない場所ならともかく

 

 都会なら、悪い事の方が多いんじゃ......

 

楓「何より、僕が色を見れる事で八潮さんを助けられた。」

ましろ「!」

楓「女の子の形見の指輪も見つけられた。それに......」

ましろ「?」

 

 衛宮君は話の途中で口を閉じた

 

 その表情はどこか楽しそうに見える

 

 どうしたんだろう?

 

ましろ「どうしたの?」

楓「なんでもないよ。」

ましろ「えぇ、教えてよ。」

楓「聞いても仕方のない事だよ。気にしないで。」

 

 完全にはぐらかされちゃった

 

 衛宮君がはぐらかすのって、意外と珍しい?

 

 かなり素直な子だから、隠し事なんて初めてかも

 

楓「それにしても、この木、すごいね。」

ましろ「確かに、すごく大きいよね。」

楓「樹齢、何歳くらいなんだろ。」

 

 感心したように衛宮君はそう言う

 

 この木は本当に大きい

 

 何年前からここにあるんだろう

 

 私達の何倍生きてるんだろう

 

 そんな事を考えてしまう

 

楓「きっと昔、この木の近くには色んな人がいたと思う。」

ましろ「?」

楓「森で遊ぶ子供、仕事をしてた人、愛し合った夫婦か恋人......色んな人がこの木の近くに来たんじゃないかな。」

ましろ「色で見えたの?」

楓「少し。頭痛くなるのは嫌だから、そんなに見てないよ。」

 

 衛宮君の目、何年前の色まで見えてるの?

 

 色々とおかしいけど

 

 元からスピリチュアルな出来事が起きてるし、気にしなくても良いや

 

楓「......そろそろ戻ろうか。」

ましろ「そうだね。ちょっと時間かかりすぎかな?」

楓「大丈夫だよ。」

ましろ「そっか__っ!!」

楓「え?」

 

 振り向こうとした時、妙な浮遊感に襲われた

 

 それに気づいた時には衛宮君の方に倒れて行って__

 

楓、ましろ「ん!?」

 

 そのまま衛宮君を押し倒して

 

 唇には柔らかい感触があった

 

 息苦しい、でも嬉しい

 

 そんな不思議な感覚に襲われた

 

ましろ「え、あ、う......///」

楓「え、えっとぉ......」

 

 き、気まずい、やっちゃった......

 

 ど、どうしよう......

 

楓「ご、ごめん、倉田さん!!」

ましろ「ふぇ......?」

楓「僕がちゃんと受け止められたらこんな事にならなかったのに、こんなことになって......」

 

 衛宮君はそう謝ってきた

 

 それを見て、私は首を傾げた

 

 なんで、衛宮君が謝ってるの?

 

 私が転んだからこうなったのに......

 

楓「倉田さんみたいな可愛い人の......その、あれの相手が僕なんかになっちゃって、本当に申し訳ない。ごめん......」

ましろ「っ!///(か、可愛い......!?///)」

 

 って、そうじゃない

 

 衛宮君、色々と誤解しちゃってるよ

 

 ほ、本当に収拾がつかなくなる

 

ましろ「わ、私は、全然いいよ......むしろ、嬉しいって言うか......///」

楓「え?」

ましろ「だから、衛宮君は気にしないで、戻ろう......?///」

楓「!」

 

 私はそう言って衛宮君の手を握った

 

 テンパってて自分でも何をしてるかよくわからないけど

 

 なんとなく、大丈夫な気がしてる

 

楓(ど、どういう事なんだろう?)

ましろ(え、衛宮君と、キスしちゃった......!///まともに顔見れないよ~!!///)

 

 それから、私は衛宮君と目を合わせないようにしながら、歩いて帰った

 

 このことは、絶対に皆には言えない

 

 もしバレちゃったら、どうしよう......

 

 私は嬉しい反面、そんな事を心配していた

 

 

 

 

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