色の少年   作:火の車

5 / 86
幸せの鐘

 オリエンテーション2日目

 

 僕は食堂で広町さんと朝食を摂ってる

 

 昨日から察してたけど、すごく豪華だ

 

楓「__美味しい。」

七深「わ~、すごく食べてるね~。」

楓「こんな物、滅多に食べられないし。食べられるうちに食べておこうかなって。」

 

 何を食べてるかは一切わからないけど

 

 詰め込めるだけ詰め込んでる

 

 美味しいものだから味わっておこう

 

七深「それにしても、昨日の今日なのに元気だね~。」

楓「しっかり寝たから、もう大丈夫だよ。」

七深「すごいね~。」

楓「それにしても、どうやって作ってるんだろ。何か特別な材料とか使ってるのかな?」

 

 僕はホットサンドを口に入れた

 

 いくらでも食べられそうなくらい美味しい

 

瑠唯「__それは普通のホットサンドよ。」

楓「~!ごほっ!ごほっ!」

七深「か、かえ君、大丈夫~!?」

 

 僕が口いっぱいにサンドイッチを頬張ってると

 

 八潮さんがどこからか現れた

 

 僕は驚きで喉を詰まらせた

 

瑠唯「これを飲みなさい。」

 

 八潮さんは表情を変えることなく、

 

 僕に水を渡して来た

 

 僕はその水で詰まったものを流しこみ

 

 ほっと一息ついた

 

瑠唯「全く、何をしているのかしら。」

七深「るいる......じゃなくて、八潮さん、何か用~?」

瑠唯「......特に、何もないわ。」

楓「?」

 

 八潮さんはそう言いながら、

 

 僕の方をじっと見てる

 

 どうしたんだろう、何か変なのかな

 

楓「あの、なにか?」

瑠唯「口元にソースが付いているわ。」

楓「え?__!?」

七深「えぇ!?」

 

 八潮さんは僕の口元をハンカチで拭った

 

 あまりに突然の出来事で、

 

 僕と広町さんは唖然とした

 

瑠唯「たくさん食べるのはいいけれど、気を付ける事ね。」

楓「は、はい。」

瑠唯「それでは、ごきげんよう。」

 

 八潮さんはそう言って離れていった

 

 僕をポカンと口を開けたまま、

 

 八潮さんを見送った

 

楓「ひ、広町さん?さっきの、なに?」

七深「い、いや~、広町にも分からないよ~。」

楓「そ、そうだよね。」

 

 僕と広町さんはしばらく唖然としてた

 

 あれは、一体なんだったんだろう

__________________

 

 ”瑠唯”

 

 自分の事が分からない

 

 何故か、彼に話かけてしまった

 

 別に、何の用もないと言うのに

 

瑠唯(......何なのかしら。)

 

 昨日から、彼が気になって仕方ない

 

 さっき、話しかける前も目で追ってた

 

 それは、なぜ?

 

瑠唯「......分からないわ。」

 

 この妙な胸の高鳴り、顔の熱さ

 

 でも、それに嫌悪感はない

 

瑠唯(......今は、考えても無駄ね。)

 

 私は迷いを払うように首を振り、

 

 次のスケジュールに移る準備をしに部屋に戻った

__________________

 

 ”楓”

 

 今日は沖縄の街を散策するらしい

 

 僕は案の定、広町さんといる

 

楓、七深「__おぉ~。」

 

 沖縄の家って、初めて生で見たけど

 

 教科書で見るのとはイメージが違う

 

 中々、面白い

 

楓「ここの街並み、綺麗だね。」

七深「うん~。都会とは違った感じだね~」

 

 僕と広町さんは感性が似てるのか、

 

 他の生徒がアウトレットとかに行く中

 

 古き良き町を観察して楽しんでる

 

七深「折角だし、スケッチでもして行こうかな~?」

楓「絵とか得意なの?」

七深「普通だよ~。」

 

 広町さんはそう言って、

 

 鞄からノートとペンを出し

 

 風景のスケッチを始めた

 

七深「~♪」

 

 鼻歌を歌いながらだけど、

 

 物凄い速さで絵をかいてる

 

 しかも、とんでもなく上手だ

 

楓「広町さん、絵、上手だね。」

七深「そうかな~?」

楓「うん。僕はこの絵、すごく好きだよ。」

七深「あはは~、ありがとね~。」

 

 それから広町さんはすぐに下書きを終えた

 

 完成したら僕にくれるって約束した

 

 風景が好きだから、すごく嬉しかった

__________________

 

 僕と広町さんは徒歩で移動して

 

 海が綺麗に見えるっていうタワーに来た

 

 有名な観光名所らしい

 

七深「__わー、綺麗~!」

 

 頂上まで階段で登ると、

 

 広町さんは透明なガラスの柵に手を付き

 

 楽しそうに景色を眺めている

 

七深「ここなら、かえ君が見てる色も遠くて見えずらいんじゃないかな~?」

楓「確かに、かなりマシだけど、広町さんはここでいいの?」

七深「いいんだよ~!特にしたいことないし~。」

楓「そ、そうなんだ。」

 

 普通なら、沖縄なんて滅多に来ないし

 

 したい事はいくらでも出てきそうだけど

 

 やっぱり、広町さんって変わってるのかな

 

七深「それと、かえ君とお話ししたかったんだ~。」

楓「お話?」

七深「まぁ、こっちにおいでよ~。」

楓「うん。」

 

 僕は広町さんの隣に行った

 

 お話って一体、なんだろうか

 

 月ノ森に来て、結構話したと思うけど

 

七深「それにしても、本当に綺麗だね~。」

楓「うん。こんなきれいな海、生まれて初めて見た。」

 

 海が青いって事すら、知らなかった

 

 今まで、ただの汚い色の塊

 

 それ以外に見えたのは、初めてだ

 

七深「うんうん、かえ君が嬉しそうでよかったよ~。」

楓「あ、お話があるんだったよね。それって?」

七深「そうそう~......少し気になることが出来てね。」

楓「っ!」

 

 突然、広町さんの雰囲気が変わった

 

 いつもの緩い雰囲気が一変して、

 

 鋭い刃物のような、冷たい雰囲気だ

 

七深「昨日の八潮さんの一件。なんで、あそこまで必死になってたの?」

楓「それは、昨日言ったとおり__」

七深「本当に、それだけ?」

楓「え?」

 

 僕の言葉を遮って、

 

 広町さんはそう聞いてきた

 

 質問の意図が読み取れない

 

七深「何か、特別な理由があったんじゃないの?例えば、八潮さんが好きとか。」

楓「......?」

七深「仮にそうだとしても、異常な行動だけど。それなら、まだ納得は行くよ。」

 

 広町さんは何を言ってるんだろう

 

 僕が八潮さんを好き?

 

 そんなこと......

 

 ”七深”

 

楓「ありえないよ。」

 

 かえ君はあっさりそう答えた

 

 少しだけ笑みを浮かべながら、

 

 子供の冗談を相手にするような顔をしてる

 

七深「でも、じゃあ、なんで?あんな危険を犯してまで?」

楓「人を見捨てるのが怖い、それじゃあ、理由として不十分かな?」

七深「不十分だよ。そんな事を怖がる人間、普通いないよ。」

楓「あはは、そうなのかな。」

 

 かえ君は笑ってる

 

 だから、余計に嘘をついてるように見える

 

 私は、かえ君の方を見つめた

 

七深「真面目に取り合う気はないみたいだね。」

楓「十分真面目だよ?理由の大部分はこれだから。」

七深「大部分って事は、違う理由もあるってこと?」

楓「おっと。」

 

 かえ君の表情が変わった

 

 これは、ダウトかも

 

 もうちょっと、踏み込んでみよう

 

七深「折角だし、教えてよ~。違う理由も~。」

楓「い、いや~、それは......」

七深「やっぱり、八潮さんが好きなの~?だったら、そう言えばいいのに~。」

楓「それは違うよ。」

 

 やっぱり、これは否定する

 

 じゃあ、これ以外なんだ

 

楓「うーん、恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけど......」

七深「恥ずかしい?」

楓「仕方ないし、話すよ......」

 

 かえ君は観念したようにそう言った

 

 相当嫌そうにしてるけど、どんな理由なんだろう

 

楓「僕は小さいとき、よく本を読んだんだ。」

七深「本?」

楓「色んな話を見るうちに、お姫様を助ける英雄っていうものに憧れてね。僕もそれになりたいって思ったんだ。」

七深「え?」

 

 私はつい、驚いた声を上げてしまった

 

 あまりにも、子供過ぎる理由

 

 でも、嘘をついてる様子がない

 

 だから、余計に驚いた

 

楓「八潮さんみたいな特別な人を助けられれば、そう言う風になれるかもって思ったけど。あんなにかっこよくは出来ないね......物語に出て来る英雄達は凄いよ。あはは。」

 

 かえ君は照れくさそうに頭を掻いた

 

 私はその話を聞いて、こういった

 

七深「かえ君は八潮さんの英雄になれてるよ~!あと、昨日のかえ君はかっこよかったよ?」

楓「いや、そんなことないよ。だってさ......」

七深「?」

楓「英雄は誰でも、強い人だったからね。僕は強くないから。」

七深「......?」

 

 少し、引っかかる言い方だ

 

 強い、の意味が上手く伝わってこない

 

楓「僕がもし、八潮さんみたいな人だったら、胸を張って英雄になれてたかもね。」

七深「!」

楓「いやー、やっぱり憧れるよ。僕も八潮さんみたいになりたい。」

 

 謙虚にもほどがある

 

 仮にも命を救った人間の態度じゃない

 

 しかも、助けた相手に憧れてるなんて

 

七深「ねぇ、かえ君?」

楓「どうしたの?」

七深「聞きたいんだけど__きゃあ!!」

楓「広町さん!?」

 

 私が話してる途中、

 

 顔の前を何かが通過していった

 

 私はそれに驚いて、足を踏み外し

 

 妙な浮遊感と一緒に私は地面に倒れて行った

 

七深「__っ!......って、あれ?」

楓「だ、大丈夫?」

 

 転んで痛いかと思ったら、そんな事なくて

 

 私は一瞬だけ戸惑った

 

 気づいたら近くにかえ君の顔があった

 

七深「!?///」

楓「ご、ごめん。頭はきっちり守れたけど、体は威力を殺すのがやっとだった......」

七深「だ、大丈夫、大丈夫~!///ありがとうね~///」

 

 なんだか、心臓がうるさい

 

 転んでびっくりしたのかな

 

 すごく、ドキドキしてる

 

楓「あ、すぐに離れるね?(あ、紐ある。)」

七深「た、助かったよ~。」

 

 私とかえ君は垂れ下がってる紐を掴んだ

 

 あれ、そう言えば、なんで紐があるんだろ?

 

楓、七深「な、なに!?」

 

 その紐を引くと

 

 カーンカーンと教会で聞いたことがある

 

 鐘の音が鳴った

 

楓「あ、あー、これにつながってる紐だったんだ。」

七深「びっくりしたー。なんでこんな所にあるの~?」

楓「さ、さぁ?__っ!!」

七深「かえ君!?」

 

 話してる途中、

 

 かえ君が苦悶の表情を浮かべた

 

七深「もしかして、手を痛めた?」

楓「あ、あはは、大丈夫大丈夫。」

七深「ごめんね......」

 

 冷静に考えれば、

 

 私と地面の間に手を入れたわけだし

 

 かなり強打しててもおかしくない

 

 もしかしたら、捻挫とかしてるかも

 

七深「すぐに手当しよ。ホテルに戻れば医務室あるから。」

楓「え?いや、その__」

七深「早く行こ__(って、あれは?)」

楓「?」

 

 私はあるものが目に入って足を止めた

 

 それには、幸せの鐘と書かれていて

 

 下には何かの文章が書いてある

 

七深「~!///」

 

 その文章を読んで、私の顔は熱くなった

 

 だって、その文章の内容が

 

 この鐘を一緒に鳴らした男女は一生を添い遂げる、だったから

 

七深(あ、あれ?///さっき、私とかえ君、一緒に紐を引いて、鳴らしたよね?///)

楓「あの、広町さん?」

七深「あ、ご、ごめん~!///早く戻ろっか~!///」

楓「え?あ、うん。」

 

 私はかえ君と一緒にホテルに戻った

 

 その道のりの途中、

 

 私の顔はずっと、熱いままだった

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。