オリエンテーション2日目
僕は食堂で広町さんと朝食を摂ってる
昨日から察してたけど、すごく豪華だ
楓「__美味しい。」
七深「わ~、すごく食べてるね~。」
楓「こんな物、滅多に食べられないし。食べられるうちに食べておこうかなって。」
何を食べてるかは一切わからないけど
詰め込めるだけ詰め込んでる
美味しいものだから味わっておこう
七深「それにしても、昨日の今日なのに元気だね~。」
楓「しっかり寝たから、もう大丈夫だよ。」
七深「すごいね~。」
楓「それにしても、どうやって作ってるんだろ。何か特別な材料とか使ってるのかな?」
僕はホットサンドを口に入れた
いくらでも食べられそうなくらい美味しい
瑠唯「__それは普通のホットサンドよ。」
楓「~!ごほっ!ごほっ!」
七深「か、かえ君、大丈夫~!?」
僕が口いっぱいにサンドイッチを頬張ってると
八潮さんがどこからか現れた
僕は驚きで喉を詰まらせた
瑠唯「これを飲みなさい。」
八潮さんは表情を変えることなく、
僕に水を渡して来た
僕はその水で詰まったものを流しこみ
ほっと一息ついた
瑠唯「全く、何をしているのかしら。」
七深「るいる......じゃなくて、八潮さん、何か用~?」
瑠唯「......特に、何もないわ。」
楓「?」
八潮さんはそう言いながら、
僕の方をじっと見てる
どうしたんだろう、何か変なのかな
楓「あの、なにか?」
瑠唯「口元にソースが付いているわ。」
楓「え?__!?」
七深「えぇ!?」
八潮さんは僕の口元をハンカチで拭った
あまりに突然の出来事で、
僕と広町さんは唖然とした
瑠唯「たくさん食べるのはいいけれど、気を付ける事ね。」
楓「は、はい。」
瑠唯「それでは、ごきげんよう。」
八潮さんはそう言って離れていった
僕をポカンと口を開けたまま、
八潮さんを見送った
楓「ひ、広町さん?さっきの、なに?」
七深「い、いや~、広町にも分からないよ~。」
楓「そ、そうだよね。」
僕と広町さんはしばらく唖然としてた
あれは、一体なんだったんだろう
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”瑠唯”
自分の事が分からない
何故か、彼に話かけてしまった
別に、何の用もないと言うのに
瑠唯(......何なのかしら。)
昨日から、彼が気になって仕方ない
さっき、話しかける前も目で追ってた
それは、なぜ?
瑠唯「......分からないわ。」
この妙な胸の高鳴り、顔の熱さ
でも、それに嫌悪感はない
瑠唯(......今は、考えても無駄ね。)
私は迷いを払うように首を振り、
次のスケジュールに移る準備をしに部屋に戻った
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”楓”
今日は沖縄の街を散策するらしい
僕は案の定、広町さんといる
楓、七深「__おぉ~。」
沖縄の家って、初めて生で見たけど
教科書で見るのとはイメージが違う
中々、面白い
楓「ここの街並み、綺麗だね。」
七深「うん~。都会とは違った感じだね~」
僕と広町さんは感性が似てるのか、
他の生徒がアウトレットとかに行く中
古き良き町を観察して楽しんでる
七深「折角だし、スケッチでもして行こうかな~?」
楓「絵とか得意なの?」
七深「普通だよ~。」
広町さんはそう言って、
鞄からノートとペンを出し
風景のスケッチを始めた
七深「~♪」
鼻歌を歌いながらだけど、
物凄い速さで絵をかいてる
しかも、とんでもなく上手だ
楓「広町さん、絵、上手だね。」
七深「そうかな~?」
楓「うん。僕はこの絵、すごく好きだよ。」
七深「あはは~、ありがとね~。」
それから広町さんはすぐに下書きを終えた
完成したら僕にくれるって約束した
風景が好きだから、すごく嬉しかった
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僕と広町さんは徒歩で移動して
海が綺麗に見えるっていうタワーに来た
有名な観光名所らしい
七深「__わー、綺麗~!」
頂上まで階段で登ると、
広町さんは透明なガラスの柵に手を付き
楽しそうに景色を眺めている
七深「ここなら、かえ君が見てる色も遠くて見えずらいんじゃないかな~?」
楓「確かに、かなりマシだけど、広町さんはここでいいの?」
七深「いいんだよ~!特にしたいことないし~。」
楓「そ、そうなんだ。」
普通なら、沖縄なんて滅多に来ないし
したい事はいくらでも出てきそうだけど
やっぱり、広町さんって変わってるのかな
七深「それと、かえ君とお話ししたかったんだ~。」
楓「お話?」
七深「まぁ、こっちにおいでよ~。」
楓「うん。」
僕は広町さんの隣に行った
お話って一体、なんだろうか
月ノ森に来て、結構話したと思うけど
七深「それにしても、本当に綺麗だね~。」
楓「うん。こんなきれいな海、生まれて初めて見た。」
海が青いって事すら、知らなかった
今まで、ただの汚い色の塊
それ以外に見えたのは、初めてだ
七深「うんうん、かえ君が嬉しそうでよかったよ~。」
楓「あ、お話があるんだったよね。それって?」
七深「そうそう~......少し気になることが出来てね。」
楓「っ!」
突然、広町さんの雰囲気が変わった
いつもの緩い雰囲気が一変して、
鋭い刃物のような、冷たい雰囲気だ
七深「昨日の八潮さんの一件。なんで、あそこまで必死になってたの?」
楓「それは、昨日言ったとおり__」
七深「本当に、それだけ?」
楓「え?」
僕の言葉を遮って、
広町さんはそう聞いてきた
質問の意図が読み取れない
七深「何か、特別な理由があったんじゃないの?例えば、八潮さんが好きとか。」
楓「......?」
七深「仮にそうだとしても、異常な行動だけど。それなら、まだ納得は行くよ。」
広町さんは何を言ってるんだろう
僕が八潮さんを好き?
そんなこと......
”七深”
楓「ありえないよ。」
かえ君はあっさりそう答えた
少しだけ笑みを浮かべながら、
子供の冗談を相手にするような顔をしてる
七深「でも、じゃあ、なんで?あんな危険を犯してまで?」
楓「人を見捨てるのが怖い、それじゃあ、理由として不十分かな?」
七深「不十分だよ。そんな事を怖がる人間、普通いないよ。」
楓「あはは、そうなのかな。」
かえ君は笑ってる
だから、余計に嘘をついてるように見える
私は、かえ君の方を見つめた
七深「真面目に取り合う気はないみたいだね。」
楓「十分真面目だよ?理由の大部分はこれだから。」
七深「大部分って事は、違う理由もあるってこと?」
楓「おっと。」
かえ君の表情が変わった
これは、ダウトかも
もうちょっと、踏み込んでみよう
七深「折角だし、教えてよ~。違う理由も~。」
楓「い、いや~、それは......」
七深「やっぱり、八潮さんが好きなの~?だったら、そう言えばいいのに~。」
楓「それは違うよ。」
やっぱり、これは否定する
じゃあ、これ以外なんだ
楓「うーん、恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけど......」
七深「恥ずかしい?」
楓「仕方ないし、話すよ......」
かえ君は観念したようにそう言った
相当嫌そうにしてるけど、どんな理由なんだろう
楓「僕は小さいとき、よく本を読んだんだ。」
七深「本?」
楓「色んな話を見るうちに、お姫様を助ける英雄っていうものに憧れてね。僕もそれになりたいって思ったんだ。」
七深「え?」
私はつい、驚いた声を上げてしまった
あまりにも、子供過ぎる理由
でも、嘘をついてる様子がない
だから、余計に驚いた
楓「八潮さんみたいな特別な人を助けられれば、そう言う風になれるかもって思ったけど。あんなにかっこよくは出来ないね......物語に出て来る英雄達は凄いよ。あはは。」
かえ君は照れくさそうに頭を掻いた
私はその話を聞いて、こういった
七深「かえ君は八潮さんの英雄になれてるよ~!あと、昨日のかえ君はかっこよかったよ?」
楓「いや、そんなことないよ。だってさ......」
七深「?」
楓「英雄は誰でも、強い人だったからね。僕は強くないから。」
七深「......?」
少し、引っかかる言い方だ
強い、の意味が上手く伝わってこない
楓「僕がもし、八潮さんみたいな人だったら、胸を張って英雄になれてたかもね。」
七深「!」
楓「いやー、やっぱり憧れるよ。僕も八潮さんみたいになりたい。」
謙虚にもほどがある
仮にも命を救った人間の態度じゃない
しかも、助けた相手に憧れてるなんて
七深「ねぇ、かえ君?」
楓「どうしたの?」
七深「聞きたいんだけど__きゃあ!!」
楓「広町さん!?」
私が話してる途中、
顔の前を何かが通過していった
私はそれに驚いて、足を踏み外し
妙な浮遊感と一緒に私は地面に倒れて行った
七深「__っ!......って、あれ?」
楓「だ、大丈夫?」
転んで痛いかと思ったら、そんな事なくて
私は一瞬だけ戸惑った
気づいたら近くにかえ君の顔があった
七深「!?///」
楓「ご、ごめん。頭はきっちり守れたけど、体は威力を殺すのがやっとだった......」
七深「だ、大丈夫、大丈夫~!///ありがとうね~///」
なんだか、心臓がうるさい
転んでびっくりしたのかな
すごく、ドキドキしてる
楓「あ、すぐに離れるね?(あ、紐ある。)」
七深「た、助かったよ~。」
私とかえ君は垂れ下がってる紐を掴んだ
あれ、そう言えば、なんで紐があるんだろ?
楓、七深「な、なに!?」
その紐を引くと
カーンカーンと教会で聞いたことがある
鐘の音が鳴った
楓「あ、あー、これにつながってる紐だったんだ。」
七深「びっくりしたー。なんでこんな所にあるの~?」
楓「さ、さぁ?__っ!!」
七深「かえ君!?」
話してる途中、
かえ君が苦悶の表情を浮かべた
七深「もしかして、手を痛めた?」
楓「あ、あはは、大丈夫大丈夫。」
七深「ごめんね......」
冷静に考えれば、
私と地面の間に手を入れたわけだし
かなり強打しててもおかしくない
もしかしたら、捻挫とかしてるかも
七深「すぐに手当しよ。ホテルに戻れば医務室あるから。」
楓「え?いや、その__」
七深「早く行こ__(って、あれは?)」
楓「?」
私はあるものが目に入って足を止めた
それには、幸せの鐘と書かれていて
下には何かの文章が書いてある
七深「~!///」
その文章を読んで、私の顔は熱くなった
だって、その文章の内容が
この鐘を一緒に鳴らした男女は一生を添い遂げる、だったから
七深(あ、あれ?///さっき、私とかえ君、一緒に紐を引いて、鳴らしたよね?///)
楓「あの、広町さん?」
七深「あ、ご、ごめん~!///早く戻ろっか~!///」
楓「え?あ、うん。」
私はかえ君と一緒にホテルに戻った
その道のりの途中、
私の顔はずっと、熱いままだった