透子『__こんにちはー!あたしたち、ツキノモリ(仮)です!』
ステージに上がって
桐ケ谷さんがマイクを持って話し始めた
ハッキリとよく通る声だ
透子『今年、月ノ森で出来たバンドなんだけど。今日が初めてのライブなんだ!先輩バンドの後でちょーっと緊張してるけど、精一杯頑張るから、応援してねっ!』
「おぉー!」
「あれTOKOじゃん!」
「他のメンバーも可愛いー!」
やっぱり、皆ってハイレベルなんだなぁ
男女問わず、称賛の声が聞こえる
色は重なりすぎて判断しずらいけど
透子『じゃあ、聞いてください!あたしたちのオリジナルの曲!Daylight -デイライト-!』
桐ケ谷さんがそう高らかに宣言すると
八潮さんのバイオリンの音が聞こえてきた
ましろ(衛宮君、ちゃんと見ててね......!)
楓「__!」
倉田さんが声を出したその時、皆の色が変化して
五つの色が、一つに集まって行ったように見えた
_____________________
透子『__ありがとう!皆!』
『わぁぁぁぁあ!!!』
楓「......!」
飛び立っていった
皆のライブを見て、そう感じた
蛹から羽化した青色の蝶が、観衆の上を華麗に飛び回るような
そんな幻想的な色が、僕の目には見えた
友希那「......これは。」
リサ「マジかー。」
楓(......良かった。)
皆、今出せる力を出し切った
この4か月間、本当に頑張ってた
ほぼ毎日、暗くなるまで練習してて
倉田さんも1からボーカルになるために頑張って
二葉さんも練習中に手にまめができてた
弦楽器を使う桐ケ谷さんと広町さんは爪がボロボロになってたりもしてたし
八潮さんもストイックに演奏技術を追求してた
そんな努力が実ってくれて、本当に良かった
透子「衛宮ー!」
楓「き、桐ケ谷さ__むぅ!?」
透子「やったよ!あたし達やったよ!」
僕の顔が柔らかい感触で包まれた
暖かい、というよりも暑い
桐ケ谷さんの熱気が直に伝わってくる
楓「むぐぐぐ......!」
七深「とーこちゃん~!かえ君が苦しそうだよ~!」
透子「おっと。」
広町さんが止めに入ってくれて
なんとか、僕は解放された
といっても、抱き着かれてるままだけど
呼吸しずらかったから、助かった......
ましろ「衛宮君!私、どうだった?」
楓「練習の成果が出てて、よかったよ。」
つくし「私も頑張ったよ!」
七深「私も~!」
楓「あの、ちょっと、4人に抱き着かれると__わぁ!!」
僕はそのまま、4人に押し倒された
全員、受け止められたらいいんだけどね
僕なんかでは出来ません!(諦めの境地)
瑠唯「あなたのお陰で、デビューはいい形で終えられたわ。」
楓「いえいえ、そんな僕なんて。皆さんの努力のたまものですよ。」
瑠唯「謙虚ね。あなたがいなければ、ここまでは出来なかったわ。」
楓「そう、でしょうか?」
八潮さんがいれば大丈夫だったと思うけど
まぁ、褒めてくれるのは素直に嬉しい
特に、八潮さんだし
友希那「なるほど。これがあなたの力なのね。」
楓「あ、湊さん。」
リサ「いやー、ビックリしたよー!スーパールーキー登場って感じ!」
僕は2人が近づいてきたのを見て立ち上がった
えっと、今、僕の力って言ったのかな?
全くそんなことはないんだけど......
友希那「あの演奏は普通のバンドが4か月練習した程度で出来るものじゃないわ。」
楓「えへへ、そうですか?」
友希那「嬉しそうね。」
楓「はい、皆が褒められるのはすごく嬉しいです!」
リサ(マジで嬉しそうじゃん。ほんとにいい子なんだなー。)
よかった、湊さんも認めてくれたみたいで
努力が実ってくれて、よかった
これは、月ノ森音楽祭に弾みがつく
友希那「あなたの見えている色というのは、本当のことのようね。」
楓「はい。色は見えてますよ。それだけですが......」
友希那「けれどそれで、バンドのレベルを叩き上げたのでしょう?」
楓「い、いえ、そんな大層なものでは__」
瑠唯「それで間違いありません。彼なしではここまでの成果は得られなかったと、私たちも自覚しています。」
楓「!?」
八潮さんの言葉に皆もうなずいてる
そんなことないはずなのに......
過大評価すぎるよ......
友希那「そう......なら。」
楓「?」
友希那「衛宮楓君。少し、相談があるのだけれど。」
楓「はい?」
湊さんが真っ直ぐ僕の目を見据える
少しだけ、緊張しちゃうな
美人な人だから特に
友希那「あなた、Roseliaに来る気はないかしら?」
楓「......え?」
ましろ、透子、七深、つくし、瑠唯、リサ「!?」
湊さんの言葉で時間が止まったように感じた
えっと、聞き間違いじゃないよね?
僕がRoseliaにって、なんで?
友希那「私たちはバンドで頂点を目指す。そのためには......あなたの力が必要よ。」
楓「っ......!」
上手く、息ができない
圧倒的な意志の強さを持った湊さんの前に
僕は、頭が真っ白になった
“瑠唯”
友希那「あなたがいれば、私たちはもっと上に行ける。だから、Roseliaのマネージャーとして、その力を使ってほしい。」
湊さんが静かな、だけれど強い意志を持った声で、衛宮君に語り掛けている
横を見れば、桐ケ谷さんが止めに入ろうとしてる
けれど、動けない
それくらい、この場の空気を彼女が支配している
友希那「どうかしら?決して、悪い話にするつもりはないわ。」
楓「......」
瑠唯「......っ。(衛宮君......っ。)」
彼が奪われる、止めたい
けれど、なんと言ったらいいか分からない
それは、湊さんのせいではない
私が、衛宮君に拒絶されることを恐れているから
もし、Roseliaに行くと言われたら、私はどうなるのか
それを考えたら怖くてたまらない
ましろ(衛宮君、嫌だよ......)
透子(どうすんだよ、衛宮......?)
七深(かえ君だもん、絶対に......)
つくし(Roseliaに、衛宮君が......)
瑠唯(......衛宮君。)
彼がどんな選択をしても、非難することは許されない
彼の人生は、彼のものだから
選ばれなくても、私たちには何も言えない
......そう、頭では理解してる
けれど、選んでほしい、離れたくない
彼と離れるなんて、私には......
楓「......僕のことをそこまで評価していただいて、すごく光栄です。Roseliaのボーカルである湊さんからなら、なおさら。」
瑠唯「っ......!」
友希那「なら__」
楓「でも、ごめんなさい。その申し出は、お断りさせてください。」
友希那「!」
瑠唯「!!」
衛宮君の言葉を聞いて、私は目を見開いた
横にいる他の4人も、同じような表情をしてる
友希那「......理由を聞いてもいいかしら?」
低い声で、湊さんがそう尋ねる
怒っているというわけではない
どちらかというと、残念そうに見える
楓「このバンドの皆のことを、おこがましいかもしれませんが、僕はお友達と思っています。きっと、この縁は、僕の人生で最初で最後の、大切なものなんです。そんな皆の役に立てるようになりたいんです。」
ましろ、透子「......!」
彼は優しく微笑みながらそう話し
湊さんの前で深く頭を下げた
楓「だから、ごめんなさい。僕はここで、最後まで出来る限り、皆のために頑張りたいです。」
友希那「......そう。」
湊さんは小さな声でそう呟くと
静かに後ろの出口の方を向き
横にいる今井さんに合図を出した
友希那「いい覚悟ね。その覚悟に免じて、この話は諦めるわ。」
楓「本当に、すみません。」
友希那「構わないわよ。それにしても......」
瑠唯「!」
申し訳なさそうにしてる彼を制し
湊さんは私たちの方に目を向け
優しい笑みを浮かべた
友希那「いいメンバーを持ったわね。」
ましろ「はい!」
透子「最高のメンバーです!」
つくし「私たちの副リーダーですから!」
七深「大好きで一番大切なお友達です~!」
瑠唯「いつも助けられています。」
友希那(好かれてるのね、彼は。)
リサ(いい仲間だね~!)
湊さんは笑みを浮かべたまま歩き出し
他のメンバーの方たちも着いて行った
その背中には気高さや誇りを感じ
Roseliaの力量を実感させられた
楓「はぁ......き、緊張したぁ......」
透子「衛宮ー!」
楓「うわぁ!桐ケ谷さん!?」
透子「なんだよあれー!あたし達のこと大好きかよー!」
Roseliaの皆さんが去ってすぐ
桐ケ谷さんが彼に抱き着き
それに続いて、他の3人も衛宮君と密着した
倉田さんと二葉さんまでとは、珍しいわね
七深「もう~!広町は嬉しすぎて叫んじゃいそうだったよ~!」
ましろ「嬉しかった......衛宮君が、私たちを選んでくれて......///」
つくし「え、衛宮君は副リーダーだから当たり前だけどね!......でも、よかった///」
楓「え、えっと、副リーダーは初耳だけど、そうですね......」
ましろ、透子、七深、つくし、瑠唯「?」
彼の歯切れが悪くなった
少しだけ、顔が赤い気がする
そんな彼を見てると、小さく口を開いた
楓「......大好きです、皆のこと。」
ましろ、透子、つくし、七深「はうっ!///」
瑠唯「......っ!///」
楓「えぇ!?皆、ど、どうしたんですか!?」
私たちは全員、彼から目をそらし、悶え始めた
彼は慌てた様子で私たちを心配してるけど
どうしたも何もない
あんなに可愛らしくあんなことを言われてしまったら
そんなの、私たちはこうなってしまうに決まってるわ
ましろ「これ、無理ぃ......///」
透子「可愛すぎだろ......///」
七深「もう、付き合うことを前提に結婚したい~......///」
つくし「天使......///」
瑠唯(本当に、彼は......///)
楓「だ、大丈夫ですか!?ライブで疲れすぎちゃいましたか!?」
それからしばらく、私たちは悶え続け
それが終わった後は控室に戻り
彼のことを4人が褒め倒し、彼が慌てながら照れるという、何とも微笑ましい光景を見ることができた